特許第6809383号(P6809383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809383
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】シート搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/02 20060101AFI20201221BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B65H7/02
   G03G15/00 480
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-109753(P2017-109753)
(22)【出願日】2017年6月2日
(65)【公開番号】特開2018-203440(P2018-203440A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2019年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕一
【審査官】 五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−169767(JP,A)
【文献】 実開平05−064900(JP,U)
【文献】 特開2014−043296(JP,A)
【文献】 特開2009−249046(JP,A)
【文献】 特開平11−053602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/00
B65H 9/00
G03G 15/00
G07D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが搬送される搬送経路と、
前記搬送経路におけるシートの搬送音を検出して前記搬送音の音レベルに応じたアナログ信号を出力する搬送音検出部と、
前記アナログ信号の信号レベルと一又は複数の閾値との大小関係に基づいてHレベル又はLレベルが定まるパルス信号を生成することで、前記アナログ信号をパルス信号に変換する信号変換部と、
前記パルス信号におけるパルス幅、パルス周期、パルス間隔の少なくとも1つの値に基づいて異常状態であるか否かを判定する判定処理部と、
前記搬送経路に沿ってシートを搬送する搬送ローラーと、
前記搬送ローラーの回転に応じた信号を出力する回転検出部と、
前記判定処理部により異常状態であると判定された場合に前記回転検出部からの出力信号を監視する監視処理部と、
を備えるシート搬送装置。
【請求項2】
前記判定処理部は、前記パルス信号におけるパルス幅、パルス周期、パルス間隔の少なくとも1つの値と、予め定められた対応する基準値との比較結果に基づいて、異常状態であるか否かを判定する、
請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
予め定められた更新タイミングにおいて前記パルス信号におけるパルス幅、パルス周期、及びパルス間隔の少なくとも1つの値を検出し、当該検出値に応じて対応する前記基準値を更新する更新処理部を更に備える、
請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記信号変換部は、第1閾値と前記第1閾値よりも大きい第2閾値とに基づいて前記アナログ信号を前記パルス信号に変換するシュミット回路を含み、
前記第1閾値及び前記第2閾値は、前記複数の閾値に含まれる、
請求項1〜3のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記第1閾値及び前記第2閾値の少なくとも一方をシートの種類に応じて変更する変更処理部を更に備える、
請求項4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記搬送経路に沿って複数の前記搬送ローラー及び複数の前記搬送音検出部が設けられており、
前記監視処理部は、前記複数の搬送音検出部のうちの特定の搬送音検出部からの出力信号に基づいて前記判定処理部により異常状態であると判定された場合に、前記複数の搬送ローラーのうち、前記特定の搬送音検出部に最も近い搬送ローラーに対応する前記回転検出部からの出力信号を監視する、
請求項1〜5のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記判定処理部により異常状態であると判定された場合に、シートの搬送モードをジャムの発生が抑制される特別搬送モードへと切り替える切替処理部を更に備える、
