【実施例】
【0092】
以下の例は、化合物1フォームI無溶媒和物の遊離塩基の調製、特徴付け、及び特性を記載する。特に指定されない限り、温度は全てセルシウス度(℃)であり、以下の略記は以下の定義を有する:
DSC 示差走査熱量測定
DVS 動的蒸気収着
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
NA 該当なし
ND 未検
Q 単位時間当たりに溶解した割合
RH 相対湿度
RSD 残差標準偏差
RRT 相対保持時間
SS−NMR 固体核磁気共鳴
TGA 熱重量分析
TG−IR 熱重量赤外分析
XRPD 粉末X線回折
VT−XRPD 可変温度粉末X線回折
【0093】
化合物1を調製するための合成経路
以下に概略的に記載し且つその後に詳説するとおり、式(I)の化合物を合成した。
【化3】
【0094】
実施例1:化合物15の合成
【化4】
0℃でDCM(50ml)中2−ブロモベンゼン−1,3−ジオール(5g、26.45mmol)の溶液に、DIPEA(11.54mL、66.13mmol)及びMOMCl(4.42mL、58.19mmol)を添加した。混合物を0℃で1.5時間撹拌し、次に室温に加温した。溶液をDCMで希釈し、飽和NaHCO
3、ブラインで洗浄し、乾燥させて濃縮すると粗生成物が得られ、これをカラム(ヘキサン/EtOAc=4:1)で精製することにより、所望の生成物15.58g(90%)を得た。
【0095】
実施例2:化合物13〜15の合成
【化5】
−78℃でTHF(150mL)中2−ブロモ−1,3−ビス(メトキシメトキシ)ベンゼン(15)(19.9g、71.8mmol)の溶液に、BuLi(2.5M、31.6mL、79.0mmol)を滴下して添加した。この溶液を−78℃で25分間撹拌し(白濁した混合物が生じる)、次にそれを0℃に加温し、25分間撹拌した。反応混合物はゆっくりと均一になった。この溶液に0℃でDMFを添加した。25分後、HPLCは反応の完了を示した。混合物を飽和NH4Cl(150mL)でクエンチし、エーテル(300mL)で希釈した。有機層を分離し、水層をエーテル(2×200mL)でさら
に抽出し、有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、乾燥させて濃縮すると粗生成物が得られ、これを粉砕することにより、14.6gの所望の生成物を得た。次にろ液を濃縮し、カラムで精製することにより、さらなる0.7gを得た。全質量は15.3gである。
【0096】
実施例3:レソルシノール11からの化合物13の合成
【化6】
機械的スターラーを備えた三つ口丸底フラスコに、窒素雰囲気下で0.22molのNaH(鉱油中50%懸濁液)を入れた。NaHを2部分量(100mL)のn−ヘキサン、次に300mLの乾燥ジエチルエーテルで洗浄した;次に80mLの無水DMFを添加した。次に100mLのジエチルエーテル中に溶解した0.09molのレソルシノール11を滴下して添加し、混合物を撹拌下に室温で30分間放置した。次に0.18molのMOMClをゆっくりと添加した。撹拌下室温で1時間後、250mLの水を添加し、有機層をジエチルエーテルで抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、次に濃縮すると粗生成物が得られ、これをシリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、化合物12(93%収率)を得た。
【0097】
三つ口丸底フラスコに、窒素雰囲気下で110mLのn−ヘキサン、0.79molのBuLi及び9.4mLのテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を入れた。この混合物を−10℃で冷却し、0.079molのビス−フェニルエーテル12をゆっくりと添加した。得られた混合物を−10℃で2時間、磁気撹拌下に放置した。次に温度を0℃に上昇させ、0.067molのDMFを滴下して添加した。1時間後、pHが酸性になるまでHCl水溶液を添加した;次に混合物をエチルエーテルで抽出した。合わせた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濃縮することにより、アルデヒド13(84%)を得た。
2,6−ビス(メトキシメトキシ)ベンズアルデヒド(13):融点58〜59℃(n−ヘキサン);IR(KBr)n:1685(C=O)cm
−1;
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ3.51(s,6H,2 OCH
3),5.28(s,4H,2
OCH
2O),6.84(d,2H,J=8.40Hz,H−3,H−5),7.41(t,1H,J=8.40Hz,H−4),10.55(s,1H,CHO);MS,m/e(相対強度)226(M+,3),180(4),164(14),122(2),92(2),45(100);分析C
11H
14O
5計算値:C,58.40;H,6.24.実測値:C,57.98;H,6.20.
