特許第6809357号(P6809357)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6809357粒子状パルプ会合体および粒子状パルプ会合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809357
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】粒子状パルプ会合体および粒子状パルプ会合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20201221BHJP
   C08B 1/00 20060101ALN20201221BHJP
   C08B 15/08 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
   C08J3/12 ZCEP
   !C08B1/00
   !C08B15/08
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-85590(P2017-85590)
(22)【出願日】2017年4月24日
(65)【公開番号】特開2018-184503(P2018-184503A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清原 みなみ
(72)【発明者】
【氏名】小林 由典
(72)【発明者】
【氏名】野一色 泰友
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−105758(JP,A)
【文献】 特開2012−224960(JP,A)
【文献】 特開2009−203559(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/115198(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28:99/00
D01F 1/00− 6/96
D01F 9/00− 9/04
C08B 1/00− 37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥状態において、複数のパルプ繊維が縒られた状態で互いに結合した粒子状を呈し、粒子長径が0.20mm以上5mm以下であることを特徴とする粒子状パルプ会合体。
【請求項2】
50%粒子径が200μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の粒子状パルプ会合体。
【請求項3】
粒子状パルプ会合体を構成する繊維成分の平均繊維長が0.1mm以上3mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子状パルプ会合体。
【請求項4】
嵩密度が0.05g/ml以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒子状パルプ会合体。
【請求項5】
粒子状パルプ会合体を3質量%の濃度になるように水に分散させた分散液を、B型粘度計を用いてローター回転数100rpm、温度20℃で測定したときの粘度が、100mPa・S以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子状パルプ会合体。
【請求項6】
パルプを水に分散させてパルプ分散液を得る工程と、
前記パルプ分散液をパルプ濃度が30質量%以上70質量%以下となるように脱水する工程と、
前記脱水後の前記パルプ分散液を原料として摩砕処理を行う工程と、
を含むことを特徴とする粒子状パルプ会合体の製造方法。
【請求項7】
前記摩砕処理を行う工程の後に、乾燥処理を行う工程をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の粒子状パルプ会合体の製造方法。
【請求項8】
前記摩砕処理を磨砕刃がディスクタイプの磨砕装置で行うことを特徴とする請求項6または7に記載の粒子状パルプ会合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状パルプ会合体および粒子状パルプ会合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルプを粉砕して得られるセルロース材料は、その保水性、吸油性、保形性等の性質から、食品添加剤、錠剤賦形剤、分散剤、保形剤、保水剤、ろ過助剤、充填剤、塗料・接着剤用添加剤、セルロース誘導体の原料、バイオマス材料などの工業原料等として、食品、化粧品、医薬、建材、窯業、ゴム、プラスチック等の幅広い分野で使用されている。
【0003】
