(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸素バリア性皮膜が、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、及び、金属アルコキシド或いは金属アルコキシドの加水分解物の反応生成物の少なくとも1つと、水溶性高分子とを含む皮膜である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
前記酸素バリア性皮膜が、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、及び、シランカップリング剤或いはシランカップリング剤の加水分解物の反応生成物の少なくとも1つを含む、請求項9に記載のガスバリア性フィルム。
前記酸素バリア性皮膜が、ポリカルボン酸系重合体(A)のカルボキシ基と多価金属化合物(B)との反応生成物であるカルボン酸の多価金属塩を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のガスバリア性フィルムについて、実施形態を示して説明する。
【0029】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るガスバリア性フィルム1の模式断面図である。
図1における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
【0030】
ガスバリア性フィルム1は、樹脂基材10と下地層30と無機酸化物層40と酸素バリア性皮膜20とを有する。なお、下地層30および無機酸化物層40のいずれか一方は無くても構わない。
【0031】
下地層30は、樹脂基材10の一方の面12に接して積層され、下地層30の樹脂基材10と接している面の反対の面に無機酸化物層40が積層されている。無機酸化物層40は、下地層30に接して積層され、無機酸化物層40の下地層30と接している面の反対面に酸素バリア性皮膜20が接して位置している。なお、下地層30が設けられない場合、無機酸化物層40が樹脂基材10の一方の面12上に積層される。また、無機酸化物層40が設けられない場合、酸素バリア性被膜20が下地層30上に積層される。
【0032】
<樹脂基材>
樹脂基材10は、樹脂を含む。樹脂基材10を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、炭素数2〜10のオレフィンの重合体、プロピレン−エチレン共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族系ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド等の芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体等のアクリル系樹脂;セロファン;ポリカーボネート、ポリイミド等のエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
樹脂基材10としては、単一の樹脂で構成された単層フィルム、複数の樹脂を用いた単層又は積層フィルム等が挙げられる。また、上記の樹脂を他の基材(金属、木材、紙、セラミックス等)に積層した積層基材を用いてもよい。樹脂基材10は、単層でもよく、2層以上であってもよい。樹脂基材10としては、ポリオレフィン系樹脂フィルム(特に、ポリプロピレンフィルム等)、ポリエステル系樹脂フィルム(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム)、ポリアミド系樹脂フィルム(特に、ナイロンフィルム)等が好ましい。
【0034】
樹脂基材10は、未延伸フィルムであってもよく、一軸又は二軸延伸配向フィルムであってもよい。樹脂基材10としては、水蒸気バリア性に優れる観点から、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)が特に好ましい。OPPは、ホモポリマー、ランダムコポリマー及びブロックコポリマーから選ばれる少なくとも一種のポリマーがフィルム状に加工されたものであってもよい。ホモポリマーはプロピレン単体のみからなるポリプロピレンである。ランダムコポリマーは、主モノマーであるプロピレンと、プロピレンとは異なる少量のコモノマーがランダムに共重合し、均質な相をなすポリプロピレンである。ブロックコポリマーは、主モノマーであるプロピレンと上記コモノマーがブロック的に共重合したり、ゴム状に重合したりすることによって不均質な相を形成するポリプロピレンである。樹脂基材10がOPPの場合、OPPは1層でもよく2層以上でもよい。
【0035】
樹脂基材10の一方の面12は、下地層30や無機酸化物層40との密着性を向上させるために、薬品処理、溶剤処理、コロナ処理、低温プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0036】
樹脂基材10は、フィラー、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
樹脂基材10がアンチブロッキング剤(以下、「AB剤」ともいう。)を含有する場合、樹脂基材10の一方の面12には、AB剤に由来する凹凸が形成される。樹脂基材10は、AB剤を含有することで樹脂基材10の表面に凸を付与し、上記フィルムのブロッキングの発生を抑制できる。すなわち、樹脂基材10が、AB剤を含有することで上記フィルムのブロッキング耐性を高められる。このため、上記フィルムを巻き取りやすくでき、上記フィルムの加工特性を向上できる。したがって、樹脂基材10は、AB剤を含有することが好ましい。一方で、樹脂基材10の一方の面12に大きな凸部が形成されると、その上に形成される下地層30及び無機酸化物層40及び酸素バリア性皮膜20に、ガス透過の経路となる欠陥が生じやすくなる。このため、ガスバリア性フィルム1の酸素バリア性が低下するおそれが生じる。
【0038】
樹脂基材10がAB剤を含有する場合、AB剤は樹脂基材10中に分散している。樹脂基材10の一方の面12又は他方の面14には、それぞれ局所的にAB剤に由来する複数の突起部が存在する。一方の面12及び他方の面14において、AB剤は露出していてもよいし、樹脂で覆われていてもよい。
【0039】
AB剤は、固体粒子であり、有機系粒子、無機系粒子等が挙げられる。有機系粒子としては、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリスチレン粒子、ポリアミド粒子等が挙げられる。これら有機系粒子は、例えば、乳化重合や懸濁重合等により得られる。無機系粒子としては、シリカ粒子、ゼオライト、タルク、カオリナイト、長石等が挙げられる。これらのAB剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
ガスバリア性フィルム1の外観、透明性、AB剤の脱落可能性、アンチブロッキング性能を考慮すると、AB剤の平均粒径は、例えば、0.1〜5μmが好ましい。AB剤の平均粒径は、コールター法により測定される重量平均径である。
【0041】
樹脂基材10がAB剤を含有する場合、AB剤の含有量は、例えば、樹脂基材10を構成する樹脂100質量部に対して、0.05〜0.5質量部が好ましい。AB剤の含有量が上記下限値以上であると、樹脂基材10の原料となるフィルムの加工特性を高めやすい。AB剤の含有量が上記上限値以下であると、ガスバリア性フィルム1の酸素バリア性の低下を抑制しやすい。
【0042】
樹脂基材10の一方の面12の黒色面積率は0.15%以下であり、0.12%以下がより好ましく、0.10%以下がさらに好ましい。黒色面積率が上記上限値以下であると、ガスバリア性フィルム1の酸素バリア性をより向上しやすい。加えて、黒色面積率が上記上限値以下であると、ガスバリア性フィルム1の印刷適性を良好にしやすい。黒色面積率の下限値は特に限定されず0%以上である。
【0043】
ここで、「印刷適性を良好にする」とは、ガスバリア性フィルムの酸素バリア性皮膜20上にグラビア印刷を施した際に、ハイライト部(網点面積率の低い印刷部)でのインキ抜け(ドット抜けと呼ぶこともある)を抑制することをいう。黒色面積率は、例えば、樹脂基材10に含まれるAB剤の材質、平均粒径及び含有量、および樹脂基材10の一方の面12を形成する樹脂の特性やフィルムの製造条件等により調整できる。
【0044】
樹脂基材10の表面の輝度を2値化処理して黒色に見える箇所(黒点)を電子顕微鏡で観察すると、突起物が存在する。黒点の大きさが大きいほど突起物の高さも相対的に高い傾向にあり、特に100μm
2以上のサイズの黒点(突起物)の存在箇所において酸素バリア性皮膜の塗膜欠陥や印刷のインキ抜けが発生しやすくなっていた。すなわち、黒色面積率が小さいほど、樹脂基材10の一方の面12に、酸素バリア性や印刷適性に悪影響を及ぼす突起物が少なく、ガスバリア性フィルム1の酸素バリア性をより向上し、かつ、印刷適性を良好にすることができる。
