(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
機台に固設のダイブロックに設けられたダイと、ダイに対向するようにラムの前面に取り付けられたパンチとの間でブランクを所定形状の製品に鍛造する鍛造機におけるメカ油圧式背圧兼分流装置であって、初期圧供給用油圧ポンプと、ダイと一緒にユニット化された状態でダイブロックに内蔵されかつブランクに成形荷重に対抗する背圧を付与する背圧工具付ピストンを有するダイブロックシリンダーと、背圧を所望の圧力に設定する調圧用油圧シリンダーと、背圧を開放する開放用シリンダーとを備え、初期圧供給用油圧ポンプがダイブロックシリンダーに第1油圧配管を介して連通連結されると共に、第1油圧配管の途中に、調圧用油圧シリンダーと開放用シリンダーとが第2油圧配管と第3油圧配管とを介してそれぞれ連通連結され、これら第1〜第3油圧配管により背圧兼分流用の油圧回路が形成されている一方、第3油圧配管の途中に、ラムが前死点手前に位置するタイミングで開いて作動油を開放用シリンダー内に解放させ油圧回路内の圧力を低減しかつラムが前死点通過後のタイミングカバルブと、第1油圧配管から開放用シリンダーへの作動油の逆流を阻止するチェック弁とが並列に設けられていると共に、ラムに、該ラムの後退途中から後死点に至るタイミングで開放用シリンダーを短縮してそのシリンダー内の作動油を第1油圧配管に戻す押圧部材が設けられており、さらに、背圧工具付ピストンは、初期圧供給用油圧ポンプによるダイブロックシリンダーにおけるシリンダー室への作動油の初期圧供給によりダイ内に進入すると共にラムの前進時における成形開始時から前死点手前までにおいは作動油を圧縮することによる高作動圧化と調圧用油圧シリンダーによる調圧とによりブランクに成形荷重に対抗する背圧を付与しまたラムが前死点手前から前死点までにおいては開放用シリンダーへの作動油の開放による低作動圧化によりダイ内から後退するように構成されていることを特徴とする鍛造機におけるメカ油圧式背圧兼分流装置。
背圧解放用メカバルブが、駆動カムを有し機械の駆動系に連動して回転する駆動軸と、駆動カムに常時当接し駆動カムの回転により鍛造動作に同期して進退動するバルブ作動杆を備え、カム駆動によるメカ式のバルブ制御により開閉が行われるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の鍛造機におけるメカ油圧式背圧兼分流装置。
第2油圧配管の途中に、ラムが前死点から後退を始めるタイミングで開いて調圧用油圧シリンダー内の作動油を第1油圧配管に戻しかつラムが後死点手前に位置するタイミングで閉じる電磁弁と、調圧用油圧シリンダーから第1油圧配管への作動油の逆流を阻止するチェック弁とが並列に設けられていることを特徴とする請求項1記載の鍛造機におけるメカ油圧式背圧兼分流装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記した従来の横型多段式鍛造機を用いて例えば
図10に示すような形状が非常に複雑な多数の平歯a…aと軸孔bをもつ平ギヤGを成形しようとした場合、
図11に示す平ギヤG´のように、平歯aの両端部分が寸足らずで両端側へ行くほど中心側へ丸くカーブし、かつ平歯aの角部部分にまでも至らず欠肉が生じ、求めるシャープな平ギヤ形状とは程遠い丸みを帯びた不正確な形状となり、高精度な平ギヤを鍛造することが困難であった。その理由としては、据え込み加工した円柱状のブランクを一度の鍛造工程で半径方向に大きく押し出して形状が複雑な平歯aの部分を正確に成形するといったことが非常に困難であり、また、複数の鍛造ステーションで複数回にわたって平歯a…aの部分を段階的に成形しようとしても、鍛造回数が増えるごとにブランクに硬化現象が生じるので二度目以降の鍛造による成形量が極端に小さく、かつより大きな成形荷重も必要なり、求める精度の高いシャープな平歯a…aの成形が困難となるためであった。以上のことから、現在では
