(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の孔塞ぎシールが所定の間隔で貼付された離形テープから前記孔塞ぎシールを剥離した後に、車両の車体パネルに形成された貫通孔の外周面に前記孔塞ぎシールを貼着して、当該貫通孔を閉塞する孔塞ぎシールの貼着方法であって、
前記離形テープを一定方向へ走行させつつ鋭角状に折り返すテープ折り返し部で前記離形テープからシール前端部が剥離された前記孔塞ぎシールを吸着パッドが吸着して前記離形テープから前記孔塞ぎシールのシール後端部を剥離した後に、当該吸着パッドが前進して前記貫通孔の外周面に前記孔塞ぎシールを貼着すること、
前記吸着パッドを前進後退させるパッド駆動装置と、前記孔塞ぎシールが貼付された前記離形テープを一定方向へ走行させつつ鋭角状に折り返すテープ折り返し部を有するテープ供給装置とを備え、
前記テープ供給装置は、前記パッド駆動装置の本体部に旋回可能に支持され、前記テープ供給装置と前記パッド駆動装置の可動部との間には、前記吸着パッドの前進動作に伴って前記テープ折り返し部を前記吸着パッドに対して離間する方向へ旋回させ、かつ、前記吸着パッドの後退動作に伴って前記テープ折り返し部を前記吸着パッドに対して近接する方向へ旋回させる旋回機構を備えていることを特徴とする孔塞ぎシールの貼着方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の粘着テープ貼り付け方法には、以下のような問題があった。すなわち、特許文献1の粘着テープ貼り付け方法によれば、シール貼着装置の貼付ヘッドを構成する剥離板104と小径ローラ105と大径ローラ106とを、プリカット粘着テープ102を貼り付ける貼着対象物であるリングフレーム101に、それぞれ隣接して設ける必要がある。しかし、車体パネルには凹凸形状が形成されているので、上記構造のシール貼着装置の貼付ヘッド(剥離板104と小径ローラ105と大径ローラ106)を貫通孔の外周面に隣接して設けることは、スペース的に困難であった。
【0007】
また、特許文献1の粘着テープ貼り付け方法によれば、広幅フィルム103からプリカット粘着テープ102を剥離するタイミングと、プリカット粘着テープ102をリングフレーム101に貼着するタイミングが略一致しているので、当該プリカット粘着テープ102の貼着時に、貼着対象物であるリングフレーム101を、広幅のフィルム103と一緒に移動するプリカット粘着テープ102の移動方向へ移動させる必要がある。しかし、一般に搬送台車に搭載して搬送する車両の車体パネルを、孔塞ぎシールの移動方向へ移動させることは困難であった。また、仮に、シール貼着装置の貼付ヘッドを孔塞ぎシールの移動方向と反対方向へ移動させるとしても、孔塞ぎシールを貼着する貫通孔の外周面の傾斜角度が種々様々であるので、それぞれの傾斜角度にシール貼着装置の貼付ヘッドの移動方向を対応させることは、必ずしも容易ではない。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、車両の車体パネルに形成された貫通孔の外周面に孔塞ぎシールを簡単かつ迅速に貼着して、当該貫通孔を閉塞し得る孔塞ぎシールの貼着方法及びシール貼着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る孔塞ぎシールの貼着方法及びシール貼着装置は、次のような構成を有している。
(1)複数の孔塞ぎシールが所定の間隔で貼付された離形テープから前記孔塞ぎシールを剥離した後に、車両の車体パネルに形成された貫通孔の外周面に前記孔塞ぎシールを貼着して、当該貫通孔を閉塞する孔塞ぎシールの貼着方法であって、
前記離形テープを一定方向へ走行させつつ鋭角状に折り返すテープ折り返し部で前記離形テープからシール前端部が剥離された前記孔塞ぎシールを吸着パッドが吸着して前記離形テープから前記孔塞ぎシールのシール後端部を剥離した後に、当該吸着パッドが前進して前記貫通孔の外周面に前記孔塞ぎシールを貼着することを特徴とする。
【0010】
本発明においては、離形テープを一定方向へ走行させつつ鋭角状に折り返すテープ折り返し部で離形テープからシール前端部が剥離された孔塞ぎシールを吸着パッドが吸着して離形テープから孔塞ぎシールのシール後端部を剥離した後に、当該吸着パッドが前進して貫通孔の外周面に孔塞ぎシールを貼着するので、テープ折り返し部を車体パネルに形成された貫通孔の外周面から所定距離だけ離間させることができる。そのため、貫通孔の外周面から所定距離だけ離間した位置で離形テープから孔塞ぎシールを剥離してから、孔塞ぎシールを吸着した吸着パッドのみが、車体パネルに形成された貫通孔の外周面に単独で近接して、孔塞ぎシールを貼着させることができる。したがって、孔塞ぎシールを吸着した吸着パッドは、車両の車体パネルに形成された貫通孔の外周面に隣接して凹凸形状が形成されていても、当該凹凸形状の影響を受けずに貫通孔の外周面に孔塞ぎシールを貼着して、当該貫通孔を閉塞することができる。
【0011】
また、孔塞ぎシールを吸着パッドが吸着して離形テープから孔塞ぎシールのシール後端部を剥離した後に、当該吸着パッドが前進して貫通孔の外周面に孔塞ぎシールを貼着するので、離形テープから孔塞ぎシールを剥離するタイミングと、孔塞ぎシールを貫通孔の外周面に貼着するタイミングとの間に時間差を設けることができ、特許文献1の粘着テープ貼り付け方法のように、貼着対象物である車体パネルを孔塞ぎシールの移動方向へ移動させる必要がない。
【0012】
さらに、孔塞ぎシールを吸着パッドが吸着しているので、吸着パッドの前進方向に対する貫通孔の外周面の傾斜角度が種々様々であっても、貫通孔の外周面の傾斜角度に合わせて吸着パッドのパッド部が撓みながら孔塞ぎシールを貼着させることができる。そのため、吸着パッドが前進する方向を、貫通孔の外周面の傾斜角度に合わせて微妙に変更する必要がない。その結果、車体パネルに形成された貫通孔の外周面に孔塞ぎシールを簡単かつ迅速に貼着することができる。
【0013】
よって、本発明によれば、車体パネルに形成された貫通孔の外周面に孔塞ぎシールを簡単かつ迅速に貼着して、当該貫通孔を閉塞し得る孔塞ぎシールの貼着方法を提供することができる。
【0014】
(2)(1)に記載された孔塞ぎシールの貼着方法において、
前記孔塞ぎシールを吸着した吸着パッドの前進動作に伴って、前記テープ折り返し部が前記吸着パッドから離間する方向へ移動することを特徴とする。
【0015】
本発明においては、孔塞ぎシールを吸着した吸着パッドの前進動作に伴って、テープ折り返し部が吸着パッドから離間する方向へ移動するので、吸着パッドが前進するとき、吸着パッドに吸着された孔塞ぎシールとテープ折り返し部との干渉を緩和又は回避させて、吸着パッドに対する孔塞ぎシールの位置ズレや吸着パッドから孔塞ぎシールの落下等を抑制することができる。
