特許第6809481号(P6809481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809481
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20201221BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 8/21 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20201221BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61K8/46
   A61K8/21
   A61K8/24
   A61Q11/00
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-553804(P2017-553804)
(86)(22)【出願日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】JP2016084782
(87)【国際公開番号】WO2017094583
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2019年7月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-233239(P2015-233239)
(32)【優先日】2015年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小熊 友一
(72)【発明者】
【氏名】猪谷 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】小島 和晃
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸司
【審査官】 山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−163743(JP,A)
【文献】 特開2015−020970(JP,A)
【文献】 特開2015−117215(JP,A)
【文献】 特開2007−320894(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/008823(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/060426(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水溶性フッ素含有化合物、
(B)α−オレフィンスルホン酸塩、
(C)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩
を含有し、(A)成分の含有量がフッ素イオンとして900ppm以上、(B)成分の含有量が0.1〜1質量%であり、(A)成分のフッ素イオン量と(B)成分の配合量との割合を示す(B)/(A)が、質量比として0.7〜7であることを特徴とする口腔用組成物。
【請求項2】
(A)成分の含有量がフッ素イオンとして1,100〜5,000ppmであり、(A)成分のフッ素イオン量と(B)成分の配合量との割合を示す(B)/(A)が、質量比として3.5である請求項1記載の口腔用組成物。
【請求項3】
(A)成分が、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム及びフッ化スズから選ばれる1種以上のフッ化物である請求項1又は2記載の口腔用組成物。
【請求項4】
(B)成分が、炭素数14〜16のα−オレフィンスルホン酸塩である請求項1〜3のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項5】
(C)成分が、2質量%水溶液粘度(BH型ブルックフィールド粘度計、ローターNo.2、20回転、20℃、測定時間1分)が30〜3,000mPa・sであり、ポリエチレングリコールを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフ法による重量平均分子量が100,000〜1,500,000であるヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩である請求項1〜4のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項6】
(C)成分の含有量が0.01〜0.5質量%である請求項1〜5のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項7】
歯磨剤組成物である請求項1〜6のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素イオンの歯面への滞留性が向上し、プラークが付着した歯面でもフッ素イオンが効果的に滞留する優れた歯面滞留性を与える口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ化物等のフッ素含有化合物は、う蝕予防効果があることから、歯磨剤等の口腔用組成物に薬効成分として広く用いられている。フッ素含有化合物を効果的に歯に作用させるには、フッ素イオンを定期的かつ長時間に亘って口腔内、特に歯面に滞留させることが有効であり、使用後の口腔内をうがいして水で漱ぐなどした後でも口腔内にフッ素イオンを多く残すことが望まれている。
【0003】
口腔内にフッ素イオンを多く残す手段として、口腔用組成物にフッ素含有化合物を高濃度配合することが考えられるが、高濃度配合しただけでは、歯みがき後のすすぎや唾液によって流出してしまうため、フッ素イオンの口腔内滞留性が十分ではない。
【0004】
そこで、口腔内にフッ化物を滞留させる方法として、フッ化ナトリウムと共にカチオン性高分子物質を配合し、歯面にフッ素イオンを吸着、滞留させる方法が特許文献1〜3(特開2015−117215号公報、特開2011−126840号公報、特開2011−126788号公報)に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−117215号公報
【特許文献2】特開2011−126840号公報