【0045】
本明細書における黒色面積率は、下記測定方法により測定できる。
<測定方法>
樹脂基材10の一方の面12の1281μm四方の任意の領域を光学顕微鏡で撮影して、1024×1024pixelの撮影画像を取得する。撮影画像の一例を
図2に示す。
【0046】
図2は、樹脂基材10の一方の面12を光学顕微鏡で撮影した撮影画像である。
図2において、100は平坦部を表し、110は突起物を表す。突起物110の例としては、異物、AB剤、樹脂の溶け残り等が挙げられる。
図2に示すように、平坦部100は灰色に、突起物110は黒色に見える。平坦部100の輝度は、後述する輝度の最頻値に相当する。
【0047】
次に、画像解析ソフトを用いて、取得した1024×1024pixelの撮影画像を256階調のモノクロ画像に変換する。変換したモノクロ画像における輝度の分布をプロットして、ヒストグラムを作成する。ヒストグラムの一例を
図3に示す。
【0048】
図3において、横軸は、256階調のモノクロ画像に変換した輝度を表す。モノクロ画像における輝度は、0〜255の整数である。縦軸は、輝度の頻度を表す。
図3において、分布する輝度の最小値は26で、最大値は255である。輝度の最頻値は、モノクロ画像において最も多く分布する輝度の値である。
図3におけるPが輝度の最頻値を表す。
図3では、P=160である。
【0049】
次に、輝度の最頻値から30を減じた値を閾値とし、閾値未満を黒、閾値以上を白としてモノクロ画像における輝度を2値化する。
図3のモノクロ画像において、白と黒の境となる閾値は、輝度の最頻値から30を減じた値(P−30)である。
図3では、閾値は、130である。すなわち、
図3では、輝度が130未満を「黒」、輝度が130以上を「白」として、2値化処理する。
【0050】
黒色面積率の値の精度を高める観点から、取得画像の輝度ヒストグラムはシャープな形状であることが好ましい。ここで、「シャープな形状」であることは、例えば、ヒストグラムの最頻値Pにおけるピーク高さHの半分の高さ(H/2)におけるヒストグラムの幅(以下、「半値幅」ともいう。)Wの大きさにより判断できる。半値幅Wは、例えば、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。半値幅Wが上記上限値以下であると、ヒストグラムがシャープな形状であり、黒色面積率の値の精度を高められる。半値幅Wの下限値は特に限定されないが、実質的には、2以上である。
【0051】
前記の2値化した1281×1281μm(1024×1024pixel)の画像から、100μm
2以上のサイズの黒色領域の総面積の割合を黒色面積率とする。また、黒色面積率は、任意の3箇所の領域において求められる値の算術平均値とする。
【0052】
光学顕微鏡としては、オリンパス株式会社製の光学顕微鏡「OLS−4000」が好ましい。画像解析ソフトとしては、Scion社の「Scion ImageJ」が好ましい。
【0053】
画像取得条件について説明する。
(画像取得条件)
黒色面積率を求めたい樹脂基材10のコーティング剤を塗工する側の面(一方の面12)を上にして、黒色フィルム両面テープ(寺岡製作所、7694)を使用してスライドガラス上に樹脂基材10を貼り付ける。光学顕微鏡(オリンパス社製、OLS−4000)を使用して、倍率10倍の対物レンズ(MPFLN10)を使用し、スライドガラス上の樹脂基材10の任意の3箇所から範囲1281μm×1281μmの画像を、1024×1024pixelの画像として取得する。画像撮影するときの光量は任意であるが、256階調で画像輝度の最頻値が80〜200の範囲に収まるように光量を調整することが好ましい。
【0054】
画像解析条件は下記の通りとする。
(画像解析条件)
・カラー情報破棄:8bit。
・2値化の閾値:輝度の最頻値から30を減じた値。
・スケール設定:Set Scale Distance in pixel:1024、 Known distance:1281、Unit of length:μm
・面積測定:Analyze Particles Size:100−Infinity(μm
2)、Include Holesにチェック。
上記の画像解析条件のもと、樹脂基材10の任意の3箇所から取得した撮影画像についてそれぞれ%Area値を算出し、これらの%Area値の算術平均値を黒色面積率とする。
【0055】
本明細書における黒色面積率は、樹脂基材10の一方の面12を平面で観察することにより算出される。このため、従来の表面粗さの測定と比べて、線ではなく面で表面の状態を観察できる。
【0056】
従来の表面粗さの数値は、測定する方法や範囲によって変化する。測定面積が狭いと、数の少ない突起を測定しないため、粗さを小さく見積もってしまうおそれがある。また、中心線平均粗さのように、ある長さの直線範囲で粗さを測定する場合でも、大きな突起が測定された場合には粗さを大きく見積もることになるが、そうでない場合には、やはり粗さを小さく見積もってしまう。
【0057】
本明細書のように、黒色面積率で樹脂基材の表面の状態を規定することで、樹脂基材の表面の状態のばらつきを小さくして樹脂基材の表面の状態を評価できる。このため、酸素バリア性のばらつきを抑制でき、ガスバリア性フィルム1の酸素バリア性をより向上しやすくできる。
【0058】
光学顕微鏡画像の2値化処理による黒色面積率の管理は、測定範囲が広く、かつ簡便な手法で突起物を見つけることが出来るため、酸素バリア性及び印刷適性の管理手法に好適である。
【0059】
樹脂基材10の厚みは、特に限定されるものではなく、包装材料としての適性や他の皮膜の積層適性を考慮しつつ、価格や用途によって適宜選択される。樹脂基材10の厚みは、実用的には3μm〜200μmが好ましく、5μm〜120μmがより好ましく、6μm〜100μmがさらに好ましく、10μm〜30μmが特に好ましい。
【0060】
<下地層>
下地層30は、樹脂基材10と、無機酸化物層40または酸素バリア性皮膜20との間に設けられる。
【0061】
下地層30は、有機高分子を主成分として含有する層であり、プライマー層と呼ばれることもある。下地層30を設けることによって、無機酸化物層40または酸素バリア性皮膜20の成膜性や密着強度を向上させることができる。
【0062】
下地層30における有機高分子の含有量は、例えば70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。有機高分子としては、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられ、樹脂基材10と無機酸化物層40或いは酸素バリア性皮膜20との密着強度の耐熱水性を考慮すると、ポリアクリル系樹脂、ポリオール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれら有機高分子の反応生成物の少なくとも1つを含むことが好ましい。また下地層30は、シランカップリング剤や有機チタネートまたは変性シリコーンオイルを含んでいてもよい。
【0063】
有機高分子としてさらに好ましくは、高分子末端に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール類とイソシアネート化合物との反応により生成したウレタン結合を有する有機高分子、および/または高分子末端に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール類とシランカップリング剤またはその加水分解物のような有機シラン化合物との反応生成物を含む有機高分子が挙げられる。
【0064】
ポリオール類としては、例えば、アクリルポリオール、ポリビニルアセタール、ポリスチルポリオール、及びポリウレタンポリオール等から選択される少なくとも一種が挙げられる。アクリルポリオールは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるものであってもよく、アクリル酸誘導体モノマーとその他のモノマーとを共重合させて得られるものであってもよい。アクリル酸誘導体モノマーとしては、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、及びヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。アクリル酸誘導体モノマーと共重合させるモノマーとしては、スチレン等が挙げられる。
【0065】