【0098】
実施例4:化合物16の合成
【化7】
THF(105mL)(溶媒はN
2でパージした)中2,6−ビス(メトキシメトキシ)ベンズアルデヒド(13)(15.3g、67.6mmol)の溶液に、濃HCl(12N、7mL)をN
2下で添加し、次にそれをN
2下で1.5時間さらに撹拌した。この
溶液に、ブライン(100mL)及びエーテル(150ml)を添加した。有機層を分離し、水層をエーテル(2×200mL)でさらに抽出した。有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、乾燥させて濃縮すると粗生成物が得られ、これをカラム(300g、ヘキサン/EtOAc=85:15)で精製することにより、所望の生成物16(9.9g)を黄色の液体として得た。
【0099】
実施例5:化合物17の合成
【化8】
DMF(120mL)(DMF溶液はN
2で10分間パージした)中2−ヒドロキシ−6−(メトキシメトキシ)ベンズアルデヒド(16)(10.88g、59.72mmol)の溶液に、K
2CO
3(32.05g、231.92mmol)及び3−(クロロメチル)−2−(1−イソプロピル−1H−ピラゾール−5−イル)ピリジンヒドロクロリド(10)(15.78g、57.98mmol)を添加した。この混合物を65℃で1.5時間加熱し、室温に冷却し、氷水(800mL)中に流し込んだ。沈殿した固体をろ過によって単離し、乾燥させて濃縮することにより、所望の生成物(17、18g)を得た。
【0100】
実施例6:化合物(I)の合成
【化9】
THF(135mL、溶液はN
2でパージした)中2−((2−(1−イソプロピル−1H−ピラゾール−5−イル)ピリジン−3−イル)メトキシ)−6−(メトキシメトキシ)ベンズアルデヒド(17)(18g、47.19mmol)の溶液に、濃HCl(12N、20mL)を添加した。溶液を室温で3時間撹拌したところでHPLCが反応の完了を示した。この混合物を水(1.2L)中NaHCO
3(15g)の溶液に添加し、得られた沈殿物をろ過によって回収し、乾燥させることにより粗固体を得て、これをカラム(DCM/EtOAc=60:40)によりさらに精製することにより、純粋生成物(15.3g)を得た。
【0101】
実施例7:化合物I(遊離塩基)及びそのHCl塩形態の合成
化合物(I)遊離塩基(40g)を、光延条件下でのアルコール中間体7と2,6−ジヒドロキシベンズアルデヒド9とのカップリングから得た。以下にも手順を提供する:
【化10】
【0102】
実施例8:光延カップリングによる化合物(I)の合成
窒素不活性雰囲気でパージし及び維持した2000mL三つ口丸底フラスコに、テトラヒドロフラン(1000mL)中[2−[1−(プロパン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル]ピリジン−3−イル]メタノール(7)(70g、322.18mmol、1.00当量)の溶液を入れた。この反応混合物に、2,6−ジヒドロキシベンズアルデヒド(9)(49.2g、356.21mmol、1.10当量)及びPPh
3(101g、385.07mmol、1.20当量)を添加した。続いてテトラヒドロフラン(200ml)中DIAD(78.1g、386.23mmol、1.20当量)の溶液を撹拌しながら滴下して添加した。得られた溶液を室温で一晩撹拌した。得られた溶液を500mLのH
2Oで希釈した。得られた溶液を3×500mLのジクロロメタンで抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて真空下で濃縮した。この残渣を、EA:PE(1:50−1:3)を溶離液として含むシリカゲルカラムに加え、粗生成物を生じさせた。この粗生成物を1/1.5の比のi−プロパノール/H
2Oから再結晶化させた。これにより、40g(37%)の2−ヒドロキシ−6−([2−[1−(プロパン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル]ピリジン−3−イル]メトキシ)ベンズアルデヒドが淡黄色の固体として得られた。この化合物は80〜82℃の融点を呈した。MS(ES,m/z):338.1[M+1].
1H NMR(300MHz,DMSO−d6)δ11.72(s,1H),10.21(s,1H),8.76(d,J=3.6Hz,1H),8.24(d,J=2.7Hz,1H),7.55(m,3H),6.55(m,3H),5.21(s,2H),4.65(m,1H),1.37(d,J=5.1Hz,6H).
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ11.96(s,1H),10.40(s,1H),8.77(dd,J=4.8,1.5Hz,1H),8.00(d,J=7.8Hz,1H),7.63(d,J=1.8Hz,1H),7.49−7.34(m,2H),6.59(d,J=8.5Hz,1H),6.37(d,J=1.8Hz,1H),6.29(d,J=8.2Hz,1H),5.10(s,2H),4.67(sep,J=6.7Hz,1H),1.50(d,J=6.6Hz,6H).
【0103】
別の手法では、化合物(I)遊離塩基の複数のバッチを多グラム量(20g)で調製する。この経路の利点はモノ保護2,6−ジヒドロキシベンズアルデヒド(16)の使用であり、これはビスアルキル化副産物の可能性を効果的になくす。2つの出発点、ブロモレゾルシノール(14)又はレソルシノール(11)から2,6−ジヒドロキシベンズアルデヒド(16)のモノ−MOMエーテルを得ることができる[手順はJournal of Organic Chemistry,74(11),4311−4317;2009に記載される]。ステップ及び手順を全て、以下に提供する。フェノール系アルデヒド基が存在するため、フェノール及び/又はアルデヒド基の酸化を回避するよう注意しなければならない(即ち、全ての反応を窒素などの不活性ガス下で行う)。
【0104】
化合物I HCl塩の調製:アセトニトリル(275mL)中化合物I(55.79g、165.55mmol)の溶液を窒素で10分間フラッシュし、次にこの溶液に、室温で3NのHCl水溶液(62mL)を添加した。添加後、混合物をさらに10分間撹拌し
、次に大部分のアセトニトリル(約200mL)を約32℃のロータリーエバポレータで蒸発させることにより除去し、残った溶液をアセトン−ドライアイス浴中で冷却することにより凍結して凍結乾燥させ、化合物I HCl塩(59.4g)を得た。
