(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)、下記の成分(B)、および下記の成分(C)を構成成分とする重合用触媒と、α−オレフィンとを接触させて重合させることを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法。
成分(B):有機アルミニウム化合物
成分(C):アルコキシシラン化合物[但し、アルケニル基を有するシラン化合物とは異なる。]
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を項目毎に、詳細に説明する。
1.α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)
本発明(第1及び第2発明)は、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)の製造方法である。
本発明(第1発明)は、下記の成分(A1)および成分(A2)を接触させて接触生成物を生成させる工程を含み、接触生成物を、成分(A1)および成分(A2)が初めて接触した時点を起点として、1日以上180日以内の待機時間を置いて熟成することを特徴とする。
成分(A1):チタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須成分として含有する固体成分(A1’)とエチレン性不飽和炭化水素とを不活性溶媒中で接触させて得られる予備重合処理生成物
成分(A2):アルケニル基を有するシラン化合物
【0016】
本発明(第2発明)は、下記の成分(A1’)とエチレン性不飽和炭化水素を不活性溶媒中で接触させて予備重合処理生成物(A1)を生成させる工程、
前記予備重合処理生成物(A1)および成分(A2)を接触させて接触生成物を生成させる工程を含み、接触生成物を、成分(A1)および成分(A2)が初めて接触した時点を起点として、1日以上180日以内の待機時間を置いて熟成することを特徴とする。
成分(A1’):チタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須成分として含有する固体成分
成分(A2):アルケニル基を有するシラン化合物
上述の第1及び第2発明において、チタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須成分として含有する固体成分である成分(A1’)、成分(A1’)とエチレン性不飽和炭化水素を接触させて得られる予備重合処理生成物たる成分(A1)、アルケニル基を有するシラン化合物である成分(A2)は、共通した用語であり、これらについて、以下にまとめて説明する。なお、本発明(第1及び第2発明)における、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)の製造方法の一例のフローチャートを
図1に示す。
【0017】
(1)成分(A1’)
本発明で用いる成分(A1’)は、チタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須成分として含有する固体成分である。ここで、「必須成分として含有する」ということは、挙示の4成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を任意の形態で含んでもよいことを示すものである。
【0018】
(1−1)チタン
本発明に係る成分(A1’)で用いるチタンのチタン源としては、任意のチタン化合物(A1a)を用いることができる。チタン化合物の代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。
チタンの価数に関しては、4価、3価、2価、0価の任意の価数を持つチタン化合物を用いることができるが、好ましくは4価および3価のチタン化合物、更に好ましくは4価のチタン化合物を用いることが好ましい。
【0019】
4価のチタン化合物の具体例としては、四塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類、テトラブトキシチタンに代表されるアルコキシチタン化合物類、テトラブトキシチタンダイマー(BuO)
3Ti−O−Ti(OBu)
3に代表されるTi−O−Ti結合を有するアルコキシチタンの縮合化合物類、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライドに代表される有機金属チタン化合物類、などを挙げることができる。この中で、四塩化チタンとテトラブトキシチタンが特に好ましい。
また、3価のチタン化合物の具体例としては、三塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類を挙げることができる。三塩化チタンは、水素還元型、金属アルミニウム還元型、金属チタン還元型、有機アルミニウム還元型、など、公知の任意の方法で製造された化合物を用いることができる。
【0020】
上記のチタン化合物類は、単独で用いるだけではなく、複数の化合物を併用することも可能である。また、上記チタン化合物類の混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Ti(OBu)
mCl
4−m;0<m<4などの化合物)、また、フタル酸エステル等のその他の化合物との錯化物(例えば、Ph(CO
2Bu)
2・TiCl
4などの化合物)、などを用いることができる。
【0021】
(1−2)マグネシウム
本発明に係る成分(A1’)で用いるマグネシウムのマグネシウム源としては、任意のマグネシウム化合物(A1b)を用いることができる。マグネシウム化合物の代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。
一般的には、塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物類、ジエトキシマグネシウムに代表されるアルコキシマグネシウム化合物類、金属マグネシウム、酸化マグネシウムに代表されるオキシマグネシウム化合物類、水酸化マグネシウムに代表されるヒドロキシマグネシウム化合物類、ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャール化合物類、ブチルエチルマグネシウムに代表される有機マグネシウム化合物類、炭酸マグネシウムやステアリン酸マグネシウムに代表される無機酸及び有機酸のマグネシウム塩化合物類、及びそれらの混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Mg(OEt)
mCl
2−m;0<m<2などの化合物)、などを用いることができる。
この中で好ましいのは、塩化マグネシウム、ジエトキシマグネシウム、金属マグネシウム、ブチルマグネシウムクロライドである。
【0022】
(1−3)ハロゲン
本発明に係る成分(A1’)で用いるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、及びそれらの混合物を用いることができる。この中で塩素が特に好ましい。
ハロゲンは、上記のチタン源となるチタン化合物及び/又はマグネシウム源となるマグネシウム化合物から供給されるのが一般的であるが、その他のハロゲン化合物(A1c)より供給することもできる。その他のハロゲン化合物の代表的な例としては、四塩化ケイ素に代表されるハロゲン化ケイ素化合物類、塩化アルミニウムに代表されるハロゲン化アルミニウム化合物類、1,2−ジクロロエタンやベンジルクロライドに代表されるハロゲン化有機化合物類、トリクロロボランに代表されるハロゲン化ボラン化合物類、五塩化リンに代表されるハロゲン化リン化合物類、六塩化タングステンに代表されるハロゲン化タングステン化合物類、五塩化モリブデンに代表されるハロゲン化モリブデン化合物類、などを挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いるだけでなく、併用することも可能である。この中で、四塩化ケイ素が特に好ましい。
【0023】
(1−4)電子供与性化合物
本発明に係る成分(A1’)で用いる電子供与性化合物(A1d)としては、任意のものを用いることができる。電子供与性化合物の代表的な例としては、特開2004−124090号公報に開示されている化合物を挙げることができる。
一般的には、有機酸及び無機酸並びにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)化合物類、エーテル化合物類、ケトン化合物類、アルデヒド化合物類、アルコール化合物類、アミン化合物類、などを用いることが好ましい。
【0024】
有機酸としては、フタル酸に代表される芳香族多価カルボン酸化合物類、安息香酸に代表される芳香族カルボン酸化合物類、2−n−ブチル−マロン酸の様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸や2−n−ブチル−コハク酸の様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸に代表される脂肪族多価カルボン酸化合物類、プロピオン酸に代表される脂肪族カルボン酸化合物類等のカルボン酸化合物類、ベンゼンスルホン酸やメタンスルホン酸に代表される芳香族及び脂肪族のスルホン酸化合物類、などを例示することができる。
これらのカルボン酸化合物類及びスルホン酸化合物類は、芳香族・脂肪族に関わらず、マレイン酸の様に、分子中の任意の位置に任意の数だけ不飽和結合を有してもよい。
【0025】
有機酸の誘導体化合物類としては、上記有機酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミド、などを例示することができる。
