特許第6809694号(P6809694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809694
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ギター、及びその弦係止構造
(51)【国際特許分類】
   G10D 3/095 20200101AFI20201221BHJP
   G10D 1/08 20060101ALI20201221BHJP
   G10D 3/12 20200101ALI20201221BHJP
【FI】
   G10D3/095
   G10D1/08
   G10D3/12
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-161337(P2016-161337)
(22)【出願日】2016年8月19日
(65)【公開番号】特開2018-28639(P2018-28639A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】501444958
【氏名又は名称】鎌田 勇
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 勇
【審査官】 大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−021179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 3/095
G10D 1/08
G10D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に着脱可能なネック部と、
弦のネック側の一端を係止し、前記ネック部に着脱可能なネック側弦係止部と、
前記本体部の前記ネック部と反対側の後端部に固定された基盤部と、
前記基盤部よりもネック側に固定されたブリッジ部と、
前記弦の本体側の一端を係止し、前記基盤部に着脱可能な本体側弦係止部と
を備え
前記基盤部は、前記本体側弦係止部の左右方向の移動を制限する第1の制限部と、前記本体側弦係止部の後端部の上方向への移動を制限する第2の制限部とを備える
ギター。
【請求項2】
請求項に記載のギターであって、
左右1対の前記第1の制限部は、前記本体部の上面に設けられ、
前記第2の制限部は、前記本体部の後側面に設けられ、
前記本体側弦係止部は、前記第2の制限部に係合する係合部を備え、前記1対の第1の制限部の間に挿入されるとともに、前記係合部が前記第2の制限部に係合することにより、前記基盤部に装着される
ギター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のギターであって、
前記ブリッジ部は、前記弦を支持するサドルと、前記サドルよりもネック側の壁部材とを有し、前記サドルは、弦方向の位置を調整可能に前記壁部材に接続及び支持される
ギター。
【請求項4】
請求項に記載のギターであって
前記サドルは、前記壁部材に形成された弦方向の貫通孔に挿入された雄ネジにより接続及び支持され、
前記ブリッジ部は、前記壁部材のネック側に、前記雄ネジの頭部のネック方向への移動を制限する押え部材を有する
ギター。
【請求項5】
請求項に記載のギターであって、
前記押え部材には、前記雄ネジの頂面の一部を露出させるように、前記雄ネジの頭部の外径よりも小さい内径の貫通孔が形成されている
ギター。
【請求項6】
請求項に記載のギターであって、
前記雄ネジの頭部には、その直径方向に1つ以上の貫通孔又は有底穴が形成されている
ギター。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載のギターであって、
前記本体側弦係止部は、前記弦の本体側の一端の弦方向の位置を調整可能に係止する係止部材を備える
ギター。
【請求項8】
本体部とネック部とを備えるギターの弦係止構造であって、
弦のネック側の一端を係止し、前記ネック部に着脱可能なネック側弦係止部と、
前記本体部の前記ネック部と反対側の後端部に固定される基盤部と、
前記基盤部よりもネック側に固定されるブリッジ部と、
前記弦の本体側の一端を係止し、前記基盤部に着脱可能な本体側弦係止部と
を備え
前記基盤部は、前記本体側弦係止部の左右方向の移動を制限する第1の制限部と、前記本体側弦係止部の後端部の上方向への移動を制限する第2の制限部とを備える
