特許第6809276号(P6809276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6809276ローラーの表面形状測定装置および測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809276
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ローラーの表面形状測定装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20201221BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   G01B11/24 A
   G01N21/892 C
   G01B11/24 K
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-27516(P2017-27516)
(22)【出願日】2017年2月17日
(65)【公開番号】特開2018-132464(P2018-132464A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 忠
【審査官】 仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−111674(JP,A)
【文献】 特開平6−300713(JP,A)
【文献】 特開2014−167429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01N 21/84−21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ローラー表面の3次元形状を測定するローラー表面形状測定装置であって、
前記被測定ローラーを回転可能に支持するローラー支持機構と、
スリット光を前記被測定ローラー表面に照射しその反射光を受光して、外部からのトリガー信号に応じて間欠的に被測定ローラー表面の2次元形状を測定する2次元形状測定手段と、
表面に粘着性のゴムが被覆され回転可能に支持された粘着ローラーと、
前記2次元形状測定手段を支持し、かつ前記粘着ローラーを前記被測定ローラー表面に接触させつつ、前記粘着ローラーと前記被測定ローラーとの接触点の法線に平行な軸を中心として前記粘着ローラーの回転軸が回転可能であるように支持する支持手段と、
前記支持手段と連結され、前記被測定ローラーの回転軸方向と平行に移動する移動支持機構と、
前記2次元形状測定手段のスリット光が前記被測定ローラー表面を略円周方向に走査した長さを測定し、一定の走査長さ毎に前記トリガー信号を出す測長手段と、を備えたローラー表面形状装置。
【請求項2】
前記測長手段が、前記粘着ローラーに取り付けられて粘着ローラーの回転角を検出するロータリーエンコーダーである、請求項1のローラー表面形状測定装置。
【請求項3】
前記粘着ローラーの外径が、粘着ローラーの軸方向端部から中央部に向かって漸減している、請求項1または2のローラー表面形状測定装置。
【請求項4】
前記粘着ローラーをその回転軸方向に移動可能に支持する粘着ローラー可動手段を備えた、請求項1〜3のいずれかのローラー表面形状測定装置。
【請求項5】
前記粘着ローラーを第1の粘着ローラーとし、
表面に粘着性のゴムが被覆され回転可能に支持された粘着ローラーであって、前記被測定ローラー表面に接触しつつ、被測定ローラーとの接触点の法線に平行な軸を中心として回転軸が回転可能であるように支持された1つまたは複数の第2の粘着ローラーをさらに備え、
前記第1の粘着ローラー、および前記1つまたは複数の第2の粘着ローラーは、それぞれが異なる回転軸をもつ、請求項1〜4のいずれかのローラー表面形状測定装置。
【請求項6】
前記第2の粘着ローラーの外径が、粘着ローラーの軸方向端部から中央部に向かって漸減している、請求項5のローラー表面形状測定装置。
【請求項7】
前記第2の粘着ローラーの少なくとも1本をその回転軸方向に移動可能に支持する第2の粘着ローラー可動手段を備えた、請求項5または6のローラー表面形状測定装置。
【請求項8】
被測定ローラーを回転させながら、スリット光を被測定ローラー表面に照射しその反射光を受光することで2次元形状を測定する2次元形状測定手段で2次元形状を測定しつつ、前記2次元形状測定手段を前記被測定ローラーの回転軸方向と平行に移動させることで前記被測定ローラー表面の3次元形状を測定するローラー表面形状の測定方法であって、
前記2次元形状測定手段のスリット光が前記被測定ローラー表面上を移動する経路を、スリット光が略円周方向に走査する前に表面に粘着性のゴムを被覆した粘着ローラーで接触させつつ、被測定ローラーを回転させ、
前記2次元形状測定手段のスリット光が前記被測定ローラー表面を略円周方向に一定の長さ走査する毎に、2次元形状測定手段で、前記粘着ローラーに接触された後の被測定ローラー表面の2次元形状を間欠測定する、ローラー表面形状の測定方法。
【請求項9】
