(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、製鉄プラントを対象として、製鉄プロセスの圧延工程に利用される圧延機のローラーの異常兆候を高い精度で検知することが可能な異常兆候検知システム1について説明する。なお、ローラーの異常兆候とは、ローラーに故障が発生する前の兆候やローラーに何らかの異常が発生する前の兆候のことである。
【0011】
ただし、製鉄プロセスの圧延工程は一例であって、これに限定されない。本実施形態に係る異常兆候検知システム1は、製鉄プロセス以外にも、任意の金属加工プロセスの圧延工程に利用される圧延機の異常兆候を検知する場合にも同様に適用することが可能である。また、金属加工プロセス以外にも、任意の目的で設置されたローラー(例えば、金属等を搬送するためのベルトコンベアのローラー等)の異常兆候を検知する場合にも同様に適用することが可能である。
【0012】
本実施形態に係る異常兆候検知システム1では、各ローラーの稼働情報(例えば、加速度等)をセンサにより収集した上で、ローラー毎に稼働情報の値のバラつき度合いを表す指標値を算出し、その指標値をローラー間で比較することで、各ローラーの異常兆候を検知する。これにより、本実施形態に係る異常兆候検知システム1は、ローラーの異常兆候を高い精度で検知することが可能になる。
【0013】
<異常兆候検知システム1の全体構成>
まず、本実施形態に係る異常兆候検知システム1の全体構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る異常兆候検知システム1の全体構成の一例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る異常兆候検知システム1には、異常兆候検知装置10と、複数のセンサ20と、複数のローラー30とが含まれる。また、異常兆候検知装置10と各センサ20とは、任意の通信方式(例えば、有線又は無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信等)により通信可能に接続されている。
【0015】
センサ20は、鋼片を圧延する圧延機内に含まれるローラー30をセンシングすることで当該ローラー30の稼働情報を生成し、生成した稼働情報を異常兆候検知装置10に送信する。なお、製鉄プラントの圧延設備は、一般に、複数の圧延機により構成される。また、一般に、センサ20も圧延機内に含まれている。ただし、これに限られず、例えば、センサ20が圧延機の外部に設置されており、圧延機の外部からローラー30をセンシングしてもよい。
【0016】
ここで、本実施形態では、一例として、1台の圧延機内には上下2台のローラー30とこれらのローラー30をそれぞれセンシングする2台のセンサ20とが含まれているものとする。また、ローラー30の総数をN(Nは偶数)として、各ローラー30を区別して表す場合は「ローラー30
n」(ただし、n=1,・・・,N)と表し、1台の圧延機内にはローラー30
n及びローラー30
n+1(ただし、n=1,3,・・・,N−1)がそれぞれ含まれているものとする(つまり、圧延機の台数はN/2である。)。更に、n=1,・・・,Nに対して、ローラー30
nをセンシングするセンサ20を「センサ20
n」と表す。
【0017】
異常兆候検知装置10は、センサ20から収集した稼働情報を用いて、ローラー30の異常兆候を検知するコンピュータ又はコンピュータシステムである。異常兆候検知装置10は、各センサ20から収集した稼働情報を用いてローラー30毎に所定の指標値(つまり、稼働情報の値のバラつき度合いを表す指標値)を算出した上で、その指標値をローラー30間で比較することで、各ローラー30の異常兆候を検知する。
【0018】
なお、
図1に示す異常兆候検知システム1の構成は一例であって、他の構成であってもよい。例えば、
図1に示す例では、1台の圧延機内には2台のローラー30が含まれているが、これに限られず、1台の圧延機内には任意の数のローラー30が含まれていてもよい。ただし、一般に、圧延工程では上下に配置されたローラー30間に鋼片を通すことで圧延が行われるため、ローラー30の数は偶数である。
【0019】
また、例えば、本実施形態に係る異常兆候検知システム1には、複数台の異常兆候検知装置10が含まれていてもよい。
【0020】
<異常兆候検知装置10のハードウェア構成>
