(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主弁室を画成する筒状の主弁ハウジング、該主弁ハウジングに合計で6個設けられたポート、及び前記主弁室内に軸線方向に移動可能に配在されたスライド式の主弁体を備え、前記主弁体内に、前記ポート間を選択的に連通するための複数本の連通路が設けられ、前記主弁体を移動させることにより、連通するポート間が切り換えられるようにされた六方切換弁であって、
前記主弁室に、3個のポートが軸線方向に並んで開口せしめられるとともに、前記3個のポートとは軸線周りで異なる位置に、別の3個のポートが軸線方向に並んで開口せしめられ、
前記主弁体は、前記3個のポートのうちの2個のポートを選択的に連通させる第1Uターン通路を有する第1スライド弁体と前記別の3個のポートのうちの2個のポートを選択的に連通させる第2Uターン通路を有する第2スライド弁体とを備え、
前記主弁室内で前記主弁体を移動させることにより、前記3個のポートのうちの2個のポートが前記第1Uターン通路を介して連通せしめられ、前記別の3個のポートのうちの2個のポートが前記第2Uターン通路を介して連通せしめられ、前記3個のポートのうちの他の1個のポートと前記別の3個のポートのうちの他の1個のポートが前記主弁ハウジング内を通じて連通せしめられる連通状態を選択的に複数とり得るようにされており、
前記第1スライド弁体と前記第2スライド弁体とが、前記第1Uターン通路と前記第2Uターン通路とが反対向きに開口するように背面合わせの状態で配在されており、
前記第1スライド弁体と前記第2スライド弁体とが、軸線方向に一体的に移動自在、かつ、軸線に対して垂直な方向に相互に摺動自在とされていることを特徴とする六方切換弁。
前記第1スライド弁体及び前記第2スライド弁体の一方に設けられた筒状部に、前記第1スライド弁体及び前記第2スライド弁体の他方に設けられた嵌合凸部が摺動自在に内嵌されて一体とされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の六方切換弁。
前記第1スライド弁体と前記第2スライド弁体との間に、前記第1スライド弁体と前記第2スライド弁体とを相互に逆方向に付勢する付勢部材が配在されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の六方切換弁。
前記第1Uターン通路及び前記第2Uターン通路の一方に相対的に高圧の流体が導入され、前記第1Uターン通路及び前記第2Uターン通路の他方に相対的に低圧の流体が導入されるとともに、前記第1Uターン通路及び前記第2Uターン通路の一方に導入された高圧流体の一部が前記圧力室に導入されるようにされていることを特徴とする請求項6に記載の六方切換弁。
軸線に対して垂直な方向で視て、前記第1スライド弁体及び前記第2スライド弁体の一方における前記圧力室側の受圧面積が前記第1ポート、第2ポート、及び第3ポートが設けられた主弁座側の受圧面積より大きくされていることを特徴とする請求項7に記載の六方切換弁。
前記第1連通状態において、前記第3ポートと前記第6ポートが前記主弁室を介して連通せしめられ、前記第2連通状態において、前記第1ポートと前記第4ポートが前記主弁室を介して連通せしめられることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の六方切換弁。
前記第1連通状態において、前記第3ポートと前記第6ポートが前記主弁体を貫通して設けられた下側貫通路を介して連通せしめられ、前記第2連通状態において、前記第1ポートと前記第4ポートが前記主弁体を貫通して設けられた上側貫通路を介して連通せしめられることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の六方切換弁。
前記下側貫通路及び/又は前記上側貫通路は、前記第1スライド弁体と前記第2スライド弁体とに跨がる分割連通路とされ、該分割連通路のうちの前記第1スライド弁体側の端部及び前記第2スライド弁体側の端部の一方に大径部が形成されるとともに、他方に前記大径部に挿入される嵌挿筒部が延設され、前記大径部と前記嵌挿筒部との間にシール材が介装されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の六方切換弁。
