特許第6809322号(P6809322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809322
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】押出プレスの油圧機器故障診断方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 20/00 20060101AFI20201221BHJP
   B21C 31/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   F15B20/00 D
   B21C31/00
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-54462(P2017-54462)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-155374(P2018-155374A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
(72)【発明者】
【氏名】江本 幸男
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−022993(JP,A)
【文献】 特開2003−035621(JP,A)
【文献】 特開平11−248030(JP,A)
【文献】 特開平07−294365(JP,A)
【文献】 特開平10−169616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 20/00
F15B 15/14
F04B 49/10
F16K 51/00
B21C 31/00;51/00
G01M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出プレスに備え付けられた油圧機器において
前記油圧機器の油の入口と出口の配管の温度差を、押出時に連続計測を行い計測中の該温度差基準となる温度差を超えた際に、前記油圧機器劣化したと診断することを特徴とする押出プレスの油圧機器故障診断方法。
【請求項2】
前記油圧機器がピストンポンプの場合において、
前記ピストンポンプの油の入口と出口の配管の温度差を、押出時に連続計測を行い計測中の該温度差が基準となる第1の温度差を超えた際に、前記ピストンポンプが劣化したと診断することを特徴とする請求項1に記載の押出プレスの油圧機器故障診断方法。
【請求項3】
前記基準となる第1の温度差は20度であることを特徴とする請求項2に記載の押出プレスの油圧機器故障診断方法。
【請求項4】
前記油圧機器がリリーフバルブの場合において、
前記リリーフバルブの油の入口と出口の配管の温度差を、押出時に連続計測を行い計測中の該温度差が基準となる第2の温度差を超えた際に、前記リリーフバルブが劣化したと診断することを特徴とする請求項1に記載の押出プレスの油圧機器故障診断方法。
【請求項5】
前記基準となる第2の温度差は7度であることを特徴とする請求項4に記載の押出プレスの油圧機器故障診断方法。
【請求項6】
前記油圧機器がサイドシリンダ及びコンテナシリンダの少なくとも一方の場合において、
前記サイドシリンダ及び前記コンテナシリンダの少なくとも一方の、ヘッド側ポートとロッド側ポートの配管の温度差を、押出時に連続計測を行い計測中の該温度差が、基準となる第3温度差を超えた際に、前記サイドシリンダ及び前記コンテナシリンダの少なくとも一方のシリンダパッキンが劣化したと診断することを特徴とする請求項1に記載の押出プレスの油圧機器故障診断方法。
【請求項7】
前記基準となる第3の温度差は7度であることを特徴とする請求項6に記載の押出プレスの油圧機器故障診断方法。
【請求項8】
前記ピストンポンプの油の出口がケースドレインであることを特徴とする請求項2に記載の押出プレスの油圧機器故障診断方法。
【請求項9】
前記配管の温度差が、前記基準となる温度差を超えた際に、操作画面に異常警報を出すことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の押出プレスの油圧機器故障診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は押出プレスに係り、押出プレスにおける油圧機器故障診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属材料、例えばアルミニウム又はその合金材料等によるビレットを押出プレ
ス装置により押出す場合、油圧シリンダで駆動されるメインラムの先端部に押出ステムが取り付けられており、ダイスにコンテナを押し付けた状態で、ビレットをコンテナ内に収納する。そして、メインラムを更に油圧シリンダの駆動により前進させることにより、ビレットが押出ステムにて押圧される。そこで、ダイスの出口部から、成形された製品が押出される。
ビレットを押し出した後は、コンテナをコンテナシリンダにより若干後退させて、ディスカードがコンテナから外れた位置からメインラムとコンテナを後退させる。
次に、コンテナとダイスとの間に切断装置の切断刃を送り込み、ダイス面に残ったビレット(ディスカードと称される。)を切り離す。その後は、メインラムを後退させて押出ステムをコンテナから抜き出し,次のビレットをコンテナに挿填して次サイクルの押出成形に移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−022993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧駆動の押出プレスにおいて