図10のような多数のシャープな平歯a…aを有する平ギヤGやこれと同様の複雑形状製品を上記した従来の横型多段式鍛造機により高精度に成形することは困難とされ、ほとんど行なわれておらず、フライス盤やホブ盤などによる切削加工により形成されているのが現状である。
【0004】
そこで、本発明は、上記した問題を解消するため、ダイブロック内部にダイブロックシリンダーを内蔵しかつラムの動きで油圧を発生させてメカ油圧式に背圧鍛造と分流鍛造との両方が行なえるように工夫し、鍛造機により平ギヤのような複雑形状部品の成形を可能にすると共に、鍛造荷重の低減化と型寿命の向上を図り、さらに、加工速度の制御による高速使用に際しても背圧鍛造と分流鍛造との動作制御を正確に行うことができる鍛造機におけるメカ油圧式背圧兼分流装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した問題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、機台に固設のダイブロックに設けられたダイと、ダイに対向するようにラムの前面に取り付けられたパンチとの間でブランクを所定形状の製品に鍛造する鍛造機におけるメカ油圧式背圧兼分流装置であって、初期圧供給用油圧ポンプと、ダイと一緒にユニット化された状態でダイブロックに内蔵され
かつブランクに成形荷重に対抗する背圧を付与する背圧工具付ピストンを有するダイブロックシリンダーと、背圧を所望の圧力に設定する調圧用油圧シリンダーと、背圧を開放する開放用シリンダーとを備え、初期圧供給用油圧ポンプがダイブロックシリンダーに第1油圧配管を介して連通連結されると共に、第1油圧配管の途中に、調圧用油圧シリンダーと開放用シリンダーとが第2油圧配管と第3油圧配管とを介してそれぞれ連通連結され、これら第1〜第3油圧配管により背圧兼分流用の油圧回路が形成されている一方、第3油圧配管の途中に、ラムが前死点手前に位置するタイミングで開いて作動油を開放用シリンダー内に解放させ油圧回路内の圧力を低減しかつラムが前死点通過後のタイミングで閉じる背圧解放用メカバルブと、第1油圧配管から開放用シリンダーへの作動油の逆流を阻止するチェック弁と
が並列に設け
られていると共に、ラムに、該ラムの後退途中から後死点に至るタイミングで開放用シリンダーを短縮してそのシリンダー内の作動油を第1油圧配管に戻す押圧部材が設けられて
おり、さらに、背圧工具付ピストンは、初期圧供給用油圧ポンプによるダイブロックシリンダーにおけるシリンダー室への作動油の初期圧供給によりダイ内に進入すると共にラムの前進時における成形開始時から前死点手前までにおいは作動油を圧縮することによる高作動圧化と調圧用油圧シリンダーによる調圧とによりブランクに成形荷重に対抗する背圧を付与しまたラムが前死点手前から前死点までにおいては開放用シリンダーへの作動油の開放による低作動圧化によりダイ内から後退するように構成されていることを特徴とする。【0006】
本願の請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明における背圧解放用メカバルブが、駆動カムを有し機械の駆動系に連動して回転する駆動軸と、駆動カムに常時当接し駆動カムの回転により鍛造動作に同期して進退動するバルブ作動杆を備え、カム駆動によるメカ式のバルブ制御により開閉が行われるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本願の請求項3記載の発明は、上記請求項1記載の発明における第2油圧配管の途中に、ラムが前死点から後退を始めるタイミングで開いて調圧用油圧シリンダー内の作動油を第1油圧配管に戻しかつラムが後死点手前に位置するタイミングで閉じる電磁弁と、調圧用油圧シリンダーから第1油圧配管への作動油の逆流を阻止するチェック弁とが並列