【実施例】
【0035】
以下、本発明を詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0036】
なお実施例および比較例は次のようにしてサンプル作成と評価を行った。
【0037】
(1)400nmにおける光線透過率差の評価方法
イオン照射前のポリエステルフィルム、およびイオン照射して巻き取り大気中に取り出したポリエステルフィルムをそれぞれ10枚積層し、波長400nmの光線透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所製UV−3600)で測定してそれぞれT
0(%)、T(%)とし、その差ΔT=(T
0―T)(%)を計算した。
【0038】
(2)色差の評価方法
色差は、CIE1976L*a*b*表色系を使用して、下式ΔE
*で表すことができ、上記(1)同様イオン照射前後のポリエステルフィルムをそれぞれ10枚積層し、色を、分光測色計(コニカミノルタ社製CM−2600)でL
*a
*b
*測定し、それぞれの変化量から計算した。
【0039】
ΔE
*={(ΔL
*)
2+(Δa
*)
2+(Δb
*)
2}
1/2
なお測定は、正反射光条件(SCE)で実施した。C光源をポリエステルフィルムに当てて、観察視野10°(CIE1964)で測定を行った。
【0040】
(3)密着強度(N/15mm)の評価方法
透明ガスバリア性蒸着フィルムと厚さ60μmのポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工(株)製ZK100)をラミネートした。接着剤の主剤としてポリエステルポリオール(東洋モートン(株)製、AD−503)50重量部に対して、硬化剤としてポリイソシアネート(東洋モートン(株)製、CAT−10)2.5重量部、溶剤として酢酸エチル50重量部を室温で撹拌しながら混合し、バーコーターで透明ガスバリア性蒸着フィルムの蒸着面に塗布し、熱風オーブンで乾燥後ポリプロピレンフィルムと積層し、72時間エージングした。その積層品を15mm幅にカットし、135℃の条件下で40分間のハイレトルト処理を行い、24時間40℃の条件下で保管後、引っ張り試験器((株)エー・アンド・デイ製“テンシロン”)で剥離角度をポリプロピレンフィルムのみ180度に曲げて、クロスヘッドスピードを50mm/minでポリエステルフィルムと蒸着膜間の密着強度を測定した。
【0041】
(実施例1)
連続巻取り式蒸着機((株)アルバック製)内において、フィルム繰出し部と蒸着部の間に有効幅3mのリニア型アノードレイヤータイプのイオン源(米Veeco社製)をフィルム走行面から50mmの距離に設置し、厚さ12μm、原反幅2300mm、長さ60000mのPETフィルム(東レ(株)製、“ルミラー”(登録商標)、P60)を速度12m/sで搬送しながら、酸素をイオン源内のアノードとカソード間隙間に0.18L/min、幅方向に均等に導入し、圧力2×10
―2Paの条件下、米グラスマン・ハイボルテージ社製直流高圧電源SHタイプを用いてアノード電圧2.0kVを印加し、アノード電流1350mAの条件でイオン照射処理をした。イオン照射して巻き取ったロールを大気中に取り出した後、光線透過率差ΔTと色差ΔE
*を評価した。ΔTは3.5%、ΔE
*は5.8であった。
【0042】
イオン照射して巻き取ったPETフィルムロールを大気中に24時間保管後、同じ連続巻取り式蒸着機の繰出し部に取り付け、蒸着前の到達圧力5×10
−2Paまで真空引きした。つぎにPETフィルムを10m/sの速度で走行させ、粒状アルミニウム(駒沢金属(株)製、純度99.99%)の入ったるつぼを高周波誘導加熱して、蒸着部に酸素10L/minを導入して透過率モニターの設定値80%で投入電力を調節して蒸発量を設定し、酸化アルミニウム層をイオン照射面上に形成した。なお透過率モニターは、350nmの波長における光線透過率を測定するものであり、イオン照射を行っていないPETフィルムを通した際の値を100%として校正を行った。この時の蒸着部の真空度は1×10