請求項6に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のシート搬送装置と、
前記シート搬送装置により搬送されるシートに画像を形成する画像形成部と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送経路におけるシートの搬送音を検出し、検出された搬送音に基づいて、搬送経路で発生したジャムの種類を特定することが可能な画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−43340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記画像形成装置では、検出された搬送音のフーリエ変換結果における特定の周波数成分の値が所定の閾値以上であるか否かに基づいて、正常状態であるかジャム状態であるかが判別される。すなわち、前記画像形成装置では、搬送音の音レベルに基づいてジャム状態であるか否かが判定される。しかしながら、搬送音の音レベルはシートの種類(例えば、薄紙、厚紙など)に応じて変化するため、シートの種類によっては誤判定が生じるおそれがある。また、前記画像形成装置では、搬送音のフーリエ変換結果に基づいてジャム状態であるか否かが判定されるので、フーリエ変換のための処理負荷がかかってしまう。
【0005】
本発明の目的は、異常状態であるか否かを正確に且つ簡単に判定することが可能なシート搬送装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の局面に係るシート搬送装置は、搬送経路と、搬送音検出部と、信号変換部と、判定処理部とを備える。前記搬送経路では、シートが搬送される。前記搬送音検出部は、前記搬送経路におけるシートの搬送音を検出して前記搬送音の音レベルに応じたアナログ信号を出力する。前記信号変換部は、前記アナログ信号をパルス信号に変換する。前記判定処理部は、前記パルス信号におけるパルス幅、パルス周期、パルス間隔の少なくとも1つの値に基づいて異常状態であるか否かを判定する。
【0007】
本発明の一の局面に係る画像形成装置は、前記シート搬送装置と、画像形成部とを備える。前記画像形成部は、前記シート搬送装置により搬送されるシートに画像を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、異常状態であるか否かを正確に且つ簡単に判定することが可能なシート搬送装置及び画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る画像形成装置のシステム構成を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る画像形成装置で用いられるアナログ信号及びパルス信号の一例を示す図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る画像形成装置で実行される異常検出処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0011】
[画像形成装置10の概略構成]
まず、図1及び図2を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10の概略構成について説明する。
【0012】
画像形成装置10は、画像読取部1、ADF2、画像形成部3、シート搬送部4、制御部5、操作表示部6、及び集音マイク7などを備えた画像形成装置である。なお、画像形成装置10は、本発明に係る画像形成装置の一例に過ぎない。例えばプリンター、ファクシミリー装置、及びコピー機なども本発明に係る画像形成装置に該当する。また、シート搬送部4、制御部5、及び集音マイク7などを備えた装置を本発明に係るシート搬送装置として捉えてもよい。
【0013】
画像読取部1は、コンタクトガラス、読取ユニット、ミラー、光学レンズ、及びCCD(Charge Coupled Device)などを備える。画像読取部1は、制御部5によって制御されることにより、前記コンタクトガラス上に載置された原稿Pから画像データを読み取る。具体的に、前記CCDは、前記読取ユニットから光が照射されたときに、前記コンタクトガラス上に載置されている原稿Pから反射した光に基づいて前記原稿Pの画像データを読み取る。前記CCDで読み取られた画像データは制御部5に入力される。