前記粘着ローラーの外径が、前記粘着ローラーの軸方向端部から中央部に向かって漸減している、請求項8のローラー表面形状の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラーの表面形状測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ローラー表面の3次元形状を測定する装置としては、例えば、特許文献1に記載されているように、被測定ローラーを回転させながら、非接触式の距離計を回転軸方向に移動させつつ連続的にその距離を測定する技術が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この技術で、例えば樹脂フィルムの製造装置や鋼板の製造装置などに用いられるような大型のローラーの表面にある微少な欠点を検知しようとすれば、被測定ローラーの周方向にも軸方向にも、検知しようとする欠点の大きさよりも小さなピッチで測定しなければならないため、ローラー表面全体を測定するのに膨大な時間を要するという問題があった。
【0003】
この問題を解決する技術として、回転円筒体であるタイヤの3次元形状測定装置であり、回転するタイヤにスリット光を照射しその反射光を撮像することにより、連続的に2次元形状を測定することでタイヤ表面の3次元形状を得る技術が提案されている(特許文献2)。この技術によれば照射光をスリット光としたことで2次元の測定が出来るため、大幅に測定時間を短縮することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−303702号公報
【特許文献1】特開平11−138654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2には次のような問題がある。まず、表面の付着異物をローラー表面の欠点であると誤って検出してしまうという問題があり、これを避けるために、高度にクリーンな環境下で測定を行う必要がある。さらに、欠点のローラー周方向の大きさを測定するにあたっては、測定位置情報を被測定ローラーの回転量から得る構成となっているために、被測定ローラーの外径が変わると検出される欠点の大きさが変わるうえ、被測定ローラーの外径によって周方向の測定分解能が変わってしまうことになる。よって、正確な欠点の大きさを得るためには、測定前にローラーの外径を測定しておく必要がある。それに加えて、外径変化のあるローラー、例えば、クラウンローラーやコンケーブローラー、テーパーローラーといったローラーを被測定ローラーとしたときに正確な欠点の大きさを得るためには、複雑な処理を行う必要があるため、コストや手間がかかるうえ、外径情報の入力作業を要することによる人為的な測定ミスが引き起こされてしまうという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、高度にクリーンな環境下でなくても付着異物による誤測定がなく、被測定ローラーの外径によらず常に一定の分解能でローラーの表面形状を測定することで、一定の検出精度で欠点を検出することが出来るローラー表面形状の測定装置および測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のローラー表面形状測定装置は、被測定ローラー表面の3次元形状を測定するローラー表面形状測定装置であって、
前記被測定ローラーを回転可能に支持するローラー支持機構と、
スリット光を前記被測定ローラー表面に照射しその反射光を受光して、外部からのトリガー信号に応じて間欠的に被測定ローラー表面の2次元形状を測定する2次元形状測定手段と、
表面に粘着性のゴムが被覆され回転可能に支持された粘着ローラーと、
前記2次元形状測定手段を支持し、かつ前記粘着ローラーを前記被測定ローラー表面に接触させつつ、前記粘着ローラーと前記被測定ローラーとの接触点の法線に平行な軸を中心として前記粘着ローラーの回転軸が回転可能であるように支持する支持手段と、
前記支持手段と連結され、前記被測定ローラーの回転軸方向と平行に移動する移動支持機構と、
前記2次元形状測定手段のスリット光が前記被測定ローラー表面を略円周方向に走査した長さを測定し、一定の走査長さ毎に前記トリガー信号を出す測長手段と、を備えている。
【0008】
本発明のローラー表面形状測定装置は、以下の1つまたは複数の特徴を備えていることが好ましい。
・前記測長手段が、前記粘着ローラーに取り付けられて粘着ローラーの回転角を検出するロータリーエンコーダーである。
・前記粘着ローラーの外径が、粘着ローラーの軸方向端部から中央部に向かって漸減している。
・前記粘着ローラーをその回転軸方向に移動可能に支持する粘着ローラー可動手段を備えている。
・前記粘着ローラーを第1の粘着ローラーとし、
表面に粘着性のゴムが被覆され回転可能に支持された粘着ローラーであって、前記被測定ローラー表面に接触しつつ、被測定ローラーとの接触点の法線に平行な軸を中心として回転軸が回転可能であるように支持された1つまたは複数の第2の粘着ローラーをさらに備え、
前記第1の粘着ローラー、および前記1つまたは複数の第2の粘着ローラーは、それぞれが異なる回転軸をもっている。
・前記第2の粘着ローラーの外径が、粘着ローラーの軸方向端部から中央部に向かって漸減している。
・前記第2の粘着ローラーの少なくとも1本をその回転軸方向に移動可能に支持する第2の粘着ローラー可動手段を備えている。
【0009】
上記課題を解決する本発明のローラー表面形状測定方法は、被測定ローラーを回転させながら、スリット光を被測定ローラー表面に照射しその反射光を受光することで2次元形状を測定する2次元形状測定手段で2次元形状を測定しつつ、前記2次元形状測定手段を前記被測定ローラーの回転軸方向と平行に移動させることで前記被測定ローラー表面の3次元形状を測定するローラー表面形状の測定方法であって、
