(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非面取りサイプのうち前記面取りサイプに最も近接する非面取りサイプと前記面取りサイプとのタイヤ周方向の距離L1が2mm〜15mmであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
前記非面取りサイプが前記トレッド部の平面視でタイヤ周方向に屈曲して屈曲部を有し、前記非面取りサイプの屈曲角度が20°〜100°であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
トレッドプロファイルを成す円弧の曲率半径TRと前記面取りサイプを有するリブの外輪郭線の曲率半径RRとがTR>RRの関係を満たすことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、トレッド部に設けたサイプの形状を工夫することにより、ドライ性能とウエット性能とをバランス良く改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、トレッド部に、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、該主溝により区画された複数列のリブとを備え、車両装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部の車両外側領域及び車両内側領域のそれぞれにタイヤ幅方向に延びる複数本のサイプが形成された少なくとも一列のリブを有し、該サイプは少なくとも一方のエッジに面取り部を有する面取りサイプとエッジに面取り部を有しない非面取りサイプからなり、前記面取りサイプは前記リブ内で一端部が終端する一方で他端部が前記リブの両側に位置する主溝のいずれか一方に連通し、該リブの両側に位置する主溝のそれぞれに連通した面取りサイプがタイヤ周方向に交互に配置され、前記非面取りサイプは前記面取りサイプの少なくともタイヤ周方向の片側に隣接して配置され、車両外側領域の非面取りサイプの総延長LB
OUTと車両内側領域の非面取りサイプの総延長LB
INとがLB
OUT<LB
INの関係を満たすことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、複数列のリブのうち少なくとも一つのリブにタイヤ幅方向に延びる複数本のサイプを有し、該サイプは少なくとも一方のエッジに面取り部を有する面取りサイプとエッジに面取り部を有しない非面取りサイプから構成されていることにより、面取り部を設けた面取りサイプに起因して、接地時の排水性の向上に繋がり、ウエット性能を改善することができる。その一方で、面取り部を設けていない非面取りサイプが面取りサイプのタイヤ周方向に隣接して同じリブ内に併存していることにより、非面取りサイプが接地時におけるトレッド部の変形を負担し、面取りサイプにおける面取り部の潰れの抑制に寄与する。また、面取りサイプにおいて、その一端部がリブ内で終端する一方で他端部がリブの両側に位置する主溝のいずれか一方に連通し、該リブの両側に位置する主溝のそれぞれに連通した面取りサイプがタイヤ周方向に交互に配置されていることにより、面取りサイプ周辺において接地領域を広く確保することができ、面取りサイプの面取り部の潰れを効果的に抑制することができる。これにより、ウエット性能を向上させることが可能となる。更に、車両外側領域の非面取りサイプの総延長LB
OUTと車両内側領域の非面取りサイプの総延長LB
INとがLB
OUT<LB
INの関係を満たすことにより、旋回時における車両装着外側の多大な荷重に対して有効に作用し、トレッド部の剛性を十分に確保することができ、ドライ性能の向上に繋がるのである。
【0008】
本発明では、非面取りサイプのうち面取りサイプに最も近接する非面取りサイプと面取りサイプとのタイヤ周方向の距離L1は2mm〜15mmであることが好ましい。これにより、面取りサイプの面取り部の潰れを効果的に抑制することができる。
【0009】
本発明では、車両内側領域の面取りサイプの深さCd
INと車両内側領域の非面取りサイプの深さNd
INとは1<Nd
IN/Cd
IN≦1.5の関係を満たすことが好ましい。これにより、面取りサイプの面取り部の潰れを効果的に抑制することができる。
【0010】
