(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809669
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ゆるみ止めナット
(51)【国際特許分類】
F16B 39/284 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
F16B39/284 C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-107267(P2018-107267)
(22)【出願日】2018年5月17日
(65)【公開番号】特開2018-197607(P2018-197607A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2019年6月13日
(31)【優先権主張番号】特願2017-113009(P2017-113009)
(32)【優先日】2017年5月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592158109
【氏名又は名称】大阪フォーミング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥野 芳昭
【審査官】
熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−334343(JP,A)
【文献】
特開平03−037404(JP,A)
【文献】
実開昭59−090615(JP,U)
【文献】
特開2009−115297(JP,A)
【文献】
実公昭28−008913(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部にねじ孔を有する多角形のナット本体と、ナット本体の上面から上方に一体に連設されかつ中心部にナット本体のねじ孔に連続するねじ孔を有する円筒状ボスとを備え、円筒状ボスはその肉厚がナット本体の肉厚よりも薄く形成されていると共に、円筒状ボスの先端に、プレスによってねじ孔の外周から内方に変形させると同時にそのねじ孔径及びねじ孔ピッチを変形させてなる圧縮変形部が3個形成されており、かつ、これらの圧縮変形部がねじ孔の周方向に120度づつ間隔をおいてそれぞれ形成されて円形状ボスの先端が平面視三角形状を呈している一方、これら3個の圧縮変形部のプレスによる成形時、これら3個の圧縮変形部のうち一つの圧縮変形部がねじ孔の切り上がり位置に位置するように位置設定されて形成されていることを特徴とするゆるみ止めナット。
【請求項2】
中心部にねじ孔を有する多角形のナット本体における上面のねじ孔周りに、プレスによりねじ孔上端を下方側に変形させてそのねじ孔ピッチを変形させてなる圧縮変形部が3個形成されており、かつ、これらの圧縮変形部がねじ孔の周方向に120度づつ間隔をおいてそれぞれ形成されている一方、これら圧縮変形部のプレスによる成形時、これら3個の圧縮変形部のうち一つの圧縮変形部がねじ孔の切り上がり位置に位置するように位置設定されて形成されていることを特徴とするゆるみ止めナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナットのボルトへの締結時、プリベリングトルクを増大させてゆるみ止めを行う機能を備えたゆるみ止めナットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のゆるみ止めナットとしては、例えば6角ナットの6面のうち、一つ飛ばしの3面の上部3ヶ所に、外周から内方に向ってカシメを施して3個のカシメ部を形成したものが知られている。
【0003】
この3個のカシメ部を有するナットによれば、これのボルトへの締結時、ナットのカシメ部が、ボルトのねじ山にかかる圧力によって生ずるプリベリングトルク(摩擦トルク)を増大させ、ゆるみ止め効果を発生させるようになされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した従来のゆるみ止めナットは、6角ナットの6面のうち、一つ飛ばしの3面の上部3ヶ所に、外周から内方に向ってカシメを施す構成であるため、そのカシメを施す際に、ナットの6角面形状や、カシメ部分の厚さが厚いといったことなどの影響を直接受けることになり、求めるカシメ部を簡単容易にかつ高精度に形成しづらいものであった。そのため、プリベリングトルクにバラツキが生ずることがあった。