に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願の請求項1記載の発明によれば、上記したようにダイブロック内部にダイブロックシリンダーを内蔵し、ラムの動きで油圧を発生させてメカ油圧式に背圧鍛造と分流鍛造を行うように構成したから、つまり、ラムの前進動作時における鍛造開始から前死点手前までにおいては、調圧用油圧シリンダーで設定した高作動圧の背圧をダイブロックシリンダーの背圧工具付ピストンに付与して背圧鍛造を行い、残りのラムの前死点手前から前死点までにおいては、背圧解放用メカバルブを開いて背圧を解放しダイブロックシリンダーの背圧工具付ピストンのダイ内からの後退を許して分流鍛造が行えるように構成したから、平ギヤのような複雑形状部品を欠肉がなく求める精度の高いシャープな平歯を有する平ギヤを成形することができる。また、鍛造荷重の低減を図ることができて、型寿命も向上できる。しかも、ラムの動きで油圧を発生させてメカ油圧式に背圧鍛造と分流鍛造を行うように構成しているので、加工速度の制御による高速使用に際しても背圧鍛造と分流鍛造との動作制御を正確に行うことができる。その上、動作制御機構に何らかの不具合が生じても、高度で専門的な知識を必要とせず、これにより現場での作業者によるメンテナンス性を向上できると共に、省スペース化と低コスト化を図ることができる。
【0009】
本願の請求項2記載の発明によれば、背圧解放用メカバルブが、カム駆動によるメカ式のバルブ制御により開閉が行われるように構成されているので、特に機械の駆動源としてサーボモータを用い、ラムの鍛造時の前進速度を所定速度に維持しつつ、後退時にはその速度を速めるといったラムの速度制御を行う場合にあっても、機械の駆動系に連動する駆動軸に設けられた駆動カムの回転速度に合わせて背圧解放用メカバルブを開閉させることができる。これにより常に適正なタイミングで背圧鍛造と分流鍛造とが行われ、生産性の向上を図ることができる。
【0010】
本願の請求項3記載の発明によれば、第2油圧配管の途中に、ラムが前死点から後退を始めるタイミングで開いて調圧用油圧シリンダー内の作動油を第1油圧配管に戻しかつラムが後死点手前に位置するタイミングで閉じる電磁弁と、調圧用油圧シリンダーから第1油圧配管への作動油の逆流を阻止するチェック弁とが並列に設けられているから、ラムの1ストロークごとで一旦調圧用油圧シリンダー内の作動油を第1油圧配管に戻し、ラムのストロークごとに背圧を新たに設定し直し、常に同じ背圧を付与する状態で背圧鍛造を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明に係るメカ油圧式背圧兼分流装置を備えた横型多段式鍛造機を示すもので、この鍛造機1は、機台フレーム2の所定位置に固設されたダイブロック3に複数のダイ4a…4gが並設され、このダイブロック3に対して前進後退するラム5を配置し、ラム5の前面に各ダイ4a…4gにそれぞれ対向させて複数のパンチ6a…6gが並設されている。そして、各対応するダイ4a…4gとパンチ6a…6gにより複数段(図では7段)の鍛造ステーションS1〜S7が構成されている。
【0014】
機台フレーム2の一側部にはクイル7が設けられると共に、クイル7の直前にクイル7を横切って線材Aを切断する切断機構8が配設され、この切断機構8によって線材Aを所定寸法に切断することによりブランクBが形成される。なお、実施例では線材Aを切断機構8で切断して所定寸法のブランクBを形成し、そのブランクBを鍛造ステーションS1〜S7で鍛造するようにしているが、切断機構8を設けず予め所定寸法に形成されたブランクBを直接用いるようにしてもよい。
【0015】
そして、上記したブランクBが素材移送用チャック(図示しない)により上記鍛造ステーションS1〜7に順次供給され、各鍛造ステーションS1〜7で所定の成形が施されることにより
