特許第6809308号(P6809308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809308
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】コンデンサ装置
(51)【国際特許分類】
   H01G 2/02 20060101AFI20201221BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20201221BHJP
   H01G 2/14 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   H01G2/02 101E
   H01G2/02 101Z
   H01G2/10
   H01G2/14
   H01G2/14 101
   H01G2/14 105
   H01G2/14 105Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-48249(P2017-48249)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-152484(P2018-152484A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 誠
(72)【発明者】
【氏名】恩田 謙一
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−20530(JP,U)
【文献】 米国特許第5475272(US,A)
【文献】 特開2000−164467(JP,A)
【文献】 特開2002−345247(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/157823(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/02
H01G 2/10
H01G 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンデンサが接続されたコンデンサ回路を備え、
該コンデンサ回路の内の1または2以上のコンデンサは、他のコンデンサより絶縁破壊電圧が低くされており、過電圧の印加によって絶縁破壊電圧の低い前記コンデンサが前記他のコンデンサよりも先に絶縁破壊されて前記コンデンサ回路が短絡することを特徴とするコンデンサ装置。
【請求項2】
前記コンデンサは、過電圧短絡機能部を備えることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ装置。
【請求項3】
前記コンデンサ回路は、並列接続された複数の前記コンデンサを含むコンデンサ群が形成され、このコンデンサ群毎に絶縁破壊電圧の低い前記コンデンサが少なくとも1つずつ含まれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンデンサ装置。
【請求項4】
前記コンデンサは、電極箔間に介在するセパレータの一部に、該電極箔に対する絶縁機能が低い低絶縁部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載のコンデンサ装置。
【請求項5】
前記コンデンサ回路は、少なくとも前記コンデンサの周囲に防護筐体を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のコンデンサ装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電圧の印加に対するコンデンサ回路の安全管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、電源装置や電力変換装置などに多用されている。たとえばインバータでは、入力平滑用のコンデンサとして電解コンデンサが用いられる。入力平滑用コンデンサには、スイッチング素子のスイッチングで発生するリプル電流が加わる。また交流電源の場合、このリプル電流に加えて入力側整流回路で発生するリプル電流を平滑する機能が電解コンデンサに求められる。
平滑用コンデンサユニットには、たとえば発生するリプル電流や入力電圧に応じて、直列、並列に接続された複数の電解コンデンサが用いられる。
【0003】