【0105】
実施例9:化合物1のHCl塩の特徴付け
【0106】
【表15】
【0107】
実施例10:水に曝露した化合物1のHCl塩の物理的安定性
【0108】
【表16】
【0109】
実施例11:粉砕での化合物1のHCl塩の物理的安定性
【0110】
【表17】
【0111】
実施例12:高温及び/又は真空に曝露した化合物1のHCl塩の物理的安定性
【0112】
【表18】
【0113】
実施例13:水中における化合物1のHCl塩の不均化による化合物1の遊離塩基の生成(出発物質は化合物1のHCl塩である)
【0114】
【表19】
【0115】
実施例14:化合物1の遊離塩基のフォームIの特徴付け
【0116】
【表20】
【0117】
実施例15:化合物1の遊離塩基のフォームIIの特徴付け
【0118】
【表21】
【0119】
実施例16:化合物1の遊離塩基のマテリアルNの特徴付け
【0120】
【表22】
【0121】
実施例17:遊離塩基フォームIとIIとの間の競合的相互変換スラリー
【0122】
【表23】
【0123】
実施例18:遊離塩基フォームIIとマテリアルNとの間の競合的相互変換スラリー
【0124】
【表24】
【0125】
実施例19:選択した実験方法
指数付け:XRPDパターンは有標SSCIソフトウェアを使用して指数付けする。図中に赤色のバーで示される許容されるピーク位置と、観察されたピークとの間の一致が、整合性のある単位胞の決定を示す。指数付け及び構造の精緻化は、「SSCI非cGMP活性のための手順(Procedures for SSCI Non−cGMP Activities)」に基づき実施される計算機による研究である。仮の指数付けの解を確認するためには、結晶学的単位胞内の分子充填モチーフを決定しなければならない。分子充填の試みは実施しなかった。
【0126】
示差走査熱量測定(DSC):TA Instruments Q2000示差走査熱量計を使用してDSCを実施した。温度校正はNISTトレーサブルインジウム金属を使用して実施した。試料をアルミニウムDSCパンに入れ、蓋をして、重量を正確に記録した。試料パンとして構成された秤量済みのアルミニウムパンをセルの基準側面に置いた。各サーモグラムのデータ取得パラメータ及びパン構成が、この報告のデータセクションにある画像中に表示される。サーモグラム上の方法コードは、開始及び終了温度並びに加熱速度の略記である;例えば、−30−250−10は、「−30℃から250℃まで、10℃/分」を意味する。以下に、パン構成に関する各画像で用いられる略記を要約する:Tzeroクリンプパン(T0C);及びリッドはクリンプなし(NC)。
【0127】
動的蒸気収着(DVS):VTI SGA−100蒸気収着分析器で動的蒸気収着(DVS)データを収集した。校正標準としてNaCl及びPVPを使用した。分析前に試料は乾燥させなかった。窒素パージ下10%RHずつの増分で5から95%RHまでの範囲にわたり吸着及び脱着データを収集した。分析に用いた平衡の判定基準は5分間で0.0100%未満の重量変化とし、最大平衡時間は3時間とした。試料の初期含水量に関してデータは補正しなかった。
【0128】
顕微鏡法
ホットステージ顕微鏡法:SPOT Insight(商標)カラーディジタルカメラを備えたLeica DM LP顕微鏡に取り付けたLinkamホットステージ(FTIR 600)を使用して、ホットステージ顕微鏡法を実施した。温度校正はUSP融点標準を使用して実施した。試料をカバーガラス上に置き、その試料の上に第2のカバーガラスを置いた。ステージの加熱に伴い、直交偏光子及び一次赤色補正板を有する20×0.40N.A.長作動距離対物レンズを使用して各試料を目視で観察した。画像は、SPOTソフトウェア(v.4.5.9)を使用して取得した。
【0129】
偏光顕微鏡法:実験の過程で、形態及び複屈折を観察するため、直交偏光を有する顕微鏡を利用して、生じた試料を観察した。試料は倍率40倍で目視観察した。
【0130】
1H溶液核磁気共鳴(
1H NMR)
SSCI:NMR分光法用の試料を適切な重水素化溶媒中の約5〜50mg溶液として調製した。具体的な取得パラメータは、SSCIでランを行った試料のデータセクションにある各試料の第1フルスペクトルのプロット上に掲載される。
【0131】
Spectral Data Solutions:Spectral Data Solutions(下請業者)を使用してランを行った試料について、溶液
1H NMRスペクトルはVarian
UNITYINOVA−400分光計(
1H ラーモア周波数=399.8MHz)において周囲温度で取得された。具体的な取得パラメータは、スペクトルデータシート上及び試料のスペクトルの各データプロット上に掲載される。
【0132】
熱重量分析(TGA)
TA Instruments 2950熱重量分析器を使用してTG分析を実施した。温度校正はニッケル及びAlumel(商標)を使用して実施した。各試料をアルミニウムパンに置き、TGファーネスに挿入した。ファーネスを窒素パージ下で加熱した。データ取得パラメータは、この報告のデータセクション中、各サーモグラムの上に表示される。サーモグラム上の方法コードは、開始及び終了温度並びに加熱速度の略記である;例えば、25−350−10は、「25℃から350℃まで、10℃/分」を意味する。初期温度として0の使用は、周囲温度で開始された試料ランを示す。
【0133】
XRPD分析
INEL:Inel XRG−3000回折計でXRPDパターンを収集した。Cu Kα線の入射ビームは微小焦点管及び放物面グレーデッド多層膜ミラーを使用して生成した。分析前に、シリコン標準(NIST SRM 640d)を分析してSi 111ピーク位置を確認した。試料の標本を薄壁ガラス毛管に充填し、ビームストップを使用して空気からのバックグラウンドを最小限に抑えた。回折パターンは、Windif v.6.6ソフトウェア及び120°の2θレンジの湾曲型位置敏感Equinox検出器を使用して透過配置で収集した。各パターンのデータ取得パラメータは、この報告のデータセクション中にある画像の上に表示される。
【0134】
