(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809675
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】植物抽出物を含有する口腔内即溶性顆粒の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20201221BHJP
A23P 30/20 20160101ALI20201221BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20201221BHJP
A61K 36/18 20060101ALI20201221BHJP
A61K 36/9066 20060101ALI20201221BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20201221BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
A23L5/00 D
A23L5/00 N
A23P30/20
A61K9/16
A61K36/18
A61K36/9066
A61K47/26
A61K47/36
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-202262(P2016-202262)
(22)【出願日】2016年10月14日
(65)【公開番号】特開2018-61483(P2018-61483A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】306019030
【氏名又は名称】ハウスウェルネスフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100120905
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 伸子
(72)【発明者】
【氏名】田口 修也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 尚之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真由美
(72)【発明者】
【氏名】岸 孝礼
(72)【発明者】
【氏名】松田 良仁
(72)【発明者】
【氏名】平山 善丈
【審査官】
福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−172012(JP,A)
【文献】
特開2013−075864(JP,A)
【文献】
特開2012−087064(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/108822(WO,A1)
【文献】
特開2003−155497(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/039538(WO,A1)
【文献】
特開2006−143664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23P
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物抽出物と糖アルコールと澱粉を含む粉末混合物に、水性媒体を添加して練合する工程と、練合後の粉末混合物を押し出し造粒する工程と、造粒物を乾燥する工程を含み、練合後、かつ造粒物の乾燥前における粉末混合物の水分量が5.1重量%より多く8.9重量%未満であることを特徴とする、植物抽出物を含有する口腔内即溶性顆粒の製造方法。
【請求項2】
口腔内即溶性顆粒中の植物抽出物の含有量が10重量%以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
植物抽出物がウコンエキス及び/又はガジュツエキスである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
糖アルコールと澱粉の混合比が、重量比で1:1〜5:1である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
糖アルコールが粉末還元麦芽糖で、澱粉がコーンスターチである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
口腔内即溶性顆粒が、水なしで服用可能である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
