(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被圧力測定気体もしくは被圧力測定液体である被測定媒体を導く導入孔を有する被測定媒体導入部と、前記被測定媒体導入部の前記導入孔の一端に設けられた台座部上に前記導入孔を塞ぐように固定され、各第1端子が配置されたセンサエレメントと、前記被測定媒体導入部との間に前記センサエレメントを挟み込み、かつ前記各第1端子を収容し、外部配線との接続部となる第2端子が配置された第1収容部と、を備えた物理量センサ装置の製造方法において、
前記センサエレメントに前記第1収容部を熱硬化の接着剤によって固定する第1工程を含み、
前記第1収容部の前記各第1端子を収容可能な各穴のうちの一部の穴の断面形状は、当該穴の断面の対辺の長さが当該穴に対応する第1端子の径よりも短いことを特徴とする物理量センサ装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる物理量センサ装置の製造方法および物理量センサ装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の各実施の形態の説明において、他の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0021】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる物理量センサ装置の構成について、圧力センサ装置を例に説明する。
図1は、実施の形態1にかかる物理量センサ装置の構成を示す断面図である。
図2は、
図1の圧力センサチップの構成を示す説明図である。
図2(1)は、圧力センサチップ11の断面図を示し、
図2(2)には、圧力センサチップ11の俯瞰図を示す。
図1に示すように、物理量センサ装置100は、センサエレメント1、ネジ部(被測定媒体導入部)2、インナーハウジング部(第2収容部)3およびソケットハウジング部(コネクタハウジング部(第3収容部))4を備える。本実施の形態では、センスエレメントの信号を外部に伝達するためのインタフェースとなるソケット部が、インナーハウジング部3と、ソケットハウジング部4との2つに分離する構成とする。センサエレメント1は、収納箱10、収納箱10の凹部10aに収納された、圧力センサチップ(半導体チップ)11、台座部材12、ダイアフラム13、を備える。なお、
図1に示す断面は後述する
図12(2)に示す断面H−H’の位置の断面である。収納箱10は、例えばステンレス鋼材(SUS)などの金属でできている。
【0022】
ここで、
図2(1)および
図2(2)を用いて、圧力センサチップ11について説明する。
図2(2)に示す断面は、
図2(1)に示すQ−Q’の位置の断面である。
図2(1)および
図2(2)に示すように、圧力センサチップ11は、例えば、ダイアフラム11aと、4つのゲージ抵抗63と、パッド部65と、を有する。ダイアフラム11aは、半導体シリコンの第1の面61から凹加工して形成された受圧部である。第1の面61は、
図1では上面である。このダイアフラム11aで圧力を受ける。4つのゲージ抵抗63は、半導体シリコンの第2の面62の、ダイアフラム11aの裏側に相当する箇所に形成されている。第2の面62は、
図1では下面である。4つのゲージ抵抗63は、拡散抵抗よりなる。これらのゲージ抵抗63は、圧力センサチップ11に圧力が印加された際に第2の面62に発生する歪を抵抗値に変換する。圧力センサチップ11は他の半導体材料でできていてもよい。
【0023】
また、圧力センサチップ11には、ゲージ抵抗63によって構成されるホイートストーンブリッジ回路などの圧力センサ素子や、制御回路が形成されている。制御回路は、第2の面62の制御回路領域64に形成される。制御回路とは、圧力センサ素子の出力信号を増幅する回路、感度を補正する回路、オフセットを補正する回路、感度およびオフセットの温度特性を補正する回路などである。また、圧力センサチップ11には、サージ保護素子やフィルタ(図示省略)なども形成されている。パッド部65は、圧力センサチップ11の第2の面62上に形成されている。パッド部65に設けられた各電極は、それぞれ、ボンディングワイヤ14により後述する各リードピン(第1端子)15に接続されている。パッド部65に設けられた各電極は、金属などの配線(図示省略)によって制御回路領域64に形成された各制御回路に接続されている。すなわち、各リードピン15は、ボンディングワイヤ14およびパッド部65に設けられた各電極を介して、制御回路領域64に形成された各制御回路に接続されている。また、パッド部65と制御回路領域64は、第2の面62のうち、ダイアフラム11aが設けられた領域以外の部分に配置される。また、パッド部65は、制御回路領域64の部分に配置されてもよい。