【0005】
また、カシメ部を形成するに際し、6角ナットの6面のうち、一つ飛ばしの3面をカシメ基準面とし、その各上部で中央位置に、それぞれカシメを施す構成であることから、6角ナットのねじ孔の切り上がり位置(立ち上がり位置)とカシメ部との位置関係については全く無関係の状態でカシメ部が形成されている。そのため、多数製造されるそれぞれのナットごとにおいて、6角ナットのねじ孔の切り上がり位置に対する3個のカシメ部の配置関係が全くバラバラに形成されることになる。その結果、ナットごとでねじ孔の切り上がり位置と3個のカシメ部との配置関係が異なることによっても、各ナットのボルトに対するプリベリングトルクにバラツキが発生し、より一層求める安定したゆるみ止め効果が得られにくいものであった。
【0006】
そこで本発明は、上記した問題を解決するため、ゆるみ止めナットの形状を工夫してボルトのねじ山に圧力をかける圧縮変形部を簡単容易にかつ高精度に形成できるようにし、また、ねじ孔の切り上がり位置に対する圧縮変形部の配置関係を常に一定の位置に設定してプリベリングトルクのバラツキを効果的に抑え、求める安定したゆるみ止め効果が常に正確に得られる信頼度の高いゆるみ止めナットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に記載の発明は、中心部にねじ孔を有する多角形のナット本体と、ナット本体の上面から上方に一体に連設されかつ中心部にナット本体のねじ孔に連続するねじ孔を有する円筒状ボスとを備え、円筒状ボスはその肉厚がナット本体の肉厚よりも薄く形成されていると共に、円筒状ボスの先端に、プレスによってねじ孔の外周から内方に変形させると同時にそのねじ孔径及びねじ孔ピッチを変形させてなる圧縮変形部が
3個形成されており、
かつ、これらの圧縮変形部がねじ孔の周方向に120度づつ間隔をおいてそれぞれ形成されて円形状ボスの先端が平面視三角形状を呈している一方、これら3個の圧縮変形部のプレスによる成形時、これら3個の圧縮変形部のうち一つの圧縮変形部がねじ孔の切り上がり位置に位置するように位置設定されて形成されていることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項
2記載の発明は、
中心部にねじ孔を有する多角形のナット本体における上面のねじ孔周りに、プレスによりねじ孔上端を下方側に変形させてそのねじ孔ピッチを変形させてなる圧縮変形部が3個形成されており、かつ、これらの圧縮変形部がねじ孔の周方向に120度づつ間隔をおいてそれぞれ形成されている一方、これら圧縮変形部のプレスによる成形時、これら3個の圧縮変形部のうち一つの圧縮変形部がねじ孔の切り上がり位置に位置するように位置設定されて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明の請求項1記載のゆるみ止めナットの構成によれば、ナット本体にこれの上面から上方に一体に連設されかつ中心部にナット本体のねじ孔に連続するねじ孔を有する薄肉の円筒状ボスを突設し、この円筒状ボスに圧縮変形部をプレスにより形成するようにしたから、従来のゆるみ止めナットのように6角面ナット本体の形状やナット本体の肉厚などに何ら影響されることなく、薄肉で均一の円筒状ボスにプレスによる圧縮変形部を簡単容易にかつ正確に成形することができる。また、円筒状ボスの先端に、プレスによってねじ孔の外周から内方に変形させると同時にそのねじ孔径及びねじ孔ピッチを変形させてピッチエラーを起こさせる圧縮変形部が
3個形成されているから、ナット本体のボルトへの螺合時、円筒状ボスの圧縮変形部によりボルトのねじ山に圧力をかけることによってプリベリングトルクを増大させゆるみ止めの機能を十分に発揮することができる。