【0014】
ADF2は、原稿セット部、複数の搬送ローラー、原稿押さえ、及び排紙部などを備えた自動原稿送り装置である。ADF2は、前記搬送ローラー各々を不図示のモーターで駆動させることにより、前記原稿セット部にセットされた原稿Pを前記コンタクトガラス上の読取位置を通過させて前記排紙部まで搬送させる。この際に、画像読取部1により前記読取位置を通過する原稿Pから画像データが読み取られる。
【0015】
画像形成部3は、画像読取部1で読み取られた画像データ、又は外部のパーソナルコンピューター等の情報処理装置から入力された画像データ(印刷データ)に基づいて画像形成処理(印刷処理)を実行する電子写真方式の画像形成部である。
【0016】
具体的に、画像形成部3は、感光体ドラム31、帯電装置32、LSU(レーザスキャナユニット)33、現像装置34、転写ローラー35、除電装置36、定着ローラー37、及び加圧ローラー38などを備えている。そして、画像形成部3では、シート搬送部4により供給されたシートに画像が形成され、画像形成後のシートはシート搬送部4により後述の排紙トレイ45に排紙される。なお、前記シートは、紙、OHPフィルムなどの各種の記録媒体である。
【0017】
シート搬送部4は、搬送経路40、給紙カセット41、42、手差しトレイ43、複数の搬送ローラー44、排紙トレイ45、及びシート検出部46などを備えている。シート搬送部4は、制御部5によって制御されることにより、給紙カセット41、42に収容されたシート、又は手差しトレイ43に載置されたシートを、画像形成部3を通過させて排紙トレイ45に搬送する。
【0018】
搬送経路40は、給紙カセット41、42又は手差しトレイ43から画像形成部3を経て排紙トレイ45に続いており、搬送経路40では、搬送ローラー44各々によってシートが搬送される。なお、感光体ドラム31と転写ローラー35との間のニップ部、及び定着ローラー37と加圧ローラー38との間のニップ部も搬送経路40の一部を構成している。
【0019】
搬送ローラー44は、制御部5によって駆動が制御される駆動モーターにギアなどの駆動伝達部を介して連結されている。そして、搬送ローラー44は、シートを挟持した状態で前記駆動モーターの回転に伴って回転駆動することにより搬送経路40上においてシートを搬送する。
【0020】
シート検出部46は、搬送経路40上の予め定められた一又は複数の位置に設けられ、その位置におけるシートの有無を検出する。例えば、シート検出部46は反射式又は透過式の光学式センサー等である。そして、シート検出部46による検出結果は制御部5に入力される。これにより、制御部5では、搬送経路40におけるシートの位置を検出することが可能である。
【0021】
制御部5は、CPU、ROM、RAM、及びEEPROMなどの制御機器を有している。そして、制御部5は、前記ROMに記憶された所定の制御プログラムを前記CPUで実行することにより、画像形成装置10を統括的に制御する。前記ROMには、前記CPU等のコンピューターに各種の処理を実行させるための制御プログラムが予め記憶されている。前記RAMは揮発性の記憶手段であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶手段として利用される。前記EEPROMは不揮発性の記憶手段であり、画像形成装置10における設定情報、印刷データ、動作履歴などの各種の情報を記憶するために利用される。なお、制御部5は、集積回路(ASIC、DSP)などの電子回路で構成されてもよい。また、画像形成装置10が、前記EEPROMに代えて、或いは前記EEPROMと共にハードディスク又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部を備えていてもよい。
【0022】
操作表示部6は、制御部5からの制御指示に従って各種の情報を表示し、ユーザー操作を受け付けて制御部5に対して各種の情報を入力するタッチパネルなどである。例えば、操作表示部6は、制御部5からの制御指示に従って画像形成装置10における初期設定又は印刷設定などの設定画面を表示し、前記設定画面に対するユーザー操作に応じた操作信号を制御部5に入力する。
【0023】