弦係止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギター、及びその弦係止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
収納や持ち運びの利便性を向上にするために、折り畳んだり分解したりすることができる構造を有するギターが知られている。例えば、特許文献1には、ネック部とボディ部とをジョイントで接続し、ジョイントを回転させることでネック部を折り畳むことができるギターが記載されている。このギターでは、弦の両端は、マシン・ヘッド及びブリッジに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−202348
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、ギターは、弦を張った状態(弦を緩めてもよい)で保管され、持ち運ばれる。特許文献1のギターは、ネック部がボディ部に向かい合うように折り畳むと、例えば、弦が折れて破損したり、弦がギターの表面に接触して傷つけたりするおそれがある。だからといって、持ち運びの度に弦をギターから取り外したりギターに張ったりするのは、非常に面倒である。
【0005】
本発明は、弦やギターの破損を防止し易くするとともに、収納や持ち運びの利便性をより向上したギターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。
【0007】
上記の課題を解決する本発明の一態様は、ギターであって、本体部と、前記本体部に着脱可能なネック部と、弦のネック側の一端を係止し、前記ネック部に着脱可能なネック側弦係止部と、前記本体部の前記ネック部と反対側の後端部に固定された基盤部と、前記基盤部よりもネック側に固定されたブリッジ部と、前記弦の本体側の一端を係止し、前記基盤部に着脱可能な本体側弦係止部とを備える。
【0008】
上記のギターにおいて、前記基盤部は、前記本体側弦係止部の左右方向の移動を制限する第1の制限部と、前記本体側弦係止部の後端部の上方向への移動を制限する第2の制限部とを備えてもよい。
【0009】
上記のいずれかのギターにおいて、左右1対の前記第1の制限部は、前記本体部の上面に設けられ、前記第2の制限部は、前記本体部の後側面に設けられ、前記本体側弦係止部は、前記第2の制限部に係合する係合部を備え、前記1対の第1の制限部の間に挿入されるとともに、前記係合部が前記第2の制限部に係合することにより、前記基盤部に装着されてもよい。
【0010】
上記のいずれかのギターにおいて、前記ブリッジ部は、前記弦を支持するサドルと、前記サドルよりもネック側の壁部材とを有し、前記サドルは、弦方向の位置を調整可能に前記壁部材に接続及び支持されてもよい。
【0011】
上記のいずれかのギターにおいて、前記サドルは、前記壁部材に形成された弦方向の貫通孔に挿入された雄ネジにより接続及び支持され、前記ブリッジ部は、前記壁部材のネック側に、前記雄ネジの頭部のネック方向への移動を制限する押え部材を有してもよい。
【0012】
上記のいずれかのギターにおいて、前記押え部材には、前記雄ネジの頂面の一部を露出させるように、前記雄ネジの頭部の外径よりも小さい内径の貫通孔が形成されていてもよい。
【0013】
上記のいずれかのギターにおいて、前記雄ネジの頭部には、その直径方向に1つ以上の貫通孔又は有底穴が形成されていてもよい。
【0014】
上記のいずれかのギターにおいて、前記本体側弦係止部は、前記弦の本体側の一端の弦方向の位置を調整可能に係止する係止部材を備えてもよい。
【0015】
上記の課題を解決する本発明の他の態様は、本体部とネック部とを備えるギターの弦係止構造であって、弦のネック側の一端を係止し、前記ネック部に着脱可能なネック側弦係止部と、前記本体部の前記ネック部と反対側の後端部に固定される基盤部と、前記基盤部よりもネック側に固定されるブリッジ部と、前記弦の本体側の一端を係止し、前記基盤部に着脱可能な本体側弦係止部とを備える。
【0016】
上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るギター(組み立てた状態)の一例を示す斜視図である。
図2】ギター(3つに分離した状態)の斜視図である。
図3】ギターケースの一例を示す図である。
図4】ネック部の着脱構造の一例を説明する図である。
図5】ネック側弦係止部の着脱構造の一例を示す図である。
図6】本体側弦係止部の着脱構造の一例を示す図(その1)である。
図7】本体側弦係止部の着脱構造の一例を示す図(その2)である。
図8】本体側弦係止部の着脱構造の一例を示す図(その3)である。