本発明では、面取りサイプにおける接地面での開口部の幅Cwは1.6mm〜4.8mmであることが好ましい。これにより、接地時での排水性を確保することができる。
【0011】
本発明では、車両外側領域の面取りサイプにおける接地面での開口部の幅Cw
OUTと車両内側領域の面取りサイプにおける接地面での開口部の幅Cw
INとは1<Cw
IN/Cw
OUT≦3.0の関係を満たすことが好ましい。これにより、車両内側領域での排水性を高め、ウエット路面での制動性能を向上させると共に、車両外側領域でのパターン剛性を高め、ドライ路面でのコーナリング性能を改善することが可能となる。
【0012】
本発明では、車両外側領域の主溝における溝面積Ga
OUTと車両内側領域の主溝における溝面積Ga
INとが1<Ga
IN/Ga
OUT≦1.4の関係を満たすことが好ましい。これにより、車両内側領域での排水性を高め、ウエット路面での制動性能を向上させると共に、車両外側領域でのパターン剛性を高め、ドライ路面でのコーナリング性能を改善することが可能となる。
【0013】
本発明では、非面取りサイプはトレッド部の平面視でタイヤ周方向に屈曲して屈曲部を有し、非面取りサイプの屈曲角度は20°〜100°であることが好ましい。これにより、変形方向に対して非面取りサイプの壁面同士が支え合うことでパターン剛性を確保することができ、ドライ路面でのコーナリング性能の向上に繋がる。
【0014】
本発明では、車両外側領域の面取りサイプを有するリブのトレッドゴムの硬度E
OUTと車両内側領域の面取りサイプを有するリブのトレッドゴムの硬度E
INとがE
OUT−E
IN≧3の関係を満たすことが好ましい。これにより、ドライ路面でのコーナリング性能を向上させることができると共に、面取りサイプの面取り部の潰れを抑制することができ、ウエット路面での制動性能を向上させることが可能となる。
【0015】
本発明では、トレッドプロファイルを成す仮想円弧の曲率半径TRと面取りサイプを有するリブの外輪郭線の曲率半径RRとはTR>RRの関係を満たすことが好ましい。これにより、接地時におけるリブの排水性を向上させ、ウエット性能を効果的に改善することができる。
【0016】
なお、本発明において、「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”であるが、タイヤが乗用車である場合には180kPaとする。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示し、
図2〜
図4はその空気入りタイヤのトレッド部の一部を示すものである。なお、
図1においてCLはタイヤ赤道線であり、
図2,3においてTcはタイヤ周方向、Twはタイヤ幅方向である。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施形態からなる空気入りタイヤは、車両に対する装着方向が指定されており、INはタイヤを車両に装着したときに車両に対してタイヤ赤道線CLよりも内側の領域(以下、車両内側領域という)を示し、OUTはタイヤを車両に装着したときに車両に対してタイヤ赤道線CLよりも外側の領域(以下、車両外側領域という)を示している。また、本発明の実施形態からなる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状を成すトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0020】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0021】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0022】
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
【0023】
図1及び
図2に示すように、トレッド部1にはタイヤ周方向に延びる複数本の主溝9が形成されている。主溝9は、タイヤ赤道線CL上に位置する主溝9Aと、そのタイヤ幅方向外側に位置する一対の主溝9B,9Bとを含んでいる。これら主溝9によりトレッド部1には複数列のリブ10が区画されている。リブ10は、タイヤ赤道線CLの両側に位置する一対のリブ10A,10Aと、そのリブ10Aのタイヤ幅方向外側に位置する一対のリブ10B,10Bとを含んでいる。