前記主弁ハウジングにおける前記主弁室の一端側及び他端側に、一対の第1及び第2ピストンにより画成される、高圧流体が選択的に導入・排出される容量可変の第1及び第2作動室が設けられ、前記主弁体は、前記第1及び第2ピストンに連動して軸線方向に移動自在に配在されており、
前記第1及び第2作動室への高圧流体の導入・排出を制御して前記第1及び第2ピストンを移動させて、前記主弁室内で前記主弁体を移動させるようにされていることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の六方切換弁。
前記第1ピストンと前記第2ピストンとは、主連結体により一体移動可能に連結され、前記主連結体に、前記主弁体が前記第1及び第2ピストンの往復移動に伴って移動するように連結、嵌合、もしくは係合せしめられていることを特徴とする請求項15に記載の六方切換弁。
前記主弁ハウジングの一端に、前記第1ピストンの一端方向への移動を阻止するストッパを兼ねる一端側蓋部材が固着され、前記主弁ハウジングの他端に、前記第2ピストンの他端方向への移動を阻止するストッパを兼ねる他端側蓋部材が固着されていることを特徴とする請求項15又は16に記載の六方切換弁。
前記第1及び第2作動室への高圧流体の導入・排出の制御を、前記第1及び第2作動室に設けられたポート、及び、前記六方切換弁の高圧部分と低圧部分とに接続された単一の四方パイロット弁により行うようにされていることを特徴とする請求項15から17のいずれか一項に記載の六方切換弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記した如くの従来の流路切換弁においては、次のような解決すべき課題がある。
【0010】
すなわち、特許文献1に所載のスライド式の六方切換弁では、前記6個のポートpA〜pFのうち5個のポートpB〜pFが軸線方向に並んで設けられているので、前記5個のポートpB〜pFが設けられる主弁座やスライド式主弁体が(軸線方向で)長くなり、スライド式主弁体が摺動自在に対接せしめられる主弁座の弁シート面やスライド式主弁体のシール面の面精度(平面度)の確保が難しく、初期漏れや耐久劣化による漏れ(弁漏れ)が増加するおそれがある。
【0011】
また、内容積が比較的小さな主弁ハウジング内において高圧流体(冷媒)が内壁面等に衝突するとともに、その流れ方向がクランク状に大きく変わるので、圧力損失が大きくなる嫌いがある。
【0012】
上記に加えて、従来の流路切換弁、特に、前記したヒートポンプ式冷暖房システムに使用される流路切換弁では、主弁ハウジング内において高温高圧の冷媒(ポートpAからポートpB、ポートpAからポートpFへ流れる冷媒)と低温低圧の冷媒(ポートpCからポートpD、ポートpEからポートpDへ流れる冷媒)とが近接した状態で流される。詳しくは、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが、冷房運転時には主弁座を介して隣接するポートpBとポートpCとに流され、暖房運転時には主弁座を介して隣接するポートpFとポートpCとに流されるが、その各ポートが設けられる主弁座は、一般に熱伝導率の高い金属で作製されているので、それらの間の熱交換量(つまり、熱損失)が大きくなって、システムの効率が悪くなるという問題もある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、弁漏れし難くできるとともに、圧力損失を効果的に抑えることのできる六方切換弁を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的とするところは、ヒートポンプ式冷暖房システム等の高温高圧の流体と低温低圧の流体が流される環境で使用される場合において、熱損失を低減し得てヒートポンプ式冷暖房システムの効率を向上させることのできる六方切換弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る六方切換弁は、基本的には、主弁室を画成する筒状の主弁ハウジング、該主弁ハウジングに合計で6個設けられたポート、及び前記主弁室内に軸線方向に移動可能に配在されたスライド式の主弁体を備え、前記主弁体内に、前記ポート間を選択的に連通するための複数本の連通路が設けられ、前記主弁体を移動させることにより、連通するポート間が切り換えられるようにされ、前記主弁室に、3個のポートが軸線方向に並んで開口せしめられるとともに、前記3個のポートとは軸線周りで異なる位置に、別の3個のポートが軸線方向に並んで開口せしめられ、前記主弁体