【0016】
(3)(1)又は(2)に記載された孔塞ぎシールの貼着方法において、
前記離形テープから剥離された前記孔塞ぎシールのシール前端部を検知した後に、当該孔塞ぎシールを前記吸着パッドが吸着することを特徴とする。
【0017】
本発明においては、離形テープから剥離された孔塞ぎシールのシール前端部を検知した後に、当該孔塞ぎシールを吸着パッドが吸着するので、吸着パッドが孔塞ぎシールを確実に吸着して、貫通孔の外周面に孔塞ぎシールを貼着でき、当該貫通孔を確実に閉塞することができる。そのため、孔塞ぎシールの貼着作業に対する信頼性をより一層高めることができる。
【0018】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された孔塞ぎシールの貼着方法に使用するシール貼着装置であって、
前記吸着パッドを前進後退させるパッド駆動装置と、前記孔塞ぎシールが貼付された前記離形テープを一定方向へ走行させつつ鋭角状に折り返すテープ折り返し部を有するテープ供給装置とを備え、
前記テープ供給装置は、前記パッド駆動装置の本体部に旋回可能に支持され、前記テープ供給装置と前記パッド駆動装置の可動部との間には、前記吸着パッドの前進動作に伴って前記テープ折り返し部を前記吸着パッドに対して離間する方向へ旋回させ、かつ、前記吸着パッドの後退動作に伴って前記テープ折り返し部を前記吸着パッドに対して近接する方向へ旋回させる旋回機構を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、吸着パッドを前進後退させるパッド駆動装置と、孔塞ぎシールが貼付された離形テープを一定方向へ走行させつつ鋭角状に折り返すテープ折り返し部を有するテープ供給装置とを備え、テープ供給装置は、パッド駆動装置の本体部に旋回可能に支持され、テープ供給装置とパッド駆動装置の可動部との間には、吸着パッドの前進動作に伴ってテープ折り返し部を吸着パッドに対して離間する方向へ旋回させ、かつ、吸着パッドの後退動作に伴ってテープ折り返し部を吸着パッドに対して近接する方向へ旋回させる旋回機構を備えているので、パッド駆動装置の可動部に連結された吸着パッドの前進動作に連動してテープ折り返し部を吸着パッドから自動的に離間させ、吸着パッドの後退動作に連動してテープ折り返し部を吸着パッドに自動的に近接させることができる。そのため、吸着パッドに吸着された孔塞ぎシールとテープ折り返し部との干渉を緩和又は回避させ、吸着パッドに対する孔塞ぎシールの位置ズレや落下等を回避しつつ、車体パネルに形成された貫通孔の外周面に孔塞ぎシールを簡単かつ迅速に貼着して、当該貫通孔を閉塞し得るシール貼着装置を提供することができる。
【0020】
(5)(4)に記載されたシール貼着装置において、
前記旋回機構は、前記パッド駆動装置の可動部に連結されたカムフォロア部と、前記テープ供給装置に連結され前記カムフォロア部が係合するカムガイド溝を有するカムガイド部とからなることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、旋回機構は、パッド駆動装置の可動部に連結されたカムフォロア部と、テープ供給装置に連結されカムフォロア部が係合するカムガイド溝を有するカムガイド部とからなるので、カムガイド溝の溝方向をパッド駆動装置の可動部の移動方向に対して傾斜して形成することによって、吸着パッドの移動に伴って、カムフォロア部がカムガイド部を介してテープ折り返し部を移動させることができ、その結果、テープ折り返し部を吸着パッドと近接又は離間する方向へ簡単に旋回させることができる。
【0022】
(6)(4)又は(5)に記載されたシール貼着装置において、
前記パッド駆動装置と前記テープ供給装置との間には、前記吸着パッドの前進動作に連動して前記離形テープを一定方向へ走行させるテープ送り機構を備えていることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、パッド駆動装置とテープ供給装置との間には、吸着パッドの前進動作に連動して離形テープを一定方向へ走行させるテープ送り機構を備えているので、テープ供給装置における離形テープの走行用駆動モータ等を不要とすることができる。そのため、シール貼着装置の構造を、より簡素化させることができる。
【0024】
(7)(6)に記載されたシール貼着装置において、
前記テープ送り機構には、前記パッド駆動装置の本体部に連結され前記テープ供給装置の旋回中心に対する円弧面上に形成された円弧状ギヤ部と、
前記テープ供給装置のテープ収納ケースに支持され前記円弧状ギヤ部と係合して前記離形テープを一定方向へ走行させる駆動ローラと連結されたワンウェイクラッチ付きギヤ部とを備えていることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、テープ送り機構には、パッド駆動装置の本体部に連結されテープ供給装置の旋回中心に対する円弧面上に形成された円弧状ギヤ部と、テープ供給装置のテープ収納ケースに支持され円弧状ギヤ部と係合して離形テープを一定方向へ走行させる駆動ローラと連結されたワンウェイクラッチ付きギヤ部とを備えているので、円弧状ギヤ部とワンウェイクラッチ付きギヤ部とからなるワンウェイギヤ構造によって、テープ折り返し部を吸着パッドに対して近接する方向へ旋回させる動作には連動せず、テープ折り返し部を吸着パッドに対して離間する方向へ旋回させる動作のみに連動して、離形テープに貼付された孔塞ぎシールをそのシール前端部がテープ折り返し部で剥離される位置へ移動させることができる。そのため、貫通孔の外周面に孔塞ぎシールを貼着させる度に、孔塞ぎシールが貼付された離形テープを一定方向へ走行させ、孔塞ぎシールを吸着パッドと対抗する位置へ搬送することができる。よって、シール貼着装置の構造を、より一層簡素化することができる。
【0026】
(8)(7)に記載されたシール貼着装置において、
前記駆動ローラは、前記孔塞ぎシールが剥離された前記離形テープを巻き取り可能に形成されていることを特徴とする。
【0027】
本発明においては、駆動ローラは、孔塞ぎシールが剥離された離形テープを巻き取り可能に形成されているので、テープ供給装置における離形テープの回収機構を駆動ローラで兼用させることができる。そのため、離形テープの回収ボックス等を廃止でき、シール供給装置をより一層簡素化させることができる。
【0028】
(9)(4)乃至(8)のいずれか1つに記載されたシール貼着装置において、
前記吸着パッドには、吸着面に対して上下に誘電分極させる電極を介して静電気発生装置が連結されていることを特徴とする。
【0029】