【0024】
図1及び
図2の態様では、トレッド部1に3本の主溝9が形成された例を示しているが、排水性と接地面積の確保とを両立するために、トレッド部1には3〜5本の主溝9を設けることが好ましい。
【0025】
図2に示すように、リブ10は、タイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ11と、複数本のサイプ11により区画されたブロック20とを含んでいる。これらブロック20はタイヤ周方向に並ぶように配置されている。一方、サイプ11は、面取りサイプ12と非面取りサイプ13から構成されている。サイプ11は、リム組みしていない状態で溝幅が0.5mm〜1.6mmかつ深さが2.0mm以上の細溝である。
【0026】
面取りサイプ12は、
図3に示すように、少なくとも一方のエッジ12a,12bに面取り部14を有するサイプである。この面取り部14は、
図2及び
図3の態様では面取りサイプ12の全長に渡って片側のエッジ12aに設けられているが、両側のエッジ12a,12bに設けることもでき、或いは面取りサイプ12の延在方向に沿って部分的又は間欠的に設けることもできる。また、面取りサイプ12は、リブ10内で一端部12cが終端する一方で他端部12dがリブ10の両側に位置する主溝9,9のいずれか一方に連通している。これらリブ10の両側に位置する主溝9,9のそれぞれに連通した面取りサイプ12,12がタイヤ周方向に交互に配置され、全体として面取りサイプ12がタイヤ周方向に千鳥状に配置されている。面取りサイプ12に形成された面取り部14は、
図4に示すように、面取りサイプ12の延在方向に対して直交する断面視にて三角形を成している。なお、面取りサイプ12は、面取り部14を除く部分の深さが1mm以上の深さを有する。
【0027】
非面取りサイプ13は、面取りサイプ12を中心としてタイヤ周方向に50mm以内の領域に設けられ、かつ面取り部が設けられていないサイプである。この非面取りサイプ13は、面取りサイプ12の少なくともタイヤ周方向の片側に隣接して配置されている。
図2及び
図3において、車両内側領域のリブ10Aには非面取りサイプ13が面取りサイプ12のタイヤ周方向の両側に隣接して配置されている一方で、車両外側領域のリブ10Aには非面取りサイプ13が面取りサイプ12のタイヤ周方向の片側に隣接して配置されている。
【0028】
また、非面取りサイプ13はリブ10をタイヤ幅方向に貫通している。これにより、接地時における面取りサイプ12の面取り部14の潰れに対する抑制効果がある。その一方で、非面取りサイプ13は、その両端部がリブ10内で終端するクローズドサイプ、或いは一方の端部のみがリブ10内で終端するセミクローズドサイプとして構成することもできる。更に、非面取りサイプ13は、タイヤ幅方向に対して傾斜していても良く、屈曲又は湾曲していても良い。
【0029】
リブ10には、面取りサイプ12及び非面取りサイプ13以外の他の溝を設けることもできる。しかしながら、リブ10内の排水性は面取りサイプ12により十分に確保することができるため、接地面積を大きくして制動性能を向上させる観点では、面取りサイプ12と非面取りサイプ13のみを設けることが好ましい。
【0030】
接地面積を増やすためにはトレッドゴムの硬度が小さいほうが良く、その一方で面取り部14の潰れを抑制するためにはトレッドゴムの硬度が大きいほうが良い。これらを両立するためにトレッドゴムの硬度はJIS K6253で規定される硬度が58〜75であることが好ましい。特に、車両外側領域の面取りサイプ12を有するリブ10のトレッドゴムの硬度E
OUTと車両内側領域の面取りサイプ12を有するリブ10のトレッドゴムの硬度E
INとがE
OUT−E
IN≧3の関係を満たすと良い。これにより、ドライ路面でのコーナリング性能とウエット路面での制動性能の向上に寄与する。
【0031】
上記空気入りタイヤにおいて、車両外側領域の非面取りサイプ13の総延長LB
OUTと車両内側領域の非面取りサイプ13の総延長LB
INとはLB
OUT<LB
INの関係を満たすように構成されている。ここで、非面取りサイプ13の総延長LB
OUT,LB
INとは、車両外側領域又は車両内側領域のリブ10に形成された全ての非面取りサイプ13のサイプ長さの合計である。特に、非面取りサイプ13の総延長LB
