特許第6809247号(P6809247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6809247-周波数変換システムの制御装置 図000002
  • 特許6809247-周波数変換システムの制御装置 図000003
  • 特許6809247-周波数変換システムの制御装置 図000004
  • 特許6809247-周波数変換システムの制御装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809247
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】周波数変換システムの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/34 20060101AFI20201221BHJP
   H02J 3/16 20060101ALI20201221BHJP
   H02M 5/458 20060101ALI20201221BHJP
   H02M 5/38 20060101ALI20201221BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20201221BHJP
【FI】
   H02J3/34
   H02J3/16
   H02M5/458
   H02M5/38
   H02M7/48 E
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-9102(P2017-9102)
(22)【出願日】2017年1月23日
(65)【公開番号】特開2018-121379(P2018-121379A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100516
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 惠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
【審査官】 佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−223433(JP,A)
【文献】 特開2006−60923(JP,A)
【文献】 特開2015−70654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/34
H02J 3/16
H02M 5/38
H02M 5/458
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる周波数を持つ電力系統の一方を電源系統とし他方を負荷系統として回転形周波数変換装置と静止形周波数変換装置とを並列接続して連系する周波数変換システムの前記回転形周波数変換装置と前記静止形周波数変換装置とを協調制御する周波数変換システムの制御装置において、
前記電源系統から前記負荷系統に所定電力を供給するように前記静止形周波数変換装置を制御する電力供給制御部と、
前記負荷系統の電圧と基準電圧との電圧偏差に基づいて前記負荷系統の電圧変動に伴う無効電力変動を調整するための無効電力調整指令を演算し前記電力供給制御部に出力する無効電力変動補償部とを備えたことを特徴とする周波数変換システムの制御装置。
【請求項2】
前記電源系統から前記回転形周波数変換装置に供給される有効電力がその基準値となるように有効電力変動を調整するための有効電力調整指令を演算し前記電力供給制御部に出力する有効電力変動補償部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の周波数変換システムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる周波数を持つ電力系統の一方を電源系統とし他方を負荷系統として回転形周波数変換装置と静止形周波数変換装置とを並列接続して連系する周波数変換システムの回転形周波数変換装置と静止形周波数変換装置とを協調制御する周波数変換システムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数変換システムは異なる周波数を持つ電力系統を連系する場合に用いられ、周波数変換システムとして回転形周波数変換装置と静止形周波数変換装置とを並列接続した周波数変換システムがある。このような周波数変換システムは、例えば、商用周波数50Hzの電力系統を電源系統とし、商用周波数60Hzの負荷系統に電力を供給する場合に用いられる。
