特許第6809302号(P6809302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6809302ガラス微粒子堆積体の製造方法および製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809302
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ガラス微粒子堆積体の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 8/04 20060101AFI20201221BHJP
   C03B 37/018 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   C03B8/04 A
   C03B37/018 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-43574(P2017-43574)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-145065(P2018-145065A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高城 充
(72)【発明者】
【氏名】幅崎 利已
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 雅基
(72)【発明者】
【氏名】戸成 大祐
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−102207(JP,A)
【文献】 特開平09−118538(JP,A)
【文献】 特開平10−114535(JP,A)
【文献】 特開2002−255564(JP,A)
【文献】 特開2012−176861(JP,A)
【文献】 特開2001−048550(JP,A)
【文献】 特開2003−212554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス微粒子生成用のバーナに流量制御機構でガラス原料の流量を制御しつつ供給し、軸方向に往復移動するとともに回転する出発材に、ガラス微粒子の堆積層を形成するガラス微粒子堆積体の製造方法であって、
前記流量制御機構から前記バーナに前記ガラス原料を流す供給配管ラインと、前記供給配管ラインの途中で前記供給配管ラインから分岐する分岐配管ラインと、が設けられており、
前記流量制御機構で制御する前記分岐配管ラインが分岐する前の前記供給配管ラインにおける前記ガラス原料の流量を変えずに、前記分岐配管ラインに前記ガラス原料を流す流量を変えることで、前記堆積層の両端部を形成する際に前記バーナへ供給する前記ガラス原料の流量を、前記両端部以外の部分を形成する際に前記バーナへ供給する前記ガラス原料の流量よりも少なくする、ガラス微粒子堆積体の製造方法。
【請求項2】
前記ガラス原料は、四塩化ゲルマニウムを含む、請求項1に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法。
【請求項3】
記分岐配管ラインの途中に配置された開度調整弁が設けられており、
前記開度調整弁の開度を調整し、前記堆積層の両端部を形成する際に前記バーナへ供給する前記ガラス原料の流量を、前記両端部以外の部分を形成する際に前記バーナへ供給する前記ガラス原料の流量よりも少なくする、請求項1または請求項2に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法。
【請求項4】
前記分岐配管ラインの出口には除害装置が設けられており、
前記堆積層の両端部を形成する際に、前記除害装置に前記ガラス原料を流すとともに、前記分岐配管ライン内の圧力を所定の圧力に調整する、請求項3に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法。
【請求項5】
軸方向に往復移動するとともに回転する出発材に、ガラス微粒子生成用のバーナでガラス微粒子の堆積層を形成する際に、前記バーナにガラス原料を供給するガラス原料供給装置を備えたガラス微粒子堆積体の製造装置であって、