前記2次元形状測定手段のスリット光が前記被測定ローラー表面上を移動する経路を、スリット光が略円周方向に走査する前に表面に粘着性のゴムを被覆した粘着ローラーで接触させつつ、被測定ローラーを回転させ、
前記2次元形状測定手段のスリット光が前記被測定ローラー表面を略円周方向に一定の長さ走査する毎に、2次元形状測定手段で、前記粘着ローラーに接触された後の被測定ローラー表面の2次元形状を間欠測定する。
【0010】
本発明のローラー表面形状測定方法は、前記粘着ローラーの外径が、前記粘着ローラーの軸方向端部から中央部に向かって漸減していることが好ましい。
【0011】
本発明における各用語は以下のように定義する。
【0012】
「粘着性のゴム」とは、表面に粘着力を有するゴムをいい、ゴムそのものに粘着性を有するもののほか、ゴムに粘着剤を含有させることで粘着力を発現させたものも含む。
【0013】
「スリット光」とは、光の進行方向に垂直な平面上に投光される光の形状における長辺が、その長辺と垂直な方向の長さに対して10倍以上の長さである光をいう。
【0014】
「トリガー信号」とは電気的な信号であって、その信号の電圧または電流の値が、任意の閾値を超えるまたは下回ることを合図として、信号の受信対象に何らかの動作の開始、または終了を指令するものをいう。
【0015】
「2次元形状測定手段」とは、任意の幅において複数の測定点を持ち、各測定点における被測定対象と当該2次元形状測定手段との距離または距離の変化を測定することで測定対象の任意幅内における表面形状を測定する手段をいう。
【0016】
「粘着ローラーと被測定ローラーとの接触点の法線に平行な軸を中心として粘着ローラーの回転軸が回転可能である」とは、機構上の回転軸と当該法線が一致するものに限らず、機構上の回転軸から離れた位置に粘着ローラーの回転軸および前記法線があっても、粘着ローラーの回転軸が前記法線に平行な軸を中心に回転可能であればよい。例えば、図6には被測定ローラーと粘着ローラーの側面図およびこれらの接触点の法線方向の投影図を示すが、ここに示されるように粘着ローラーの回転軸Cは機構上の回転軸である粘着ローラー支持手段8の回転軸Sを中心に回転し、回転軸Sは法線Nと平行となっている。
【0017】
「2次元形状測定手段のスリット光が被測定ローラー表面を略円周方向に走査した長さ」とは、実際にスリット光が被測定ローラー表面上を走査した方向の長さをいい、例えば、被測定ローラーの回転に連動して移動支持機構及び支持手段を介して2次元形状測定手段を被測定ローラーの回転軸と平行な方向に移動させる場合では、スリット光は被測定ローラー表面上を厳密な円周方向に対して斜めに走査することになるため、この斜めに走査した長さをいい、これは厳密な円周方向の長さよりも長くなる。
【0018】
「粘着ローラーの外径が、粘着ローラーの軸方向端部から中央部に向かって漸減している」とは、粘着ローラーの外径が厳密な軸方向中央から端に向かって大きくなっているものに限らず、外径の小さい部分の両側に連続的に外径が大きくなる部分を持っている形状を含んでいればよい。例えば、一度端部に向かって外径を大きくした後、さらに端部に向かって小さくするような形状や外径の最も小さい部分が厳密な軸方向中央ではない形状であっても同一の効果を奏するためこれを含む。
【0019】
「粘着ローラーを粘着ローラーの回転軸方向に移動可能に支持する」とは、図4に示すように粘着ローラー2の円筒状表面が粘着ローラー2の回転軸方向にスライド可能な機構によって支持されていることを指す。
【0020】
「異なる回転軸を持つ」とは、各々の回転軸が同一直線上にないことをいう。
【発明の効果】
【0021】
本発明のローラー表面形状の測定装置および測定方法によれば、高度にクリーンな環境下でなくても付着異物による誤測定がなく、被測定ローラーの外径によらず常に一定の分解能でローラーの表面形状を測定できるので、一定の検出精度で欠点を検出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のローラー表面形状測定装置の一実施形態を示す概略上面図である。
図2】本発明のローラー表面形状測定装置の別の実施形態を示す概略上面図である。
図3】本発明のローラー表面形状測定装置の、さらに別の実施形態を示す概略上面図である。
図4】本発明のローラー表面形状測定装置の、さらに別の実施形態を示す概略上面図である。
図5】本発明のローラー表面形状測定装置の、さらに別の実施形態を示す概略上面図である。
図6】本発明における粘着ローラーの動きを示す概略側面図および投影図である。
図7】本発明における2次元形状測定手段の測定結果の一例を示すグラフ(a)と、2次元形状測定手段の測定結果から得られる3次元表面形状測定結果の一例を示すグラフ(b)である。
図8】本発明における粘着ローラーの支持機構の一例を示す概略側面図および上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の最良の実施形態の例を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のローラー表面形状測定装置の概略正面図である。本発明が対象とする被測定ローラー1としては、およそあらゆるローラーに適用可能であるが、外径100mm以上1000mm以下、面長1m以上10m以下の比較的大型のローラーに好適に用いられる。例えば、製紙装置やプラスチックフィルムの製膜装置、金属帯の圧延装置、およびウェブ帯のコーティングや蒸着と言った後次加工設備などに用いられるローラーや、印刷装置や複写装置などに用いられるローラーが挙げられる。特に本発明を用いれば大型のローラーであっても微細な表面欠点を検出可能であるためローラー表面の微細な凹凸が製品の欠陥に直結する用途、例えば、熱可塑性樹脂を2本のローラーで挟圧冷却しプラスチックフィルムを得るプラスチックフィルムの製膜装置に用いられるニップローラーなどの微小な表面欠陥を好適に検出することが可能である。