本発明においては、吸着パッドには、吸着面に対して上下に誘電分極させる電極を介して静電気発生装置が連結されているので、吸着パッドの吸着面に発生する静電気力(クーロン力)を電気的に制御することによって、シール前端部が剥離された孔塞ぎシールを離形テープから、より迅速かつ確実に吸着パッドへ吸着させることができる。また、静電気発生装置は、シール貼着装置の吸着パッドと電気的に接続すればよいので、例えば、エアー吸引のようにエアー配管やベンチュリ等が不要となり、シール貼着装置の取り扱いが容易となる。そのため、シール貼着装置における孔塞ぎシールの貼着作業に対する信頼性を高めるとともに、シール貼着装置の取り扱い作業性を向上させることができる。
【0030】
(10)(4)乃至(9)のいずれか1つに記載されたシール貼着装置において、
前記パッド駆動装置の本体部は、前記車体パネルを搬送する搬送台車と同期して移動する同期台車に搭載された多関節ロボットの腕部に装着されていることを特徴とする。
【0031】
本発明においては、パッド駆動装置の本体部は、車体パネルを搬送する搬送台車と同期して移動する同期台車に搭載された多関節ロボットの腕部に装着されているので、車体パネルの搬送速度の変動等に対する影響を受けることなく、車体パネルに形成された貫通孔の外周面に孔塞ぎシールを正確に貼着して、当該貫通孔を確実に閉塞することができる。また、パッド駆動装置の本体部は、多関節ロボットの腕部に装着されているので、車体パネルの各種位置に形成された貫通孔の外周面に孔塞ぎシールを自動的に貼着でき、当該貫通孔の閉塞作業における生産性を高めることができる。
【0032】
(11)(10)に記載されたシール貼着装置において、
前記多関節ロボットを搭載し車室内へ進入する前記同期台車のスライドテーブルには、前記車体パネルのパネル床面と当接する支持脚部を備えていることを特徴とする。
【0033】
本発明においては、多関節ロボットを搭載し車室内へ進入する同期台車のスライドテーブルには、車体パネルのパネル床面と当接する支持脚部を備えているので、多関節ロボットの重量や振動を支持脚部を介して支持吸収し、多関節ロボットの姿勢を安定させることができる。そのため、車体パネルに形成された貫通孔の外周面に孔塞ぎシールをより一層正確に貼着して、当該貫通孔を確実に閉塞することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、車両の組み立てラインにおいて車体パネルに形成された貫通孔の外周面に孔塞ぎシールを簡単かつ迅速に貼着して、当該貫通孔を閉塞し得る孔塞ぎシールの貼着方法及びシール貼着装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明に係る実施形態である孔塞ぎシールの貼着方法及びシール貼着装置について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る孔塞ぎシールの貼着方法について説明し、次に、孔塞ぎシールの貼着方法に使用するシール貼付装置(第1実施例、第2実施例、第3実施例)を説明する。
【0037】
<孔塞ぎシールの貼着方法>
まず、本実施形態に係る孔塞ぎシールの貼着方法について、
図1〜
図6を用いて説明する。
図1に、本実施形態の孔塞ぎシールの貼着方法に使用する第1実施例のシール貼着装置の正面図を示す。
図2に、
図1に示すシール貼付装置において孔塞ぎシールを吸着パッドが吸着した状態の正面図を示す。
図3に、
図2に示すA視側面図を示す。
図4に、
図2に示すB視平面図を示す。
図5に、
図2に示すC部詳細図を示す。
図6に、
図5に示すテープ折り返し部の斜視図を示す。
【0038】
図1〜
図6に示すように、本実施形態に係る孔塞ぎシールの貼着方法は、複数の孔塞ぎシール11が所定の間隔で貼付された離形テープ12から孔塞ぎシール11を剥離した後に、車両Wの車体パネルSPに形成された貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を貼着して、当該貫通孔KHを閉塞する孔塞ぎシールの貼着方法である。また、本孔塞ぎシールの貼着方法は、離形テープ12を一定方向へ走行させつつ鋭角状に折り返すテープ折り返し部31で離形テープ12からシール前端部111が剥離された孔塞ぎシール11を吸着パッド21が吸着して離形テープ12から孔塞ぎシール11のシール後端部112を剥離した後に、当該吸着パッド21が前進して貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を貼着することを特徴とする。
【0039】
具体的には、
図1、
図6に示すように、孔塞ぎシール11は、各種ある貫通孔KHを共通的に塞ぐことができる程度の大きさに形成されている。本実施例では、孔塞ぎシール11の外形は、円形状に形成されているが、楕円形状や矩形状でも良い。孔塞ぎシール11は、裏面に塗布された貼着剤によって帯状に形成された離形テープ12に所定の間隔で貼付されている。孔塞ぎシール11が貼付された離形テープ12は、円筒状に巻回された円筒状テープ1として、テープ供給装置3のテープ収納ケース32内に保持されている。孔塞ぎシール11は、透明な樹脂製シールに、円環状に着色された外周部11gと小円形に着色された中心部11tとを有する。外周部11gと中心部11tは、例えば黒色に着色されている。なお、外周部11gは、後述するようにテープ折り返し部31で離形テープ12からシール前端部111が剥離された孔塞ぎシール11を検知するときに使用する。また、中心部11tは、貫通孔KHの外周面GMに貼着したとき、貫通孔KHに対する孔塞ぎシール11の位置ズレの程度を目視するときに使用する。
【0040】
図1、
図2、
図5、
図6に示すように、孔塞ぎシール11が貼付された離形テープ12は、円筒状テープ1の外周側から巻き戻されて、一定方向へ走行させつつ鋭角状に折り返すテープ折り返し部31へ送られる。孔塞ぎシール11が貼付された離形テープ12は、テープ折り返し部31の手前で、テープ案内部322を介して吸着パッド21の吸着面212と略平行な方向へ走行させられる。その後、孔塞ぎシール11が貼付された離形テープ12は、鋭角状に折り返すテープ折り返し部31で離形テープ12から孔塞ぎシール11のシール前端部111を剥離させた状態で、一時停止する。そのとき、孔塞ぎシール11は、原位置P1に待機する吸着パッド21の吸着面212と微小隙間d1を開けて略平行に対向し、吸着パッド21が前進する移動軌跡上の停止位置P2で停止している。微小隙間d1は、1〜2mm程度が好ましい。吸着パッド21の吸着面212は、孔塞ぎシール11の外形と略同じ大きさに形成されている。
【0041】