【0024】
圧力センサチップ11の第1の面61は、収納箱10の凹部10aの底面に台座部材12を介して固着されている。台座部材12は、特に限定しないが、例えばガラス材料、すなわちパイレックス(商標登録)ガラスやテンパックスガラスなどでできている。台座部材12と圧力センサチップ11とは、静電接合によって接合されている。台座部材12と収納箱10とは、接着剤(不図示)によって接着されている。リードピン15は、センサエレメント1の信号を取り出すための端子ピンであり、複数配置される。
【0025】
各リードピン15は、それぞれ、収納箱10の異なる貫通孔10bを通って収納箱10を貫通し、当該貫通孔10bを塞ぐ例えばガラスなどの絶縁性部材16により収納箱10に固定されている。リードピン15の一方の端部(以下、下端部とする)は、収納箱10の凹部10aから下方(ネジ部2側)に突出し、圧力センサチップ11の第2の面62上のパッド部65に設けられた各電極にボンディングワイヤ14により接続されている。リードピン15の他方の端部(以下、上端部とする)は、収納箱10の凹部10a側に対して反対側から上方(ソケットハウジング部4側)に突出している。収納箱10の凹部10a側に対して反対側には、凹み部27が設けられている。凹み部27は、絶縁性部材16に応力が集中するのを抑制するために設けられている。
【0026】
具体的には、複数のリードピン15のうち、電源端子、グランド端子および出力端子である各リードピン(以下、第1リードピン(第3端子)とする)15aの下端部は、それぞれ、ボンディングワイヤ14により圧力センサ素子の各電極に接続される。第1リードピン15aの上端部は、インナーハウジング部3の貫通孔3bを貫通する。
【0027】
一方、複数のリードピン15のうち、特性調整・トリミングのための各リードピン(以下、第2リードピン(第4端子)とする)15bの下端部は、それぞれボンディングワイヤ14により所定の制御回路の各電極に接続される。第2リードピン15bは、物理量センサ装置100の組み立て途中に特性調整・トリミングを行うために用いられ、特性調整・トリミング後には用いられない。第1リードピン15aと第2リードピン15bの長さは同じである。
【0028】
ここで、縦方向とは、リードピン15の軸方向である。横方向とは、リードピン15の軸方向と直交する方向である。リードピン15は、例えば42アロイ(42Alloy)や、ニッケル(Ni)を50wt%程度含み、かつ残りの割合で鉄(Fe)を含む鉄ニッケル合金(50Ni−Fe)などの金属でできている。
【0029】
ネジ部2は、例えばSUSなどの金属でできている。ネジ部2の中心には、縦方向に被圧力測定気体である空気や被圧力測定液体である油(オイル)等の被測定媒体が通る貫通孔(導入孔)23が設けられている。ネジ部2の一方の開放端における貫通孔23の開口部が圧力導入口24である。ネジ部2の他方の開放端における貫通孔23の開口部25と収納箱10の凹部10aとが対向するように、ネジ部2の他方の開放端に設けられた台座部21上に、ダイアフラム13を挟んで収納箱10が載置されている。ネジ部2の台座部21、ダイアフラム13および収納箱10の積層箇所の周囲は、レーザー溶接により接合されている。
【0030】
ダイアフラム13は、波打った薄い金属板であり、例えばSUSなどの金属でできている。ダイアフラム13は、収納箱10の凹部10aの開口部、および、ネジ部2の他方の開放端を塞ぐように配置される。収納箱10の凹部10aとダイアフラム13とに囲まれた空間には、圧力センサチップ11に圧力を伝達するシリコンオイルなどの液体(圧力媒体)20が充填されている。ネジ部2の台座部21、ダイアフラム13および収納箱10の積層箇所(接合部)の周囲の符号22は、ネジ部2の台座部21と収納箱10との溶接部である。符号26は、オーリングである。
【0031】
インナーハウジング部3は、コネクタピン(第2端子)31と一体成形された樹脂部材であり、センサエレメント1の上方および周囲を囲む略凹部状をなす。具体的には、インナーハウジング部3は、収納箱10の凹部10a側に対して反対側の外周部に接着剤28により接着されている。収納箱10とインナーハウジング部3との接触面のほぼ全面に接着剤28が介在する。インナーハウジング部3と収納箱10との接着面の一方の面を凹凸が交互に繰り返し並んだ断面形状(例えばのこぎり刃のようなぎざぎざ)とし、当該接着面での接着剤の量を増やすことで、インナーハウジング部3と収納箱10とを接着しやすくしてもよい。インナーハウジング部3の凹部32は、第2リードピン15bを収容可能な深さを有する。