は、
前記3個のポートのうちの2個のポートを選択的に連通させる第1Uターン通路
を有する第1スライド弁体と前記別の3個のポートのうちの2個のポートを選択的に連通させる第2Uターン通路
を有する第2スライド弁体と
を備え、前記主弁室内で前記主弁体を移動させることにより、前記3個のポートのうちの2個のポートが前記第1Uターン通路を介して連通せしめられ、前記別の3個のポートのうちの2個のポートが前記第2Uターン通路を介して連通せしめられ、前記3個のポートのうちの他の1個のポートと前記別の3個のポートのうちの他の1個のポートが前記主弁ハウジング内を通じて連通せしめられる連通状態を選択的に複数とり得るようにされて
おり、前記第1スライド弁体と前記第2スライド弁体とが、前記第1Uターン通路と前記第2Uターン通路とが反対向きに開口するように背面合わせの状態で配在されており、前記第1スライド弁体と前記第2スライド弁体とが、軸線方向に一体的に移動自在、かつ、軸線に対して垂直な方向に相互に摺動自在とされていることを特徴としている。
【0016】
より具体的な好ましい態様では、
前記3個のポートは、第1ポート、第2ポート、及び第3ポート
であり、
前記別の3個のポートは、第4ポート、第5ポート、及び第6ポート
であり、
前記第1Uターン通路は、前記第1から第3ポートのうちの2個のポートを選択的に連通させ
、前記第2Uターン通路は、前記第4から第6ポートのうちの2個のポートを選択的に連通させ
、前記主弁室内で前記主弁体を移動させることにより、前記第1ポートと前記第2ポートが前記第1Uターン通路を介して連通せしめられ、前記第4ポートと前記第5ポートが前記第2Uターン通路を介して連通せしめられ、前記第3ポートと前記第6ポートが前記主弁ハウジング内を通じて連通せしめられる第1連通状態と、前記第2ポートと前記第3ポートが前記第1Uターン通路を介して連通せしめられ、前記第5ポートと前記第6ポートが前記第2Uターン通路を介して連通せしめられ、前記第1ポートと前記第4ポートが前記主弁ハウジング内を通じて連通せしめられる第2連通状態と、を選択的にとり得るようにされ
る。
【0018】
更に好ましい態様では、前記第1ポート、第2ポート、及び第3ポートと前記第4ポート、第5ポート、及び第6ポートとが対向する位置に設けられ
る。
【0020】
更に好ましい態様では、前記第1スライド弁体及び前記第2スライド弁体の一方に設けられた筒状部に、前記第1スライド弁体及び前記第2スライド弁体の他方に設けられた嵌合凸部が摺動自在に内嵌されて一体とされる。
【0021】
他の好ましい態様では、前記第1スライド弁体と前記第2スライド弁体との間に、前記第1スライド弁体と前記第2スライド弁体とを相互に逆方向に付勢する付勢部材が配在される。
【0022】
別の好ましい態様では、前記第1スライド弁体と前記第2スライド弁体との間に、高圧流体が導入される圧力室が設けられる。
【0023】
更に好ましい態様では、前記第1Uターン通路及び前記第2Uターン通路の一方に相対的に高圧の流体が導入され、前記第1Uターン通路及び前記第2Uターン通路の他方に相対的に低圧の流体が導入されるとともに、前記第1Uターン通路及び前記第2Uターン通路の一方に導入された高圧流体の一部が前記圧力室に導入されるようにされる。
【0024】
更に好ましい態様では、軸線に対して垂直な方向で視て、前記第1スライド弁体及び前記第2スライド弁体の一方における前記圧力室側の受圧面積が前記第1ポート、第2ポート、及び第3ポートが設けられた主弁座側の受圧面積より大きくされる。
【0025】
他の好ましい態様では、前記第1連通状態において、前記第3ポートと前記第6ポートが前記主弁室を介して連通せしめられ、前記第2連通状態において、前記第1ポートと前記第4ポートが前記主弁室を介して連通せしめられる。
【0026】
更に好ましい態様では、前記主弁室と前記圧力室との間をシールするシール材が配在される。