【0024】
本発明において、被測定ローラー1はローラーの回転軸を中心として回転可能に支持するローラー支持機構4によって少なくとも2カ所を支持されている。ローラー支持機構4は、例えば、ベアリングの内輪に軸を嵌合して支持したものを2個並べて軸を支持し、それらベアリングの外輪上に被測定ローラー1を乗せて支持するものや、単に被測定ローラー1の軸にベアリングを嵌合してそのベアリングを支持するものを使用してもよいし、旋盤や研削盤といった既存の装置のチャック機構やセンター支持機構を使用してもよい。
【0025】
回転可能に支持された被測定ローラー1は図示しない回転駆動手段に連結され、回転駆動されていることが好ましい。回転駆動手段は、例えば、ACモーターやDCモーターといった一般的なモーターを用いることができ、必要に応じて変速機構を設けてもよい。回転駆動手段によって一定の速度で被測定ローラー1を回転させることによって、回転速度が速すぎることで、2次元形状測定手段3の測定可能速度を超えてしまい測定漏れが起きることを防ぐことが出来たり、回転に要する労力を削減出来る。ただし、例えば、被測定ローラー1を使用する装置上やその付近など、スペースが狭く大がかりな装置構成が適さない場所などでは、手動で被測定ローラー1を回転させて測定することも可能である。
【0026】
本発明における2次元形状測定手段3は、スリット光31を被測定ローラー1の回転軸に略平行になるように被測定ローラー1の表面に照射し、その反射光を観測し、被測定ローラー1の表面のスリット光照射域における2次元形状を測定するものである。スリット光31は各種光源を光学的にスリット形状としたものを適宜利用することが出来るが、半導体レーザー光であることが好ましく、その波長は400nm以上450nm以下であることが好ましい。上記波長の半導体レーザー光であれば、例えば、各種ローラーの被覆材として多く用いられるシリコーンゴムのような、透過性または半透過性の表面材を被覆した被測定ローラー1であっても安定した反射光を得ることが出来るため、精度良くその形状を測定することが出来る。
【0027】
観測する反射光は被測定ローラー1の表面材質およびプロファイルによる反射率によって、正反射光または散乱反射光を適宜選択する。例えば、鏡面のような反射率の高い表面に対しては正反射光を観測し、ゴム表面のようなマット面に対しては散乱反射光を観測することが好ましい。
【0028】
反射光を観測する手段としてはCMOSやCCDといった撮像素子を好ましく使用することが出来る。なお、観測する反射光は照射したスリット光31の全ての反射光でなくともよい。例えば、スリット光31の長辺方向端部では光学的に十分な反射光が得られない場合はスリット光31の端部を除く部分のみを観測してもよい。
【0029】
上記のような2次元形状測定手段は市販されており、それらはスリット光31の照射装置と観測装置が一体となっている場合が多いので調整、保守が容易なうえ、軽量でコンパクトであるため、本発明のローラー表面形状測定装置を可搬式として運用することが可能となり、製作コストも抑えることが出来るため好ましい。
【0030】
スリット光31の被測定ローラー1の表面上での照射サイズは検出しようとする欠点の大きさや被測定ローラーの大きさ、および反射光の観測手段の大きさなどによって適宜決定されるが、長手方向の長さが3mm以上300mm以下、短手方向の幅が10μm以上1mm以下であることが好ましい。長手方向の長さが3mm以上であると、大型のローラーを測定する場合でも、測定時間が短く済むので好ましい。長手方向の長さが300mm以下であると、精度良く測定することができるので好ましい。例えば、観測手段としてCCDやCMOSといった撮像素子を用いる場合、2次元測定手段3のスリット光31の長辺方向の測定分解能は、およそ、観測する反射光の幅を撮像素子の同方向における画素数で除した値となるので、観測する反射光の幅が300mm以下であれば、微小な欠点を観測するのに十分な分解能にすることができる。
【0031】
本発明のローラー表面形状測定装置は表面に粘着性のゴムを被覆し回転可能に支持された粘着ローラー2を備える。これにより粘着ローラー2によって被測定ローラー1の表面上の付着異物を2次元形状測定手段3のスリット光31が走査される前に、すなわち2次元形状の測定が行われる前に連続的に除去することが可能となり、測定前および測定中の落下塵や浮遊塵が付着することよる表面形状の誤測定、ひいては欠点の誤検知を防止することが出来る。
【0032】
粘着ローラー2は鋼やアルミニウム、プラスチックや繊維強化樹脂といった一般的な機械構造材料を芯金として用いることが出来る。芯金の周りには粘着ゴムを被覆し、必要に応じて研磨や各種表面処理を行う。粘着ゴムとしては、例えば、ニトリルゴムやブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムといったゴムおよびこれらのゴムに粘着剤や帯電防止剤といった添加剤を添加したものを適宜用いることが出来る。粘着ゴムのゴム硬度はHs10JISAからHs65JISA(JIS K 6301:1995)のものを好ましく用いることができる。ゴム硬度がHs10JISA以上であると、容易にローラー状に精度良く成型することができる。Hs65JISA以下であると、十分にゴムが変形することができるので、被測定ローラー1との接触が点接触に近くなることを避け、十分な接触面積を得られる。粘着ゴムの粘着力は特に制限されず、被測定ローラー1の表面上の付着異物を捕捉、保持可能な粘着力であればよい。