【0032】
インナーハウジング部3の、センサエレメント1の上方を覆う部分(以下、インナーハウジング部3の上部とする)3aには、第1リードピン15aを貫通させるための貫通孔3bが設けられている。また、インナーハウジング部3の上部3aには、コネクタピン31が一体成形されている。コネクタピン31は、物理量センサ装置100と外部との信号のやり取りを行う信号端子である。コネクタピン31の一方の端部31a(後述する
図3参照)は、インナーハウジング部3の貫通孔3bに接続する貫通孔31eを備える。コネクタピン31の垂直部31c(後述する
図3参照)に設けられた凹部31fには、チップコンデンサ18が接合部材17によって取り付けられている。チップコンデンサ18は、隣り合うコネクタピン31間に取り付けられている。なお、コネクタピン31の構成は
図2を用いて後述する。
【0033】
第1リードピン15aの上端部とコネクタピン31の一方の端部31aとは、組立て時に上方から所定の入射角(縦方向に対して3度程度傾いた角度)でレーザー光が照射される。このレーザー溶接により、第1リードピン15aの上端部は、コネクタピン31の一方の端部31aに接合されている。コネクタピン31は、例えば燐青銅(銅(Cu)に錫(Sn)を含む合金)、42アロイや50Ni−Feなどの金属でできており、レーザー光の照射によりコネクタピン31とリードピン15とが互いに溶け合うように接合される。
【0034】
ソケットハウジング部4は、コネクタピン31の垂直部31c(後述する
図3参照)を収容した、外部配線との接続部である。ソケットハウジング部4は、コネクタピン31の垂直部31cの周囲を囲む例えば略筒状をなす。例えば、コネクタピン31は、ソケットハウジング部4の底部4bの貫通孔4cを貫通して、ソケットハウジング部4に囲まれた空間41に突出している。ソケットハウジング部4は、インナーハウジング部3の上部3aの上面の外周部に接着剤(不図示)により接着されている。インナーハウジング部3とソケットハウジング部4との接触面のほぼ全面に接着剤が介在する。ソケットハウジング部4とインナーハウジング部3との接合面に、互いに嵌合する凹凸4a,3dが設けられていてもよい。
【0035】
ネジ部2の台座部21、収納箱10、インナーハウジング部3およびソケットハウジング部4の最大直径はほぼ等しいことが好ましい。その理由は、次の通りである。上述したように、ネジ部2、収納箱10、インナーハウジング部3およびソケットハウジング部4は順に重ねて接合(または接着)される。このため、ネジ部2の台座部21、収納箱10、インナーハウジング部3およびソケットハウジング部4の最大直径をほぼ等しくすることで直径方向(横方向)の小型化を図ることができるからである。
【0036】
上述した構成の物理量センサ装置100では、圧力導入口24から圧力媒体が導入され、圧力センサチップ11のダイアフラム11aで圧力を受けると、ダイアフラム11aが変形する。そして、ダイアフラム11a上のゲージ抵抗値が変化し、それに応じた電圧信号が発生する。その電圧信号は、感度補正回路やオフセット補正回路や温度特性補正回路などの調整回路によって調整された増幅回路により増幅され、圧力センサチップ11から出力される。そして、その出力信号は、ボンディングワイヤ14を介して第1リードピン15aに出力される。
【0037】
次に、物理量センサ装置100の製造方法(組立方法)について説明する。
図3〜16は、実施の形態1にかかる物理量センサ装置の製造途中(組立途中)の状態を示す説明図である。
【0038】
まず、
図3から
図5を用いてチップコンデンサ18が接続されたコネクタピン31とインナーハウジング部3について説明する。
図3は、インナーハウジング部3を省いたコネクタピン31とチップコンデンサ18のみを示している。
【0039】
図3(1)〜
図3(3)には、各方向から見た場合のコネクタピン31を示す。