水性媒体が、水、エタノール、又は水とエタノールの混合液である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウコンエキスなどの苦味のある植物抽出物を含有する口腔内即溶性顆粒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品、飼料、医薬品、医薬部外品等の形態で経口摂取される成分には、苦味、辛味、酸味、渋味等の不快な味を呈する成分が含まれることがある。植物抽出物もそのような成分の例であるが、植物抽出物は、ほとんどの場合苦いため、錠剤化するか、顆粒化した製品を水に溶かして服用する仕様が多い。また、植物抽出物は一般的に糖質を含んでいるために、粘性があり、粉末化しても嵩低い重質な粉体となる。そのため植物抽出物を使用すると造粒負荷が大きくて顆粒化しづらいという特有の問題がある。
【0003】
これまで、口腔内において、苦味などの不快な味を感じさせない製剤について種々の技術が開発されている。例えば、特許文献1及び2には、ガジュツ等の不快な呈味成分を油脂や蛋白質等を含む被覆層にてコーティングしてその溶出を抑制するとともに、コーティングの中に不快な呈味成分とともに高感度甘味料などの嬌味物質を含有させることによって、不快な味を感じにくくした即溶性顆粒が記載されている。しかしながら、この即溶性顆粒は、被覆造粒物の製造工程が複雑で、コストがかかり、生産性と経済性において満足がいくものではなかった。
【0004】
特許文献3には、植物抽出物のように粘性の高い原料を用いて押し出し造粒により粒状化する際に、練合時や製粒時の粘度及び機械抵抗の増大を解消するため、練合液として、水、及びメントール含有エタノールを用いて練合することが提案されているが、製造した顆粒の口溶け性や苦味については検討されていない。
【0005】
特許文献4には、特定の粒径の顆粒を成形することによって、素材固有の風味が舌に直接感じられやすい顆粒剤であっても、異味成分の苦味や渋みなどの不快な風味がマスクされ、飲用時の飲み心地と風味に優れた速崩壊性顆粒の製造方法が記載されている。しかしながら、異味成分はグルコサミン、コンドロイチン、酵素処理ルチンの3つの成分のみが対象であり、植物抽出物は対象とされていない。
【0006】
特許文献5には、エリスリトールと砂糖を賦形剤として用い、顆粒の粒度を一定範囲にすることによって、口中に直接入れても即時に少量の唾液に溶解して、嚥下性が良好な瞬溶性顆粒が記載されている。しかしながら、顆粒に配合される薬剤の不快な味の解消については言及がない。
【0007】
特許文献6には、特定の溶解熱を有する糖アルコールとpH調節剤を併用添加することによって、薬物の苦味等の不快な味を改善することが記載されているが、薬物としてはトラネキサム酸が対象であり、植物抽出物は対象とされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5756727号公報
【特許文献2】特許第5909040号公報
【特許文献3】特許第4803969号公報
【特許文献4】特許第5270893号公報
【特許文献5】特許第3435109号公報
【特許文献6】特許第4346817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、顆粒化が難しい植物抽出物を対象とし、口腔内で即時に溶解し、苦みを感じにくく、水なしでも簡便に服用できる顆粒を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、植物抽出物を含有する顆粒の製造において、基材に糖アルコールと澱粉を用いること、練合工程で用いる水の量をできるだけ減少させて練合後の粉末混合物の水分量を所定の範囲になるように原料を配合することによって、粉末混合物の練合時に粘度が上がらずに押し出し造粒が容易にできること、多孔質で口溶け性に優れ、苦みがなく、嵩高い顆粒が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)植物抽出物と糖アルコールと澱粉を含む粉末混合物に、水性媒体を添加して練合する工程と、練合後の粉末混合物を押し出し造粒する工程を含み、練合後の粉末混合物の水分量が5.1重量%より多く8.9重量%未満であることを特徴とする、植物抽出物を含有する口腔内即溶性顆粒の製造方法。
(2)口腔内即溶性顆粒中の植物抽出物の含有量が10重量%以上である、(1)に記載の製造方法。
(3)植物抽出物がウコンエキス及び/又はガジュツエキスである、(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)糖アルコールと澱粉の混合比が、重量比で1:1〜5:1である、(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)糖アルコールが粉末還元麦芽糖で、澱粉がコーンスターチである、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)口腔内即溶性顆粒が、水なしで服用可能である、(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)水性媒体が、水、エタノール、又は水とエタノールの混合液である、(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、口腔内で即時に溶解し、苦みを感じにくく、水なしでも簡便に服用できる植物抽出物含有顆粒を製造することができる。