油圧ポンプ等油圧装置に用いる機器は経年劣化(摩耗など)により環状すきまから流れる油(リーク量)の通過抵抗で温度が上昇する。温度上昇幅は、例えばポンプでは+20℃程度が正常範囲とされ、20℃以上あれば機器の劣化・寿命と判断できるため交換の対象と判断できる。
【0005】
油圧ポンプ駆動の押出プレスにおいて、メインポンプ(ピストンポンプ)の更新時期は使用条件により様々であり、ポンプの寿命判断はユーザーの経験によってされている。
【0006】
リリーフバルブの更新時期は生産中に押出不可能になってから更新しており、交換に際し生産を停止する必要がある。
【0007】
サイドシリンダ及びコンテナシリンダ内のメンテナンス時期の判定も押出速度の異常が発生して判るため生産を停止する必要がある。
以上のことを事前に判断することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
押出プレスに備え付けられた油圧機器において
前記油圧機器の油の入口と出口の配管の温度差を、押出時に連続計測を行い計測中の該温度差基準となる温度差を超えた際に、油圧機器劣化したと診断することにした。
【0009】
前記油圧機器がピストンポンプの場合において、
前記ピストンポンプの油の入口と出口の配管の温度差を、押出時に連続計測を行い計測中の該温度差が基準となる第1の温度差を超えた際に、前記ピストンポンプが劣化したと診断することにした。
【0010】
前記基準となる第1の温度差は20度であることにした。
【0011】
前記油圧機器がリリーフバルブの場合において、
前記リリーフバルブの油の入口と出口の配管の温度差を、押出時に連続計測を行い計測中の該温度差が基準となる第2の温度差を超えた際に、前記リリーフバルブが劣化したと診断することにした。
【0012】
前記基準となる第2の温度差は7度であることにした。
【0013】
前記油圧機器がサイドシリンダ及びコンテナシリンダの少なくとも一方の場合において、
前記サイドシリンダ及び前記コンテナシリンダの少なくとも一方の、ヘッド側ポートとロッド側ポートの配管の温度差を、押出時に連続計測を行い計測中の該温度差が、基準となる第3温度差を超えた際に、前記サイドシリンダ及び前記コンテナシリンダの少なくとも一方のシリンダパッキンが劣化したと診断することにした。
【0014】
前記基準となる第3の温度差は7度であることにした。
【0015】
前記ポンプの油の出口がケースドレインであることにした。
【0016】
前記配管の温度差が、基準となる温度差以上になった際において、操作画面に異常警報を出すことにした。
【発明の効果】
【0017】
押出プレスのピストンポンプの入口とケースドレンの配管に温度検出器を設け、温度差を押出時に連続計測を行い定められた温度差以上になると操作画面に警報を出し故障前のピストンポンプ更新が可能となり、ピストンポンプ故障による突発的な操業停止を回避できる。
【0018】
リリーフバルブの入口と出口の配管に温度検出器を設け、出口と入口の配管の温度差を押出時に連続計測を行い、定められた温度以上になると操作画面に警報を出し、故障前のリリーフバルブ更新や圧力設定を促すことが可能になり、押出圧不足による生産低下を回避することが可能になる。
【0019】
油圧シリンダのヘッド側とロッド側の配管に温度検出器を設け、温度差を押出時に連続計測を行い、定められた温度差以上になると操作画面に警報を出しシリンダ故障による突発的な操業停止を回避できる。
【0020】
上記項目の温度を操作画面上に警報及び温度差記録を残し演算することにより、次期の交換・メンテナンスの時期を示すことが可能となり突発的な機械の故障及び生産量の低下を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本発明の押出プレスの全体概観図の平面図である。
図2図2は押出プレスで使用の可変吐出型ピストンポンプの断面図である。
図3図3はリリーフバルブの断面図である。
図4図4は油圧シリンダの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る押出プレスの油圧機器故障診断方法の実施形態を、図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0023】
本発明に用いる押出プレスを図1に示す。エンドプラテン1とメインシリンダ2を対向して配置し、両者を複数のタイロッド3によって連結している。エンドプラテン1の内側面には押出穴が形成されたダイス4を挟んでコンテナ5が配置され、コンテナ5内に図示しないビレット6を装填し、これをダイス4に向けて押出加圧することでダイス穴に応じた断面の押出製品が押出成形される。
【0024】
押出作用力を発生させるメインシリンダ2は、メインラム9を内蔵し、これをコンテナ5に向けて加圧移動可能としている。このメインラム9の前端部にはコンテナ5のビレット装填穴と同芯配置されるように図示しない押出ステムがその先端に図示しないフィックスダミーブロックを密接させて、コンテナ5に向けて突出状態でメインクロスヘッド8を介して取付けられている。したがって、メインシリンダ2を駆動してメインクロスヘッド8を前進させると、押出ステムがコンテナ5のビレット装填穴に挿入され、装填されたビレット6の後端面を加圧して押出製品を押出すのである。
【0025】
図2に可変吐出型ピストンポンプの断面図を示す。
図2は、本発明に使用される斜板型ピストンポンプの一例を示す側面断面図である。本発明に使用される押出プレスの可変吐出量型ピストンポンプは、斜板型ピストンポンプに限定されるものではない。また、本発明において例示した斜板型ピストンポンプはこれに限定されるものではない。
【0026】
以下、図2を参照して本発明に使用される斜板型ピストンポンプを説明する。
ポンプ部は斜板型ピストンポンプを構成するポンプ機体31を内蔵する。ポンプ機体31はポートプレート35を備え、斜板の傾転角を大きくすれば、ピストンポンプ機体31におけるポンプピストン37のストロークが大きくなり、吐出流量Qが増加する。傾転角を小さくすれば、同ポンプピストン37のストロークが小さくなり、吐出流量Qが減少する。
