【実施例】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0019】
[投影装置の構成]
図1は、本実施例に係る投影装置1の構成を示す。
図1に示すように、投影装置1は、画像信号入力部2と、映像処理部3と、フレームメモリ4と、ROM5と、RAM6と、レーザドライバ7と、MEMSドライバ8と、MEMSミラー95を有するレーザ光源部9と、マイクロレンズアレイ13と、フィールドレンズ14と、タイミングコントローラ21と、不揮発性メモリ23と、を備える。投影装置1は、例えばヘッドアップディスプレイに用いられ、コンバイナ等の光学素子に表示像を構成する光を出射する。そして、本実施例に係る投影装置1は、レーザ素子の立ち上がり遅延による表示画像の画質低下を好適に低減する。
【0020】
画像信号入力部2は、外部から入力される画像信号「Si」を受信して映像処理部3に出力する。
【0021】
映像処理部3は、画像信号入力部2から入力された画像信号Siを内部のフレームメモリに書き込み、MEMSミラー95の駆動タイミングに応じて随時読み出し、赤(R)、緑(G)、青(B)の色ごとに各画素の画素値に対応する駆動信号を順次レーザドライバ7に送信する。また、映像処理部3は、後述するレーザ素子を発光させない低輝度の画素(「非発光画素」とも呼ぶ。)に続いてレーザ素子を発光させる画素(「発光画素」とも呼ぶ。)が存在する場合に、当該非発光画素に対応するタイミングでレーザ素子が瞬間的に発光しない程度の電圧(「補償電圧Vm」とも呼ぶ。)をレーザ素子に印加させる駆動信号をレーザドライバ7に送信する。これにより、映像処理部3は、発光画素に対応する電圧がレーザ素子に印加された際のレーザ素子の応答時間を短縮する。従って、映像処理部3は、入力される画像信号Siに応じてレーザ素子に出力する駆動信号を決定する際に、画素毎に補償電圧Vmを印加させるかを判定する。映像処理部3は、本発明における「駆動信号生成手段」及び本発明におけるプログラムを実行するコンピュータの一例である。また、補償電圧Vmをレーザ素子に印加させる駆動信号は、本発明における「補償信号」の一例である。
【0022】
タイミングコントローラ21は、映像処理部3のフレームメモリからの画像データの読み出しタイミングを制御する。また、タイミングコントローラ21は、MEMSミラー95から出力される走査位置情報「Sc」に基づいてMEMSドライバ8の動作タイミングも制御する。
【0023】
ROM5は、映像処理部3が動作するための制御プログラムやデータなどを記憶している。RAM6には、映像処理部3が動作する際のワークメモリとして、各種データが逐次読み書きされる。
【0024】
レーザドライバ7は、後述するレーザ光源部9に設けられるレーザダイオードを駆動する信号を生成するブロックである。レーザドライバ7は、赤色レーザ駆動回路71と、青色レーザ駆動回路72と、緑色レーザ駆動回路73と、を備える。
【0025】
赤色レーザ駆動回路71は、映像処理部3が出力する駆動信号に基づき、赤色レーザ素子LD1を駆動する。青色レーザ駆動回路72は、映像処理部3が出力する駆動信号に基づき、青色レーザ素子LD2を駆動する。緑色レーザ駆動回路73は、映像処理部3が出力する信号に基づき、緑色レーザ素子LD3を駆動する。以後では、赤色レーザ素子LD1、青色レーザ素子LD2、緑色レーザ素子LD3を特に区別しない場合、これらを総称して「レーザ素子LD」とも呼ぶ。
【0026】
MEMSドライバ8は、タイミングコントローラ21が出力する信号に基づきMEMSミラー95を制御する。MEMSドライバ8は、サーボ回路と、ドライバ回路と、を備える。サーボ回路は、タイミングコントローラ21からの信号に基づき、MEMSミラー95の動作を制御する。ドライバ回路は、サーボ回路が出力するMEMSミラー95の制御信号を所定レベルに増幅して出力する。