集音マイク7は、搬送経路40の近傍に配置され、搬送経路40におけるシートの搬送音を検出する。集音マイク7からは、検出される搬送音の音レベルに応じたアナログ信号Saが出力される。集音マイク7は、本発明の搬送音検出部の一例である。本実施形態では、図1に示されるように、搬送経路40に沿って5つの集音マイク7が設置されている。集音マイク7各々から出力される前記アナログ信号は、信号変換部8に入力される。なお、図1に示す集音マイク7の設置箇所は一例に過ぎず、搬送経路40上におけるシートの搬送音を検出することができれば他の位置であってよい。また、画像形成装置10に設けられる集音マイク7の個数は5つに限らない。例えば、画像形成装置10に設けられる集音マイク7の個数が1つだけであってもよい。
【0024】
ところで、搬送経路40におけるシートの搬送音を検出し、検出された搬送音に基づいて、搬送経路40で発生したジャムの種類を特定することが可能な画像形成装置が知られている。当該画像形成装置では、検出された搬送音のフーリエ変換結果における特定の周波数成分の値が所定の閾値以上であるか否かに基づいて、正常状態であるかジャム状態であるかが判別される。すなわち、前記画像形成装置では、搬送音の音レベルに基づいてジャム状態であるか否かが判定される。しかしながら、搬送音の音レベルはシートの種類(例えば、薄紙、厚紙など)に応じて変化するため、シートの種類によっては誤判定が生じるおそれがある。また、前記画像形成装置では、搬送音のフーリエ変換結果に基づいてジャム状態であるか否かが判定されるので、フーリエ変換のための処理負荷がかかってしまう。これに対して、本実施形態に係る画像形成装置10では、以下に説明するように、異常状態であるか否かを正確に且つ簡単に判定することが可能である。
【0025】
信号変換部8は、集音マイク7各々から出力されるアナログ信号Saをパルス信号Spに変換する。図3は、集音マイク7から出力されるアナログ信号Saの一例と、前記アナログ信号Saに対応するパルス信号Spの一例とを示している。
【0026】
集音マイク7から出力されるアナログ信号Saの信号レベル(すなわち、集音マイク7により検出される搬送音の音レベル)は、集音マイク7の近くをシートが通過している間は、シートが搬送経路40に擦れる音等によって相対的に大きくなる。一方、集音マイク7の近くをシートが通過していない間は、集音マイク7から出力されるアナログ信号Saの信号レベルは相対的に小さくなる。よって、複数のシートが搬送経路40に沿って順次に搬送される場合、集音マイク7から出力されるアナログ信号Saは、図3に示されるような周期的な信号となる。
【0027】
信号変換部8は、アナログ信号Saの信号レベルと一又は複数の閾値との大小関係に基づいて、アナログ信号Saをパルス信号Spに変換する。具体的に、信号変換部8は、シュミット回路8Aを含む。シュミット回路8Aは、第1閾値Th1と前記第1閾値Th1よりも大きい第2閾値Th2とに基づいてアナログ信号Saをパルス信号Spに変換する。具体的には、シュミット回路8Aは、入力されるアナログ信号Saの信号レベルが第2閾値Th2を上回ったことに応じて、予め定められたHレベルの信号の出力を開始する。また、シュミット回路8Aは、入力されるアナログ信号Saの信号レベルが第1閾値Th1を下回ったことに応じて、予め定められたLレベルの信号の出力を開始する。その結果、信号変換部8からは、図3に示されるようなパルス信号Paが出力される。シュミット回路8Aには、アナログ信号Saに含まれるノイズによるパルス信号Spへの影響を抑制する効果がある。信号変換部8から出力されるパルス信号Spは、制御部5に入力される。
【0028】
エンコーダー9は、搬送ローラー44の回転に応じた信号を出力する。エンコーダー9は、例えば、搬送ローラー44の軸の回転変位量に応じたパルス信号を出力する光学式のロータリーエンコーダーである。エンコーダー9は、本発明の回転検出部の一例である。本実施形態では、複数の搬送ローラー44の各々にエンコーダー9が取り付けられている。エンコーダー9の出力信号は、制御部5に入力される。
【0029】
制御部5は、判定処理部51、更新処理部52、変更処理部53、監視処理部54、及び切替処理部55を含む。なお、制御部5は、前記ROMに記憶されている前記制御プログラムに従って各種の処理を実行することによりこれらの各処理部として機能する。なお、他の実施形態では、制御部5は、これらの各処理部の一部又は複数の処理機能を実現する電子回路を備えるものであってもよい。
【0030】
判定処理部51は、信号変換部8から出力されるパルス信号Spに基づいて異常状態であるか否かを判定する。前記異常状態には、画像形成装置10内でシートが詰まるジャム状態、シート搬送部4により搬送されるシートにシワ等の異常が生じるシート異常状態、画像形成装置10内のモーター又はギアのような部品に異常が生じる部品異常状態などが含まれる。
【0031】