PANalytical透過:PANalytical X’Pert PRO MPD回折計で、Optix微小長焦点線源を使用して発生させるCu線の入射ビームを使用して、XRPDパターンを収集した。楕円面グレーデッド多層膜ミラーを使用してCu Kα X線の焦点を標本を通して検出器に合わせた。分析前にシリコン標本(NIST SRM 640d)を分析してSi 111ピーク位置を確認した。試料の標本を3μm厚の膜の間に挟み、透過配置で分析した。ビームストップ、短い散乱線除去エクステンション、及び散乱線除去ナイフエッジを使用して、空気により生じるバックグラウンドを最小限に抑えた。入射ビーム及び回折ビームにソーラースリットを使用して、軸発散からの広がりを最小限に抑えた。標本から240mmに位置する走査型位置敏感検出器(X’Celerator)及びData Collectorソフトウェアv.2.2bを使用して回折パターンを収集した。各パターンのデータ取得パラメータは、ミラー前の発散スリット(DS)及び入射ビーム散乱線除去スリット(SS)を含め、この報告のデータセクション中にある画像の上に表示される。
【0135】
PANalytical反射:PANalytical X’Pert PRO MPD回折計で、微小長焦点線源及びニッケルフィルタを使用して生成されるCu Kα線の入射ビームを使用して、XRPDパターンを収集した。回折計は、対称ブラッグ−ブレンターノ配置を使用して構成した。分析前にシリコン標本(NIST SRM 640d)を分析して、観察されたSi 111ピーク位置がNIST認証位置と一致することを確
認した。試料の標本は、シリコンゼロバックグラウンド基板の中心に置いた薄い環状の層として調製した。散乱線除去スリット(SS)を使用して、空気から生じるバックグラウンドを最小限に抑えた。入射ビーム及び回折ビームにソーラースリットを使用して、軸発散からの広がりを最小限に抑えた。試料から240mmに位置する走査型位置敏感検出器(X’Celerator)及びData Collectorソフトウェアv.2.2bを使用して回折パターンを収集した。各パターンのデータ取得パラメータは、発散スリット(DS)及び入射ビームSSを含め、この報告のデータセクション中にある画像の上に表示される。
【0136】
近似溶解度:秤量した試料を、室温で試験溶媒のアリコートによって処理した。添加の合間に混合物を超音波処理し、溶解を促進した。試験材料の完全な溶解は目視検査により決定した。完全な溶解をもたらすために使用した溶媒総量に基づき溶解度を推定した。次に一部の試料を加熱し、完全な溶解を目視で観察した。多過ぎる溶媒アリコートを使用するため、又は溶解速度が遅いことに起因して、実際の溶解度は計算値より高くなり得る。実験中に溶解が起こらなかった場合、溶解度は「未満」として表される。僅か1つのアリコートを加えた結果として完全な溶解が達成された場合、溶解度は「超過」として表される。
【0137】
逆溶媒添加:化合物1/有機溶媒溶液を、化合物1がそれに対して難溶性又は不溶性であると決定された溶媒と接触させた。これらの逆溶媒添加を加えたことで、溶媒系の溶解度の低下及び結晶化の誘導が促進された。
【0138】
冷却及び徐冷:選択した溶媒又は溶媒/逆溶媒系中に溶液を調製した。核形成を生じさせるため、これらの溶液を様々な時間にわたり冷蔵庫内で室温未満で冷蔵した。固体の存在又は非存在に注目した。固体が分析に十分な量で観察された時点で材料の単離を行った。不十分な量しか存在しない場合、フリーザーでさらなる冷却を実施した。試料は分析用に湿潤粉末或いは乾燥粉末として単離した。
【0139】
圧縮:KBrダイ及びCarver液圧プレスを利用して、選択した試料を圧縮した。ダイシャフトに約20分間にわたり10000ポンドの加荷重を加えた。
【0140】
溶液からの結晶化:周囲条件で飽和溶液を作成し、次にキャップをした。化合物1の遊離塩基の評価中にこれらの系から核形成が起こったことが観察された。
【0141】
高速蒸発:選択した溶媒中に溶液を調製し、アリコートを添加する合間に撹拌して溶解を助けた。目視観察により判断するとき混合物が完全な溶解に達したところで、溶液をキャップをしていないバイアル中周囲温度で又は窒素下周囲条件で蒸発させた。形成された固体を評価のため単離した。
【0142】
粉砕:選択した材料を、Reitchミルを利用して粉砕した。この材料をメノウ内張り粉砕容器に装入し、続いてメノウボールを加えた。次にこの容器をミルに置き、1/30秒の頻度で約30分間粉砕した。約10分毎に粉砕を停止し、壁から材料をこすり落としてから、さらに粉砕した。
【0143】
スラリー:所与の溶媒に、過剰な固体が存在するように十分な固体を加えて、溶液を調製した。次にこの混合物を、密閉したバイアル内において周囲温度又は高温で撹拌した。所与の時間後、固体を分析のため単離した。
【0144】
温度及び相対湿度ストレス:選択した材料に、高い相対湿度及び/又は温度でストレスを加えた。相対湿度ジャー(所望の相対湿度を生じさせるために用いられる飽和塩溶液)
を利用して、選択した試料を保管した。評価の間、湿度の効果を調べるため以下の相対湿度ジャーを利用した:75%RH(NaCl)及び60%(NaBr)。利用した温度は、周囲温度、30、40、60、及び100〜125℃であった。
【0145】
真空:選択した材料に、減圧下で設定時間にわたりストレスを加えた。最初のストレス適用は、インハウスの真空システムで、絶対圧力示度<500mTorr、典型的には30〜50mTorr(0.030〜0.05mm Hg)によって行った。さらなる真空ストレス適用を、可搬式実験用バキューム及びブリードを利用することによりプロセス中に予想されるものと同様の条件をシミュレートして、48mmHgで行った。
【0146】
実施例20:HCl塩の不均化
水中におけるHCl塩の不均化を利用して遊離塩基を生じさせた。初めに遊離塩基フォームIの核形成が起こる。スラリー時間を長くすると、フォームI、遊離塩基フォームIIと比べて熱力学的安定性がより高い相への転移が引き起こされる。
【0147】
遊離塩基の3つの無水材料が同定された;遊離塩基フォームI、II、及びマテリアルN。室温では、遊離塩基マテリアルNがフォームI及びIIと比べて最も安定した形であるように見える。遊離塩基マテリアルNはフォームIIに対してエナンチオトロピックであり、特定の転移温度(約42℃と推定される)で可逆的に転移し得る。転移温度より上では、遊離塩基フォームIIがフォームI及びマテリアルNと比べて最も安定した形であるように見える。
【0148】