【0027】
レーザ光源部9は、レーザドライバ7から出力される駆動信号に基づいて、レーザ光を出射する。具体的には、レーザ光源部9は、赤色レーザ素子LD1と、青色レーザ素子LD2と、緑色レーザ素子LD3と、コリメータレンズ91a〜91cと、反射ミラー92a〜92cと、を備える。
【0028】
赤色レーザ素子LD1は赤色のレーザ光を出射し、青色レーザ素子LD2は青色のレーザ光を出射し、緑色レーザ素子LD3は緑色のレーザ光を出射する。コリメータレンズ91a〜91cは、それぞれ、赤色、青色及び緑色のレーザ光を平行光にして、反射ミラー92a〜92cに出射する。反射ミラー92bは、青色のレーザ光を反射する。反射ミラー92cは、青色のレーザ光を透過させ、緑色のレーザ光を反射する。反射ミラー92aは、赤色のレーザ光の一部を反射し、残りの部分を透過させる。また、反射ミラー92aは、青色及び緑色のレーザ光の一部を透過し、残りの部分を反射する。こうして反射ミラー92aを透過した赤色のレーザ光及び反射ミラー92aで反射された青色及び緑色のレーザ光は、MEMSミラー95に入射される。
【0029】
レーザ光源部9からレーザ光が射出される位置には、マイクロレンズアレイ13と、フィールドレンズ14とが設けられている。MEMSミラー95は、反射ミラー92aから入射されたレーザ光をEPE(Exit Pupil Expander)の一例であるマイクロレンズアレイ13に向けて反射する。MEMSミラー95は、基本的には、画像信号入力部2に入力された画像信号Siに基づく画像を表示するために、MEMSドライバ8の制御によりマイクロレンズアレイ13上を走査するように移動し、その際の走査位置情報(例えばミラーの角度などの情報)を走査位置情報Scとしてタイミングコントローラ21へ出力する。MEMSミラー95は、本発明における「走査手段」の一例である。
【0030】
マイクロレンズアレイ13は、複数のマイクロレンズが配列されており、MEMSミラー95で反射されたレーザ光が入射する。フィールドレンズ14は、マイクロレンズアレイ13の放射面に形成された画像を拡大し、図示しない投影面に投影する。例えば、投影装置1がヘッドアップディスプレイの光源として用いられる場合、フィールドレンズ14はコンバイナ等に表示像を構成する光を出射する。マイクロレンズアレイ13は、本発明における「投影領域」の一例である。
【0031】
不揮発性メモリ23は、補償電圧決定テーブル24を記憶する。補償電圧決定テーブル24は、レーザ素子LDの応答時間の違いに起因する色ズレを抑制するためにレーザ素子LDに印加すべき補償電圧Vmを決定するためのテーブルである。補償電圧決定テーブル24は、赤色レーザ素子LD1、青色レーザ素子LD2及び緑色レーザ素子LD3のそれぞれに対して用意されており、赤(R)、緑(G)、青(B)の各画素の画素値に対して印加すべき補償電圧Vmを規定している。
【0032】
[レーザ素子の応答特性]
次に、各レーザ素子LDの応答特性について説明する。
図2は、各レーザ素子LDに印加される電圧(「LD印加電圧」とも呼ぶ。)と各レーザ素子LDの応答時間との関係をグラフにより示した図である。
【0033】
図2に示すように、赤(R)、緑(G)、青(B)は、それぞれLD印加電圧が低いほど応答時間が長くなり、赤、緑、青のそれぞれでLD印加電圧と応答時間との関係が異なる。例えば、LD印加電圧が比較的高い場合においては、緑に相当する緑色レーザ素子LD3の応答時間が最も短くなり、青に相当する青色レーザ素子LD2の応答時間が最も長くなる。一方、LD印加電圧が比較的低い場合においては、これらの応答時間の差異が顕著となり、赤に相当する赤色レーザ素子LD1の応答時間が最も短く、青に相当する青色レーザ素子LD2の応答時間が最も長くなる。従って、補償電圧Vmを印加しない例においては、このような各レーザ素子LDの応答特性によって色ずれ等が生じてしまう。