そのようなセルロース材料に関して、例えば特許文献1は、特定のセルロース含有原料を振動ミルで連続処理することにより、平均粒径1〜38μmの小粒径のセルロースを効率的に得る製造方法を提案している。特許文献2は、セルロース繊維を解繊した後、ジェットミルで乾式粉砕処理することにより、粒度分布の狭い比較的均一な粒径のセルロースパウダーを製造する方法を提案している。また、特許文献3は、特定の低結晶性セルロース原料を、特定の粉砕助剤と共に、乾式で粉砕機により処理することにより、セルロース同士の凝集を抑制して、平均粒径が200μm以下の結晶化度が低いセルロース粒子を製造する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−149153号公報
【特許文献2】特開2012−207056号公報
【特許文献3】特開2011−148927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉末セルロースなどの小粒径のセルロース材料は、水に分散された際に粘度が高くなり、ハンドリングが困難となる場合がある。
【0006】
本発明は、嵩密度が高く、水に分散された際の粘度が低い、ハンドリング性に優れたセルロース材料の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、乾燥状態において、複数のパルプ繊維が縒られた状態で互いに結合した粒子状を呈し、粒子長径が0.20mm以上5mm以下の粒子状パルプ会合体、およびその製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、嵩密度が高く、水に分散された際の粘度が低い、ハンドリング性に優れたセルロース材料の提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に適用可能な磨砕装置の刃型の例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に適用可能な磨砕装置の刃型の例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態による粒子状パルプ会合体の走査型電子顕微鏡写真である。
図4】比較例に係る綿状セルロースの走査型電子顕微鏡写真である。
図5】本発明の実施の形態による粒子状パルプ会合体の製造方法の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。以下に示す実施の形態は例示目的であり、本発明はこれらの実施の形態に限定して解釈されるものではない。
【0011】
<粒子状パルプ会合体>
図3に、本発明の実施の形態による粒子状パルプ会合体の乾燥状態における走査型電子顕微鏡写真(倍率50倍)を示す。本発明の実施の形態に係る粒子状パルプ会合体は、複数のパルプ繊維が縒られた状態で互いに結合した、粒子状を呈するセルロース材料である。
【0012】
(粒子長径)
本発明の実施の形態による粒子状パルプ会合体の粒子長径(長軸方向の長さ)は、用途や要求品質にもよるが、好ましくは0.20mm以上5mm以下である。粒子長径は、0.25mm以上3mm以下がさらに好ましく、0.30mm以上1mm以下がより好ましい。粒子長径が0.20mm未満であると、パルプ会合体の形態は粉末状に近くなり、微細な粒子による粉塵が舞いやすくなり、ハンドリング性が悪化する。また、粒子長径が5mmを超えると、粒子長径の粒子短径(短軸方向の長さ)に対する比としてのアスペクト比が大きくなって粉粒体としての流動性が劣り、また、水に分散された際の分散液の粘度が高くなる傾向にある。
【0013】
(50%粒子径)
本明細書における「50%粒子径」は、D50またはメジアン径とも呼ばれ、体積基準で測定した際の累積粒子径分布において、その粒子径を基準にして分けたときの粒子径が大きい側の粒子と小さい側の粒子とが当量となる粒子径である。
【0014】
本発明の実施の形態による粒子状パルプ会合体の50%粒子径は、レーザー解析・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、型番MT3300EXII)を用いて測定された際に、好ましくは200μm以上1000μm以下である。50%粒子径が200μm未満であると、粉末状に近い小粒径のパルプ会合体が多く含まれて、微細な粒子による粉塵が舞いやすくなり、ハンドリング性が悪化する。また、50%粒子径が1000μmを超えると、粒が大きすぎて用途が限定されたり使用ができなかったりする場合がある。
【0015】
(平均繊維長)
本発明の実施の形態における「平均繊維長」は、形成された粒子状パルプ会合体を構成する繊維成分を離解して得られる繊維成分の繊維長の平均値である。平均繊維長は、以下の測定方法により算出することができる。