【0033】
上記2次元形状測定手段3と粘着ローラー2は支持手段5によって支持される。2次元形状測定手段3は被測定ローラー1の表面との距離および角度が簡易に調整出来るよう、調整手段を介して支持手段5に支持されていることが好ましい。調整手段は、例えば、市販の一軸ステージや多軸ステージを好ましく用いることができる。特に、スリット光と被測定ローラーの回転軸は平行に近いほど、高精度に測定が可能となるため、ゴニオステージなどの角度調整機構が設けられていることが好ましい。また、例えば、旋盤や研削機といった加工機を利用する場合、刃物台の調整機構を利用してもよい。
【0034】
粘着ローラー2は、粘着ローラー2と被測定ローラー1との接触点の法線Nに平行な軸Sを中心に粘着ローラー2の回転軸Cが回転可能であるように支持手段5の粘着ローラー支持手段8によって支持されている。このように粘着ローラー2を支持することにより、被測定ローラー1を回転させつつ、2次元形状測定手段3を被測定ローラー1の回転軸方向Dpに移動させたときに、粘着ローラーは自然に2次元形状測定手段3のスリット光31の走査方向にならって被測定ローラー1の表面上を被測定ローラー1の回転軸に対して斜めに転がって付着異物を捕捉しながら移動することが出来、かつ粘着ローラー1の粘着性によって高い摩擦力が得られるため、互いのローラーは滑りを生じることがない。互いのローラーが滑らないため、例えば、被測定ローラー1がシリコーンゴムローラーのような非常に傷つきやすいローラーであっても、表面に傷を付けることがない。また、後述するように粘着ローラー1にロータリーエンコーダー7を接続して走査長さを検出する場合においても、滑りがないことで正確に検出することが出来る。粘着ローラー2と被測定ローラー1との接触点の法線Nに平行な軸Sを中心に粘着ローラー1の回転軸Cが回転可能であるように支持する機構としては、例えば、図1に示すように粘着ローラー2を粘着ローラー2支持する支持アーム51の支点軸52を球面軸受で支持したり、図8に示すように、支持アーム51の支点部に被測定ローラー1の回転軸に直交する方向に空けた未貫通穴81に、回転可能となるよう軸82を挿入し、軸82に直交するように挿通された支点軸52を支持することで可能となる。
【0035】
2次元形状測定手段3と粘着ローラー2を支持する支持手段5は移動支持機構6によって、被測定ローラー1の回転軸と平行に移動することが出来る。被測定ローラー1を回転させながら、移動支持機構によって二次元形状測定手段3を被測定ローラー1の回転軸と平行に移動させることによって、二次元形状測定手段3は被測定ローラー1の表面を被測定ローラー1の回転方向Drに対して斜めに走査することが可能となる。また、移動支持機構6が被測定ローラー1の回転角に連動して移動する機構を備え、被測定ローラー1が1回転する間に2次元形状測定手段3が被測定ローラー1の回転軸と平行な方向に2次元形状測定手段3の被測定ローラー回転軸方向Dpの測定範囲以下の距離だけ進むようにすることで、被測定ローラー1の表面の全面をくまなく測定することが出来るため好ましい。移動支持機構6としては市販のリニアガイドや、リニアベアリングとシャフトの組み合わせ、およびラックピニオンやボールネジなどを好適に用いることが出来る。
【0036】
本発明のローラー表面形状測定装置には2次元形状測定手段3のスリット光31が被測定ローラー1の表面を略円周方向に走査した長さを測定し、一定の走査長さ毎に2次元形状測定手段3が間欠的に測定を行うためのトリガー信号を出す測長手段を備えている。被測定ローラー1の表面上におけるスリット光31の一定の走査長さ毎に信号を出し、それをトリガーとして間欠的に2次元形状を測定することで、測定された欠点の周方向の大きさを被測定ローラー1の外径によらず、一定の分解能で測定することが出来る。例えば、テーパーローラーやクラウンローラーのように被測定ローラー1の外径が被測定ローラー1の軸方向で異なる場合であっても、2次元形状測定手段3が間欠測定するためのトリガーは被測定ローラー1の表面上の走査長さを基に発信されるため、例えば、欠点検出に用いる場合であれば、一定の分解能で欠点の周方向の大きさを測定でき、被測定ローラー1の軸方向測定位置における外径を測定して計算しなくてもよい。また、多様な外径を持つローラー群を被測定ローラー1として測定する場合にも、欠点の被測定ローラー周方向の大きさを特定するために被測定ローラーの外径を用いる必要が無いため、そのための手間や人為的なミスを無くすことが出来る。
【0037】