具体的に、判定処理部51は、パルス信号Spにおけるパルス幅P1、パルス周期P2、パルス間隔P3の少なくとも1つの値に基づいて異常状態であるか否かを判定する(図3参照)。パルス信号Spにおけるパルス幅P1、パルス周期P2及びパルス間隔P3は、搬送音の音レベルの影響をほとんど受けない。よって、搬送音の音レベルがシートの種類(例えば、薄紙、厚紙など)に応じて変化したとしても、判定処理部51による判定結果への影響は少ない。よって、判定処理部51は、異常状態であるか否かを正確に判定することが可能である。例えば、搬送経路40において各シートが一定速度で搬送されている間は、パルス信号Spにおけるパルス幅P1も一定であるが、搬送経路40において各シートの搬送速度にばらつきが生じると、パルス信号Spにおけるパルス幅P1にもばらつきが生じる。また、搬送経路40において各シートが一定周期で通過している間は、パルス信号Spにおけるパルス周期P2及びパルス間隔P3も一定であるが、搬送経路40において各シートの通過タイミングにばらつきが生じると、パルス信号Spにおけるパルス周期P2及びパルス間隔P3にもばらつきが生じる。よって、このような場合には、判定処理部51は、画像形成装置10のどこかに異常が生じていると判定することができる。これにより、判定処理部51は、ジャムの発生時に限らず、ジャムが発生する前でも異常状態を判定することができる。
【0032】
判定処理部51は、例えば、パルス信号Spにおけるパルス幅P1、パルス周期P2、パルス間隔P3の少なくとも1つの値と、予め定められた対応する基準値との比較結果に基づいて、異常状態であるか否かを判定してもよい。例えば、判定処理部51は、パルス信号Spにおけるパルス幅P1と予め定められた基準パルス幅との差分が予め定められた閾値を超える場合に、異常状態であると判定してもよい。もしくは、判定処理部51は、パルス信号Spにおけるパルス周期P2と予め定められた基準パルス周期との差分が予め定められた閾値を超える場合に、異常状態であると判定してもよい。もしくは、判定処理部51は、パルス信号Spにおけるパルス間隔P3と予め定められた基準パルス間隔との差分が予め定められた閾値を超える場合に、異常状態であると判定してもよい。なお、前記基準値は、シートの種類及び搬送条件に応じて変更されてもよい。例えば、搬送方向に沿ったシートの幅が大きいほど、また、搬送速度が遅いほど、パルス信号Spにおけるパルス幅P1は小さくなる。よって、判定処理部51は、搬送方向に沿ったシートの幅が大きいほど、また、搬送速度が遅いほど、より小さい基準パルス幅を用いてもよい。同様に、単位時間当たりのシートの搬送枚数が多いほど、パルス信号Spにおけるパルス周期P2は小さくなる。よって、判定処理部51は、単位時間当たりのシートの搬送枚数が多いほど、より小さい基準パルス周期を用いてもよい。
【0033】
なお、前記基準パルス幅、前記基準パルス周期、及び前記基準パルス間隔などの基準値は、前記EEPROMに予め記憶される。前記基準値は、例えば、画像形成装置10の出荷前に画像形成装置10に画像形成処理を実行させたときに信号変換部8から出力されるパルス信号Spに基づいて設定されて、前記EEPROMに記憶されてもよい。これにより、画像形成装置10の個体差に関わらず、画像形成装置10ごとに適切な基準値を用いることが可能となる。
【0034】
更新処理部52は、予め定められた更新タイミングにおいてパルス信号Spにおけるパルス幅P1、パルス周期P2、及びパルス間隔P3の少なくとも1つの値を検出し、当該検出値に応じて対応する前記基準値を更新する。前記更新タイミングとしては、例えば、画像形成装置10の電源が最初にオンされた時、画像形成装置10の電源がオンされた時、画像形成装置10の電源が最初にオンされてから所定時間が経過した時点(例えば、1年ごと)、画像形成装置10において画像形成処理が行われたシートの枚数が所定枚数に達した時点(例えば、1万枚ごと)などが考えられる。更新処理部52により基準値を更新することによって、正常状態において検出される搬送音が画像形成装置10の経年劣化に応じて変化していたとしても、それに合わせて基準値を適切な値へと更新することができる。
【0035】