しかも、上記圧縮変形部がボスの周方向に120度づつ間隔をおいてそれぞれ形成されて円筒状ボスの先端が平面視三角形状を呈している一方、3個の圧縮変形部がプレスにより成形される時、3個の圧縮変形部のうち一つの圧縮変形部が、複数製造されるそれぞれのゆるみ止めナットにおけるねじ孔の切り上がり位置に一致するように位置設定されて形成されているから、そのねじ孔の切り上がり位置に対して一つの圧縮変形部が必ず一致した位置関係となるゆるみ止めナットが形成されることになる。これにより多数製造されるそれぞれのゆるみ止めナットにおいて、3個の圧縮変形部によるボルトのねじ山に対するプリベリングトルクのバラツキを高精度に抑えて常に安定よく作用させることができ、常に信頼度の高いゆるみ止めナットが得られる。【0018】
また、本発明の請求項2記載のゆるみ止めナットの構成によれば、中心部にねじ孔を有する多角形のナット本体における上面のねじ孔周りに、プレスによりねじ孔上端を下方側に変形させてピッチエラーを起こさせる圧縮変形部が3個形成されていることにより、ナット本体のボルトへの螺合時、圧縮変形部によりボルトのねじ山に圧力をかけることによってプリベリングトルクを増大させゆるみ止めの機能を発揮できる。
しかも、ねじ孔の周方向に120度づつ間隔をおいて形成される3個の圧縮変形部がプレスにより成形される時、3個の圧縮変形部のうち、一つの圧縮変形部が複数製造されるそれぞれのゆるみ止めナットにおけるねじ孔の切り上がり位置に一致するように位置設定されて形成されているから、そのねじ孔の切り上がり位置に対して一つの圧縮変形部が必ず一致した位置関係となるゆるみ止めナットが形成されることになる。このように位置設定された条件のもとで多数製造されるそれぞれのゆるみ止めナットにあっては、3個の圧縮変形部によるトータルのボルトのねじ山に対するプリベリングトルクのバラツキを高精度に抑えて常に安定よく作用させることができ、常に信頼度の高いゆるみ止めナットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るゆるみ止めナットの平面図である。
【
図2】
図1のA−A矢視方向のゆるみ止めナットの一部切欠側面図である。
【
図3】
図1のB−B矢視方向のゆるみ止めナットの一部切欠断面図である。
【
図5】本発明に係る別の実施例のゆるみ止めナットの平面図である。
【
図6】
図5のC−C矢視方向のゆるみ止めナットの一部切欠側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0021】
図1〜
図4は、本発明に係るゆるみ止めナットの実施例を示し、このナット1は、中心部にねじ孔2を有する6角形のナット本体3と、ナット本体3の上面から上方に一体に連設されかつ中心部にナット本体3のねじ孔2に連続するねじ孔4を有する円筒状ボス5とを備えている。円筒状ボス5はその肉厚がナット本体5の肉厚よりも薄く形成されていると共に、円筒状ボス5の先端の3箇所をプレスによってねじ孔4の2ピッチ分外周から内方に、つまり円筒状ボス5の先端を横から変形させると同時にそのねじ孔径及びねじ孔ピッチを変形させてピッチエラーを起こさせる3個の圧縮変形部6…6が形成されている。
【0022】
圧縮変形部6…6は円筒状ボス5の周方向に120度づつ間隔をおいてそれぞれ形成されている一方、これらの圧縮変形部6…6のプレスによる成形時には、3個の圧縮変形部のうち、一つの圧縮変形部6が常にねじ孔4の切り上がり位置(立ち上がり位置)4aに一致するように位置設定されたうえで平面視三角おにぎり形状に成形されている。これにより、ねじ孔4の切り上がり位置4aに対して一つの圧縮変形部6が常に一致した位置関係のナット1が形成される。その結果、製造されたそれぞれのナット1において、ボルト(図示せず)に対するプリベリングトルクをよりバラツキなく常に安定よく作用させる構造となっている。
【0023】
次に、以上のように構成した本発明に係るゆるみ止めナットの作用について説明する。
【0024】
ナット本体3にこれの上面から上方に一体に連設されかつ中心部にナット本体3のねじ孔2に連続するねじ孔4を有する薄肉の円筒状ボス5を突設し、この円筒状ボス5に3個の圧縮変形部6…6をプレスにより形成するようにしたから、従来のゆるみ止めナットのように6角面ナット本体の形状やナット本体の肉厚などに何ら影響されることなく、薄肉で均一の円筒状ボス5にプレスによる圧縮変形部6…6を簡単容易にかつ正確に成形することができる。また、圧縮変形部6…6はプレスによってねじ孔4の先端から2ピッチ分を外周から内方に変形されると同時にそのねじ孔径及びねじ孔ピッチが変更されてピッチエラーを起こさせるように形成されているから、ナット本体3のボルトへの螺合時、円筒状ボス5の圧縮変形部6…6によりボルトのねじ山に圧力をかけることによってプリベリングトルクを増大させゆるみ止めの機能を十分に発揮することができる。