【0034】
ここで、補償電圧Vmを印加しない場合において生じる色ずれ等について
図3及び
図4を参照して具体的に説明する。
【0035】
図3(A)は、水平走査が行われる場合の一つの画素において白を100%(即ち最大出力)の輝度により出力する際のLD印加電圧の波形を示す。また、
図3(B)は、
図3(A)のLD印加電圧が与えられたときに緑色レーザ素子LD3が出力する緑、青色レーザ素子LD2が出力する青、及び赤色レーザ素子LD1が出力する赤のそれぞれの実際の出力レベルの波形を示し、
図3(C)は、
図3(B)に示すレーザ素子LDの出力に基づき表示される画素列を概略的に示した図である。
【0036】
図3(A)に示すように、この場合、映像処理部3は、走査する画像信号Siの画素の各画素値を参照し、輝度100%の白を出力する時刻「t1」から時刻「t2」までの区間において、各レーザ素子LDに対して目標の輝度に応じた駆動信号を供給する。なお、時刻t1から時刻t2までの区間の直前の画像信号Siの画素は、赤、青、緑の各画素値が0の非発光画素となっているため、各レーザ素子LDは時刻t1の時点では非発光状態となっている。
【0037】
この場合、各レーザ素子LDは、
図2に示す応答特性を有することから、
図3(B)に示すように、各緑、青、赤の出力レベルは、時刻t1以後に徐々に大きくなり、時刻t1より遅れて本来の出力レベルに達する。この例では、LD印加電圧が高いため、緑に相当する緑色レーザ素子LD3の応答時間が最も短くなり、青に相当する青色レーザ素子LD2の応答時間が最も長くなっている。従って、
図3(C)に示すように、時刻t1から所定期間では緑色レーザ素子LD3のみが発光することから、当該所定期間では緑光のみが照射される。その後、走査領域には、赤色レーザ素子LD1の出力レベルの上昇により緑と赤の合成光(黄色の光)が照射され、その後に緑、赤、青が合成された白色光が照射される。このように、
図3の例においては、各レーザ素子LDの応答時間の違いにより色ずれが生じている。
【0038】
図4(A)は、水平走査が行われる場合の一つの画素において白を20%の輝度により出力する際のLD印加電圧の波形を示す。また、
図4(B)は、
図4(A)のLD印加電圧が与えられたときに緑色レーザ素子LD3が出力する緑、青色レーザ素子LD2が出力する青、及び赤色レーザ素子LD1が出力する赤の実際の出力レベルの波形を示し、
図4(C)は、
図4(B)に示すレーザ素子LDの出力に基づき表示される画素列を概略的に示した図である。
【0039】
図4(A)に示すように、この場合、映像処理部3は、走査する画像信号Siの画素の各画素値を参照し、輝度20%の白を出力する時刻「t4」から時刻「t5」までの区間において、各レーザ素子LDに対して目標の輝度に応じた駆動信号を供給する。なお、時刻t4から時刻t5までの区間の直前及び直後の画像信号Siの画素は、赤、青、緑の各画素値が0の非発光画素となっており、各レーザ素子LDは時刻t4の時点では非発光状態となっている。
【0040】
この場合、各レーザ素子LDは、LD印加電圧が比較的低いため、
図3の例よりも各レーザ素子LDの応答時間が長くなり、赤に相当する赤色レーザ素子LD1の応答時間が最も短く、青に相当する青色レーザ素子LD2の応答時間が最も長くなる。ここで、
図4(B)の例では、青色レーザ素子LD2及び緑色レーザ素子LD3の応答時間は、LD印加電圧が印加される時刻t4から時刻t5までの期間よりも長くなるため、時刻t4から時刻t5の期間では青色レーザ素子LD2及び緑色レーザ素子LD3は発光しない。よって、