図9】本体側弦係止部の一例を示す分解図である。
図10】ブリッジ部の一例を示す分解図である。
図11】ブリッジ部の平面図である。
図12】ブリッジ部の他の例を示す分解図である。
図13】ブリッジ部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るギター(組み立てた状態)の一例を示す斜視図である。
【0020】
ギター1は、4弦のエレクトリック・ベースギターである。ギター1は、本体部10と、ネック部20と、ネック側弦係止部30と、本体側弦係止部40と、基盤部41と、ブリッジ部50とを備える。本体部10は、ピックアップ11、ピックガード、ボリューム・コントロール、トーン・コントロールなどの構成要素を備えてもよい。本実施形態のネック部20は、フレットレスに構成されているが、フレットを備えていてもよい。ネック部20は、ナット21、指板などの構成要素を備えてもよい。
【0021】
図1に示すように、弦Sは、その両端がネック側弦係止部30と本体側弦係止部40に係止されることにより、ナット21及びブリッジ部50を介してギター1に張られる。
【0022】
図2は、ギター(3つに分離した状態)の斜視図である。図2は、ギターを持ち運ぶ際に、ギター1がどのように分解されるかを示している。
【0023】
ギター1は、分離及び組み立て可能な構造を有している。すなわち、ネック側弦係止部30は、ネック部20に着脱可能に構成される。また、本体側弦係止部40は、本体部10に固定された基盤部41に着脱可能に構成される。また、ネック部20は、本体部10に着脱可能に構成される。また、詳細は後述するが、上述の各部は、手作業で容易に着脱できるように構成されている。
【0024】
図3は、ギターケースの一例を示す図である。図3は、ギター1を持ち運ぶ際に、分解されたギター1の各部がどのようにギターケースに収納されるかの一例を示している。
【0025】
ギターケースCは、両開きの箱状のケースであり、下ボディ部C1と、ヒンジ等で開閉自在に下ボディ部C1に接続された上ボディ部C2とを備える。下ボディ部C1には、本体部10及びネック部20それぞれの形状に対応した穴が形成された緩衝材が設けられており、本体部10及びネック部20それぞれを嵌め込むことができる。上ボディ部C2には、ネック側弦係止部30及び本体側弦係止部40それぞれの形状に対応した穴が形成された緩衝材が設けられており、ネック側弦係止部30及び本体側弦係止部40それぞれを嵌め込むことができる。また、上ボディ部C2の緩衝材には、ネック側弦係止部30及び本体側弦係止部40に係止された弦Sを収納する穴が形成されており、弦Sを嵌め込むことができる。上ボディ部C2には、弦Sの動きを制止する紐などの固定部材が設けられていてもよい。
【0026】
図4は、ネック部の着脱構造の一例を説明する図である。
【0027】
ネック部20は、本体側の裏側(指板と反対側)に固定されたプレート201を備える。プレート201は、例えば、ステンレスなどの金属で構成され、ネジ等の固定手段によりネック部20に固定される。プレート201には、雄ネジ205の軸部を通すとともに締結するための雌ネジ孔202が形成されている。また、ネック部20の裏側には、雌ネジ孔202と対応する位置に、雄ネジ205の軸部を挿入するための穴が形成されている。
【0028】
本体部10には、ネック部20の本体側の端部をセットするための凹部105が形成されている。また、凹部105の底面には、プレート201の形状に対応した凹状の受け部106が形成されている。また、本体部10は、裏側(ピックアップ11と反対側)に、受け部106と対応する位置に固定されたプレート101を備える。プレート101は、例えば、ステンレスなどの金属で構成され、ネジ等の固定手段により本体部10に固定される。プレート101には、雄ネジ205の軸部を通すための貫通孔102が形成されている。また、受け部106の底面には、貫通孔102と対応する位置に、雄ネジ205の軸部を通すための貫通孔が形成されている。
【0029】
ネック部20は、プレート201を受け部106に嵌め込むことにより凹部105にセットされる。この状態で、本体部10の裏側の貫通孔102から雄ネジ205の軸部を挿入し、ネジ締め方向に回転させることで、雌ネジ孔202に雄ネジ205が締結され、ネック部20が本体部10に固定される。なお、雄ネジ205の頭部は、人間が指で掴んで回すことができるように形成されていてもよい。
【0030】