次に、原位置P1に待機する吸着パッド21は、図示しない真空吸引装置を作動させることによって停止位置P2の孔塞ぎシール11の表面を吸着する。吸着パッド21は、孔塞ぎシール11を吸着することによって、離形テープ12から孔塞ぎシール11のシール後端部112を剥離した後に、テープ貼着位置P3へ前進(矢印Fの方向へ移動)して貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を貼着する。吸着パッド21は、貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を貼着した後に、真空吸引装置を停止させ、原位置P1まで後退する。吸着パッド21が原位置P1へ後退するまでに、又は後退した後に、孔塞ぎシール11が貼付された離形テープ12を、再度一定方向へ走行させ、テープ折り返し部31で離形テープ12から次の孔塞ぎシール11のシール前端部111を剥離させた状態で、一時停止させる。
【0042】
ここで、
図1に示すように、孔塞ぎシール11を吸着した吸着パッド21の前進動作に伴って、テープ折り返し部31が吸着パッド21から離間する方向(矢印Rの方向)へ移動することが好ましい。この場合、吸着パッド21が前進するとき、吸着パッド21に吸着された孔塞ぎシール11とテープ折り返し部31との干渉を緩和又は回避させて、吸着パッド21に対する孔塞ぎシール11の位置ズレや吸着パッド21から孔塞ぎシール11の落下等を抑制することができる。
【0043】
なお、吸着パッド21は、蛇腹状に形成され可撓性を有するパッド部213を備えるので、吸着パッド21の吸着面212とテープ折り返し部31との干渉量が少量であれば、テープ折り返し部31が吸着パッド21から離間する方向へ移動しなくても構わない。また、吸着パッド21を僅かに傾動できるように支持し、吸着パッド21とテープ折り返し部31との干渉量を低減させて、吸着パッド21に対する孔塞ぎシール11の位置ズレや落下等を回避することもできる。
【0044】
また、テープ折り返し部31と隣接した位置で離形テープ12から剥離された孔塞ぎシール11のシール前端部111を検知した後に、当該孔塞ぎシール11を吸着パッド21が吸着することが好ましい。この場合、孔塞ぎシール11の変形を防止するため、非接触の検出器33を用いることが好ましい。これによって、吸着パッド21が孔塞ぎシール11を確実に吸着して、貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を貼着して、当該貫通孔KHを閉塞することができる。なお、検出器33は、吸着パッド21の前進動作に合わせて、独自に退避、又はテープ折り返し部31が吸着パッド21から離間する方向へ移動するとき一緒に退避することが好ましい。
【0045】
<シール貼着装置>
次に、本他の実施形態であるシール貼着装置(第1実施例、第2実施例、第3実施例)について、
図1〜
図13を用いて説明する。
図1に、本実施形態の孔塞ぎシールの貼着方法に使用する第1実施例のシール貼着装置の正面図を示す。
図2に、
図1に示すシール貼付装置において孔塞ぎシールを吸着パッドが吸着した状態の正面図を示す。
図3に、
図2に示すA視側面図を示す。
図4に、
図2に示すB視平面図を示す。
図5に、
図2に示すC部詳細図を示す。
図6に、
図5に示すテープ折り返し部の斜視図を示す。
図7に、
図1に示すシール貼付装置をロボットに搭載して使用する第2実施例の正面図を示す。
図8に、
図7に示すシール貼付装置のロボットを同期台車に搭載した場合の正面図を示す。
図9に、本実施形態の孔塞ぎシールの貼着方法に使用する第3実施例のシール貼着装置の正面図を示す。
図10に、
図9に示すシール貼付装置において孔塞ぎシールを吸着パッドが吸着した状態の正面図を示す。
図11に、
図10に示すD視側面図を示す。
図12に、
図10に示すE部詳細図示す。(a)は、吸着パッドの前進時には、駆動ローラが回転して離形テープを巻き取る様子を示し、(b)は、吸着パッドの後退時には、駆動ローラが回転せず離形テープを巻き取らない様子を示す。
図13に、
図9に示す吸着パッドに静電気発生装置を連結した場合の概念図を示す。
【0046】
(第1実施例)
第1実施例に係るシール貼着装置10は、
図1〜
図6に示すように、吸着パッド21を前進後退させるパッド駆動装置2と、孔塞ぎシール11が貼付された離形テープ12を一定の方向へ走行させつつ鋭角状に折り返すテープ折り返し部31を有するテープ供給装置3とを備えている。また、本シール貼着装置10において、テープ供給装置3は、パッド駆動装置2の本体部23に旋回可能に支持され、テープ供給装置3とパッド駆動装置2の可動部24との間には、吸着パッド21の前進動作に伴ってテープ折り返し部31を吸着パッド21に対して離間する方向(矢印R1の方向)へ旋回させ、かつ、吸着パッド21の後退動作に伴ってテープ折り返し部31を吸着パッド21に対して近接する方向(矢印R2の方向)へ旋回させる旋回機構4を備えている。
【0047】
具体的には、パッド駆動装置2は、本体部23と、本体部23に対して吸着パッド21の前進後退方向へ直線移動する可動部24とを備えている。本体部23は、把持用ブラケット231と、把持用ブラケット231に連結されテープ供給装置3を旋回可能に支持する支持軸232と、把持用ブラケット231に連結され可動部24を直線移動させるモータ部233と、把持用ブラケット231に連結され可動部24の直線移動をガイドするガイド部234とを備えている。ここでは、モータ部233は、駆動軸241が軸周りに回転しながら軸方向へ直線移動(往復移動)する公知の直動式モータを用いている。なお、把持用ブラケット231は、作業者が作業するための把持ハンドル(図示しない)に装着しても良いが、後述するようにロボットの腕部に装着しても良い。
【0048】
また、可動部24は、モータ部233の駆動軸241と連結されガイド部234に案内されて直線移動する被案内部242と、被案内部242に連結され吸着パッド21を支持するパッド支持プレート243とを備えている。吸着パッド21は、モータ部233の駆動軸241の軸方向と平行に移動する。パッド支持プレート243には、吸着パッド21を弾性的に支持するパッド支持部22が連結されている。パッド支持部22は、吸着パッド21を保持し吸着パッド21内を真空吸引する吸引管221と、吸引管221に係止され吸着パッド21を前進方向へ付勢するバネ部222と、吸引管221を移動可能にパッド支持プレート243へ連結する連結部223とを備えている。
【0049】