図3(4)には、コネクタピン31同士を繋ぐチップコンデンサ18の等価回路を示す。第1コネクタピン31оと第4コネクタピン31rは、電源電圧を供給するための電源信号を供給する信号端子ピンであり、電源端子であるリードピン15と接続される。第2コネクタピン31pは、センサ信号を取り出すための信号端子ピンであり、出力端子であるリードピン15と接続される。第3コネクタピン31qは、グランド(Gnd)と接続するための信号端子ピンであり、グランド端子であるリードピン15と接続される。また、電源信号(Vcc)を供給するための信号端子ピンは、センサ信号(Vout)を取り出すための信号端子ピンとグランド(Gnd)と接続するための信号端子ピンとのそれぞれとの間にチップコンデンサ18を取り付けるために、第1コネクタピン31оと第4コネクタピン31rのように両端に2本設けられる。
【0040】
第1コネクタピン31o〜第3コネクタピン31qは、樹脂形成によってインナーハウジング部3の上部3aに埋め込まれる部分(以下、水平部(第1部分)とする)31bと、当該水平部31bに連結され、当該水平部31bと直交して上方に突出する部分(以下、垂直部とする)31cと、からなる略L字状の断面形状を有する(
図3(3)の例では第1コネクタピン31oを示す)。第4コネクタピン31rについては、垂直部31cのみを有する略I字状の断面形状を有する(不図示)。
【0041】
第1コネクタピン31o〜第3コネクタピン31qの一方の端部31aは、貫通孔31eの周囲を囲むように成形される(
図3(2))。なお、第1コネクタピン31o〜第3コネクタピン31qの端部31aは、貫通孔31eの周囲の一部を囲む略半円状の平面形状に成形されてもよいし、貫通孔31eの側壁に達する直線状の平面形状を有し、当該貫通孔31eの側壁の一部に露出されていてもよい(不図示)。
【0042】
また、第1コネクタピン31oの水平部31bは、第1コネクタピン31oの端部31aと、第2コネクタピン31pの水平部31bおよび端部31aと、第3コネクタピン31qの水平部31bおよび端部31aを囲うように設けられ、第4コネクタピン31rと一体化されて接続されている(
図3(2))。これにより、第1コネクタピン31oと第4コネクタピン31rとは同電位となる。
【0043】
まず、コネクタピン31に半田や導電性接着剤などの接合部材17によってチップコンデンサ18を取り付ける。例えば、第1コネクタピン31oと第2コネクタピン31pとがチップコンデンサ18aを介して接続されている(
図3(1)、
図3(2))。例えば、第2コネクタピン31pと第3コネクタピン31qとがチップコンデンサ18bを介して接続されている(
図3(1)、
図3(2))。例えば、第3コネクタピン31qと第4コネクタピン31rとがチップコンデンサ18cを介して接続されている(
図3(1)、
図3(2))。このように、コネクタピン31同士は、チップコンデンサ18を介して接続されている(
図3(1)、
図3(2))。上述したように、第1コネクタピン31oの端部31aが第4コネクタピン31rの垂直部31cと接続されている。このため、各端子間にチップコンデンサ18を取り付けることができる(
図3(4))。
【0044】
図3の例では、各端子間にチップコンデンサ18を取り付けているが、これに限らない。例えば、第4コネクタピン31rと第3コネクタピン31qとの間のチップコンデンサ18cについては、サージの要求に応じて取り付けるか否かが決定されてもよい。例えば、チップコンデンサ18cが取り付けられる場合、チップコンデンサ18cが取り付けられない場合と比較してEMC(Electromagnetic Cоmpatibility)耐性が向上する。
【0045】
次に、コネクタピン31を、インナーハウジング部3の成形用の金型に入れる。そして、その金型に樹脂材料を流し込むことによりインナーハウジング部3とコネクタピン31とを一体成形(インサート成形)する。
【0046】
図4には、インナーハウジング部3の断面を示す。
図5には、インナーハウジング部の外観を示す。インナーハウジング部3には、ソケットハウジング部4との接合面に嵌合する凹3dが設けられている(
図4,
図5(1),
図5(2))。
【0047】
インナーハウジング部3の上部3aには、第1リードピン15aを貫通させるための貫通孔3bが設けられている(
図5(2))。貫通孔3bは、コネクタピン31の貫通孔31e(
図3参照)と同じ位置に設けられている。このため、インナーハウジング部3のコネクタピン31が露出している側から見た表面の貫通孔3bは、貫通孔31eと同じである。ただし、後述する
図12に示すようにインナーハウジング部3のコネクタピン31が露出している側から見た裏面の貫通孔3bは樹脂によって形成された貫通孔である。また、インナーハウジング部3の上部3aには、コネクタピン31が一体成形されている(
図4,
図5(1),