エステルの構成要素であるアルコールとしては、脂肪族及び芳香族アルコールを用いることができる。これらのアルコールの中でも、エチル基、ブチル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基等の炭素数1〜20の脂肪族の炭化水素基からなるアルコールが好ましい。更に炭素数2〜12の脂肪族の炭化水素基からなるアルコールが好ましい。また、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、等の脂環式の炭化水素基からなるアルコールを用いることもできる。
【0026】
酸ハライドの構成要素であるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、等を用いることができる。中でも、塩素が最も好ましい。多価有機酸のポリハライドの場合は、複数のハロゲンが同一であっても異なっていてもよい。
アミドの構成要素であるアミンとしては、脂肪族及び芳香族アミンを用いることができる。これらのアミンの中でも、アンモニア、エチルアミンやジブチルアミンに代表される脂肪族アミン、アニリンやベンジルアミンに代表される芳香族の炭化水素基を分子内に有するアミン、などを好ましい化合物として例示することができる。
【0027】
無機酸としては、炭酸、リン酸、ケイ酸、硫酸、硝酸、などを例示することができる。
無機酸の誘導体化合物としては、上記無機酸のエステルを用いることが好ましい。テトラエトキシシラン(ケイ酸エチル)、テトラブトキシシラン(ケイ酸ブチル)、リン酸トリブチル、などを具体例として挙げることができる。
【0028】
エーテル化合物類としては、ジブチルエーテルに代表される脂肪族エーテル化合物類、ジフェニルエーテルに代表される芳香族エーテル化合物類、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンや2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンの様な2位に一つ又は二つの置換基を有する1,3−ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物類、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンに代表される芳香族の炭化水素基を分子内に有する多価エーテル化合物類、などを例示することができる。
【0029】
ケトン化合物類としては、メチルエチルケトンに代表される脂肪族ケトン化合物類、アセトフェノンに代表される芳香族ケトン化合物類、2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオンに代表される多価ケトン化合物類、などを例示することができる。
アルデヒド化合物類としては、プロピオンアルデヒドに代表される脂肪族アルデヒド化合物類、ベンズアルデヒドに代表される芳香族アルデヒド化合物類、などを例示することができる。
アルコール化合物類としては、ブタノールや2−エチルヘキサノールに代表される脂肪族アルコール化合物類、フェノールや、クレゾールに代表されるフェノール誘導体化合物類、グリセリンや1,1’−ビス−2−ナフトールに代表される脂肪族若しくは芳香族の多価アルコール化合物類、などを例示することができる。
【0030】
アミン化合物類としては、ジエチルアミンに代表される脂肪族アミン化合物類、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジンに代表される窒素含有脂環式化合物類、アニリンに代表される芳香族アミン化合物類、1,3−ビス(ジメチルアミノ)−2,2−ジメチルプロパンに代表される多価アミン化合物類、また、窒素原子含有芳香族化合物類、などを例示することができる。
【0031】
さらに、電子供与性化合物(A1d)として、上記の複数の官能基を同一分子内に含有する化合物を用いることもできる。その様な化合物の例として、酢酸−(2−エトキシエチル)や3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルに代表されるアルコキシ基を分子内に有するエステル化合物類、2−ベンゾイル−安息香酸エチルに代表されるケトエステル化合物類、(1−t−ブチル−2−メトキシエチル)メチルケトンに代表されるケトエーテル化合物類、N,N−ジメチル−2,2−ジメチル−3−メトキシプロピルアミンに代表されるアミノエーテル化合物類、エポキシクロロプロパンに代表されるハロゲノエーテル化合物類などを挙げることができる。
【0032】
これらの電子供与性化合物(A1d)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0033】
これらの中で好ましいのは、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチルに代表されるフタル酸エステル化合物類、フタロイルジクロライドに代表されるフタル酸ハライド化合物類、2−n−ブチル−マロン酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸エステル化合物類、2−n−ブチル−コハク酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸エステル化合物類、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンや2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンの様な2位に一つ又は二つの置換基を有する1,3−ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物類、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンに代表される芳香族の炭化水素基を分子内に有する多価エーテル化合物類などである。
【0034】
(1−5)成分(A1’)の調製
本発明に係る成分(A1’)を構成する各成分の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
【0035】
チタン化合物(A1a)の使用量は、使用するマグネシウム化合物(A1b)の使用量に対して、モル比(チタン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.0001〜1,000の範囲内であり、より好ましくは0.001〜100の範囲であり、さらに好ましくは0.01〜50の範囲内である。
【0036】
マグネシウム化合物(A1b)及びチタン化合物(A1a)以外にハロゲン源となる化合物(すなわちハロゲン化合物(A1c))を使用する場合は、その使用量は、マグネシウム化合物及びチタン化合物の各々がハロゲンを含むか含まないかに関わらず、使用するマグネシウム化合物(A1b)の使用量に対して、モル比(ハロゲン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.01〜1,000の範囲内であり、より好ましくは0.1〜100の範囲内である。
【0037】
電子供与性化合物(A1d)の使用量は、使用するマグネシウム化合物(A1b)の量に対して、モル比(電子供与性化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001〜10の範囲内であり、より好ましくは0.01〜5の範囲内である。
【0038】
本発明に係る成分(A1’)は、上記の構成する各成分を好ましくは上記の使用量で接触させて得られる。
各成分の接触条件は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の条件を用いることができる。一般的には、不活性ガス雰囲気下又は不活性溶媒中で、接触させることが好ましく、さらに次の条件が好ましい。
接触温度は、−50〜200℃程度、好ましくは0〜150℃である。接触方法としては、不活性溶媒中で撹拌により、接触させる方法、などを例示することができる。
【0039】
成分(A1’)の調製の際には、中間及び/又は最後に不活性溶媒で洗浄を行ってもよい。
【0040】
洗浄を行う際、好ましい不活性溶媒としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、などを例示することができる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0041】
なお、本発明に係る成分(A1’)の調製方法としては、任意の方法を用いることができるが、具体的には、次に説明する方法を例示することができる。ただし、本発明は、下記例示により何ら制限されるものではない。
【0042】
(i)共粉砕法
塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物とチタン化合物とを共粉砕することにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する方法である。電子供与性化合物を、同時に又は別工程で、粉砕しても良い。機械的粉砕方法としては、回転ボールミルや振動ミル等の任意の粉砕機を用いることができる。溶媒を用いない乾式粉砕法だけでなく、不活性溶媒共存下で共粉砕する湿式粉砕法を用いることもできる。
【0043】
(ii)加熱処理法
塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物とチタン化合物とを不活性溶媒中で撹拌することにより、接触処理を行い、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する方法である。電子供与性化合物を、同時に又は別工程で、接触処理しても良い。チタン化合物として四塩化チタンなどの液状の化合物を用いる場合は、不活性溶媒なしで接触処理することもできる。また、必要に応じて、ハロゲン化ケイ素化合物等の任意成分を、同時に又は別工程で、接触させても良い。接触温度に特に制限はないが、90℃〜130℃程度の比較的高い温度に加熱して接触処理する方が好ましい場合が多い。