図10に示すような求める精度の高いシャープな多数の平歯を有する平ギヤが形成されるようになされている。具体的には、鍛造ステーションS1〜S3において、
図2の(イ)に示す切断ブランクBに据え込み加工が施されて
図2の(ロ)、(ハ)、(ニ)に示すようなブランクB1〜B3が形成され、次に、ブランクB3は180度方向転換されたうえで第4工程の鍛造ステーションS4において、後述する本発明のメカ油圧式背圧兼分流装置10により背圧鍛造と分流鍛造との両方が行われ、
図2の(ホ)に示すような求める精度の高いシャープな多数の平歯a…aを有するブランクB4が形成される。その後、鍛造ステーションS5〜S7においてブランクB4の中心部に所定径の軸孔bがブランクB5のように穴抜き加工され、さらに、ブランクB6、Gようにアイドル工程を経て
図2の(チ)に示すような高精度の平ギヤ(最終製品)Gが形成される。なお、図に示す実施例では、ブランクB3を180度方向転換させて第4工程の鍛造ステーションS4に移送するようにしたものについて説明したけれども、180度方向転換させることなく平行状態のまま移送して成形するようにしてもよいことは勿論である。
また、図示していないが、機械の駆動源としてサーボモータを用い、例えばラム5の鍛造時の前進速度を所定速度に維持しつつ、後退時にはその速度を速めるといったようにラム5のサイクルタイムを制御可能な構成とし、生産性の向上を図る構成としている。
【0016】
次に、本発明の特徴部分を構成する第4工程における鍛造ステーションS4のメカ油圧式背圧兼分流装置10について説明する。
【0017】
メカ油圧式背圧兼分流装置10は、
図3に示すように初期圧供給用油圧ポンプ11と、ダイ12(このダイ12は基本的には先に説明したダイ4dに相当するものであり、以下ダイ12という)と一緒にユニット化された状態でダイブロック3に交換可能に内蔵されかつラム5が前進して作動油を圧縮することによる高作動圧によりダイ12内に進入してブランクB4に成形荷重に対抗する背圧を付与しまた低作動圧化によりダイ12内から後退してブランクB4への背圧を解放する背圧工具13付のピストン14を有するダイブロックシリンダー15と、背圧を所望の圧力に設定するための調圧用油圧シリンダー16及び調圧用エアーシリンダー17と、背圧を解放する一端が大気開放の開放用油圧シリンダー18とを備えている。
【0018】
ダイブロックシリンダー15は、
図4に示すようにダイ12と油圧シリンダーとがユニット化されたもので、ダイブロック3の第4工程位置に内蔵されている。ダイブロックシリンダー15の前部には平歯用成形用の成形孔12aを有するダイ12が設けられていると共に、後部にシリンダー室15aが形成され、そのシリンダー室15a内にピストン14が前後方向に往復動可能内装されている。ピストンの14の先端部には、ノックアウトピンを兼用する背圧工具13が配設されている。背圧工具13は、ダイ12の後部側に形成される軸孔12bに軸方向に対して往復動可能に支持されると共に、ピストン14の往動時、
図4に示すようにダイ12の成形孔12a内にその先端部が進入して、成形時にブランクB4に対し背圧を付与して背圧鍛造を可能にし、また、ピストン14の復動時、ダイ12の成形孔12a内から外方に後退して、ラム5の前死点直前の動作タイミングでブランクB4への背圧を解放し分流鍛造を可能にするように構成されている。なお、ピストン14の中心部には、成形終了後、パンチ6dがダイ12から後退する動作に合わせて背圧工具13でブランクB4をダイ12内から蹴り出すためのノックアウトピン機構を構成する蹴り出し部材19が内装されている。このノックアウトピン機構については周知の構成であるのでその構造及び作用の説明については省略する。
【0019】
そして、