図5(2))。例えば、インナーハウジング部3からコネクタピン31の垂直部31cの一部が露出されている(
図4)。例えば、インナーハウジング部3の上部3aは、コネクタピン31の水平部31bを被覆する。コネクタピン31の一方の端部31aは、インナーハウジング部3の上部3aから露出されている。この、コネクタピン31の一方の端部31aの露出されている部分と第1リードピン15aが溶接される。
【0048】
また、インナーハウジング部3の上端部3eは、コネクタピン31に取り付けたチップコンデンサ18および接合部材17を被覆する。
【0049】
次に、
図6から
図11を用いて、収納箱10にリードピンを取り付ける工程から圧力媒体を注入して封止するまでの工程について説明する。
【0050】
図6に示すように、収納箱10の各貫通孔10bに、それぞれリードピン15を貫通させる。ここでは、収納箱10が略円形状の平面形状を有し、収納箱10の凹部10aの底面の中心を中心とする円周上に貫通孔10bが設けられている場合を例に説明する。複数の孔のうち、1つの孔は圧力媒体であるオイルを注入するための孔10cであり、残りの孔がリードピン15を貫通させる貫通孔10bである。
【0051】
次に、収納箱10の貫通孔10bにガラスなどの絶縁性部材16を流し込んでリードピン15と収納箱10とを接合(気密封止)する。次に、収納箱10の凹部10aの底面の、貫通孔10bが設けられていない例えば中心に接着剤51を塗布する。次に、
図7に示すように、収納箱10の凹部10aの底面の接着剤51上に、圧力センサチップ11を搭載して接着する。次に、
図8に示すように、圧力センサチップ11の各電極とリードピン15とをボンディングワイヤ14により電気的に接続する。次に、
図9に示すように、ネジ部2の台座部21上に、ダイアフラム13を挟んで、凹部10a側が下(ネジ部2側)になるように収納箱10を載置し、これらの部材の積層部分を例えばレーザーシーム溶接により接合する。
【0052】
次に、
図10に示すように、真空雰囲気下で、収納箱10の孔10cから収納箱10の凹部10aとダイアフラム13とに囲まれた空間にシリコンオイルなどの液体20を注入する。次に、
図11に示すように、液体20を注入した孔10cに例えばSUSなどの金属でできた金属球52を押し当てて電圧を加える。これにより、当該孔10cの開口部に金属球52が溶接され(抵抗溶接)、液体20が封止される。次に、一般的な方法により、センサエレメント1の特性調整・トリミングを行う。
【0053】
次に、
図12から
図14を用いて、インナーハウジング部3と収納箱10とを接着する工程について説明する。
【0054】
図12(1)には、インナーハウジング部3のコネクタピン31が露出していない側の底面を示す。また、
図12(2)には、収納箱10のリードピン15が露出している側の面を示す。
【0055】
図12(1)の例では、インナーハウジング部3には、3つの貫通孔3bと、5つの溝3fとを有する。貫通孔3bは、上述したようにコネクタピン31と接続されている。貫通孔3bには第1リードピン15aが貫通されてコネクタピン31と接続される。溝3fは、第1溝3faと第2溝3fbとがある。溝3fには第2リードピン15bが嵌め込まれる。リードピン15の長さが8mm程度である場合、溝3fと第2リードピン15bとが嵌め込まれる長さは2mm以上3mm以下程度である。
【0056】
リードピン15の横方向の断面(リードピン15を輪切りに切断した断面)の形状が円形形状であるため、貫通孔3bと第1溝3faの形状は円形形状である。貫通孔3bと第1溝3faの径はφhである。リードピン15の径はφpである。φp≒φhの関係が成り立つ。
【0057】
第2溝3fbの形状は、第2溝3fbの対辺の長さが長さφpより短くなるような形状であれば、第2溝3fbに第2リードピン15bが嵌め込まれる。また、第2溝3fbの形状は、第2リードピン15bを押し込む力の限界を超えない様な形状である。
図12(1)の例では、第2溝3fbの形状は弦と円弧を組み合わせた形状である。なお、第2溝3fbの形状は略六角形形状や略四角形形状などのように多角形の形状であってもよい。例えば第2溝3fbの弧の長さはφh’である。φh’<φpの関係が成り立つ。例えば、第2溝3fbや第2リードピン15bの寸法精度のばらつきを考慮して、φh’をφpよりも5%以上10%以下程度減らしている。なお、φh’=φpであると、第2溝3fbに第2リードピン15bを嵌め込む際に第2リードピン15bが削られるため、精度よく嵌め込むことができない虞があるため、φh’<φpとすることが好ましい。