【特許文献3】特開2011−126788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、歯面へのフッ素イオンの滞留性については未だ改善の余地があり、更なる歯面滞留性の向上が望まれた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、フッ素イオンの歯面への滞留性が向上し、プラークが付着した歯面に対してもフッ素イオンが効果的に滞留する優れた歯面滞留性を与える口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、水溶性フッ素含有化合物にα−オレフィンスルホン酸塩及びヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩を組み合わせることで、上記課題に対して顕著な効果を発現できることを見出した。即ち、(A)水溶性フッ素含有化合物、(B)α−オレフィンスルホン酸塩及び(C)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩を口腔用組成物に配合し、(A)成分の配合量がフッ素イオンとして900ppm以上、(B)成分の配合量が0.1〜1質量%であることによって、フッ素イオンの歯面への滞留性が向上し、プラークが付着した歯面に対してもフッ素イオンが満足に滞留する優れた歯面滞留性を付与できることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
本発明では、(A)成分に(B)及び(C)成分を組み合わせて配合することによって、(A)成分のフッ素イオンの歯面への作用性が高まり、今までの技術ではフッ素イオンが滞留し難かった既にプラーク(バイオフィルム)が付着している歯面に対してもフッ素イオンが満足に吸着し、高濃度で滞留する。これにより、単にフッ素含有化合物を高濃度配合したのでは達成されず、また、フッ素含有化合物にカチオン性高分子物質を併用しただけでは達成し得ない、格段に優れた歯面滞留性を与える。
特許文献1〜3は、特定のカチオン性高分子物質と特定のノニオン性界面活性剤、乳酸アルミニウム又はグリセロリン酸カルシウムとの組み合わせによる、歯面へのフッ素イオンの滞留性や沈着性等の改善であり、また、これらの評価は清浄表面のヒドロキシアパタイトディスクを用いて試験されているだけである。特許文献1〜3から、(C)特定のカチオン性高分子物質と(B)α−オレフィンスルホン酸塩との組み合わせによって、プラーク付着歯面に対しても高濃度で滞留する格段に優れたフッ素イオンの歯面滞留性向上を与えることは予測し得ない。
【0010】
従って、本発明は、下記の口腔用組成物を提供する。
〔1〕
(A)水溶性フッ素含有化合物、
(B)α−オレフィンスルホン酸塩、
(C)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩
を含有し、(A)成分の含有量がフッ素イオンとして900ppm以上、(B)成分の含有量が0.1〜1質量%であることを特徴とする口腔用組成物。
〔2〕
(A)成分の含有量がフッ素イオンとして900〜5,000ppmであり、(A)成分のフッ素イオン量と(B)成分の配合量との割合を示す(B)/(A)が、質量比として0.7〜7である〔1〕記載の口腔用組成物。
〔3〕
(A)成分が、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム及びフッ化スズから選ばれる1種以上のフッ化物である〔1〕又は〔2〕記載の口腔用組成物。
〔4〕
(B)成分が、炭素数14〜16のα−オレフィンスルホン酸塩である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔5〕
(C)成分が、2質量%水溶液粘度(BH型ブルックフィールド粘度計、ローターNo.2、20回転、20℃、測定時間1分)が30〜3,000mPa・sであり、ポリエチレングリコールを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフ法による重量平均分子量が100,000〜1,500,000であるヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔6〕
(C)成分の含有量が0.01〜0.5質量%である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔7〕
歯磨剤組成物である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フッ素イオンの歯面への滞留性が向上し、プラークが付着した歯面に対してもフッ素イオンが効果的に滞留する優れた歯面滞留性を与える口腔用組成物を提供できる。本発明の口腔用組成物は、フッ素イオンの口腔内滞留性が高まりその効果がより有効かつ適度に発現することによって、う蝕の予防又は抑制効果の更なる向上が期待でき、う蝕の予防又は抑制用として有効である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の口腔用組成物は、(A)水溶性フッ素含有化合物、(B)α−オレフィンスルホン酸塩、(C)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩を含有する。
【0013】
(A)水溶性フッ素含有化合物としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ等のフッ化物が挙げられる。
【0014】
(A)成分の水溶性フッ素含有化合物の配合量は、フッ素イオンとして組成物全体に対して900ppm以上であり、好ましくは900〜5,000ppm、より好ましくは1,100〜3,000ppmである。フッ素イオン濃度が900ppm未満であると、フッ素イオンの歯面滞留性が劣る。また、5,000ppmを超えると、過剰摂取による斑状歯などの為害作用が発生する場合がある。
(A)水溶性フッ素含有化合物の配合量は、供給するフッ素イオン量により異なり、例えばフッ化ナトリウムの場合、供給するフッ素イオンを900ppmにする場合、配合量は組成物中約0.20%(質量%、以下同様。)となる。具体的にフッ化ナトリウムの配合量は、組成物全体の0.2%以上が好ましく、より好ましくは0.25〜0.7%である。
【0015】
(B)α−オレフィンスルホン酸塩としては、炭素数が14〜16のα−オレフィンスルホン酸のナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩を用いることができ、好ましくは炭素数14のα−オレフィンスルホン酸塩、特にナトリウム塩(一般名;テトラデセンスルホン酸ナトリウム)である。これらは口腔用製剤に使用可能な市販品を入手することができ、例えばライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製のテトラデセンスルホン酸ナトリウム(商品名:KリポランPJ−400CJ)を使用し得る。
