(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整装置は、前記複数の第1画素データの代表値を予め定められた基準値に一致させる方向へ前記調整信号のレベルを調整する、請求項1または請求項2に記載の画像読取装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格を有さない。
【0015】
[画像形成装置10の構成]
実施形態に係る画像読取装置1は、画像形成装置10の一部を構成している。画像形成装置10は、画像読取装置1および印刷処理装置2を備える。さらに、画像形成装置10は、画像読取装置1および印刷処理装置2に共通の操作装置7a、表示装置7bおよびデータ処理装置8も備える。
【0016】
例えば、画像形成装置10は、複写機、複写機の機能を有するプリンターもしくはファクシミリ、または画像読取機能を含む複数の画像処理機能を備える複合機などである。
【0017】
画像読取装置1は、原稿9の画像を読み取る読取処理を実行する。印刷処理装置2は、シートに画像を形成する印刷処理を実行する。
【0018】
前記印刷処理の対象となる画像は、画像読取装置1によって読み取られた画像および不図示の端末装置から受信する印刷ジョブデータが表す画像などである。前記シートは、用紙またはOHPシートなどのシート状の画像形成媒体である。
【0019】
図1に示される印刷処理装置2は、電子写真方式によって前記シートにトナー像を形成する。なお、印刷処理装置2がインクジェット方式などの他の方式で前記シートに画像を形成する装置であることも考えられる。
【0020】
操作装置7aおよび表示装置7bは、マンマシンインターフェイス装置である。例えば、表示装置7bが、液晶パネルなどのパネルディスプレーを含み、操作装置7aが、タッチパネルおよび操作ボタンなどを含むことが考えられる。
【0021】
データ処理装置8は、画像読取装置1を通じて得られる画像データなどの各種のデータに関するデータ処理を実行する。さらに、データ処理装置8は、操作装置7aを通じて入力される入力情報および各種センサーの検出結果に基づいて、画像形成装置10が備える各種の電気機器を制御する。
【0022】
[画像読取装置1の構成]
図1に示されるように、画像読取装置1は、プラテンガラス13、コンタクトガラス13a、イメージセンサーユニット110、可動支持装置11およびプラテンカバー12などを備える。プラテンカバー12には、ADF(Auto Document Feeder)14が組み込まれている。
【0023】
原稿9は、プラテンガラス13上に載置されるか、或いはADF14によって搬送される。原稿9は、画像の読み取り対象物である。プラテンカバー12は、プラテンガラス13上を覆う位置と解放する開位置との間で回動可能に支持されている。
【0024】
以下の説明において、原稿9の幅方向のことを主走査方向D1と称する。また、原稿9に対し、画像読取用の光が走査される方向のことを副走査方向D2と称する。副走査方向D2は、主走査方向D1に直交する方向である。なお、
図1,2には、原稿9がプラテンガラス13上に載置される場合における副走査方向D2が示されている。
【0025】
ADF14は、原稿送出機構141および原稿搬送ローラー142を備える。原稿送出機構141は、原稿供給トレイ121に載置された原稿9を、原稿搬送路140へ送り出す。原稿搬送ローラー142は、原稿9を原稿搬送路140に沿って搬送し、さらに、原稿排出トレイ122上へ排出する。
【0026】
図2に示されるように、イメージセンサーユニット110は、光源112、レンズ113およびイメージセンサー114などを含む。光源112は、赤光源112R、緑光源112Gおよび青光源112Bを含む。
【0027】
本実施形態におけるイメージセンサーユニット110は、CISモジュールである。光源112、レンズ113およびイメージセンサー114は、主走査方向D1に沿って延びて形成されている。
【0028】
光源112は、原稿9における主走査方向D1に沿うライン領域へ向けて3色の光を出射する。前記3色の光は、赤色光、緑色光および青色光である。
【0029】
例えば、赤光源112R、緑光源112Gおよび青光源112Bが、それぞれ主走査方向D1に沿って配列された複数の発光ダイオードを含むLEDアレイであることが考えられる。