【0027】
他の好ましい態様では、前記第1連通状態において、前記第3ポートと前記第6ポートが前記主弁体を貫通して設けられた下側貫通路を介して連通せしめられ、前記第2連通状態において、前記第1ポートと前記第4ポートが前記主弁体を貫通して設けられた上側貫通路を介して連通せしめられる。
【0028】
更に好ましい態様では、前記下側貫通路及び/又は前記上側貫通路は、通路径が一定のストレート状通路で構成される。
【0029】
更に好ましい態様では、前記下側貫通路及び/又は前記上側貫通路は、前記第1スライド弁体と前記第2スライド弁体とに跨がる分割連通路とされ、該分割連通路のうちの前記第1スライド弁体側の端部及び前記第2スライド弁体側の端部の一方に大径部が形成されるとともに、他方に前記大径部に挿入される嵌挿筒部が延設され、前記大径部と前記嵌挿筒部との間にシール材が介装される。
【0030】
更に好ましい態様では、前記主弁室と前記圧力室とが常時連通せしめられる。
【0031】
他の好ましい態様では、前記主弁ハウジングにおける前記主弁室の一端側及び他端側に、一対の第1及び第2ピストンにより画成される、高圧流体が選択的に導入・排出される容量可変の第1及び第2作動室が設けられ、前記主弁体は、前記第1及び第2ピストンに連動して軸線方向に移動自在に配在されており、前記第1及び第2作動室への高圧流体の導入・排出を制御して前記第1及び第2ピストンを移動させて、前記主弁室内で前記主弁体を移動させるようにされる。
【0032】
更に好ましい態様では、前記第1ピストンと前記第2ピストンとは、主連結体により一体移動可能に連結され、前記主連結体に、前記主弁体が前記第1及び第2ピストンの往復移動に伴って移動するように連結、嵌合、もしくは係合せしめられる。
【0033】
別の好ましい態様では、前記主弁ハウジングの一端に、前記第1ピストンの一端方向への移動を阻止するストッパを兼ねる一端側蓋部材が固着され、前記主弁ハウジングの他端に、前記第2ピストンの他端方向への移動を阻止するストッパを兼ねる他端側蓋部材が固着される。
【0034】
別の好ましい態様では、前記第1及び第2作動室への高圧流体の導入・排出の制御を、前記第1及び第2作動室に設けられたポート、及び、前記六方切換弁の高圧部分と低圧部分とに接続された単一の四方パイロット弁により行うようにされる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る六方切換弁では、主弁室に、3個のポートが軸線方向に並んで開口せしめられるとともに、その3個のポートとは軸線周りで異なる位置に、別の3個のポートが軸線方向に並んで開口せしめられ、主弁体内に、少なくとも、3個のポートのうちの2個のポートを選択的に連通させる第1Uターン通路と別の3個のポートのうちの2個のポートを選択的に連通させる第2Uターン通路とが設けられ、主弁室内で主弁体を移動させることにより、3個のポートのうちの2個のポートが第1Uターン通路を介して連通せしめられ、別の3個のポートのうちの2個のポートが第2Uターン通路を介して連通せしめられ、3個のポートのうちの他の1個のポートと別の3個のポートのうちの他の1個のポートが主弁ハウジング内を通じて連通せしめられる連通状態(流路)を選択的に複数とり得るようにされている。より具体的には、主弁室に、第1ポート、第2ポート、及び第3ポートが軸線方向に並んで開口せしめられるとともに、第1ポート、第2ポート、及び第3ポートとは軸線周りで異なる位置に、第4ポート、第5ポート、及び第6ポートが軸線方向に並んで開口せしめられ、主弁体内に、少なくとも、第1から第3ポートのうちの2個のポートを選択的に連通させる第1Uターン通路と第4から第6ポートのうちの2個のポートを選択的に連通させる第2Uターン通路とが設けられ、主弁室内で主弁体を移動させることにより、第1ポートと第2ポートが第1Uターン通路を介して連通せしめられ、第4ポートと第5ポートが第2Uターン通路を介して連通せしめられ、第3ポートと第6ポートが主弁ハウジング内の主弁室或いは主弁体を貫通して設けられた下側貫通路を介して連通せしめられる第1連通状態と、第2ポートと第3ポートが第1Uターン通路を介して連通せしめられ、第5ポートと第6ポートが第2Uターン通路を介して連通せしめられ、第1ポートと第4ポートが主弁ハウジング内の主弁室或いは主弁体を貫通して設けられた上側貫通路を介して連通せしめられる第2連通状態と、を選択的にとり得るようにされている。そのため、従来のスライド式主弁体を使用した六方切換弁と比べて、ポートが設けられる主弁座や主弁体を(軸線方向で)短くできるので、主弁座の弁シート面や主弁体のシール面の面精度(平面度)が確保しやすくなり、弁漏れを抑えられるとともに、流体(例えば高圧流体(冷媒))がUターン通路を介して流されるので、圧力損失を低減することもできる。
