(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
プラスチックシートとして、白く、不透明でありながら薄く、軽量で耐水性があり、且つ表面が平滑な素材が要求されることが多い。用途は、ポスター等の印刷用途、壁紙等の建装用途、ラベル等の加工用途等多岐にわたり、また新しい機能材料の開発のシーズとしても期待される。
【0003】
建装用に用いられる材料で特に使用量が多い壁紙は、意匠性や耐久性のために裏打ち紙と称される基材の上に発泡樹脂層を設けたものが多い。特に塩化ビニル樹脂の発泡樹脂層は、比較的安価で燃えにくく施工も容易であることから、市販の壁紙の一般的な構成要素となっている。
この発泡樹脂層の上に絵柄層があり、さらにはエンボス模様がなされるので、発泡層は白色で、表面が平滑であることが望ましく、上記素材開発のコンセプトに一致する。
【0004】
前記のような新しい素材を考える場合、プラスチックの発泡層が参考になる。
プラスチックの発泡層には、いろいろな樹脂が使われており、製法も多岐にわたる。
シートの製法として考えられる溶融発泡成形法では、ガスを押出機に吹き込みながら連続的に成形するが、この一段法と称するものも、2台の押出機をつなぎ、1台目で原材料の混練を行い、2台目で発泡剤を投入して混合しているところが多い。また、これらのほか、高圧処理によりガス樹脂組成物に溶解させて発泡させる方法も知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の発泡シートの製法は手間がかかるものであるため、発泡の工程が比較的単純な製法を創出することが必要である。
【0007】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、簡便な方法で発泡可能なシートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、熱可塑性樹脂と、無機物質粒子とを、80:20〜20:80の比率で含み、さらに発泡剤を含む樹脂組成物をシート状に成形した後に、シートを延伸することで、簡便に発泡したシートを得られることを見出した。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) シートの製造方法であって、
熱可塑性樹脂と、無機物質粒子とを、80:20〜20:80の比率で含み、さらに発泡剤を含む樹脂組成物をシート状に成形する工程と、
成形後のシートを延伸する工程とを有する、方法。
【0010】
(2) 前記発泡剤が、結晶性ポリエチレン樹脂をキャリアレジンとし、気泡造核剤として作用する熱分解型発泡剤であって、炭酸水素塩を有効成分とする、(1)に記載の方法。
【0011】
(3) 前記発泡剤中の炭酸水素塩の量が、前記樹脂組成物全体の質量に対して0.04〜1質量%である、(1)又は(2)に記載の方法。
【0012】
(4) 前記シート状に成形する工程は、前発泡剤におけるポリエチレン樹脂の分解温度より30〜45℃高い温度で前記樹脂組成物を押出す工程を含む、(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
【0013】
(5) 成形後のシートの延伸が、縦又は/及び横に、それぞれ1.2〜5倍に延伸することにより行われる、(1)から(4)のいずれかに記載の方法。
【0014】
(6) 前記無機物質粒子が炭酸カルシウム粒子を含む、(1)から(5)のいずれかに記載の方法。
【0015】
(7) 段ボール用シートの製造方法である、(1)から(6)のいずれかに記載の方法。
【0016】
(8) 建装用シートの製造方法である、(1)から(6)のいずれかに記載の方法。
【0017】
(9) 裏打ち紙を備えないシートの製造方法である、(8)に記載の方法。
【0018】
(10) 延伸後のシートの表面に、クレー・ラテックス系コーティング塗液、デジタルプリントに適したコーティング塗液を塗布する工程をさらに有する、(1)から(9)のいずれかに記載の方法。
【0019】
(11) 発泡シートの製造方法であって、
熱可塑性樹脂と、平均粒子径が1〜15μmの無機物質粒子とを、80:20〜20:80の比率で含み、さらに滑剤を含む添加剤を添加した樹脂混合物を混錬して、一旦混錬ペレットとして得る混練工程と、
ポリエチレン樹脂をキャリアレジンとし、気泡造核剤として作用する熱分解型発泡剤を、有効成分である炭酸水素塩として樹脂に対し0.04〜1%添加し、発泡剤の分解温度より30〜45℃高い温度で、混練押出成形する工程とを有する、シートの製造方法。