変更処理部53は、信号変換部8のシュミット回路8Aで用いられる第1閾値Th1及び第2閾値Th2の少なくとも一方を、シートの種類に応じて変更する。集音マイク7によって検出される搬送音の音レベルは、搬送経路40に沿って搬送されるシートの種類(例えば、薄紙、厚紙など)に応じて変化する。具体的には、搬送経路40に沿って搬送されるシートが厚紙である場合には、薄紙である場合よりも搬送音の音レベルが高くなる傾向がある。そこで、変更処理部53は、例えば、搬送されるシートが厚紙である場合には、薄紙である場合よりも、第1閾値Th1及び第2閾値Th2を高くする。これにより、判定処理部51は、シートの種類に関わらず、異常状態であるか否かをより正確に判定することが可能である。変更処理部53は、例えば、シートの種類と、第1閾値Th1及び第2閾値Th2との対応関係を示すテーブルを参照して、シートの種類に応じて第1閾値Th1及び第2閾値Th2を変更してもよい。
【0036】
監視処理部54は、判定処理部51により異常状態であると判定された場合に、エンコーダー9からの出力信号を監視する。例えば、監視処理部54は、エンコーダー9各々からの出力信号を取得して、当該出力信号に基づいて、対応する搬送ローラー44が正常に回転しているか否かを判定してもよい。もしくは、監視処理部54は、エンコーダー9からの出力信号を、ログ情報として前記EEPROM、前記ハードディスク、前記SSDなどの不揮発の記憶部に記録してもよい。前記ログ情報は、画像形成装置10の修理時において、異常部品を特定するための判断材料として用いられてもよい。このように、エンコーダー9からの出力信号の監視は、判定処理部51により異常状態であると判定された場合にのみ行われるので、正常状態においては監視のための処理負担がかからない。なお、前記ログ情報には、異常部品を特定するための判断材料として、パルス信号Spにおけるパルス幅P1、パルス周期P2、パルス間隔P3の少なくとも1つの値が含まれてもよい。もしくは、前記ログ情報には、異常部品を特定するための判断材料として、パルス信号Spが含まれてもよい。
【0037】
なお、監視処理部54は、複数の集音マイク7のうちの特定の集音マイク7からの出力信号に基づいて判定処理部51により異常状態であると判定された場合に、複数の搬送ローラー44のうち、前記特定の集音マイク7に最も近い搬送ローラー44に対応するエンコーダー9からの出力信号を監視してもよい。これにより、全てのエンコーダー9からの出力信号を監視する場合と比べて、監視のための処理負担を軽減することができる。
【0038】
切替処理部55は、判定処理部51により異常状態であると判定された場合に、シートの搬送モードをジャムの発生が抑制される特別搬送モードへと切り替える。前記特別搬送モードでは、例えば、搬送経路40におけるシート間隔が、通常時よりも広くなってもよい。また、前記特別搬送モードでは、例えば、搬送経路40におけるシートの搬送速度が、通常時よりも遅くなってもよい。このように、判定処理部51により異常状態であると判定された場合に、シートの搬送条件をジャムの発生が抑制されるような搬送条件へと変更することによって、ジャムの発生を未然に防止することができる。これにより、ユーザーは、判定処理部51により異常状態であると判定されてから修理が行われるまでの間、前記特別搬送モードで画像形成装置10を使用し続けることができる。
【0039】
[異常検出処理]
以下、図4を参照しつつ、制御部5によって実行される前記異常検出処理の手順の一例について説明する。ここに、ステップS1、S2、・・・は、制御部5により実行される処理手順(ステップ)の識別番号を表している。前記異常検出処理は、例えば、操作表示部6を通じてプリント処理又はコピー処理などの画像形成処理のジョブ要求が入力されたことに応じて開始される。なお、前記異常検出処理と並行して、シート搬送部4により供給されるシートに画像形成部3により画像が形成される画像形成処理が実行される。
【0040】
<ステップS1>
まず、ステップS1において、制御部5は、前記ジョブ要求に応じた画像形成処理を開始させる。画像形成処理が開始されると、シート搬送部4によって搬送経路40に沿ってシートが順次に搬送される。そして、搬送経路40の近傍に設けられた集音マイク7によって搬送音が検出される。集音マイク7からは、搬送音の音レベルに応じたアナログ信号Saが出力され、当該アナログ信号Saは、信号変換部8のシュミット回路8Aによってパルス信号Spに変換される。なお、シュミット回路8Aで用いられる第1閾値Th1及び第2閾値Th2は、前記画像形成処理で用いられるシートの種類に応じて随時に変更されてもよい。
【0041】
<ステップS2>
ステップS2において、制御部5は、信号変換部8からパルス信号Spを取得する。
【0042】
<ステップS3>