前記ガラス原料供給装置は、
ガラス原料の流量制御機構と、
前記流量制御機構から前記バーナに前記ガラス原料を流す供給配管ラインと、
前記供給配管ラインの途中で前記供給配管ラインから分岐して除害装置に前記ガラス原料を流す排ガス配管ラインと、
圧力制御機構と、
を備えており、
前記排ガス配管ラインは、
開度調整弁と、
前記ガラス原料とは異なる第二のガスを、前記開度調整弁の下流に設けられた合流ポイントにおいて合流させる前記第二のガスの配管ラインと、
前記合流ポイント付近において前記排ガス配管ライン内の圧力を測定する圧力計と、を備え、
前記圧力制御機構は、
前記圧力計で測定される圧力が所定の圧力となるように前記第二のガスの配管ラインの流量を制御する機構であり、
前記ガラス原料供給装置は、
さらに、前記開度調整弁の開度を調整する制御部を備え、
前記制御部は、前記開度調整弁の開度を調整して前記排ガス配管ラインに流す前記ガラス原料の流量を変えることで、前記流量制御機構で制御される前記排ガス配管ラインが分岐する前の前記供給配管ラインにおける前記ガラス原料の流量を変えずに、前記堆積層の両端部を形成する際に前記バーナへ供給する前記ガラス原料の流量を、前記両端部以外の部分を形成する際に前記バーナへ供給する前記ガラス原料の流量よりも少なくするように制御する、ガラス微粒子堆積体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス微粒子堆積体の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸方向に往復移動するとともに回転する出発材に、ガラス微粒子生成用のバーナでガラス微粒子の堆積層を形成するガラス微粒子堆積体の製造方法および製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−212554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス微粒子堆積体の製造において、堆積層の両端部の近傍は、堆積量が一定でないため最終的に製品として使用できない。このため、堆積層の両端部を形成する際にバーナへのガラス原料の供給を止めるようにガラス原料の流量を調整することが考えられる。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されたガラス微粒子堆積体の製造方法においては、ガラス微粒子生成用のバーナへ供給するガラス原料の流量を流量制御機構で制御している。この流量制御機構の制御においては、出発材が往復移動する際に、ガラス微粒子の堆積層の両端部を形成する際にバーナへのガラス原料の供給がゼロになるようにし、前記両端部から中央部までを形成する際に徐々にガラス原料の供給を増やして規定の流量となるようにしている。バーナへ供給するガラス原料が規定の流量となるまでは、ガラス微粒子堆積層は非有効部となり、規定の流量となった状態で形成されたガラス微粒子堆積層は有効部となる。ところが、上記のような流量制御機構の制御では、流量を変えてから一定流量に落ち着くまで流量が変動するので、この流量変動が収まって安定した規定の流量にするまでの時間がかかり、この間のガラス微粒子の堆積層は非有効部となってしまう。このため、ガラス微粒子堆積体の有効部が短くなる。また、バーナへ供給するガラス原料の流量が安定していない箇所では、ガラス微粒子の堆積状態が安定せず、その箇所は、ガラス微粒子堆積体を脱水及び焼結させて透明化する際に破損するおそれがある。
【0006】
本発明は、製造されるガラス微粒子堆積体の有効部が短くなることを抑制し、ガラス微粒子堆積体を脱水及び焼結させて透明化する際に破損することを抑制することができるガラス微粒子堆積体の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るガラス微粒子堆積体の製造方法は、
ガラス微粒子生成用のバーナに流量制御機構でガラス原料の流量を制御しつつ供給し、軸方向に往復移動するとともに回転する出発材に、ガラス微粒子の堆積層を形成するガラス微粒子堆積体の製造方法であって、