【0016】
まず粒子状パルプ会合体を水に離解させて得られた繊維分散スラリーを作製する。繊維分散スラリーは、1gの粒子状パルプ会合体を100mlの水に入れ、紙パルプ技術協会Tappi Standard 205に準じた溶解器を使用し、十分に離解するまでダッシャーを上下に動かすことにより得る。得られた繊維分散スラリーを0.01質量%以上0.02質量%以下の濃度になるように希釈し、希釈液を作製する。この希釈液10mlに含まれる繊維成分の中心線繊維長を、繊維長測定装置(metso automation株式会社製、カヤーニファイバーラボVer4.0)を用いて測定し、離解繊維の長さ加重平均値を算出する。なお、本明細書における「中心線繊維長」とは、繊維のセンターラインに沿って測定し、繊維の屈折を加味した正味の繊維長をいう。
【0017】
本発明の実施の形態による粒子状パルプ会合体を構成する繊維成分の平均繊維長は、好ましくは0.1mm以上3mm以下である。繊維長が0.1mm未満であると、製造コストが高くなり、また、パルプ繊維に含まれるセルロースの分子量が低くなる傾向にある。また、繊維長が3mmを超えると、そのパルプ繊維を含んで構成される粒子状パルプ会合体の寸法が大きくなり、上述の粒子長径および50%粒子径が大きくなりすぎる場合がある。
【0018】
(嵩密度)
粒子状パルプ会合体の「嵩密度」は、粒子状パルプ会合体の単位体積あたりの質量をいう。本発明の実施の形態による粒子状パルプ会合体の嵩密度は、規定の容器を水平面に置き、その容器内へ粒子状パルプ会合体を水平面からの高さ13.5cmから自由落下させて入れ、容器の内容積を満たす粒子状パルプ会合体の質量(乾燥質量)を測定して、測定された質量と容器の内容積とから算出した際に、好ましくは0.05g/ml以上である。嵩密度が0.05g/ml未満であると、嵩張るため、使用時のハンドリング性や輸送性が劣る傾向にある。
【0019】
(粘度)
本発明の実施の形態による粒子状パルプ会合体の「粘度」は、粒子状パルプ会合体を3質量%の濃度になるように水に分散させた分散液をB型粘度計を用いてローター回転数100rpm、温度20℃で測定した際に、好ましくは100mPa・S以下であり、より好ましくは50mPa・S以下であり、さらに好ましくは、11mPa・S以下である。粘度が大きくなると、ハンドリング性が劣る傾向にある。
【0020】
(パルプ)
本発明の実施の形態による粒子状パルプ会合体を構成するパルプ繊維を得るための原料となるパルプの種類に特に制限はなく、例えば、木材由来パルプ、非木材由来パルプなどのパルプを用いることができる。木材由来パルプとは、広葉樹または針葉樹を公知の方法で蒸解して得られるパルプである。パルプは、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ;セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ;砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)等の機械パルプであってもよい。非木材由来パルプとは、ケナフ、稲わら、麦わら、竹、バガス(サトウキビバガス)、亜麻、楮、三椏、葦、大麻、マニラ麻などの非木材材料を公知の方法で蒸解して得られるパルプである。パルプは漂白パルプであってもよいし、未漂白パルプであってもよい。パルプは、溶解パルプ(DP)であってもよい。1種類のパルプを単独で用いてもよく、2種類以上のパルプを混合して用いてもよい。
【0021】
本発明の実施の形態においてパルプ繊維を得るための出発原料となるパルプの形状に特に制限は無いが、工業生産を考慮すると、シート状のパルプ(以下、パルプシートともいう)であることが好ましい。パルプシートは、ロール状に巻かれていてもよく、折り畳まれていてもよい。
【0022】
<粒子状パルプ会合体の製造方法>
図5を参照して、本発明の実施の形態による粒子状パルプ会合体の製造方法を説明する。
【0023】
(パルプ原料の調製:ステップS101)
まず、出発原料としてのパルプシートを水中に投入して攪拌し、パルプシートを構成するパルプ繊維を水に分散させて、パルプ分散液を得る。次いで、パルプ分散液を脱水して、パルプ濃度を磨砕処理に適した所望の濃度に調節して、これをパルプ原料とする。
【0024】
脱水は、一般に知られた脱水手段により行うことができ、例えばパルプ分散液をスクリュープレスやフィルタープレスなどの加圧式脱水機や遠心力を利用して固液分離を行う遠心脱水機を用いて処理し、脱水後のパルプケーキを回収することによって行うことができる。
【0025】