このようなコンデンサを用いた電源装置に関し、電解コンデンサをキャップで覆うことで、平滑用コンデンサに許容電圧を超える電圧が印加された時に、防爆弁の作動により噴出した電解液などを受け止めるものがある(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−156546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数のコンデンサを直列に接続したコンデンサ回路では、たとえば1つのコンデンサが短絡(ショート)すると、他のコンデンサや接続された機器などに過大な電圧が印加されるので、コンデンサ回路に接続した機器の破損など、安全性に問題が生じるおそれがある。そのためインバータの安全性に関する基準として、たとえばUL(Underwriters Laboratories)規格を充足させる必要がある。このUL規格では、直列接続を含む複数のコンデンサで構成された装置において、装置内のコンデンサ1つを意図的にショートさせ、直列に接続された他のコンデンサに過電圧を印加させる。その際に、このコンデンサ装置と接続したインバータから発火させないようにする必要がある。このUL規格に則るためには、強制的に生じさせた過電圧をインバータ側に影響させないようにする必要がある。
【0006】
また、コンデンサのショートによる過電圧の発生に対して、コンデンサ装置内のコンデンサが破損した場合、この破損したコンデンサのスパークや内容物の飛散などによるインバータの破損や発火を防止する必要がある。しかし、多数のコンデンサを備えたコンデンサ装置では、どのコンデンサが破損するかを予測することが困難であるという課題がある。また、安全性を高めるために、全てのコンデンサに対して防護手段を施すのでは、コンデンサ装置の大型化やコストの増加などを招くおそれがある。
【0007】
斯かる課題について、特許文献1には開示や示唆はなく、開示された構成で解決することができない。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、コンデンサ装置の保安性能や安全性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサ装置の一側面は、複数のコンデンサが接続されたコンデンサ回路を備え、該コンデンサ回路の内の1または2以上のコンデンサは、他のコンデンサより絶縁破壊電圧が低くされており、過電圧の印加によって絶縁破壊電圧の低い前記コンデンサが前記他のコンデンサよりも先に絶縁破壊されて前記コンデンサ回路が短絡する。
【0010】
上記コンデンサ装置において、前記コンデンサは、過電圧短絡機能部を備えてよい。
【0011】
上記コンデンサ装置において、前記コンデンサ回路は、並列接続された複数の前記コンデンサを含むコンデンサ群が形成され、このコンデンサ群毎に絶縁破壊電圧の低い前記コンデンサが少なくとも1つずつ含まれてもよい。
【0012】
上記コンデンサ装置において、前記コンデンサは、電極箔間に介在するセパレータの一部に、該電極箔に対する絶縁機能が低い低絶縁部を備えてよい。
【0013】
上記コンデンサ装置において、前記コンデンサ回路は、少なくとも前記コンデンサの周囲に防護筐体を備えてよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0015】
(1) 回路内に印加された過電圧に対し、特定のコンデンサをショートにより破損させることで、接続されたインバータなどに過電圧が印加されるのを阻止できる。
【0016】
(2) ショートさせるコンデンサを予め特定し、過電圧印加時のコンデンサの破損に対する対応が準備できるので、コンデンサ装置や、これに接続される機器の安全性の向上が図れる。
【0017】
(3) ショートさせるコンデンサのみに防護筐体を設けることで、コンデンサの内容物の飛散や発火などを防止でき、安全性の向上が図れるほか、破損の可能性が低いコンデンサに対して筐体等の防護手段を形成することがなく、低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施の形態に係るコンデンサ装置の構成例を示す図である。
図2】コンデンサを直並列に接続したコンデンサ装置の構成例を示す図である。
図3】コンデンサ素子の構成例を示す図である。
図4】低絶縁部を備えるセパレータの機能構成例を示す図である。
図5】コンデンサ装置の第1の実施例を示す図である。
図6】コンデンサ装置の第2の実施例を示す図である。
図7】コンデンサ装置の第3の実施例を示す図である。
図8】コンデンサ装置の第4の実施例を示す図である。