【0036】
上記に加えて、本発明に係る六方切換弁をヒートポンプ式冷暖房システム等の、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒が流される環境で使用する場合、高温高圧の冷媒が流されるUターン通路と低温低圧の冷媒が流されるUターン通路が、例えば金属製の主弁座を介することなく比較的大きく離されて設けられるので、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが金属製の主弁座を介して近接した状態で流される従来のものに比べて、それらの間の熱交換量(つまり、熱損失)を大幅に低減でき、そのため、システムの効率を向上できるという効果も得られる。
【0037】
また、本発明に係る六方切換弁では、主弁体が、第1Uターン通路を有する第1スライド弁体と第2Uターン通路を有する第2スライド弁体とが背面合わせの状態で配在され、その第1スライド弁体と第2スライド弁体との間に、高圧流体が導入される圧力室が設けられるので、当該圧力室に導入された高圧流体によって第1スライド弁体と第2スライド弁体とがポートが設けられる主弁座にそれぞれ押し付けられる(圧接せしめられる)とともに、前述のように、高温高圧の冷媒が流されるUターン通路と低温低圧の冷媒が流されるUターン通路がさらに大きく離されて設けられるので、これによっても、弁漏れを抑えられるとともに、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒の間の熱交換量(つまり、熱損失)をさらに大幅に低減できる。
【0038】
上記した以外の、課題、構成、及び作用効果は、以下の実施形態により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0041】
<第1実施形態>
図1及び
図2は、本発明に係る六方切換弁の第1実施形態を示す縦断面図であり、
図1は、第1連通状態(冷房運転時)、
図2は、第2連通状態(暖房運転時)を示す図である。
【0042】
なお、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、説明が煩瑣になるのを避けるために図面に従って便宜上付けたものであり、実際にヒートポンプ式冷暖房システム等に組み込まれた状態での位置、方向を指すとは限らない。
【0043】
また、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、各構成部材の寸法に比べて大きくあるいは小さく描かれている場合がある。
【0044】
図示実施形態の六方切換弁1は、例えば前述した
図8(A)、(B)に示されるヒートポンプ式冷暖房システム100における六方切換弁180として用いられるスライド式のもので、基本的に、シリンダ型の六方弁本体10と、パイロット弁としての単一の電磁式四方パイロット弁90とを備える。なお、本実施形態の六方切換弁1に備えられている6個のポートは、上記六方切換弁180の各ポートpA〜pFに対応させて同一の符号が付されている。
【0045】
[六方弁本体10の構成]
六方弁本体10は、真鍮あるいはステンレス等の金属製とされた筒状の主弁ハウジング11を有し、この主弁ハウジング11に、一端側(上端側)から順次、第1作動室31、第1ピストン21、主弁室12、第2ピストン22、及び第2作動室32が配在されている。前記第1及び第2ピストン21、22にはいずれにも、主弁ハウジング11を気密的に仕切るべく、主弁ハウジング11の内周面にその外周部が圧接するばね付きパッキンが取り付けられている。
【0046】
