(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体が流れる配管を接続する配管接続部と、前記配管接続部の端面に開口された流路孔と、前記配管接続部の端面に立設したスタッドボルトと、を備えた圧縮機に用いられ、
前記流路孔に挿入されて前記流路孔を塞ぐキャップ体と、
前記スタッドボルトを挿通可能とする筒状のボルト挿通体と、
把持可能とする把持体と、
前記キャップ体、前記ボルト挿通体および前記把持体を一体的に連結する板状の本体と、を備え、
前記ボルト挿通体および前記把持体は前記本体の表面から突出されるとともに、前記キャップ体は前記本体の裏面から突出され、
弾性変形可能な材料により形成されるシールキャップであって、
前記把持体は環状に形成される環状部を備え、前記キャップ体を挟んで前記ボルト挿通体の反対側に配置され、
前記環状部は、前記キャップ体の挿入方向と交差する方向に貫通するとともに前記キャップ体と前記ボルト挿通体とが並ぶ方向と交差する方向に貫通し、
前記環状部の一部は、前記キャップ体が位置している前記本体の表面まで延在していることを特徴とするシールキャップ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたシールキャップは、連結部の長手方向において、把持部が連結部から突出するように設けられている。このため、例えば、車載用の圧縮機にこのシールキャップを装着すると、把持部がエンジンルーム内の他部材と干渉して他部材の邪魔になるおそれがある。把持部が他部材と干渉する場合、シールキャップの引き抜き時において作業者の指が把持部に入り難くなるという問題がある。また、シールキャップに対しては、指への負担が軽減されるように、シールキャップを引く抜く力をより低減することが要請されている。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、他部材と干渉することがなく、圧縮機からの引き抜きが容易な作業性に優れたシールキャップの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、流体が流れる配管を接続する配管接続部と、前記配管接続部の端面に開口された流路孔と、前記配管接続部の端面に立設したスタッドボルトと、を備えた圧縮機に用いられ、前記流路孔に挿入されて前記流路孔を塞ぐキャップ体と、前記スタッドボルトを挿通可能とする筒状のボルト挿通体と、把持可能とする把持体と、前記キャップ体、前記ボルト挿通体および前記把持体を一体的に連結する板状の本体と、を備え、前記ボルト挿通体は前記本体の表面から突出されるとともに、前記キャップ体は前記本体の裏面から突出され、弾性変形可能な材料により形成されるシールキャップであって、前記把持体は環状に形成される環状部を備え、前記キャップ体を挟んで前記ボルト挿通体の反対側に配置され、前記環状部は、前記キャップ体の挿入方向と交差する
方向に貫通するとともに前記キャップ体と前記ボルト挿通体とが並ぶ方向と交差する方向に貫通
し、前記環状部の一部は、前記キャップ体が位置している前記本体の表面まで延在していることを特徴とする。
【0007】
本発明では、把持体は環状に形成される環状部を備え、キャップ体を挟んでボルト挿通体の反対側に配置され、環状部はキャップ体の挿入方向と交差する方向に貫通している。このため、把持体は本体から配管接続部の端面に沿う方向に突出せず、他部材と干渉することはない。
【0008】
また
、環状部の一部は、キャップ体が位置している前記本体の表面まで 延在している。このため、引き抜き過程においてキャップ体は、流路孔の軸方向に対して傾くように変形されつつ離脱する。従って、キャップ体の軸心方向にキャップ体を単に引き抜く場合と比べると、キャップ体を引き抜くために必要な力は低減される。本発明のシールキャップは、圧縮機に装着されたときに他部材と干渉することがなく、圧縮機からのシールキャップの引き抜きが容易である。
【0009】
また、上記のシールキャップにおいて、前記圧縮機は、前記端面に形成された第2流路孔を備え、前記スタッドボルトは、前記流路孔および前記第2流路孔との間に立設され、前記第2流路孔を塞ぐ第2キャップ体が前記本体に一体的に連結され、前記本体における第2キャップ体側の表面から立設される第2把持体を備える構成としてもよい。