INと総延長LB
OUTとの比LB
IN/LB
OUTが1.2〜1.8の範囲にあることが好ましい。このように車両内側領域の非面取りサイプ13の総延長LB
INを車両外側領域の非面取りサイプ13の総延長LB
OUTよりも大きくする方法として、車両内側領域において、非面取りサイプ13の本数を増やすことや、非面取りサイプ13のサイプ長さを長くする或いは適用するリブ数を増やすこと等が挙げられる。なお、サイプ長さは、サイプの溝幅の中心をサイプの延在方向に沿って測定した長さとする。
【0032】
また、上述の総延長LB
OUTと総延長LB
INとの関係を満たすことに加え、車両外側領域の面取りサイプ12の総延長LA
OUTと車両内側領域の非面取りサイプ13の総延長LA
INとはLA
OUT≦LA
INの関係を満たす、及び/又は車両外側領域の非面取りサイプ13の総延長LB
OUTの車両外側領域の面取りサイプ12の総延長LA
OUTに対する比LB
OUT/LA
OUTと、車両内側領域の非面取りサイプ13の総延長LB
INの車両内側領域の面取りサイプ12の総延長LA
INに対する比LB
IN/LA
INとはLB
OUT/LA
OUT≦LB
IN/LA
INの関係を満たすことが好ましい。
【0033】
上述した空気入りタイヤでは、複数列のリブ10のうち少なくとも一つのリブ10にタイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ11を有し、サイプ11は少なくとも一方のエッジ12a,12bに面取り部14を有する面取りサイプ12とエッジに面取り部を有しない非面取りサイプ13から構成されていることにより、面取り部14を設けた面取りサイプ12に起因して接地時の排水性を向上させることができ、ウエット性能の改善に繋がる。その一方で、面取り部を設けていない非面取りサイプ13が面取りサイプ12のタイヤ周方向に隣接して同じリブ10内に併存していることにより、非面取りサイプ13が接地時におけるトレッド部1の変形を負担し、面取りサイプ12における面取り部14の潰れの抑制に寄与する。
【0034】
また、面取りサイプ12において、その一端部12cがリブ10内で終端する一方で他端部12dがリブ10の両側に位置する主溝9のいずれか一方に連通し、該リブ10の両側に位置する主溝9のそれぞれに連通した面取りサイプ12がタイヤ周方向に交互に配置されていることにより、面取りサイプ12周辺において接地領域を広く確保することができ、面取りサイプ12の面取り部14の潰れを効果的に抑制することできる。これにより、ウエット性能を向上させることが可能となる。更に、車両外側領域の非面取りサイプ13の総延長LB
OUTと車両内側領域の非面取りサイプ13の総延長LB
INとがLB
OUT<LB
INの関係を満たすことにより、旋回時における車両装着外側の多大な荷重に対して有効に作用し、トレッド部1の剛性を十分に確保することができ、ドライ性能の向上に繋がるのである。
【0035】
上記空気入りタイヤにおいて、
図3に示すように、面取り部14を含む面取りサイプ12の凹部領域と、非面取りサイプ13のうち面取りサイプ12に最も近接する非面取りサイプ13の凹部領域とが最も近接する位置でのタイヤ周方向の距離を距離L1とする。この距離L1は、2mm〜15mmであることが好ましく、4mm〜11mmであることがより好ましい。このように距離L1を適度に設定することで、非面取りサイプ13が面取りサイプ12の面取り部14の潰れを効果的に抑制することができる。ここで、距離L1が2mmより小さいと面取りサイプ12と非面取りサイプ13とに挟まれる領域においてリブ10の剛性が低下し、該領域が倒れ込むことで接地性を確保することが難しくなるため、ウエット性能が低下する傾向がある。
【0036】
また、
図3において、面取りサイプ12と非面取りサイプ13のタイヤ周方向に対する傾斜角度をそれぞれ傾斜角度θ
C、傾斜角度θ
Nとする。このとき、面取りサイプ12の傾斜角度θ
Cと非面取りサイプ13の傾斜角度θ
Nとは、θ
C−30°≦θ
N≦θ
C+30°の関係を満たすように構成されていると良い。このように傾斜角度θ
C,θ
Nを設定することで、面取りサイプ12の面取り部14の潰れを効果的に抑制することができる。なお、非面取りサイプ13の傾斜角度θ