【0020】
(12) (11)に記載の方法により得られたシートについて、縦又は/及び横に、それぞれ1.2〜5倍に延伸する方法。
【0021】
(13) (11)に記載のシートの製造方法において、
熱可塑性樹脂と無機物質粒子と滑剤を含む添加剤とを直接混錬押出成形機に投入し、混練が行われている過程で、(11)に記載された熱分解型発泡剤を添加し、混合ペレットを経由することなく成形するシートの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、簡便な方法に発泡可能なシートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は特にこれに限定されない。
【0024】
<シートの製造方法>
本発明のシートの製造方法は、熱可塑性樹脂と、無機物質粒子とを、80:20〜20:80の比率で含み、さらに発泡剤を含む樹脂組成物をシート状に成形する工程と、成形後のシートを延伸する工程とを有する。
【0025】
(成形工程)
本発明の成形工程は、熱可塑性樹脂と、無機物質粒子とを、80:20〜20:80の比率で含み、さらに発泡剤を含む樹脂組成物をシート状に成形する工程である。
【0026】
成形工程において、樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂等の中から選択することができる。これらのうち、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂を用いることが好ましく、ポリプロピレン樹脂を用いる事が特に好ましい。
【0027】
成形工程において、樹脂組成物に含まれる無機粒子としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム等が挙げられ、特に炭酸カルシウムが好ましい。これらは単独で使用しても、2種類以上併用してもよい。また、無機粒子の分散性又は反応性を高めるために、無機粒子の表面を予め常法に従い改質しておいてもよい。
【0028】
成形工程において、樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂と、無機物質粒子との配合比(質量比)は、80:20〜20:80の比率であれば特に限定されないが、70:30〜30:70の比率であることが好ましく、60:40〜30:70の比率であることがより好ましく、50:50〜35:65の比率であることがさらに好ましく、57:43〜37:63の比率であることがより一層好ましい。
【0029】
本発明において、無機物質粒子は核剤として作用する。
【0030】
無機粒子の平均粒子径は、0.1μm以上50μm以下が好ましく、1.0μ以上15μm以下がより好ましい。本発明における無機粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した、積算%の分布曲線から得られる50%粒子径(d50)である。
【0031】
上記発泡剤としては、例えば、キャリアレジンに発泡剤の有効成分が含まれるものを用いる事ができる。キャリアレジンとしては、結晶性ポリエチレン樹脂等が挙げられる。これらのうち、結晶性ポリエチレン樹脂が好ましい。また、有効成分としては、炭酸水素塩等が挙げられる。これらのうち、炭酸水素塩が好ましい。結晶性ポリエチレン樹脂をキャリアレジンとし、炭酸水素塩を熱分解型発泡剤として含む発泡剤コンセントレートであることが好ましい。
【0032】
結晶性ポリエチレン樹脂等のキャリアレジンの溶融温度より高い温度で、熱可塑性樹脂と無機物質粒子を含む樹脂体を溶融すると、前記熱可塑性樹脂より溶融粘度が高いキャリアレジンとする発泡剤コンセントレートは、熱可塑性樹脂の相のなかで、ポリエチレンに包まれた独立気泡体を形成する。このため、混練の過程でも発泡体は維持される。このことから、発泡剤に含まれるキャリアレジンは、熱可塑性樹脂の溶融粘度より高いものを用いることが好ましい。
【0033】
成形工程において発泡剤に含まれる発泡剤の含有量は熱可塑性樹脂、無機物質粒子、有効成分の量等の種類に応じて、適宜設定してもよいが、樹脂組成物の質量に対して0.04〜5%の範囲の中から選択すると好結果を得やすい。
【0034】
なお、本発明者らは、上記発泡剤の使用最適条件を見出すため実験を重ね、次のような結果を得た。なお、発泡剤としては、永和化成工業(株)製ポリスレンEE275Fを使用したが、本コンセントレートは、結晶性ポリエチレン樹脂をキャリアレジンとする熱分解型発泡剤の炭酸水素塩型発泡剤で、有効成分の含有率は20〜30%である。