図9】実験例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔一実施の形態〕
【0020】
図1は、一実施の形態に係るコンデンサ装置を示している。図1に示す構成は一例であり、本発明が係る構成に限定されない。
【0021】
このコンデンサ装置2は、たとえば図1のAに示すように5つのコンデンサ41、42、・・・45が並列に接続されたコンデンサ回路を備える。このコンデンサ装置2は、電源装置や電力変換装置などに用いられており、並列接続されたコンデンサ回路によって、入力された電力を平滑化する機能を発揮する。
【0022】
並列接続された複数のコンデンサのうち、コンデンサ41は、過電圧短絡コンデンサ40の一例であり、コンデンサ回路に過電圧が印加された時に、他のコンデンサ42、43、44、45よりも早くショートする。過電圧短絡コンデンサ40の絶縁破壊電圧は、他のコンデンサ42、43、44、45の絶縁破壊電圧より低く設定されており、過電圧の印加により絶縁破壊する本開示のコンデンサの一例である。ここで、絶縁破壊電圧とは、コンデンサの陽極側の端子部品と陰極側の端子部品との間に、電極箔や電解液、セパレータ等の耐圧より高く、電圧印加されたときに絶縁が保てなくなり絶縁破壊をおこしてショートに至る電圧をいう。すなわちこの過電圧短絡コンデンサ40は、定格電圧よりも高い電圧の印加に対してショートし易く構成されている。またこの過電圧短絡コンデンサ40は、定格電圧以下の電圧が印加される場合には、他のコンデンサ42、43、・・・45と同様に電荷を蓄積できる。
【0023】
過電圧短絡コンデンサ40は、たとえば図1のBに示すように、コンデンサ41に対して過電圧短絡機能部6が接続されている。この過電圧短絡機能部6は、コンデンサ41側に印加される電圧が基準以上のときにコンデンサ41をショートさせる機能手段の一例である。過電圧短絡機能部6は、印加される電圧の判断機能、コンデンサ41の短絡機能を備えればよく、たとえば電圧検出回路や、検出電圧値に応じてコンデンサ41をショートさせる電子回路で構成されてもよく、または斯かる機能を実現するための機能部品で構成されてもよい。
【0024】
このコンデンサ装置2は、たとえば図示しない回路基板等にコンデンサ41、42、・・・45が接続されたコンデンサ回路で形成される。この回路基板には、たとえば予め設定された位置に過電圧短絡コンデンサ40であるコンデンサ41を配置させればよい。この場合、回路基板には、外部から目視し易いように、通常のコンデンサ42、43、・・・45とコンデンサ41の接続位置を区別可能に表示してもよい。
なお、過電圧短絡コンデンサ40の配置位置は、回路基板の特定位置に限定されず、利用する機器毎に設定してもよい。また、コンデンサ装置2には、並列接続する複数のコンデンサのうち少なくとも1つを過電圧短絡コンデンサ40とすればよく、または2つ以上の過電圧短絡コンデンサ40を設置してもよい。
【0025】
次に、コンデンサが直並列に接続される場合について説明する。図2は、コンデンサを直並列に接続したコンデンサ装置の一例を示す図である。
【0026】
コンデンサ装置2は、たとえば図2に示すように、並列接続した5つのコンデンサ41a、42a、43a、44a、45aを含むコンデンサ群8aと、コンデンサ41b、42b、43b、44b、45bを含むコンデンサ群8bを備え、この2つのコンデンサ群8a、8bとの間でコンデンサ同士が並列に接続された、2直列5並列のコンデンサ回路を備えている。
【0027】
このコンデンサ群8aには、たとえば5つのコンデンサ41a、42a、43a、44a、45aのうち、少なくともコンデンサ41aが過電圧短絡コンデンサ40である。また、同様にコンデンサ群8bのコンデンサ41bが過電圧短絡コンデンサ40である。コンデンサ装置2では、たとえば正常時の電圧分担として複数のコンデンサを直列に接続し、また、コンデンサ装置2が接続するインバータなどの機器の出力に応じて、静電容量を大きくするために複数のコンデンサを並列に接続している。このコンデンサ装置2では、たとえば過電圧が印加されると、コンデンサ群8aのうち、一早くコンデンサ41aが破壊されてショートする。そしてこのコンデンサ装置2に流れる電流はショートにより抵抗値が低下したコンデンサ41aを通じてコンデンサ群8b側に流れる。コンデンサ群8bでは、印加される過電圧に対してコンデンサ41bが他のコンデンサ42b〜45bよりも早く破壊されてショートする。これによりコンデンサ群8bに流れる電流は、抵抗値が低下したコンデンサ41b側に流れやすくなる。このように過電圧の印加に対して、ショートし易いコンデンサ41a、41bを備えることで、破壊されるコンデンサを特定することができる。