測長手段としては、例えば、図2に示すようにローラーエンコーダー71を被測定ローラー1の表面に接触させて用いたり、非接触式のレーザードップラー測長器を用いたりすることが出来るが、図1に示すようにロータリーエンコーダー7を用いて粘着ローラー2の回転角を検出することが特に好ましい。通常のローラーエンコーダー71を用いる場合、被測定ローラー1とローラーエンコーダー71の間に滑りが発生することがあり、測定誤差や傷の原因となることがある。また、滑りを防止するためにローラーエンコーダー7の被測定ローラー1に対する接触圧を強くすると、被測定ローラー1がゴムローラーである場合に、被接触ローラー1の表面のゴムにローラーエンコーダー71の接触痕が残ってしまう場合がある。測長手段が粘着ローラー2に取り付けたロータリーエンコーダー7であれば、小さな接触圧力でも滑りを生じることがないため、被測定ローラー1がゴムローラーであっても接触痕を残すことなく、かつ滑りによる誤差無く測定することができる。また、レーザードップラー測長器は非接触で長さを測定できるためこれらの問題が生じることがないが、コストが高くなるし、正確な測定のためには走査方向と設置角度を厳密に合わせなければならないため調整が難しく装置が大がかりになる場合が多い。粘着ローラー2に取り付けたロータリーエンコーダー7であれば、前述の通り粘着ローラー2は粘着ローラー支持手段8によって、2次元形状測定手段3のスリット光31の走査方向に自然にならうため、調整が不要であるし、レーザードップラー測長器に比べて数十分の一以下のコストで設置出来る。なお、測長手段が粘着ローラー2に取り付けたロータリーエンコーダー7である場合、被測定ローラー1の表面上のローラー周方向の長さの測定分解能は粘着ローラー2の周長をロータリーエンコーダー7が1回転で発生するパルス数で除した値となる。例えば、10μmの分解能で測定したい場合、ローラーエンコーダーの1回転あたりの発生パルスが20000回であれば、粘着ローラー2の周長を200mmに、すなわち外径を63.7mmとすればよい。
【0038】
また、本発明における粘着ローラー2の外径は、図3に示すように粘着ローラー2の軸方向端部から中央部に向かって漸減していることが好ましい。前述の通り粘着ローラー2は被測定ローラーの表面上を被測定ローラー1の周方向に対して斜めに転がり移動するために、両ローラーは幾何学的には点接触となる。実際には粘着ローラー2の粘着ゴムおよび被測定ローラー1がゴムローラーの場合、非測定ローラー1のゴムも弾性変形するため、一定の接触幅を形成するから、2次元形状測定手段3の測定幅が接触幅以下であればよい。しかしながら、測定時間を短縮するために、2次元形状測定手段3の測定幅を大きくし、回転軸方向Dpの送り量を大きくしたい場合はより大きな接触幅が必要となるし、被測定ローラー1の外径が小さい場合は被測定ローラー1の周方向に対する粘着ローラー2の進行方向の角度が大きくなるために、より点接触に近づいてしまうため接触幅は狭くなり、不足してしまうことがある。粘着ローラー2の外径が粘着ローラー2の軸方向端部から中央部に向かって漸減している形状であれば、接触幅を広げることが出来るため、上記の場合でも付着異物による誤検出を防止することが可能となる。
【0039】
また、本発明のローラー表面形状測定装置には、粘着ローラー2をその回転軸方向に移動可能に支持する粘着ローラー可動手段9を備えていることが好ましい。前述のように、被測定ローラー1と粘着ローラー2はその接触幅においてのみ接触するため、粘着ローラー2の軸方向の長さに関わらず、実質的に被測定ローラー1の表面上の付着異物を除去できる面積は、接触幅×粘着ローラー2の周長となる。したがって、例えば、大型のローラーを測定する場合や非常に付着異物の多い環境で測定する場合には、測定の途中で粘着ローラー2の異物捕捉能力が不足し、付着異物による誤検出が増加するおそれがある。粘着ローラー2をその軸方向に移動可能となるように支持し、測定中に粘着ローラー2の軸方向における被測定ローラーとの接触位置をずらしていけば、粘着ローラー2の接触範囲を広げることができるため、これらの場合でも、付着異物による誤検出を防止することが可能である。粘着ローラー可動手段9としては、例えば、粘着ローラ2の中心軸をスクリューおよびモーターで移動させる機構などが挙げられる。
【0040】
また、同様の理由から、前述の粘着ローラー2の他に被測定ローラー1の表面に接触しつつ、被測定ローラーとの接触点の法線に平行な軸を中心として回転軸が回転可能であるように支持された1つ以上の粘着ローラー(第2の粘着ローラー10)をさらに備え、それぞれの粘着ローラーが、各々異なる回転軸をもっていることが好ましい。このように回転軸の異なる複数の粘着ローラーを用いることでも粘着ローラーの接触範囲を広げることができる。さらに、接触幅も第2の粘着ローラーの数の分だけ増加するから、接触幅が不足してしまうことを防止することもできる。
【0041】
また、これら第2の粘着ローラー10の少なくとも1本の外径が第2の粘着ローラー10の軸方向端部から中央部に向かって漸減している形状であれば、接触面積が拡大し、より多くの面積を使用して付着異物を取り除くことができるため、好ましい。
【0042】
さらに、これら第2の粘着ローラー10の少なくとも1本をその回転軸方向に移動可能に支持する第2の粘着ローラー可動支持手段を備えていると、粘着ローラーの接触範囲を広げることができるため、好ましい。
【0043】
本発明のローラー表面形状の測定方法では、上述のローラー表面形状の測定装置を用い、被測定ローラー1を回転させながら、2次元形状測定手段3で2次元形状を測定しつつ、2次元形状測定手段3を被測定ローラー1の回転軸方向と平行に移動させることで被測定ローラー1の表面の3次元形状を測定する。同時に、2次元形状測定手段3のスリット光31が被測定ローラー1の表面上を移動する経路を、スリット光31が略円周方向に走査する前に粘着ローラー2で接触させ、2次元形状測定手段3は粘着ローラー2に接触された後の被測定ローラー1の表面の2次元形状を2次元形状測定手段3のスリット光31が被測定ローラー1の表面を略円周方向に一定の長さ走査する毎に間欠測定する。