また、テープ供給装置3は、テープ折り返し部31と、テープ収納ケース32と、テープ案内部322、323と、テープ走行駆動部324、325、326、327と、孔塞ぎシール11の検出器33と、テープ残量検出器34とを備えている。テープ収納ケース32は、正面視で略矩形状に形成された2つの側壁32Kが円筒状テープ1の幅より僅かに大きい幅で平行に連結されて形成されている。円筒状テープ1は、テープ収納ケース32の側壁32K間に架設されたテープ保持軸321によって回動可能に保持されている。また、テープ収納ケース32の側壁32K間には、離形テープ12の走行路に沿ってテープ案内部(テープ案内ローラ322、テープ案内板323)が架設されている。なお、円筒状テープ1のテープ保持軸321と、テープ供給装置3を回動可能に支持する支持軸232とが、テープ収納ケース32の側壁32Kに係合されている。
【0050】
また、テープ折り返し部31は、離形テープ12の幅より長く形成された小径のシャフトピン311からなり、テープ収納ケース32の前端部32Sの側壁32K間に支持されている。テープ収納ケース32の前端部32Sは、原位置P1に待機する吸着パッド21のパッド支持部22と干渉しないように、正面視で鋭角状に突出して形成されている。また、前端部32Sの側壁32K間には、吸着パッド21のパッド部213が存在する空間が形成されている。
【0051】
また、テープ走行駆動部324、325、326、327は、テープ折り返し部31を通過した離形テープ12の表裏面を挟み、一定方向へ回転する駆動ローラ324及び従動ローラ325と駆動ローラ324を一定方向へ回転させる回転ギヤ326、327とを備えている。上段の回転ギヤ327は、図示しない回転モータに連結されている。駆動ローラ324、従動ローラ325、回転ギヤ326、327、及び回転モータは、それぞれテープ収納ケース32の側壁32Kに支持されている。駆動ローラ324及び従動ローラ325を通過した離形テープ12は、テープ収納ケース32の後端部32Tに形成された回収ボックス32TBに収納される。離形テープ12の回収ボックス32TBは、ヒンジを介して開放可能に形成された蓋部32Hを備えている。
【0052】
また、孔塞ぎシール11の検出器33は、テープ収納ケース32の前端部32Sに、テープ折り返し部31に隣接して配置されている。孔塞ぎシール11の検出器33は、例えば、反射型の光電スイッチが好ましく、また、孔塞ぎシール11の環状に着色した外周部11gに投光して反射する反射光331を検出することが好ましい。着色した外周部11gに投光することによって反射光331を検出しやすくなり、テープ折り返し部31で離形テープ12からシール前端部111が剥離された孔塞ぎシール11を確実に検知することができる。なお、剥離されたシール前端部111の孔塞ぎシール11に対する面積比率は、50〜80%程度が好ましい。シール前端部111の面積比率が、50%未満では検出器33によって検出しにくくなり、また、80%を超過すると剥離されたシール前端部111が垂れ下がる恐れがあるからである。
【0053】
また、テープ残量検出器34は、円筒状テープ1の残量が少なくなった時に予め警報を出すように、テープ収納ケース32の側壁32K間に配置されている。テープ残量検出器34は、例えば、孔塞ぎシール11が貼付された離形テープ12が円筒状テープ1の外周側から巻き戻されて、テープ案内部322へ到着するまでの走行路に配置され、円筒状テープ1の残量が所定量以下になった時、離形テープ12と当接し、検出信号を出力するリミットスイッチが好ましい。
【0054】
また、旋回機構4は、パッド駆動装置2の可動部24に装着されたカムフォロア部41と、テープ供給装置3に連結されカムフォロア部41が係合するカムガイド溝421を有するカムガイド部42とから構成されている。カムフォロア部41は、L字状の支持ブラケット244に軸支されている。支持ブラケット244は、吸着パッド21を支持するパッド支持プレート243に連結されている。
【0055】
また、カムガイド部42は、パッド駆動装置2に隣接する側で、テープ収納ケース32の一方の側壁32Kに突設されている。カムガイド部42には、所定幅のカムガイド溝421が略への字状に形成されている。カムガイド溝421は、吸着パッド21が原位置P1から貼着位置P3へ移動するとき、テープ折り返し部31を吸着パッド21に対して所定量だけ離間させる方向(矢印R1の方向)へ旋回させる第1ガイド溝421aと、テープ折り返し部31を吸着パッド21に対して所定量だけ離間させた状態で維持させる第2ガイド溝421bとを備えている。なお、第1ガイド溝421aの溝方向とモータ部233の駆動軸241の軸方向とが交差する傾斜角θは、60〜80度程度が好ましい。また、孔塞ぎシール11の停止位置P2とテープ貼着位置P3との離間距離(所定距離)d2は、車体パネルSPの凹凸形状等によって設定するが、略40〜50mm程度が好ましい。また、テープ供給装置3を旋回可能に支持する支持軸232と吸着パッド21の軸心211との軸間距離Qを上記離間距離(所定距離)d2より短く形成することによって、テープ折り返し部31の旋回動作を迅速に行うことができる。
【0056】
本シール貼着装置10には、上記旋回機構4を備えるので、吸着パッド21がテープ折り返し部31で停止している孔塞ぎシール11を吸着してから前進するとき、テープ折り返し部31が退避することによって、孔塞ぎシール11を貫通孔KHの外周面GMに確実に貼着することができる。
【0057】
(第2実施例)
第2実施例に係るシール貼着装置10Bは、吸着パッド21を前進後退させるパッド駆動装置2と、孔塞ぎシール11が貼付された離形テープ12を一定の方向へ走行させつつ鋭角状に折り返すテープ折り返し部31を有するテープ供給装置3とを備え、また、テープ供給装置3は、パッド駆動装置2の本体部23に旋回可能に支持され、テープ供給装置3とパッド駆動装置2の可動部24との間には、吸着パッド21の前進動作に伴ってテープ折り返し部31を吸着パッド21に対して離間する方向へ旋回させ、かつ、吸着パッド21の後退動作に伴ってテープ折り返し部31を吸着パッド21に対して近接する方向へ旋回させる旋回機構4を備えている。この点は、上述した第1実施例と共通する。第1実施例と共通する構成には、共通の符号を付して、原則としてその説明を割愛する。以下、第1実施例と相違する内容について説明する。
【0058】
第2実施例に係るシール貼着装置10Bでは、
図7、
図8に示すように、パッド駆動装置2の本体部23は、車体パネルSPを搬送する搬送台車7と同期して移動する同期台車6に搭載された多関節ロボット5の腕部51に装着されている。ここで、パッド駆動装置2の本体部23は、把持用ブラケット231に締結された着脱用ブラケット52を介して、多関節ロボット5の腕部51に着脱可能に装着されている。また、パッド駆動装置2の本体部23には、孔塞ぎシール11によって閉塞する車体パネルSPに形成された貫通孔KHの孔位置を検出するカメラ装置8を備えている。カメラ装置8は、多関節ロボット5の腕部51に装着しても良い。また、多関節ロボット5を搭載し車室内へ進入する同期台車6のスライドテーブル61には、車体パネルSPのパネル床面SP1と当接する支持脚部62を備えている。支持脚部62は、振動吸収機能を備えた伸縮自在の流体圧シリンダが好ましい。