【0003】
回転形周波数変換装置は同期電動機と同期発電機とを連結して、例えば同期電動機を周波数50Hzで回転させて同期発電機から周波数60Hzの電力を発生させる。同期発電機は周波数50Hzで回転したとき周波数60Hzの電力を発生させるように極数が選定されている。
【0004】
このような回転形周波数変換装置と静止形周波数変換装置とを並列接続してなる周波数変換システムの制御装置として、回転形周波数変換装置と静止形周波数変換装置のそれぞれ異なる特性を生かし、周波数変換システムの出力電流を計測する計測手段と、計測手段の出力が一定値を超えたことを検出するレベル検出手段とを具備し、レベル検出手段が一定値を超えたことを検出した場合に、静止形周波数変換装置を起動することにより、負荷電流が少ない領域では回転形周波数変換装置を運転して無負荷損の少ない静止形周波数変換装置を停止し、負荷電流が一定値を越えた領域で回転形周波数変換装置に加えて静止形周波数変換装置を運転することにより、周波数変換システム全体の運転損失を低減できるようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−134939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のものは、負荷電流が少ない領域では回転形周波数変換装置を運転して無負荷損の少ない静止形周波数変換装置を停止し、負荷電流が一定値を越えた領域で回転形周波数変換装置に加えて静止形周波数変換装置を運転することにより、周波数変換システム全体の運転損失を低減できるように協調制御しているが、負荷系統の電圧変動の抑制についての考慮がない。
【0007】
回転形周波数変換装置により周波数変換して負荷系統に電力を供給しているとき、負荷系統で大きな負荷変動を伴うような場合、あるいは電源系統の系統事故などが発生した場合には、負荷系統の電圧変動が大きくなることがある。すなわち、負荷系統で負荷変動があると、回転形周波数変換装置の回転機のインピーダンスでの電圧降下による電圧変動が発生する。また、後者の場合には電源系統側の系統事故に起因して回転形周波数変換装置の回転機の回転数が変動し、その回転数偏差により回転機の速度起電力の変動により電圧変動が発生する。この電圧変動は時間の経過に伴い収束するが収束するには時間がかかる。
【0008】
本発明の目的は、負荷系統に発生する電圧変動を抑制でき電圧変動を早く収束できる周波数変換システムの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明に係る周波数変換システムの制御装置は、異なる周波数を持つ電力系統の一方を電源系統とし他方を負荷系統として回転形周波数変換装置と静止形周波数変換装置とを並列接続して連系する周波数変換システムの前記回転形周波数変換装置と前記静止形周波数変換装置とを協調制御する周波数変換システムの制御装置において、前記電源系統から前記負荷系統に所定電力を供給するように前記静止形周波数変換装置を制御する電力供給制御部と、前記負荷系統の電圧と基準電圧との電圧偏差に基づいて前記負荷系統の電圧変動に伴う無効電力変動を調整するための無効電力調整指令を演算し前記電力供給制御部に出力する無効電力変動補償部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明に係る周波数変換システムの制御装置は、請求項1の発明において、前記電源系統から前記回転形周波数変換装置に供給される有効電力がその基準値となるように有効電力変動を調整するための有効電力調整指令を演算し前記電力供給制御部に出力する有効電力変動補償部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、負荷系統の電圧と基準電圧との電圧偏差に基づいて負荷系統の電圧変動に伴う無効電力変動を調整するための無効電力調整指令を演算する無効電力変動補償部を設け、その無効電力調整指令を電力供給制御部に出力して静止形周波数変換装置を制御するので、負荷系統の電圧変動を抑制でき電圧変動を早く収束できる。