【0028】
なお、このコンデンサ装置2では、コンデンサ41a〜45aに対して、コンデンサ41b〜45bがそれぞれ直列に接続された場合であり、各コンデンサ群8a、8bに過電圧短絡コンデンサ40を少なくとも1つずつ備える場合を示している。これに対しコンデンサ群8aとコンデンサ群8bの間で、直列に接続されていないコンデンサが含まれる場合、そのコンデンサの接続関係に応じて過電圧短絡コンデンサ40を接続させればよい。
【0029】
<コンデンサの構成>
【0030】
次に、ショートさせやすいコンデンサの構成例について説明する。図3は、コンデンサ素子の構成例を示す図である。このコンデンサ素子は一例であり、本発明が係る構成に限定されない。
【0031】
このコンデンサ素子10は、本開示の過電圧短絡機能部6を備えるコンデンサの構成部品の一例である。コンデンサ装置2を構成するコンデンサは、たとえば電解コンデンサであって、電極箔である陽極箔12、陰極箔14と、この電極箔の絶縁手段であるセパレータ16−1、16−2の積層体を備える。そしてコンデンサ素子10は、この積層体が巻回中心18に巻回された巻回素子20である。陽極箔12および陰極箔14は、たとえば、アルミニウム箔が用いられている。陽極箔12は、エッチング処理の後、化成処理によって箔の表面に誘電体酸化皮膜が形成される。
【0032】
セパレータ16−1、16−2は、たとえばクラフト系繊維不織布やヘンプ系繊維不織布などの電解紙で形成される。セパレータ16−1は、積層時に陽極箔12と陰極箔14との間を絶縁する。またセパレータ16−2は、たとえば積層体の最下層に配置されており、巻回されたときに内側にくる陽極箔12を陰極箔14と絶縁する。セパレータ16−1、16−2は、陽極箔12、陰極箔14よりも幅広な短冊形状に形成されており、箔のずれなどが生じても、陽極箔14と陰極箔16との絶縁性を維持する。
【0033】
また、セパレータ16−1、16−2には、それぞれ箔面の一部または全部の範囲に、所定幅で、かつ巻回方向に沿って所定長さで表面処理部22−1、22−2が形成されている。この表面処理部22−1、22−2は、本開示の過電圧短絡機能部6の一例であり、たとえばセパレータ16−1、16−2の箔表面を凹凸形状に成形したエンボス加工が施されている。セパレータ16−1、16−2は、この表面処理部22−1、22−2により絶縁機能が低下する。つまり、表面処理部22−1、22−2はコンデンサ素子10の過電圧に対する脆弱部となる。
【0034】
表面処理部22−1、22−2は、たとえば、凹凸が付されたローラをセパレータ16−1、16−2の一方の表面に押し当てることで、セパレータ表面の圧縮差によって形成される。具体的には、表面処理部22−1、22−2は、たとえばセパレータ16−1、16−2に形成された凹部が、凸部を備えるローラによって強く圧縮された領域であり、この圧縮によりセパレータの厚みが薄くなる。凹部の厚みが他の部分より薄くなるので、セパレータ16−1、16−2の絶縁機能が低下する。
【0035】
このコンデンサ素子10は、たとえば図4に示すように、表面処理部22−1の絶縁抵抗をR1、表面処理されていない部分のセパレータ16−1の絶縁抵抗をR2とすると、表面処理した部分は、たとえばセパレータ16−1の厚さにばらつきが生じ、特に、薄い部分が含まれることで絶縁抵抗R1がセパレータ16−1の絶縁抵抗R2よりも小さくなる。このため、コンデンサに定格電圧を超える過電圧が印加されると、絶縁抵抗が小さい表面処理部22−1でショートが発生する。セパレータ16−2も同様に、絶縁抵抗が小さい表面処理部22−2でショートが発生する。表面処理部22−1、22−2の形成によりセパレータ16−1、16−2の一部が低絶縁部となることで、ショートを誘導することが可能となる。
【0036】
表面処理部22−1、22−2の形成範囲は、たとえばコンデンサの大きさや定格電圧の値、使用環境などに基づいて設定すればよい。また、コンデンサ素子10は、表面処理部22−1、22−2が形成されても、定格電圧が印加された時にはコンデンサに要求される耐電圧性能を満足する耐電圧特性を備えている。これによりコンデンサ素子10により通常のコンデンサ41として機能する。
【0037】
その他、コンデンサ素子10には、たとえば陽極箔12、陰極箔14の箔表面上に、図示しない端子部品を備える。
【0038】
〔一実施の形態の効果〕
【0039】