【0030】
原稿9がプラテンガラス13上に載置される場合、光源112は、プラテンガラス13の下方において、原稿9の前記ライン領域へ向けて前記3色の光を出射する。その際、前記3色の光は、プラテンガラス13を通じて原稿9へ照射される。そして、可動支持装置11が、イメージセンサーユニット110を副走査方向D2に沿って移動させる。これにより、光源112の出射光が、原稿9の表面に対し副走査方向D2に沿って走査する。
【0031】
一方、原稿9がADF14によって搬送される場合、光源112は、原稿搬送路140の途中の基準位置P0を通過する原稿9の前記ライン領域へ向けて前記3色の光を出射する。その際、前記3色の光は、コンタクトガラス13aを通じて原稿9へ照射される。
【0032】
即ち、原稿9がプラテンガラス13上に載置される場合、可動支持装置11が、光源112の出射光を原稿9の表面に対して副走査方向D2に沿って走査させる。また、原稿9がADF14によって搬送される場合、ADF14が、光源112の出射光を原稿9の表面に対して副走査方向D2に沿って走査させる。可動支持装置11およびADF14は、それぞれ走査装置の一例である。
【0033】
レンズ113は、原稿9の前記ライン領域で反射した光をイメージセンサー114の受光部へ集光する。イメージセンサー114は、原稿9の前記ライン領域で拡散反射した光の光量を検出するセンサーである。
【0034】
イメージセンサー114は、主走査方向D1に沿って並ぶ複数の受光素子を含む光電変換素子アレイである。一般に、前記受光素子各々は、光電変換素子であり、例えばCMOSイメージセンサーである。
【0035】
イメージセンサー114は、原稿9の前記ライン領域で散乱反射した光の光量を表すアナログのライン画像信号Ia0を出力する。ライン画像信号Ia0は、原稿9の前記ライン領域の画像であるライン画像の濃度を表す信号である。
【0036】
イメージセンサー114の調整が行われる場合、イメージセンサーユニット110は、基準部材15に対向する位置に位置決めされる。本実施形態において、基準部材15は、
基準位置P0に配置されている。
【0037】
基準部材15は、表面が均一な色の部材である。例えば、基準部材15の表面の色が白色または薄い黄色などであることが考えられる。なお、基準部材15の表面が基準部の一例である。
【0038】
イメージセンサー114の調整は、原稿9が基準位置P0に存在しない状態で行われる。この場合、光源112は、基準部材15に光を照射する。さらに、イメージセンサー114が、基準部材15の表面で散乱反射した光の光量を表すライン画像信号Ia0を出力する。
【0039】
即ち、原稿9の画像の読み取りが行われる場合、光源112は原稿9に光を照射する。一方、イメージセンサー114の調整が行われる場合、光源112は基準部材15に光を照射する。
【0040】
なお、もう1つのイメージセンサーユニット110が、原稿搬送路140に沿って搬送される原稿9の裏面に対向する位置に固定されていることも考えられる。この場合、もう1つの基準部材15は、固定されたイメージセンサーユニット110に対向する位置に配置されている。この場合、複数の原稿搬送ローラー142のうちの1つが基準部材15を兼ねることも考えられる。
【0041】
図3に示されるように、イメージセンサー114は、主走査方向D1において複数のチャネルに区分されている。
図3において、イメージセンサーユニット110が仮想線(二点鎖線)で示されている。
【0042】
そして、イメージセンサー114が出力するライン画像信号Ia0は、前記複数のチャネルに対応する複数のチャネル画像信号Iaからなる。イメージセンサー114は、複数のチャネル画像信号Ia(1)〜Ia(N)を並行して出力する。
【0043】
即ち、イメージセンサー114は、原稿9または基準部材15での反射光を受光する複数の受光素子を有する。前記複数の受光素子は、主走査方向D1に沿って並び前記複数のチャネルに区分されている。
【0044】
イメージセンサー114は、それぞれ前記複数の受光素子により検出された光量を表す複数のチャネル画像信号Ia(1)〜Ia(N)を並行して出力する。チャネル画像信号Ia(1)〜Ia(N)各々は、アナログの画像信号である。
【0045】