【0035】
熱可塑性樹脂としてポリプロピレン単独重合体を選択し、実施例に記したような条件で押出しシートに成形したところ、次のような現象が見出された。
(1) 上記コンセントレート量が1%(対樹脂量)の場合、成形温度が195℃以下であれば、良好な発泡シートが得られたが、後述する実施例4に記したような成形温度が215℃の場合は勿論、205℃でも成形シートに透明な穴が生成した。
(2) 上記コンセントレート量を樹脂量に対し2%にすると、押出成形温度を195℃として成形しても上記の穴が生成した。
【0036】
以上から、押出成形機で上記発泡剤を混合し、ダイス出口で発泡させるための適性条件としては、今回の熱可塑性樹脂、無機物質粒子を使用し、両者混合しての混練条件の場合、押出成形温度は、発泡剤におけるキャリアレジンの分解温度+30〜45℃、発泡剤添加量は樹脂組成物に対し0.2〜1.5%(正味量0.04〜0.5%)が、外観(白色度、透明度、穴の有無)の点では好ましい条件である。これらの条件は、特に、結晶性ポリエチレン樹脂をキャリアレジンと、炭酸水素塩を有効成分とする発泡剤を用いるときに好ましい。さらに、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン樹脂を用いるときに、特に好ましい条件である。
【0037】
本発明における樹脂組成物は、上記した熱可塑性樹脂と無機粒子と発泡剤の他に滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色用顔料、分散剤、帯電防止剤、難燃剤等の中から選ばれる1種以上の補助剤を、目的に反しない範囲で添加することができる。
【0038】
樹脂組成物を得る方法は、特に限定されず、成形方法(押出し成形、射出成形、真空成形等)に応じて適宜設定してよく、例えば、成形機にホッパーから投入する前に熱可塑性樹脂と無機粒子とを混練溶融し、発泡剤を添加してもよく、成形機と一体で成形と同時に熱可塑性樹脂と無機粒子と発泡剤とを混練溶融してもよい。溶融混練は、熱可塑性樹脂に無機粒子を均一に分散させる観点から、高い剪断応力を作用させて混練することが好ましく、例えば二軸混練機で混練することが好ましい。
【0039】
本発明の方法において、樹脂組成物は、ペレットの形態を経てもよく、ペレットの形態を経なくてもよいが、ペレットを経由しないことが好ましい。従来は、熱可塑性樹脂、無機物質粒子、滑剤、添加物等を混錬し、押出成形で一旦混合ペレット化し、混合ペレットに対して、発泡剤を添加し、再度溶融、混錬して押出成形を行うものであるが、かかる方法では、混練を2度行うため、操作が多く人手が余計にかかり、エネルギー必要量も多くなり、その上、熱可塑性樹脂の熱劣化も多くなる。しかしながら、本発明は、混合ペレットを経由せずに、直接発泡剤を含む全原材料を二軸の混錬押出機に投入し、成形することが可能である。そのため、種々な手間を省くことが出来、エネルギー必要量の抑制でき、熱可塑性樹脂の熱劣化も抑制できる。上記直接法においても、原材料に応じて投入順序等を変えることにより、発泡シートを製造可能なことを本発明者らは見出した。
【0040】
成形方法は、シート状にする方法であれば特に限定されず、従来の公知の成形方法(押出成形等)を用いることができるが、特に、シート表面の平滑性を考慮すると、押出機で押出成形してシートを作る方式を採用することが好ましい。この方式で、シート中に微細なセルを形成させるために、第一に、微細な無機物質粒子を核剤として使用し、さらに、微細セルに仕上がる気泡造核剤を併用することが好ましい。微細な無機物質粒子を混合することは、不透明さを上げるためにも役立つ。
【0041】
具体的には、平均粒子径が1〜15μmの無機物質粒子を選び、熱可塑性樹脂と混練して作成した樹脂組成物に対して、発泡剤として、気泡造核剤として作用するもので、結晶性ポリエチレン樹脂をキャリアレジンとする熱分解型発泡剤を選択して添加し、押出成形して発泡シートを成形することが特に好ましい。
【0042】
また、成形は、混練する工程と、シート状に成形する工程とを連続的に行う直接方法を用いてもよく、例えば、Tダイ方式の二軸押出し成形機を使用する方法を用いてもよい。
【0043】
<延伸工程>
本発明は、成形後のシートを延伸する工程をさらに有する。
【0044】