HCl塩(「HClフォームI」と称される)を様々なストレス条件に供し、XRPDによりモニタして物理的安定性を評価した。考察したとおり、HCl塩のDVS実験中に不均化が起こり、これは高湿度に曝露されたときの不安定性を示している。さらに、湿式粉砕又は水と直接接触しているとき(例えばスラリー)、XRPDによって同定される遊離塩基フォームI又はIIの存在により示されるとおり、不均化が明らかである。加熱時及び/又は真空を加えたときのHClの揮発及び損失は、XRPDによって同定される遊離塩基フォームIの存在により示され、同様に、これらの条件における不安定性を示している。
・水との接触により、材料の淡黄色から白色への可視的な色の変化が生じた;物理的変化もまた顕微鏡によって観察された。即時の不均化が起こる。XRPD分析により、水スラリー(約5分)から得られた材料が遊離塩基フォームIであると同定された。スラリーである時間を長くした場合には、遊離塩基フォームIIもまた明らかになる。
・乾燥状態に曝露して数時間以内にHClの揮発が明らかであった。XRPDにより、30℃(12時間後)、40℃(6時間後)、及び40℃/48mmHg(6時間後)で遊離塩基フォームIへの変換が観察された。
・遊離塩基マテリアルCは、高温を伴うより極限的な条件で明らかになる。HClフォームIを125℃まで加熱すると、酸性の揮発性物質の損失(試料の上に保持したpH試験紙を用いることにより目視で判断される)が引き起こされる。XRPD分析により、得られた試料は、HClフォームI、遊離塩基フォームI、及び遊離塩基マテリアルCの混合物であると同定される。HCl塩を真空下で60℃に6日間曝露すると、同じ結果がもたらされる。マテリアルCの性質は確立されていない。
【0149】
HCl塩は水中で直ちに不均化することが示された。この現象を利用して遊離塩基を生じさせた。初めに遊離塩基フォームIの核形成が起こる。スラリー時間を長くすると、フォームI、遊離塩基フォームIIと比べて熱力学的安定性がより高い相への転移が引き起こされる。
・20mlバイアルに266.4mgのHClフォームIを入れ、10mLの水と接触させた。淡黄色の材料の色が白色に変化するまで試料を超音波処理した。得られた固体を
ろ過により収集し(水を吸引する)、10mLの水でリンスした。窒素パージを試料に約10分間吹き付けた後、乾固するまで周囲温度で真空に一晩曝露した。得られた材料をXRPDによって分析し、遊離塩基フォームIであると決定した。
・250ml三角フラスコに6.0250グラムのHClフォームIを入れ、220mLの水と接触させた。試料を約5分間超音波処理して材料を分散させた。音波処理中、黄色の材料の色が白色に変化した。撹拌子を加え、試料を700RPMで約10分間撹拌した。固体をろ過によって収集し、220mLの水でリンスした後、続いて試料を約10分間窒素パージした後、周囲温度で真空に曝露した。試料をこの条件で約24時間乾燥させて、5.1834グラムの材料を生じさせた。得られた材料をXRPDによって分析し、遊離塩基フォームIと遊離塩基マテリアルDとの混合物であると決定した(マテリアルDの性質は確立されていない)。
【0150】
遊離塩基フォームIIの生成に用いられる手順を以下に記載する。
・20mlバイアルに477.5mgのHClフォームIロット20を入れ、20mLの水と接触させた。淡黄色の材料の色が白色に変化するまで試料を超音波処理した。少量の試料(遊離塩基フォームIとIIとの混合物)をシードとして添加した。撹拌子を加え、試料を200RPMで8日間撹拌した。得られた固体をろ過によって収集し(水を吸引する)、15mLの水でリンスした。試料を乾固するまで周囲温度で真空に一晩曝露した。得られた材料をXRPDによって分析し、遊離塩基フォームIIであると決定した。
【0151】
実施例21:フォームI、フォームII、及びフォームNの遊離塩基の追加的な調製手順化合物1の遊離塩基からHCl塩への変換
基本手順:MEK(5vol)中の化合物1の遊離塩基の溶液を濃HCl(1.5eq)でゆっくりと処理する。得られたスラリーを0〜5℃に1時間冷却し、ろ過する。固体をMEK(1vol)で洗浄する。30〜35℃で真空乾燥させる。
【0152】
調製A:上記の基本手順に従い35gの粗化合物1を処理することにより、HCl塩が淡黄色の固体として提供された(32.4g、82%収率、HPLCにより99.8%純度)。
【0153】
化合物1のHCl塩からの遊離塩基フォームIの調製
基本手順:DIW(10vol)中の化合物1のHCl塩のスラリーを5分間〜2時間激しく撹拌する。スラリーをろ過し、DIW(2×1vol)で洗浄し、漏斗上で乾燥させ、次に30〜35℃でさらに真空乾燥させる。
【0154】
調製A:上記の基本手順に従い1時間撹拌した後、化合物1のHCl塩32gを処理することにより、遊離塩基が淡黄色の固体として提供された(27.3g、95%収率、HPLCにより99.8%純度;DSCはフォームIを示す)。
【0155】
調製B:上記の基本手順に従い1時間撹拌した後、化合物1のHCl塩39gを処理することにより、遊離塩基が淡黄色の固体として提供された(31.8g、90%収率、HPLCにより>99.9%純度))。
【0156】
調製C:従って、化合物1のHCl塩(134g)を、材料が微細分散した白色スラリーのように見えるまで水(10vol)中で激しく撹拌した。ろ過して乾燥させた後、白色結晶性固体(116g、96%回収率、HPLCにより>99.9%純度)を単離した。
【0157】
調製D:この実験の目的は、化合物1、HClから遊離塩基を調製することであった。従って、化合物1のHCl塩(65.3g)を、材料が微細分散した白色スラリーのよう
に見えるまで水(10vol)中で激しく撹拌した。ろ過して乾燥させた後、白色結晶性固体(57.5g、97.6%回収率、HPLCにより>99.9%純度)を単離した。
【0158】
GBT000440遊離塩基フォームIからのGBT000440遊離塩基フォームIIの調製
基本手順:認められた溶媒(例えばヘプタン又は水)(10vol)中に化合物1フォームIの遊離塩基のスラリーを1〜7日間撹拌する。スラリーをろ過し、DIW(2×1vol)で洗浄し、漏斗上で乾燥させ、次に30〜35℃でさらに真空乾燥させる。
【0159】
調製A:従って、化合物1、フォームIの遊離塩基(114g)を35℃でn−ヘプタン(10vol)中に撹拌した。4日後、XRPDは、材料がフォームIIであることを示した。スラリーをろ過し、乾燥させることにより、110gのオフホワイトの固体が提供された。