この場合、圧縮機の配管接続部において流路孔と第2流路孔がスタッドボルトを間にして備えられるが、シールキャップは流路孔および第2流路孔を塞ぐ。シールキャップの引き抜き過程では、キャップ体が先に離脱し、次に第2キャップ体が第2流路孔から離脱し、その後にボルト挿通体がスタッ
ドボルトから離脱する。従って、一つのシールキャップで流路孔と第2流路孔を塞ぐことができるとともに、シールキャップを圧縮機から確実に離脱することができる。
【0010】
また、上記のシールキャップにおいて、前記ボルト挿通体の軸方向における前記把持体の長さは、前記ボルト挿通体の軸方向の長さ以下である構成としてもよい。
この場合、把持体の長さがボルト挿通体の軸方向の長さ以下であるので、把持体がボルト挿通体の軸心方向に過度に突出することはなく、把持体がボルト挿通体の軸心方向に他部材と干渉することはない。
【0011】
また、
本発明は、流体が流れる配管を接続する配管接続部と、前記配管接続部の端面に開口された流路孔と、前記配管接続部の端面に立設したスタッドボルトと、を備えた圧縮機に用いられ、前記流路孔に挿入されて前記流路孔を塞ぐキャップ体と、前記スタッドボルトを挿通可能とする筒状のボルト挿通体と、把持可能とする把持体と、前記キャップ体、前記ボルト挿通体および前記把持体を一体的に連結する板状の本体と、を備え、前記ボルト挿通体および前記把持体は前記本体の表面から突出されるとともに、前記キャップ体は前記本体の裏面から突出され、弾性変形可能な材料により形成されるシールキャップであって、前記把持体は環状に形成される環状部を備え、前記キャップ体を挟んで前記ボルト挿通体の反対側に配置され、前記環状部は、前記キャップ体の挿入方向と交差する方向に貫通し、前記圧縮機は、前記端面に形成された第2流路孔を備え、前記スタッドボルトは、前記流路孔および前記第2流路孔との間に立設され、前記第2流路孔を塞ぐ第2キャップ体が前記本体に一体的に連結され、前記本体における第2キャップ体側の表面から立設される第2把持体を備え、前記第2把持体は前記ボルト挿通体と協働して環状を形成する構成としてもよい。
この場合、第2把持体はボルト挿通体と協働して環状を形成する。第2把持体は指を挿入し易くすることできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、他部材と干渉することがなく、圧縮機からの引き抜きが容易な作業性に優れたシールキャップを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るシールキャップを図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示す圧縮機10は、車載用の圧縮機であり、圧縮機10のハウジング11は、主にシリンダブロック、フロントハウジングおよびリヤハウジングにより構成されている。ハウジング11には流体としての冷媒が流れる配管を接続する配管接続部12が設けられている。配管接続部12には端面13が形成され、端面13には、流路孔としての吸入孔14と、第2流路孔としての吐出孔15が開口されている。端面13における吸入孔14と吐出孔15の間にスタッドボルト16が立設されている。スタッドボルト16は接続部配管に接続される配管を固定するためのボルトであり、雄ねじを有する軸部16Aと、軸部16Aの一方の端部に形成されたナット状の頭部16Bとを有する。スタッドボルト16は配管接続部12に設けたねじ孔に螺入されている。
【0015】
本実施形態では、
図1に示すように、圧縮機10の配管接続部12において、吸入孔14、スタッドボルト16、吐出孔15の各中心が仮想直線L上を通るように配置されている。
図1および
図2に示すように、圧縮機10の配管接続部12が頂部に位置し、圧縮機10の回転軸心Pが水平になるように、圧縮機10が車両のエンジンルーム内にてほぼ水平に固定される。
【0016】
図3、
図4(a)および
図4(b)に示すシールキャップ20は、配管接続部12に装着して吸入孔14と吐出孔15を塞ぐためのものであり、例えば、人力による加圧により弾性変形可能なポリウレタン等の樹脂材料又はゴム系材料により形成されている。シールキャップ20は、板状の本体21と、吸入側キャップ体22と、吐出側キャップ体23と、吸入側把持体24と、吐出側把持体25と、ボルト挿通体26を備える。
【0017】