【0044】
被測定ローラー1の回転速度は、被測定ローラー1の周方向における所望の測定分解能や2次元形状測定手段3が2次元形状を間欠的に測定することが出来る測定周期、測定した2次元形状を基に3次元形状としてリアルタイムに画像化する場合には、その処理速度などによって適宜決定される。例えば、被測定ローラー1の周方向の必要測定分解能が10μmであって、2次元形状の測定可能最短周期が1マイクロ秒の場合、被測定ローラーの周速度は10mm/秒以下の範囲で決定される。
【0045】
本発明のローラー表面形状の測定方法では被測定ローラー1を回転させながら2次元形状測定手段3を被測定ローラー1の回転軸方向と平行に移動させることで、被測定ローラー1の外周面の3次元形状を測定する。被測定ローラー1の回転および2次元形状測定手段3の移動は連続的に行われることが好ましく、また、被測定ローラー1回転毎の2次元形状測定手段3の移動量を2次元形状測定手段3の測定幅以下とすることで、被測定ローラー表面を隙間無く測定することが出来るため、好ましい。
【0046】
また、本発明のローラー表面形状の測定方法では、2次元形状測定手段3のスリット光が被測定ローラー1の表面上を移動する経路を、スリット光31が略円周方向に走査する前に表面に粘着性のゴムを被覆した粘着ローラー2で接触させる。これにより2次元形状手段3が被測定ローラー1の表面形状を測定する前に、付着異物が除去されるため、付着異物を表面形状として測定し、表面欠陥として誤検知してしまうことがない。粘着ローラー2を被測定ローラー1に接触させる際の荷重は1N〜50Nが好ましい。荷重が1N以上であると、被測定ローラー表面を粘着ローラー2が転がる際に、粘着ローラー2がバウンドしてしまうようなことが起こらない。また、特に被測定ローラー1がゴムローラーである場合、被測定ローラー1と粘着ローラー2の接触圧が過大であると、被測定ローラー1に粘着ローラー2との接触痕が残ってしまう可能性があるが、荷重が50N以下であればこのような不具合も生じない。
【0047】
また、本発明のローラー表面形状の測定方法では、2次元形状測定手段3のスリット光31が被測定ローラー1の表面を略円周方向に一定の長さ走査する毎に、2次元形状測定手段3で粘着ローラー2に接触された後の被測定ローラー1の表面の2次元形状を間欠測定する。ここで、一定の長さとは測定したい表面形状や検出したい表面欠点の大きさおよび分解能によって適宜決定される。例えば、一定の長さが、検出したい表面欠点の被測定ローラー1の周方向の最小長さの1/3以下であると、欠点内で少なくとも2回以上、2次元形状の間欠測定が行われるため、電気的なノイズなどと区別ができるため好ましい。また、例えば、表面形状を10μmの分解能で測定したいのであれば、10μm以下の長さ毎に間欠測定することで可能となる。
【0048】
図7(a)には2次元形状の測定結果の一例のグラフを示す。ここで横軸はスリット光31の長手方向、縦軸は被測定ローラー1の表面の高さである。このように間欠測定して得られた2次元形状データは、図7(b)に示すように取得順に並べることで容易に3次元形状を視覚的に把握することができる。また、コンピュータープログラムによって、予め設定しておいた閾値以上の大きさや高さ、深さを持つ欠点部分のみを抽出して表示したり、予め設定しておいた形状データとことなる形状であった場合のみを抽出して表示したりすることも可能である。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
図2に示す本発明のローラー表面形状測定装置を用いて、外径250mm、面長3m、表面材質がクロムめっきであるプラスチックフィルム製膜用ローラーの表面形状を測定し、欠点検査を行った。測定環境は清浄度クラス7(JIS B 9920)であった。2次元測定手段3として、幅48mm、波長405nmのレーザー光をスリット光としその反射光を測定幅32mmで測定するキーエンス製2次元レーザー変位計(LJ−V7080)を用い、移動支持手段6は被測定ローラーが1回転する間に被測定ローラー1の軸方向と平行に2次元レーザー変位計を30mm移動させる機構とした。使用した粘着ローラー2の外径は62.7mm、粘着ゴムとしてブチルゴムを厚さ5mmで被覆し、ゴム硬度はHs40JISAとした。測長手段として外径62.7mm、1回転あたり2000パルスを発信するローラーエンコーダーを用い、被測定ローラー1の周方向の測定分解能は100μmであった。
【0050】
2次元レーザー変位計の測定結果をコンピュータープログラムにて配列し3次元形状データとし、高さ及び深さが50μm以上で長辺が500μm以上のものを仮欠点と判定した。その後、判定された欠点を目視にて観察し、表面欠点であるか、付着異物による誤検知であるかを判定し、誤検知数を計数した。
【0051】
(実施例2)
実施例1と同じローラー表面形状測定装置を用い、同じ測定環境下で外径500mm、面長5m、表面材質がゴム硬度Hs60JISAのシリコーンゴムであるプラスチックフィルム製膜用ローラーの欠点検査を行った。
【0052】
(実施例3)
測長手段として粘着ローラー2の軸に取り付けた1回転あたり2000パルスを発信するロータリーエンコーダーを用いたこと以外は実施例1と同じローラー表面形状測定装置を用い、同じ測定環境下で、実施例2と同じ被測定ローラーの欠点検査を行った。