−1Paであり、この時の冷却ドラムの温度は−30℃であった。これにより、イオン照射面上に10nm厚の酸化アルミニウム層を設けた透明ガスバリア性蒸着フィルムを製造した。また、イオン照射して巻き取ったロールを大気中に1ヶ月保管後、前記蒸着条件で酸化アルミニウム蒸着し、イオン照射面上に10nm厚の酸化アルミニウム層を設けた透明ガスバリア性蒸着フィルムを製造した。前者の透明ガスバリア性蒸着フィルムのレトルト処理後の密着強度は4.2N/15mmであった。また、大気中に1ヶ月保管後の透明ガスバリア性フィルムのレトルト処理後の密着強度は、4.1N/15mmであり、良好な結果であった。
【0043】
さらに、イオン照射して巻き取ったロールを大気中に3ヶ月保管後、前記蒸着条件で酸化アルミニウム蒸着し、イオン照射面上に10nm厚の酸化アルミニウム層を設けた透明ガスバリア性蒸着フィルムを製造した。レトルト処理後の密着強度は、3.5N/15mmであり、良好な結果であった。
【0044】
(実施例2)
実施例1において、イオン照射時の酸素導入量を0.17L/min、圧力を1×10
−2Paに変更し、アノード印加電圧を2.0kV、アノード電流を960mAとしてイオン照射を行った。ΔTは2.2%、ΔE
*は4.1であった。
【0045】
透明ガスバリア性蒸着フィルム(イオン照射1日後に蒸着)のレトルト処理後の密着強度は3.5N/15mmであった。また、大気中に1ヶ月保管後の透明ガスバリア性フィルムのレトルト処理後の密着強度は、3.2N/15mmであり、良好な結果であった。
【0046】
(実施例3)
実施例1において、イオン照射時の酸素導入量を0.21L/min、圧力を4×10
−2Paに変更し、アノード印加電圧を2.0kV、アノード電流を1880mAとしてイオン照射を行った。ΔTは5.2%、ΔE
*は6.5であった。
【0047】
透明ガスバリア性蒸着フィルム(イオン照射1日後に蒸着)のレトルト処理後の密着強度は4.3N/15mmであった。また、大気中に1ヶ月保管後の透明ガスバリア性フィルムのレトルト処理後の密着強度は、4.1N/15mmであり、良好な結果であった。
【0048】
(実施例4)
実施例1において、イオン照射時の酸素導入量を0.18L/min、圧力を2×10
−2Paと同じにし、アノード印加電圧を1.5kV、アノード電流を1020mAとしてイオン照射を行った。ΔTは1.5%、ΔE
*は4.2であった。
【0049】
透明ガスバリア性蒸着フィルム(イオン照射1日後に蒸着)のレトルト処理後の密着強度は3.5N/15mmであった。また、大気中に1ヶ月保管後の透明ガスバリア性フィルムのレトルト処理後の密着強度は、3.0N/15mmであり、良好な結果であった。
【0050】
(実施例5)
実施例1において、イオン照射時の酸素導入量を0.18L/min、圧力を2×10
−2Paと同じにし、アノード印加電圧を2.5kV、アノード電流を1520mAとしてイオン照射を行った。ΔTは9.1%、ΔE
*は10.2であった。
【0051】
透明ガスバリア性蒸着フィルム(イオン照射1日後に蒸着)のレトルト処理後の密着強度は4.4N/15mmであった。また、大気中に1ヶ月保管後の透明ガスバリア性フィルムのレトルト処理後の密着強度は、4.3N/15mmであり、良好な結果であった。
【0052】
(実施例6)
実施例1において、イオン照射時の酸素導入量を0.17L/min、圧力を1×10
−2Paに変更し、アノード印加電圧を1.5kV、アノード電流を750mAとしてイオン照射を行った。ΔTは1.4%、ΔE
*は2.8であった。
【0053】