本発明の方法は、苦味物質をマスキングするためのコーティング工程を行うことなく、また、特別な原料も使用しないので、生産性及び経済性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例1〜6及び比較例2の顆粒の顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の植物抽出物を含有する口腔内即溶性顆粒の製造方法は、植物抽出物と糖アルコールと澱粉を含む粉末混合物に、水性媒体を添加して練合する工程と、練合後の粉末混合物を押し出し造粒する工程を含み、練合後の粉末混合物の水分量が5.1重量%より多く8.9重量%未満であることを特徴とする。本方法により製造された口腔内即溶性顆粒は、水なしで服用しても、唾液の存在下で即時に溶解するので、場所や時間を選ばず、簡便に服用できる。
【0015】
本発明において用いる「植物抽出物」としては、ガジュツ(紫ウコン)、秋ウコン、春ウコン(キョウオウ)、センブリ、ゲンチアナ、グレープフルーツ、茶、タマネギ、ソバ、柿、大豆、コーヒー、イチゴ、ゴマ、パセリ、クララ、キハダ、ニガキ、ダイダイ、ホップ、カカオ等の植物の抽出物が挙げられる。これらの植物抽出物は、単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてよい。特に、ガジュツ、秋ウコン、春ウコンからなる群から選ばれる1種又は2種以上の植物の抽出物が好ましい。
【0016】
本発明において「植物抽出物」とは、上記の植物の植物体の一部(例えば食品、医薬品等の用途で通常摂取される部位)又は全部の抽出溶媒による抽出物をいう。抽出溶媒としては、水、熱水、親水性有機溶媒、水と親水性有機溶媒の混合溶媒が挙げられ、アルコール、水、アルコールと水の混合溶媒が好ましく、アルコールとしてはエタノールが好ましい。水と親水性有機溶媒の混合溶媒を用いる場合、水と親水性有機溶媒との混合比は特に限定されないが、例えば重量比で10:90〜90:10の範囲が好ましく、20:80〜50:50の範囲がより好ましい。本発明においては、この植物抽出物を、粉末の形態で用いる。植物抽出物の粉末は、上記の抽出により得られた溶媒相を、濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理に供することによって調製することができる。
【0017】
本発明において用いる「糖アルコール」としては、粉末還元麦芽糖(マルチトール)、還元乳糖(ラクチトール)、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、イソマルチトール、トレハロース、パラチノース、還元澱粉糖化物等が挙げられる。これらの糖アルコールは、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。これらの糖アルコールのなかでも、水に溶解しやすいこと、植物抽出物よりも吸水性が高く、練合時に吸水しても粘り気が出ないという点において、粉末還元麦芽糖が好ましい。
【0018】
本発明に用いる「澱粉」としては、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、サツマイモ澱粉、タピオカ澱粉、及びこれらのエステル・エーテル化架橋物、酸化物、部分分解物等が挙げられる。これらの澱粉は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。これらの澱粉のなかでも、粒子が細かく粒径が揃っているため流動性が良く、押し出し造粒時の滑りが良くなること、糊化温度が高く、液体原料と練合、造粒しても粘度が高くなりにくいこと、仮に粘度が高くなっても曳糸性が少ない塑性流動粘性であるという点において、コーンスターチが好ましい。
【0019】
上記の植物抽出物と糖アルコールと澱粉を含む粉末混合物には、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分としては、飲食品や医薬品などの最終的な形態において許容される成分であって、経口摂取可能な成分であれば特に限定はされないが、例えば、甘味料、酸味料、ビタミン類、ミネラル類、酸化防止剤等が挙げられる。また、必要により、香料、色素、保存料等を用いてもよい。
【0020】
甘味料としては、単糖(ブドウ糖、果糖、キシロース、ガラクトース等)、二糖(ショ糖、麦芽糖、乳糖等)、オリゴ糖(フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー等)、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、砂糖混合異性化糖等)、高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、ステビア、アスパルテーム等)等が挙げられる。
【0021】
酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、フィチン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸等の有機酸、リン酸等の無機酸、又はこれらのナトリウム塩、カリウム塩、若しくはカルシウム塩等が挙げられる。