【0012】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、回転形周波数変換装置から負荷系統に供給される有効電力がその基準値となるように有効電力変動を調整するための有効電力調整指令を演算する有効電力変動補償部を設けたので、系統事故に伴って生じる回転形周波数変換装置の電力動揺に起因して生じる負荷系統の電圧変動を抑制でき、無効電力変動及び電力動揺のいずれの電圧変動であっても、負荷系統の電圧変動を抑制でき電圧変動を早く収束できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る周波数変換システムの制御装置の一例を示す構成図。
図2】本発明の第1実施形態に係る周波数変換システムの制御装置の動作の一例を示すグラフ。
図3】本発明の第2実施形態に係る周波数変換システムの制御装置の一例を示す構成図。
図4】本発明の第2実施形態に係る周波数変換システムの制御装置の動作の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る周波数変換システムの制御装置の一例を示す構成図である。
【0015】
周波数変換システムは異なる周波数を持つ電力系統を連系する場合に用いられ、図1では左側が商用周波数50Hzの電力系統、右側が商用周波数60Hzの電力系統を示している。そして、商用周波数50Hzの電力系統を電源系統11とし、商用周波数60Hzの電力系統を負荷系統12として、回転形周波数変換装置13と静止形周波数変換装置14とを並列接続して連系したものを示している。負荷系統12には有効電力及び無効電力を消費する誘導電動機15(誘導負荷)や有効電力を消費する抵抗負荷16などの負荷が接続されている。
【0016】
回転形周波数変換装置13は同期電動機17と同期発電機18とを連結して構成され、同期電動機17を周波数50Hzで回転させて同期発電機18を駆動し、同期発電機18から周波数60Hzの電力を発生させる。この場合、同期発電機18は、周波数50Hzで回転する同期電動機17で駆動されるが周波数60Hzの電力を発生させるように極数が選定されている。回転形周波数変換装置13による電源系統11から負荷系統12への融通電力は同期発電機18の定格で決まり、有効電力及び無効電力は、誘導起電力、端子電圧、リアクタンスで決まる。
【0017】
静止形周波数変換装置14は、交流を直流に変換するコンバータ19と直流を交流に変換するインバータ20とを接続して構成され、周波数50Hzの交流電力をコンバータ19で直流に変換し、コンバータ19で変換された直流をインバータで周波数60Hzの交流電力に変換して負荷系統12に供給する。
【0018】
制御装置21は、電力供給制御部22、無効電力変動補償部23、交流電圧偏差演算部24を有している。電力供給制御部22は、電源系統11から負荷系統12に所定電力を供給するように静止形周波数変換装置14を制御するものである。
【0019】
電力供給制御部22は、静止形周波数変換装置14のコンバータ19を制御するための静止型周波数変換コンバータ制御部25(以下、静止型FCコンバータ制御部25という)、第1有効電力制御部26、第1無効電力制御部27、直流電圧偏差演算部28を有すると共に、静止形周波数変換装置14のインバータ20を制御するための静止型周波数変換インバータ制御部29(以下、静止型FCインバータ制御部29という)、第2有効電力制御部30、第2無効電力制御部31を有する。
【0020】
コンバータ19の出力側の直流電圧Vdcは直流電圧検出器37で検出され、直流電圧偏差演算部28に入力されて、その目標値Vdc0との直流電圧偏差ΔVdcが演算される。直流電圧偏差演算部28で演算された直流電圧偏差ΔVdcは、第1有効電力制御部26に入力され、第1有効電力制御部26は、直流電圧偏差ΔVdcがゼロとなるように、つまり、直流電圧Vdcが目標値Vdc0になるように、静止型FCコンバータ制御部25を介してコンバータ19に対し制御指令を出力する。これにより、コンバータ19が電源系統11から受給する有効電力を制御する。
【0021】
第1無効電力制御部27は、コンバータ19の電源系統11の連系点の無効電力を制御するものであり、例えば、コンバータ19の電源系統11の連系点の力率を一定に維持するために必要となる無効電力基準値Qac0となるように、静止型FCコンバータ制御部25を介してコンバータ19に対し制御指令を出力する。これにより、コンバータ19の電源系統11の連系点の無効電力を制御する。
【0022】