図4(B)の例では、時刻t4から所定時間経過後に赤色レーザ素子LD1のみが所定の出力レベルにより発光している。よって、この場合、
図4(C)に示すように、時刻t4から時刻t5までの期間において走査される領域のうち、赤色レーザ素子LD1が発光する期間に相当する領域のみが赤のレーザ光により照射される。
【0041】
以上を勘案し、本実施例では、映像処理部3は、補償電圧Vmを印加することで、発光画素に対応する電圧がレーザ素子LDに印加された際のレーザ素子LDの応答時間を短縮し、
図3及び
図4に示すような色ずれを好適に抑制する。
【0042】
[補償電圧の印加]
概略的には、映像処理部3は、レーザ素子LDを発光させない低輝度の非発光画素に続いて発光画素が存在する場合に、補償電圧決定テーブル24を参照し、当該非発光画素に対応するタイミングで補償電圧Vmを印加する。これにより、映像処理部3は、発光画素に対応する電圧がレーザ素子LDに印加された際のレーザ素子LDの応答時間を短縮する。以後では、補償電圧Vmを印加する非発光画素に続く発光画素を「補償対象画素」と呼ぶ。
【0043】
(1)
補償電圧印加テーブル
まず、補償電圧決定テーブル24について説明する。
図5は、補償電圧決定テーブル24において記憶される赤、青、緑の補償対象画素の各画素値と補償電圧Vmとの対応関係をグラフにより示した図である。
【0044】
図5に示すように、各補償電圧Vmは、レーザ素子LDごとに応答特性が異なることから赤、青、緑の色ごとにそれぞれ設定されている。また、同一のレーザ素子LDであってもLD印加電圧によって応答時間が異なることから、補償対象画素の画素値に応じて補償電圧Vmが定められている。
【0045】
補償電圧決定テーブル24に記録される補償電圧Vmの適正値は、典型的には、実機の白ストライプ画像を観察し、非発光画素でレーザ素子LDが発光せず、かつ、補償対象画素のエッジに色ずれが極力生じないLD印加電圧に決定される。この場合、白ストライプの輝度レベルを変更して画素値に応じた補償電圧Vmの適正値を探す。上述の実験により得られた赤、青、緑の画素値ごとの補償電圧Vmの適正値を補償電圧決定テーブル24として不揮発性メモリ23に記憶する。映像処理部3は、このように生成された補償電圧決定テーブル24を不揮発性メモリ23から参照することで、非発光画素でレーザ素子LDが発光せず、かつ、補償対象画素のエッジに色ずれが極力生じない補償電圧Vmを決定することができる。
【0046】
(2)
処理フロー
図6は、水平1ライン分の走査に対応する補償電圧Vmの印加処理の手順を示すフローチャートの一例である。映像処理部3は、
図6のフローチャートを、1ライン分の水平走査を行うごとに、赤色レーザ素子LD1、青色レーザ素子LD2、緑色レーザ素子LD3のそれぞれを対象にして繰り返し実行する。
【0047】
まず、映像処理部3は、タイミングコントローラ21から水平同期信号を受信し、後の処理で用いる番号「i」及びカウンタ「n」をそれぞれ「0」に設定する(ステップS101)。ここで、番号iは、走査対象の水平ライン内で走査される順番を示す画素の番号を示し、カウンタnは、非発光画素の連続数を数えるためのカウンタである。
【0048】
次に、映像処理部3は、番号iを1だけ加算する(ステップS102)。そして、映像処理部3は、画像信号入力部2から入力される画像信号Siに基づき、対象の水平ラインのi番目の画素値を取り込む(ステップS103)。
【0049】
そして、映像処理部3は、ステップS103で取り込んだi番目の画素値が閾値「A」以上であるか否か判定する(ステップS104)。ここで、閾値Aは、対象のレーザ素子LDを発光させるべきか否か(即ち非発光画素であるか否か)を判定する閾値であり、予め不揮発性メモリ23等に記憶されている。
【0050】