前記流量制御機構で制御する前記ガラス原料の流量を変えずに、前記堆積層の両端部を形成する際に前記バーナへ供給する前記ガラス原料の流量を、前記両端部以外の部分を形成する際に前記バーナへ供給する前記ガラス原料の流量よりも少なくする。
【0008】
また、本発明の一態様に係るガラス微粒子堆積体の製造装置は、
軸方向に往復移動するとともに回転する出発材に、ガラス微粒子生成用のバーナでガラス微粒子の堆積層を形成する際に、前記バーナにガラス原料を供給するガラス原料供給装置を備えたガラス微粒子堆積体の製造装置であって、
前記ガラス原料供給装置は、
ガラス原料の流量制御機構と、
前記流量制御機構から前記バーナに前記ガラス原料を流す供給配管ラインと、
前記流量制御機構から除害装置に前記ガラス原料を流す排ガス配管ラインと、
圧力制御機構と、
を備えており、
前記排ガス配管ラインは、
開度調整弁と、
前記ガラス原料とは異なる第二のガスを、前記開度調整弁の下流に設けられた合流ポイントにおいて合流させる前記第二のガスの配管ラインと、
前記合流ポイント付近において前記排ガス配管ライン内の圧力を測定する圧力計と、を備え、
前記圧力制御機構は、
前記圧力計で測定される圧力が所定の圧力となるように前記第二のガスの配管ラインの流量を制御する機構である。
【発明の効果】
【0009】
上記発明によれば、製造されるガラス微粒子堆積体の有効部が短くなることを抑制し、ガラス微粒子堆積体を脱水及び焼結させて透明化する際に破損することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るガラス微粒子堆積体の製造装置の概略構成を示す図である。
図2】ガラス原料供給装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】ガラス微粒子の堆積位置による開度調整弁の開度と除害装置および反応容器へのガラス原料の流量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の実施形態の説明)
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
本発明の一態様に係るガラス微粒子堆積体の製造方法は、
(1)ガラス微粒子生成用のバーナに流量制御機構でガラス原料の流量を制御しつつ供給し、軸方向に往復移動するとともに回転する出発材に、ガラス微粒子の堆積層を形成するガラス微粒子堆積体の製造方法であって、
前記流量制御機構で制御する前記ガラス原料の流量を変えずに、前記堆積層の両端部を形成する際に前記バーナへ供給する前記ガラス原料の流量を、前記両端部以外の部分を形成する際に前記バーナへ供給する前記ガラス原料の流量よりも少なくする。
上記方法は、堆積層の両端部を形成する際にも流量制御機構で制御するガラス原料の流量を変えないので、流量を変えてから一定流量に落ち着くまでの流量変動がない。これにより、流量変動に起因する非有効部の発生を抑え、製造されるガラス微粒子堆積体の有効部が短くなることを抑制できる。また、両端部を形成する際には、バーナへ供給するガラス原料の流量を少なくするので、製造されるガラス微粒子堆積体に対して脱水及び焼結を行って透明化する際に気泡の発生を抑制し、気泡によるガラス微粒子堆積体の破損を抑制することができる。
【0012】
(2)前記ガラス原料は、四塩化ゲルマニウムを含む。
ガラスの屈折率を調整するための添加剤としての四塩化ゲルマニウムがバーナへ供給するガラス原料に含まれる場合、バーナへ供給する四塩化ゲルマニウムの流量が不安定になることが抑制されるので、製造されるガラス微粒子堆積体の屈折率分布を安定化させることができる。
【0013】
(3)前記流量制御機構から前記バーナに前記ガラス原料を流す供給配管ラインと、前記供給配管ラインの途中で前記供給配管ラインから分岐する分岐配管ラインと、前記分岐配管ラインの途中に配置された開度調整弁と、が設けられており、
前記開度調整弁の開度を調整し、前記堆積層の両端部を形成する際に前記バーナへ供給する前記ガラス原料の流量を、前記両端部以外の部分を形成する際に前記バーナへ供給する前記ガラス原料の流量よりも少なくする。