主弁ハウジング11の上端には、容量可変の第1作動室31を画成する第1ピストン21の上方向への移動を阻止するストッパを兼ねる傘状の上端側蓋部材11Aが気密的に固着され、主弁ハウジング11の下端には、容量可変の第2作動室32を画成する第2ピストン22の下方向への移動を阻止するストッパを兼ねる逆立傘状の下端側蓋部材11Bが気密的に固着されている。上端側蓋部材11A及び下端側蓋部材11Bには、第1作動室31及び第2作動室32に高圧流体(冷媒)を導入・排出するためのポートp11、p12がそれぞれ取り付けられている。
【0047】
前記主弁ハウジング11(の主弁室12)には、合計で6個のポートが設けられている。
【0048】
詳しくは、前記主弁室12の左部中央には、その表面(右面)が平坦な弁シート面とされた例えば金属製の第1主弁座(弁シート)13がろう付け等により主弁ハウジング11(の内周)に気密的に固着され、その第1主弁座13の弁シート面に、左方に向けて延びる管継手からなる3個のポート(上端側から順次、ポートpB、ポートpA、ポートpF)が縦並びで(軸線O方向に並んで)略等間隔に開口せしめられている。
【0049】
また、前記主弁室12の右部中央(第1主弁座13に対向する位置、言い換えれば、軸線Oに対して第1主弁座13の反対側の位置)には、その表面(左面)が平坦な弁シート面とされた例えば金属製の第2主弁座(弁シート)14がろう付け等により主弁ハウジング11(の内周)に気密的に固着され、その第2主弁座14の弁シート面に、右方に向けて延びる管継手からなる3個のポート(上端側から順次、ポートpC、ポートpD、ポートpE)が縦並びで(軸線O方向に並んで)略等間隔に開口せしめられている。
【0050】
第1主弁座13に設けられた各ポート(ポートpB、ポートpA、ポートpF)と第2主弁座14に設けられた各ポート(ポートpC、ポートpD、ポートpE)とは、対向する位置(軸線Oに対して反対側)に設定されるとともに、本例では、第1主弁座13及び第2主弁座14に設けられた各ポートpA〜pFの口径は略同径に設定されている。
【0051】
前記主弁室12内には、両側面(左面及び右面)が前記第1主弁座13及び第2主弁座14の弁シート面にそれぞれ摺動自在に対接せしめられる、レーストラック形の環状シール面を持つ断面矩形状のスライド式の主弁体15が軸線O方向(上下方向)に移動可能に配在されている。
【0052】
前記主弁体15は、例えば合成樹脂製とされ、第1主弁座13側(左側)の第1スライド弁体15Aと、第2主弁座14側(右側)の第2スライド弁体15Bとが、背面合わせの状態で配在されて構成されている。
【0053】
第1スライド弁体15Aの左面側(第2スライド弁体15B側とは反対側)には、第1主弁座13の弁シート面に開口する3個のポートのうちの隣り合う2個のポート(ポートpBとポートpA、あるいは、ポートpAとポートpF)を選択的に連通させ得るような大きさの椀状窪みからなる第1Uターン通路(連通路)16Aが開設されている。また、第2スライド弁体15Bの右面側(第1スライド弁体15A側とは反対側)には、第2主弁座14の弁シート面に開口する3個のポートのうちの隣り合う2個のポート(ポートpCとポートpD、あるいは、ポートpDとポートpE)を選択的に連通させ得るような大きさの椀状窪みからなる第2Uターン通路(連通路)16Bが開設されている。
【0054】
一方、第2スライド弁体15Bの左面(第1スライド弁体15Aに対向する面)には、該第2スライド弁体15Bの外形とほぼ同形の筒状部15bが(左向きに)延設され、第1スライド弁体15Aの右面(第2スライド弁体15Bに対向する面)には、該第1スライド弁体15Aの外形(言い換えれば、第2スライド弁体15Bの外形)より若干小さい筒状の嵌合凸部15aが(右向きに)突設されている。前記嵌合凸部15aが前記筒状部15bに(間にOリング18を挟んで)摺動自在に内嵌されることにより、第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとは、左右方向(軸線Oに対して垂直な方向であって第1主弁座13に設けられた各ポート(ポートpB、ポートpA、ポートpF)と第2主弁座14に設けられた各ポート(ポートpC、ポートpD、ポートpE)とが対向する方向)に相互に若干の移動自在、かつ、上下方向(軸線O方向)に一体的に移動自在とされている。