そして、映像処理部3は、対象の水平ラインのi番目の画素値が閾値A以上である場合(ステップS104;Yes)、i番目の画素を表示するために対象のレーザ素子LDを発光させる必要があると判断し、ステップS105へ処理を進める。一方、映像処理部3は、対象の水平ラインのi番目の画素値が閾値A未満である場合(ステップS104;No)、i番目の画素を表示するために対象のレーザ素子LDを発光させる必要がないと判断し、カウンタnを1だけ加算する(ステップS109)。
【0051】
次に、映像処理部3は、対象の水平ラインのi番目の画素値が閾値A以上である場合に、カウンタnが閾値「B」以上であるか否か判定する(ステップS105)。ここで、閾値Bは、i番目の画素が補償対象画素であるか否かを判定する閾値であり、予め不揮発性メモリ23等に記憶されている。
【0052】
そして、カウンタnが閾値B以上である場合(ステップS105;Yes)、映像処理部3は、i番目の画素の直前のB個以上の連続する画素が非発光画素であり、i番目の画素でのレーザ素子LDの発光時に応答遅れが発生すると判断する。よって、この場合、映像処理部3は、i番目の画素の出力に補償電圧Vmを印加するための駆動信号をレーザドライバ7に送信する(ステップS106)。この場合、映像処理部3は、補償電圧決定テーブル24を参照し、i番目の画素(即ち補償対象画素)の画素値から適切な補償電圧Vmを決定する。ステップS106により、直前のB個以上の画素が非発光画素となる画素での各レーザ素子LDの応答遅れに起因した色ずれ等を好適に抑制することができる。
【0053】
閾値Bは、少なくとも2以上に設定され、具体的には実験等に基づく適合値に設定される。なお、閾値Bを1とした場合には、発光画素、非発光画素、発光画素がこの順で連続する場合に、真中の非発光画素に補償電圧Vmを印加することになり、前の発光画素に連続してレーザ素子LDが非発光画素において発光してしまうため好ましくない。閾値Bは、本発明における「所定数」の一例である。
【0054】
一方、カウンタnが閾値B未満である場合(ステップS105;No)、映像処理部3は、i番目の画素の直前の画素にはB個以上の非発光画素が続いておらず、i番目の画素でのレーザ素子LDの発光時に応答遅れが発生しないと判断する。よって、この場合、映像処理部3は、ステップS106の補償電圧Vmの印加を行うことなくステップS107へ処理を進める。なお、この場合、映像処理部3は、i−1番目の画素が発光画素である場合には、当該画素の画素値に応じたLD印加電圧をレーザ素子LDに印加するための駆動信号をレーザドライバ7に送信する。
【0055】
次に、映像処理部3は、i番目の画素が発光画素であることから、カウンタnを0に初期化する(ステップS107)。そして、映像処理部3は、走査対象の水平1ライン分の走査が完了したか否か判定し(ステップS108)、走査対象の水平1ライン分の走査が完了した場合(ステップS108;Yes)、フローチャートの処理を終了する。この場合、映像処理部3は、次の走査対象となる水平1ラインを対象に
図6のフローチャートを実行する。一方、映像処理部3は、走査対象の水平1ライン分の走査が完了していない場合(ステップS108;No)、ステップS102へ処理を戻し、番号iを1だけ加算する。そして、映像処理部3は、1だけ加算した番号iの画素を対象にステップS103〜S109を実行する。
【0056】
なお、ステップS101で水平同期信号を受信した直後は、各レーザ素子LDは、非発光状態となっている。従って、映像処理部3は、少なくとも「i=0」に相当する画素が発光画素である場合には、ステップS105での判定結果によらず当該画素を補償対象画素とみなし、隣接する画像表示領域外において対象のレーザ素子LDに補償電圧Vmを印加させる。
【0057】
(3)