【0160】
調製B:化合物1の遊離塩基(5g)を室温でヘプタン(10vol 50mL)中にスラリー化した。4日後、このスラリーをろ過することにより、オフホワイトの固体が提供された。
【0161】
調製C:化合物1の遊離塩基(5.8kg)を室温でヘプタン(10vol)中にスラリー化した。2日後、このスラリーをろ過し、2×2volのn−ヘプタンで洗浄することにより、4.745kgのフォームIIがオフホワイトの固体として提供された。
【0162】
調製D:化合物1の遊離塩基(5g)を水中にスラリー化した。4日後、このスラリーをろ過することにより、オフホワイトの固体が提供された。
【0163】
GBT000440遊離塩基フォームI又はフォームIIからのGBT000440遊離塩基フォームNの調製
基本手順:化合物1、フォームIの遊離塩基のスラリーを室温で少なくとも4日間、MTBE(4vol)中に撹拌する。4日後、このスラリーをろ過することにより、オフホワイトの固体が提供される。XRPDを得て多形がマテリアルNであると確認する。
【0164】
調製A:上記の基本手順に従い、化合物1、フォームIの遊離塩基(48TRS079)27gを18〜23℃で4日間、MTBE中に撹拌した。DSCにより、それがマテリアルNであるはずであると示された。22.2gの淡黄色の固体が単離された(82%回収率、HPLCにより99.9純度)。XRPD分析を計画した。
【0165】
調製B:上記の基本手順に従い、化合物1、フォームIの遊離塩基31gを18〜23℃で4日間、3vol MTBE中に撹拌した。
【0166】
調製C:化合物1、フォームIの遊離塩基(13KWB023、1g)を室温でMTBE(5vol)中にスラリー化した。スラリーにマテリアルN(50mg)をシードした。4日後、このスラリーをろ過することにより、オフホワイトの固体が提供された。DSCにより、融点がマテリアルNと同じであることが示された。
【0167】
調製D:この実験の目的は、化合物1、フォームIIの遊離塩基をマテリアルNに変換することであった。従って、化合物1の遊離塩基(0.5g)を18〜23℃で5volのジ−n−プロピルエーテル中に撹拌した。2日後、DSCは、マテリアルNについて観察されるパターンと一致した。XRPD分析により、マテリアルNが形成されたことが確認された。
【0168】
調製E:化合物1、フォームIIの遊離塩基(5g)に、室温でジイソプロピルエーテル(5vol、25mL)を添加した。4日後、スラリーをろ過することにより、オフホワイトの固体が提供された。DSCはマテリアルNを示す。
【0169】
実施例22:溶媒ベースの予備スクリーニング
化合物1の遊離塩基の最も安定した形を決定するため、迅速な溶媒ベースのスクリーニングを実施した。この試験は、これらの材料が様々な結晶形で存在する傾向についての予備的評価もまた提供する。生成された固体は偏光顕微鏡法(PLM)により観察し、及び/又は粉末X線回折(XRPD)により分析して、得られたXRPDパターンを化合物1の既知のパターンと比較した。
【0170】
可能な場合、XRPDパターンを指数付けした。指数付けは、回折パターンにおいてピーク位置を与えられた結晶学的単位胞のサイズ及び形状を決定するプロセスである。この用語は、個々のピークに対するミラー指数表記の割当てから名前が付けられている。XRPDの指数付けはいくつかの目的を果たす。パターン中の全てのピークが単一の単位胞により指数付けされる場合、これは、試料が単一の結晶相を含むことの強力なエビデンスである。指数付けの解を所与とすれば、単位胞体積は直接計算することができ、且つその溶媒和状態の決定に有用であり得る。指数付けはまた、結晶形のロバストな記述でもあり、特定の熱力学的状態点における当該の相についてのあらゆる利用可能なピーク位置の要約を提供する。
【0171】
これらの材料に関連するピークの目視検査に基づくときユニークな結晶XRPDパターンを呈する材料に、文字記号を与えた。この文字記号は、十分な特徴付けデータを利用できない場合には、仮に語句「マテリアル」と関連付けられる。この命名法は、ユニークなXRPDパターンの識別を助けるために用いられるに過ぎず、その材料の化学量論、結晶相純度、又は化学的純度が既知であることを含意するものではない。マテリアルは、さらに、材料の相純度(XRPDパターンの指数付け又は単結晶構造解明によって得られる)及び化学的アイデンティティ/純度(プロトンNMR分光法によって得られる)が決定される場合、ローマ数字記号を備えた形で表される(即ち、遊離塩基マテリアルA=遊離塩基フォームI)。
【0172】
3つの無水材料が同定された:フォームI、II、及びマテリアルN。室温では、フォームI及びIIと比べて、マテリアルNが最も安定した形であるように見える。マテリアルNはフォームIIに対してエナンチオトロピックであり、特定の転移温度(約42℃と推定される)で可逆的に転移し得る。転移温度より上では、フォームI及びマテリアルNと比べて、フォームIIが最も安定した形であるように見える。
【0173】
マテリアルC及びDを用いると、XRPDパターン中に観察されるいくつかのさらなる低強度ピークが同定され、これらは主に、化合物1の遊離塩基フォームI又は化合物1のHClフォームIと遊離塩基フォームIとの混合物で構成される。
【0174】
実施例23:無水無溶媒和物形
フォームI
遊離塩基フォームIは、遊離塩基の準安定性の無水相であり、水中でのHCl塩の不均化から直ちに形成される。フォームIの代表的なXRPDパターンの指数付けに成功しており、単位胞体積は無水遊離塩基と一致する。XRPDパターンと、提供される遊離塩基の過去のパターンとの目視比較は、材料が同様であり得ることを示している;しかしながら、過去のパターンは潜在的な混合物からのさらなるピークを呈するように見える。
【0175】
1H NMRスペクトルは化合物1の化学構造と一致する。約2.5ppmにおける化
学シフトは(NMR溶媒中に残留プロトンがあるため)DMSOに割り当てられる。残留溶媒と関連付け得るピークは見られず、上記の指数付けの解から決定された無水単位胞体積及び以下に考察するTGAによって観察された無視し得る程度のwt%減少と一致した。
【0176】