図3において、チャネル画像信号Ia(1)〜Ia(N)における添え字(1)〜(N)は、チャネル番号を表し、Nはチャネル数である。例えば、チャネル数Nが10個を超えていることが考えられる。
【0046】
図3に示されるように、データ処理装置8は、イメージセンサー114から出力されるライン画像信号Ia0に対する各種の信号処理も実行する。例えば、データ処理装置8は、イメージセンサー114が出力するライン画像信号Ia0に対して予め定められた信号処理を施すAFE(Analog Front End)81、データ連結部82および調整部83などを備える。
【0047】
AFE81、データ連結部82および調整部83は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの電子回路によって実現される。また、データ連結部82が、MPU(Micro Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサーによって実現されることも考えられる。
【0048】
AFE81は、複数のチャネル画像信号Ia(1)〜Ia(N)をそれぞれデジタルの複数のチャネル画像データId(1)〜Id(N)へ変換する。AFE81は、アナログ信号をデジタルデータへ変換する過程において、複数のチャネル画像信号Ia(1)〜Ia(N)にオフセット調整を施し、さらにそのオフセット調整が施された信号を増幅する。
【0049】
さらに、AFE81は、増幅された信号をデジタル変換することによって複数のチャネル画像データId(1)〜Id(N)を生成する。
図3において、チャネル画像データId(1)〜Id(N)における添え字(1)〜(N)は、チャネル番号を表す。
【0050】
前記オフセット調整は、複数のチャネル画像信号Ia(1)〜Ia(N)に予め調整される調整信号Sa0を加算する処理である。調整信号Sa0のレベルは、後述する調整部83によって予め調整される。
【0051】
なお、前記オフセット調整は、調整信号Sa0のレベルに応じてチャネル画像信号Ia各々に対して施されるレベル調整の一例である。
【0052】
複数のチャネル画像データId(1)〜Id(N)は、前記複数の受光素子に対応する主走査方向D1の1ライン分の複数の画素データからなる。チャネル画像信号Ia(1)〜Ia(N)各々は、前記チャネル毎の画像信号である。
【0053】
以上に示されるように、AFE81は、予め調整される調整信号Sa0のレベルに応じて複数のチャネル画像信号Ia(1)〜Ia(N)に対して前記オフセット調整を施しつつ、前記オフセット調整が施された信号を前記複数の画素データへ変換する。AFE81は、変換装置の一例である。
【0054】
データ連結部82は、複数のチャネル画像データIdを連結することによってライン画像データId0を生成する。なお、ライン画像データId0は、前記1ライン分の複数の画素データである。
【0055】
調整部83は、光源112が消灯しているときに得られるライン画像データId0の代表値に応じて調整信号Sa0のレベルを調整する。具体的には、調整部83は、調整前のライン画像データId0の代表値と予め定められた基準値との差に応じて、調整信号Sa0のレベルを設定する。
【0056】
例えば、調整部83は、調整前のライン画像データId0の最小値を前記基準値に一致させる方向へ調整信号Sa0のレベルを調整する。そして、調整部83は、調整後の調整信号Sa0をAFE81へ供給する。
【0057】
画像読取装置1がモノクロ画像読取処理を実行する場合、赤光源112R、緑光源112Gおよび青光源112Bの全てが継続して点灯する。これにより、白色光が原稿9または基準部材15の前記ライン領域に照射される。
【0058】
一方、画像読取装置1がカラー画像読取処理を実行する場合、赤光源112R、緑光源112Gおよび青光源112Bが、予め定められた順番で順次点灯する。これにより、複数の色の光が、原稿9または基準部材15の前記ライン領域に順番に照射される。
【0059】
データ処理装置8は、さらに発光制御部86、モーター制御部87、CPU(Central Processing Unit)8a、RAM(Random Access Memory)8bおよび二次記憶装置8cなども備える。
【0060】