板状の本体21は、吸入側キャップ体22、吐出側キャップ体23、吸入側把持体24、吐出側把持体25およびボルト挿通体26を一体的に連結する。本体21における長手方向(長さ方向)の中心付近の表面21Aにボルト挿通体26が備えられている。本体21の長手方向におけるボルト挿通体26の一側となる本体21の裏面21Bは吸入側キャップ体22を備え、本体21の長手方向におけるボルト挿通体26の他側となる本体21の裏面21Bは吐出側キャップ体23を備える。本体21の長手方向における中心付近の短手方向(幅方向)には、本体21の幅を小さくする切り欠き27が形成されている。本体21は、本体21の長手方向における一側の端部28と、他側の端部29を有している。
【0018】
キャップ体としての吸入側キャップ体22は円柱状に形成されており、吸入側キャップ体22の外周面には環状リブ22Aが形成されている。吸入側キャップ体22の先端側から内側へ入り込むように形成された凹部(図示せず)を備えている。吸入側キャップ体22の径寸法は、吸入側キャップ体22が圧入により挿入されて吸入孔14を塞ぐように吸入孔14の孔径に対応して設定されている。吸入側キャップ体22の軸心S1は本体21の裏面21Bと直交する。
【0019】
吐出側キャップ体23は第2キャップ体に相当し、円柱状に形成されている。吐出側キャップ体23は外周面に環状リブ23Aを備え、吸入側キャップ体22と同様の凹部(図示せず)を備えている。吐出側キャップ体23の径寸法は、吐出側キャップ体23が圧入により挿入されて吐出孔15を塞ぐように吐出孔15の孔径に対応して設定されている。吐出側キャップ体23の軸心S2は本体21の裏面21Bと直交する。
【0020】
筒状のボルト挿通体26は、スタッドボルト16の挿通可能な部位であり、吸入側キャップ体22と吐出側キャップ体23との間に位置する。本実施形態では、ボルト挿通体26は、本体21の表面21Aにおける長手方向の中心付近に設けられている。ボルト挿通体26の軸心S3は本体21の表面21Aと直交する。シールキャップ20が配管接続部12に装着された状態では、スタッドボルト16がボルト挿通体26に挿通され、スタッドボルト16は先端部を除きボルト挿通体26により覆われる。
【0021】
吸入側把持体24および吐出側把持体25は、配管接続部12に装着されたシールキャップ20を引き抜き易くするためのものである。把持体としての吸入側把持体24は、本体21の端部28において表面21Aから立設するとともに本体21の長手方向に延在して環状に形成される環状部31を備えている。環状部31は本体21と接続される接続端32を備える。吸入側把持体24は吸入側キャップ体22を挟んでボルト挿通体26の反対側に配置されている。吸入側把持体24および吐出側把持体25はシールキャップ20を引き抜く際に把持可能である。
【0022】
図4(b)に示すように、接続端32は、本体21の長手方向における吸入側キャップ体22側の端部28と接続されている。接続端32は、吸入側キャップ体22側の端部28に接続される吸入側キャップ体側接続端32Aと、本体21の長手方向において吸入側キャップ体側接続端32Aよりもボルト挿通体26側に接続されるボルト挿通体側接続端32Bと、を備えている。ボルト挿通体側接続端32Bは、本体21の長手方向において吸入側キャップ体22の軸心S1よりも吸入側キャップ体側接続端32Aに近い位置に接続されている。吸入側把持体24は本体21の長手方向における端部28からはみ出さず、本体41の長手方向と直交する方向の本体41の外周縁からはみ出さない。
【0023】
本実施形態の環状部31は、
図4(b)に示すように、立設部位31A、円弧状部位31B、湾曲部位31Cおよび平行部位31Dから構成されている。
図4(b)では、説明の便宜上、環状部31の各部位の境界を点線により図示している。
【0024】
立設部位31Aは、吸入側キャップ体側接続端32Aから表面21Aと直交するように立設されて形成されている。円弧状部位31Bは、立設部位31Aから延在し、ボルト挿通体26に向かうように円弧状に形成されている。円弧状部位31Bは、吸入側把持体24において本体21から最も離れた部位である。湾曲部位31Cは、円弧状部位31Bから本体21に向けて延在するように湾曲して形成されている。湾曲部位31Cは、ボルト挿通体26と最も接近する部位である。湾曲部位31Cとボルト挿通体26との間に間隙G1が形成されている。間隙G1は、円弧状部位31Bから離れるように形成されている。間隙G1は、円弧状部位31Bおよび本体21へ向かうにつれて拡大している。平行部位31Dは、湾曲部位31Cから本体21の表面21Aと平行に延在す