このような着脱構造により、ユーザーは、ネック部20を本体部10に対して簡単に着脱することがきる。もちろん、ネック部20を本体部10に対して着脱できれば、着脱構造は上記の例に限られない。
【0031】
図5は、ネック側弦係止部の着脱構造の一例を示す図である。
【0032】
ネック側弦係止部30は、ネック部20の先端(本体部10から遠い側)に、着脱可能に構成される。ネック側弦係止部30は、例えば、鉄などの金属で構成される。ネック側弦係止部30は、半円柱状に形成されており、その曲面が指板と反対側に向き、かつその中心軸が弦方向と沿うように配置される。ネック側弦係止部30には、雄ネジ315の軸部を弦方向に通すための貫通孔301が形成されている。また、ネック側弦係止部30の上部(ネック部20の指板側)には、弦Sそれぞれに対応して弦方向に沿って溝部302が形成されている。また、溝部302の内壁には、雄ネジ303を上方から挿入して締結するための雌ネジが形成されている。
【0033】
ネック部20は、その先端面に固定された基盤部31を備える。基盤部31は、例えば、鉄などの金属で構成され、ネジ等の固定手段によりネック部20の先端面に固定される。基盤部31には、雄ネジ315の軸部を弦方向に通すとともに締結するための雌ネジ孔311が形成されている。また、ネック部20の先端部には、雌ネジ孔311と対応する位置に、雄ネジ315の軸部を挿入するための穴(図示せず)が形成されている。
【0034】
弦Sの一端を溝部302に挿入した状態で、雄ネジ303をセットしてネジ締め方向に回転させることで、雄ネジ303の先端面と溝部302の底面によって弦Sの一端が挟持され、ネック側弦係止部30に弦Sの一端が係止される。なお、雄ネジ303の頭部には、レンチ等の工具で回すことができるように穴が形成されていてもよいし、人間が指で掴んで回すことができるように形成されていてもよい。
【0035】
ネック側弦係止部30は、貫通孔301が雌ネジ孔311と対応するように基盤部31にセットされる。この状態で、貫通孔301から雄ネジ315の軸部を挿入し、ネジ締め方向に回転させることで、雌ネジ孔311に雄ネジ315が締結され、ネック側弦係止部30がネック部20に固定される。なお、雄ネジ315の頭部は、人間が指で掴んで回すことができるように形成されていてもよい。また、ネック側弦係止部30及び基盤部31の対向する両面には、互いに嵌り合う一組以上の凸部及び凹部が形成されていてもよい。このようにすれば、基盤部31に対するネック側弦係止部30の位置及び向きを決定し易くするとともに、雄ネジ315の回転によるネック側弦係止部30の回転を防ぐことができる。
【0036】
このような着脱構造により、ユーザーは、ネック側弦係止部30をネック部20に対して簡単に着脱することがきる。もちろん、ネック側弦係止部30をネック部20対して着脱できれば、着脱構造は上記の例に限られない。また、弦Sを係止することができれば、ネック側弦係止部30の構造は、上記の例に限られない。
【0037】
図6〜8は、本体側弦係止部の着脱構造の一例を示す図(その1〜3)である。図6は、本体側弦係止部40が基盤部41から取り外された状態を示している。図7〜8は、本体側弦係止部40が基盤部41に装着された状態を示している。図8は、本体側弦係止部40及び基盤部41の側面を示している。
【0038】
基盤部41及びブリッジ部50は、本体部10の表面の後端部(ネック部20と反対側)に、ネジ等の固定手段により固定される(図1参照)。基盤部41は、ブリッジ部50よりも後側に配置される。本実施形態の一例では、基盤部41及びブリッジ部50は一体的に接続されているが、分離されていてもよい。基盤部41及びブリッジ部50は、例えば、鉄などの金属で構成される。
【0039】
基盤部41は、基板部材411と、左右1対の板部材412(本発明の「第1の制限部」に相当する)と、板部材413(本発明の「第2の制限部」に相当する)とを備える。基板部材411は、本体部10に固定される。左右の板部材412は、互いに向かい合うように基板部材411の左右端部の上側に立設される。さらに、左右の板部材412の先端部は、基板部材411と向かい合うように直角に曲げられて形成される。板部材413は、本体部10の後側面に向かい合うように基板部材411の後端部の下側に立設される。
【0040】