【0044】
(iii)溶解析出法
塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物を電子供与性化合物と接触させることにより溶解し、生じた溶解液と析出剤を接触させて析出反応を起こすことにより粒子形成を行う工程を含む方法である。
溶解に用いる電子供与性化合物の例としては、アルコール化合物類、エポキシ化合物類、リン酸エステル化合物類、アルコキシ基を有するケイ素化合物類、アルコキシ基を有するチタン化合物類、エーテル化合物類、などを挙げることができる。析出剤の例としては、ハロゲン化チタン化合物類、ハロゲン化ケイ素化合物類、塩化水素、ハロゲン含有炭化水素化合物類、Si−H結合を有するシロキサン化合物類(ポリシロキサン化合物類を含む)、アルミニウム化合物類、などを例示することができる。溶解液と析出剤の接触方法としては、溶解液に析出剤を添加しても良いし、析出剤に溶解液を添加しても良い。溶解、析出のどちらの工程でもチタン化合物を用いない場合は、析出反応により形成した粒子を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に必要に応じて、こうして形成した粒子を、ハロゲン化チタン化合物類、ハロゲン化ケイ素化合物類、電子供与性化合物、などの任意成分と接触させても良い。この際、電子供与性化合物は、溶解に用いるものとは異なっていても良いし、同じであっても良い。これらの任意成分の接触順序については、特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、溶解、析出、チタン化合物類との接触の際に一緒に接触させることもできる。また、溶解、析出、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
【0045】
(iv)造粒法
溶解析出法と同様に塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物を電子供与性化合物と接触させることにより溶解し、生じた溶解液を主に物理的な手法により造粒する工程を含む方法である。
溶解に用いる電子供与性化合物の例は、溶解析出法の例に同じである。造粒手法の例としては、高温の溶解液を低温の不活性溶媒中に滴下する方法、高温の気相部に向かって溶解液をノズルから噴き出して乾燥する方法、低温の気相部に向かって溶解液をノズルから噴き出して冷却する方法、などを挙げることができる。造粒により形成した粒子をチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に、必要に応じて、こうして形成した粒子を、ハロゲン化ケイ素化合物類、電子供与性化合物、などの任意成分と接触させても良い。この際、電子供与性化合物は、溶解に用いるものとは異なっていても良いし、同じであっても良い。これらの任意成分の接触順序については、特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、溶解やチタン化合物との接触の際に一緒に接触させることもできる。また、溶解、チタン化合物類との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
【0046】
(v)マグネシウム化合物のハロゲン化法
ハロゲンを含有しないマグネシウム化合物に対して、ハロゲン化剤を接触させてハロゲン化する工程を含む方法である。
ハロゲンを含有しないマグネシウム化合物の例としては、アルコキシマグネシウム化合物類、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、脂肪酸のマグネシウム塩、などを挙げることができる。ジアルコキシマグネシウム化合物類を用いる場合は、金属マグネシウムとアルコールとの反応により系中で調製したものを用いることもできる。この調製法を用いる場合は、出発原料であるハロゲンを含まないマグネシウム化合物の段階で造粒等により粒子形成を行うのが一般的である。ハロゲン化剤の例としては、ハロゲン化チタン化合物類、ハロゲン化ケイ素化合物類、ハロゲン化リン化合物類、などを挙げることができる。ハロゲン化剤として、ハロゲン化チタン化合物類を用いない場合は、ハロゲン化により形成したハロゲン含有マグネシウム化合物を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。こうして形成した粒子を、電子供与性化合物と接触させる。更に必要に応じて、こうして形成した粒子をハロゲン化チタン化合物類、ハロゲン化ケイ素化合物類、などの任意成分と接触させても良い。これらの任意成分の接触順序については、特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、ハロゲンを含まないマグネシウム化合物のハロゲン化やチタン化合物類との接触の際に一緒に接触させることもできる。また、ハロゲン化、チタン化合物類との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
【0047】
(vi)有機マグネシウム化合物からの析出法
ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャール化合物、ジアルキルマグネシウム化合物、などの有機マグネシウム化合物類の溶液に析出剤を接触させる工程を含む方法である。
析出剤の例としては、チタン化合物類、ケイ素化合物類、塩化水素、などを挙げることができる。析出剤としてチタン化合物を用いない場合は、析出反応により形成した粒子を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。こうして形成した粒子を、電子供与性化合物と接触させる。更に必要に応じて、こうして形成した粒子をハロゲン化チタン化合物類やハロゲン化ケイ素化合物類など、の任意成分と接触させても良い。これらの任意成分の接触順序については、特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、析出やチタン化合物類との接触の際に一緒に接触させることもできる。また、析出、チタン化合物類との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
【0048】
(vii)含浸法
有機マグネシウム化合物類の溶液、若しくは、マグネシウム化合物を電子供与性化合物で溶解した溶液を、無機化合物の担体、若しくは、有機化合物の担体に含浸させる工程を含む方法である。
有機マグネシウム化合物類の例は、有機マグネシウム化合物からの析出法の例に同じである。マグネシウム化合物の溶解に用いる電子供与性化合物は、ハロゲンを含んでいても含んでいなくても良く、電子供与性化合物の例は溶解析出法の例に同じである。マグネシウム化合物がハロゲンを含んでいない場合には、後述するハロゲン化チタン化合物類やハロゲン化ケイ素化合物類などの任意成分と接触させてハロゲンを成分(A1’)に含有させる。
無機化合物の担体の例としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、などを挙げることができる。有機化合物の担体の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、などを挙げることができる。含浸処理後の担体粒子は、析出剤との化学反応や乾燥等の物理的処理によりマグネシウム化合物を析出させて固定化する。析出剤の例は、溶解析出法の例に同じである。析出剤としてチタン化合物を用いない場合は、こうして形成した粒子を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に必要に応じて、こうして形成した粒子をハロゲン化チタン化合物類やハロゲン化ケイ素化合物類などの任意成分と接触させても良く、電子供与性化合物と接触させても良い。これらの任意成分の接触順序については特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、含浸、析出、乾燥、チタン化合物類との接触の際に一緒に接触させることもできる。また、含浸、析出、チタン化合物類との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
【0049】
(viii)複合法
上記(i)〜(vii)に記載した方法を組み合わせて用いることもできる。組み合わせの例としては、「塩化マグネシウムを電子供与性化合物と共粉砕した後にハロゲン化チタン化合物類と加熱処理する方法」、「塩化マグネシウム化合物を電子供与性化合物と共粉砕した後に別の電子供与性化合物を用いて溶解し、更に析出剤を用いて析出する方法」、「ジアルコキシマグネシウム化合物を電子供与性化合物により溶解し、ハロゲン化チタン化合物類と接触させることにより析出させると同時にマグネシウム化合物をハロゲン化する方法」、「ジアルコキシマグネシウム化合物に二酸化炭素を接触させることにより、炭酸エステルマグネシウム化合物類を生成すると同時に溶解し、形成した溶解液をシリカに含浸させ、その後塩化水素と接触させることによりマグネシウム化合物をハロゲン化すると同時に析出固定化し、更にハロゲン化チタン化合物類と接触させることによりチタン化合物を担持する方法」、などを挙げることができる。
【0050】
(2)アルケニル基を有するシラン化合物(A2’)
本発明では、成分(A1’)に対して、アルケニル基を有するシラン化合物(A2’)を任意成分として任意の方法で接触させてもよい。
アルケニル基を有するシラン化合物は、モノシラン(SiH