【0058】
また、第2溝3fbの数が多いと、第2溝3fbに第2リードピン15bを押し込むための力が大きくなるため、第2リードピン15bを押し込むことができない虞がある。そこで、第2溝3fbの数は1個以上3個以下とすることが好ましい。第2溝3fbの数は、1個よりも2個がよく、2個よりも3個であるとよい。第2溝3fbの数が3個であると、面固定となるため、インナーハウジング部3の浮き上がりを抑制することができる。また、溝3fの形状を第2溝3fbとすることが好ましいが、貫通孔3bの形状が第2溝3fbの形状となっていてもよい。例えば、5本の第2リードピン15bをすべて切断してしまう場合、第2リードピン15bを溝3fに嵌め込めないため、3個の貫通孔3bのうち少なくともいずれかの貫通孔3bの形状を第2溝3fbの形状としてもよい。また、例えば、面固定となるように第2溝3fbの数を3個としたいが、5本の第2リードピン15bのうち3本の第2リードピン15bを切断して2本の第2リードピン15bのみ溝3fに嵌め込めない場合、3個の貫通孔3bのうちの1個の貫通孔3bの形状を第2溝3fbの形状としてもよい。
【0059】
このように、例えば複数の溝3fのうちの一部の溝3fの形状を円形形状から、円形の直径よりも対辺の長さが短くなるような形状に変更することにより、溝3fにリードピン15が噛み込むような構造となる。このため、接着剤28(
図1)の熱硬化時のインナーハウジング部3の浮き上がりを抑制することができる。換言すると、接着剤28の熱硬化時に、インナーハウジング部3の底面3cと収納箱10とに隙間が形成されることを抑制することができる。
【0060】
次に、
図13に示すように、コネクタピン31を一体成形したインナーハウジング部3の貫通孔3bに第1リードピン15aを貫通させ、インナーハウジング部3の溝3fに第2リードピン15bを嵌め込ませることにより、インナーハウジング部3の位置を決定し、熱硬化の接着剤28(
図1)でインナーハウジング部3を収納箱10に固定する。例えば、塗布した接着剤28が硬化するまでに、インナーハウジング部3と収納箱10とを高温状態で放置する。この際、第2リードピン15bがインナーハウジング部3の溝3fに嵌め込まれているため、接着剤28の熱硬化時のインナーハウジング部3の浮き上がりを防止することができ、インナーハウジング部3と収納箱10とを押さえ込まなくてもよい。このように、簡易に組み立てることができる。
【0061】
このとき、第1リードピン15aは、インナーハウジング部3の上部3aの上面に露出するコネクタピン31とインナーハウジング部3の貫通孔3bで接触する。また、この段階では、コネクタピン31の周囲を覆うソケットハウジング部4が接合されていないため、インナーハウジング部3の上方に、レーザー光53の進入経路上に障害物となる部材は配置されていない。すなわち、ほぼ上方から、第1リードピン15aの上端部とコネクタピン31の一方の端部31aとの接触部を視認可能である。次に、インナーハウジング部3の貫通孔3bに上方から所定の入射角でレーザー光53を照射し、第1リードピン15aの上端部とコネクタピン31の一方の端部31aとの接触部を溶接(接合)する。
【0062】
図14には、接着した後のインナーハウジング部3と収納箱10との断面を示す。断面は
図12(2)に示した断面A−A’の位置の断面である。なお、
図14ではネジ部2や圧力センサチップ11などを省略してある。第1リードピン15aはコネクタピン31に溶接される。具体的には、例えば第1リードピン15aの上端部は、貫通孔を貫通し、コネクタピン31の一方の端部31aおよびコネクタピン31の水平部31bと接合されている。一方、第2リードピン15bと溝3fとが嵌合している。また、第2リードピン15bは切断されないため、第2リードピン15bと第1リードピン15aとは同じ長さである。
【0063】
次に、
図15を用いて、ソケットハウジング部4について説明する。
【0064】
図15(1)には、ソケットハウジング部4の斜視図を示す。
図15(2)には、ソケットハウジング部4の断面図を示す。ソケットハウジング部4は、コネクタピン31の垂直部31cを収容する。ソケットハウジング部4は、インナーハウジング部3と接合する面にインナーハウジング部3の凹3dと嵌合する凸4aが設けられている。
【0065】