次に、本実施形態に係る異常兆候検知装置10のハードウェア構成について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、本実施形態に係る異常兆候検知装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係る異常兆候検知装置10は、入力装置11と、表示装置12と、外部I/F13と、通信I/F14と、プロセッサ15と、メモリ装置16とを有する。これら各ハードウェアは、バス17により相互に通信可能に接続されている。
【0022】
入力装置11は、例えば各種ボタンやタッチパネル、キーボード、マウス等であり、異常兆候検知装置10に各種操作を入力するのに用いられる。表示装置12は、例えばディスプレイ等であり、異常兆候検知装置10の処理結果等を表示する。なお、異常兆候検知装置10は、入力装置11及び表示装置12の少なくとも一方を有していなくてもよい。
【0023】
外部I/F13は、外部装置とのインタフェースである。外部装置には、記録媒体13a等がある。異常兆候検知装置10は、外部I/F13を介して、記録媒体13aの読み取りや書き込み等を行うことができる。記録媒体13aには、例えば、SDメモリカード(SD memory card)やUSBメモリ、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)等がある。
【0024】
通信I/F14は、異常兆候検知装置10が他の装置や機器等とデータ通信を行うためのインタフェースである。
【0025】
プロセッサ15は、例えばCPU(Central Processing Unit)等であり、メモリ装置16からプログラムやデータを読み出して各種処理を実行する演算装置である。
【0026】
メモリ装置16は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等であり、プログラムやデータを格納している記憶装置である。
【0027】
本実施形態に係る異常兆候検知装置10は、
図2に示すハードウェア構成を有することにより、後述する各種処理を実現することができる。なお、
図2に示すハードウェア構成は一例であって、本実施形態に係る異常兆候検知装置10は、他のハードウェア構成を有していてもよい。例えば、本実施形態に係る異常兆候検知装置10は、複数のプロセッサ15を有していてもよいし、複数のメモリ装置16を有していてもよい。
【0028】
<異常兆候検知装置10の機能構成>
次に、本実施形態に係る異常兆候検知装置10の機能構成について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、本実施形態に係る異常兆候検知装置10の機能構成の一例を示す図である。
【0029】
図3に示すように、本実施形態に係る異常兆候検知装置10は、指標値算出部101と、異常兆候検知部102と、通知部103とを有する。これら各部は、例えば、異常兆候検知装置10にインストールされた1以上のプログラムが、プロセッサ15に実行させる処理により実現される。
【0030】
また、本実施形態に係る異常兆候検知装置10は、記憶部104を有する。記憶部104は、例えば、メモリ装置16を用いて実現可能である。なお、記憶部104は、例えば、異常兆候検知装置10と通信ネットワークを介して接続される記憶装置等を用いて実現されていてもよい。
【0031】
記憶部104には、各センサ20から受信した稼働情報が記憶されている。ここで、各稼働情報には、例えば、センシング対象のローラー30を識別する識別情報(例えば、ローラーID等)、当該ローラー30をセンシングした日時、速度、加速度及び回転数等が含まれる。本実施形態では、一例として、稼働情報には、ローラーIDと、日時と、速度と、加速度と、回転数とが含まれるものとする。
【0032】
このように、記憶部104には、ローラー30毎の稼働情報が時系列データとして記憶されている。なお、上記の稼働情報は一例であって、稼働情報には、ローラー30の識別情報及び日時の他、加速度が少なくとも含まれていればよい。
【0033】
指標値算出部101は、記憶部104に記憶されている稼働情報を用いて、ローラー30毎に所定の指標値を算出する。
【0034】
異常兆候検知部102は、指標値算出部101により算出された指標値を用いて、異常兆候があるローラー30が存在するか否かを判定する。これにより、異常兆候があるローラー30が存在すると判定された場合には、当該ローラー30が、異常兆候があるローラー30として検知される。
【0035】