4)の水素原子の少なくとも一つがアルケニル基(好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基)に置き換えられた構造を示すものである。そして残りの水素原子はそのままか、水素原子のうちのいくつかが、ハロゲン(好ましくは塩素)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基)、その他で置き換えられた構造を示すものである。
本発明に用いられるアルケニル基を有するシラン化合物(A2’)としては、特開平3−234707号公報、特開2003−292522号公報、および特開2006−169283号公報に開示された化合物等を用いることができる。
【0051】
より具体的には、ビニルシラン、メチルビニルシラン、ジメチルビニルシラン、トリメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、クロロジメチルビニルシラン、クロロメチルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、クロロジエチルビニルシラン、ジクロロエチルビニルシラン、ジメチルエチルビニルシラン、ジエチルメチルビニルシラン、トリペンチルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、CH
2=CH−Si(CH
3)
2(C
6H
4CH
3)、(CH
2=CH)(CH
3)
2Si−O−Si(CH
3)
2(CH=CH
2)、ジビニルシラン、ジクロロジビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルトリビニルシラン、アリルメチルジビニルシラン、アリルジメチルビニルシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリブロモシラン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジエチルシラン、ジアリルジビニルシラン、ジアリルメチルビニルシラン、ジアリルメチルクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジブロモシラン、トリアリルメチルシラン、トリアリルエチルシラン、トリアリルビニルシラン、トリアリルクロロシラン、トリアリルブロモシラン、テトラアリルシラン、ジ−3−ブテニルジメチルシラン、ジ−3−ブテニルジエチルシラン、ジ−3−ブテニルジビニルシラン、ジ−3−ブテニルメチルビニルシラン、ジ−3−ブテニルメチルクロロシラン、ジ−3−ブテニルジクロロシラン、ジアリルジブロモシラン、トリアリルメチルシラン、トリ−3−ブテニルエチルシラン、トリ−3−ブテニルビニルシラン、トリ−3−ブテニルクロロシラン、トリ−3−ブテニルブロモシラン、テトラ−3−ブテニルシラン、などを例示することができる。
これらの中でもビニルシラン化合物、ジビニルシラン化合物が好ましく、とりわけトリメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ジメチルジビニルシランが好ましい。
アルケニル基を有するシラン化合物(A2’)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0052】
アルケニル基を有するシラン化合物(A2’)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
アルケニル基を有するシラン化合物(A2’)の使用量は、成分(A1’)を構成するチタン成分に対するモル比(アルケニル基を有するシラン化合物(A2’)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001〜1,000の範囲内であり、より好ましくは0.01〜100の範囲内である。
【0053】
(3)アルコキシシラン化合物(A3’)
本発明では、成分(A1’)に対して、アルコキシシラン化合物(A3’)を任意成分として任意の方法で接触させてもよい。
本発明で用いられるアルコキシシラン化合物(A3’)としては、一般的には、下記一般式(1)にて表される化合物等を用いることが好ましい。
R
1R
2mSi(OR
3)
n ・・・(1)
(式中、R
1は、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。R
2は、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。R
3は、炭化水素基を表す。0≦m≦2,1≦n≦3,m+n=3を示す。)
【0054】
一般式(1)中、R
1は、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。
R
1が炭化水素基である場合は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数3〜10のものである。R
1として用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。より好ましくは、R
1として分岐状脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を用いることが好ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが好ましい。
R
1がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが好ましく、とりわけ、窒素又は酸素であることが好ましい。R
1のヘテロ原子含有炭化水素基の骨格構造としては、R
1が炭化水素基である場合の例示から選ぶことが好ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
【0055】
一般式(1)中、R
2は、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。
R
2として用いることのできるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。
R
2が炭化水素基である場合は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。R
2として用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが好ましい。
R
2がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、R
1がヘテロ原子含有炭化水素基である場合の例示から選ぶことが好ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
mの値が2の場合、二つあるR
2は、同一であっても異なっても良い。また、mの値に関わらず、R
2は、R
1と同一であっても異なってもよい。
【0056】
一般式(1)中、R
3は炭化水素基を表す。R
3は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5のものである。R
3の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、などを挙げることができる。中でも、メチル基とエチル基が好ましい。nの値が2以上である場合、複数存在するR
3は、同一であっても異なってもよい。
【0057】
本発明で用いることのできるアルコキシシラン化合物(A3’)の好ましい例としては、t−Bu(Me)Si(OMe)
2、t−Bu(Me)Si(OEt)
2、t−Bu(Et)Si(OMe)
2、t−Bu(n−Pr)Si(OMe)
2、c−Hex(Me)Si(OMe)
2、c−Hex(Et)Si(OMe)
2、c−Pen
2Si(OMe)
2、i−Pr
2Si(OMe)
2、i−Bu
2Si(OMe)
2、i−Pr(i−Bu)Si(OMe)
2、n−Pr(Me)Si(OMe)
2、t−BuSi(OEt)
3、(Et
2N)
2Si(OMe)
2、Et
2N−Si(OEt)
3、
【0058】
【化1】
、などを挙げることができる。
【0059】
アルコキシシラン化合物(A3’)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。また、アルコキシシラン化合物(A3’)は、前述のアルケニル基を有するシラン化合物(A2’)とは、異なるものである。
【0060】
アルコキシシラン化合物(A3’)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。アルコキシシラン化合物(A3’)の使用量は、成分(A1’)を構成するチタン成分に対するモル比で(アルコキシシラン化合物(A3’)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜1,000の範囲内であり、より好ましくは0.1〜100の範囲内である。
【0061】
本発明で用いられるアルコキシシラン化合物(A3’)は、活性中心となり得るチタン原子の近傍、例えばマグネシウム担体上のルイス酸点等、に配位し、触媒活性やポリマーの規則性といった触媒性能を制御していると、考えられている。ただし、係る作用機構は本発明の技術的範囲を制限するものと解釈するものではない。
【0062】
(4)有機アルミニウム化合物(A4’)
本発明では、成分(A1’)に対して、有機アルミニウム化合物(A4’)を任意成分として任意の方法で接触させてもよい。
本発明に用いられる有機アルミニウム化合物(A4’)としては、一般的には、下記一般式(2)にて表される化合物等を用いることが好ましい。
R
1aAlX
b(OR
2)
c・・・(2)
(式中、R
1は炭化水素基を表す。Xはハロゲン原子または水素原子を表す。R