【0022】
ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、イノシトール等が挙げられる。
【0023】
ミネラル類としては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、カリウム等が挙げられる。
【0024】
酸化防止剤としては、ビタミンC、トコフェロール(ビタミンE)、酵素処理ルチン、カテキン等が挙げられる。
【0025】
本発明の口腔内即溶性顆粒の製造方法は、基材に糖アルコールと澱粉を用い、練合後の粉末混合物の水分量が所定の範囲となるように原料を配合する以外は、通常の押し出し造粒による顆粒の製造工程、すなわち、粉末原料の混合、結合剤を含む溶液(練合液)の加液混合(練合)、押し出し造粒、乾燥、整粒、篩通しによって行うことができる。ここで、「練合後の粉末混合物の水分量」とは、粉末原料の水分と練合液の水分を合算した量をいう。練合後の粉末混合物の水分量は、5.1重量%より多く8.9重量%未満であればよいが、6.1〜8.0重量%が好ましく、7.1〜8.0重量%がより好ましい。
【0026】
(粉末原料の混合)
まず、粉末原料である植物抽出物と糖アルコールと澱粉、及びその他の成分を混合する。粉末原料を混合する方法としては、粉末原料の各成分を均一に混合できる方法であればいかなる方法でもよい。混合機械としては、例えば、V型混合機、リボン型混合機、コンテナミキサー、高速攪拌混合機等が挙げられる。混合温度としては、特に限定はされないが、10℃〜35℃が好ましく、15℃〜25℃がより好ましい。また、混合時間も、特に限定されないが、0.5〜5分間が好ましく、1〜2分間がより好ましい。植物抽出物は、最終的に得られる口腔内即溶性顆粒全量に対して、10重量%以上であることが好ましい。また、糖アルコールと澱粉の混合比は、良好な造粒物を得る上で、糖アルコールに対して澱粉が同量又はそれ以下であれば限定はされないが、例えば、重量比で糖アルコール:澱粉が1:1〜5:1が好ましく、1:1〜3:1がより好ましく、1:1〜2:1がさらに好ましい。なお、澱粉が含まれないと、造粒物を形成することができない。逆に、糖アルコールが含まれないと、求める良好な口溶け性が得られない。
【0027】
(練合)
次に、上記の粉末原料を混合した粉末混合物に、練合液として水性媒体を添加して練合する。水性媒体としては、水、エタノール、又は水とエタノールの混合液が挙げられる。また、水とエタノールの混合液(エタノール水溶液)を用いる場合、その混合比は限定されず適宜選択できる。ここで、エタノール水溶液は、市販のエタノール製剤のほか、酒精を用いてもよい。酒精としては、食用として供されるものであれば特に限定はされない。例えば、澱粉質や糖類を含有する天然原料から酵母の酒精発酵作用で生成したもの、又はこれらの成分を含むものがあり、清酒、焼酎、ワイン、ウイスキー、ブランデー等の酒類、みりん等の発酵調味料等のように、エタノールを含有する液を用いることができる。粉末混合物に対する水性媒体の添加量は、練合後の粉末混合物の水分量が上記範囲となる量であれば特に限定はされない。また、上記の水性媒体(練合液)には、必要により結合剤を添加してもよく、例えば、単糖類、二糖類、多糖類、セルロース類、糖アルコール類、又はこれらの2種以上の混合物等が挙げられ、製剤学的に許容できるものあれば特に限定はされない。また、添加量も造粒が可能である量であれば特に制限はない。なお、粉末状の結合剤を用いる場合は、前記の粉末原料中に添加してもよい。
【0028】
(押し出し造粒)
次に、上記練合後の紛体混合物を押し出し造粒する。押し出し造粒とは、水又は結合液を加えて混練し、可塑性を付与した粉末を多数の穴のあいたスクリーン又は所定の孔径を有するダイスからスクリュー、ローラー等により押し出して造粒することをいう。押し出し造粒は、低水分条件下で、造粒物を円滑かつ効率よく製造できる点で本発明の方法には好適である。造粒機械としては、前押し出し式造粒機、ディスクペレッター式造粒機、リングダイ式造粒機、バスケット式造粒機、オシレーティング式造粒機、シリンダー式造粒機等が挙げられる。本発明における押し出し造粒の条件は、即溶性の良好な顆粒の嵩比重を得るために、孔径0.8〜1.5mm程度の押し出し孔を用いることが好ましい。
【0029】
(乾燥、整粒)
上記造粒物の乾燥は、通常の乾燥方法によって行うことができる。乾燥機械としては、例えば、通風乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、流動層乾燥機等が挙げられる。所望により、乾燥後に篩、コーミルなどで篩過、整粒することができる。
【0030】