本体側弦係止部40は、基盤部41に着脱可能に構成される。本体側弦係止部40は、例えば、鉄などの金属で構成される。本体側弦係止部40は、弦Sそれぞれの一端を弦方向の位置を調整可能に係止する。本体側弦係止部40は、直方体状に形成され、基板部材411と左右の板部材412とに囲まれる空間に挿入可能である。また、本体側弦係止部40は、基板部材411の板部材413に係合させるための板部材404(本発明の「係合部」に相当する)を備える。板部材404は、本体部10の後側面に向かい合うように本体側弦係止部40の後端部の下側に立設される。さらに、板部材404の先端部は、板部材413の先端面と向かい合うように直角に曲げられて形成される。
【0041】
本体側弦係止部40は、基盤部41の後方から、基板部材411と左右の板部材412とに囲まれる空間(多少の遊びが設けられてもよい)に挿入され、板部材404が板部材413に係合するようにセットされる。この状態で、弦Sの張力を強めて行くと、本体側弦係止部40は、弦Sの張力によりネック側に引っ張られる。しかし、本体側弦係止部40のネック側への動きは、板部材404が板部材413の後側面に当接することよって制限され、停止する。なお、本体側弦係止部40の左右方向の動きは、左右の板部材412によって制限される。また、本体側弦係止部40の上方向への動きは、左右の板部材412の先端部によって制限される。また、本体側弦係止部40の特に後端部の上方向への動きは、板部材404の先端部が板部材413の先端面に当接することによって制限される。
【0042】
図9は、本体側弦係止部の一例を示す分解図である。
【0043】
本体側弦係止部40は、枠部材401と、上側板部材402と、下側板部材403と、弦Sそれぞれに対応する係止部材405とを備える。本体側弦係止部40の各部材は、例えば、鉄などの金属で構成される。枠部材401は、後側の壁部材と左右の壁部材により形成され、ネジ等の固定手段により下側板部材403の上面に固定される。上側板部材402は、ネジ等の固定手段により枠部材401の上面に固定される。枠部材401、上側板部材402、及び下側板部材403により囲まれて形成される空間には、弦Sそれぞれに対応する係止部材405が収納される。なお、下側板部材403の下面の後端部には、上述の板部材404が設けられている。
【0044】
係止部材405は、直方体状に形成されており、そのネック側には、弦Sのボールエンドを上方から挿入して収納するための溝部406が形成されている。溝部406のネック側の入口部の幅は、弦Sのボールエンドの外径よりも小さく形成される。また、溝部406の内壁には、雄ネジ407を上方から挿入して締結するための雌ネジが形成されている。また、係止部材405の後側には、雄ネジ408の軸部を弦方向に通すとともに締結するための雌ネジ孔(図示せず)が形成されている。また、枠部材401の後側の壁部材には、雄ネジ408の軸部を弦方向に通すための貫通孔4011が形成されている。
【0045】
係止部材405は、枠部材401、上側板部材402、及び下側板部材403により囲まれて形成される空間内に挿入される。この状態で、枠部材401の後側から、貫通孔4011及びコイルバネ409に雄ネジ408の軸部を挿入し、ネジ締め方向に回転させることで、係止部材405の雌ネジ孔に雄ネジ408が締結され、係止部材405が枠部材401に接続及び支持される。係止部材405は、雄ネジ408を左又は右に回転させることにより、弦方向に移動可能である。なお、上側板部材402には、係止部材405の溝部406に挿入された雄ネジ407の頂面が露出するように、開口4021が設けられている。
【0046】
弦Sのボールエンドを溝部406に挿入した状態で、雄ネジ407をセットしてネジ締め方向に回転させることで、雄ネジ407の先端面と溝部406の底面によって弦Sのボールエンドが挟持され、係止部材405に弦Sの一端が係止される。この状態で、弦Sの張力を強めて行くと、弦Sのボールエンドは、ネック側に引っ張られて動くが、溝部406の入口部に引っ掛かり、停止する。なお、雄ネジ407の頭部には、レンチ等の工具で回すことができるように穴が形成されていてもよいし、人間が指で掴んで回すことができるように形成されていてもよい
【0047】
図10は、ブリッジ部の一例を示す分解図である。図11は、ブリッジ部の平面図である。図10及び図11では、基盤部41を破線で示している。
【0048】
ブリッジ部50は、基板部材501と、左右の側壁部材502と、ネック側壁部材503と、弦Sそれぞれに対応するサドル505とを備える。ブリッジ部50の各部材は、例えば、鉄などの金属で構成される。基板部材501は、本体部10に固定される。左右の側壁部材502は、互いに向かい合うように基板部材501の左右端部に立設される。ネック側壁部材503は、基板部材501のネック側端部に立設される。基板部材501、左右の側壁部材502、及びネック側壁部材503により囲まれて形成される空間には、弦Sそれぞれに対応するサドル505が収納される。