通知部103は、異常兆候検知部102により異常兆候があるローラー30が検知された場合に、当該ローラー30のローラーID等を通知する。なお、通知部103の通知先は任意に設定することが可能である。例えば、通知部103は、異常兆候検知装置10のディスプレイにその通知内容を表示してもよいし、異常兆候検知装置10と通信ネットワークを介して接続される端末等にその通知内容を送信してもよい。
【0036】
<異常兆候検知処理の詳細>
次に、本実施形態に係る異常兆候検知処理の詳細について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、本実施形態に係る異常兆候検知処理の一例を示すフローチャートである。
【0037】
ステップS101:まず、指標値算出部101は、記憶部104に記憶されている稼働情報を用いて、ローラー30毎に所定の指標値を算出する。ここで、指標値算出部101は、例えば、以下の算出方法1及び算出方法2のいずれか一方又はその両方により指標値を算出する。なお、以下の算出方法1及び算出方法2の両方により指標値が算出された場合、ローラー30毎に2種類の指標値が算出されることになる。
【0038】
・指標値の算出方法1
算出方法1は、所定の第1の期間毎(例えば、1日毎や1時間毎等)に稼働情報の平均値を算出した上で、この平均値の過去の所定の第2の期間(例えば、過去6か月や過去1年等)の間の分散を指標値として算出する方法である。以降では、一例として、所定の第1の期間は「1日」であり、過去の所定の第2の期間は「過去6か月」であるものとして説明する。また、所定の第1の期間(つまり、以降では「日」)を表すインデックスをdで表す。なお、上記の例に示したように、第2の期間は第1の期間と比べて長い期間であるものとする(つまり、例えば、第1の期間は時間や日単位の期間であるのに対して、第2の期間は月や年単位の期間であるものとする。)。
【0039】
このとき、指標値の算出方法1では、以下の(1−1)〜(1−2)により指標値を算出する。
【0040】
(1−1)まず、指標値算出部101は、ローラー30毎に、d日目の各稼働情報に含まれる速度、加速度及び回転数それぞれの平均値を算出する。すなわち、指標値算出部101は、ローラー30毎に、d日目の各稼働情報に含まれる速度の平均値と、d日目の各稼働情報に含まれる加速度の平均値と、d日目の各稼働情報に含まれる回転数の平均値とをそれぞれ算出する。
【0041】
以降では、d日目の各稼働情報に含まれる速度の平均値を「速度平均値」、d日目の各稼働情報に含まれる加速度の平均値を「加速度平均値」、d日目の各稼働情報に含まれる回転数の平均値を「回転数平均値」と表す。
【0042】
(1−2)次に、指標値算出部101は、ローラー30毎に、d日目から過去6か月間の速度平均値、加速度平均値及び回転数平均値の標準偏差をそれぞれ算出する。すなわち、指標値算出部101は、d日目から過去6か月間における速度平均値の標準偏差と、d日目から過去6か月間における加速度平均値の標準偏差と、d日目から過去6か月間における回転数平均値の標準偏差とをそれぞれd日目の指標値として算出する。なお、例えば、1か月間を30日間と仮定した場合、180個の速度平均値の標準偏差と、180個の加速度平均値の標準偏差と、180個の回転数平均値の標準偏差とがそれぞれd日目の指標値として算出されることになる。
【0043】
以降では、d日目から過去6か月間における速度平均値の標準偏差を「速度標準偏差」、d日目から過去6か月間における加速度平均値の標準偏差を「加速度標準偏差」、d日目から過去6か月間における回転数平均値の標準偏差を「回転数標準偏差」と表す。
【0044】
これにより、ローラー30毎に、d日目の指標値として、速度標準偏差と、加速度標準偏差と、回転数標準偏差とが算出される。このように、指標値の算出方法1では、所定の第1の期間毎に、過去の所定の第2の期間の間の稼働情報を用いて指標値が算出される。
【0045】
なお、上記の(1−1)では、d日目の各稼働情報に含まれる速度、加速度及び回転数それぞれの平均値を算出したが、これに限られず、例えば、d日目の各稼働情報に含まれる速度、加速度及び回転数それぞれの最大値又は最小値のいずれかを算出してもよい。また、上記の(1−2)では、過去の所定の第2の期間の間における速度平均値の標準偏差、加速度平均値の標準偏差及び回転数平均値の標準偏差をそれぞれ算出したが、これに限られず、例えば、標準偏差の代わりに分散を算出してもよい。
【0046】
・指標値の算出方法2