発光制御部86は、光源112の点灯および消灯を制御する。モーター制御部87は、第1モーター11mおよび第2モーター14mなどを制御する。第1モーター11mは、可動支持装置11の動力源である。第2モーター14mは、ADF14の動力源である。即ち、モーター制御部87は、可動支持装置11およびADF14を制御する。
【0061】
CPU8aは、画像形成装置10が備える機器を制御する。例えば、CPU8aは、AFE81、イメージセンサー114、発光制御部86およびモーター制御部87に対し、それぞれの処理を開始させる制御信号を出力する。
【0062】
さらに、CPU8aは、ユーザーによる操作装置7aに対する操作内容を取得し、表示装置7bを制御する。例えば、CPU8aは、表示装置7bにメニュー画面またはメッセージを表示させることが可能である。
【0063】
二次記憶装置8cは、コンピューター読み取り可能な不揮発性の記憶装置である。二次記憶装置8cは、プログラムおよび各種のデータを記憶可能である。例えば、フラッシュメモリーまたはハードディスクドライブの一方または両方が、二次記憶装置8cとして採用される。
【0064】
RAM8bは、CPU8aが実行するプログラムおよびCPU8aが前記プログラムを実行する過程で出力および参照するデータを一次記憶する揮発性の記憶装置である。RAM8bは、二次記憶装置8cよりも高速なデータアクセスが可能な記憶装置である。
【0066】
印刷処理装置2は、画像読取装置1において光源112が原稿9に光を照射しているときに得られる前記複数の画素データに基づく画像をシートに形成可能である。
【0067】
図1に示されるように、印刷処理装置2は、シート搬送部3および画像形成部4を備える。シート搬送部3は、前記シートをシート収容部20からシート搬送路30へ送り出し、さらに前記シートをシート搬送路30に沿って搬送する。また、シート搬送部3は、画像形成後の前記シートをシート搬送路30から排出トレイ22上へ排出する。
【0068】
図1に示される画像形成部4は、電子写真方式で前記シートに画像を形成する装置である。そのため、画像形成部4は、作像ユニット4x、レーザースキャニングユニット40、転写装置44および定着装置46を備える。
【0069】
作像ユニット4xにおいて、ドラム状の感光体41が回転し、帯電装置42が感光体41の表面を一様に帯電させる。
【0070】
さらに、レーザースキャニングユニット40が帯電した感光体41の表面に静電潜像を書き込む。例えば、レーザースキャニングユニット40は、前記複数の画素データに対応する前記静電潜像を感光体41の表面に書き込む。
【0071】
また、作像ユニット4xの現像装置43が、前記静電潜像をトナー像へ現像する。転写装置44は、感光体41の表面の前記トナー像を前記シートに転写する。また、作像ユニット4xのドラムクリーニング装置45が、感光体41の表面に残存するトナーを除去する。
【0072】
定着装置46は、前記シート上の前記トナー像を加熱および加圧することにより、前記トナー像を前記シートに定着させる。
【0073】
図1に示される印刷処理装置2は、タンデム式の画像形成部4を有するカラープリンターである。そのため、画像形成部4は、4つの作像ユニット4xを備え、転写装置44は、4つの一次転写装置441、中間転写ベルト440、二次転写装置442およびベルトクリーニング装置443を含む。
【0074】
4つの作像ユニット4xが、それぞれ感光体41、帯電装置42、現像装置43およびドラムクリーニング装置45を含む。中間転写ベルト440は、4つの感光体41の表面に接しつつ回転する。
【0075】
4つの作像ユニット4xは、それぞれシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの前記トナー像を感光体41の表面に形成する。4つの一次転写装置441は、それぞれ前記トナー像を、4つの感光体41から中間転写ベルト440へ転写する。これにより、4色の前記トナー像が中間転写ベルト440上に重畳され、カラーの前記トナー像が中間転写ベルト440上に形成される。
【0076】
二次転写装置442は、中間転写ベルト440上の前記トナー像を前記シートに転写する。ベルトクリーニング装置443は、中間転写ベルト440に残存するトナーを除去する。なお、画像形成部4がインクジェット方式などの他の方式の装置であることも考えられる。
【0077】