次工程の磨砕処理に使用する磨砕装置や磨砕条件にもよるが、パルプ濃度は、30質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。パルプ濃度が30質量%未満であると、磨砕効率が劣る傾向にあり、パルプが十分に磨砕されないことがある。パルプ濃度が70質量%を超えると、磨砕装置に対して過大な負荷が掛かりやすい。
【0026】
(磨砕処理:ステップS102)
ステップS101によって得られたパルプ原料に対して、摩砕処理を行う。
【0027】
本明細書において、パルプ原料に対する「磨砕処理」または単に「磨砕」とは、水の存在下で湿潤状態にあるパルプ繊維を機械的に砕いてすり潰すことをいう。磨砕処理により、束になっていたパルプ繊維は、一本一本の繊維にバラバラに離解され、長さが短く切断され、水和および膨潤し、繊維が枝状に分岐する現象であるフィブリル化によって比表面積が増し、絡み合って水素結合を起こしやすくなる。磨砕処理後のパルプ分散液において、絡み合ったパルプ繊維は、粒子状を呈する。
【0028】
磨砕処理は、一般に知られた磨砕手段によって行うことができ、例えば、グラインダー(石臼式磨砕機)や、ビーター(叩解機)、コニカルリファイナー(臼歯式磨砕機)、シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナーのようなディスクリファイナー、などの磨砕装置を単独でまたは組み合わせて使用することができる。ディスクタイプの磨砕装置は、摩擦熱の発生が少なく、また繊維の長さを揃えやすいため、好ましく使用される。
【0029】
パルプ繊維の磨砕の状態は、磨砕装置の種類、構造、歯や刃がある場合の歯や刃の形状およびクリアランス、処理条件(温度、圧力、回転数)などの諸条件によって制御することができる。
【0030】
(乾燥処理:ステップS103)
ステップS102によって得られた摩砕処理後のパルプ分散液に対して、乾燥処理を行う。乾燥処理の前に、あらかじめ、パルプ分散液から過剰な水分を除去するための脱水を行ってもよい。
【0031】
乾燥処理は、一般に知られた乾燥手段により行うことができ、例えば、熱風受熱乾燥法、伝導受熱乾燥法、除湿空気乾燥法、冷風乾燥法、マイクロ波乾燥法、赤外線乾燥法、天日乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法等の方法およびそのための乾燥装置を、単独でまたは組み合わせて使用することができる。乾燥処理における温度は、乾燥に用いる手段、時間、圧力等により一概に決定できないが、パルプ繊維に与えるダメージが少なく且つ効率的な乾燥が可能となるように、10℃以上250℃以下が好ましく、25℃以上180℃以下がより好ましく、50℃以上150℃以下がさらに好ましい。
【0032】
ステップS102により得られた湿潤状態で絡み合った粒子状のパルプ繊維は、ステップS103の乾燥処理により水分が少なくなると水素結合を起こして繊維が結合し、結果的に、乾燥状態の粒子状パルプ会合体が得られる。
【0033】
なお、パルプはセルロース材料の一種であり、吸水性、吸湿性を有するため、「乾燥状態」というときであっても、周囲環境の湿度に応じた水分、通常は5%以上30%以下の水分を含有する。本発明の実施の形態における乾燥処理は、得られる粒子状パルプ会合体のハンドリング性の良さおよび輸送コストの低さ等の観点から、粒子状パルプ会合体の含水率が周囲環境の湿度に応じた水分と同等かまたはそれよりも若干低めとなるように行うことが好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例および比較例により本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0035】
実施例および比較例の結果物について、粒子長径、嵩密度、平均繊維長、16メッシュ不通過割合、100メッシュ不通過割合、50%粒子径(D50)、安息角、および粘度を、下記の方法で測定した。
【0036】
<測定方法>
1.[粒子長径]
光学顕微鏡で結果物100個(粒)の長径(長軸方向の長さ)を測定し、平均値を算出して、粒子長径とした。
2.[嵩密度]
規定の容器を水平面に置き、その容器内へ結果物を水平面からの高さ13.5cmから自由落下させて入れ、容器の内容積を満たす結果物の質量(乾燥質量)を測定し、単位体積あたりの質量を算出して、嵩密度とした。
3.[平均繊維長]
粒子状パルプ会合体を水に離解させて得られた繊維分散スラリーを作製した。繊維分散スラリーは、1gの粒子状パルプ会合体を100mlの水に入れ、紙パルプ技術協会Tappi Standard 205に準じた溶解器を使用し、十分に離解するまでダッシャーを上下に動かすことにより得た。得られた繊維分散スラリーを0.01質量%以上0.02質量%以下の濃度になるように希釈し、希釈液を作製した。この希釈液10mlに含まれる繊維成分の中心線繊維長を、繊維長測定装置(metso automation株式会社製、カヤーニファイバーラボVer4.0)を用いて測定し、離解繊維の長さ加重平均値を算出して、平均繊維長とした。