分岐配管ラインにガラス原料を流すことで、流量制御機構で制御するガラス原料の流量を変えずに、バーナへ供給するガラス原料の流量を減らすことができる。また、開度調整弁の開度を調整することで流量を徐々にさげて徐々にもどすことができ、バーナへ供給するガラス原料の流量を減らす際に急激に流量が変化しないので、非有効部に急にガラス原料が入らなくなることによる歪の発生を抑制する。
【0014】
(4)前記分岐配管ラインの出口には除害装置が設けられており、
前記堆積層の両端部を形成する際に、前記除害装置に前記ガラス原料を流すとともに、前記分岐配管ライン内の圧力を所定の圧力に調整する。
分岐配管ライン内の出口に除害装置が設けられている場合は、分岐配管ライン内に負圧がかかるため、分岐配管ライン内と供給配管ライン内とで圧力差が生じる。分岐配管ライン内の圧力を所定の圧力に調整することで、供給配管ライン内との圧力差を無くすことができる。これにより、堆積層の両端部を形成する際に例えば開度調整弁を全開にして、供給配管ライン側に流れるガラス原料の流量をターゲットとする流量に合わせやすくできる。
【0015】
また、本発明の一態様に係るガラス微粒子堆積体の製造装置は、
(5)軸方向に往復移動するとともに回転する出発材に、ガラス微粒子生成用のバーナでガラス微粒子の堆積層を形成する際に、前記バーナにガラス原料を供給するガラス原料供給装置を備えたガラス微粒子堆積体の製造装置であって、
前記ガラス原料供給装置は、
ガラス原料の流量制御機構と、
前記流量制御機構から前記バーナに前記ガラス原料を流す供給配管ラインと、
前記流量制御機構から除害装置に前記ガラス原料を流す排ガス配管ラインと、
圧力制御機構と、
を備えており、
前記排ガス配管ラインは、
開度調整弁と、
前記ガラス原料とは異なる第二のガスを、前記開度調整弁の下流に設けられた合流ポイントにおいて合流させる前記第二のガスの配管ラインと、
前記合流ポイント付近において前記排ガス配管ライン内の圧力を測定する圧力計と、を備え、
前記圧力制御機構は、
前記圧力計で測定される圧力が所定の圧力となるように前記第二のガスの配管ラインの流量を制御する機構である。
上記構成によれば、当該製造装置は、流量制御機構で制御するガラス原料の流量を変えずに、堆積層の両端部を形成する際にバーナへ供給するガラス原料の流量を、両端部以外の部分を形成する際にバーナへ供給するガラス原料の流量よりも少なくすることができる。これにより、製造されるガラス微粒子堆積体の有効部が短くなることを抑制し、ガラス微粒子堆積体を脱水及び焼結させて透明化する際に破損することを抑制することができる。
また、排ガス配管ライン内には除害装置から負圧がかかり、排ガス配管ライン内と供給配管ライン内とで圧力差が生じる。排ガス配管ライン内の圧力を圧力制御機構によって所定の圧力とすることで、供給配管ライン内との圧力差を無くすことができる。これにより、堆積層の両端部を形成する際に例えば開度調整弁を全開にして、供給配管ライン側に流れるガラス原料の流量をターゲットとする流量に合わせやすくできる。
【0016】
(本発明の実施形態の詳細)
本発明の実施形態に係るガラス微粒子堆積体の製造方法および製造装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
図1は、ガラス微粒子堆積体の製造装置の一例を示す図である。
図1に示すように、ガラス微粒子堆積体の製造装置1は、外周面にガラス微粒子が堆積される出発ガラスロッド2を備えている。出発ガラスロッド2の両端にはダミー棒3が融着により接続されており、その一方のダミー棒(上方側)3は、支持棒4に固定され吊り下げられている。支持棒4は、昇降回転装置5により、回転されるとともに上下方向に往復移動される。すなわち、昇降回転装置5により出発ガラスロッド2を駆動制御する。
【0018】
また、ガラス微粒子堆積体の製造装置1は、反応容器6と、反応容器6の上方に取り付けられた上煙突7aと、反応容器6の下方に取り付けられた下煙突7bとを備えている。上煙突7aの上部には、出発ガラスロッド2を出し入れ可能とする上蓋(図示省略)が設けられている。上煙突7aと下煙突7bとは、ガラス微粒子の堆積層Mの両端部MaとMbが同時に収納できる長さに形成され、反応容器6の上下に密封状にして結合一体化されている。反応容器6には、ガラス微粒子を生成するための複数本(本例では、3本)のガラス微粒子生成用のバーナ8と、容器内で浮遊するガラス微粒子等を排出する排気管9が設けられている。