斯かる構成によれば、以下のような効果が得られる。
【0040】
(1) 複数のコンデンサを並列に接続したコンデンサ装置において、ショートし易いコンデンサを一部に備えることで、コンデンサ回路に過電圧が生じた場合、このショートにより破損するコンデンサを予め特定することができる。そして、ショートするコンデンサが特定できることで、コンデンサ回路に対する安全対策を予め施すことが可能となる。
【0041】
(2) 複数のコンデンサを直並列に接続したコンデンサ回路において、並列に接続されたコンデンサ群に対し、それぞれショートし易いコンデンサを備えることで、意図的に回路の一部をショートさせてその影響を判断するUL規格の充足を果たすことができる。
【0042】
(3) 複数のコンデンサを並列に接続したコンデンサ装置において、ショートし易いコンデンサを一部に備えることで、コンデンサ回路に接続したインバータなどの機器に対して過電圧が印加されるのを回避できる。
【0043】
(4) 複数のコンデンサが並列接続されたコンデンサ群毎に少なくとも1の過電圧短絡機能部を有するコンデンサを備えることで、ショートが発生するコンデンサを特定することができ、このショートに対する対策が可能となり、安全性の向上が図れる。
【0044】
(5) コンデンサ素子のセパレータ16−1、16−2の一部にエンボス加工などの表面処理部22−1、22−2を形成して絶縁性能を調整することで、過電圧の印加に対してショートさせ易くすることができる。これにより、過電圧短絡コンデンサ40を形成することができる。
【0045】
〔実施例1〕
【0046】
次に、コンデンサ装置の実施例について説明する。図5は、コンデンサ装置の第1の実施例を示している。
【0047】
このコンデンサ装置30は、たとえば並列に接続したコンデンサ41〜45のうちコンデンサ41を、過電圧短絡コンデンサ40としている。そして、コンデンサ装置30では、たとえば設置される電装基板等に対し、過電圧短絡コンデンサ40の周囲に、防護筐体32を備えている。この防護筐体は、たとえば耐熱性、耐火性や回路基板と導通させない絶縁性のほか、一定の剛性を備える金属材料などで構成されればよい。
【0048】
過電圧短絡コンデンサ40は、回路に過電圧が印加されることで、コンデンサ41の内部圧力が上昇する。このとき、コンデンサ41は、既述したようにセパレータ16−1、16−2の絶縁性の低下により、内部でショートが生じる。このショートの発生によりコンデンサ41の内部圧力が上昇する。この内部圧力の上昇に対し、コンデンサ41の外装ケースに形成された防爆弁が作動すると、その開口部から電解液の蒸気が噴き出す。このとき、コンデンサ41は、外装ケース内部の電解液や電極箔などが飛散するおそれがある。
【0049】
これに対し、防護筐体32は、コンデンサ41の周囲に対し、噴出した電解液や内部部品がコンデンサ装置30の周囲に飛散するのを防止する。
【0050】
〔実施例2〕
【0051】
図6は、コンデンサ装置の第2の実施例を示している。
【0052】
このコンデンサ装置34は、複数のコンデンサが2直列5並列に接続されている。上記実施の形態で説明したように、このコンデンサ装置34は、コンデンサ群8a、8b毎に、それぞれ少なくとも1つ以上の過電圧短絡コンデンサであるコンデンサ41a、41bを備えている。
【0053】
そしてこのコンデンサ装置34では、過電圧短絡コンデンサ40であるコンデンサ41a、41bの周囲に防護筐体32を設置している。防護筐体32は、たとえばコンデンサ41a、41bに対して単一の構成としてもよい。また防護筐体32は、たとえばコンデンサ装置34において、コンデンサ41a、41bが離れて配置されている場合には、それぞれ別個に構成してもよい。また、防護筐体32は、たとえば複数のコンデンサ41a、41bに対して1つで構成する場合には、内部に仕切り板を形成し、一方のコンデンサが破損した時に他のコンデンサが影響を受けないようにしてもよい。
【0054】
〔実施例3〕
【0055】
図7は、コンデンサ装置の第3の実施例を示している。
【0056】
このコンデンサ装置50は、たとえば2直列5並列の2つのコンデンサ回路が直列に接続されている。コンデンサ装置50は、コンデンサ群8a、8b、8c、8d毎に、それぞれ少なくとも1つ以上の過電圧短絡コンデンサであるコンデンサ41a、41b、41c41dを備えている。
【0057】