【0055】
なお、第1スライド弁体15Aの嵌合凸部15aと第2スライド弁体15Bの筒状部15bとの配置関係は逆でも良い。つまり、第1スライド弁体15Aに筒状部を設け、第2スライド弁体15Bに嵌合凸部を設け、第1スライド弁体15Aの筒状部に第2スライド弁体15Bの嵌合凸部を内嵌して、当該第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとを一体としても良い。
【0056】
また、図示例では、第1スライド弁体15Aの右面(における嵌合凸部15aより内側の部分)と第2スライド弁体15Bの左面(における嵌合凸部15aより内側の部分)との間に、若干の隙間が形成されるとともに、第1スライド弁体15A(における第1Uターン通路16Aの底部)に、第1Uターン通路16Aと前記隙間とを連通する横孔からなる連通孔16aが設けられており、前記嵌合凸部15aと前記筒状部15bとの間に(具体的には、嵌合凸部15aの外周に設けられた環状溝に)、シール材としてのOリング18が介装されている。
【0057】
そのため、前記隙間を含む前記Oリング18より内側の部分は、ポート(吐出側高圧ポート)pAから第1Uターン通路16A及び連通孔16aを介して高圧流体(冷媒)が導入される圧力室17とされている。この圧力室17と主弁室12とは、その間に配在された前記Oリング18によりシール(封止)されている。
【0058】
ここでは、
図1及び
図2とともに
図3を参照すればよく分かるように、左右方向(軸線Oに対して垂直な方向)で視て、第1スライド弁体15Aにおける圧力室17側(右面側)の受圧面積Sbは第1主弁座13側(左面側)の受圧面積Saより大きくされる。
【0059】
より詳しくは、左右方向に対して垂直な平面に対する前記圧力室17の投影面積であって、前記圧力室17内に導入された高圧冷媒によって第1スライド弁体15A(の右面)が左方向の圧力を受ける面の投影面積(受圧面積Sb)が、左右方向に対して垂直な平面に対する前記第1主弁座13側の環状シール面の投影面積であって、ポート(環状シール面の内側)を流れる高圧冷媒によって第1スライド弁体15A(の左面)が右方向の圧力を受ける面の投影面積(受圧面積Sa)より大きくされている。
【0060】
これにより、ポート(吐出側高圧ポート)pAを介して第1Uターン通路16Aに高圧冷媒が導入され、該第1Uターン通路16Aに導入された高圧冷媒の一部が前記連通孔16aを介して圧力室17に充填されたときに、圧力室17(の高圧冷媒)から受ける圧力(より詳細には、圧力室17(の高圧冷媒)から受ける圧力と第2Uターン通路16Bを流れる冷媒(低圧冷媒)から受ける圧力との差圧)によって、第2スライド弁体15Bの右面(の環状シール面)が第2主弁座14の弁シート面に押し付けられるとともに、圧力室17(の高圧冷媒)から受ける圧力と第1Uターン通路16Aを流れる冷媒(高圧冷媒)から受ける圧力との差圧によって、第1スライド弁体15Aの左面(の環状シール面)が第1主弁座13の弁シート面に押し付けられるようになっている。
【0061】
また、本例では、第1スライド弁体15Aの右面と第2スライド弁体15Bの左面の各々に、複数のばね受け穴19a、19bが形成され、そのばね受け穴19a、19bに、第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとを相互に逆方向(引き離す方向)に付勢する圧縮コイルばね(付勢部材)19が縮装されており(図示例では、第1スライド弁体15Aの右面と第2スライド弁体15Bの左面との間の上下2箇所に圧縮コイルばね19が装填されており)、これによっても、第1スライド弁体15Aの左面(の環状シール面)は第1主弁座13の弁シート面に圧接せしめられる(押し付けられる)とともに、第2スライド弁体15Bの右面(の環状シール面)は第2主弁座14の弁シート面に圧接せしめられる(押し付けられる)。
【0062】
なお、本例では、第1スライド弁体15Aの第1Uターン通路16A及び第2スライド弁体15Bの第2Uターン通路16Bの略中央に、形状保持のための補強ピン15c、15dが前後方向に向けて架設されている。
【0063】