イソシアネート化合物は、ポリオールと反応して生じるウレタン結合により樹脂基材10と無機酸化物層40または酸素バリア性皮膜20との密着性を高める作用を有する。すなわち、イソシアネート化合物は、架橋剤又は硬化剤として機能する。イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)などのモノマー類、これらの重合体、及びこれらの誘導体が挙げられる。上述のイソシアネート化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0066】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。有機シラン化合物は、これらのシランカップリング剤の加水分解物であってもよい。有機シラン化合物は、上述のシランカップリング剤及びその加水分解物の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0067】
下地層30は、有機溶媒中に上述の成分を任意の割合で配合して混合液を調製し、樹脂基材10の一方の面12上に調製した混合液を用いて形成することができる。混合液は、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤;フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤;レベリング剤;流動調整剤;触媒;架橋反応促進剤;充填剤等を含有してもよい。
【0068】
混合液は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、又はシルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式、或いは、ロールコート、ナイフエッジコート、又はグラビアコートなどの周知の塗布方式を用いて樹脂基材10の上にコーティングすることができる。コーティング後、例えば50〜200℃に加熱し、乾燥及び/又は硬化することによって、下地層30を形成することができる。
【0069】
下地層30の厚さは、特に制限されず、例えば、0.005〜5μmであってもよい。厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。
下地層30の厚みとしては、0.01〜1μmが好ましく、0.01〜0.5μmがより好ましい。下地層30の厚みが0.01μm以上であれば、樹脂基材10と無機酸化物層40または酸素バリア性皮膜20との十分な密着強度が得られ、酸素バリア性も良好となる。下地層30の厚みが1μm以下であれば、均一な塗工面を形成することが容易であり、また、乾燥負荷や製造コストを抑制できる。
【0070】
<無機酸化物層>
無機酸化物層40は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム等が挙げられ、特に酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素が、生産性に優れ、かつ耐熱、耐湿熱での酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れることから好ましい。なお無機酸化物層40は、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0071】
無機酸化物層40の厚みは、1〜200nmが好ましく、厚みが1nm以上であれば、優れた酸素バリア性と水蒸気バリア性が得られ、厚みが200nm以下であれば、製造コストを低く抑えられるとともに、折り曲げや引っ張りなどの外力による亀裂が生じ難く、バリア性の劣化を抑えられる。
【0072】
無機酸化物層40は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はプラズマ気相成長法(CVD)等の公知の成膜方法によって形成することができる。
【0073】
<酸素バリア性皮膜>
酸素バリア性皮膜20は、ウェットコート法により形成される酸素バリア性皮膜として公知のものであってよい。酸素バリア性皮膜20は、下地層30または無機酸化物層40の上にウェットコート法によりコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。なお、塗膜は、湿潤膜であり、皮膜は、乾燥膜である。
【0074】
酸素バリア性皮膜20としては、金属アルコキシド及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つと、水溶性高分子を含む皮膜(有機無機複合皮膜)が好ましい。さらにシランカップリング剤及びその加水分解物の少なくとも一方をさらに含む皮膜が好ましい。
【0075】
有機無機複合膜に含まれる金属アルコキシド及びその加水分解物としては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC
2H
5)
4]及びトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OC
3H
7)
3]等の一般式M(OR)nで表されるもの、並びにその加水分解物が挙げられる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0076】
有機無機複合膜における、金属アルコキシド及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量は、例えば、40〜70質量%である。酸素透過度を一層低減する観点から、有機無機複合膜における、金属アルコキシド及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量の下限は50質量%であってもよい。同様の観点から、有機無機複合膜における、金属アルコキシド及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量の上限は65質量%であってもよい。
【0077】
有機無機複合膜に含まれる水溶性高分子は、特に限定されず、例えばポリビニルアルコール系、デンプン・メチルセルロース・カルボキシメチルセルロース等の多糖類、及びアクリルポリオール系等の高分子が挙げられる。酸素ガスバリア性を一層向上させる観点から、水溶性高分子は、ポリビニルアルコール系の高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子の数平均分子量は、例えば、40000〜180000である。
【0078】
ポリビニルアルコール系の水溶性高分子は、例えばポリ酢酸ビニルをけん化(部分けん化も含む)して得ることができる。この水溶性高分子は、酢酸基が数十%残存しているものであってもよく、酢酸基が数%しか残存していないものであってもよい。
【0079】
有機無機複合膜における、水溶性高分子の含有量は、例えば、15〜50質量%である。有機無機複合膜における、水溶性高分子の含有量の下限は、酸素透過度を一層低減する観点から20質量%であってもよい。有機無機複合膜における、水溶性高分子の含有量の上限は、酸素透過度を一層低減する観点から45質量%であってもよい。
【0080】
有機無機複合膜に含まれるシランカップリング剤及びその加水分解物としては、有機官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。そのようなシランカップリング剤及びその加水分解物としては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプリピルメチルジメトキシシラン、及びこれらの加水分解物が挙げられる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0081】
シランカップリング剤及びその加水分解物の少なくとも一方は、有機官能基として、エポキシ基を有するものを用いることが好ましい。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、及びβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤及びその加水分解物は、ビニル基、アミノ基、メタクリル基又はウレイル基のように、エポキシ基とは異なる有機官能基を有していてもよい。
【0082】
有機官能基を有するシランカップリング剤及びその加水分解物は、その有機官能基と水溶性高分子の水酸基との相互作用によって、酸素バリア性皮膜20の酸素バリア性と、下地層30または無機酸化物層40との接着性を一層向上することができる。特に、シランカップリング剤及びその加水分解物のエポキシ基とポリビニルアルコールの水酸基とは、相互作用によって、酸素バリア性と下地層30または無機酸化物層40との接着性に特に優れる酸素バリア性皮膜20を形成することができる。
【0083】