そしてこのコンデンサ装置50では、コンデンサ41a、41b、41c、41dの周囲に防護筐体32を設置している。防護筐体32は、たとえば直列接続されたコンデンサ41aと41bとを防護筐体32Aで組み合せ、またコンデンサ41cと41dとを防護筐体32Bで組み合せている。すなわち、近接する複数のコンデンサ41に対し、単一の防護筐体32A、32Bを用いればよい。また防護筐体32は、たとえばコンデンサ装置50において、コンデンサ41a、41b、41c、41dが離れて配置されている場合には、それぞれ別個に形成してもよい。また、防護筐体32は、たとえば複数のコンデンサ41a、41b、41c、41dに対して1つで構成する場合には、内部に仕切り板を形成し、一方のコンデンサが破損した時に他のコンデンサが影響を受けないようにしてもよい。
【0058】
〔実施例1〜3の効果〕
【0059】
斯かる構成によれば、上記実施の形態の効果に加え、以下のような効果が期待できる。
【0060】
(1) 過電圧によってショートするコンデンサの周囲に予め防護筐体32を設置することで、内部圧力上昇による部品や電解液の飛散に対し、コンデンサ装置や、コンデンサ装置に接続する機器への影響を阻止することができる。
【0061】
(2) 予めショートするコンデンサを把握でき、コンデンサ装置全体に対する防護が不要となり、コンデンサ装置の小型化や軽量化が図れる。
【0062】
(3) 過電圧によりショートするコンデンサを防護することで、コンデンサ装置に接続するインバータ側の発火の可能性を低減でき、UL規格で規定されている条件を満たすことができる。
【0063】
〔実施例4〕
【0064】
次に、電力変換装置に本発明のコンデンサ装置を用いた場合の実施例について説明する。図8は、コンデンサ装置の第4の実施例を示している。
【0065】
コンデンサ装置30は、たとえば図8に示すように電力変換装置60の平滑コンデンサバンクとして用いられる。このコンデンサ装置30は、たとえば5つのコンデンサ41〜45が並列接続されており、その内の1のコンデンサ41が既述のように過電圧の印加によって、他のコンデンサ42〜45よりも先にショートし易く形成されている。この電力変換装置60は、たとえばコンデンサ装置30が整流回路62と図示しないインバータの間に接続されるとともに、この整流回路62と交流電源64との間にヒューズ66を備えている。
【0066】
このヒューズ66は、本開示の遮断機能部の一例であり、設定された許容電流よりも大きな電流が電力変換装置60に流れた時に溶断し、電力変換装置60の回路を遮断する。このヒューズ66が作動する場合には、たとえば交流電源64から過大な電力が流れた場合のほか、コンデンサ装置30のコンデンサ41から大電流が流れる場合が含まれる。すなわち、ヒューズ66は、コンデンサ装置30に過電圧が印加されて過電圧短絡コンデンサ40のショートに対して大電流が流れることで溶断する。
【0067】
斯かる構成によれば、コンデンサ回路30においてショートが発生した時に、電力変換装置60のインバータ側に大電流が流れるのを防止でき、電力変換装置60の安全性の向上が図れる。
【0068】
〔実験例〕
【0069】
次に、過電圧短絡コンデンサの設置数を異ならせたコンデンサ装置を短絡させた場合の実験例を示す。
この実験には、たとえば電力変換装置等のコンデンサバンクとして、複数のコンデンサを直並列に接続したコンデンサ装置を用いる。このコンデンサ装置は、たとえば2直列2並列、または2直列6並列でコンデンサが設置されており、これらのコンデンサについて、過電圧短絡コンデンサの設置条件を異ならせた複数の条件を設定している。コンデンサ装置には、ヒューズやインバータが接続されている。インバータは、たとえば筐体に試験物質の一例として綿が取り付けられている。またコンデンサ装置には、過電圧短絡コンデンサに対し防護筐体を設置した場合と、設置しない条件も設定している。
【0070】
このような構成において、コンデンサ装置には、DC640〔V〕の電圧が印加される。そして直列接続されたコンデンサの片側を意図的に短絡させると、短絡していない側のコンデンサに対して全ての電圧が印加される。これによりコンデンサ装置では、コンデンサがショートし、入力側に挿入されているヒューズが動作して回路が遮断される。この実験例では、斯かる条件に対し、ショート時に発生するスパークなどによって、試験物質であるインバータの筐体に設置された綿への引火の有無を確認した。
【0071】
なお、この実験で使用した平滑用コンデンサの定格は、単品定格電圧が400〔V〕、定格静電容量が5600〔μF〕、サイズがφ76.2〔mm〕×130〔mm〕である。
【0072】