るように形成され、ボルト挿通体側接続端32Bに接続されている。環状部31の一部は、吸入側キャップ体22が位置している本体の表面21Aまで 延在している
。
【0025】
環状部31は、立設部位31A、円弧状部位31B、湾曲部位31C、平行部位31Dから構成されているので、吸入側キャップ体22の挿入方向と交差する方向に貫通しており、作業者の指を挿通可能とする開口33が形成されている。接続端32が端部28に接続されていることから、作業者が開口33に指を挿入して、シールキャップ20を引き抜く方向(軸心S1に平行な方向)に吸入側把持体24を引っ張ると、吸入側キャップ体22の端部28付近から引き抜かれるように本体21が変形する。吸入側キャップ体22の端部28付近に引き抜く力が作用するとき、吸入側キャップ体22を軸心S1方向に単に引き抜く場合と比べると吸入側キャップ体22を引き抜く力は小さくなる。
【0026】
次に、吐出側把持体25について説明する。第2把持体としての吐出側把持体25は、本体21における吐出側キャップ体23側の表面21Aから立設するとともに本体21の長手方向に延在する。吐出側把持体25はボルト挿通体26と協働して環状を形成している。吐出側把持体25は、本体21の表面21Aから立設するとともに本体21の長手方向に延在して環状に形成される延在部34を備えている。延在部34の本体側接続端35は、本体21における端部29と接続され、延在部34のボルト挿通体側接続端36は、ボルト挿通体26の外周面に接続されている。吐出側把持体25は本体21の長手方向における端部29からはみ出さず、本体41の長手方向と直交する方向の本体41の外周縁からはみ出さない。
【0027】
本実施形態の延在部34は、立設部位34Aと、円弧状部位34Bと、クランク状部位34Cと、から構成されている。
図4(b)では、説明の便宜上、延在部34の各部位の境界を点線により図示している。
【0028】
立設部位34Aは、本体21の端部29において表面21Aから立設するとともに本体21の長手方向に延在する。立設部位34Aの本体21側端が本体側接続端35である。円弧状部位34Bは、立設部位34Aから延在し、ボルト挿通体26に向かうように円弧状に形成されている。円弧状部位34Bは、吐出側把持体25において本体21から最も離れた部位である。クランク状部位34Cは、円弧状部位34Bから本体21へ向かいさらにボルト挿通体26に向けて延在するようにクランク状に形成されている。クランク状部位34Cとボルト挿通体26との間には、間隙G2が形成されている。
【0029】
図5に示すように、間隙G2は間隙G1とともに、スタッドボルト16の圧縮機10への取り付け時又は締め付け時に用いるインパクトレンチTとシールキャップ20との干渉を防止する。
図5では、工具としてのインパクトレンチTのソケットを仮想線にて示す。
【0030】
吐出側把持体25では、延在部34が立設部位34Aと、円弧状部位34Bと、クランク状部位34Cと、から構成されている。吐出側把持体25は吐出側キャップ体23の挿入方向と交差する方向に貫通している。そして、延在部34、本体21およびボルト挿通体26は、作業者の指を挿通する開口37を形成する。作業者が開口37に指を挿入して、シールキャップ20を引き抜く方向(軸心S2に平行な方向)に吐出側把持体25を引っ張ると、吐出側キャップ体23およびボルト挿通体26が引き抜かれる。
【0031】
次に、本実施形態のシールキャップ20の引き抜き過程について説明する。圧縮機10は車両のエンジンルーム内に取り付けられており、配管接続部12に設けたスタッドボルト16が鉛直方向に延びている状態にある。シールキャップ20の吸入側キャップ体22は吸入孔14を塞ぎ、吐出側キャップ体23は吐出孔15を塞いでおり、シールキャップ20は圧縮機10の配管接続部12に装着されている。
【0032】
シールキャップ20を引き抜く作業を行う作業者は、まず、吸入側把持体24側の開口33および吐出側把持体25側の開口37に指を挿入し、吸入側把持体24および吐出側把持体25に指を係止させる。例えば、人差し指を開口33に挿入し、中指を開口37に挿入する。次に、作業者は、係止させたそれぞれ指を配管接続部12から遠ざかる方向(
図6における白抜き矢印の方向)へ向けてシールキャップ20を移動させる。吸入側キャップ体側接続端32Aは本体21の端部28に接続され、ボルト挿通体側接続端32Bが本体21の長手方向において吸入側キャップ体22の軸心S1よりも吸入側キャップ体側接続端32Aに近い位置に設けられている。このため、シールキャップ20を引き抜く方向へ移動させると、本体21が変形し、