有機無機複合膜における、シランカップリング剤及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量は、例えば、1〜15質量%である。酸素透過度を一層低減する観点から、有機無機複合膜における、シランカップリング剤及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量の下限は2質量%であってもよい。同様の観点から、有機無機複合膜における、シランカップリング剤及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量の上限は12質量%であってもよい。
【0084】
有機無機複合膜には、層状構造を有する結晶性の無機層状化合物を含んでいても構わない。無機層状化合物としては、例えば、カオリナイト族、スメクタイト族、又はマイカ族等に代表される粘土鉱物が挙げられる。これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機層状化合物の粒径は、例えば0.1〜10μmである。無機層状化合物のアスペスト比は、例えば50〜5000である。
【0085】
無機層状化合物としては、層状構造の層間に水溶性高分子が入り込むこと(インターカレーション)によって、優れた酸素バリア性と密着強度を有する皮膜を形成できることから、スメクタイト族の粘土鉱物が好ましい。スメクタイト族の粘土鉱物の具体例としては、モンモリトロナイト、ヘクトライト、及びサポナイト、水膨潤性合成雲母等が挙げられる。
【0086】
また、酸素バリア性皮膜20の別の好ましい例として、ポリカルボン酸系重合体(A)のカルボキシ基と多価金属化合物(B)との反応生成物であるカルボン酸の多価金属塩を含む皮膜(ポリカルボン酸の多価金属塩皮膜)が挙げられる。この場合、ポリカルボン酸系重合体(A)と多価金属化合物(B)を混合したコーティング剤を塗布、加熱乾燥することで形成されるポリカルボン酸の多価金属塩皮膜であっても、ポリカルボン酸系重合体(A)を主成分とするコーティング剤を塗布、乾燥してA皮膜を形成した上に、多価金属化合物(B)を主成分とするコーティング剤を塗布、乾燥してB皮膜を形成し、A/B層間で架橋反応させて形成されるポリカルボン酸の多価金属塩皮膜であっても構わない。
【0087】
[ポリカルボン酸系重合体(A)]
ポリカルボン酸系重合体とは、分子内に2個以上のカルボキシ基を有する重合体である。ポリカルボン酸系重合体としては、たとえば、エチレン性不飽和カルボン酸の(共)重合体;エチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体;アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類が挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これらのポリカルボン酸系重合体は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0088】
成分としては、上記の中でも、得られるガスバリア性フィルム1のガスバリア性の観点から、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸及びクロトン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体が好ましく、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸及びイタコン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体が特に好ましい。該重合体において、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸及びイタコン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位の割合は、80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましい(ただし該重合体を構成する全構成単位の合計を100mol%とする)。該重合体は、単独重合体でも、共重合体でもよい。該重合体が、上記構成単位以外の他の構成単位を含む共重合体である場合、該他の構成単位としては、例えば前述のエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体から誘導される構成単位などが挙げられる。
【0089】
ポリカルボン酸系重合体の数平均分子量は、2,000〜10,000,000の範囲内が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。数平均分子量が2,000未満では、得られるガスバリア性フィルムは充分な耐水性を達成できず、水分によってガスバリア性や透明性が悪化する場合や、白化の発生が起こる場合がある。他方、数平均分子量が10,000,000を超えると、酸素バリア性皮膜20を形成する際のコーティング剤の粘度が高くなり、塗工性が損なわれる場合がある。なお、上記数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0090】
ポリカルボン酸系重合体(A)を主成分とするコーティング剤を塗布、乾燥してA皮膜を形成した後にB皮膜を形成する場合には、ポリカルボン酸系重合体は、カルボキシ基の一部が予め塩基性化合物で中和されていてもよい。ポリカルボン酸系重合体の有するカルボキシ基の一部を予め中和することにより、A皮膜の耐水性や耐熱性をさらに向上させることができる。塩基性化合物としては、多価金属化合物、一価金属化合物およびアンモニアからなる群から選択される少なくとも1種の塩基性化合物が好ましい。多価金属化合物としては、後述する多価金属化合物(B)の説明で例示する化合物を用いることができる。一価金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0091】
ポリカルボン酸系重合体(A)を主成分とするコーティング剤には各種添加剤を加えることができ、バリア性能を損なわない範囲で架橋剤、硬化剤、レベリング剤、消泡剤、アンチブロッキング剤、静電防止剤、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、増粘剤などがあげられる。
【0092】
ポリカルボン酸系重合体(A)を主成分とするコーティング剤に用いる溶媒は水性媒体が好ましい。水性媒体としては、水、水溶性または親水性有機溶剤、またはこれらの混合物が挙げられる。水性媒体は通常、水または水を主成分として含むものである。水性媒体中の水の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。水溶性または親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、セロソルブ類、カルビトール類、アセトニトリル類のニトリル類等が挙げられる。
【0093】
[多価金属化合物(B)]
多価金属化合物は、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と反応してポリカルボン酸の多価金属塩を形成する化合物であれば特に限定されず、酸化亜鉛粒子、酸化マグネシウム粒子、マグネシウムメトキシド、酸化銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらを単独或いは複数を混合して用いてもよい。酸素バリア性皮膜の酸素バリア性の観点から酸化亜鉛が好ましい。
【0094】
酸化亜鉛は紫外線吸収能を有す無機材料であり、酸化亜鉛粒子の平均粒子径は特に限定されないが、ガスバリア性、透明性、コーティング適性の観点から、平均粒子径が5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが特に好ましい。
【0095】
多価金属化合物(B)を主成分とするコーティング剤を塗布、乾燥して皮膜を形成する場合は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化亜鉛粒子のほかに、各種添加剤を含有してもよい。該添加剤としては、コーティング剤に用いる溶媒に可溶又は分散可能な樹脂、該溶媒に可溶又は分散可能な分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、増粘剤等を含有してもよい。
【0096】
上記の中でも、コーティング剤に用いる溶媒は、溶媒に可溶または分散可能な樹脂を含有することが好ましい。これにより、コーティング剤の塗工性、製膜性が向上する。このような樹脂としては、例えば、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。
【0097】