【0059】
図8に示すように、搬送台車7は、走行テーブル72に車体パネルSPを搭載して、床面FLに敷設したレール71上を走行する。また、搬送台車7の両サイドには、作業台73が搬送台車7の走行テーブル72と同一高さで設けられている。同期台車6は、シール貼着装置10Bが貼着作業を行う所定区間の開始位置で搬送台車7と連結されて作業台73上を走行し、所定区間の終了位置に到着したとき上記連結が解除されて、開始位置へ帰還する。シール貼着装置10Bが貼着作業を行う所定区間は、車両Wの左右ドアを取り外している区間が好ましい。
【0060】
また、同期台車6のスライドテーブル61は、左右ドアが取り外された車体パネルのドア開口部から車室内へ進入し、スライドテーブル61に搭載された多関節ロボット5を車体パネルSPの中央(左右中心CL)に固定する。このとき、スライドテーブル61の前端から支持脚部62を伸長して車体パネルSPの床面SP1と当接させる。スライドテーブル61に搭載された多関節ロボット5は、車体パネルSPの中央(左右中心CL)に固定され車体パネルSPと一体となって移動する。車体パネルSPに形成された複数の貫通孔KHの孔位置は、車体パネルSPの3次元CADデータに基づいて、多関節ロボット5に予め教示されている。
【0061】
また、多関節ロボット5は、予め教示された貫通孔KHの孔位置データに基づいて、孔塞ぎシール11によって閉塞する貫通孔KHと対向する位置へ吸着パッド21を移動させる。このとき、多関節ロボット5は、パッド駆動装置2の本体部23等に装着したカメラ装置8を作動させて、上記貫通孔KHの孔位置を測定し、測定した孔位置データに基づいて、予め教示された孔位置データを補正することができる。その場合、多関節ロボット5は、補正された孔位置データに基づいて、パッド駆動装置2の可動部24に連結した吸着パッド21を前進させて、閉塞すべき貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11をより正確に貼着させることができる。
【0062】
以上のように、第2実施例に係るシール貼着装置10Bによれば、車両Wの組み立てラインで車体パネルSPを搬送する搬送台車7と同期して移動しながら、車体パネルSPに形成された閉塞すべき複数の貫通孔KHの外周面GMに、孔塞ぎシール11を自動的に貼着させることができる。なお、多関節ロボット5には、図示しないレーザースキャン装置を具備させて、ロボット動作領域に進入する第三者を検知した場合には、腕部51の動作を減速又は停止する機能を備えることが好ましい。
【0063】
(第3実施例)
第3実施例に係るシール貼着装置10Cは、吸着パッド21を前進後退させるパッド駆動装置2と、孔塞ぎシール11が貼付された離形テープ12を一定の方向へ走行させつつ鋭角状に折り返すテープ折り返し部31を有するテープ供給装置3とを備え、また、テープ供給装置3は、パッド駆動装置2の本体部23に旋回可能に支持され、テープ供給装置3とパッド駆動装置2の可動部24との間には、吸着パッド21の前進動作に伴ってテープ折り返し部31を吸着パッド21に対して離間する方向(矢印R1の方向)へ旋回させ、かつ、吸着パッド21の後退動作に伴ってテープ折り返し部31を吸着パッド21に対して近接する方向(矢印R2の方向)へ旋回させる旋回機構4を備えている。また、旋回機構4は、パッド駆動装置2の可動部24に連結されたカムフォロア部41と、テープ供給装置3に連結されカムフォロア部41が係合するカムガイド溝421を有するカムガイド部42とからなる。以上の点は、上述した第1実施例と共通する。第1実施例と共通する構成には、共通の符号を付して、原則としてその説明を割愛する。以下、第1実施例と相違する内容について説明する。
【0064】
具体的には、
図9〜
図13に示すように、パッド駆動装置2とテープ供給装置3との間には、吸着パッド21の前進動作に連動して離形テープ12を一定方向へ走行させるテープ送り機構35を備えている。また、テープ送り機構35には、パッド駆動装置2の本体部23に連結されテープ供給装置3の旋回中心である支持軸232に対する円弧面上に形成された円弧状ギヤ部235と、テープ供給装置3のテープ収納ケース32に支持され円弧状ギヤ部235と係合して離形テープ12を一定方向へ走行させる駆動ローラ324Cと連結されたワンウェイクラッチ付きギヤ部328とを備えている。ワンウェイクラッチ付きギヤ部328は、例えば、一方向への回転のみを許容するスプラグカム329を介して駆動ローラ324Cと連結されている。また、駆動ローラ324Cは、孔塞ぎシール11が剥離された離形テープ12を巻き取り可能に形成されている。孔塞ぎシール11が剥離された離形テープ12は、テープ折り返し部31からテープ案内部323Cを経由して、駆動ローラ324Cに巻き取られる。
【0065】
すなわち、
図12(a)に示すように、吸着パッド21の前進時において、テープ折り返し部31を吸着パッド21に対して離間する方向(矢印t1(R1)の方向)へ旋回させる動作に連動して、ワンウェイクラッチ付きギヤ部328は、円弧状ギヤ部235と噛み合いながら同方向(矢印t1(R1)の方向)へ移動する。このとき、駆動ローラ324Cは、ロック状態のスプラグカム329を介してワンウェイクラッチ付きギヤ部328と連結されているので、ワンウェイクラッチ付きギヤ部328の回転方向(矢印t3の方向)と同方向(矢印t4の方向)へ回転する。駆動ローラ324Cが矢印t4の方向へ回転することによって、離形テープ12を一定方向(矢印t2の方向)へ走行させる。また、駆動ローラ324Cの外周には、回転方向(矢印t3の方向)へ巻回された離形テープ12の回収体13が保管される。また、駆動ローラ324Cの外周に離形テープ12を巻回させることによって、離形テープ12に貼付された孔塞ぎシール11をそのシール前端部111がテープ折り返し部31で剥離される位置へ移動させることができる。
【0066】
これに対して、
図12(b)に示すように、吸着パッド21の後退時において、テープ折り返し部31を吸着パッド21に対して近接する方向(矢印t5(R2)の方向)へ旋回させる動作に連動して、ワンウェイクラッチ付きギヤ部328は円弧状ギヤ部235と噛み合いながら同方向(矢印t5の方向)へ移動する。このとき、駆動ローラ324Cは、アンロック状態のスプラグカム329を介してワンウェイクラッチ付きギヤ部328と連結されているので、ワンウェイクラッチ付きギヤ部328の回転方向(矢印t6の方向)と同方向へ回転しない。駆動ローラ324Cが回転しないことによって、離形テープ12を一定方向へ走行させない。また、駆動ローラ324Cの外周には、巻回された離形テープ12の回収体13がそのまま保持される。また、離形テープ12に貼付された孔塞ぎシール11をそのシール前端部111がテープ折り返し部31で剥離された状態で静止させている。