4.[16メッシュ不通過割合]
16メッシュのふるい(東京スクリーン株式会社製、型番JTS−200−60−41)に結果物10gを入れ、振動ふるい機(FRITSH社(ドイツ)製、フリッチュ・ジャパン株式会社より入手可能)で1分間振動させ、ふるいに入れた結果物のうちのふるいを通過した量を測定し、その測定値から、ふるいに入れた結果物のうちのふるいを通過しなかった結果物の量の割合(質量基準の百分率)を算出して、16メッシュ不通過割合とした。
5.[100メッシュ不通過割合]
100メッシュのふるい(東京スクリーン株式会社製、型番JTS−200−60−29)に結果物10gを入れ、振動ふるい機(FRITSH社(ドイツ)製、フリッチュ・ジャパン株式会社より入手可能)で1分間振動させ、ふるいに入れた結果物のうちのふるいを通過した量を測定し、その測定値から、ふるいに入れた結果物のうちのふるいを通過しなかった結果物の量の割合(質量基準の百分率)を算出して、100メッシュ不通過割合とした。
6.[50%粒子径(D50)]
レーザー解析・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、型番MT3300EXII)を用いて結果物のメジアン径(50%粒子径、D50ともいう)を測定した。
7.[安息角]
結果物を水平面に高さ13.5cmから自由落下させて山状に堆積させ、崩れることなく安定を保つ斜面と水平面とでなす最大角度を測定して、安息角とした。
8.[粘度]
結果物を3質量%の濃度になるように水に分散させて分散液とし、この分散液について、デジタル式B型粘度計(東機産業株式会社製、型番:TVB−10M)を用い、ローター回転数100rpm、温度20℃にて、粘度を測定した。
【0037】
(実施例1)
王子製紙株式会社製の広葉樹漂白溶解パルプ(LBDP)からなる溶解パルプシート(以下、単にDPシートともいう)の構成パルプ繊維(平均繊維長0.67mm)を水に分散させ、パルプ濃度が35質量%となるように脱水して、パルプ原料とした。このパルプ原料を、シングルディスクリファイナー(熊谷理機工業株式会社製)で、刃型としてプレートB(図1参照)を使用し、回転数600rpm、刃のクリアランス1.5mmの条件で処理して、複数のパルプ繊維が集まってできた粒子状の湿潤パルプを得た。次いで、得られた粒子状の湿潤パルプを130℃のオーブンで乾燥して、実施例1の結果物を得た。
【0038】
(実施例2)
実施例1において、刃のクリアランスを2mmに変更した以外は全て実施例1と同様の方法で試験した。
【0039】
(実施例3)
実施例1において、刃のクリアランスを3mmに変更した以外は全て実施例1と同様の方法で試験した。
【0040】
(実施例4)
実施例1において、刃のクリアランスを5mmに変更した以外は全て実施例1と同様の方法で試験した。
【0041】
(実施例5)
実施例1において、プレートBをプレートD(図2参照)に変更し、刃のクリアランスを1mmで処理した以外は全て実施例1と同様の方法で試験した。
【0042】
(実施例6)
実施例5において、刃のクリアランスを1.5mmに変更した以外は全て実施例1と同様の方法で試験した。
【0043】
(実施例7)
実施例5において、刃のクリアランスを2mmに変更した以外は全て実施例1と同様の方法で試験した。
【0044】
(実施例8)
実施例5において、刃のクリアランスを3mmに変更した以外は全て実施例1と同様の方法で試験した。
【0045】
(実施例9)
実施例5において、刃のクリアランスを5mmに変更した以外は全て実施例1と同様の方法で試験した。
【0046】
(実施例10)
DPシートの構成パルプ繊維(平均繊維長0.67mm)を水に分散させ、パルプ濃度が30質量%となるように脱水して、パルプ原料とした。それ以外は、全て実施例1と同様の方法で試験した。
【0047】
(実施例11)
DPシートの構成パルプ繊維(平均繊維長0.67mm)を水に分散させ、パルプ濃度が40質量%となるように脱水して、パルプ原料とした。それ以外は、全て実施例1と同様の方法で試験した。
【0048】
(実施例12)
DPシートの構成パルプ繊維(平均繊維長0.67mm)を水に分散させ、パルプ濃度が50質量%となるように脱水して、パルプ原料とした。それ以外は、全て実施例1と同様の方法で試験した。
【0049】
(実施例13)
DPシートの構成パルプ繊維(平均繊維長0.67mm)を水に分散させ、パルプ濃度が60質量%となるように脱水して、パルプ原料とした。それ以外は、全て実施例1と同様の方法で試験した。
【0050】
(比較例1)