また、コーティング剤に用いる溶媒に可溶又は分散可能な分散剤を含有することが好ましい。これにより、多価金属化合物の分散性が向上する。該分散剤としては、アニオン系界面活性剤や、ノニオン系界面活性剤を用いることができる。該界面活性剤としては、(ポリ)カルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルフォコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、芳香族リン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、アルキルアリル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ソルビタンアルキルエステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の各種界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0098】
多価金属化合物(B)を主成分とするコーティング剤に添加剤が含まれている場合には、多価金属化合物と添加剤との質量比(多価金属化合物:添加剤)は、30:70〜99:1の範囲内であることが好ましく、50:50〜98:2の範囲内であることが好ましい。
【0099】
多価金属化合物(B)を主成分とするコーティング剤に用いる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。また、これらの溶媒は1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、塗工性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また製造性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。
【0100】
ポリカルボン酸系重合体(A)と多価金属化合物(B)を混合したコーティング剤を塗布、乾燥してポリカルボン酸の多価金属塩皮膜を形成する場合には、前記したポリカルボン酸系重合体(A)と前記した多価金属化合物(B)と、水またはアルコール類を溶媒として、該溶媒に溶解或いは分散可能な樹脂や分散剤、および必要に応じて添加剤を混合して、コーティング剤として、公知のコーティング方法にて塗布、乾燥することで、ポリカルボン酸の多価金属塩皮膜を形成することができる。コート法として、例えばキャスト法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0101】
酸素バリア性皮膜20の厚みは、要求される酸素バリア性に応じて設定され、例えば0.05〜5μmであってよい。酸素バリア性皮膜20の厚みとしては、0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。酸素バリア性皮膜20の厚みが0.05μm以上であれば、充分な酸素バリア性が得られやすい。酸素バリア性皮膜20の厚みが1μm以下であれば、均一な塗工面を形成することが容易で、乾燥負荷や製造コストを抑制でき、本発明の特徴である黒色面積率が0.15%以下の表面を有する樹脂基材10を用いる有用性が高くなる。
【0102】
酸素バリア性皮膜20として、前記の有機無機複合皮膜や、前記のポリカルボン酸の多価金属塩皮膜を有するガスバリア性フィルムは、ボイル処理やレトルト殺菌処理を行っても優れた酸素バリア性を示し、シーラントフィルムとラミネートして、ボイル、レトルト処理用包装材料としても、十分な密着強度やシール強度を有し、さらに、金属箔や金属蒸着膜にはない透明さと、耐屈曲性や耐延伸性に優れ、ダイオキシン等の有害物質発生のリスクもない等の利点がある。
【0103】
[ガスバリア性フィルムの製造方法]
ガスバリア性フィルム1は、樹脂基材10の一方の面12に、下地層30または無機酸化物層40または下地層30と無機酸化物層40の双方を形成した後、下地層30または無機酸化物層40の上に酸素バリア性皮膜20を形成することにより製造できる。
【0104】
本発明のガスバリア性フィルム1の製造方法は、例えば、選別工程と、下地層形成工程と、無機酸化物層形成工程と、酸素バリア性皮膜形成工程とを有する。
【0105】
選別工程としては、例えば、表面の黒色面積率が0.15%以下の樹脂基材原反を樹脂基材として選別する工程が挙げられる。樹脂基材原反の表面の黒色面積率は、上述した樹脂基材10の一方の面12の黒色面積率の測定方法と同様の方法で測定される。
【0106】
樹脂基材10としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0107】
下地層形成工程としては、例えば、樹脂基材10の少なくとも一方の面12にコーティング剤をウェットコート法により塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥(溶媒を除去)することにより下地層30を形成する工程が挙げられる。
【0108】
コーティング剤の塗布方法としては、公知のウェットコート法を用いることができる。ウェットコート法としては、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等が挙げられる。
【0109】
コーティング剤からなる塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。塗膜の乾燥温度は、例えば、50〜200℃が好ましい。乾燥時間は、塗膜の厚さ、乾燥温度等によっても異なるが、例えば、1秒〜5分間が好ましい。
【0110】
無機酸化物層形成工程としては、例えば、樹脂基材10の一方の面12、または下地層30上に、前記した真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はプラズマ気相成長法(CVD)等により無機酸化物層40を成膜する工程が挙げられる。
【0111】
酸素バリア性皮膜形成工程としては、例えば、下地層30、または無機酸化物層40の上に、コーティング剤をウェットコート法により塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥(溶媒を除去)することにより酸素バリア性皮膜20を形成する工程が挙げられる。
【0112】
コーティング剤の塗布方法としては、公知のウェットコート法を用いることができる。ウェットコート法としては、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等が挙げられる。
【0113】
コーティング剤からなる塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。塗膜の乾燥温度は、例えば、50〜200℃が好ましい。乾燥時間は、塗膜の厚さ、乾燥温度等によっても異なるが、例えば、1秒〜5分間が好ましい。
【0114】
酸素バリア性皮膜20は、一度の塗布、乾燥により形成しても、同種のコーティング剤或いは異種のコーティング剤により、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成しても構わない。
【0115】
下地層形成工程、無機酸化物層形成工程、酸素バリア性皮膜形成工程では、樹脂基材10の一方の面12に下地層30または無機酸化物層40または酸素バリア性皮膜20を形成する。このとき、一方の面12の黒色面積率は0.15%以下である。さらに、樹脂基材10の両方の面に下地層30または無機酸化物層40または酸素バリア性皮膜20を形成してもよい。その場合、樹脂基材10の他方の面14の黒色面積率は0.15%以下である。
【0116】
樹脂基材原反の両方の面に下地層30または無機酸化物層40または酸素バリア性皮膜20を形成する場合、樹脂基材原反の両方の面の黒色面積率は0.15%以下であると、酸素バリア性がより高まり、印刷適性が良好であるため好ましい。
【0117】
本発明のガスバリア性フィルム1の製造方法が選別工程を有する場合、表面の黒色面積率が0.15%以下の樹脂基材を効率よく適用できる。このため、選別工程を有することにより、酸素バリア性をより向上したガスバリア性フィルム1を効率よく製造できる。加えて、選別工程を有することにより、印刷適性が良好なガスバリア性フィルム1を効率よく製造できる。
【0118】
本発明のガスバリア性フィルム1は、必要に応じて、印刷層、保護層、遮光層、接着剤層、ヒートシール可能な熱融着層、その他の機能層等をさらに有していてもよい。
【0119】
本発明のガスバリア性フィルム1がヒートシール可能な熱融着層を有する場合、この熱融着層は、ガスバリア性フィルム1の少なくとも一方の最表層に配置される。ガスバリア性フィルム1が熱融着層を有することにより、ガスバリア性フィルム1が、熱シールによって密封可能なもの(例えば、包装体や蓋体)となる。
【0120】