ピストンポンプへは入り口32より油が注入されてポンプピストン部を通過して出口33から出ることになる。
【0027】
一方、ポンプピストン部等からリークした油はケースドレイン34に集められて、ここからポンプ機外に排出することになる。
入口32と、出口であるケースドレイン34の配管には温度検出器38、39が取り付けられており、各々の位置での配管の温度を検出する。通常、油の温度はケースドレイン34(出口)の方が高いのであるが、ケースドレイン34(出口)の温度と入口32の温度の差を自動で演算し、操作画面に表示する。温度差が20度以上になると故障が発生したと判断する。
温度検出器は例えばK熱電対、あるいはE熱電対のようなものである。
【0028】
故障箇所はピストンポンプの場合、ポートプレート35の摩耗やポンプピストン37の摩耗が発生する。この摩耗による油のリークが発生する。そのために油の温度上昇が起きるのである。
【0029】
温度差が20度で故障が発生したという根拠は、実地の運転で測定を行った結果、油温が20度以上の温度になったとき、異常が見られたことによるものである
【0030】
図3にリリーフバルブ41の断面図を示す。
リリーフバルブ41は規定の機能を発揮するためにはポペット42、43などに摩耗がないことが重要である。すなわちポペット42、43と穴とのシール性が良好でなければならない。シール性が悪いと設定圧よりも低い温度で油がタンクに落ちてしまうことになる。
しかし、経年変化によりポペット42、43の摩耗が発生することになる。
【0031】
本発明ではリリーフバルブの出口と入口の配管の温度を出口に取り付けた温度検出器47と入口に取り付けた温度検出器46により検出し、出口の温度と入口の温度の差を自動で演算し、モニターする。温度差が7度以上になると故障が発生したと判断する。
または、再調整を行う必要があると判断する。
温度検出器47、48は例えばK熱電対、あるいはE熱電対のようなものである。
【0032】
温度差が7度で故障が発生したという根拠は、実地の運転で測定を行った結果、油温が7度以上の温度になったとき、異常が見られたことによるものである
【0033】
図4に油圧シリンダの断面図を示す。
油圧シリンダのヘッド側とロッド側のそれぞれの油圧室に分離しているのはピストン57でピストン57にはシールのためにシリンダパッキン56が取り付けられている。
ヘッド側の油の出入口53の配管には温度検出器54が取り付けられ、また、ロッド側の油の出入口52の配管にも熱電対55が取り付けられている。
【0034】
経年変化によるシリンダパッキン56の摩耗が進んでくると、ロッド側からヘッド側へ、またはヘッド側からロッド側へ油のリークが起こってくる。油のリークが起き始めると、リークした油の温度が上昇してくる。
【0035】
シリンダが前進する場合は油の入口がヘッド側の入口ポート53となり、出口がロッド側の出口ポート52となる。シリンダが前進する場合は熱電対55の温度から熱電対54の温度を引いたものを自動的に操作画面に取り込むか、一方、シリンダが後退する場合は油の入口がロッド側の入口ポート52となり、出口がヘッド側の出口ポート53となる。シリンダが前進する場合は温度検出器54の温度から温度検出器55の温度を引いたものを自動で演算し、操作画面に表示することになる。
温度検出器54、55は例えばK熱電対、あるいはE熱電対のようなものである。
【0036】
以上のように油圧シリンダのヘッド側とロッド側の入口ポートと出口ポートの温度差が7度以上になると故障が発生したと判断する
【0037】
温度差が7度で故障が発生したという根拠は、実地の運転で測定を行った結果、油温が7度以上の温度になったとき、異常が見られたことによるものである
【0038】
押出プレスにおける本発明の油圧シリンダは、例えばサイドシリンダやコンテナシリンダのようなものである。
【0039】
本発明は以上の構成であるから以下の効果が得られる。
押出プレスのピストンポンプの入口とケースドレンの配管に温度検出器を設け、温度差を押出時に連続計測を行い定められた温度差以上になると操作画面に警報を出し故障前のピストンポンプ更新が可能となり、ピストンポンプ故障による突発的な操業停止を回避できる。
【0040】
リリーフバルブの入口と出口の配管に温度検出器を設け、出口と入口の配管の温度差を押出時に連続計測を行い、定められた温度以上になると操作画面に警報を出し、故障前のリリーフバルブ更新や圧力設定を促すことが可能になり、押出圧不足による生産低下を回避することが可能になる。
【0041】
油圧シリンダのヘッド側とロッド側の配管に温度検出器を設け、温度差を押出時に連続計測を行い、定められた温度差以上になると操作画面に警報を出しシリンダ故障による突発的な操業停止を回避できる。
【0042】
上記項目の温度を操作画面上に警報及び温度差記録を残し演算することにより、次期の交換・メンテナンスの時期を示すことが可能となり突発的な機械の故障及び生産量の低下を防ぐことが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 エンドプラテン
2 メインシリンダ
3 タイロッド
4 ダイス
5 コンテナ
6 ビレット
7 押出ステム
8 メインクロスヘッド
9 メインラム
10 サイドシリンダ
31 ピストンポンプ機体
32 入口
33 出口
34 ケースドレン
35 ポートプレート
37 ポンプピストン
38 温度検出器
39 温度検出器
41 リリーフバルブ
42 ポペット
43 ポペット
44 入口
45 出口
46 温度検出器
47 温度検出器
51 油圧シリンダ
52 ロッド側ポート
53 ヘッド側ポート
54 温度検出器
55 温度検出器
56 シートパッキン
57 ピストン
図1
図2
図3
図4