一方、静止型FCインバータ制御部29は、インバータ20に対し、インバータ20から負荷系統12に供給される有効電力及び無効電力をその目標値になるように制御指令を出力する。すなわち、電源系統11から静止形周波数変換装置14を介して負荷系統12に供給される有効電力Paを第1有効電力検出器32で検出し、電力供給制御部22の第2有効電力制御部30は、その有効電力Paが目標値Parになるように静止型FCインバータ制御部29に有効電力制御指令Spを出力し、静止型FCインバータ制御部29は有効電力制御指令Spに基づき静止形周波数変換装置14のインバータ20を制御する。
【0023】
一方、インバータ20から負荷系統12に供給される無効電力Qaを無効電力検出器33で検出し、電力供給制御部22の第2無効電力制御部31は、その無効電力Qaが目標値Qarになるように静止型FCインバータ制御部29に無効電力制御指令Sqを出力し、静止型FCインバータ制御部29は無効電力制御指令Sqに基づき静止形周波数変換装置14のインバータ20を制御する。
【0024】
これにより、静止形周波数変換装置14にて電源系統11から負荷系統12に供給される有効電力Paが目標値Parになるように、また、インバータ20から負荷系統12に供給される無効電力Qaが目標値Qarになるように制御される。
【0025】
次に、無効電力変動補償部23は、負荷系統12の電圧変動に伴う無効電力変動を調整するための無効電力調整指令ΔQrを演算し、電力供給制御部22の第2無効電力制御部31に出力するものである。負荷系統12の電圧変動は電圧偏差ΔVとして交流電圧偏差演算部24で演算される。すなわち、負荷系統12の電圧は電圧検出器36で検出され、交流電圧偏差演算部24で基準電圧Vac0との電圧偏差ΔVが演算され無効電力変動補償部23に入力される。無効電力変動補償部23は電圧偏差ΔVに基づき、電圧変動を抑制するのに必要な無効電力変動を演算し電圧変動に伴う無効電力変動を調整するための無効電力調整指令ΔQrとして電力供給制御部22の第2無効電力制御部31に出力する。
【0026】
負荷系統12の負荷が増加したときは、同期発電機18の内部リアクタンスで生じる電圧降下が大きくなり、負荷系統12の負荷が減少したときは、同期発電機18の内部リアクタンスで生じる電圧降下が小さくなる。負荷系統の電圧変動(電圧偏差ΔV)は、下記の(1)式で示される。ΔPは有効電力変動(有効電力偏差)、ΔQは無効電力変動(無効電力偏差)、Rは同期発電機18の内部抵抗、Xは同期発電機18の内部リアクタンスである。
ΔV=ΔP・R+ΔQ・X≒ΔQ・X …(1)
【0027】
一般的に同期発電機の内部抵抗は内部リアクタンスに対して十分に小さいため、(1)式から分かるように、負荷系統の電圧変動(電圧偏差ΔV)は、電圧変動に伴う無効電力変動ΔQで表すことができ、電圧変動に伴う無効電力変動ΔQを、電圧変動に伴う無効電力変動を調整するための無効電力調整指令ΔQrとして電力供給制御部22の第2無効電力制御部31に出力する。
【0028】
第2無効電力制御部31は、無効電力Qaの目標値Qarに無効電力調整指令ΔQrを加算し、無効電力Qaが無効電力変動補償分を含む目標値(Qar+ΔQr)になるように静止型FCインバータ制御部29に無効電力制御指令Sqを出力し、静止型FCインバ
ータ制御部29は無効電力制御指令Sqに基づき静止形周波数変換装置14のインバータ20を制御する。これにより、負荷系統12に供給される無効電力Qaが無効電力変動補償分を含む目標値(Qar+ΔQr)になるように制御される。
【0029】
図2は、本発明の第1実施形態に係る周波数変換システムの制御装置の動作の一例を示すグラフであり、図2(a)は負荷系統12の負荷変動による負荷系統の電圧変動を示すグラフ、図2(b)は電源系統11側の事故による負荷系統12の電圧変動を示すグラフである。図2(a)では誘導負荷である誘導電動機15を起動した場合を示しており、図2(b)では電源系統11の電圧が事故により一時的に大きく低下し短時間のうちに回復した場合を示している。
【0030】
図2(a)において、実線の曲線C1は、負荷系統12の負荷変動による負荷系統の電圧変動に対して、無効電力変動補償部23による電圧変動抑制制御を行った場合の負荷系統12の電圧であり、点線の曲線C2は無効電力変動補償部23による電圧変動抑制制御を行わなかった場合の負荷系統12の電圧である。電圧変動抑制制御を行わなかった場合には、点線の曲線C2に示すように、時点t1で誘導負荷である誘導電動機15が起動され、負荷が増大する方向に負荷変動して時点t1後に電圧が低下する電圧変動が発生し、時点t2でさらに大きな負荷増大の負荷変動があり時点t2から時点t4の間に電圧が振動する電圧変動が発生している。一方、電圧変動抑制制御を行った場合には、実線の曲線C1に示すように、負荷が変動した時点t1、t2の短時間において電圧変動が発生しているが、電圧変動が良好に抑制されていることが分かる。