【0067】
以上の結果、円弧状ギヤ部235とワンウェイクラッチ付きギヤ部328とを有するテープ送り機構35によって、テープ折り返し部31を吸着パッド21に対して近接する方向(矢印t5(R2)の方向)へ旋回させる動作には連動させず、テープ折り返し部31を吸着パッド21に対して離間する方向(矢印t1(R1)の方向)へ旋回させる動作のみに連動させて、孔塞ぎシール11が剥離された離形テープ12を回収すると同時に、離形テープ12に貼付された孔塞ぎシール11をそのシール前端部111がテープ折り返し部31で剥離される位置へ移動させることができる。そのため、車体パネルSPの貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を貼着させる度に、孔塞ぎシール11が貼付された離形テープ12を一定方向へ走行させ、孔塞ぎシール11を吸着パッド21と対抗する位置へ搬送することができる。
【0068】
また、
図11に示すように、円筒状テープ1のテープ保持軸321は、テープ供給装置3の旋回中心である支持軸232に回動可能に支持されている。また、支持軸232には、テープ収納ケース32の他方の側壁32Kを締結する締結ナット232Tが装着されている。また、テープ案内ローラ322には、テープ収納ケース32の他方の側壁32Kを締結する締結ナット322Tが装着されている。各締結ナット232T、322Tの締結を外して、他方の側壁32Kを離間させることによって、円筒状テープ1を交換し、離形テープ12の回収体13を取り外すことができる。
【0069】
また、
図13に示すように、吸着パッド21Cには、吸着面212に対して上下に誘電分極させる電極91を介して静電気発生装置9を連結してもよい。この場合、静電気発生装置9を作動させることによって、吸着パッド21Cの吸着面212には、静電気力(クーロン力)が発生する。この静電気力(クーロン力)を電気的に制御することによって、テープ折り返し部31でシール前端部111が剥離された孔塞ぎシール11を、離形テープ12からより迅速かつ確実に吸着パッド21Cへ吸着させることができる。また、静電気発生装置9は、シール貼着装置10Cの吸着パッド21Cと電気的に接続すればよい。したがって、第1実施例の場合と異なり、エアー吸引のようにエアー配管やベンチュリ等が不要となる。
【0070】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る孔塞ぎシールの貼着方法によれば、離形テープ12を一定方向へ走行させつつ鋭角状に折り返すテープ折り返し部31で離形テープ12からシール前端部111が剥離された孔塞ぎシール11を吸着パッド21が吸着して離形テープ12から孔塞ぎシール11のシール後端部112を剥離した後に、当該吸着パッド21が前進して貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を貼着するので、テープ折り返し部31を車体パネルSPに形成された貫通孔KHの外周面GMから所定距離d2だけ離間させることができる。そのため、貫通孔KHの外周面GMから所定距離d2だけ離間した位置P2で離形テープ12から孔塞ぎシール11を剥離してから、孔塞ぎシール11を吸着した吸着パッド21のみが、車体パネルSPに形成された貫通孔KHの外周面GMに単独で近接して、孔塞ぎシール11を貼着させることができる。したがって、孔塞ぎシール11を吸着した吸着パッド21は、車両Wの車体パネルSPに形成された貫通孔KHの外周面GMに隣接して凹凸形状が形成されていても、当該凹凸形状の影響を受けずに貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を貼着して、当該貫通孔KHを閉塞することができる。
【0071】
また、孔塞ぎシール11を吸着パッド21が吸着して離形テープ12から孔塞ぎシール11のシール後端部112を剥離した後に、当該吸着パッド21が前進して貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を貼着するので、離形テープ12から孔塞ぎシール11を剥離するタイミングと、孔塞ぎシール11を貫通孔KHの外周面GMに貼着するタイミングとの間に時間差を設けることができ、特許文献1の粘着テープ貼り付け方法のように、貼着対象物である車体パネルSPを孔塞ぎシール11の移動方向へ移動させる必要がない。
【0072】
さらに、孔塞ぎシール11を吸着パッド21が吸着しているので、吸着パッド21の前進方向(矢印Fの方向)に対する貫通孔KHの外周面GMの傾斜角度が種々様々であっても、貫通孔KHの外周面GMの傾斜角度に合わせて吸着パッド21のパッド部213が撓みながら孔塞ぎシール11を貼着させることができる。そのため、吸着パッド21が前進する方向を、貫通孔KHの外周面GMの傾斜角度に合わせて微妙に変更する必要がない。その結果、車体パネルSPに形成された貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を簡単かつ迅速に貼着することができる。
【0073】
よって、本実施形態によれば、車体パネルSPに形成された貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を簡単かつ迅速に貼着して、当該貫通孔KHを閉塞し得る孔塞ぎシール11の貼着方法を提供することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、孔塞ぎシール11を吸着した吸着パッド21の前進動作に伴って、テープ折り返し部31が吸着パッド21から離間する方向(矢印R1の方向)へ移動するので、吸着パッド21が前進するとき、吸着パッド21に吸着された孔塞ぎシール11とテープ折り返し部31との干渉を緩和又は回避させて、吸着パッド21に対する孔塞ぎシール11の位置ズレや吸着パッド21から孔塞ぎシール11の落下等を抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、離形テープ12から剥離された孔塞ぎシール11のシール前端部111を検知した後に、当該孔塞ぎシール11を吸着パッド21が吸着するので、吸着パッド21が孔塞ぎシール11を確実に吸着して、貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を貼着でき、当該貫通孔KHを確実に閉塞することができる。そのため、孔塞ぎシール11の貼着作業に対する信頼性をより一層高めることができる。