【0053】
(実施例4)
2次元形状測定手段として、幅90mm、波長405nmのレーザー光をスリット光としその反射光を測定幅62mmで測定するキーエンス製2次元レーザー変位計(LJ−V7200)を用い、移動支持手段は被測定ローラー1が1回転する間に被測定ローラー1の軸方向と平行に2次元レーザー変位計を60mm移動させる機構としたこと以外は実施例1と同じローラー表面形状測定装置を用い、同じ測定環境下で、実施例1と同じ被測定ローラーの欠点検査を行った。
【0054】
(実施例5)
粘着ローラー2外径を端部から中央部に向かって0.2mm漸減させた以外は実施例4と同じローラー表面形状測定装置を用い、同じ測定環境下で、実施例1と同じ被測定ローラーの欠点検査を行った。
【0055】
(実施例6)
粘着ローラー可動手段として図4に示す粘着ローラー可動機構を備えたこと以外は実施例1と同じローラー表面形状測定装置を、同じ測定環境下で、実施例2と同じ被測定ローラーの欠点検査を行った。ローラーの表面形状を測定している間、粘着ローラー可動手段によって粘着ローラーを軸方向に少しずつ動かした。
【0056】
(実施例7)
図5に示す第2の粘着ローラー10を2本備えたこと以外は実施例1と同じローラー表面形状測定装置を、同じ測定環境下で、実施例2と同じ被測定ローラーの欠点検査を行った。第2の粘着ローラー10は、外径が62.7mm、粘着ゴムとしてブチルゴムを厚さ5mmで被覆し、ゴム硬度がHs40JISAの粘着ローラーであった。
【0057】
(比較例1)
粘着ローラーを備えず、測長手段として被測定ローラーの回転角を検出する、1回転あたり5000パルスを発信するロータリーエンコーダーを用いたこと以外は実施例1と同じローラー表面形状測定装置を用い、同じ測定環境下で、実施例1と同じ被測定ローラーの欠点検査を行った。
【0058】
(比較例2)
比較例1と同じローラー表面形状測定装置を用い、実施例1と同じ測定環境下で、実施例2と同じ被測定ローラーの欠点検査を行った。
【0059】
上記実施例および比較例による被測定ローラー周方向の測定分解能および異物による欠点の誤検知数を表1、2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
実施例1から6では、粘着ローラーが設けられていることによって異物付着による誤検知が著しく減少した。また、被測定ローラーの一定回転角毎に発信するロータリーエンコーダーのパルスを2次元レーザー変位計のトリガー信号としている比較例1および2が被測定ローラーの外径によって分解能が変化してしまっているのに対し、被測定ローラーの表面を走査した一定長さ毎にトリガー信号を出すローラーエンコーダーおよび粘着ローラーに取り付けたロータリーエンコーダーのパルスをトリガー信号としている実施例1から6では、被測定ローラーの回転角によらず一定の分解能で測定出来ている。さらに、1回転あたりのパルス数が比較例で使用したロータリーエンコーダーよりも少ないにもかかわらず、より小さな分解能で測定することができた。
【0063】
また、被測定ローラーがシリコーンゴムローラーである実施例2と3において、測長手段としてローラーエンコーダーを用いた実施例2では、ローラーエンコーダーの滑りによって発生したキズが3カ所検出されたのが、粘着ローラーに取り付けたロータリーエンコーダーである実施例3ではキズは検出されなかった。
【0064】
また、実施例4および5では実施例1〜3よりも測定幅の広い2次元レーザー変位計を用い、かつ、移動支持手段が被測定ローラーが1回転する間に被測定ローラーの軸方向と平行に2次元レーザー変位計を移動させる長さを長くしたことで測定時間が約1/2に短縮されたが、粘着ローラーの接触幅が測定幅よりも小さくなった実施例4では、付着異物による誤検出が8カ所あったのに対し、粘着ローラーの外径を端部から中央部に向かって漸減させた実施例5では誤検出は発生しなかった。
【0065】
また、大型のローラーを測定した実施例2、3、6および7において、実施例2と3では被測定ローラーの軸方向における測定位置が4000mmを超えたあたりから付着異物による誤検出がわずかに発生したのに対し、粘着ローラー可動機構を設けた実施例6および第2の粘着ローラーを設けた実施例7では最後まで誤検出を防止することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、フィルム製膜用ローラーなどの産業用ローラーを測定対象とするローラー表面形状測定装置に限らず、プリンターなどの民生用装置に用いられるローラーを測定対象とする測定装置などにも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
【符号の説明】
【0067】
1 被測定ローラー
2 粘着ローラー(第1の粘着ローラー)
2’ 粘着ローラー(第1の粘着ローラー)
3 2次元形状測定手段
4 ローラー支持機構
5 支持手段
6 移動支持機構
7 ロータリーエンコーダー(測長手段)
8 粘着ローラー支持手段
9 粘着ローラー可動手段
10 第2の粘着ローラー
31 スリット光
51 粘着ローラー支持アーム
52 支点軸
Dr 被測定ローラー回転方向
Dp 被測定ローラー回転軸方向(移動支持機構の移動方向)
Px 測定幅
Py 間欠測定間隔(被測定ローラー周方向の分解能)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8