【0016】
(B)α−オレフィンスルホン酸塩の配合量は、フッ素イオンの歯面滞留性向上の点から、組成物全体の0.1〜1%であり、好ましくは0.2〜0.4%である。配合量が増えるにつれてフッ素イオンの滞留性は高まり、0.1%以上であると滞留性が十分に向上し、1%以下であることが、滞留性低下を防止するには好適である。
【0017】
更に、本発明では、(A)成分と(B)成分との配合割合が適切範囲内であることがより好ましく、(A)成分のフッ素イオン量と(B)成分の配合量との割合を示す(B)/(A)が、質量比として0.7〜7が好ましく、より好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜3.5である。(B)/(A)比が上記範囲内であると、フッ素イオンの歯面滞留性がより向上する。
【0018】
(C)成分は、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩であり、対イオンとしては塩化物イオンが挙げられ、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリドが好適である。
【0019】
本発明で用いるヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩は、その2%水溶液粘度(BH型ブルックフィールド粘度計、ローターNo.2、20回転、20℃、測定時間1分)が30〜3,000mPa・sであることが好ましい。
ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩の平均分子量は、特に限定されないが、ポリエチレングリコールを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法による重量平均分子量で、好ましくは100,000〜1,500,000である。窒素含有量としては0.1〜3%が好ましく、より好ましくは0.5〜2.5%である。
このようなヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩としては、例えば、アクゾノーベル(株)から市販されているCELQUAT L−200(2%粘度:35〜350mPa・s(BH型ブルックフィールド粘度計、ローターNo.2、20回転、20℃、測定時間1分)、ポリエチレングリコールを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法による重量平均分子量:250,000〜350,000)が挙げられる。
【0020】
(C)成分の配合量は、フッ素イオンの歯面滞留性向上の点から、組成物全体の0.01〜0.5%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.1%である。配合量が増えるにつれてフッ素イオンの滞留性は高まり、0.01%以上であるとフッ素イオンの滞留効果が十分に得られる。0.5%以下であると、製剤の経時安定性を十分に維持し、また、口腔粘膜への違和感の発現を防止することもできる。
【0021】
本発明の口腔用組成物は、液体、液状、ペースト状等の形態で歯磨剤、洗口剤などの各種剤型に調製できるが、特に練歯磨剤、液体歯磨剤、液状歯磨剤、潤製歯磨剤等の歯磨剤、とりわけ練歯磨剤として好適である。
この場合、上記成分に加えて、剤型等に応じたその他の任意成分を本発明の効果を妨げない範囲で適宜配合できる。具体的に練歯磨剤では、研磨剤、粘結剤、粘稠剤、(B)α−オレフィンスルホン酸塩以外の界面活性剤、更に必要により甘味剤、防腐剤、色素、香料、(A)水溶性フッ素含有化合物以外の各種有効成分等を配合し得る。
【0022】
研磨剤としては、結晶性シリカ、非晶性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤、ゼオライト、リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第4リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。
研磨剤の配合量は、通常、組成物全体の5〜70%、特に10〜50%である。
【0023】
粘結剤としては、例えば、キサンタンガム等のガム類、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース誘導体、カラギーナン等の直鎖含硫黄多糖類、ポリアクリル酸ナトリウム等の高吸水性高分子物質などが挙げられる。粘結剤の配合量は、通常、組成物全体の0〜10%、特に0.1〜5%である。
【0024】
粘稠剤としては、ソルビット、キシリット、エリスリトール等の糖アルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコールなどが挙げられる。粘稠剤の配合量は、通常、組成物全体の0〜70%、特に3〜50%である。
【0025】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアミド等のノニオン性界面活性剤、アルキル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤、脂肪酸アミドプロピルベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。これら界面活性剤の配合量は、0〜10%、特に0〜5%が好ましい。
なお、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤の配合量は1%以下、特に0.5%以下であってもよく、配合せず0%であってもよい。
また、(B)成分以外のアニオン性界面活性剤を配合する場合、その配合量は、((B)成分の配合量)/((B)成分を含めたアニオン性界面活性剤の総量)が質量比として0.1〜1の範囲内とすることが好ましく、0.1〜0.5の範囲内とすることがより好ましい。
【0026】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム等が挙げられる。防腐剤としては、安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステルなどが挙げられる。
色素としては、食用色素であるブリリアントブルー、タートラジン等、顔料の酸化チタンなどが挙げられる。