【0031】
図2(b)において、実線の曲線C11は、電源系統11側の事故による負荷系統12の電圧変動に対して、無効電力変動補償部23による電圧変動抑制制御を行った場合の負荷系統12の電圧、点線の曲線C12は無効電力変動補償部23による電圧変動抑制制御を行わなかった場合の負荷系統12の電圧である。電圧変動抑制制御を行わなかった場合には、点線の曲線C12に示すように、時点t11の直後の時点taで系統事故が発生したことに伴い回転形周波数変換装置13への電力供給が遮断されるので、回転形周波数変換装置13は減速し負荷系統12の電圧は低下する。そして、時点taから時点t12の直後の時点tcの間の時点tbにおいて事故が回復したとすると、回転形周波数変換装置13への電力供給が再開されるので、回転形周波数変換装置13は加速し負荷系統12の電圧は上昇する。回転形周波数変換装置13は同期機であるので同期速度に収束するように動作し端子電圧(負荷系統の電圧)も定格電圧に収束するように動作するが、その過程において、回転形周波数変換装置13は慣性を有するので、時点tcで電圧は最大となり電圧は低下し始め、電圧は振動しながら、時点tcの以降において徐々に定格電圧に収束していく。
【0032】
一方、電圧変動抑制制御を行った場合には、実線の曲線C11に示すように、系統事故が発生した時点ta以降の電圧変動は、電圧変動抑制制御を行わなかった場合の点線の曲線C12に比較し、電圧の変動幅が小さく、電圧変動は早期に収束していることが分かる。
【0033】
本発明の第1実施形態によれば、負荷系統12の電圧を電圧検出器36で検出し、負荷系統12側の電圧変動に伴う無効電力変動を調整するための無効電力調整指令ΔQrを無効電力変動補償部23で演算し、その無効電力調整指令ΔQrを電力供給制御部22の第2無効電力制御部31に出力して静止形周波数変換装置14のインバータ20を制御するので、負荷系統12の無効電力Qaは無効電力変動補償分を含む目標値(Qar+ΔQr)で制御されることになり、負荷系統12の電圧変動を抑制でき電圧変動を早く収束できる。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図3は本発明の第2実施形態に係る周波数変換システムの制御装置の一例を示す構成図である。本発明の第2実施形態は、図1に示した第1実施形態に対し、回転形周波数変換装置13から負荷系統12に供給される有効電力変動を調整するための有効電力調整指令ΔPrを演算する有効電力変動補償部34を追加して設けたものである。有効電力変動補償部34で演算された有効電力調整指令ΔPrは、電力供給制御部22の第2有効電力制御部30に出力され、第2有効電力制御部30は、負荷系統12に供給される有効電力変動補償分を含む目標値(Par+ΔPr)でインバータ20を制御する。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0035】
図3において、図1に示した第1実施形態に対し、負荷系統12の電圧変動に伴う無効電力変動を調整するための無効電力変動補償部23に加え、有効電力変動補償部34が追加して設けられている。有効電力変動補償部34は、回転形周波数変換装置13から負荷系統12に供給される有効電力変動を調整するための有効電力調整指令ΔPrを演算し、電力供給制御部22の第2有効電力制御部30に出力する。回転形周波数変換装置13から負荷系統12に供給される有効電力Pbは、第2有効電力検出器35で検出され有効電力変動補償部34に入力される。有効電力変動補償部34は回転形周波数変換装置13から負荷系統12に供給される有効電力Pbがその基準値Pbrとなるように、有効電力変動を調整するための有効電力調整指令ΔPrを演算し、電力供給制御部22の第2有効電力制御部30に出力する。
【0036】
第2有効電力制御部30は、静止形周波数変換装置14を介して負荷系統12に供給される有効電力Paの目標値Parに有効電力調整指令ΔPrを含む目標値(Par+ΔPr)になるように静止型FCインバータ制御部29に有効電力制御指令Spを出力し、静止型FCインバータ制御部29は有効電力制御指令Spに基づき静止形周波数変換装置14のインバータ20に対し制御指令を出力する。これにより、静止形周波数変換装置14にて電源系統11から負荷系統12に供給される有効電力Pが有効電力変動補償分を含む目標値(Par+ΔPr)になるように制御される。
【0037】