図6(a)に示すように、吸入側キャップ体22は端部28付近から傾くように変形しつつ吸入孔14から引き抜かれる。つまり、吸入側キャップ体22は、吸入側把持体24を引っ張る力によって吸入孔14から離脱する。
【0033】
さらに、作業者は、吸入側把持体24および吐出側把持体25に指を係止させた状態にて、配管接続部12から引き抜く方向へシールキャップ20を移動させる。このとき、主に吐出側把持体25を介して吐出側キャップ体23が吐出孔15から離脱される。
図6(b)に示すように、吐出側キャップ体23の離脱とともに、ボルト挿通体26からスタッドボルト16が抜け始める。配管接続部12から引き抜く方向へ向けてシールキャップ20をさらに移動させることにより、ボルト挿通体26がスタッドボルト16から外れて、シールキャップ20は完全に引き抜かれる。
【0034】
このように、シールキャップ20の引き抜き過程では、複数の指を使って吸入側把持体24および吐出側把持体25に指を係止させるため、一つの指を使ってシールキャップ20を引く抜く場合と比較して、指への負担は軽減される。また、吸入側キャップ体22および吐出側キャップ体23が同時に離脱するのではなく、吸入側キャップ体22が先に離脱し、その後に吐出側キャップ体23が離脱し、さらに、その後にボルト挿通体26が離脱される。このため、少ない力でシールキャップ20が引き抜かれ、シールキャップ20を配管接続部12から引き抜き易い。
【0035】
本実施形態のシールキャップ20は以下の作用効果を奏する。
(1)吸入側把持体24は環状に形成される環状部31を備え、吸入側キャップ体22を挟んでボルト挿通体26の反対側に配置されている。環状部31は吸入側キャップ体22の挿入方向と交差する方向に貫通している。このため、シールキャップ20が圧縮機10に装着されている状態では、吸入側把持体24は本体21の外周縁からはみ出ず、エンジンルーム内の他部材と干渉することはない。また、吸入側把持体24の環状部31は、指を挿入し易い。
【0036】
(2)吸入側把持体24の接続端32が本体21の長手方向における吸入側キャップ体22側の端部28と接続されている。そして、環状部31の一部は、吸入側キャップ体22が位置している本体21の表面21Aまで 延在している。このため、引き抜き過程において吸入側キャップ体22は、流路孔としての吸入孔14の軸方向に対して傾くように変形されつつ離脱する。従って、吸入側キャップ体22の軸心S1方向に吸入側キャップ体22を単に引き抜く場合と比べると、吸入側キャップ体22を引き抜くために必要な力は低減される。シールキャップ20は、他部材と干渉することがなく、圧縮機10からの引き抜きが容易である。
【0037】
(3)圧縮機10の配管接続部12において吸入孔14と第2流路孔としての吐出孔15がスタッドボルト16を間にして備えられるが、シールキャップ20は吸入孔14および吐出孔15を塞ぐ。シールキャップ20の引き抜き過程では、吸入側キャップ体22が先に吸入孔14から離脱し、その後に吐出側キャップ体23が吐出孔15から離脱する。最後にボルト挿通体26がスタッドボルト16から離脱する。従って、一つのシールキャップ20により吸入孔14と吐出孔15を塞ぐことができるとともに、シールキャップ20を圧縮機10から確実に離脱することができる。
【0038】
(4)吸入側把持体24とボルト挿通体26との間に間隙G1が形成され、吐出側把持体25とボルト挿通体26との間に間隙G2が形成されている。シールキャップ20を圧縮機10に装着した状態では、インパクトレンチTといった工具を用いて圧縮機10に対するスタッドボルト16の取り付けが行われるが、工具の一部が間隙G1、G2に入り込むことができる。よって、シールキャップ20と工具が干渉することなく、圧縮機10に対するスタッドボルト16の取り付けおよび締め付けは効率的に行われる。また、シールキャップ20を圧縮機10に装着した状態にて、スタッドボルト16を取り付けることができるため、配管接続部12の端面13を保護することができる。
【0039】