具体例
次に、補償電圧Vmを印加する場合の
図3及び
図4に相当する具体例について、
図7及び
図8を参照して説明する。
【0058】
図7(A)は、ある水平走査の一つの区間において白を100%の輝度により出力する際のLD印加電圧の波形を示す。ここでは、時刻「t0」から時刻「t1」までが水平1ラインにおいて「X−1」番目の画素に対応するLD印加電圧を印加する期間を示し、時刻「t1」から時刻「t2」までが水平1ラインにおいて「X」番目の画素に対応するLD印加電圧を印加する期間を示す。また、
図7(B)は、
図7(A)のLD印加電圧が与えられたときに緑色レーザ素子LD3が出力する緑、青色レーザ素子LD2が出力する青、及び赤色レーザ素子LD1が出力する赤の各輝度(即ち出力レベル)の波形を示し、
図7(C)は、
図7(B)に示すレーザ素子LDの出力に基づき表示される画素列を概略的に示した図である。
【0059】
図7(A)に示すように、この場合、映像処理部3は、
図6のフローチャートに基づき、「i=X」のときに、i番目の画素値が閾値A以上となり(ステップS104参照)、かつ、カウンタnが閾値B以上(ステップS105参照)となることから、X−1番目の画素の出力として各レーザ素子LDに補償電圧Vmを印加している(ステップS106参照)。映像処理部3は、これらの補償電圧Vmを、レーザ素子LDごとに設けられた補償電圧決定テーブル24を参照し、X番目の画素の各色に対する画素値(ここでは、それぞれ輝度100%)に基づきそれぞれ決定する。なお、緑色レーザ素子LD3については、
図5に相当する補償電圧決定テーブル24を参照した場合、100%の輝度に相当する画素値のときの補償電圧Vmが略0となるため、X−1番目の画素の出力には実質的に電圧が印加されていない。
【0060】
そして、
図7(A)に示す波形に従い各レーザ素子LDにLD印加電圧を印加した結果、
図7(B)に示すように、緑、青、赤の出力が略同一波形となっており、時刻t1から時刻t2の期間において、緑、青、赤のいずれもほぼ所望の出力が得られている。なお、
図3の例において立ち上がり遅延が生じていた青及び赤についても、補償電圧Vmが時刻t0から時刻t1までの期間で印加されたことにより、時刻t1以後ほぼ遅延なく出力レベルが上昇している。その結果、
図7(C)に示すように、X番目の画素は、マイクロレンズアレイ13上において100%の輝度を有する白となっている。
【0061】
図8(A)は、ある水平走査の一つの区間において白を20%の輝度により出力する際のLD印加電圧の波形を示す。ここでは、時刻「t3」から時刻「t4」までが水平1ラインにおいて「Y−1」番目の画素に対応するLD印加電圧を印加する期間を示し、時刻「t4」から時刻「t5」までが水平1ラインにおいて「Y」番目の画素に対応するLD印加電圧を印加する期間を示す。また、
図8(B)は、
図8(A)のLD印加電圧が与えられたときに緑色レーザ素子LD3が出力する緑、青色レーザ素子LD2が出力する青、及び赤色レーザ素子LD1が出力する赤の実際の出力レベルの波形を示し、
図8(C)は、
図8(B)に示すレーザ素子LDの出力に基づき表示される画素列を概略的に示した図である。
【0062】
図8(A)に示すように、この場合、映像処理部3は、
図6のフローチャートに基づき、「i=Y」のときに、i番目の画素値が閾値A以上となり(ステップS104参照)、かつ、カウンタnが閾値B以上(ステップS105参照)となることから、Y−1番目の画素の出力としてレーザ素子LDに補償電圧Vmを印加している(ステップS106参照)。映像処理部3は、各レーザ素子LDに対応する補償電圧Vmを、レーザ素子LDごとに設けられた補償電圧決定テーブル24を参照し、Y番目の画素の各色に対応する画素値(ここでは、それぞれ輝度20%)に基づきそれぞれ決定する。