熱融着層は、例えば、樹脂基材の片面又は両面に本実施形態の下地層30や無機酸化物層40、酸素バリア性皮膜20を形成して得られた積層体に、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系等の公知の接着剤を用いて、公知のドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法等により積層することができる。
【0121】
<作用効果>
本発明のガスバリア性フィルム1は、モノクロ画像における輝度を2値化し、100μm
2以上のサイズの黒色領域の総面積率(黒色面積率)を算出する。黒色面積率が0.15%以下である樹脂基材10の少なくとも一方の面に、下地層30または無機酸化物層40または下地層30と無機酸化物層40の双方を介して、酸素バリア性皮膜20が積層している。
【0122】
本発明のガスバリア性フィルム1は、黒色面積率が0.15%以下である樹脂基材10の表面に、下地層30または無機酸化物層40またはその双方を介して、酸素バリア性皮膜20を形成しているため、基材表面の大きな凸部に起因する膜欠陥が生じにくく、酸素バリア性をより向上しやすい。加えて、ガスバリア性フィルム1の印刷適性をより良好にしやすい。
【0123】
したがって、本発明のガスバリア性フィルム1を包装用材料として用いることにより、安価に内容物の品質保持性を高めることができる。
【0124】
加えて、本発明のガスバリア性フィルム1を包装用材料として用いることにより、容易かつ美麗に印刷を施すことができる。
【実施例】
【0125】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0126】
以下の各例で用いた材料を以下に示す。
[使用材料]
<樹脂基材>
α1:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:M−1、厚さ20μm、片面コロナ処理、三井化学東セロ株式会社製)。
α2:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:ME−1、厚さ20μm、片面コロナ処理、三井化学東セロ株式会社製)。
α3:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:TS18TI−TPN、厚さ18μm、片面コロナ処理、Max Speciality Films Limited社製)。
α4:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:P2111、厚さ20μm、片面コロナ処理、東洋紡株式会社製)。
α5:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:P2171、厚さ20μm、片面コロナ処理、東洋紡株式会社製)。
α6:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:P2102、厚さ20μm、片面コロナ処理、東洋紡株式会社製)。
α7:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:P2161、厚さ20μm、片面コロナ処理、東洋紡株式会社製)。
α8:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:VPH2011、厚さ20μm、片面コロナ処理、コロナ処理面側のAB剤平均粒径2μm、A.J.Plast社製)。
α9:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:VPH2011、厚さ20μm、片面コロナ処理、コロナ処理面側のAB剤平均粒径4μm、A.J.Plast社製)。
α10:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:PB210J、厚さ20μm、片面コロナ処理、フタムラ化学株式会社製)。
α11:ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:P60、厚さ12μm、片面コロナ処理、東レ株式会社製)。
α12:ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:E5102、厚さ12μm、片面コロナ処理、東洋紡株式会社製)。
【0127】
<製造例1>
アクリルポリオールとしてアクリディックCL−1000(DIC(株)製))を、イソシアネート系化合物としてTDIタイプ硬化剤コロネート2030(東ソー(株)製)を用いて、アクリルポリオールとイソシアネート系化合物の配合比を固形分重量比6:4となるよう配合し、希釈溶剤(酢酸エチル)を用いて下地層30形成用の混合液(固形分:2質量%)を調製した。
【0128】
<製造例2>
数平均分子量200,000のポリアクリル酸水溶液(東亞合成(株)製 アロンA−10H、固形分濃度25質量%)20質量部に蒸留水58.9質量部を加えて希釈した。その後、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS アルドリッチ製)0.44質量部を添加し、撹拌を行い均一な溶液とし、ポリカルボン酸系重合体を主成分とするコーティング剤を調製した。
【0129】
<製造例3>
酸化亜鉛微粒子水分散液(住友大阪セメント製 ZE143)100質量部と硬化剤Liofol HAERTER UR 5889−21(Henkel製)2質量部を混合して、多価金属化合物を主成分とするコーティング剤を調製した。
【0130】
<製造例4>
ポリビニルアルコール樹脂(PVA 商品名:ポバールPVA−105、クラレ社製、けん化度98〜99%、重合度500のポリビニルアルコール)を溶解した水溶液、およびテトラエトキシシラン(TEOS)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS 商品名:KBM−403 信越化学工業(株)製)をそれぞれ0.02mol/Lの塩酸で加水分解した水溶液を用意し、加水分解前の重量比でPVA:TEOS:GPTMSが40:50:10となるように水溶液を配合した。さらに配合した水溶液の溶剤成分が、質量比として水:イソプロピルアルコールが90:10となるように、希釈溶剤を加え、有機無機複合皮膜形成用のコーティング剤(5質量%)を調製した。
【0131】
[樹脂基材の黒色面積率の測定]
樹脂基材α1〜12のコロナ処理面側の表面について、前記した画像取得条件、画像解析条件に従い、黒色面積率を求めた。結果を表1に記す。黒色面積率の測定には、オリンパス株式会社製の光学顕微鏡OLS−4000、対物レンズ10倍(MPFLN10)を使用し、画像解析ソフトとしてScion社のScion ImageJを使用した。
【0132】
[実施例1−1〜1−8および比較例1−1〜1−4]
表1に記載した樹脂基材のコロナ処理面に、グラビア印刷機を用いて、製造例1で調製した下地層形成用の混合液を塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.1μmの下地層を形成した。次いで形成した下地層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例2で調製したポリカルボン酸系重合体を主成分とするコーティング剤を塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.2μmのポリカルボン酸系重合体皮膜を形成し、さらにポリカルボン酸系重合体皮膜の上に、グラビア印刷機を用いて、製造例3で調製した多価金属化合物を主成分とするコーティング剤を塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.2μmの多価金属化合物皮膜を形成して、ポリカルボン酸の多価金属塩皮膜からなる酸素バリア性皮膜を形成し、実施例1−1〜1−8、比較例1−1〜1−4のガスバリア性フィルムを得た。
【0133】
<印刷適性評価>
各例のガスバリア性フィルムの酸素バリア性皮膜上にグラビア印刷機を用いて、5%〜50%(5%刻み)の網点濃度で墨インキ(商品名:N920LPGT、東洋インキ株式会社製)を階調印刷した。インキ粘度は14秒(ザーンカップ#3、25℃)であった。
印刷速度は150m/min、乾燥温度は50℃とした。印刷後の表面を光学顕微鏡で観察し、ドット抜けの箇所を計数した。判定は、6mm四方のエリアにドット抜けが5箇所未満であれば○、5〜20箇所であれば△、21箇所以上であれば×とした。判定結果を表1に示す。
【0134】
なお、「ドット抜け」とは、フィルム基材へのインキの着肉が悪く、部分的にドット(網点)が転写されていない状態をいう。網点濃度の低い状態までドット抜けの箇所が少ないほど、ハイライト部の印刷適性が優れることを示す。
【0135】
<レトルト処理後の酸素バリア性、水蒸気バリア性評価>