(5)接続端32は、吸入側キャップ体22側の端部28に接続される吸入側キャップ体側接続端32Aと、本体21の長手方向において吸入側キャップ体側接続端32Aよりもボルト挿通体26側に接続されるボルト挿通体側接続端32Bと、を備える。ボルト挿通体側接続端32Bは、本体21の長手方向において吸入側キャップ体22の軸心S1よりも吸入側キャップ体側接続端32Aに近い位置に接続されている。このため、シールキャップ20の引き抜きの過程では、吸入側キャップ体22における端部28に近い部位が、引き抜きの力をより受け、吸入側キャップ体22は吸入孔14の軸方向に対して傾くように変形されつつ速やかに吸入孔14から離脱することができる。
【0040】
(6)吸入側把持体24、吐出側把持体25およびボルト挿通体26が変形しない状態では、吸入側把持体24および吐出側把持体25の長さがボルト挿通体26の軸方向の長さ以下である。このため、吸入側把持体24および吐出側把持体25がボルト挿通体26の軸心S3方向に過度に突出することはなく、吸入側把持体24および吐出側把持体25がボルト挿通体26の軸方向において他部材と干渉することはない。
【0041】
(7)吐出側把持体25はボルト挿通体26と協働して環状を形成する。吐出側把持体25は本体21の表面21Aから立設されるとともに本体21の長手方向に延在して環状に形成される延在部34を備える。延在部34は、本体21と接続される本体側接続端35と、ボルト挿通体26に接続されるボルト挿通体側接続端36と、を備える。延在部34は、吐出側キャップ体23の挿入方向と交差する方向に貫通している。このため、吐出側把持体25、ボルト挿通体26および本体21が開口37を形成するが、開口37は十分な大きさであり、開口37に指を挿入し易い。
【0042】
(8)シールキャップ20の引き抜き過程では、吸入側把持体24および吐出側把持体25には指がそれぞれに係止されるので、一つの指にて引き抜くシールキャップと比較すると、指に対する負担を軽減することができる。また、シールキャップ20の引き抜き過程では、吸入側キャップ体22、吐出側キャップ体23、ボルト挿通体26の順に離脱される。このため、吸入側キャップ体22および吐出側キャップ体23を同時に引き抜く場合と比較すると、少ない力でシールキャップ20を円滑に引き抜くことができる。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るシールキャップについて説明する。本実施形態のシールキャップは吸入孔を塞ぐシールキャップである。吐出孔は別のシールキャップにより塞がれる。本実施形態では、圧縮機の構成は、第1の実施形態と同一であるため、第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。なお、吐出孔を塞ぐシールキャップは図示を省略している。
【0044】
図7(a)および
図7(b)に示すシールキャップ40は、配管接続部12に装着して吸入孔14を塞ぐためのものである。シールキャップ40は第1の実施形態のシールキャップ20と同じ材料により形成されている。シールキャップ40は、板状の本体41と、キャップ体42と、把持体43と、ボルト挿通体44と、を備えている。
【0045】
板状の本体41は、キャップ体42、把持体43およびボルト挿通体44を一体的に連結する。板状の本体21は、本体21の長手方向における一側の端部45と、他側の端部46を有している。本体41の裏面41Bにおける一側の端部45側にキャップ体42が備えられている。本体41の表面41Aにおける他側の端部46側にボルト挿通体44が備えられている。
【0046】
キャップ体42は円柱状に形成されており、キャップ体42の外周面には環状リブ42Aが形成されている。キャップ体42は、第1の実施形態の吸入側キャップ体22とほぼ同一である。キャップ体42の軸心S4は本体41の裏面41Bと直交する。キャップ体42の軸心S4はボルト挿通体44の軸心S5と平行である。ボルト挿通体44は、スタッドボルト16の挿通可能な部位である。本実施形態では、ボルト挿通体44の基部における他側の端部46側が切除され、さらに、本体41におけるボルト挿通体44の他側の端部46側に半円状に切除されることにより、切り欠き47が形成されている。切り欠き47は、把持体43の引っ張りによるキャップ体42の離脱を容易にする。シールキャップ40が配管接続部12に装着された状態では、スタッドボルト16がボルト挿通体44に挿通され、スタッドボルト16の外周面はボルト挿通体44により覆われる。
【0047】