ステップS3において、制御部5(判定処理部51)は、前記ステップS2で取得されたパルス信号Spが異常であるか否かを判断する。例えば、制御部5は、パルス信号Spにおけるパルス幅P1と前記EEPROMに記憶されている基準パルス幅との差分が予め定められた閾値を超えている場合に、パルス信号Spが異常であると判断してもよい。もしくは、制御部5は、パルス信号Spにおけるパルス周期P2と前記EEPROMに記憶されている基準パルス周期との差分が予め定められた閾値を超えている場合に、パルス信号Spが異常であると判断してもよい。もしくは、制御部5は、パルス信号Spにおけるパルス間隔P3と前記EEPROMに記憶されている基準パルス間隔との差分が予め定められた閾値を超えている場合に、パルス信号Spが異常であると判断してもよい。そして、パルス信号Spが異常であると判断されると(S3:Yes)、処理がステップS4に移行する。一方、パルス信号Spが異常ではないと判断されると(S3:No)、処理がステップS8に移行する。
【0043】
<ステップS4>
ステップS4において、制御部5は、画像形成装置10が異常状態である旨を示すエラーメッセージを操作表示部6に表示させる。前記エラーメッセージには、例えば、画像形成装置10の故障が疑われるので製造業者に連絡するように促すメッセージが含まれていてもよい。
【0044】
<ステップS5>
ステップS5において、制御部5は、画像形成装置10に設けられている複数の搬送ローラー44のうち、監視すべき搬送ローラー44(すなわち、故障していることが疑われる搬送ローラー44)を選択する。具体的には、制御部5は、前記ステップS3において複数の集音マイク7のうちの特定の集音マイク7からの出力信号が異常であると判断された場合に、複数の搬送ローラー44のうち、前記特定の集音マイク7に最も近い搬送ローラー44を、監視すべき搬送ローラー44として選択する。
【0045】
<ステップS6>
ステップS6において、制御部5(監視処理部54)は、前記ステップS5で選択された搬送ローラー44に対応するエンコーダー9からの出力信号の監視を開始する。例えば、制御部5は、前記エンコーダー9からの出力信号を、ログ情報として前記EEPROM、前記ハードディスク、前記SSDなどの不揮発の記憶部に記録することを開始する。
【0046】
<ステップS7>
ステップS7において、制御部5(切替処理部55)は、シートの搬送モードを、ジャムの発生が抑制される前記特別搬送モードへと切り替える。前記特別搬送モードでは、例えば、搬送経路40におけるシートの搬送速度が、通常時よりも遅い搬送速度に切り替えられる。そして、処理がステップS8に移行する。
【0047】
<ステップS8>
ステップS8において、制御部5は、シート検出部46による検出結果に基づいて、ジャムが発生したか否かを判断する。そして、ジャムが発生したと判断されると(S8:Yes)、処理がステップS9に移行する。一方、ジャムが発生していないと判断されると(S8:No)、処理がステップS11に移行する。
【0048】
<ステップS9>
ステップS9において、制御部5は、画像形成処理を中断する。
【0049】
<ステップS10>
ステップS10において、制御部5は、ジャムが発生した旨を示すエラーメッセージを操作表示部6に表示させる。前記エラーメッセージには、画像形成装置10内に詰まったシートを取り除くように促すメッセージが含まれていてもよい。そして、前記異常検出処理は終了する。
【0050】
<ステップS11>
一方、ステップS11において、制御部5は、前記ジョブ要求に応じた画像形成処理が終了したか否かを判断する。そして、前記画像形成処理が終了したと判断されると(S11:Yes)、前記異常検出処理は終了する。一方、前記画像形成処理が終了していないと判断されると(S11:No)、処理が前記ステップS3に戻る。
【0051】
以上説明したように、本実施形態では、搬送音の音レベルに応じたアナログ信号Saが、信号変換部8においてパルス信号Spに変換される。そして、前記パルス信号Spにおけるパルス幅、パルス周期、パルス間隔の少なくとも1つの値に基づいて異常状態であるか否かが判定される。よって、本実施形態によれば、シートの種類に関わらず、異常状態であるか否かを正確に判定することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 画像読取部
2 ADF
3 画像形成部
4 シート搬送部
5 制御部
6 操作表示部
7 集音マイク
8 信号変換部
8A シュミット回路
9 エンコーダー
10 画像形成装置
40 搬送経路
44 搬送ローラー
51 判定処理部
52 更新処理部
53 変更処理部
54 監視処理部
55 切替処理部
図1
図2
図3
図4