ところで、イメージセンサー114において、前記複数の受光素子が、複数のチャネルに区分されている。一般に、前記CISモジュールにおける前記複数の受光素子は、前記複数のチャネルに区分されている。この場合、イメージセンサー114は、前記チャネル毎の画像信号を出力する。
【0078】
イメージセンサー114の異常は、前記チャネルの範囲毎に生じ得る。しかしながら、イメージセンサー114の異常の有無の判定が、前記チャネルの範囲毎に行われると、前記判定に時間がかかる。イメージセンサーの異常の有無の判定に時間がかかると、画像読取装置1の処理の開始が遅延してしまう。
【0079】
さらに、画像読取装置1において、前記装置状態をイメージセンサー114または光源112自体が正常に機能していない異常状態と、光源112に異物が付着しているなどの不良状態とを区別して判定できることが望ましい。
【0080】
画像読取装置1において、データ処理装置8は、後述する異常判定処理を実行する。これにより、画像読取装置1は、イメージセンサー114の前記複数の受光素子が前記複数のチャネルに区分されている場合に、画像の読み取り開始の遅延を防止しつつ、前記チャネル毎に装置の異常状態と不良状態とを区別して判定できる。
【0081】
データ処理装置8は、さらに異常判定部84および主画像処理部85を備える。CPU8a、異常判定部84および発光制御部86は、イメージセンサー114および光源112の状態を判定する前記異常判定処理を実行する。
【0082】
主画像処理部85は、ライン画像データId0に対する各種の補正処理およびその他の画像処理を実行する。
【0083】
異常判定部84および主画像処理部85は、例えばASICなどの電子回路によって実現される。また、異常判定部84および主画像処理部85が、MPUまたはDSPなどのプロセッサーによって実現されることも考えられる。
【0084】
例えば、CPU8aは、操作装置7aに対して前記読取処理の開始操作が行われたときに、前記読取処理が開始される前に、異常判定部84および発光制御部86とともに前記異常判定処理を実行する。
【0085】
前記異常判定処理は、イメージセンサーユニット110が可動支持装置11によって基準位置P0に位置決めされた状態で開始される。
【0086】
[異常判定処理]
次に、
図4に示されるフローチャートおよび
図5に示されるライン画像データId0の分布を参照しつつ、前記異常判定処理の手順の一例について説明する。
【0087】
図4に示されるS1,S2,…は、前記異常判定処理における複数の工程の識別符号を表す。また、
図5に示されるグラフの縦軸のVp0は、ライン画像データId0における前記複数の画素データの値を表す。
【0088】
<工程S1>
前記異常判定処理において、まず、CPU8aが、イメージセンサー114に暗読取処理を実行させる。前記暗読取処理は、発光制御部86が光源112を消灯させている状態における、イメージセンサー114による画像の読取処理である。
【0089】
工程S1において、光源112が消灯しているときの1ライン分の前記複数の画素データからなるライン画像データId0が得られる。
【0090】
以下の説明において、工程S1で得られるライン画像データId0における1ライン分の前記複数の画素データのことを複数の第1画素データDp1と称する(
図5参照)。
【0091】
<工程S2>
続いて、調整部83が、複数の第1画素データDp1の代表値に応じて調整信号Sa0のレベルを調整する。工程S2の処理を実行する調整部83が調整装置の一例である。
【0092】
前述したように、調整部83は、調整前の複数の第1画素データDp1の最小値Vp00を予め定められた基準値Vp01に一致させる方向へ調整信号Sa0のレベルを調整する(
図5参照)。
【0093】
例えば、最小値Vp00と基準値Vp01との差と、調整信号Sa0のレベルとの対応関係を表すルックアップテーブルまたは計算式が予め定められていることが考えられる。この場合、調整部83は、最小値Vp00と基準値Vp01との差を前記ルックアップテーブルまたは前記計算式に適用することにより、調整信号Sa0のレベルを設定する。
【0094】
<工程S3>
続いて、CPU8aが、イメージセンサー114に前記暗読取処理を実行させる。
【0095】
工程S3において、調整信号Sa0のレベルが調整された後に光源112が消灯しているときの1ライン分の前記複数の画素データからなるライン画像データId0が得られる。
【0096】