【0049】
サドル505は、直方体状に形成されており、その左右方向の中央部には弦Sの下面に接触して支持する支持部5051が形成されている。また、サドル505には、支持部5051の左右両側に、2つの雄ネジ506の軸部を上下方向に通すとともに締結するための2つの雌ネジ孔が形成されている。雄ネジ506を左又は右に回転させることで、雌ネジ孔からサドル505の下方に突出する雄ネジ506の軸部の長さを変更可能である。これにより、サドル505の高さ(弦Sの高さ)を調整することができる。
【0050】
また、サドル505には、そのネック側の面に、雄ネジ507の軸部を弦方向に通すとともに締結するための雌ネジ孔5052が形成されている。ネック側壁部材503には、雄ネジ507の軸部を弦方向に通すための貫通孔5031が形成されている。雄ネジ507は、例えば皿ネジであり、貫通孔5031の内壁は、雄ネジ507の頂面がネック側壁部材503のネック側面から突出しないように、雄ネジ507の頭部の形状に合わせて形成されている。
【0051】
ネック側壁部材503のネック側から、貫通孔5031及びコイルバネ508に雄ネジ507の軸部を挿入し、ネジ締め方向に回転させることで、サドル505の雌ネジ孔5052に雄ネジ507が締結され、サドル505がネック側壁部材503に接続及び支持される。雄ネジ507を左又は右に回転させることで、弦方向に移動可能である。これにより、サドル505の弦方向の位置(弦Sのスケール)を調整することができる。なお、雄ネジ507、コイルばね508、及び貫通孔5031は、各サドル505に対応して設けられる。
【0052】
さらに、ネック側壁部材503には、そのネック側面に、押え部材504が固定される。サドル505の支持部5051には、張られた弦Sの摩擦によってネック方向への力が加わる。そのため、雄ネジ507の頭部が弦方向に自由に移動可能な状態では、雄ネジ507及びサドル505がネック方向に移動してしまう。そこで、押え部材504は、雄ネジ507の頭部を押えてサドル505のネック方向への移動を制限するために設けられる。
【0053】
本実施形態の押え部材504は、ネジ構造によりネック側壁部材503に固定される。すなわち、押え部材504には、雄ネジ509の軸部を弦方向に通すとともに締結するための雌ネジ孔5042が形成されている。ネック側壁部材503には、雄ネジ509の軸部を弦方向に通すとともに締結するための雌ネジ孔5032が形成されている。もちろん、雄ネジ509の数は、図示するように4本に限られない。また、押え部材504も固定方法は、ネジ構造に限られず、溶着などの他の方法でもよい。
【0054】
ここで、押え部材504には、雄ネジ507の頂面の一部が露出するように、貫通孔5041が設けられている。貫通孔5041の内径は、雄ネジ507の頭部の外径よりも小さく形成される。ただし、貫通孔5041の内径は、雄ネジ507を回すためのスクリュードライバー等の工具の先端部の外径よりも大きく形成される。これにより、押え部材504をネック側壁部材503に固定したままでも、サドル505の弦方向の位置を容易に調整することができる。
【0055】
図10及び図11に示すブリッジ部50は、スクリュードライバー等の工具をネック側から貫通孔5041に挿入することで、サドル505の弦方向の位置を調整可能である。従って、ピックアップ11がブリッジ部50から十分離れて設置されているギター1(図1、いわゆるプレシジョン・ベースのようなタイプ)では、問題はない。しかし、ピックアップ11がブリッジ部50の近くに設置されているギター(例えばいわゆるジャズ・ベースのようなタイプ)では、問題が起こる。例えば、スクリュードライバー等の工具の持ち手あるいは作業者の手が、ピックアップ11に邪魔され、スクリュードライバー等の工具をネック側から貫通孔5041に上手く挿入することができない。そこで、ブリッジ部50は、下記のブリッジ部50Aのように構成してもよい。
【0056】
図12は、ブリッジ部の他の例を示す分解図である。図13は、ブリッジ部の平面図である。図12及び図13では、基盤部41を破線で示している。ブリッジ部50と異なる点を中心にブリッジ部50Aについて説明する。
【0057】