成形後の発泡シートに対し、延伸(例えば、縦及び/又は横延伸)を行うと、シートの密度が低下する。密度が低下することによりシートの発泡が良好なものとなる。本発明は、このように簡便な工程により発泡が良好なシートを得ることができる。
【0045】
後述する実施例に記したように、縦横同時二軸延伸で、1.5倍×1.5倍に延伸したところ、発泡シートの密度が1.0〜1.3から0.63〜0.86に減少した。この結果から、発泡剤添加前の樹脂組成物と、発泡後の樹脂組成物の密度を使って発泡倍率を計算すると、成形直後は、1.5〜2.0倍となり、延伸により3.2倍となる。このように、延伸により発泡倍率が高くなる。
【0046】
延伸の方法は、特に限定されないが、縦若しくは横方向に一軸、又は、縦及び横方向に逐次延伸若しくは同時二軸の延伸処理のいずれであってもよいが、縦及び/又は横延伸が好ましい。このように、成形後の発泡シートを縦及び/又は横延伸にかけることにより、特に容易に密度を下げることができ、延伸倍率4〜5倍で密度は0.5以下とすることも可能である。このように延伸したシートの発泡状態を観察すると、連続的な発泡が認められる。
【0047】
延伸は、所望の樹脂成形体に応じて適宜設定してよく、例えば、縦若しくは横方向に一軸、又は、縦及び横方向に逐次延伸若しくは同時二軸の延伸処理のいずれであってもよいが、逐次又は同時二軸延伸が好ましい。延伸後の縦方向及び横方向の延伸倍率は、縦又は/及び横に、それぞれ1.1倍以上6.0倍以下が好ましく、1.2倍以上5倍以下が特に好ましい。
【0048】
必要な延伸倍率は、計算により算出することも可能である。延伸をかける前の樹脂組成物の1平方メートルあたりの重量(坪量ともいう。)W(g/m
2)を測定し、生産計画で定められた製品の見かけ比重D及び縦横比(縦方向と横方向の延伸倍率の比)Rと、横延伸後の製品の厚さの目標値T(cm)を使って、次式により延伸倍率(縦方向X倍、横方向Y倍)を決め、延伸を行うことができ、さらに装置ごとの操業経験で容易に推定可能である。
(式1)
X
2=W×10
−4/(D×Z×R×T)
X=RY
式中、 D:生産計画で定められた製品の見かけ比重
R:生産計画で定められた縦横比(縦方向と横方向の延伸倍率の比)
W:縦延伸をかける前の薄膜材料の1平方メートルあたりの重量(g)
X:縦方向の延伸倍率
Y:横方向の延伸倍率
Z:縦延伸によるシートの横方向の長さの収縮倍率もしくは伸長倍率
【0049】
本発明により得られたシートの用途は特に限定されず、例えば、本発明の方法により得られたシートを利用して段ボールを製造できるため、段ボール用のシートの製造に適している。かかる場合、製造方法は、本出願の方法で発泡シートを作成し、例えば、プラスチック段ボールの製造方法で行う。また、本発明により得られたシートは、それ以外の用途に用いてもよく、例えば、建装用シート(特に、裏打ち紙を備えないシート)に適している。
【0050】
本発明の方法により得られたシートの表面にコーティングを行い、グラビア印刷、フレキソ印刷、ロトグラビア印刷等の印刷、各種デジタルプリントを行うことができる。このように、印刷用の製造にも適している。
【0051】
グラビア印刷用は、クレー・ラテックス系コーティング塗液を塗工機で塗工し、各種デジタルプリントに対しては、それぞれのプリンターに適したコーティング塗液を塗工機で塗工することができる。
【0052】
本発明によると、無機物質粒子と熱可塑性樹脂とを混錬して作成した樹脂組成物に対して、発泡剤を添加し、押出機で成形すると、微細な発泡粒子を含むシートが得られる。
このシートを縦及び/又は横に延伸することにより、密度が低い(例えば、1.0〜0.5)のシートが得られる。
本発明の方法は、押出機でシート成形を行う過程で、発泡シートを作成でき、さらに延伸工程を有するフィラー高充填シートの製造工程では、その工程をそのまま使用して密度0.5以下、発泡倍率5倍を超える発泡シートを作成できる。
【0053】
<シート>
本発明は、熱可塑性樹脂と、無機物質粒子とを、80:20〜20:80の比率で含み、密度が1.0以下であるシートであってもよい。
【0054】
上記で述べた製造方法により、密度が1.0以下という低密度のシートを製造できることができる。なお、密度の単位は、g/ccである。
【0055】
シートの密度は、密度が1.0以下であれば特に限定されないが、0.9以下(0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下等)であることが好ましい。また、シートの密度は、0.1以上(0.2以上、0.3以上等)であってもよい。