各例のガスバリア性フィルムについて、接着剤を用いてCPP(ポリプロピレンフィルム)と貼り合せ、ガスバリア性フィルム/接着剤/CPP構成のレトルト処理用ガスバリア性積層フィルムを作製した。接着剤は三井化学ポリウレタン製の2液硬化型接着剤、タケラックA620(主剤)/タケネートA65(硬化剤)を使用し、CPPは東レフィルム加工製のポリプロピレンフィルム、トレファンZK93KM(60μm)を使用して、HIRANO TECSEED製マルチコーターTM−MCにてドライラミネートし、40℃で3日間養生した。なおガスバリア性フィルムの酸素バリア性皮膜が接着剤側になるように配置した。
【0136】
得られたガスバリア性積層フィルムにてA5サイズの4方シールパウチを作製し、内容物として水道水150mlを充填して、120℃の熱水中で30分間の加熱殺菌処理(レトルト処理)を実施した。
【0137】
レトルト処理後のガスバリア性積層フィルムについて、酸素透過度測定装置(商品名:OXTRAN−2/20、MOCON社製)を用いて、30℃、70%RHの雰囲気下、酸素透過度(cm
3/(m
2・day・atm))を測定した。また水蒸気透過度測定装置(商品名:PERMATRAN−W−3/33、MOCON社製)を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下、水蒸気透過度(g/(m
2・day))を測定した。測定結果を表1に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
表1に記載の結果から、実施例1−1〜1−8のガスバリア性フィルムは、黒色面積率が0.15%以下であり、30℃、相対湿度70%の雰囲気下における酸素透過度の値が2cm
3/(m
2・day・atm)以下で、良好な酸素バリア性が得られた。
【0140】
一方、比較例1−1〜1−4のガスバリア性フィルムは、黒色面積率が0.15%以上であり、酸素透過度の値が2cm
3/(m
2・day・atm)超で、黒色面積率が0.15%を超えて高いことにより酸素透過度が上昇し、実施例1−1〜1−8と比べて良好な酸素バリア性が得られなかった。
【0141】
表1に記載の結果から、実施例1−1〜1−8のガスバリア性フィルムは、網点濃度30%以上で印刷適性が「○」だった。
【0142】
一方、比較例1−1〜1−4のガスバリア性フィルムは、網点濃度30%での印刷適性が「×」であった。
【0143】
このように、黒色面積率が0.15%以下で、印刷適性が良好になることが分かった。
【0144】
[実施例2−1〜2−6および比較例2−1〜2−4]
表2に記載した樹脂基材のコロナ処理面に、グラビア印刷機を用いて、製造例1で調製した下地層形成用の混合液を塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.1μmの下地層を形成した。次いで、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属珪素、一酸化珪素、及び二酸化珪素の2種以上を含む混合材料を蒸発させて、下地層の上に厚さ30nmの酸化ケイ素からなる無機酸化物層を形成した。続いて形成した無機酸化物層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例4で調製した有機無機複合皮膜形成用のコーティング剤を塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.3μmの有機無機複合皮膜からなる酸素バリア性皮膜を形成し、実施例2−1〜2−6、および比較例2−1〜2−4のガスバリア性フィルムを得た。
【0145】
[実施例2−7]
樹脂基材α8のコロナ処理面に、下地層を設けることなく、直接無機酸化物層を形成した以外、実施例2−3と同様にして実施例2−7のガスバリア性フィルムを得た。
【0146】
<印刷適性評価>
各例のガスバリア性フィルムの酸素バリア性皮膜上にグラビア印刷機を用いて、5%〜50%(5%刻み)の網点濃度で墨インキ(商品名:N920LPGT、東洋インキ株式会社製)を階調印刷した。インキ粘度は14秒(ザーンカップ#3、25℃)であった。
印刷速度は150m/min、乾燥温度は50℃とした。印刷後の表面を光学顕微鏡で観察し、ドット抜けの箇所を計数した。判定は、6mm四方のエリアにドット抜けが5箇所未満であれば○、5〜20箇所であれば△、21箇所以上であれば×とした。判定結果を表2に示す。
【0147】
なお、「ドット抜け」とは、フィルム基材へのインキの着肉が悪く、部分的にドット(網点)が転写されていない状態をいう。網点濃度の低い状態までドット抜けの箇所が少ないほど、ハイライト部の印刷適性が優れることを示す。
【0148】
<レトルト処理後の酸素バリア性、水蒸気バリア性評価>
各例のガスバリア性フィルムについて、接着剤を用いてCPP(ポリプロピレンフィルム)と貼り合せ、ガスバリア性フィルム/接着剤/CPP構成のレトルト処理用ガスバリア性積層フィルムを作製した。接着剤は三井化学ポリウレタン製の2液硬化型接着剤、タケラックA620(主剤)/タケネートA65(硬化剤)を使用し、CPPは東レフィルム加工製のポリプロピレンフィルム、トレファンZK93KM(60μm)を使用して、HIRANO TECSEED製マルチコーターTM−MCにてドライラミネートし、40℃で3日間養生した。なおガスバリア性フィルムの酸素バリア性皮膜が接着剤側になるように配置した。
【0149】
得られたガスバリア性積層フィルムにてA5サイズの4方シールパウチを作製し、内容物として水道水150mlを充填して、120℃の熱水中で30分間の加熱殺菌処理(レトルト処理)を実施した。
【0150】
レトルト処理後のガスバリア性積層フィルムについて、酸素透過度測定装置(商品名:OXTRAN−2/20、MOCON社製)を用いて、30℃、70%RHの雰囲気下、酸素透過度(cm
3/(m
2・day・atm))を測定した。また水蒸気透過度測定装置(商品名:PERMATRAN−W−3/33、MOCON社製)を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下、水蒸気透過度(g/(m
2・day))を測定した。測定結果を表2に示す。
【0151】
【表2】
【0152】
表2に記載の結果から、実施例2−1〜2−7のガスバリア性フィルムは、黒色面積率が0.15%以下であり、30℃、相対湿度70%の雰囲気下における酸素透過度の値が3cm
3/(m
2・day・atm)以下で、良好な酸素バリア性が得られた。
【0153】
一方、比較例2−1〜2−4のガスバリア性フィルムは、黒色面積率が0.15%以上であり、酸素透過度の値が5cm
3/(m
2・day・atm)超で、黒色面積率が0.15%を超えて高いことにより酸素透過度が上昇し、実施例2−1〜2−7と比べて良好な酸素バリア性が得られなかった。
【0154】
表2に記載の結果から、実施例2−1〜2−7のガスバリア性フィルムは、網点濃度30%以上で印刷適性が「○」だった。
【0155】
一方、比較例2−1〜2−4のガスバリア性フィルムは、網点濃度30%での印刷適性が「×」であった。
【0156】
このように、黒色面積率が0.15%以下で、印刷適性が良好になることが分かった。
【0157】
[実施例3−1〜3−7および比較例3−1]
表3に記載した樹脂基材のコロナ処理面に、グラビア印刷機を用いて、製造例1で調製した下地層形成用の混合液を塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.1μmの下地層を形成した。次いで、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属珪素、一酸化珪素、及び二酸化珪素の2種以上を含む混合材料を蒸発させて、下地層の上に厚さ30nmの酸化ケイ素からなる無機酸化物層を形成した。続いて形成した無機酸化物層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例2で調製したポリカルボン酸系重合体を主成分とするコーティング剤を塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.2μmのポリカルボン酸系重合体皮膜を形成し、さらにポリカルボン酸系重合体皮膜の上に、グラビア印刷機を用いて、製造例3で調製した多価金属化合物を主成分とするコーティング剤を塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.2μmの多価金属化合物皮膜を形成して、ポリカルボン酸の多価金属塩皮膜からなる酸素バリア性皮膜を形成し、実施例3−1〜3−7、比較例3−1のガスバリア性フィルムを得た。
【0158】
[実施例3−8]
樹脂基材α8のコロナ処理面に、下地層を設けることなく、直接無機酸化物層を形成した以外、実施例3−4と同様にして実施例3−8のガスバリア性フィルムを得た。