【0025】
しかも、円筒状ボス5の周方向に120度づつ間隔をおいて形成される3個の圧縮変形部6…6は、そのプレスにより成形される時、3個の圧縮変形部のうち、一つの圧縮変形部6が常に円筒状ボス5におけるねじ孔4の切り上がり位置4aに一致するように位置設定されて平面視三角おにぎり形状に成形されているから、ねじ孔4の切り上がり位置4aに対して一つの圧縮変形部6が常に一致した位置関係となるゆるみ止めナット1が形成されることになる。これにより多数製造されるそれぞれのゆるみ止めナット1において、3個の圧縮変形部6…6のトータルによるボルトのねじ山に対するプリベリングトルクのバラツキを高精度に抑えて常に安定よく作用させることができ、常に信頼度の高いゆるみ止めナットが得られる。
【0028】
なお、ナット本体3は6角形に限られるものではなく、4角形や8角形、12角形などの多角形ナット本体であってもよいし、また、多角形ナット本体の下面側に大径のフランジ(鍔部)を一体に連設したものであってもよい。なお、上記した実施例では圧縮変形部6…6として、プレスによりねじ孔4の先端から2ピッチ分を外周から内方に変形させることにより形成したけれども、必ずしも2ピッチ分でなくてもよい。
【0029】
図5〜
図7は、本発明に係るゆるみ止めナットの別の実施例を示し、このナット11は、中心部にねじ孔12を有する6角形のナット本体13における上面のねじ孔12周りに、プレスによりねじ孔上端を上から下方に変形させてそのねじ孔ピッチを変形させてなる圧縮変形部16…16が3個形成されており、かつ、これらの圧縮変形部16…16がねじ孔12の周方向に120度づつ間隔をおいてそれぞれ形成されている一方、これら3個の圧縮変形部16…16のプレスによる成形時、これら3個の圧縮変形部16…16のうち、一つの圧縮変形部16が常にねじ孔12の切り上がり位置12aに位置するように位置設定されて形成されている。
【0030】
従って、この別の実施例のゆるみ止めナット11においても、前述の実施例のゆるみ止めナット1と同様にねじ孔12の切り上がり位置12aに対して一つの圧縮変形部6が常に一致した位置関係となるゆるみ止めナット1が形成されることになる。その結果、このように位置設定された条件のもとで多数製造されるそれぞれのゆるみ止めナット11にあっては、3個の圧縮変形部16…16のトータルによるボルト(図示せず)のねじ山に対するプリベリングトルクのバラツキを高精度に抑えて常に安定よく作用させることができ、常に信頼度の高いゆるみ止めナットが得られる。
【0032】
また、ナット本体3は6角形に限られるものではなく、4角形や8角形、12角形などの多角形ナット本体であってもよいし、また、多角形ナット本体の下面側に例えば大径のフランジ(鍔部)を一体に連設したフランジ付きのものや、これらのナット本体の下面側に複数の溶接用の突起を一体に設けた溶接突起付きのものであってもよい。なお、溶接突起付きのナット本体の突起としては、例えばナット本体の下面から3つ又は4つの突起が下方又は斜め放射状方向に突出しかつそれぞれが断面視三角形状又は四角形状を呈するものであったり、或いはナット本体の下面から断面視円形を呈する複数個の突起が下方に一体に突出するようなものであってもよい。
【0033】
また、
図5において17はナット本体13の上面に設けたゆるみ止めナット11の種類やメーカーを示すための刻印記号である。この記号により例えば一つの圧縮変形部16が常にねじ孔12の切り上がり位置12aに一致するように位置設定されたゆるみ止めナット11であるか、或いは一つの圧縮変形部16が常にねじ孔12の切り上がり位置12aに対して常に一定角度離れた定位置となるように位置設定されたゆるみ止めナットであるかなどの識別や、他のナットとの区別を行い混同や誤認使用などを防止するために設けたものである。
【符号の説明】
【0034】
1 ゆるみ止めナット
2 ねじ孔
3 ナット本体
4 ねじ孔
4a 切り上がり位置
5 円筒状ボス
6 圧縮変形部
11 ゆるみ止めナット
12 ねじ孔
12a 切り上がり位置
13 ナット本体
16 圧縮変形部