算出方法2は、所定の第3の期間毎に、この第3の期間の間における稼働情報の標準偏差を指標値として算出する方法である。以降では、一例として、所定の第3の期間は「1週間」であるものとして説明する。また、この所定の第3の期間を表すインデックスをmで表し、期間mは、現在の日付dから過去1週間の期間(つまり、d−6からdまでの期間)であるものとする。
【0047】
このとき、指標値の算出方法2では、指標値算出部101は、ローラー30毎、かつ、1週間毎に、当該1週間の間における各稼働情報に含まれる速度、加速度及び回転数それぞれの標準偏差を期間mにおける指標値として算出する。
【0048】
これにより、ローラー30毎に、期間mにおける指標値として、速度の標準偏差と、加速度の標準偏差と、回転数の標準偏差とがそれぞれ算出される。ここで、指標値の算出方法2により指標値を算出する場合、期間mと期間m+1とで一部の区間が重畳していてもよいし、重畳する区間が無くてもよい。例えば、Mを所定の期間の長さ、期間mを[d,d+M]、期間m+1を[d´,d´+M]とした場合(ただし、d<d´)、d+M≧d´としてもよいし、d+M+1=d´としてもよい。d+M≧d´は期間mと期間m+1とで一部の区間が重畳することを意味し、d+M+1=d´は期間mと期間m+1とで重畳する区間が無いことを意味する。また、例えば、d+M≧d´である場合に、期間mと期間m+1とでどの程度重畳させるかは任意に設定することが可能である。
【0049】
なお、上記では、所定の第3の期間毎に、この第3の期間の間における各稼働情報に含まれる速度、加速度及び回転数の標準偏差をそれぞれ算出したが、これに限られず、例えば、標準偏差の代わりに分散を算出してもよい。また、例えば、所定の第3の期間の間における各稼働情報に含まれる速度、加速度及び回転数の日付毎の平均値をそれぞれ算出した上で、所定の第3の期間の間における速度の平均値の標準偏差(又は分散)、所定の第3の期間の間における加速度の平均値の標準偏差(又は分散)及び所定の第3の期間の間における回転数の平均値の標準偏差(又は分散)をそれぞれ算出してもよい。更に、このとき、平均値の代わりに、最大値又は最小値が算出されてもよい。
【0050】
ステップS102:次に、異常兆候検知部102は、上記のステップS101で算出された指標値を用いて、異常兆候があるローラー30が存在するか否かを判定する。異常兆候があるローラー30が存在する場合、このローラー30が、異常兆候があるローラー30として検知される。
【0051】
なお、異常兆候検知部102は、上記の算出方法1又は2のいずれかで算出された指標値を用いてもよいし、上記の算出方法1及び2の両方で算出された指標値を用いてもよい。以降では、上記の算出方法1で算出された指標値を「第1の指標値」、上記の算出方法2で算出された指標値を「第2の指標値」と表す。
【0052】
ここで、異常兆候検知部102は、例えば、d日目の各第1の指標値のマハラノビス距離を算出した上で、これらのマハラノビス距離を用いた異常検知を行うことで、異常と検知された第1の指標値に対応するローラー30を異常兆候があるローラー30として検知する。このとき、異常兆候検知部102は、速度に関する第1の指標値、加速度に関する第1の指標値及び回転数に関する第1の指標値毎に、それぞれ異常検知を行う。なお、マハラノビス距離を用いた異常検知では、例えば、或る第1の指標値のマハラノビス距離が、他の第1の指標値のマハラノビス距離の平均値のL
1倍(L
1は予め決められた値)以上離れている場合に、当該或る第1の指標値が異常と検知される。
【0053】
同様に、異常兆候検知部102は、例えば、期間mにおける各第2の指標値のマハラノビス距離を算出した上で、これらのマハラノビス距離を用いた異常検知を行うことで、異常と検知された第2の指標値に対応するローラー30を異常兆候があるローラー30として検知する。このとき、異常兆候検知部102は、速度に関する第2の指標値、加速度に関する第2の指標値及び回転数に関する第2の指標値毎に、それぞれ異常検知を行う。なお、マハラノビス距離を用いた異常検知では、例えば、或る第2の指標値のマハラノビス距離が、他の第2の指標値のマハラノビス距離の平均値のL
2倍(L
2は予め決められた値)以上離れている場合に、当該或る第2の指標値が異常と検知される。
【0054】
なお、上述したように、速度に関する第1の指標値、加速度に関する第1の指標値及び回転数に関する第1の指標値毎に、それぞれ異常検知が行われる。同様に、速度に関する第2の指標値、加速度に関する第2の指標値及び回転数に関する第2の指標値毎に、それぞれ異常検知が行われる。このため、例えば、全ての指標値で異常が検知された場合に、この指標値に対応するローラー30に異常兆候があるとしてもよいし、各指標値の重み付け和を用いてローラー30に異常兆候があるか否かを判定してもよい。