【0063】
そして、
図8(A)に示す波形に従い各レーザ素子LDにLD印加電圧を印加した結果、
図8(B)に示すように、緑、青、赤の出力が略同一波形となっており、時刻t4から時刻t5の期間において、緑、青、赤のいずれもほぼ所望の出力が得られている。なお、
図4の例において時刻t4から時刻t5までの期間に反応がなかった緑及び青についても、補償電圧Vmが時刻t3から時刻t4までの期間で印加されたことにより、時刻t4以後ほぼ遅延なく出力レベルが上昇している。その結果、
図8(C)に示すように、Y番目の画素は、マイクロレンズアレイ13上において20%の輝度を有する白となっている。
【0064】
以上説明したように、本実施例に係る投影装置1は、画像信号Siの画素値に基づいて、光ビームを射出するレーザ素子LDを駆動するための駆動信号を生成する映像処理部3と、光ビームを投影領域内に走査するMEMSミラー95とを備える。そして、映像処理部3は、画素値に基づきレーザ素子LDを発光させない非発光画素に続き、画素値に基づきレーザ素子LDを発光させる発光画素に対応する駆動信号を生成する場合に、非発光画素に対応する駆動信号として、発光画素の画素値に応じた補償電圧Vmをレーザ素子LDに印加するための駆動信号を生成する。これにより、投影装置1は、各レーザ素子LDの発光立ち上がり遅延を減じ、画像の色ずれを好適に低減させることができる。
【0065】
[変形例]
以下、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0066】
(変形例1)
投影装置1は、周辺温度によっても画素値と最適な補償電圧Vmとの関係が変わることを勘案し、各温度に対応した補償電圧決定テーブル24を不揮発性メモリ23に記憶してもよい。
【0067】
図9は、本変形例に係る投影装置1の構成を示す。
図9の例では、レーザ光源部9内のレーザ素子LDの近傍に温度センサ25が設けられている。また、不揮発性メモリ23には、温度ごとに対応付けられた複数の補償電圧決定テーブル24が記憶されている。そして、映像処理部3は、温度センサ25から供給される検出信号が示す温度に最も近い温度と対応付けられた補償電圧決定テーブル24を不揮発性メモリ23から参照することで、
図6のフローチャートのステップS106において印加すべき補償電圧Vmを決定する。この態様によれば、投影装置1は、各レーザ素子LDの温度に起因した応答特性を考慮し、色ずれ等が低減されるような補償電圧Vmを的確に設定することができる。
【0068】
(変形例2)
図7及び
図8の例では、補償電圧Vmの印加時間は、1画素の描画に対応する時間に設定されていた。しかし、本発明が適用可能な補償電圧Vmの印加時間の設定は、これに限定されない。例えば、補償電圧Vmの印加時間は、2画素の描画に対応する時間であってもよく、0.5画素に対応する時間であってもよい。後者の場合、例えば、投影装置1の内部クロックは、描画クロックの2倍に設定される。
【0069】
(変形例3)
映像処理部3の処理の一部を、映像処理部3と電気的に接続されたMCU(Micro Controller Unit)が実行してもよい。この場合、例えば、MCUは、
図6のフローチャートの処理を映像処理部3の代わりに実行する。そして、ステップS106では、MCUは、補償電圧決定テーブル24を参照して補償電圧Vmを決定した場合に、当該補償電圧Vmを出力すべき旨の信号を映像処理部3又はレーザドライバ7へ送信する。この態様であっても、投影装置1は、好適に補償電圧Vmをレーザ素子LDに印加してレーザ素子LDの応答遅れに起因した色ずれ等を抑制することができる。本変形例では、MCUは、本発明における「駆動信号生成手段」及び本発明におけるプログラムを実行するコンピュータの一例である。