把持体43は、配管接続部12に装着されたシールキャップ40を引き抜き易くするためのものである。把持体43は、本体41の端部45において表面41Aから立設されるとともに本体41の長手方向に延在して環状に形成される環状部48を備えている。把持体43は、キャップ体42を挟んでボルト挿通体44の反対側に配置されている。環状部48は、本体41の長手方向におけるキャップ体42側の端部45と接続される接続端49を備える。接続端49は、キャップ体42側の端部45に接続される端部側接続端49Aと、本体21の長手方向においてボルト挿通体44側に接続されるボルト挿通体側接続端49Bと、を備えている。端部側接続端49Aはキャップ体側接続端に相当する。ボルト挿通体側接続端49Bは、本体41の長手方向においてキャップ体42の軸心S4よりも端部側接続端49Aに近い位置に接続されている。把持体43は本体41の長手方向(長さ方向)において端部45からはみ出しているが、本体41の長手方向と直交する方向(幅方向)の本体41の外周縁からはみ出さない。
【0048】
環状部48は、表面41Aから離れるように端部側接続端49Aおよびボルト挿通体側接続端49Bから立設され、円弧状に形成されている。環状部48の一部は、キャップ体42が位置している本体41の表面41Aまで 延在している。環状部48とボルト挿通体44との間に間隙G3が形成されている。間隙G3は、円弧状部位31Bから離れるように形成されている。間隙G3におけるボルト挿通体44の先端部付近は、インパクトレンチTといった工具を用いて装着するとき、工具の一部が入り込むことができる。ボルト挿通体44の軸方向における把持体43の長さは、ボルト挿通体44の軸方向の長さ以下である。
【0049】
環状部48は、キャップ体42の挿入方向と交差する方向に貫通している。環状部48には、作業者の指を挿通する開口50が形成されている。接続端49が端部45に接続されていることから、作業者が開口50に指を挿入して、シールキャップ40を引き抜く方向(軸心S4に平行な方向)に把持体43を引っ張ると、キャップ体42の端部付近から引き抜かれるように本体41が変形する。キャップ体42の端部付近に引き抜きの力を作用させることは、キャップ体42を軸心S4方向に単に引き抜く場合と比べて小さい力で済む。
【0050】
本実施形態のシールキャップ40は、第1の実施形態の作用効果(1)、(3)、(4)と同等の作用効果を奏する。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るシールキャップについて説明する。本実施形態のシールキャップは吐出孔を塞ぐシールキャップである。吸入孔は別のシールキャップにより塞がれる。本実施形態では、圧縮機の構成は、第1の実施形態と同一であるため、第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。なお、吸入孔を塞ぐシールキャップは図示を省略している。
【0052】
図8(a)および
図8(b)に示すシールキャップ60は、配管接続部12に装着して吐出孔15を塞ぐためのものである。シールキャップ60は第1の実施形態のシールキャップ20と同じ材料により形成されている。シールキャップ60は、板状の本体61と、キャップ体62と、把持体63と、ボルト挿通体64と、を備えている。
【0053】
板状の本体61は、キャップ体62、把持体63およびボルト挿通体64を一体的に連結する。板状の本体61は、本体61の長手方向における一側の端部65と、他側の端部66を有している。本体61の裏面61Bにおける一側の端部65側にキャップ体62が備えられている。本体41の表面61Aにおける他側の端部66側にボルト挿通体64が備えられている。
【0054】
キャップ体62は円柱状に形成されており、キャップ体62の外周面には環状リブ62Aが形成されている。キャップ体62は、第1の実施形態の吐出側キャップ体23とほぼ同一である。キャップ体62の軸心S6は本体61の裏面61Bと直角に交差する。キャップ体62の軸心S6はボルト挿通体64の軸心S7と平行である。ボルト挿通体64は、スタッドボルト16の挿通可能な部位である。本実施形態では、ボルト挿通体64の基部における他側の端部66側が切除され、さらに、本体61におけるボルト挿通体64の他側の端部66側に半円状に切除されることにより、切り欠き67が形成されている。切り欠き67は、把持体63の引っ張りによるキャップ体62の離脱を容易にする。シールキャップ60が配管接続部12に装着された状態では、スタッドボルト16がボルト挿通体64に挿通され、スタッドボルト16の外周面はボルト挿通体64により覆われる。