図3に示すように初期圧供給用油圧ポンプ11がダイブロックシリンダー15のシリンダ室15aに第1油圧配管20により連通連結されると共に、第1油圧配管20の途中に、調圧用油圧シリンダー16が第2油圧配管21を介しまた開放用シリンダー18が第3油圧配管22を介してそれぞれ連通連結され、これらの第1〜第3油圧配管20〜22により背圧兼分流鍛造用の油圧回路が形成されている。
【0020】
第2油圧配管21の途中には、ラム5が前死点から後退を始めるタイミングで開いて調圧用油圧シリンダー16内の作動油を第1油圧配管20に戻しかつラム5が後死点手前に位置するタイミングで閉じる電磁弁23と、調圧用油圧シリンダー16から第1油圧配管20への作動油の逆流を阻止するチェック弁24とが並列に設けられている。なお、図に示す実施例では調圧用油圧シリンダー16には、所望の背圧を設定するための手段として調圧用エアーシリンダー17が連設されている。
【0021】
第3油圧配管22の途中には、ラム5が前死点手前に位置するタイミングで開いて作動油を開放用油圧シリンダー18内に流入(解放)させ油圧回路内の背圧を低減しかつラム5が前死点通渦後のタイミングで閉じる背圧解放用メカバルブ25と、第1油圧配管20から開放用油圧シリンダー18への作動油の逆流を阻止するチェック弁26とが並列に設けられている。なお、背圧を低減しとは、背圧をなくしてしまうことも含む概念である。
【0022】
背圧解放用メカバルブ25は、駆動カム27を有し機械の駆動系に連動して回転する駆動軸28と、駆動カム27に常時当接し駆動カム27の回転により鍛造動作に同期して進退動するバルブ作動杆25aを備え、カム駆動によるメカ式のバルブ制御により開閉が行われる。
具体的には、ラム5が前死点手前に位置するタイミングで、バルブ作動杆25aが駆動カム27の小径部から大径部に乗り上げる動作により、バルブ作動杆25aは押し下げられて背圧解放用メカバルブ25を開き、ラム5が前死点通過後のタイミングでバルブ作動杆25aが駆動カム27の大径部から小径部に落ち込むことによりバルブ作動杆25aを押し上げて背圧解放用メカバルブ25を閉じるようにバルブ制御される。
【0023】
開放用油圧シリンダー18はこれのピストン18aがラム5の後退途中のタイミングでラム5に設けられた押圧部材5aに当接してピストン18aが短縮方向に押し込まれて開放用油圧シリンダー18内の作動油がチェック弁26を介して第1油圧配管20に戻されるように構成されている。
【0024】
また、初期圧供給用油圧ポンプ11からは、例えば2MPaの初期圧が供給される。また、図に示す実施例では、第1油圧配管20の初期圧供給用油圧ポンプ11近くに、ラム5の後退途中から後死点に至るまでのタイミングで開き、初期圧の供給時期を規制する初期圧供給用メカバルブ29を設けている。初期圧供給用メカバルブ29は、上記した背圧解放用メカバルブ25の構造と同様に駆動カム30を有し機械の駆動系に連動して回転する駆動軸31と、駆動カム30に常時当接し駆動カム30の回転により鍛造動作に同期して進退動するバルブ作動杆29aを備え、カム駆動によるメカ式のバルブ制御により開閉が行われる。
【0025】
以上の構成により、ラム5の前進動作時における鍛造開始から前死点手前までにおいては調圧用油圧シリンダー16で設定した例えば18MPaの高作動圧の背圧を背圧工具13付のピストン14に付与して背圧鍛造を行い、残りの前死点手前から前死点までにおいては背圧解放用メカバルブ25を開いて開放用油圧シリンダー18により背圧を解放し、これにより背圧工具13付のピストン14のダイ12の成形孔12a内からの後退を許して分流鍛造が行えるようになされている。
【0026】
次に、第4工程の鍛造ステーションS4において、
図6の(ニ)に示すプランクB4を成形するに際してのメカ油圧式背圧兼分流装置10の作用について説明する。
【0027】
まず、
図3に示すように、ラム5が後死点から前進動作して、ブランクB3の成形開始直後からラム5の前死点手前までは、調圧用油圧シリンダー16で設定される例えば18MPaの高作動圧の背圧が背圧工具13付のピストン14に付与された状態のもとで背圧鍛造が行われる。