以下の説明において、工程S3で得られるライン画像データId0における1ライン分の前記複数の画素データのことを複数の第2画素データDp2と称する(
図5参照)。
【0097】
<工程S4>
続いて、異常判定部84が、複数の第2画素データDp2のうち最大の光量を表す第1代表画素データを特定する。
【0098】
図5において、前記第1代表画素データの値がVH1である。なお、工程S4の処理を実行する異常判定部84が第1代表画素特定装置の一例である。
【0099】
<工程S5>
次に、発光制御部86が、光源112を点灯させる。本実施形態において、発光制御部86は、赤光源112R、緑光源112Gおよび青光源112Bを順次点灯させる。
【0100】
<工程S6>
さらに、CPU8aが、イメージセンサー114に基準読取処理を実行させる。前記基準読取処理は、光源112が点灯しているときにおける、イメージセンサー114による基準部材15の読取処理である。
【0101】
本実施形態において、CPU8aは、赤光源112R、緑光源112Gおよび青光源112Bのそれぞれが点灯する毎に、イメージセンサー114に前記基準読取処理を実行させる。
【0102】
工程S6の処理により、光源112が基準部材15に光を照射しているときの1ライン分の前記複数の画素データからなるライン画像データId0が得られる。具体的には、赤、緑および青の各色に対応するライン画像データId0が得られる。
【0103】
以下の説明において、工程S6で得られるライン画像データId0における1ライン分の前記複数の画素データのことを複数の第3画素データDp3と称する(
図5参照)。複数の第3画素データDp3は、工程S2で調整信号Sa0のレベルが調整された後に得られるデータである。
【0104】
<工程S7>
続いて、異常判定部84が、第1判定処理を実行する。工程S7の処理を実行する異常判定部84が第1判定装置の一例である。なお、この工程S7の処理は、赤、緑および青の各色に対応する複数の第3画素データDp3毎に実行される。
【0105】
前記第1判定処理は、複数の第3画素データDp3の全ての値が、予め定められた第1閾値SL1以上である場合に、装置状態が正常であると判定し、そうでない場合に前記装置状態が非正常であると判定する処理である。
【0106】
例えば、第1閾値SL1が、前記オフセット調整に用いられる基準値Vp01に予め定められた値ΔL0を加算した値であることが考えられる(
図5参照)。
【0107】
本実施形態において、ライン画像データId0における前記複数の画素データ各々は、その値が大きいほどイメージセンサー114による検出光量が大きいことを示す。従って、複数の第3画素データDp3各々の値が第1閾値SL1以上であることは、複数の第3画素データDp3各々が、第1閾値SL1に相当する光量以上を表すことを意味する。
【0108】
なお、前記複数の画素データ各々が、その値が小さいほどイメージセンサー114による検出光量が大きいことを示す場合は、上記と異なる第1閾値SL1が設定される。この場合、複数の第3画素データDp3各々の値が第1閾値SL1以下であることが、複数の第3画素データDp3各々が、第1閾値SL1に相当する光量以上を表すことを意味する。
【0109】
そして、異常判定部84は、前記装置状態が正常であると判定した場合に前記異常判定処理を終了させ、前記装置状態が非正常であると判定した場合に処理を工程S8へ移行させる。
【0110】
<工程S8>
工程S8において、異常判定部84が前記複数のチャネルから1つ以上の注目チャネルTC0を特定する処理を実行する(
図5参照)。工程S6の処理を実行する異常判定部84が、注目チャネル特定装置の一例である。
【0111】
注目チャネルTC0は、前記複数のチャネルのうち、複数の第3画素データDp3における第1閾値SL1に相当する光量を下回るデータが属するチャネルである。
図5に示される例では、第2チャネルおよび第5チャネルが注目チャネルTC0である。
【0112】
工程S8の処理は、赤、緑および青の各色に対応する複数の第3画素データDp3毎に実行される。
【0113】
以下の説明において、注目チャネルTC0のチャネル番号をiとする。なお、前述したように、工程S8の処理は、工程S7において前記装置状態が正常であると判定されない場合に実行される。
【0114】
<工程S9>