また、ソケットハウジング部4は、内部が凹部になっている。ソケットハウジング部4の凹部の底部4bには、貫通孔4cと溝4dとが設けられている。底部4bには、ソケットハウジング部4の内壁に近い部分に溝4dが設けられるため、底部4bの溝4dが設けられる部分は貫通孔4cが設けられている部分よりも厚みがある。各貫通孔4cには、第1コネクタピン31o〜第3コネクタピン31qが貫通される。溝4dには、第4コネクタピン31rが入れられる。また、各貫通孔4cと溝4dとは、インナーハウジング部3の底面3cも含めてコネクタピン31を貫通または入れることが可能な形状となっている。溝4dおよび貫通孔4cの位置によってインナーハウジング部3の位置を決定することができる。
【0066】
次に、
図16を用いて、ソケットハウジング部4とインナーハウジング部3とを接合する工程について説明する。
【0067】
図16に示すように、接着剤によりソケットハウジング部4とインナーハウジング部3とを接合する。これにより、コネクタピン31の周囲を囲むように、インナーハウジング部3の上部3aの上面にソケットハウジング部4が接合される。このとき、例えば、各貫通孔4cには、それぞれ第1コネクタピン31o〜第3コネクタピン31qが貫通される。溝4dに第4コネクタピン31rを入れ、各貫通孔4cには、それぞれ第1コネクタピン31o〜第3コネクタピン31qを貫通させることにより、インナーハウジング部3とソケットハウジング部4とが接合される。
【0068】
その後、ネジ部2の台座部21の下面にオーリング26(
図1)を装着することで、
図1に示す物理量センサ装置100が完成する。
【0069】
以上、説明したように、本実施の形態1によれば、リードピンを収容するインナーハウジング部の一部の穴の形状を、穴の対辺の長さが当該穴に収容されるリードピンの径よりも短くすることで、一部の穴とリードピンとが嵌合するため、リードピンが配置されたセンサエレメントと、インナーハウジング部とを熱硬化の接着剤によって固定するための熱硬化中に、センサエレメントからのインナーハウジング部の浮き上がりによる隙間の発生を抑制することができる。これにより、熱硬化中にセンサエレメントとインナーハウジング部とを押さえつける工程を行うことなく、センサエレメントとインナーハウジング部との接着を安定させることができ、簡易に組み立てることができる。したがって、接着強度の向上と強度の安定化を図ることができ、物理量センサ装置の製造ばらつきを抑制することができる。
【0070】
また、出力端子、電源端子、グランド端子などのように外部と信号を入出力するためのリードピンはインナーハウジング部のコネクタピンとレーザー溶接されるが、そのリードピンに傷が付いていると、レーザー溶接がし難い。そこで、本実施の形態1によれば、形状を変更する穴に収容されるリードピンは、センサの特性調整・トリミングを行うためのリードピンであり、物理量センサ装置の実使用時には使用されない。これにより、出力端子、電源端子、グランド端子などのように外部と信号を入出力されるためのリードピンンに傷を付けることなく、センサエレメントとインナーハウジング部との接着を安定させることができる。
【0071】
また、形状を変更する一部の穴の数は、1個以上3個以下であることが好ましい。これにより、嵌め込み易さを維持しつつ、センサエレメントからのインナーハウジング部の浮き上がりを抑制することができる。特に一部の穴の数が3個であれば、面固定となるため、センサエレメントからのインナーハウジング部の浮き上がりをより抑制することができる。また、例えば、コネクタピンの断面形状が円形形状である場合に、ソケットハウジング部の一部の穴以外の残余の穴の形状は円形形状であり、一部の穴の形状は、多角形や弦と円弧を組み合わせた形状である。
【0072】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる物理量センサ装置の製造方法について説明する。
図17は、実施の形態2にかかる物理量センサ装置の製造途中(組立途中)の状態を示す説明図である。実施の形態2にかかる物理量センサ装置の製造方法が実施の形態1にかかる物理量センサ装置の製造方法と異なる点は、コネクタピン31のチップコンデンサ18を取り付けるための部分が露出された窓部3gが形成されるようにインナーハウジング部3とコネクタピン31とを一体成形し、インナーハウジング部3の窓部3gに露出するコネクタピン31にチップコンデンサ18を取り付けた後に、当該窓部3gを樹脂で埋める点である。
【0073】
具体的には、コネクタピン31を、インナーハウジング部3の成形用の金型に入れる。そして、その金型に樹脂材料を流し込むことによりインナーハウジング部3とコネクタピン31とを一体成形する。これにより、