【0019】
また、ガラス微粒子堆積体の製造装置1は、バーナ8にガラス原料等を供給するガラス原料供給装置10を備えている。ガラス原料供給装置10には、ガラスの合成に使用されなかったガラス原料等を清浄化処理する除害装置11が接続されている。
【0020】
ガラス微粒子堆積体の製造装置1は、例えばOVD法(外付け気相蒸着法)により、光ファイバ用の円柱状ガラス母材等のガラス合成を行う。
OVD法は、例えば、反応容器6内で出発ガラスロッド2を軸方向に往復移動させるとともに回転させながら、その外周に、四塩化ケイ素(SiCl),四塩化ゲルマニウム(GeCl),シロキサン等のガラス原料ガスを、H等の燃料ガスとO等の助燃ガスとともにバーナ8から吹き付ける。そして、火炎加水分解反応によりガラス微粒子を生成して堆積させ、ガラス微粒子堆積体として円柱状ガラス母材を合成する。
【0021】
具体的には、先ず、出発ガラスロッド2の両端に取付けたダミー棒3の一方を昇降回転装置5の支持棒4に取付け、昇降回転装置5により出発ガラスロッド2を回転させながら下方向に移動させる。ガラス微粒子の堆積の始端(下端部Ma)が反応容器6内に進入し、バーナ8から噴射されるガラス原料ガスを含む酸水素火炎によって、火炎加水分解反応によりガラス微粒子の生成と堆積が開始される。出発ガラスロッド2の外周面には、第一層目のガラス微粒子の堆積層M(以下、第一層目の堆積層Mと称す)が軸方向に沿って順次形成される。
以後、反応容器6内で出発ガラスロッド2を軸方向に往復移動させて堆積層Mを多層に積層し、所定の外径のガラス微粒子堆積体が形成される。形成されたガラス微粒子堆積体は、中央の有効部の両側がテーパー状の非有効部となっている。
形成されたガラス微粒子堆積体は、焼結炉(図示省略)で脱水加熱処理されて透明ガラス化される。
【0022】
図2は、ガラス原料供給装置10の構成を示すブロック図である。
ガラス原料供給装置10は、ガスを供給する流路として、原料ガス供給部12からバーナ8等に向けてガラス原料ガスを供給する原料ガス供給ラインL1と、パージガス供給部13からバーナ8等に向けて不活性のパージガス(例えば、N)を供給するパージガス供給ラインL2とを備えている。また、ガラス原料供給装置10は、原料ガス供給ラインL1とパージガス供給ラインL2とが合流された合流ラインL3と、合流ラインL3から分岐してバーナ8に向かう供給配管ラインL4と、合流ラインL3から分岐して除害装置11に向かう排ガス配管ラインL5(分岐配管ラインの一例)とを備えている。さらに、ガラス原料供給装置10は、パージガス供給ラインL2から分岐して上記排ガス配管ラインL5に合流する第二のガス配管ラインL6を備えている。
【0023】
原料ガス供給ラインL1には、電磁弁14aで操作される空気式操作弁15aが設けられ、パージガス供給ラインL2には、電磁弁14bで操作される空気式操作弁15bが設けられている。そして、原料ガス供給ラインL1の空気式操作弁15aの下流側とパージガス供給ラインL2の空気式操作弁15bの下流側とが合流して合流ラインL3となっている。
【0024】
合流ラインL3の途中には、当該合流ラインL3を通過するガスの流量を制御することが可能な流量制御機構16(例えば、MFC(Mass Flow Controller))が設けられている。そして、合流ラインL3の流量制御機構16の下流側において、合流ラインL3が供給配管ラインL4と排ガス配管ラインL5とに分岐されている。
【0025】
供給配管ラインL4には、電磁弁14cで操作される空気式操作弁15cが設けられ、排ガス配管ラインL5には、電磁弁14dで操作される空気式操作弁15dが設けられている。また、排ガス配管ラインL5における空気式操作弁15dの下流側には、通過するガスの流量を制御することが可能な開度調整弁17が設けられている。供給配管ラインL4の空気式操作弁15cの下流側にはバーナ8が接続され、排ガス配管ラインL5の開度調整弁17の下流側(出口)には除害装置11が接続されている。
【0026】