Nは、面取りサイプ12のタイヤ幅方向の長さと同等の範囲で特定される傾斜角度である。
【0037】
図4に示すように、面取りサイプ12と非面取りサイプ13において、接地面からサイプの溝底までの深さをそれぞれ深さCd、深さNdとする。このとき、車両内側領域の面取りサイプの深さCd
INと車両内側領域の非面取りサイプの深さNd
INとは1<Nd
IN/Cd
IN≦1.5の関係を満たすことが好ましい。より好ましくは、1.1<Nd
IN/Cd
IN≦1.4が良い。このように深さNd
INを深さCd
INに対して適度に設定することで、面取りサイプ12の面取り部14の潰れを効果的に抑制することができる。ここで、深さNd
INの深さCd
INに対する比が1.5より大きくなると、車両内側領域のリブ10の剛性が低下してブロック20が倒れこみ、ウエット性能が低下する傾向がある。
【0038】
また、
図4において、面取りサイプ12の接地面での開口部の幅を幅Cwとする。この開口部の幅Cwは面取りサイプ12の延在方向に対して直交する向きに沿って測定される。このとき、開口部の幅Cwは1.6mm〜4.8mmとなるように構成すると良い。このように面取りサイプ12を構成することで、接地時での排水性を確保することができる。ここで、面取りサイプ12の接地面での開口部の幅Cwが、1.6mmより小さいと排水性の改善効果が小さく、4.8mmより大きいと接地面積が小さくなり、ウエット性能及びドライ路面でのコーナリング性能が低下する傾向がある。
【0039】
図5は本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部に形成された非面取りサイプの変形例を示すものである。
図5に示すように、非面取りサイプ13の接地面での開口部の幅を幅Nwとする。この開口部の幅Nwは非面取りサイプ13の延在方向に対して直交する向きに沿って測定される。
図5において、非面取りサイプ13の幅Nwは底部から開口部に向かって徐々に広くなっている。このように非面取りサイプ13が形成されていることで、非面取りサイプ13のトレッド部1の変形に対する負担量が増し、面取りサイプ12の面取り部14の潰れを効果的に負担することができる。
【0040】
図6は本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部に形成されたサイプの他の変形例を示すものである。
図6に示すように、車両内側領域の面取りサイプ12の接地面での開口部は、車両外側領域の面取りサイプ12の接地面での開口部よりも幅広に形成されている。即ち、車両外側領域の面取りサイプ12の開口部の幅Cw
OUTと車両内側領域の面取りサイプ12の開口部の幅Cw
INとは1<Cw
IN/Cw
OUT≦3.0の関係を満たすように構成されている。このように幅Cw
INを幅Cw
OUTに対して適度に設定することで、車両内側領域での排水性を高め、ウエット路面での制動性能を向上させると共に、車両外側領域でのパターン剛性を高め、ドライ路面でのコーナリング性能を改善することが可能となる。ここで、幅Cw
INの幅Cw
OUTに対する比が3.0を超えると、車両内側領域のブロック20の剛性が過度に小さくなり、ウエット路面での制動性能が低下する傾向がある。
【0041】
図7は本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部の他の変形例を示すものである。
図7に示すように、車両内側領域の主溝9Bは車両外側領域の主溝9Bよりも幅広に形成されている。即ち、車両外側領域の主溝9の溝面積Ga
OUTと車両内側領域の主溝9の溝面積Ga
INとは1<Ga
IN/Ga
OUT≦1.4の関係を満たすように構成されている。このように溝面積Ga
INを溝面積Ga
OUTに対して適度に設定することで、車両内側領域での排水性を高め、ウエット路面での制動性能を向上させると共に、車両外側領域でのパターン剛性を高め、ドライ路面でのコーナリング性能を改善することが可能となる。ここで、溝面積Ga
INの溝面積Ga
OUTに対する比が1.4より大きくなると、車両内側領域のブロック20の剛性が過度に低下し、ウエット路面での制動性能が低下する傾向がある。
【0042】
図8(a)〜(c)は本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部に形成された非面取りサイプの他の変形例を示すものである。