【実施例】
【0056】
<実施例1、2、比較例1、2>
ポリプロピレン樹脂として、ポリプロピレン単独重合体 (日本ポリプロ(株)製:
EA9)(略号 PP1)、炭酸カルシウムとして、ライトンS―4 (備北粉化工業(株)製 平均粒径 2.2μm)(略号CC1)、滑剤としてステアリン酸マグネシウム(略称MS1)を使用した。
【0057】
(株)パーカーコーポレーション製同方向回転ニ軸混錬押出機HK−25D(φ25mm、L/D=41)を用い、最上流からPP1樹脂を重量式振動フィーダーで投入し、シリンダー中程からCC1及びMS1を重量式ニ軸スクリューフィーダーで投入し、ストランドを押出し、冷却後カットすることでペレット化した。PP1、PP1+CA1樹脂投入部のシリンダー温度は150℃、CC1及びMS1投入部のシリンダー温度は190〜200℃に設定した。
【0058】
このようにして作製したペレットとともに化学発泡剤として永和化成工業(株)製ポリスレンEE275F(分解温度155℃、発生ガス量230ml/5g)を加えて(株)東洋精機製作所製ラボプラストミル 一軸Tダイ押出成形装置(φ20mm、L/D=25)により、195℃で押出しシートに成形した。
【0059】
さらに、それらのシートを株式会社井元製作所製ニ軸同時延伸機IMC−11A9により、125℃で縦横1.5倍×1.5倍、7mm/分で同時ニ軸延伸した(実施例1、2)。また、ニ軸同時延伸を行わなかったものを、比較例1、2とした。以下に、実施例1、2、比較例1、2について説明する。
【0060】
(実施例1)
PP1/CC1/MS1=40/60/0.5の比率で調整したペレットにEE275FをPP1に対して1重量%加え195℃で押出し、シートに成形した。得られたシートについて、1.5倍×1.5倍同時ニ軸延伸を行ったところ、シートの厚みは686μm、密度は0.625となった。
【0061】
(実施例2)
PP1/CC1/MS1=40/60/0.5の比率で調整したペレットに対し、EE275FをPP1に対して0.5重量%加え、195℃で押出してシートに成形した。得られたシートについて、1.5倍×1.5倍同時ニ軸延伸を行ったところ、シートの厚みは431μm、密度は0.864になった。
【0062】
(比較例1)
PP1/CC1/MS1=40/60/0.5の比率で調整したペレットにEE275FをPP1に対して1重量%加え195℃で押出し、シートに成形した。シートの厚みは736μm、密度は1.034であった。
【0063】
(比較例2)
PP1/CC1/MS1=40/60/0.5の比率で調整したペレットに対し、EE275FをPP1に対して0.5重量%加え、195℃で押出してシートに成形した。シートの厚みは507μm、密度は1.294であった。
【0064】
以上で述べたように、延伸をしなかった比較例1、2においては、密度が1.0以上あるが、延伸した実施例1、2においては、密度がより小さくなった。この結果から、無機フィラーを多く含む場合、発泡剤の添加により、延伸をすることで、密度が小さくなり良好な発泡体を得られることがわかった。
【0065】
【表1】
【0066】
<実施例3、4>
発泡剤の添加量、押し出し温度を変更した点以外は、実施例1、2と同様の手順で、シートを製造した(以下の実施例3、4)。
(実施例3)
PP1/CC1/MS1=40/60/0.5の比率で調整したペレットに対し、EE275FをPP1に対して2重量%加え、195℃で押出してシートに成形した。シート成形後、1.5倍×1.5倍同時ニ軸延伸を行ったところ。良好な発泡体を得ることができた。ただし、延伸前のシート全体に数100μm程度の穴が生成した。
【0067】
(実施例4)
PP1/CC1/MS1=40/60/0.5の比率で調整したペレットに対し、EE275FをPP1に対して1重量%加え、215℃で押出してシートに成形した。シート成形後、1.5倍×1.5倍同時ニ軸延伸を行ったところ。良好な発泡体を得ることができた。ただし、シート全体に数100μm程度の穴が生成した。
【0068】
【表2】
【0069】
表2に示すように、実施例1、2に示す条件の方が、外観(白色度、透明度、穴の有無)の点では好ましく、穴も空いていないことから延伸に適していることがわかった。
【0070】
<実施例5>
(実施例5)
実施例2における延伸倍率2.5倍に変更した点以外は、実施例2と同様の方法でシートを製造した。
【0071】
実施例5の方法により製造されたシートは、密度は0.402と低密度となった。