【0076】
また、本他の実施形態である孔塞ぎシール11の貼着方法に使用するシール貼着装置10、10B、10Cによれば、吸着パッド21を前進後退させるパッド駆動装置2と、孔塞ぎシール11が貼付された離形テープ12を一定方向へ走行させつつ鋭角状に折り返すテープ折り返し部31を有するテープ供給装置3とを備え、テープ供給装置3は、パッド駆動装置2の本体部23に旋回可能に支持され、テープ供給装置3とパッド駆動装置2の可動部24との間には、吸着パッド21の前進動作に伴ってテープ折り返し部31を吸着パッド21に対して離間する方向(矢印R1の方向)へ旋回させ、かつ、吸着パッドの後退動作に伴ってテープ折り返し部を吸着パッドに対して近接する方向(矢印R2の方向)へ旋回させる旋回機構4(41、42)を備えているので、パッド駆動装置2の可動部24に連結された吸着パッド21の前進動作に連動してテープ折り返し部31を吸着パッド21から自動的に離間させ、吸着パッド21の後退動作に連動してテープ折り返し部31を吸着パッド21に自動的に近接させることができる。そのため、吸着パッド21に吸着された孔塞ぎシール11とテープ折り返し部31との干渉を緩和又は回避させ、吸着パッド21に対する孔塞ぎシール11の位置ズレや落下等を回避しつつ、車体パネルSPに形成された貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を簡単かつ迅速に貼着して、当該貫通孔KHを閉塞し得るシール貼着装置を提供することができる。
【0077】
また、本他の実施形態によれば、旋回機構4は、パッド駆動装置2の可動部24に連結されたカムフォロア部41と、テープ供給装置3に連結されカムフォロア部41が係合するカムガイド溝421を有するカムガイド部42とからなるので、カムガイド溝421の溝方向をパッド駆動装置2の可動部24の移動方向に対して傾斜して形成することによって、吸着パッド21の移動に伴って、カムフォロア部41がカムガイド部42を介してテープ折り返し部31を移動させることができ、その結果、テープ折り返し部31を吸着パッド21と近接又は離間する方向へ簡単に旋回させることができる。
【0078】
また、本他の実施形態によれば、パッド駆動装置2とテープ供給装置3との間には、吸着パッド21の前進動作に連動して離形テープ12を一定方向へ走行させるテープ送り機構35を備えているので、テープ供給装置3における離形テープ12の走行用駆動モータ等を不要とすることができる。そのため、シール貼着装置10Cの構造を、より簡素化させることができる。
【0079】
また、本他の実施形態によれば、テープ送り機構35には、パッド駆動装置2の本体部23に連結されテープ供給装置3の旋回中心に対する円弧面上に形成された円弧状ギヤ部235と、テープ供給装置3のテープ収納ケース32に支持され円弧状ギヤ部235と係合して離形テープ12を一定方向へ走行させる駆動ローラ324Cと連結されたワンウェイクラッチ付きギヤ部328とを備えているので、円弧状ギヤ部235とワンウェイクラッチ付きギヤ部328とからなるワンウェイギヤ構造によって、テープ折り返し部31を吸着パッド21に対して近接する方向(矢印R2の方向)へ旋回させる動作には連動せず、テープ折り返し部31を吸着パッド21に対して離間する方向(矢印R1の方向)へ旋回させる動作のみに連動して、離形テープ12に貼付された孔塞ぎシール11をそのシール前端部111がテープ折り返し部31で剥離される位置へ移動させることができる。そのため、貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を貼着させる度に、孔塞ぎシール11が貼付された離形テープ12を一定方向へ走行させ、孔塞ぎシール11を吸着パッド21と対抗する位置へ搬送することができる。よって、シール貼着装置10Cの構造を、より一層簡素化することができる。
【0080】
また、本他の実施形態によれば、駆動ローラ324Cは、孔塞ぎシール11が剥離された離形テープ12を巻き取り可能に形成されているので、テープ供給装置3における離形テープ12の回収機構を駆動ローラ324Cで兼用させることができる。そのため、離形テープ12の回収ボックス等を廃止でき、テープ供給装置3をより一層簡素化させることができる。
【0081】
また、本他の実施形態によれば、吸着パッド21Cには、吸着面212に対して上下に誘電分極させる電極91を介して静電気発生装置9が連結されているので、吸着パッド21Cの吸着面212に発生する静電気力(クーロン力)を電気的に制御することによって、シール前端部111が剥離された孔塞ぎシール11を離形テープ12から、より迅速かつ確実に吸着パッド21Cへ吸着させることができる。また、静電気発生装置9は、シール貼着装置10Cの吸着パッド21Cと電気的に接続すればよいので、例えば、エアー吸引のようにエアー配管やベンチュリ等が不要となり、シール貼着装置10Cの取り扱いが容易となる。そのため、シール貼着装置10Cにおける孔塞ぎシール11の貼着作業に対する信頼性を高めるとともに、シール貼着装置10Cの取り扱い作業性を向上させることができる。
【0082】
また、本他の実施形態によれば、パッド駆動装置2の本体部23は、車体パネルSPを搬送する搬送台車7と同期して移動する同期台車6に搭載された多関節ロボット5の腕部51に装着されているので、車体パネルSPの搬送速度の変動に対する影響を受けることなく、車体パネルSPに形成された貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を正確に貼着して、当該貫通孔KHを確実に閉塞することができる。また、パッド駆動装置2の本体部23は、多関節ロボット5の腕部51に装着されているので、車体パネルSPの各種位置に形成された貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11を自動的に貼着でき、当該貫通孔KHの閉塞作業における生産性を高めることができる。
【0083】
また、本他の実施形態によれば、多関節ロボット5を搭載し車室内へ進入する同期台車6のスライドテーブル61には、車体パネルSPのパネル床面SP1と当接する支持脚部62を備えているので、多関節ロボット5の重量や振動を支持脚部62を介して支持吸収し、多関節ロボット5の姿勢を安定させることができる。そのため、車体パネルSPに形成された貫通孔KHの外周面GMに孔塞ぎシール11をより一層正確に貼着して、当該貫通孔KHを確実に閉塞することができる。