第二のガス配管ラインL6の途中には、当該第二のガス配管ラインL6を通過する不活性ガス(例えば、N)の流量を制御することが可能な圧力制御機構18(例えば、MFC)が設けられている。第二のガス配管ラインL6は、圧力制御機構18の下流側において、上記排ガス配管ラインL5の開度調整弁17の下流側(例えば、合流ポイント19と称する)に合流されている。圧力制御機構18は、第二のガス配管ラインL6を通過するガスの流量を制御することにより、すなわち、第二のガス配管ラインL6から排ガス配管ラインL5へ流すガスの流量を制御することにより、排ガス配管ラインL5内の圧力を変化させうる。
【0027】
排ガス配管ラインL5には、合流ポイント19付近における排ガス配管ラインL5内の圧力を測定する圧力計20が設けられている。本例において、圧力を測定する「合流ポイント付近」とは、排ガス配管ラインL5における合流ポイント19より下流側の領域も含むが、好ましくは、合流ポイント19と開度調整弁17との間の領域を意味する。特に、開度調整弁17直後の領域が好ましい。圧力制御機構18は、圧力計20で測定される排ガス配管ラインL5内の圧力が所定の圧力となるように、第二のガス配管ラインL6から排ガス配管ラインL5へ流すガスの流量を制御する。上記の所定の圧力は、好ましくは、バーナ8側の反応容器6内の圧力と同じ圧力(例えば、大気圧)である。
【0028】
次に、図2に示すガラス原料供給装置10の動作を図3のガラス微粒子の堆積位置による開度調整弁の開度と除害装置および反応容器へのガラス原料の流量の関係を参照しつつ説明する。
【0029】
図3に示す一回(今回)のトラバース(バーナ8に対する出発ガラスロッド2の一方向への相対移動)において、堆積層Mの下端部Maから上端部Mbまで一層分のガラス微粒子の堆積が行なわれる。
前回のトラバース(上端部Mbから下端部Maまで)において、有効部が終了するガラス微粒子の堆積位置S1において、開度調整弁17を開放させる制御信号が制御部(図示省略)から出力される。この制御信号に基づいて、開度調整弁17が駆動され開度調整弁17の開度が0%から徐々に大きくなる。これにより、合流ラインL3の流量制御機構16から供給される一定流量F1のガラス原料ガスは、排ガス配管ラインL5へ流れ始め、その流量が開度調整弁17の開度に応じて0から徐々に増加していく。反対に供給配管ラインL4へ流れていたガラス原料ガスの流量はF1から徐々に減少していく。排ガス配管ラインL5へ流れるガラス原料ガスは除害装置11へ排出され、供給配管ラインL4へ流れるガラス原料ガスはバーナ8へ供給される。
【0030】
ガラス微粒子の堆積位置が下端部Maに至った時点において前回のトラバースが終了し、開度調整弁17の開度が100%になる。このとき、排ガス配管ラインL5の流量はF2となり、供給配管ラインL4の流量はF1よりも小さくなる。トラバース方向が反転し、下端部Maから今回のトラバースが開始され、開度調整弁17の開度が100%から徐々に小さくなる。これにより、排ガス配管ラインL5へ流れるガラス原料ガスの流量はF2から徐々に減少していく。反対に供給配管ラインL4へ流れるガラス原料ガスの流量は徐々に増加していく。排ガス配管ラインL5へ流れるガラス原料ガスは除害装置11へ排出され、供給配管ラインL4へ流れるガラス原料ガスはバーナ8へ供給される。
【0031】
続いて、開度調整弁17の開度が0%となったガラス微粒子の堆積位置S1で非有効部が終了し、排ガス配管ラインL5を閉じる制御信号が制御部から出力される。この制御信号に基づいて、空気式操作弁15dが開から閉状態とされる。これにより、この時点で、排ガス配管ラインL5へ流れるガラス原料ガスの流量は0となる。また、供給配管ラインL4へ流れるガラス原料ガスの流量はF1になる。流量が一定流量F1となったガラス原料ガスがバーナ8へ供給されることにより、有効部が形成されていく。
【0032】
続いて、ガラス微粒子の堆積位置が上端部Mbに近づきS2(非有効部の開始位置)となった時点で、制御信号が制御部から出力される。この制御信号に基づいて、空気式操作弁15dが閉から開状態とされ、開度調整弁17がその開度を0%から徐々に大きくするように駆動される。これにより、合流ラインL3の流量制御機構16から一定流量F1で供給されるガラス原料ガスは、排ガス配管ラインL5へ流れ始める。そして、排ガス配管ラインL5への流量が開度調整弁17の開度に応じて徐々に増加していく。反対に供給配管ラインL4へ流れていたガラス原料ガスの流量は徐々に減少していく。
【0033】