【0055】
例えば、各指標値の重み付け和を用いる場合、或るローラー30についての速度に関する第1の指標値を用いた異常検知結果をa
1、加速度に関する第1の指標値を用いた異常検知結果をa
2、回転数に関する第1の指標値を用いた異常検知結果をa
3として、当該ローラー30に異常が検知された場合は1、そうでない場合は0を取るものとする。また、重みをw
1,w
2及びw
3とする。このとき、w
1a
1+w
2a
2+w
3a
3が所定の閾値を超える場合は当該ローラー30に異常兆候があるものと判定し、そうでない場合には異常兆候がないものと判定してもよい。なお、これの重み付け和に対して、当該ローラー30についての各第2の指標値に関する重み付け和が追加されてもよい。
【0056】
また、例えば、或る指標値で異常兆候があるローラー30を絞り込んだ上で、絞り込み後のローラー30について更に異常兆候があるか否かを判定してもよい。例えば、回転数に関する第1の指標値を用いた異常検知により異常兆候があるローラー30を絞り込んだ上で、絞り込み後のローラー30について、加速度に関する第1の指標値を用いた異常検知を行ってもよい。
【0057】
ステップS103:次に、異常兆候検知部102は、上記のステップS103で異常兆候があるローラー30が検知されたか否かを判定する。そして、異常兆候があるローラー30が検知された場合はステップS104に進み、そうでない場合は異常兆候検知処理を終了する。
【0058】
ステップS104:そして、通知部103は、異常兆候があると検知されたローラー30のローラーID等の所定の通知先に通知する。これにより、異常兆候検知装置10のユーザ等は、異常兆候があるローラー30を知ることができ、例えば、ローラー30の交換や修理等を行うことができるようになる。
【0059】
<指標値の算出結果>
ここで、上記のステップS102において、算出方法1により算出された第1の指標値の一例を
図5に示す。
図5では、或るd日目における各ローラー30の第1の指標値(速度標準偏差、加速度標準偏差及び回転数標準偏差)を示している。なお、
図5における横軸はローラーIDを表し、縦軸は第1の指標値の値を表す。「1」、「2」、・・・、「X
1」、・・・、「X
2」、・・・、「N」はローラーIDである。
【0060】
図5に示す例では、ローラーID「X
2」のローラー30の加速度に関する第1の指標値が、他のローラー30の加速度に関する第1の指標値と比べて高くなっている。したがって、この場合、上記のステップS102にて、ローラーID「X
2」のローラー30が、異常兆候があるローラー30として検知される。また、ローラーID「X
1」のローラー30についても、速度に関する第1の指標値が比較的高いため、パラメータ(例えば、上述したL
1等)の設定値によっては、異常兆候があるローラー30として検知される。
【0061】
また、上記のステップS102において、算出方法2により算出された第2の指標値のうちの加速度に関する第2の指標値の一例を
図6に示す。
図6では、各ローラー30の加速度に関する第2の指標値を示している。なお、
図6における横軸は時間(つまり、期間m)を表し、縦軸は加速度に関する第2の指標値(つまり、加速度の標準偏差)の値を表す。
【0062】
図6に示す例では、ローラーID「X」のローラー30は、時間が進むと、他のローラー30との間で加速度に関する第2の指標値の乖離が大きくなる。したがって、この場合、上記のステップS102にて、ローラーID「X」のローラー30が、異常兆候があるローラー30として検知される。
【0063】
このように、本実施形態に係る異常兆候検知システム1では、ローラー30毎に稼働情報の値のバラつき度合いを表す所定の指標値を算出した上で、その指標値をローラー30間で比較する。これにより、本実施形態に係る異常兆候検知システム1は、ローラー30の異常兆候を高い精度で検知することが可能になる。
【0064】
本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更等が可能である。
【解決手段】異常兆候検知システムは、ローラー毎の稼働情報を時系列データとして記憶する記憶手段と、前記ローラー毎に、所定の期間における前記稼働情報の値のバラつき度合いを表す所定の指標値を算出する算出手段と、前記算出手段により算出された所定の指標値に基づいて、異常兆候がある前記ローラーを検知する検知手段と、を有する。