図8(a)に示すように、非面取りサイプ13はトレッド部1の平面視でタイヤ周方向に屈曲して屈曲部13aを有している。非面取りサイプ13の屈曲角度θ1は20°〜100°の範囲である。ここで、非面取りサイプ13の屈曲角度θ1とは、非面取りサイプ13が屈曲部13aを境として一方側の部分と他方側の部分を有するとき、一方側の部分の延長方向に対する他方側の部分の傾斜角度を意味する。非面取りサイプ13がこのような屈曲角度θ1の屈曲部13aを有することで、非面取りサイプ13により分割されたリブ10のブロック20同士は横方向(タイヤ幅方向)にずれ難くなる。即ち、任意の変形方向に対して非面取りサイプ13の壁面同士が支え合ってパターン剛性を確保することができるため、ドライ路面でのコーナリング性能の向上に繋がるのである。但し、屈曲角度θ1が90°より大きくなると共に、非面取りサイプ13の両端部がリブ10の両側の主溝9のうち同一の主溝9に連通するように構成された形態は含まない。また、
図8(a)に示す他に、
図8(b)に示すようにタイヤ周方向に凸となる山形形状を有する場合や、
図8(c)に示すように2箇所の屈曲部13aを有し、全体として階段状に形成された場合を例示することができる。
【0043】
図9は本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部の他の変形例を示すものである。
図9において、各リブ10には前述の実施形態と同様に面取りサイプ12及び非面取りサイプ13が形成されている。タイヤ子午断面視で、タイヤ中央部に位置する2本の主溝9のタイヤ幅方向両端点E1,E2,E3,E4を通る円弧Rを想定したとき、リブ10の踏面を規定する外輪郭線が円弧Rよりもタイヤ径方向外側に突出している。即ち、トレッドプロファイルを成す円弧Rの曲率半径TRと、面取りサイプ12を有するリブ10の外輪郭線の曲率半径RRとはTR>RRの関係を満たす。これにより、接地時におけるリブ10の排水性を向上させ、ウエット性能を効果的に改善することができる。なお、曲率半径TRと曲率半径RRは、タイヤを正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で測定される。
【0044】
図10〜12は本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部の他の変形例を示すものである。
図10及び
図11は上述の面取りサイプ12及び非面取りサイプ13をタイヤ周方向に延びる4本の主溝9により区画されるリブ10に適用した例であり、
図12はタイヤ周方向に延びる5本の主溝9により区画されるリブ10に適用した例である。
図10及び
図11では、タイヤ赤道線CLの両側に位置する一対の主溝9A,9Aと、そのタイヤ幅方向外側に位置する一対の主溝9B,9Bとにより、タイヤ赤道線CL上に位置するリブ10Aとそのタイヤ幅方向外側に位置する一対のリブ10B,10Bが区画されている。また、
図12では、タイヤ赤道線CL付近に位置する主溝9Aと、そのタイヤ幅方向外側に位置する一対の主溝9B,9Bと、タイヤ幅方向の最外側に位置する一対の主溝9C,9Cとにより、タイヤ赤道線CL上に位置するリブ10Aとそのタイヤ幅方向外側に位置する一対のリブ10B,10Bと車両内側領域のリブ10Bのタイヤ幅方向外側に位置するリブ10Cとが区画されている。
【0045】
図10においては、非面取りサイプ13を車両外側領域のリブ10Bよりも車両内側領域のリブ10Bに多く配置している。
図11においては、車両外側領域のリブ10Bの非面取りサイプ13はタイヤ幅方向に平行に延在している一方で、車両内側領域のリブ10Bの非面取りサイプ13はタイヤ幅方向に対して傾斜している。
図12においては、面取りサイプ12及び非面取りサイプ13を一対のリブ10B,10Bにのみ配置すると共に、非面取りサイプ13を車両外側領域のリブ10Bよりも車両内側領域のリブ10Bに多く配置している。つまり、
図10〜12のいずれの態様においても、車両外側領域の非面取りサイプ13の総延長LB
OUTと車両内側領域の非面取りサイプ13の総延長LB
INとはLB
OUT<LB
INの関係を満たすように構成されている。
【0046】