【0159】
<印刷適性評価>
各例のガスバリア性フィルムの酸素バリア性皮膜上にグラビア印刷機を用いて、5%〜50%(5%刻み)の網点濃度で墨インキ(商品名:N920LPGT、東洋インキ株式会社製)を階調印刷した。インキ粘度は14秒(ザーンカップ#3、25℃)であった。
印刷速度は150m/min、乾燥温度は50℃とした。印刷後の表面を光学顕微鏡で観察し、ドット抜けの箇所を計数した。判定は、6mm四方のエリアにドット抜けが5箇所未満であれば○、5〜20箇所であれば△、21箇所以上であれば×とした。判定結果を表3に示す。
【0160】
なお、「ドット抜け」とは、フィルム基材へのインキの着肉が悪く、部分的にドット(網点)が転写されていない状態をいう。網点濃度の低い状態までドット抜けの箇所が少ないほど、ハイライト部の印刷適性が優れることを示す。
【0161】
<レトルト処理後の酸素バリア性、水蒸気バリア性評価>
各例のガスバリア性フィルムについて、接着剤を用いてCPP(ポリプロピレンフィルム)と貼り合せ、ガスバリア性フィルム/接着剤/CPP構成のレトルト処理用ガスバリア性積層フィルムを作製した。接着剤は三井化学ポリウレタン製の2液硬化型接着剤、タケラックA620(主剤)/タケネートA65(硬化剤)を使用し、CPPは東レフィルム加工製のポリプロピレンフィルム、トレファンZK93KM(60μm)を使用して、HIRANO TECSEED製マルチコーターTM−MCにてドライラミネートし、40℃で3日間養生した。なおガスバリア性フィルムの酸素バリア性皮膜が接着剤側になるように配置した。
【0162】
得られたガスバリア性積層フィルムにてA5サイズの4方シールパウチを作製し、内容物として水道水150mlを充填して、120℃の熱水中で30分間の加熱殺菌処理(レトルト処理)を実施した。
【0163】
レトルト処理後のガスバリア性積層フィルムについて、酸素透過度測定装置(商品名:OXTRAN−2/20、MOCON社製)を用いて、30℃、70%RHの雰囲気下、酸素透過度(cm
3/(m
2・day・atm))を測定した。また水蒸気透過度測定装置(商品名:PERMATRAN−W−3/33、MOCON社製)を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下、水蒸気透過度(g/(m
2・day))を測定した。測定結果を表3に示す。
【0164】
【表3】
【0165】
表3に記載の結果から、実施例3−1〜3−8のガスバリア性フィルムは、黒色面積率が0.15%以下であり、30℃、相対湿度70%の雰囲気下における酸素透過度の値が2cm
3/(m
2・day・atm)以下で、良好な酸素バリア性が得られた。
【0166】
一方、比較例3−1のガスバリア性フィルムは、黒色面積率が0.15%以上であり、酸素透過度の値が4.7cm
3/(m
2・day・atm)で、実施例3−1〜3−8と比べて良好な酸素バリア性が得られなかった。
【0167】
表3に記載の結果から、実施例3−1〜3−8のガスバリア性フィルムは、網点濃度30%以上で印刷適性が「○」だった。
【0168】
一方、比較例3−1のガスバリア性フィルムは、網点濃度30%での印刷適性が「×」であった。
【0169】
このように、黒色面積率が0.15%以下で、印刷適性が良好になることが分かった。
【0170】
[実施例4−1〜4−5および比較例4−1]
表4に記載した樹脂基材のコロナ処理面に、グラビア印刷機を用いて、製造例1で調製した下地層形成用の混合液を塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.1μmの下地層を形成した。次いで、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属アルミニウムを蒸発させ、そこに酸素ガスを導入し、下地層の上に厚さ20nmの酸化アルミニウムからなる無機酸化物層を形成した。続いて形成した無機酸化物層上に、グラビア印刷機を用いて、製造例2で調製したポリカルボン酸系重合体を主成分とするコーティング剤を塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.2μmのポリカルボン酸系重合体皮膜を形成し、さらにポリカルボン酸系重合体皮膜の上に、グラビア印刷機を用いて、製造例3で調製した多価金属化合物を主成分とするコーティング剤を塗工して塗膜を形成し、100℃のオーブンに10秒間通過させ乾燥させることで厚さ0.2μmの多価金属化合物皮膜を形成して、ポリカルボン酸の多価金属塩皮膜からなる酸素バリア性皮膜を形成し、実施例4−1〜4−5、比較例4−1のガスバリア性フィルムを得た。
【0171】
[実施例4−6]
樹脂基材α8のコロナ処理面に、下地層を設けることなく、直接無機酸化物層を形成した以外、実施例4−2と同様にして実施例4−6のガスバリア性フィルムを得た。
【0172】
<印刷適性評価>
各例のガスバリア性フィルムの酸素バリア性皮膜上にグラビア印刷機を用いて、5%〜50%(5%刻み)の網点濃度で墨インキ(商品名:N920LPGT、東洋インキ株式会社製)を階調印刷した。インキ粘度は14秒(ザーンカップ#3、25℃)であった。
印刷速度は150m/min、乾燥温度は50℃とした。印刷後の表面を光学顕微鏡で観察し、ドット抜けの箇所を計数した。判定は、6mm四方のエリアにドット抜けが5箇所未満であれば○、5〜20箇所であれば△、21箇所以上であれば×とした。判定結果を表4に示す。
【0173】
なお、「ドット抜け」とは、フィルム基材へのインキの着肉が悪く、部分的にドット(網点)が転写されていない状態をいう。網点濃度の低い状態までドット抜けの箇所が少ないほど、ハイライト部の印刷適性が優れることを示す。
【0174】
<レトルト処理後の酸素バリア性、水蒸気バリア性評価>
各例のガスバリア性フィルムについて、接着剤を用いてCPP(ポリプロピレンフィルム)と貼り合せ、ガスバリア性フィルム/接着剤/CPP構成のレトルト処理用ガスバリア性積層フィルムを作製した。接着剤は三井化学ポリウレタン製の2液硬化型接着剤、タケラックA620(主剤)/タケネートA65(硬化剤)を使用し、CPPは東レフィルム加工製のポリプロピレンフィルム、トレファンZK93KM(60μm)を使用して、HIRANO TECSEED製マルチコーターTM−MCにてドライラミネートし、40℃で3日間養生した。なおガスバリア性フィルムの酸素バリア性皮膜が接着剤側になるように配置した。
【0175】
得られたガスバリア性積層フィルムにてA5サイズの4方シールパウチを作製し、内容物として水道水150mlを充填して、120℃の熱水中で30分間の加熱殺菌処理(レトルト処理)を実施した。
【0176】
レトルト処理後のガスバリア性積層フィルムについて、酸素透過度測定装置(商品名:OXTRAN−2/20、MOCON社製)を用いて、30℃、70%RHの雰囲気下、酸素透過度(cm
3/(m
2・day・atm))を測定した。また水蒸気透過度測定装置(商品名:PERMATRAN−W−3/33、MOCON社製)を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下、水蒸気透過度(g/(m
2・day))を測定した。測定結果を表4に示す。
【0177】
【表4】
【0178】
表4に記載の結果から、実施例4−1〜4−6のガスバリア性フィルムは、黒色面積率が0.15%以下であり、30℃、相対湿度70%の雰囲気下における酸素透過度の値が1cm
3/(m
2・day・atm)以下で、良好な酸素バリア性が得られた。一方、比較例4−1のガスバリア性フィルムは、黒色面積率が0.15%以上であり、酸素透過度の値が1.5cm
3/(m
2・day・atm)で、実施例4−1〜4−6と比べて良好な酸素バリア性が得られなかった。
【0179】
表4に記載の結果から、実施例4−1〜4−6のガスバリア性フィルムは、網点濃度30%以上で印刷適性が「○」だった。
【0180】
一方、比較例4−1のガスバリア性フィルムは、網点濃度30%での印刷適性が「×」であった。
【0181】
このように、黒色面積率が0.15%以下で、印刷適性が良好になることが分かった。
【解決手段】樹脂基材10と、樹脂基材10の少なくとも一方の面12に、酸素バリア性皮膜20と、樹脂基材10と酸素バリア性皮膜20の間に下地層30および無機酸化物層40のいずれか一方、または両方を備え、一方の面12は、下記測定方法で測定される黒色面積率が0.15%以下である、ガスバリア性フィルム1。
<測定方法>樹脂基材の一方の面の1281μm四方の任意の領域を光学顕微鏡で撮影して、1024×1024pixelの撮影画像を取得し、画像解析ソフトを用いて、撮影画像を256階調のモノクロ画像に変換し、モノクロ画像における輝度の最頻値から30を減じた値を閾値とし、閾値未満を黒、閾値以上を白として輝度を2値化し、1281μm四方の領域における100μm