ブリッジ部50Aのネック側壁部材503には、雄ネジ507Aの軸部を弦方向に通すための貫通孔5031Aが形成されている。雄ネジ507Aの頭部は、円柱状に形成されており、その直径方向に1つ以上の貫通孔5071Aが形成されている。なお、貫通孔5071Aの替わりに、有底の穴を形成するようにしてもよい。いずれか貫通孔5071Aにレンチ等の工具を挿入して、雄ネジ507Aを左又は右に回転させることで、サドル505を弦方向に移動可能である。なお、押え部材504は、雄ネジ507Aの頭部を押えてサドル505のネック方向への移動を制限するために設けられる。押え部材504には、貫通孔5041(図10)が設けられていなくてよい。また、押え部材504とネック側壁部材503に挟まれて雄ネジ507Aの頭部の回転が困難にならないように、押え部材504とネック側壁部材503の間には、各雄ネジ509の軸部を貫通させるスペーサー(例えば、円筒状のスペーサー)を挟むようにしてもよい。各スペーサーの弦方向の寸法は、雄ネジ507Aの頭部の弦方向の寸法よりも、長く形成される。
【0058】
ブリッジ部50Aを用いれば、本体部10の上方あるいは左右方向からレンチ等の棒状の工具を貫通孔5071Aに挿入できる。これにより、ブリッジ部50Aのネック側の近くに設置されたピックアップ11等に邪魔されることなく、サドル505の弦方向の位置を調整することができる。
【0059】
最後に、ギター1を持ち運ぶ際の分解の手順の一例を説明する。(1)各弦Sについて、雄ネジ408を所定回転方向に回して、係止部材405をネック方向に移動させ、弦Sの張力を緩める。(2)雄ネジ315を所定回転方向に回して取り外し、ネック側弦係止部30を基盤部31から取り外す。(3)本体側弦係止部40を本体部10の後方向にスライドさせて、基盤部41から取り外す。なお、ギター1の組み立ては、例えば、上記の分解手順の逆を行えばよい。
【0060】
以上、本発明の一実施形態の一例について説明した。本実施形態によれば、弦やギターの破損を防止し易くするとともに、収納や持ち運びの利便性をより向上したギターを提供することができる。
【0061】
上記の本発明の実施形態は、本発明の要旨と範囲を例示することを意図し、限定するものではない。例えば、ギター1の各部の配置、寸法、形状等の構成は、本発明の目的を達成できれば、図示した例に限られない。また例えば、「直角」などの形や関係を示す言葉を用いているが、言葉どおりの厳密な意味に限られず、その意味と実質的に同一な場合(すなわち、本発明の効果を発揮できる場合)も含む。本発明は、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。もちろん、ある実施形態や変形例の一部の構成を、他の実施形態や変形例に加えたり、他の実施形態や変形例の一部の構成と置換したりしてもよい。
【0062】
また、部材どうしの接続方法は、ネジを用いて連結するのに限られず、金属板等の曲げ加工、溶接、接着等の他の手段を用いて一体的に接続するものであってもよい。
【0063】
本発明に係るギターは、エレクトリック・ベースに限らず、エレクトリック・ギター、アコースティック・ベース、アコースティック・ギター、等のギター類を含む。また、本発明は、ギターに限らず、弦係止構造、弦係止方法などの様々な形態によって提供することができる。また、本発明は、ギターに限らず他の弦楽器(特に撥弦楽器)にも適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1…ギター、10…本体部、11…ピックアップ、20…ネック部、21…ナット、30…ネック側弦係止部、31…基盤部、40…本体側弦係止部、41…基盤部、50…ブリッジ部、50A…ブリッジ部、101…プレート、102…貫通孔、105…凹部、106…受け部、201…プレート、202…雌ネジ孔、205…雄ネジ、301…貫通孔、302…溝部、303…雄ネジ、311…雌ネジ孔、315…雄ネジ、401…枠部材、402…上側板部材、403…下側板部材、404…板部材、405…係止部材、406…溝部、407…雄ネジ、408…雄ネジ、409…コイルバネ、411…基板部材、412…板部材、413…板部材、501…基板部材、502…側壁部材、503…ネック側壁部材、504…押え部材、505…サドル、506…雄ネジ、507…雄ネジ、507A…雄ネジ、508…コイルバネ、509…雄ネジ、4011…貫通孔、4021…開口、5031…貫通孔、5031A…貫通孔、5032…雌ネジ孔、5041…貫通孔、5042…雌ネジ孔、5051…支持部、5052…雌ネジ孔、5071A…貫通孔、C…ギターケース、C1…下ボディ部、C2…上ボディ部、S…弦
図1
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