サーモグラム(TG)データは、100℃まで0.2%の無視し得る程度の、無水形と一致する重量減少を示す。DSCは、オンセット約97℃の単一の吸熱を呈する(フォームIIで観察されるものと同様)。この吸熱は、ホットステージ顕微鏡法による融解と一致する。しかしながら、その融解に先行して、粒度及び複屈折の変化が明らかであった;可能性のある相変化が起こった。結果的に、相変化が起こり且つ遊離塩基フォームIIのものと同様の吸熱が観察された場合、観察された融解は真に、フォームIのものでなく、得られた相のもの、最も高い可能性ではフォームIIのものであると推測することができる。
【0177】
DVS等温線は、フォームIが吸湿性ではないことを示す。収着/脱着を通じて0.2%の無視し得る程度の重量増加及び減少が観察された。XRPDにより、DVS実験から回収された材料は主として遊離塩基フォームIであり、いくつかのさらなるピークを有した。これらのさらなるピークを遊離塩基マテリアルDと命名した。マテリアルDの性質は不明である;しかしながら、別の1つ又は複数の相の出現は、フォームIが高湿度条件で(周囲温度で)物理的に安定していない可能性が高いことを示している。
【0178】
フォームII
遊離塩基フォームIIは遊離塩基の無水相である。フォームIIはマテリアルNとエナンチオトロピックな関係にあり、ここでフォームIIは、42℃の推定転移温度より上で熱力学的に安定した形である。フォームIIは、既知の溶媒和物を形成しない溶媒;例えばヘプタン、IPE、MTBE、又はトルエン中で;フォームIの短時間スラリー変換(ここでは結晶化動力学により、安定性がより高い形の核形成が遅延する)又は高温スラリー(42℃を上回る)によって生じさせることができる。フォームIIの代表的なXRPDパターンの指数付けが成功したとともに、単位胞体積は化合物1の無水遊離塩基と一致する。
【0179】
1H NMRスペクトルは化合物1の化学構造と一致する。約2.5ppmにおける化学シフトは(NMR溶媒中に残留プロトンがあるため)DMSOに割り当てられる。残留溶媒と関連付け得るピークは見られず、上記の指数付けの解から決定された無水単位胞体積及び以下に考察するTGAによって観察された無視し得る程度のwt%減少と一致した。
【0180】
サーモグラム(TG)データは、100℃まで0.1%の無視し得る程度の、無水形と一致する重量減少を示す。DSCは、オンセット約97℃の単一の吸熱(80.1J/g)を呈する。
【0181】
フォームIIは、XRPDによる再分析で、周囲条件で保存して7日後も変化しないままであった。この形は、この条件で、マテリアルNと比べて熱力学的に準安定であることが知られている;しかしながら、多形変換の動力学は、固体状態においては周囲条件で緩徐であり得る。
【0182】
マテリアルN
遊離塩基マテリアルNは、遊離塩基の無水相である。マテリアルNはフォームIIとエナンチオトロピックな関係にあり、ここでマテリアルNは、42℃の推定転移温度未満で熱力学的に安定した形である。場合により、マテリアルNは既知の溶媒和物を形成しない
溶媒;例えばヘプタン、IPE、MTBE、又はトルエン中のスラリーによって;42℃未満の温度で生じさせることができる。以下は、遊離塩基マテリアルNを生じさせるために用いられる実験室規模の手順の例である。
・53.0mgの遊離塩基フォームIを2mLのIPE/遊離塩基溶液(濃度13mg/ml)と接触させた。撹拌子を加え、試料を周囲条件で7日間スラリー化した。溶液を試料からデカントし、残った固体を窒素下で短時間乾燥させた。特徴付けデータは、マテリアルNがユニークな結晶相であることを示している。
【0183】
1H NMRスペクトルは化合物1の化学構造と一致する。約2.5ppmにおける化学シフトは(プロトンNMR溶媒中に残留プロトンがあるため)DMSOに割り当てられる。残留溶媒と関連付け得るピークは見られず、以下に考察するTGAによって観察された無視し得る程度のwt%減少と一致した。
【0184】
サーモグラム(TG)データは、100℃まで0.2%の無視し得る程度の、無水形と一致する重量減少を示す。DSCは、オンセット94℃の単一の吸熱(82.8J/g)を呈する。
【0185】
遊離塩基フォームI、II、及びマテリアルNの間の熱力学的関係の仮決定
特徴付けデータは、フォームI、II、及びマテリアルNがユニークな結晶相であることを示している;しかしながら、指数付けにより相純度を確認することに成功したのは、フォームI及びIIのXRPDパターンのみであった。従って、これらの材料間に提案されるいずれの熱力学的関係も作業仮説であり、ここではマテリアルNの相純度が仮定される。
【0186】
固体の相転移は熱力学的に可逆的又は不可逆的であり得る。特定の転移温度(T
p)で可逆的に転移する結晶形はエナンチオトロピック多形と呼ばれる。結晶形がこれらの条件下で相互変換可能でない場合、その系はモノトロピック(熱力学的に安定した形であるもの)である。多形の相対的な熱力学的安定性及び多形間の関係がエナンチオトロピックかそれともモノトロピックかを予測するための法則がいくつか開発されている。本試験の範囲内では、融解熱法則が適用される。融解熱法則では、高融点の形ほど融解熱が低い場合、それらの2つの形はエナンチオトロピックであり、他の場合にはそれらはモノトロピックであるとされる。
【0187】
室温では、フォームI及びIIと比べてマテリアルNが最も安定した形であるように見える。DSCにより決定される融解熱及び融解に基づけば、マテリアルNはフォームIIに対してエナンチオトロピックであり、特定の転移温度(T
N−II)で可逆的に転移し得る。DSCにおいて観察される吸熱に先行してフォームIからフォームIIへの相変化が起こった可能性があるため、フォームIとマテリアルN又はフォームIIのいずれとの関係も、融解熱法則によっては確証的に決定することができない。しかしながら、様々な相互変換スラリーによって、フォームIは6℃からT
N−IIの間で最も熱力学的安定性が低い形であることが示された。加えて、フォームIが高温でDSCにおいて(観察される融解より前に)自発的にフォームIIに変換したと仮定すると、フォームIIもまたT
N−IIより上でフォームIより安定しているということになるはずである。
【0188】
実施例24:推定転移温度
2つのエナンチオトロピックな関係を有する形の間の推定転移温度は、それらの融解オンセット及び融解熱から以下に示す式に基づき計算することができる。
【数1】
【0189】
マテリアルNとフォームIIとの間は、この式では42℃の転移温度が推定される。要約のため、最も高い安定性から最も低い安定性までの形の相対安定性を以下に示す。