従って、電源系統11側の系統事故に起因して回転形周波数変換装置13の回転機の回転数が変動し、電源系統11から回転形周波数変換装置13の同期電動機に供給される有効電力が変動したとしても有効電力変動補償部34により、回転形周波数変換装置13から負荷系統12に供給される有効電力変動が調整されるので、回転数の変動が抑制され負荷系統12の電圧変動を抑制できる。
【0038】
図4は、本発明の第2実施形態に係る周波数変換システムの制御装置の動作の一例を示すグラフであり、図4(a)は負荷系統12の負荷変動による負荷系統12の電圧変動を示すグラフ、図4(b)は電源系統11側の事故による負荷系統12の電圧変動を示すグラフである。図4(a)では誘導負荷である誘導電動機15を起動した場合を示しており、図4(b)では電源系統11の電圧が事故により一時的に大きく低下し短時間のうちに回復した場合を示している。
【0039】
図4(a)において、実線の曲線D1は、負荷系統12の負荷変動による負荷系統12の電圧変動に対して、無効電力変動補償部23及び有効電力変動補償部34による電圧変動抑制制御を行った場合の負荷系統12の電圧であり、点線の曲線D2は無効電力変動補償部23及び有効電力変動補償部34による電圧変動抑制制御を行わなかった場合の負荷系統12の電圧である。
【0040】
電圧変動抑制制御を行わなかった場合には、点線の曲線D2に示すように、図2(a)に示した第1実施形態の場合の点線の曲線C2と同様である。一方、電圧変動抑制制御を行った場合にも、実線の曲線D1に示すように、図2(a)に示した第1実施形態の場合の実線の曲線C1とほぼ同様である。負荷系統12の負荷変動による電圧変動の抑制は、図2(a)に示した第1実施形態の場合とほぼ同様であり、この場合には、負荷系統12の有効電力変動を抑制したとしても負荷系統12の電圧変動抑制に対しては効果は限定的であることが分かる。
【0041】
図4(b)において、実線の曲線D11は、電源系統11側の事故による負荷系統12の電圧変動に対して、無効電力変動補償部23及び有効電力変動補償部34による電圧変動抑制制御を行った場合の負荷系統12の電圧、点線の曲線D12は無効電力変動補償部23及び有効電力変動補償部34による電圧変動抑制制御を行わなかった場合の負荷系統12の電圧である。
【0042】
電圧変動抑制制御を行わなかった場合には、点線の曲線D12に示すように、図2(b)に示した第1実施形態の場合の点線の曲線C12と同様である。一方、電圧変動抑制制御を行った場合には、実線の曲線D11に示すように、系統事故が発生した時点ta以降の電圧変動は、電圧変動抑制制御を行わなかった場合の点線の曲線D12に比較し、電圧の変動幅が小さく、電圧変動は早期に収束していることが分かる。また、図2(b)に示した第1実施形態の実線C11と比較しても電圧変動の振幅が小さく早期に収束していることが分かる。
【0043】
本発明の第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加え、回転形周波数変換装置13から負荷系統12に供給される有効電力変動を調整するための有効電力変動補償部34を設けたので、負荷系統12の電圧変動が無効電力変動及び有効電力変動のいずれの電圧変動であっても、負荷系統12の電圧変動を抑制でき電圧変動を早く収束できる。特に、電源系統11側の事故による負荷系統12の電圧変動に対して、電圧変動を抑制でき電圧変動を早期に収束できる
以上の説明では、回転形周波数変換装置13及び静止形周波数変換装置14はそれぞれ1台(1系列)の場合について説明したが、回転形周波数変換装置13または静止形周波数変換装置14を複数台並列運転する場合であっても適用できる。
【0044】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
11…電源系統、12…負荷系統、13…回転形周波数変換装置、14…静止形周波数変換装置、15…誘導電動機、16…抵抗負荷、17…同期電動機、18…同期発電機、19…コンバータ、20…インバータ、21…制御装置、22…電力供給制御部、23…無効電力変動補償部、24…交流電圧偏差演算部、
25…静止型FCコンバータ制御部、26…第1有効電力制御部、27…第1無効電力制御部、28…直流電圧偏差演算部、29…静止型FCインバータ制御部、30…第2有効電力制御部、31…第2無効電力制御部、32…第1有効電力検出部、33…無効電力検出部、34…有効電力変動補償部、35…第2有効電力検出部、36…電圧検出器、37…直流電圧検出器
図1
図2
図3
図4