続いて、異常判定部84は、注目チャネルTC0毎に、複数の第3画素データDp3のうち注目チャネルTC0に属するデータにおける最小の光量を表す第2代表画素データを特定する。
【0115】
工程S9の処理は、赤、緑および青の各色に対応する複数の第3画素データDp3毎に実行される。
【0116】
図5において、前記第2チャネルにおける前記第2代表画素データの値がVL2(2)であり、前記第5チャネルにおける前記第2代表画素データの値がVL2(5)である。
【0117】
<工程S10>
さらに、異常判定部84は、注目チャネルTC0毎に、複数の第3画素データDp3のうち注目チャネルTC0に属するデータにおける最大の光量を表す第3代表画素データを特定する。
【0118】
工程S10の処理は、赤、緑および青の各色に対応する複数の第3画素データDp3毎に実行される。
【0119】
図5において、前記第2チャネルにおける前記第3代表画素データの値がVH2(2)であり、前記第5チャネルにおける前記第3代表画素データの値がVH2(5)である。
【0120】
なお、工程S9および工程S10の処理を実行する異常判定部84が、第2代表画素特定装置の一例である。
【0121】
<工程S11>
続いて、異常判定部84が、第2判定処理を実行する。工程S11の処理を実行する異常判定部84が第2判定装置の一例である。
【0122】
前記第2判定処理は、注目チャネルTC0毎に、前記第3代表画素データの値VH2(i)が第2閾値SL2または第3閾値SL3(i)の少なくとも一方以上である場合に前記装置状態が不良であると判定し、そうでない場合に前記装置状態が異常であると判定する処理である。
【0123】
工程S11の処理は、赤、緑および青の各色に対応する前記第3代表画素データ毎に実行される。
【0124】
第2閾値SL2は、全てのチャネルに共通に設定される。第2閾値SL2は、前記第1代表画素データを基準にして定まる値である。第2閾値SL2は、前記第1代表画素データよりも大きな光量に相当する値である。
【0125】
例えば、第2閾値SL2は、前記第1代表画素データの値VH1に予め定められた値ΔL1を加算した値である(
図5参照)。この場合、第2閾値SL2は、前記第1代表画素データの値VH1が次の(1)式に適用されることによって算出される。
【0127】
一方、第3閾値SL3(i)は、注目チャネルTC0毎に設定される。第3閾値SL3(i)は、前記第2代表画素データの値VL2(i)および前記第1代表画素データの値VH1を基準にして定まる値である。
【0128】
注目チャネルTC0毎に、第3閾値SL3(i)は、前記第2代表画素データよりも大きな光量に相当する値である。
【0129】
例えば、第3閾値SL3(i)は、前記第2代表画素データの値VL2(i)に、前記チャネル毎に予め定められた加算値ΔL2(i)を加算した値である(
図5参照)。この場合、第3閾値SL3(i)は、前記第2代表画素データの値VL2(i)が次の(2)式に適用されることによって算出される。
【0131】
加算値ΔL2(i)は、前記チャネル毎に予め定められた暗出力最大差ΔV(i)に予め定められた調整値α0が加算された値である。暗出力最大差ΔV(i)は、光源112が消灯しているときにイメージセンサー114の前記チャネル毎の出力値の最大のばらつきである。暗出力最大差ΔV(i)は、イメージセンサー114の仕様として既知の値である。この場合、加算値ΔL2(i)は、暗出力最大差ΔV(i)が次の(3)式に適用されることによって算出される。
【0133】
(3)式において、暗出力最大差ΔV(i)は注目チャネルTC0ごとの定数であり、調整値α0は全チャネルに共通の定数である。従って、(2)式および(3)式によって算出される第3閾値SL3(i)は、前記第2代表画素データに、前記チャネル毎に予め定められた値を加算した値である。
【0134】
本実施形態において、前記第3代表画素データの値VH2(i)が第2閾値SL2以上であることは、前記第3代表画素データが第2閾値SL2に相当する光量以上を表すことを意味する。
【0135】
同様に、前記第3代表画素データの値VH2(i)が第3閾値SL3(i)以上であることは、前記第3代表画素データが第3閾値SL3(i)に相当する光量以上を表すことを意味する。
【0136】