【0190】
【表25】
【0191】
実施例25:エネルギー−温度図
図17のエネルギー−温度図は、ギブズ−ヘルムホルツ式の半定量的図解法であり、ここでは各形のエンタルピー(H)及び自由エネルギー(G)等圧線が温度の関数として表される。
【0192】
実施例26:競合的相互変換スラリー実験
上記のエネルギー−温度図によって示される多形間の熱力学的関係を裏付けるため、相互変換実験を実施した。相互変換又は競合的スラリー実験は、溶液により媒介されるプロセスであり、可溶性の低い(安定性の高い)結晶が、可溶性のより高い結晶形であることを犠牲にして成長する経路を提供する。熱力学的に安定性の高い多形ほど低いエネルギー、従って低い溶解度を有するため、溶媒和物の形成又は分解は別として、相互変換実験から得られるより安定性の高い多形は、使用される溶媒と独立していることが企図される。溶媒の選択は多形変換の動力学に影響を及ぼし、多形結晶形間の熱力学的関係には影響を及ぼさない。
【0193】
相互変換試験の結果は、本明細書に示す仮のエネルギー−温度図と一致する。二成分スラリーを、フォームI及びIIを使用して周囲温度、6℃、及び57℃で調製した。これらの実験の大部分からフォームIIが得られ、この温度範囲内でフォームIIがフォームIと比べてより安定していることが確認された。
【0194】
周囲温度及び6℃で実施した実験のいくつかでは、マテリアルNが得られた。これは特にフォームIとIIとの間の解明をもたらすものではないが、実に、これらの温度では(42℃の推定転移温度未満で実施された)、フォームI及びIIのいずれと比べてもマテリアルNが最も安定した形であるというエビデンスを提供する。この推定転移温度をブラ
ケッティングする温度でフォームIIとマテリアルNとの間のさらなる相互変換スラリーを実施し、フォームIIとマテリアルNとがエナンチオトロピックな関係を有することを確認した。
【0195】
実施例27:固体核磁気共鳴
3つの多形フォームI、II及びマテリアルNについて取得した
13C及び
15Nスペクトル。
図10及び
図11を参照のこと。スペクトルは253Kで取得し、計測中に起こる任意の低温転移を防止し、多形結晶形毎に取得パラメータを最適化した。
【0196】
固体核磁気共鳴に基づけば、3つのフォームは全てが結晶性であり、個別的な多形結晶形である。フォームIは非対称単位当たり1個の分子を含み、フォームIIは非対称単位当たり2個の分子を含み、及びフォームNは非対称単位当たり4個の分子を含む。
図11の
15Nスペクトルを参照のこと。
【0197】
実施例28:化合物1の遊離塩基フォームIの化学的及び物理的安定性の評価
主に遊離塩基フォームIで(遊離塩基マテリアルDを伴い)構成される混合物を安定性条件に供し、物理的及び化学安定性を評価した。3つの条件を用いた;開放して25℃/60%RH、開放して40℃/75%RH、及び閉鎖して60℃。物理的安定性はXRPDにより評価した。化学安定性は、適用可能な場合、UPLC及び
1H NMRによって決定した。材料は曝露から1、7、及び14日後に試験した。
【0198】
遊離塩基フォームIの化学的安定性
遊離塩基安定性試料について、UPLCにより極めて低レベルの不純物の存在が示された。14日の経時後、不純物レベルの有意な上昇はなかった。これは、安定性評価に用いた条件に対する良好な化学的安定性を示すものと思われる。60℃(14日)に曝露された試料の
1H NMRスペクトルもまた、この結論と一致した。
【0199】
遊離塩基フォームIの物理的安定性
化合物1の遊離塩基は、XRPDによれば、25℃/60%RHで変化しないままであった。しかしながら、他の2つの条件では違いが観察された。遊離塩基マテリアルDによるものである僅かな小さいピークはもはや観察されなかったことから、マテリアルDが準安定であり、高温で持続しないことが示される。加えて、7日の経時後に遊離塩基フォームIIが観察された。これは、本明細書で考察される結論と一致し、遊離塩基フォームIIは遊離塩基フォームIと比べてこれらの温度で安定性が高い。
【0200】
実施例29:化合物1の遊離塩基フォームII及びマテリアルN(フォームN)の物理的安定性の評価
DSCを低速基礎加熱速度で調整し、続いて粉末X線回折を行った。0.02℃ min
−1の低速基礎加熱速度を使用した。温度はフォームNが80℃及びフォームIIが90℃であった。曝露は本質的に等温で、物理的形の変化を検出する感度の温度範囲を網羅した。得られた材料を粉末X線回折によって調べた。多形フォームII又は多形フォームN(即ち、マテリアルN)のいずれについても、物理的形の変化は観察されなかった。
【0201】
フォームII及びNを40℃/75%相対湿度(RH)、80℃、80℃/80%RHに9日間曝露し、続いて粉末X線回折を行った。多形フォームII又は多形フォームNのいずれについても、物理的形の変化は観察されなかった。
【0202】
多形フォームIIとフォームNとの間の相互変換に対する熱力学的障壁は高く、いずれの形も物理的安定性は良好である。フォームIIとフォームNとの間に熱的に誘導される相互変換が起こる可能性は低い。
【0203】
実施例30:多形フォームII及びNの相対熱力学的安定性
多形フォームIIとフォームNとの1:1w/w混合物で長期溶媒媒介性成熟試験を実施した。ヘキサンが溶媒評価に良好な媒体を提供した。用いた温度には、−20℃、−10℃、0℃、10℃、20℃、30℃、40℃及び50℃が含まれる。30℃、40℃及び50℃で有意な溶解度の上昇が観察された。−20℃、−10℃、0℃、10℃、20℃での成熟から生じた固体を粉末X線回折によって分析した。いずれの場合も、フォームNへの有意な変換が観察された。
【0204】
フォームNは、フォームIIと比べて20℃以下の温度で熱力学的安定性がより高い。2つのフォーム間のエナンチオトロピックな関係は、約30〜40℃で熱力学的安定性の等価性を呈する可能性が高い。
【0205】
実施例31:フォームNの形態
多形フォームNのバッチの初期試験は針状形態を示す。
【0206】
本発明は具体的な実施形態及び例に関連して記載されているが、当業者には、当該技術及び本開示を考慮することにより、具体的に開示される材料及び方法の均等物もまた本発明に適用可能であること;及びかかる均等物が以下の特許請求の範囲内に含まれるものと意図されることは明らかであろう。