具体的には、成形開始時には、低作動圧のもとで
図5の(イ)に示すように成形され、
図6の(イ)に示す形状に形成される。
そして、成形開始直後で背圧ON時には、上記高作動圧のもとで
図5の(ロ)に示すように成形され、
図6の(ロ)に示すように平歯の下方部分がやや形成される。
次いで、ラム5の前死点手前で背圧OFF時には、
図7に示すように、駆動カム27が背圧解放用メカバルブ25を開いて作動油を開放用油圧シリンダー18内に流入させ、油圧回路内の背圧をなくしてピストン14のシリンダー室15aでの後退を許すことになる(
図5の(ハ)参照)。そして、
図6の(ハ)に示すように平歯の半ばから下方部分が大まかに形成される。
【0028】
その後、ラム5が前死点手前から前死点に至るまでの間においても、
図7に示すように、駆動カム27が背圧解放用メカバルブ25を開いた状態を保ち、作動油を開放用油圧シリンダー18内に流入させ、油圧回路内の背圧をなくしてピストン14を後退させる。これに伴いピストン14と共に背圧工具13がダイ12の成形孔12a内からの後退を許すことになる。これにより、
図5の(ニ)に示すようにラム5が前死点手前から前死点に至るまでの間においては分流鍛造が行われる。この分流鍛造では、材料の流れる方向を半径方向外方部分と中心の捨て軸部分とに積極的にコントロールして流し、圧力を軽減すると共に角部の欠肉をなくすことができる。その結果、
図6の(ニ)に示すような求める精度の高いシャープな平歯a…aと捨て軸部分とを有するブランクB4が成形される。
【0029】
然る後、
図8に示すようにラム5が前死点から後退を始めるタイミングで第2油圧配管21途中の電磁弁23が開かれ、調圧用油圧シリンダー16内の作動油が開放されて第1油圧配管20に戻されると共に、駆動カム27による押し込みがなくなり背圧解放用メカバルブ25が閉じられる。
【0030】
さらに、
図9に示すようにラム5の後退途中のタイミングでラム5に設けられた押圧部材5aに開放用油圧シリンダー18のピストンロッド18aが当接してピストンロッド18aが短縮方向に押し込まれて開放用油圧シリンダー18内の作動油が第1油圧配管20に戻される。また、これと同じタイミングで電磁弁23が閉じられると共に、駆動カム30により初期圧供給用メカバルブ29が開かれて、初期圧供給用ポンプ11から例えば2MPaの初期圧が供給され,次の背圧兼分流鍛造に備えることになる。
【0031】
その後は、上述したラム5の後死点から始まる一連の鍛造動作が繰り返し行なわれることになる。
【0032】
なお、上記した実施例では、本発明のメカ油圧式背圧兼分流装置10を、平ギヤを鍛造する横型多段式鍛造機に用いた場合について説明したけれども、何ら平ギヤに限定されるものではなく、その他の複雑形状部品にも広く適用できることは勿論である。
【0033】
また、上記した本発明のメカ油圧式背圧兼分流装置10において、背圧開放用メカバルブ25を選択的にON/OFF状態に切換えるメカバルブ切換手段(図示せず)を別設したり、大型の調圧用油圧シリンダー16を特設するようにしてもよい。このようにメカバルブ切換手段や大型の調圧用油圧シリンダー16を設けるようにすれば、例えば求める成形品が比較的簡単な形状の場合、調圧用油圧シリンダー16の設定圧を、求める成形品の形状具合に合わせて適宜低く設定しておき、かつ、背圧開放用メカバルブ25を作用させない状態で背圧作用のみを利用して背圧鍛造することが可能となる。これにより、より一層幅広い成形品の鍛造が可能で、かつ成形品に合わせた最適な鍛造が行える。なお、メカバルブ切換手段としては、例えばバルブ作動杆25aの駆動カム27における大径部(カム山部分)を小径部とは別体に形成して、小径部に対しカム山部分をチップ交換などのようにボルトで固定するようにし、採用する鍛造状態に合わせて脱着可能な構造とすればよい。