また、前記装置状態が前記異常であることは、イメージセンサー114または光源112自体が、注目チャネルTC0において正常に機能していない状態を意味する。
【0137】
一方、前記装置状態が前記不良であることは、イメージセンサー114または光源112における前記第3代表画素データに対応する部分に異物が付着している状態を意味する。この場合、前記異物が除去されれば、前記装置状態が前記正常に復旧する。
【0138】
図5に示される例において、前記第2チャネルの前記第3代表画素データの値VH2(2)は、第2閾値SL2および前記第2チャネルの第3閾値SL3(2)より小さい。この場合、異常判定部84は、前記第2チャネルの前記装置状態が前記異常であると判定する。
【0139】
また、
図5に示される例において、前記第5チャネルの前記第3代表画素データの値VH2(5)は、第2閾値SL2および前記第5チャネルの第3閾値SL3(5)より大きい。この場合、異常判定部84は、前記第5チャネルの前記装置状態が前記不良であると判定する。
【0140】
異常判定部84は、前記装置状態が前記不良であると判定した場合、処理を工程S12へ移行させ、前記装置状態が前記異常であると判定した場合、処理を工程S13へ移行させる。
【0141】
なお、前記装置状態の判定結果が注目チャネルTC0毎に異なる場合も考えられる。この場合、前記装置状態が前記不良であると判定された注目チャネルTC0について工程S12の処理が実行され、前記装置状態が前記異常であると判定された注目チャネルTC0について工程S13の処理が実行される。
【0142】
<工程S12>
工程S12において、CPU8aが、注目チャネルTC0における前記装置状態が前記不良である旨を表す第1通知を行う。例えば、CPU8aは、前記第1通知において、注目チャネルTC0において前記装置状態の前記不良が生じていることを示すメッセージを表示装置7bに表示させる。その後、CPU8aは、前記異常判定処理を終了させる。
【0143】
<工程S13>
工程S13において、CPU8aが、注目チャネルTC0における前記装置状態が前記異常である旨を表す第2通知を行う。例えば、CPU8aは、前記第2通知において、注目チャネルTC0において前記装置状態の前記異常が生じていることを示すメッセージを表示装置7bに表示させる。その後、CPU8aは、前記異常判定処理を終了させる。
【0144】
即ち、CPU8aは、前記装置状態が前記不良と判定された場合と前記異常と判定された場合とで異なる通知を行う。なお、工程S12,S13の処理を実行するCPU8aは通知装置の一例である。
【0145】
前記装置状態が前記正常であると判定された場合、前記異常判定処理の終了に続いて、CPU8a、発光制御部86およびモーター制御部87は、光源112、可動支持装置11およびイメージセンサー114に、原稿9についての前記読取処理を実行させる。
【0146】
一方、前記装置状態が前記不良または前記異常であると判定された場合、CPU8a、発光制御部86およびモーター制御部87は、光源112、可動支持装置11およびイメージセンサー114に、原稿9についての前記読取処理を実行させない。
【0147】
ユーザーは、前記第1通知または前記第2通知の内容をメンテナンス担当者へ伝える。これにより、前記メンテナンス担当者は、画像読取装置1を復旧させるための適切な処置を速やかに行うことができる。
【0148】
以上に示されるように、工程S7の前記第1判定処理は、前記チャネル毎のデータ処理が不要な簡易な処理である。即ち、異常判定部84が、前記装置状態が前記正常であると判定するまでの時間は極短時間である。
【0149】
従って、画像読取装置1は、イメージセンサー114の前記複数の受光素子が前記複数のチャネルに区分されている場合に、原稿9の画像の読み取り開始の遅延を防止することができる。
【0150】
さらに、画像読取装置1は、前記チャネル毎に前記装置状態が前記異常であるか前記不良であるかを区別して判定できる(工程S11)。このことは、画像読取装置1を速やかに復旧させることに寄与する。
【0151】
また、画像読取装置1の前記異常判定処理において、光源112が点灯した状態での前記基準読取処理(S6)が実行された後に、光源112が消灯した状態での前記暗読取処理は不要である。
【0152】
従って、異常判定部84が、前記前記装置状態が前記不良または前記異常であると判定するまでの時間も比較的短時間で澄む。