図13(a)〜(d)は本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部に形成された面取りサイプの他の変形例を示すものである。
図13(a)に示すように、面取りサイプ12の延在方向に対して直交する断面視において、面取りサイプ12の片側のエッジに面取り部14が形成され、その面取り部14の断面形状は矩形である。このように面取り部14の断面形状を矩形にすることで、接地時でのトレッド部1の変形に対して溝容積を十分に確保することができ、排水性を向上させることができる。その一方で、面取りサイプ12の面取り部14の断面形状としては、
図4,
図13(a)に示す他に、
図13(b)に示すようにタイヤ径方向内側に凸となる曲線の輪郭線を有する場合や、
図13(c)に示すようにタイヤ径方向外側に凸となる曲線の輪郭線を有する場合、
図13(d)に示すように三角形状を有する場合を例示することができる。
【実施例】
【0047】
タイヤサイズ195/65R15で、トレッド部に、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、該主溝により区画された複数列のリブとを備えた空気入りタイヤにおいて、面取りサイプの有無、非面取りサイプの有無、車両外側領域の非面取りサイプの総延長LB
OUTに対する車両内側領域の非面取りサイプの総延長LB
INの比(LB
IN/LB
OUT)、面取りサイプと非面取りサイプとの距離L1(mm)、車両内側領域の面取りサイプの深さCd
INに対する車両内側領域の非面取りサイプの深さNd
INの比(Nd
IN/Cd
IN)、車両外側領域の面取りサイプの開口部の幅Cw
OUT(mm)、車両外側領域の面取りサイプの開口部の幅Cw
OUTに対する車両内側領域の面取りサイプの開口部の幅Cw
INの比(Cw
IN/Cw
OUT)、車両外側領域の主溝の溝面積Ga
OUTに対する車両内側領域の主溝の溝面積Ga
INの比(Ga
IN/Ga
OUT)、非面取りサイプの屈曲角度、車両外側領域のリブのトレッドゴムの硬度E
OUTと車両内側領域のリブのトレッドゴムの硬度E
INとの差(E
OUT−E
IN)、リブのタイヤ径方向外側への突出の有無を表1及び表2のように設定した従来例、比較例1〜3及び実施例1〜9のタイヤを製作した。
【0048】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、ウエット路面での制動性能及びドライ路面での操縦安定性能に関する評価を実施し、その結果を表1及び表2に併せて示した。
【0049】
ウエット路面での制動性能:
各試験タイヤをリムサイズ15×6Jのホイールに組み付けて、排気量1500ccの前輪駆動車に装着し、空気圧230kPaとして、水深2mmのウエット路面において初速80km/hから完全停止までの制動距離の測定を実施した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどウエット路面での制動性能が優れていることを意味する。
【0050】
ドライ路面での操縦安定性能:
各試験タイヤをリムサイズ15×6Jのホイールに組み付けて、排気量1500ccの前輪駆動車に装着し、空気圧230kPaとして、ドライ路面においてテストドライバーによる官能評価を実施した。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどドライ路面での操縦安定性能が優れていることを意味する。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
これら表1及び表2から判るように、トレッド部に設けたサイプの形状を工夫することで、実施例1〜9のタイヤは、従来例との対比において、ウエット路面での制動性能とドライ路面での操縦安定性能が同時に改善されていた。
【0054】
一方、比較例1においては、車両外側領域の非面取りサイプの総延長と車両内側領域の非面取りサイプの総延長とを同等に設定したため、ドライ路面での操縦安定性能の改善効果が得られなかった。比較例2においては、リブに全くサイプを設けなかったため、ウエット路面での制動性能の改善効果を十分に得ることができなかった。比較例3においては、面取り部を設けていないサイプのみをリブに配置したため、ウエット路面での制動性能の改善効果を十分に得ることができず、ドライ路面での操縦安定性の改善効果が小さかった。