2は炭化水素基またはAlによる架橋基を表す。1≦a≦3、0≦b≦2、0≦c≦2、a+b+c=3である。)
【0063】
一般式(2)中、R
1は、炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8、特に好ましくは炭素数1〜6、のものを用いることが好ましい。R
1の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、などを挙げることができる。この中で、メチル基、エチル基、イソブチル基が最も好ましい。
一般式(2)中、Xは、ハロゲン原子または水素原子である。Xとして用いることのできるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。この中で、塩素が特に好ましい。
一般式(2)中、R
2は、炭化水素基またはAlによる架橋基である。R
2が炭化水素基である場合には、R
1の炭化水素基の例示と同じ群からR
2を選択することができる。また、有機アルミニウム化合物(A4’)として、メチルアルモキサンに代表されるアルモキサン化合物類を用いることも可能であり、その場合R
2は、Alによる架橋基を表す。
【0064】
有機アルミニウム化合物(A4’)の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、メチルアルモキサン、などを挙げることができる。中でも、トリエチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムが好ましい。
有機アルミニウム化合物(A4’)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0065】
有機アルミニウム化合物(A4’)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
有機アルミニウム化合物(A4’)の使用量は、成分(A1’)を構成するチタン成分に対するモル比(アルミニウム原子のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.1〜100の範囲内であり、より好ましくは1〜50の範囲内である。
【0066】
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物(A4’)は、接触生成物中にアルコキシシラン化合物(A3’)を効率よく担持させることを目的として用いられる。従って、本重合時に、助触媒として用いられる後述する有機アルミニウム化合物(B)とは、使用目的が異なり、区別される。
【0067】
(5)少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)
本発明では、成分(A1’)に対して、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)等の任意成分を任意の方法で接触させてもよい。
本発明で用いることのできる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)としては、特開平3−294302号公報及び特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式(3)にて表される化合物を用いることが好ましい。
R
8O−C(R
7)
2−C(R
6)
2−C(R
7)
2−OR
8 ・・・(3)
(式中、R
6及びR
7は、水素原子、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる。R
8は、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
【0068】
一般式(3)中、R
6は、水素原子、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる。
R
6として用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。R
6として用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。より好ましくは、R
6として分岐状脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を用いることが好ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、i−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが好ましい。
二つのR
6は、結合して一つ以上の環を形成してもよい。この際、環構造中に2個又は3個の不飽和結合を含むシクロポリエン系構造を取ることもできる。また、他の環式構造と縮合していてもよい。単環式、複環式、縮合の有無に関わらず、環上に炭化水素基を置換基として1つ以上有していてもよい。環上の置換基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。
【0069】
一般式(3)中、R
7は、水素原子、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる。具体的には、R
7は、R
6の例示から選ぶことができる。好ましくは水素である。
一般式(3)中、R
8は、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。具体的には、R
8は、R
6が炭化水素基である場合の例示から選ぶことができる。好ましくは、炭素数1〜6の炭化水素基であることが好ましく、更に好ましくはアルキル基であることが好ましい。最も好ましくはメチル基である。
R
6〜R
8がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが好ましい。また、R
6〜R
8が炭化水素基であるか、ヘテロ原子含有炭化水素基であるかに関わらず、任意にハロゲンを含んでいてもよい。R
6〜R
8がヘテロ原子及び/又はハロゲンを含む場合、その骨格構造は、炭化水素基である場合の例示から選ばれることが好ましい。また、R
6〜R
8は、お互いに同一であっても、異なっても良い。
【0070】
本発明で用いることのできる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)の好ましい例としては、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジクロロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジシクロペンチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロフルオレン、1,1−ビス(1’−ブトキシエチル)シクロペンタジエン、1,1−ビス(α−メトキシベンジル)インデン、1,1−ビス(フェノキシメチル)−3,6−ジシクロヘキシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)ベンゾナフテン、7,7−ビス(メトキシメチル)−2,5−ノボルナジネン、などを挙げる事が出来る。中でも、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンが特に好ましい。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
また、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)は、成分(A1’)中の必須成分である電子供与性化合物(A1d)として用いられる多価エーテル化合物と同一であっても異なってもよい。
【0071】
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)の使用量は、成分(A1’)を構成するチタン成分に対するモル比(少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜10,000の範囲内であり、より好ましくは0.5〜500の範囲内である。
【0072】
(6)α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)の製造方法
本発明(第1及び第2発明)におけるα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)は、まず前述の成分(A1’)に対して、エチレン性不飽和炭化水素を接触させて、予備重合処理生成物(A1)を得る。この際、本発明の効果を損なわない範囲で化合物(A2’)〜(A5’)等の他の任意成分を任意の方法で接触させてもよい。
【0073】
成分(A1’)と各任意成分(A2’)〜(A5’)の接触条件は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることができる。一般的には、不活性溶媒中で接触させる。好ましくは、酸素等の不存在下で接触させることが好ましく、さらに次の条件が好ましい。
接触温度は、−50〜200℃程度、好ましくは−10〜100℃、更に好ましくは0〜70℃、とりわけ好ましくは10℃〜60℃である。接触方法としては、不活性溶媒中で接触させさえすれば制限はなく、回転ボールミルや振動ミルなどによる機械的な方法、および撹拌により接触させる方法、などを例示することができる。好ましくは、不活性溶媒の存在下に撹拌により接触させる方法を用いることが好ましい。
【0074】
成分(A1’)、アルケニル基を有するシラン化合物(A2’)、アルコキシシラン化合物(A3’)、及び有機アルミニウム化合物(A4’)、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)の接触手順に関しては、任意の手順を用いることができる。具体的な例としては、下記の手順(i)〜手順(iv)、などが挙げられるが、この中でも、手順(i)及び手順(ii)が好ましい。