ガラス微粒子の堆積位置が上端部Mbとなった時点で開度調整弁17の開度は100%となり、排ガス配管ラインL5へ流れるガスの流量は最大のF2となる。また、供給配管ラインL4へ流れるガスの流量は最小となり、今回のトラバース(堆積層Mの下端部Maから上端部Mbまで)のガラス微粒子の堆積が終了する。
【0034】
続いて、トラバース方向が反転し、次回のトラバース(堆積層Mの上端部Mbから下端部Maまで)に入り、制御信号により開度調整弁17が駆動され開度調整弁の開度が100%から小さくなっていく。これにより、排ガス配管ラインL5へ流れるガラス原料ガスの流量はF2から徐々に減少していく。反対に供給配管ラインL4へ流れるガラス原料ガスの流量は徐々に増加していく。ガラス微粒子の堆積位置がS2となった時点で開度調整弁17の開度が0%となり、下端部Ma側に向かう堆積が上記と同様の各段階を経て行われる。
【0035】
上記のようにして、堆積層Mを多層に積層していき、所定の外径のガラス微粒子堆積体が形成されたら、ガラス微粒子の堆積を終了する。このとき、原料ガス供給ラインL1の空気式操作弁15aを閉じて、パージガス供給ラインL2の空気式操作弁15bを開ける。これにより、パージガス供給部13からパージガスが、パージガス供給ラインL2,合流ラインL3(流量制御機構16),供給配管ラインL4を通って、バーナ8を介して反応容器6に供給され、これらの経路内に残っているガラス原料ガスが排出される。
【0036】
以上のように、本実施形態のガラス微粒子堆積体の製造装置および製造方法は、堆積層Mの両端部Ma,Mbを形成する際にも流量制御機構16で制御するガラス原料ガスの流量を変えないので、流量を変えてから一定流量に落ち着くまでの流量変動がない。これにより、流量変動に起因する非有効部の発生を抑えることができ、製造されるガラス微粒子堆積体の有効部が短くなることを抑制できる。
また、両端部Ma,Mbおよびその近傍を形成する際には、例えば、流量制御機構16から供給されるガラス原料ガスの一部を排ガス配管ラインL5に流すことで、バーナ8へ供給するガラス原料ガスの流量を少なくする。これにより、製造されるガラス微粒子堆積体に対して脱水及び焼結を行って透明化する際に気泡の発生を抑制し、気泡によるガラス微粒子堆積体の破損を抑制することができる。
【0037】
また、バーナ8へ供給するガラス原料ガスにガラスの屈折率を調整するための添加剤としての四塩化ゲルマニウムが含まれる場合、バーナ8へ供給される四塩化ゲルマニウムの流量が不安定になることを抑制することができる。このため、製造されるガラス微粒子堆積体の屈折率分布を安定化させることができる。
【0038】
また、排ガス配管ラインL5に設けられた開度調整弁17の開度を調整することで供給配管ラインL4に供給されるガラス原料ガスの流量を徐々に増減させることができる。このため、ガラス原料ガスの流量が急激に変化することに起因する非有効部の歪みの発生を抑制することができる。
【0039】
また、排ガス配管ラインL5内には除害装置11から負圧がかかるため、排ガス配管ラインL5内と供給配管ラインL4内とで圧力差が生じうる。これに対して、圧力制御機構18による圧力制御により排ガス配管ラインL5内の圧力を所定の圧力に調整することで、供給配管ラインL4内との圧力差を無くすことができる。このため、堆積層Mの非有効部を形成する際に、開度調整弁17を開閉させていく過程において供給配管ラインL4側に流れるガラス原料ガスの流量を安定して変化させることができる。これにより、例えば開度調整弁17を全開にしたとき、供給配管ラインL4側に流れるガラス原料ガスの流量をターゲットとする流量に合わせやすくできる。
【0040】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 ガラス微粒子堆積体の製造装置
2 出発ガラスロッド
6 反応容器
8 バーナ
10 ガラス原料供給装置
11 除害装置
12 原料ガス供給部
13 パージガス供給部
16 流量制御機構
17 開度調整弁
18 圧力制御機構
19 合流ポイント
20 圧力計
L4 供給配管ライン
L5 排ガス配管ライン(分岐配管ラインの一例)
L6 第二のガス配管ライン
M 堆積層
Ma 下端部
Mb 上端部
図1
図2
図3