【0027】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及びこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、l−メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料など、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。また、配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、組成物中に0.000001〜1%使用するのが好ましい。上記香料素材を使用した賦香用香料は、組成物中に0.1〜2%使用するのが好ましい。
【0028】
有効成分(薬用成分)としては、例えば、クロロヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛等の殺菌又は抗菌剤、エタンヒドロキシジホスフォネート等の歯石予防剤、トラネキサム酸、グリチルリチン酸及びその塩類、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム等の抗炎症剤、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、塩化リゾチーム等の酵素剤、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール等のビタミン類、塩化ナトリウム等の収斂剤、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム等の知覚過敏抑制剤などを、薬剤学的に許容できる範囲で使用することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0030】
[実施例、比較例]
表1、2に示す組成の口腔用組成物(歯磨剤組成物)を常法によって調製し、下記方法で評価した。結果を表に併記した。
【0031】
〈プラークが付着した歯面へのフッ素イオンの滞留性の評価〉
(1)モデルバイオフィルムの作製方法
直径7mm×厚さ3.5mmのハイドロキシアパタイト(HA)板(旭光学工業社製)を0.45μmのフィルターでろ過したヒト無刺激唾液で4時間処理したものをモデルバイオフィルム作製の担体に用い、培養液には、ベイサルメディウムムチン培養液(BMM)*1を用いた。モデルバイオフィルムを作製するために使用した菌株は、American Type Culture Collectionより購入したアクチノマイセス ヴィスコサス(Actinomyces viscosus)ATCC43146、ベイヨネラ パルビュラ(Veillonella parvula)ATCC17745、フゾバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)ATCC10953、ストレプトコッカス オラリス(Streptococcus oralis)ATCC10557、ストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcus mutans)ATCC25175を用いた。これら5菌株は予めBMM3,000mLを入れたRotating Disk Reactor(培養槽)にそれぞれ1×107cfu/mL(cfu:colony forming units)になるように接種し、唾液処理したHA担体と共に37℃、嫌気的条件下(5vol%炭酸ガス、95vol%窒素)で24時間培養し、HA表面に5菌種混合のモデルバイオフィルムを形成させた。
【0032】
*1 BMMの組成:1リットル中の質量で表す。
プロテオースペプトン(Becton and Dickinson社製
):4g/L
トリプトン(Becton and Dickinson社製):2g/

イーストエキス(Becton and Dickinson社製):2
g/L
ムチン(シグマ アルドリッチ ジャパン社製):5g/L
ヘミン(シグマ アルドリッチ ジャパン社製):2.5mg/L
ビタミンK(和光純薬工業(株)製):0.5mg/L
KCl(和光純薬工業(株)製):1g/L
システイン(和光純薬工業(株)製):0.2g/L
蒸留水:残
(全量が1Lになるようにメスアップし、121℃で20分間オートクレ
ーブした。)
【0033】
(2)プラーク付着HA板へのフッ素イオンの滞留性の評価方法
モデルバイオフィルムを形成させたHA板は、24穴マルチプレート(住友ベークライト(株)製)に移し、調製した歯磨剤組成物(精製水による4倍希釈液の遠心上清(3,000rpm、10分))を1mL加え、3分間浸漬し、直ちに精製水200mLで3回洗浄した。このHAディスクを乾燥させた後、HAディスク上面を1N−塩酸100μLで2分間脱灰させた。脱灰液を回収し、脱灰液中に含まれるフッ素イオン濃度をフッ素イオンメーター(Orion 1115000 4−Star:サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)で測定した。
平均値(N=6)を算出し、抽出液中のフッ素イオン量とし、これを下記基準によって評価した。◎、○のものを、プラークが付着した歯面に対するフッ素イオンの口腔内滞留性が高く合格であると判断した。
評価基準
◎:フッ素イオン量が0.05ppm以上
○:フッ素イオン量が0.04ppm以上0.05ppm未満
△:フッ素イオン量が0.02ppm以上0.04ppm未満
×:フッ素イオン量が0.02ppm未満
【0034】
使用原料の詳細を下記に示す。
(A)フッ化ナトリウム;ステラケミファ(株)製
(B)テトラデセンスルホン酸ナトリウム;
KリポランPJ−400CJ(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(
株)製)
(C)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩;
CELQUAT L−200(アクゾノーベル(株)製、2%粘度:35
〜350mPa・s(BH型ブルックフィールド粘度計、ローターNo.
2、20回転、20℃、測定時間1分)、ポリエチレングリコールを標準
物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法による重量
平均分子量:250,000〜350,000)
【0035】
【表1】
*;(B)成分の配合量(%)/(A)成分のフッ素イオン量(%)(以下
同様。)
【0036】
【表2】