【0075】
手順(i):成分(A1’)にアルケニル基を有するシラン化合物(A2’)を接触させ、次いでアルコキシシラン化合物(A3’)を接触させ、次いで有機アルミニウム化合物(A4’)を接触させた後、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)を接触させる方法。
手順(ii):成分(A1’)にアルケニル基を有するシラン化合物(A2’)及びアルコキシシラン化合物(A3’)を接触させた後、有機アルミニウム化合物(A4’)及び少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)を接触させる方法。
手順(iii):成分(A1’)にアルコキシシラン化合物(A3’)を接触させ、次いでアルケニル基を有するシラン化合物(A2’)を接触させた後、有機アルミニウム化合物(A4’)及び少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)を接触させる方法。
手順(iv):全ての化合物を同時に接触させる方法。
上記は、任意成分A2’〜A5’を使用する態様を示すものであるが、各態様において、任意成分A2’〜A5’の一部又は全部を使用しない態様であってもよい。ただし、A3’を使用するときはA4’を、A4’を使用するときはA3’を使用することが好ましい。
【0076】
また、成分(A1’)に対して、アルケニル基を有するシラン化合物(A2’)、アルコキシシラン化合物(A3’)、有機アルミニウム化合物(A4’)及び少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)のいずれも、任意の回数接触させることもできる。この際、アルケニル基を有するシラン化合物(A2’)、アルコキシシラン化合物(A3’)、有機アルミニウム化合物(A4’)、及び少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)のいずれも複数回の接触で用いる化合物がお互いに同一であっても、異なっても良い。
また、先に各成分の使用量の好ましい範囲を示したが、これは1回当たりに接触させる使用量であり、複数回使用するときは、1回の使用量が前述した使用量の範囲内を目安として、何回接触させてもよい。
【0077】
(7)エチレン性不飽和炭化水素
本発明(第1及び第2発明)のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)の製造方法においては、成分(A1’)または成分(A1’)と任意成分(A2’)〜(A5’)の接触生成物をエチレン性不飽和炭化水素と接触させて、予備重合処理することを必須要件とする。
予備重合処理におけるエチレン性不飽和炭化水素としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。具体的な化合物の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、などに代表されるオレフィン類、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼン、クロロスチレン、などに代表されるスチレン類似化合物、及び、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジビニルベンゼン類、などに代表されるジエン化合物類、などを挙げることができる。中でも、エチレン、プロピレン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ジビニルベンゼン類、などが特に好ましい。
エチレン性不飽和炭化水素は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0078】
成分(A1’)または成分(A1’)と任意成分(A2’)〜(A5’)の接触生成物と上記のエチレン性不飽和炭化水素との反応条件は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることができる。一般的には、以下の範囲が好ましい。
成分(A1’)または成分(A1’)と任意成分(A2’)〜(A5’)の接触生成物1グラムあたりの基準で、予備重合量は0.001〜100gの範囲内であり、好ましくは0.1〜50g、より好ましくは0.5〜10gの範囲内である。
予備重合時の反応温度は、好ましくは−150〜150℃であり、より好ましくは0〜100℃である。そして、予備重合時の反応温度は、本重合のときの重合温度よりも低くすることが好ましい。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒を存在させることもできる。予備重合は、複数回行っても良く、この際用いるモノマーは、同一であっても、異なってもよい。
【0079】
本発明では、予備重合接触生成物(A1)を、不活性溶媒で洗浄を行ってもよい。洗浄を行う際には、不活性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン等を挙げることができる。
また、本発明では、予備重合接触生成物(A1)を、乾燥を行ってもよい。
【0080】
(8)アルケニル基を有するシラン化合物(A2)
アルケニル基を有するシラン化合物は、モノシラン(SiH
4)の水素原子の少なくとも一つがアルケニル基(好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基)に置き換えられた構造を示すものである。そして残りの水素原子はそのままか、水素原子のうちのいくつかが、ハロゲン(好ましくはCl)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基)、その他で置き換えられた構造を示すものである。
本発明に用いられるアルケニル基を有するシラン化合物(A2)としては、特開平3−234707号公報、特開2003−292522号公報、および特開2006−169283号公報に開示された化合物等を用いることができる。
【0081】
より具体的には、ビニルシラン、メチルビニルシラン、ジメチルビニルシラン、トリメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、クロロジメチルビニルシラン、クロロメチルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、クロロジエチルビニルシラン、ジクロロエチルビニルシラン、ジメチルエチルビニルシラン、ジエチルメチルビニルシラン、トリペンチルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、CH
2=CH−Si(CH
3)
2(C
6H
4CH
3)、(CH
2=CH)(CH
3)
2Si−O−Si(CH
3)
2(CH=CH
2)、ジビニルシラン、ジクロロジビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルトリビニルシラン、アリルメチルジビニルシラン、アリルジメチルビニルシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリブロモシラン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジエチルシラン、ジアリルジビニルシラン、ジアリルメチルビニルシラン、ジアリルメチルクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジブロモシラン、トリアリルメチルシラン、トリアリルエチルシラン、トリアリルビニルシラン、トリアリルクロロシラン、トリアリルブロモシラン、テトラアリルシラン、ジ−3−ブテニルジメチルシラン、ジ−3−ブテニルジエチルシラン、ジ−3−ブテニルジビニルシラン、ジ−3−ブテニルメチルビニルシラン、ジ−3−ブテニルメチルクロロシラン、ジ−3−ブテニルジクロロシラン、ジ−3−ブテニルジブロモシラン、トリ−3−ブテニルメチルシラン、トリ−3−ブテニルエチルシラン、トリ−3−ブテニルビニルシラン、トリ−3−ブテニルクロロシラン、トリ−3−ブテニルブロモシラン、テトラ−3−ブテニルシラン、などを例示することができる。
これらの中でもビニルシラン化合物、ジビニルシラン化合物が好ましく、とりわけトリメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ジメチルジビニルシランが好ましい。
アルケニル基を有するシラン化合物(A2)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0082】
アルケニル基を有するシラン化合物(A2)の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
アルケニル基を有するシラン化合物(A2)の使用量は、成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(アルケニル基を有するシラン化合物(A2)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001〜1,000の範囲内であり、より好ましくは0.01〜100の範囲内である。
【0083】
本発明で用いられるアルケニル基を有するシラン化合物(A2)は、通常、α−オレフィンモノマーに較べて、立体障害が大きく、チーグラー触媒では、重合することができない。しかし、電子供与性の非常に強い有機シリル基が存在するために、炭素−炭素二重結合部の電荷密度は、非常に高くなっており、活性中心であるチタン原子への配位は、非常に速いと考えられる。したがって、アルケニル基を有するシラン化合物(A2)には、有機アルミニウム化合物によるチタン原子の過還元や不純物などによる活性点の失活を防ぐ効果があると考えられる。ただし、係る作用機構は本発明の技術的範囲を制限するものと解釈するものではない。