【0055】
把持体63は、配管接続部12に装着されたシールキャップ60を引き抜き易くするためのものである。把持体63は、本体61の端部65において表面61Aから立設されるとともに本体61の長手方向に延在して環状に形成される環状部68を備えている。把持体63は、キャップ体62を挟んでボルト挿通体64の反対側に配置されている。環状部68は、本体61の長手方向におけるキャップ体62側の端部65と接続される接続端69を備える。接続端69は、キャップ体62側の端部65に接続される端部側接続端69Aと、本体61の長手方向においてボルト挿通体64側に接続されるボルト挿通体側接続端69Bと、を備えている。端部側接続端69Aはキャップ体側接続端に相当する。ボルト挿通体側接続端69Bは、本体61の長手方向においてキャップ体62の軸心S6よりも端部側接続端69Aに近い位置に接続されている。把持体63は本体61の長手方向における端部65から僅かにはみ出しているが、本体21の長手方向と直交する方向の本体61の外周縁からはみ出さない。
【0056】
環状部68は、表面61Aから離れるように端部側接続端69Aおよびボルト挿通体側接続端69Bから立設され、円弧状に形成されている。環状部68の一部は、キャップ体62が位置している本体61の表面61Aまで 延在している。環状部68とボルト挿通体64との間に間隙G4が形成されている。間隙G4は、環状部68から離れるように形成されている。間隙G4におけるボルト挿通体64の先端部付近は、インパクトレンチTといった工具を用いて装着するとき、工具の一部が入り込むことができる。ボルト挿通体64の軸方向における把持体63の長さは、ボルト挿通体64の軸方向の長さ以下である。
【0057】
環状部68は、キャップ体62の挿入方向と交差する方向に貫通している。環状部68には、作業者の指を挿通する開口70が形成されている。接続端69が端部65に接続されていることから、作業者が開口70に指を挿入して、シールキャップ60を引き抜く方向(軸心S5に平行な方向)に把持体63を引っ張ると、キャップ体62の端部付近から引き抜かれるように本体61が変形する。キャップ体62の端部付近に引き抜きの力を作用させることは、キャップ体62を軸心S6方向に単に引き抜く場合と比べて小さい力で済む。
【0058】
本実施形態のシールキャップ60は、第1の実施形態の作用効果(1)、(3)、(4)と同等の作用効果を奏する。
【0059】
なお、上記の実施形態に係るシールキャップは、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0060】
○ 上記の実施形態では、シールキャップが装着される圧縮機として車載用の圧縮機を例として説明したが、圧縮機の形式は特に限定されない。例えば、圧縮機は、斜板式、スクロール式、ベーン式であってもよく、また、車載用の圧縮機に特に制限されるものではない。
○ 上記の実施形態では、圧縮機のハウジングに形成された配管接続部にシールキャップが装着される例を示したが、必ずしも配管接続部はハウジングに形成されるとは限らず、例えば、ハウジングに設けた別の部材に配管接続部が形成されてもよい。
○ 上記の実施形態では、圧縮機の配管接続部において吸入孔、スタッドボルト、吐出孔の各中心が仮想直線上を通るように配置されたが、吸入孔、スタッドボルト、吐出孔の各中心が互いに位置ずれしていてもよい。この場合、シールキャップは、吸入孔、スタッドボルト、吐出孔の位置に応じて、吸入側キャップ体、ボルト挿通体、吐出側キャップ体を互いに位置ずれした形状とする。
○ 上記の実施形態では、配管接続部の端面が水平であり、吸入孔と吐出孔の開口が同じ高さとしたがこの限りではない。吸入孔又は吐出孔の開口の高さが異なるように、圧縮機がエンジンルーム内に固定されてもよい。
○ 第1の実施形態では、吐出側把持体はボルト挿通体と接続されたが、吐出側把持体を吸入側把持体のように設け、吐出側把持体とボルト挿通体とが互いに接続されないように構成してもよい。この場合、工具との干渉を回避するための間隙を設けることができる。
○ 上記の実施形態では、把持体はシールキャップを引き抜く際に作業者が把持し易い形状であればよく、特に形状は限定されない。また、把持体は本体の表面からボルト挿通部の先端部を越えないように設けることが好ましい。また、他部材との干渉を考慮すると、把持体は、本体の長手方向の端部からはみ出さない構成とすることが好ましい。