DPシートをカッターミルRC−250(有限会社吉工製)で粉砕し、0.5mmφのスクリーンを通過した画分を回収し、これを比較例1の結果物とした。結果物について、粒子長径および嵩密度を実施例1と同様の方法で測定した。
【0051】
(比較例2)
DPシートをカッターミルRC−250(有限会社吉工製)で粉砕し、10mmφのスクリーンを通過した画分を回収し、これを比較例2の結果物とした。
【0052】
(比較例3)
市販の粉末セルロース(日本製紙製株式会社製、KC−フロック(登録商標)W−50)を比較例3の結果物とした。
【0053】
<測定結果>
表1に実施例および比較例の条件および測定結果を示す。また、図3に実施例1の結果物の顕微鏡写真を示し、図4に比較例1の結果物の顕微鏡写真を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
図3に示されるように、実施例1の結果物は、複数のパルプ繊維が縒られた状態で互いに結合して粒子状となった、粒子状パルプ会合体であった。実施例2から13の結果物も、実施例1の結果物と同様に、粒子状パルプ会合体であった(不図示)。
【0056】
また、図4に示されるように、カッターミルを用いた乾式法により製造された比較例1の結果物は、繊維が独立してバラバラに存在しており、肉眼観察および触感によるとふわふわした綿状を示す、綿状セルロースであった。
【0057】
また、比較例1と同様にカッターミルを用いた乾式法により製造され、比較例1よりも目の粗いスクリーンを通過した画分である比較例2の結果物は、肉眼観察によると細かい紙片状であった。
【0058】
比較例3の結果物は、市販の粉末セルロースであり、粉末状であった。
【0059】
実施例1〜13は、比較例1と比べて、長径および繊維長が同程度であるにもかかわらず、嵩密度が高く、粘度が低かった。実施例1〜13は、比較例2と比べて、長径および繊維長が小さいにもかかわらず、嵩密度が高く、粘度が低かった。実施例1〜13は、比較例3と比べて、長径および繊維長が大きく、嵩密度が高く、粘度が低かった。
【0060】
本発明の実施の形態による粒子状パルプ会合体は、比較例1〜3と比べて、嵩密度が高く粘度が低いため、使用時のハンドリング性や輸送コストの観点において優れているということができる。また、本発明の実施の形態による粒子状パルプ会合体は、比較例3と比べて繊維が長いため、繊維を構成するセルロースの分子量の製造時の低下が小さいと考えられる。そのため、利用用途が比較例3よりも広くなり得る。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、嵩密度が高く、水に分散された際の粘度が低い、ハンドリング性に優れた粒子状のパルプの提供が可能になる。
【0062】
本発明の実施の形態に係る粒子状パルプ会合体は、例えば、高分子吸収体用途に使用し得る。
【0063】
本発明の実施の形態に係る粒子状パルプ会合体は、粉末状セルロースと比べて繊維長が長いため、製造時の分子量の低下が小さいと考えられる。そのため、粒子状パルプ会合体は、例えば、セルロース誘導体や粉末セルロースを製造するためのセルロース原料として、好適に使用され得る。
【0064】
以下に、本発明の好ましい実施の形態の例を示す。
1. 粒子長径が0.20mm以上5mm以下であることを特徴とする粒子状パルプ会合体。
2. 50%粒子径が200μm以上1000μm以下であることを特徴とする1.に記載の粒子状パルプ会合体。
3. 粒子状パルプ会合体を構成する繊維成分の平均繊維長が0.1mm以上3mm以下であることを特徴とする1.または2.に記載の粒子状パルプ会合体。
4. 嵩密度が0.05g/ml以上であることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の粒子状パルプ会合体。
5. 粒子状パルプ会合体を3質量%の濃度になるように水に分散させた分散液を、B型粘度計を用いてローター回転数100rpm、温度20℃で測定したときの粘度が、100mPa・S以下であることを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の粒子状パルプ会合体。
6.パルプを水に分散させてパルプ分散液を得る工程と、前記パルプ分散液をパルプ濃度が30質量%以上70質量%以下となるように脱水する工程と、前記脱水後の前記パルプ分散液を原料として摩砕処理を行う工程と、を含むことを特徴とする粒子状パルプ会合体の製造方法。
7.前記摩砕処理を行う工程の後に、乾燥処理を行う工程をさらに含むことを特徴とする6.に記載の粒子状パルプ会合体の製造方法。
8.前記摩砕処理を磨砕刃がディスクタイプの磨砕装置で行うことを特徴とする6.または7.に記載の粒子状パルプ会合体の製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5