図17に示すように、窓部3gが設けられたインナーハウジング部3の上端部3eが形成される。次に、
図17に示すように、窓部3gに露出するコネクタピン31の凹部31fに、接合部材17によってチップコンデンサ18を取り付ける。次に、窓部3gに樹脂部材を流し込むことにより窓部3gを樹脂で埋める。これにより、上述した
図5(1)に示したように、コネクタピン31に取り付けたチップコンデンサ18および接合部材17が樹脂によって被覆されたインナーハウジング部3が得られる。
【0074】
実施の形態2にかかる物理量センサ装置の製造方法におけるインナーハウジング部3とコネクタピン31とを一体成形する工程と、コネクタピン31にチップコンデンサ18を取り付ける工程と、窓部3gを樹脂で埋める工程とは、実施の形態1にかかる物理量センサ装置の製造方法においてコネクタピン31にチップコンデンサ18を取り付ける工程と、チップコンデンサ18を取り付けた後にインナーハウジング部3とコネクタピン31とを一体成形する工程と、の代わりに行われる。また、実施の形態2にかかる物理量センサ装置の製造方法においてこれらの工程以外の工程については、実施の形態1にかかる物理量センサ装置の製造方法と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0075】
以上において本発明は、上述した実施の形態1,2に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した各実施の形態では圧力センサ装置を例に説明しているが、上述した各実施の形態に限らず、例えば、加速度、ジャイロ(角度や角速度)、流量および温度など圧力以外の物理量を検出する物理量センサ装置にも適用可能である。また、上述した各実施の形態では、歪ゲージ式の圧力センサチップを例に説明しているが、半導体ピエゾ抵抗式、静電容量式およびシリコンレゾナント式の圧力センサチップも適用可能である。
【0076】
また、例えば、上述した実施の形態1,2では、チップコンデンサがインナーハウジング部のコネクタピンの端部に設けられている例を用いて説明しているが、インナーハウジング部の凹部内にノイズ対策用基板を介してノイズ対策用のチップコンデンサが設けられていてもよい。そして、ノイズ対策用基板には、例えば、第1リードピンおよび第2リードピンの少なくとも一部を貫通させるための貫通孔が設けられている。この貫通孔の周囲に設けられたランド(不図示)に第1リードピンが半田付けされている。ノイズ対策用基板は、貫通孔を貫通する第1リードピンに固定され、収納箱に対する配置(縦方向および横方向)が決定される。また、ノイズ対策用基板の貫通孔に少なくとも一部の第2リードピンを貫通させて、当該第2リードピンによってノイズ対策用基板を固定してもよい。この場合、第2リードピンが貫通する貫通孔の周囲にランドを設けなくてもよい。一部の第2リードピンは、例えば、3本の第2リードピンであることが好ましい。また、チップコンデンサは、ノイズ対策用基板の上面(縦方向に収納箱に対向する面に対して反対側の面)に配置され、配線パターンおよびランドを介して第1リードピンに電気的に接続されている。また、ノイズ対策用基板の貫通孔に貫通されない第2リードピンの上端部は、特性調整・トリミング後に、インナーハウジング部の凹部内に収まる程度の長さに短く切断されていてもよい。
【0077】
また、例えば、上述した実施の形態1,2では、インナーハウジング部とソケットハウジング部の2つの部材を用いた例を説明した。これは、第1リードピンとコネクタピンとをレーザー溶接する場合に、ソケットハウジング部を取り付ける前に第1リードピンとコネクタピンとのレーザー溶接を行うことにより溶接を容易とするものである。しかし、物理量センサ装置が十分大きく、ソケットハウジング部を取り付けた後に第1リードピンとコネクタピンとのレーザー溶接を行うことができる場合は、インナーハウジング部とソケットハウジング部を一体に樹脂成形することができる。この場合、インナーハウジング部とソケットハウジング部とを一体に成形する際、チップコンデンサを取り付けたコネクタピンをインサート成形することができる。インナーハウジング部とソケットハウジング部とが一体成形されたハウジング部(第1収容部)を有する物理量センサ装置の製造方法では、チップコンデンサを接合部材により取り付けたコネクタピンを、ハウジング部の成形用の金型に入れ、その金型に樹脂部材を流し込むことにより、インナーハウジング部とソケットハウジング部とを合わせたハウジング部とコネクタピンとを一体成形することができる。