本発明の方法により製造された口腔内即溶性顆粒は、食品として提供されてもよいし、経口投与用の医薬品として提供されてもよいが、好ましくは食品である。また、当該顆粒は、食品や医薬品用の容器や袋として使用される容器や袋に収容することが可能であり、例えば、紙、プラスチック、ガラス、金属製の容器や袋等が挙げられる。なかでも、1回の経口摂取量(例えば、1.5g〜2g程度)ごとに包装された形態(スティック包装、分包包装等)が好ましい。包材としては、通常、食品や医薬品に使用されているものであれば限定されないが、例えば、アルミ箔、合成樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ラミネート紙などを組み合わせたものが使用できる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
【0032】
実施例及び比較例において使用した原料を以下に示す。
粉末還元麦芽糖:「レシス微粉」(三菱商事フードテック株式会社製、マルチトール99.5%含有)
コーンスターチ:「コーンスターチ」(三和澱粉工業株式会社製)
還元麦芽糖水飴:「アマルティシロップ」(三菱商事フードテック株式会社製)
エタノール水溶液製剤:「コーヘルシン」(三菱化学フーズ株式会社製、エタノール70%)
【0033】
(実施例1〜6、比較例1〜2)
1.試験品の調製
粉末原料のウコンエキス、ガジュツエキス、粉末還元麦芽糖、コーンスターチ、酸味料(クエン酸)、甘味料(ステビア)を、表1に示す配合(重量%)で均一に混合して粉末混合物を調製した。一方、表1に示す配合(重量%)で、液体原料の還元麦芽糖水飴(結合剤)を水とエタノール水溶液(70%)に溶解した液を調製し、この溶液を練合液として用いて前記粉末混合物にスプレー添加し、練合した。練合後の粉末混合物を押し出し造粒機(株式会社ダルトン社製、マルチグランMG−55−1)を用いて孔径1.3mmのスクリーンにて造粒し、吸気温度60℃で10分乾燥後放冷し、試験品の顆粒を調製した。なお、実施例1〜3及び比較例1〜2は、粉末原料の配合量を一定にし、液体原料中の水の配合量を変化させることによって、練合後の粉末混合物の水分量が異なる試験品とした。また、実施例4〜6は、練合後の粉末混合物の水分量を一定にし、粉末原料中の粉末還元麦芽糖とコーンスターチの混合比を変化させた試験品とした。
【0034】
2.評価方法
(1)官能評価
各試験品について、10名のパネラーにより官能評価を行った。パネラーは各試験品を摂取し、「口溶け性」と「苦み」について1〜10段階(口溶け性は10点が良好、苦みは10点が強い)で評価し、評価点の平均値を求めた。
【0035】
(2)造粒性の評価
各試験品の造粒性は造粒機負荷(A:電流値)で評価した。
【0036】
(3)顆粒の崩壊速度及び嵩比重の測定
顆粒の崩壊速度(秒)は溶けやすさの指標となるもので、日本薬局方第十七改正薬局6.09崩壊試験法に準じて測定した。また、嵩比重(g/cc)は、顆粒が多孔質で嵩高であるか否かの指標となるもので、顆粒のタッピングしない状態の単位体積あたりの重量値(ゆるめ嵩比重)を意味する。具体的には、静置した内容積100ccのカップに試験品の顆粒を入れ、カップの上のはみ出した顆粒をブレードですりきって秤量し、その測定値をカップの容量(100cc)で除すことによって求めた。顆粒の崩壊速度及び嵩比重は、各試験品につき、3回の測定の平均値を求めた。
【0037】
(4)顆粒の顕微鏡観察
顆粒を走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察した。
【0038】
3.結果
試験結果を表1に合わせて示す。なお、表中「−」は、造粒できず、顆粒の評価を行っていないことを示す。また、
図1に各試験品の顆粒(造粒できなかった比較例1は除く)の走査電子顕微鏡写真を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示すように、練合後の粉末混合物の水分量が6.1〜8.0重量%の試験品(実施例1〜6)は、口溶けがよく、苦みの少ない顆粒であった。これに対し、同水分量が5.1重量%の試験品(比較例1)は、水分が少なすぎるために造粒負荷がかからず顆粒を形成することができず、また、同水分量が8.9重量%の試験品(比較例2)は、顆粒が硬くて口溶けが悪く、苦みが出た。これらの結果から、練合後の粉末混合物の水分量が5.1重量%より多く8.9重量%未満が好ましい範囲であるといえる。
【0041】
また、粉末原料中の粉末還元麦芽糖とコーンスターチの混合比については、粉末還元麦芽糖に対してコーンスターチが同量又はそれ以下である試験品(実施例4〜6)は、口溶けがよく、苦みの少ない顆粒であった。
【0042】
図1の顕微鏡写真からわかるように、練合後の粉末混合物の水分量が6.1〜8.0重量%の試験品(実施例1〜6)は、多孔質で嵩高の顆粒であった。これに対し、同水分量が8.9重量%の試験品(比較例2)は、表面が平滑で多孔質ではなく、嵩低い顆粒であった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の方法によれば、口腔内において唾液により即時に溶解し、水なしでも服用できる、植物抽出物含有顆粒を製造することができる。従って、本発明は、医薬品やサプリメントの製造分野において利用できる。