【0084】
(9)熟成時間
本発明においては、予備重合処理生成物(A1)を、アルケニルシラン(A2)と接触させてアルケニルシラン処理生成物とした後、一定時間待機させて熟成することが必須要件である。熟成により、アルケニルシラン処理生成物はα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)へと変換する。また一定の待機時間をおくとことで触媒活性と水素応答性がより向上するという効果が得られる。
【0085】
待機時のアルケニルシラン処理生成物の様態は、予備重合処理生成物(A1)およびアルケニルシラン(A2)を含んだ不活性溶媒スラリーであることが好ましい。この際、予備重合処理終了直後の混合物からエチレン性不飽和化合物のみを除いた予備重合処理生成物スラリーに対してアルケニルシラン(A2)を添加することがより好ましいが、それに限定されない。予備重合処理終了後に生成した予備重合処理生成物(A1)をろ過などの操作によって回収し、不活性溶媒で洗浄し、得られた予備重合処理生成物(A1)を乾燥した後に、再度不活性溶媒を加えて予備重合処理生成物スラリーとし、そこにアルケニルシラン成分(A2)を加えても良い。
待機時における予備重合処理生成物(A1)の濃度は任意に設定できるが、0.1g/L以上1000g/L以下であることが好ましく、1g/L以上100g/L以下であることがより好ましい。この際、待機時間経過中に予備重合処理生成物(A1)の濃度を変更することもできる。
【0086】
待機時間は、予備重合処理生成物(A1)とアルケニルシラン(A2)を接触させる時点を起点(待機時間=0)として、1日以上180日以内であり、好ましくは1日以上90日以内、より好ましくは3日以上90日以内である。短すぎると触媒性能が十分に引き出されず、長すぎると触媒劣化による性能の低下を引き起こすおそれがある。
【0087】
接触生成物の熟成は、触媒成分の分解等を回避するために、分子状酸素等被毒物質の不存在環境下で行うことが好ましく、それ以外の熟成環境条件は任意に設定できる。熟成時の接触生成物は、一日当たりの平均温度が、好ましくは−100〜100℃、より好ましくは0〜60℃の範囲に維持される。待機時間中は、触媒スラリーを撹拌しても、しなくても良く、それらを併用しても良い。撹拌する場合、触媒の沈降とその後の凝集を防ぐことが出来る。一方、撹拌しない場合は、撹拌による触媒粒子の崩壊、その結果としての重合反応器内での微粉の発生を防ぐことが出来る。遮光はしてもよく、しなくてもよい。
【0088】
2.α−オレフィン重合用触媒
本発明において、α−オレフィン重合用触媒としては、上記のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を用いることが必須であり、有機アルミニウム化合物(B)及び/又はアルコキシシラン化合物(C)を任意成分として接触させたものでもよい。
【0089】
(1)有機アルミニウム化合物(B)
本発明において用いることのできる有機アルミニウム化合物(B)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。好ましくは、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を調製する際の任意成分である有機アルミニウム化合物(A4’)における例示と同じ群から選択することができる。触媒成分として用いることのできる有機アルミニウム化合物(B)は、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を調製する際に用いることのできる有機アルミニウム化合物(A4’)と同一であっても、異なってもよい。
有機アルミニウム化合物(B)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0090】
有機アルミニウム化合物(B)の使用量は、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(有機アルミニウム化合物(B)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは1〜5,000の範囲内であり、より好ましくは10〜500の範囲内である。
【0091】
(2)アルコキシシラン化合物(C)
本発明において用いることのできるアルコキシシラン化合物(C)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。好ましくは、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を調製する際の任意成分であるアルコキシシラン化合物(A3’)における例示と同じ群から選択することができる。
また、ここで使用されるアルコキシシラン化合物(C)は、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を調製する際に用いることのできるアルコキシシラン化合物(A3’)と同一であっても異なってもよい。
【0092】
アルコキシシラン化合物(C)を用いる場合の使用量は、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(アルコキシシラン化合物(C)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜10,000の範囲内であり、より好ましくは0.5〜500の範囲内である。
【0093】
(3)触媒におけるその他の任意成分
本発明においては、触媒としてα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を用いることが必須であるが、有機アルミニウム化合物(B)及び/又はアルコキシシラン化合物(C)等の任意成分を用いることができ、本発明の効果を損なわない範囲で、下記に説明する少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)、その他の化合物(E)などの任意成分を用いることができる。
【0094】
(3−1)少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)
本発明の触媒において任意成分として用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)としては、特開平3−294302号公報および特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることができる。好ましくは、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)において用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5’)における例示と同じ群から選択することができる。この際、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)は、化合物(A5’)と同一であっても、異なってもよい。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)は、単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0095】
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)を用いる場合の使用量は、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜10,000の範囲内であり、より好ましくは0.5〜500の範囲内である。
【0096】
(3−2)その他の化合物(E)
本発明の触媒において任意成分として用いられるその他の化合物(E)としては、例えば、特開2004−124090号公報に開示された様に、分子内にC(=O)N結合を有する化合物(E)を用いることができる。これらの化合物(E)を用いることにより、CXSの様な非晶性成分の生成を抑制することができる。この場合、テトラメチルウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−エチル−2−ピロリジノン、などを好ましい例として挙げることができる。また、ジエチル亜鉛の様なAl以外の金属原子を持つ有機金属化合物を用いることもできる。
分子内にC(=O)N結合を有する化合物(E)を用いる場合の使用量は、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(分子内にC(=O)N結合を有する化合物(E)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001〜1,000の範囲内であり、より好ましくは0.05〜500の範囲内である。
【0097】
本発明のα−オレフィン重合用触媒の態様の一つとして、上記のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)、及びアルコキシシラン化合物(C)を構成成分とする重合用触媒が挙げられる。
【0098】
3.α−オレフィンの重合
本発明のα−オレフィン重合用触媒を使用するα−オレフィンの重合は、炭化水素溶媒を用いるスラリー重合、実質的に溶媒を用いない液相無溶媒重合または気相重合などに適用される。スラリー重合の場合の重合溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素溶媒が用いられる。