透明ガスバリア性蒸着フィルム(イオン照射1日後に蒸着)のレトルト処理後の密着強度は2.8N/15mmであった。また、大気中に1ヶ月保管後の透明ガスバリア性フィルムのレトルト処理後の密着強度は、2.7N/15mmであり、良好な結果であった。
【0054】
(実施例7)
実施例1において、イオン照射時の酸素導入量を0.21L/min、圧力を4×10
−2Paに変更し、アノード印加電圧を2.5kV、アノード電流を2300mAとしてイオン照射を行った。ΔTは12.0%、ΔE
*は15.1であった。
【0055】
透明ガスバリア性蒸着フィルム(イオン照射1日後に蒸着)のレトルト処理後の密着強度は4.4N/15mmであった。また、大気中に1ヶ月保管後の透明ガスバリア性フィルムのレトルト処理後の密着強度は、4.4N/15mmであり、良好な結果であった。
【0056】
(比較例1)
実施例1において、イオン照射時の酸素導入量を0.25L/min、圧力を6×10
−2Paに変更し、アノード印加電圧を2.0kV、アノード電流を860mAとしてイオン照射を行った。イオン束が発散し、イオン照射が効率よく行われず、ΔTは0.5%、ΔE
*は1.5であった。
【0057】
透明ガスバリア性蒸着フィルム(イオン照射1日後に蒸着)のレトルト処理後の密着強度は1.3N/15mmであった。また、大気中に1ヶ月保管後の透明ガスバリア性フィルムのレトルト処理後の密着強度は、1.3N/15mmであり、不十分な結果であった。
【0058】
(比較例2)
実施例1において、イオン照射時の酸素導入量を0.18L/min、圧力を2×10
−2Paに変更し、アノード印加電圧を1.0kV、アノード電流を530mAとしてイオン照射を行った。ΔTは0.8%、ΔE
*は2.3であった。
【0059】
透明ガスバリア性蒸着フィルム(イオン照射1日後に蒸着)のレトルト処理後の密着強度は1.5N/15mmであった。また、大気中に1ヶ月保管後の透明ガスバリア性フィルムのレトルト処理後の密着強度は、1.5N/15mmであり、不十分な結果であった。
【0060】
(比較例3)
実施例1において、イオン照射時の酸素導入量を0.21L/min、圧力を4×10
−2Paに変更し、アノード印加電圧を3.0kV、アノード電流を2580mAとしてイオン照射を行った。ΔTは15.6%、ΔE
*は19.0であった。
【0061】
透明ガスバリア性蒸着フィルム(イオン照射1日後に蒸着)のレトルト処理後の密着強度は4.4N/15mmであった。また、大気中に1ヶ月保管後の透明ガスバリア性フィルムのレトルト処理後の密着強度は、4.4N/15mmであり、密着強度は良好であったが、フィルムが茶褐色の外観となり、透明性が損なわれたため、使用に耐えないものとなった。
【0062】
(比較例4)
実施例と同じ連続巻取り式蒸着機を用い、イオン照射と反応性蒸着を同時に連続的に行った。PETフィルムを速度10m/sで搬送しながら、酸素をイオン源内のアノードとカソード間隙間に0.18L/min幅方向に均等に導入し、圧力を2×10
―2Paに設定した。蒸着部に酸素を8L/min導入したところ、イオン源の圧力は4×10
―2Paまで上昇した。アノード電圧1.5kVを印加しイオン照射処理を行いながら、透過率モニターの設定値80%で投入電力を調節して蒸発量を設定し蒸着を開始した。蒸着開始後、長さ20000メートル付近ではイオン源の圧力は7×10
―2Paまで上昇し、蒸着の最後には4×10
−2Paまで戻った。
【0063】
透明ガスバリア性蒸着フィルム上記蒸着開始後、長さ20000m付近のレトルト処理後の密着強度は1.0N/15mmであり、不十分な結果であった。
【0064】
(比較例5)
イオン照射を実施せず、実施例1における蒸着のみを行った。密着強度は0.2N/15mmであり、不十分な結果であった。
【0065】
実施例、比較例について、工程条件、フィルム特性を表1にまとめた。
【0066】
【表1】