この実験結果は、図9に示すように、並列接続したコンデンサに対して少なくとも各1個以上の過電圧短絡コンデンサを設置した実験例1〜3は、試験物質の発火が無く試験結果が適合となった。これに対し、過電圧短絡コンデンサを設置しない比較例1、3は、試験物質が発火し、試験結果は不適合となる。また、過電圧短絡コンデンサを設置した場合でも、防護筐体を備えない比較例2では、試験物質が発火し、試験結果が不適合となる。
斯かる結果から、コンデンサのショート発生時に受けるエネルギーがコンデンサケースの破損以下の場合には、防護筐体が無くても適合する可能性がある。また並列に設置するコンデンサの数が多い比較例2、3では蓄積されたエネルギーが大きくなるため、防護筐体が無ければコンデンサのショートによる破損によって、周囲への影響が大きくなる。
【0073】
従って、本願発明のように、複数のコンデンサを備えるコンデンサ回路において、そのうちの少なくとも1のコンデンサに過電圧短絡機能部を備えることで、周囲の機器への影響を抑えることができる。また過電圧短絡コンデンサに対して防護筐体を設置することで、コンデンサ装置を備える機器の安全性が高められる。
【0074】
〔他の実施の形態〕
【0075】
以上説明した実施形態および実施例について、その特徴事項や変形例を以下に列挙する。
【0076】
(1) 上記実施形態では、セパレータ16−1、16−2の表面処理としてエンボス加工を挙げたがこれに限らない。セパレータの絶縁性を部分的に低下させてコンデンサをショートし易くする加工であればよく、セパレータに対して折り込みや薄肉化の加工処理を施してもよい。また、セパレータは、表面処理部に対して絶縁性を低下させた別部材を貼り合わせてもよい。
【0077】
(2) コンデンサ装置30に設置するショートし易いコンデンサについて、外部から判別可能な表示手段を備えてもよい。過電圧短絡機能部を備えたコンデンサの外装ケースには、たとえば側面側の一部に、過電圧によってショートし易いコンデンサであることを外部から明示する表示手段を備えている。コンデンサ装置30の形成では、たとえば図示しない回路基板の設置箇所に対して、表示手段を備えるコンデンサを設置する。
【0078】
このような構成により、コンデンサ装置30に設置された複数のコンデンサのうち、過電圧短絡機能部を備えたコンデンサの判別が容易となる。また、コンデンサ装置30や、電源変換装置の組立てにおいて、過電圧短絡機能部を備えたコンデンサの判別が容易となり、回路基板に対する誤接続などを防止することができる。
【0079】
(3) 上記実施例では、電力変換装置60において、交流電源64と整流回路62との間にヒューズ66を接続する場合を示したがこれに限らない。ヒューズ66は、たとえばコンデンサ装置30に接続してもよい。
【0080】
(4) 上記実施例では、防護筐体を設置することで、過電圧短絡コンデンサが過電圧によってショートし、内部圧力上昇による部品や電解液の飛散に対し、周囲の機器への影響を抑える場合を示したがこれに限らない。過電圧短絡コンデンサの外装ケースを硬質なものとして、内部圧力が上昇しても破壊しにくくしてもよい。
【0081】
(5) 上記実施形態では、セパレータ16−1、16−2にエンボス加工を施すことで、他のコンデンサより絶縁破壊電圧を低くしたコンデンサを形成する場合を示したがこれに限らない。他のコンデンサと異なる電極箔やセパレータ、電解液を用いて絶縁破壊電圧が低いコンデンサを形成してもよい。
【0082】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のコンデンサ装置によれば、複数のコンデンサが接続されるコンデンサ装置において、回路内の少なくとも1つを過電圧の印加によって短絡するコンデンサにすることで、過電圧が生じた際の安全性対策をとることができ、有用である。
【符号の説明】
【0084】
2、30、34、50 コンデンサ装置
4、41、41a、41b、41c、41d、42、42a、42b、42c、42d、43、43a、43b、43c、43d、44、44a、44b、44c、44d、45 コンデンサ
6 過電圧短絡機能部
8a、8b、8c、8d コンデンサ群
10 コンデンサ素子
12 陽極箔
14 陰極箔
16−1、16−2 セパレータ
18 巻回中心
20 巻回素子
22−1、22−2 表面処理部
32 防護筐体
40 過電圧短絡コンデンサ
60 電源変換装置
62 整流回路
64 交流電源
66 ヒューズ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9