特に、本発明のα−オレフィン重合用触媒を使用するα−オレフィンの重合は、内部に水平軸周りに回転する攪拌機を有する横型反応器を用いて気相重合することが好ましい。
採用される重合方法は、連続式重合、回分式重合又は多段式重合などいかなる方法でもよい。重合温度は、通常30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃である。分子量調節剤として水素を用いることができる。
【0099】
(1)α−オレフィンモノマー原料
本発明のα−オレフィン重合用触媒を用いて重合するα−オレフィンは、下記一般式(4)で表されるものである。
R−CH=CH
2 ・・・(4)
(一般式(4)中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基であり、分枝を有してもよい。)
【0100】
具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、などのα−オレフィン類である。これらのα−オレフィンの単独重合のほかに、α−オレフィンと共重合可能なモノマー(例えば、エチレン、α−オレフィン、ジエン類、スチレン類など)との(ランダム)共重合も行うことができる。また、1段目にα−オレフィンを単独重合した後に、α−オレフィンと、α−オレフィンと共重合可能なモノマーとを2段目にランダム共重合を行うブロック共重合も実施可能である。α−オレフィンと共重合可能なモノマーは、ランダム共重合において、ランダム共重合中の含有量として15重量%以下、ブロック共重合において、ブロック共重合中の含有量として50重量%以下であることが好ましい。
中でも、α−オレフィンの単独重合およびブロック共重合が好ましく、特にプロピレンの単独重合および1段目がプロピレンの単独重合であるブロック共重合が最も好ましい。
【0101】
(2)α−オレフィン重合体
本発明により重合されるα−オレフィン重合体のインデックスについては、特に制限はなく、各種用途に合わせて、適宜調節することができる。
一般的には、α−オレフィン重合体のMFRは、好ましくは0.01〜10,000g/10分の範囲内であり、より好ましくは0.1〜1,000g/10分の範囲内である。
また、α−オレフィン重合体の非晶性成分である冷キシレン可溶分(CXS)の量は、用途によって好ましい範囲が異なるのが一般的である。射出成形用途などの高い剛性が好まれる用途に対しては、CXSの量は好ましくは0.01〜3.0重量%の範囲内であり、より好ましくは0.05〜1.5重量%の範囲内、さらに好ましくは0.1〜1.0重量%の範囲内である。
ここで、MFR、CXSの値は、下記実施例の中で定められた手法により測定する値である。
【0102】
また、本発明により得られるα−オレフィン重合体のポリマー粒子は、優れた粒子性状を示す。一般的に、ポリマー粒子の粒子性状は、ポリマー嵩密度、粒径分布、粒子外観、などにより評価される。
本発明により得られるポリマー粒子のポリマー嵩密度(パウダー嵩密度)は、好ましくは0.40〜0.55g/mlの範囲内、より好ましくは0.42〜0.52g/mlである。
ここで、ポリマー嵩密度は、下記実施例の中で定められた手法により、測定する値である。
【0103】
本発明により重合されるα−オレフィン重合体は、収率、MFR、およびポリマー密度が高く製造され、さらに粒子性状も良好であり、プラントでの生産性向上および安定生産に好適に用いることができる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明における各物性値の測定方法を以下に示す。
【0105】
4.実施例
(1)〔各種物性の測定〕
(1−1)MFR:
タカラ社製メルトインデクサーを用い、JIS K6921に基づき、230℃、21.18N(2.16kg)の条件で評価した。
(1−2)ポリマー嵩密度:
パウダー試料の嵩密度をASTM D1895−69に準ずる装置を使用し測定した。
(1−3)CXS:
試料(約5g)を140℃のp−キシレン(300ml)中に一度完全に溶解させた。その後23℃まで冷却し、23℃で12時間ポリマーを析出させた。析出したポリマーを濾別した後、濾液からp−キシレンを蒸発させた。p−キシレンを蒸発させた後に残ったポリマーを100℃で2時間減圧乾燥した。乾燥後のポリマーを秤量し、試料に対する重量%としてCXSの値を得た。
(1−4)密度:
MFR測定時に得られた押出ストランドを用い、JIS K7112 D法に準拠して密度勾配管法で測定を行った。
(1−5)Ti含量:
試料を精確に秤量し、加水分解した上で比色法を用いて測定した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を計算した。
(1−6)ケイ素化合物含量:
試料を精確に秤量し、メタノールで分解した。ガスクロマトグラフィーを用いて標準サンプルと比較することにより、得られたメタノール溶液中のケイ素化合物濃度を求めた。メタノール中のケイ素化合物濃度と試料の重量から、試料に含まれるケイ素化合物の含量を計算した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を計算した。
【0106】
(2)〔試料の調製〕
[実施例1]
(2−1)成分(A1’)の調製
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、Mg(OEt)
2を200g、TiCl
4を1L添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ−n−ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiCl
4を1L添加し、温度を110℃に上げて2時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiCl
4を1L添加し、温度を110℃に上げて2時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、成分(A1’)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、成分(A1’)のTi含量は2.7wt%であった。
【0107】
(2−2)オレフィン重合用固体触媒成分(A)の調製
次に精製したn−ヘプタンを導入して、成分(A1’)4gの濃度が20g/Lとなる様に液レベルを調整し、成分(A3’)として(i−Pr)
2Si(OMe)
2を0.14mL、成分(A4’)としてEt
3Alのn−ヘプタン希釈液をEt
3Alとして1.7g添加した。その後30℃で2時間反応を行うことで、接触生成物を含むスラリーを得た。
【0108】
上記で得られた接触生成物を含むスラリーを用いて、以下の手順により予備重合を行った。スラリーを10℃に冷却した後、8gのプロピレンを15分かけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に10分反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換した。得られた予備重合処理生成物(A1)は、固体成分1g当たり2.24gのポリプロピレンを含んでいた。
【0109】
上記で得られた予備重合処理生成物(A1)を含むスラリーに対して、成分(A2)としてジメチルジビニルシランを1.0mL添加し、室温・窒素雰囲気下で1日間、撹拌させない状態で待機させることで、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を含むスラリーを得た。得られたスラリーは濾過・乾燥等の処理を経ず、次のプロピレン重合に供された。
【0110】
(2−3)プロピレンの重合
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0Lのステンレス鋼製オートクレーブを真空下で加熱乾燥し、室温まで冷却してプロピレン置換した後、成分(B)としてEt
3Alを550mg、成分(C)として(i−Pr)
2Si(OMe)
2を85.1mg、及び水素を12,000ml導入し、次いで、液体プロピレンを750g導入して、内部温度を70℃に合わせた後に、上記のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を5mg圧入して、プロピレンを重合させた。1時間後にエタノールを10ml圧入して重合を停止した。ポリマーを乾燥して秤量した。結果を表1に示す。
【0111】
[実施例2]
実施例1の待機時間を3日とした以外は、全く同様に行った。結果を表1に示す。
【0112】
[実施例3]
実施例1の待機時間を9日とした以外は、全く同様に行った。結果を表1に示す。
【0113】
[実施例4]
実施例1の待機時間を72日とした以外は、全く同様に行った。結果を表1に示す。
【0114】
[比較例1]
実施例1の待機時間を0日した以外は、全く同様に行った。結果を表1に示す。
【0115】
[比較例2]
予備重合処理生成物の調製後、(A2)成分を添加しなかった点以外は、実施例1と全く同様に行った。結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
(3)[各実施例と各比較例の評価結果の考察]
表1から明らかなように、実施例1〜4及び比較例1〜2を対比検討することにより、本発明の触媒の触媒活性が全般にわたり比較例に対して優れるものであることがわかる。
具体的には、実施例1〜4と比較例1から、適切な待機時間を設定することにより、触媒の触媒活性および水素応答性が大幅に向上していることが分かる。
従って、本発明の各実施例の触媒は、立体規則性などの基本性能を高レベルにて維持したまま、極めて高い触媒活性および水素応答性を有する触媒であり、各比較例に比して、優れた結果が得られているといえる。