前記主弁体15は、前述のように、第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとが一体となって軸線O方向に移動せしめられ、
図1に示される如くの、ポートpFを開きかつポートpBとポートpAとを第1スライド弁体15Aの第1Uターン通路16Aを介して連通させるとともに、ポートpEを開きかつポートpCとポートpDとを第2スライド弁体15Bの第2Uターン通路16Bを介して連通させる冷房位置(上端位置)と、
図2に示される如くの、ポートpBを開きかつポートpAとポートpFとを第1スライド弁体15Aの第1Uターン通路16Aを介して連通させるとともに、ポートpCを開きかつポートpDとポートpEとを第2スライド弁体15Bの第2Uターン通路16Bを介して連通させる暖房位置(下端位置)とを選択的にとり得るようにされている。
【0064】
主弁体15の第1スライド弁体15Aは、移動時以外は3個のポートのうちの2個のポート(ポートpBとポートpA、あるいは、ポートpAとポートpF)の真上に位置し、主弁体15の第2スライド弁体15Bは、移動時以外は3個のポートのうちの2個のポート(ポートpCとポートpD、あるいは、ポートpDとポートpE)の真上に位置し、このときは、第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとの間に設けられた圧力室17(に導入された高圧冷媒)からの圧力や圧縮コイルばね19の付勢力によりそれぞれ左右に押圧されて第1主弁座13及び第2主弁座14の弁シート面に圧接せしめられている。
【0065】
第1ピストン21と第2ピストン22とは、例えば縦長矩形板状の主連結体25により一体移動可能に連結されている。主連結体25には、主弁体15の第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとが左右側から摺動自在に嵌合せしめられる(より具体的には、第2スライド弁体15Bの筒状部15bが摺動自在に内接するように嵌合せしめられる)例えば角丸矩形の主開口25aが形成されており、主弁体15は、第1及び第2ピストン21、22の往復移動に伴って前記主連結体25の主開口25a部分に押動されて(ここでは、前記第2スライド弁体15Bの筒状部15b部分が押圧されて)冷房位置(上端位置)と暖房位置(下端位置)との間を行き来するようにされている。
【0066】
また、主連結体25には、前記主開口25aの上下、すなわち、主弁体15が冷房位置(上端位置)をとるときに第1主弁座13の下側のポートpFと第2主弁座14の下側のポートpEの略真横に位置する部位に円形開口25bが形成されるとともに、主弁体15が暖房位置(下端位置)をとるときに第1主弁座13の上側のポートpBと第2主弁座14の上側のポートpCの略真横に位置する部位に円形開口25cが形成されている。
【0067】
[六方弁本体10の動作]
次に、上記した如くの構成を有する六方弁本体10の動作を説明する。
【0068】
主弁ハウジング11内に配在された主弁体15が暖房位置(下端位置)(
図2に示される如くの第2連通状態)にあるときにおいて、後述する四方パイロット弁90を介して、第2作動室32を吐出側高圧ポートであるポートpAに連通させるとともに、第1作動室31を吸入側低圧ポートであるポートpDに連通させると、第2作動室32に高温高圧の冷媒が導入されるとともに、第1作動室31から高温高圧の冷媒が排出される。そのため、主弁室12の他端側(下端側)の第2作動室32の圧力が主弁室12の一端側(上端側)の第1作動室31の圧力より高くなり、
図1に示される如くに、第1、第2ピストン21、22及び主弁体15が上方に移動して第1ピストン21が上端側蓋部材11Aに接当係止され、主弁体15が冷房位置(上端位置)(
図1に示される如くの第1連通状態)をとる。
【0069】
これにより、ポートpAとポートpBとが(第1Uターン通路16Aを介して)連通せしめられ、ポートpCとポートpDとが(第2Uターン通路16Bを介して)連通せしめられ、ポートpEとポートpFとが(主弁室12を介して)連通せしめられるので、
図8(A)、(B)に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100において、冷房運転が行われる。
【0070】
主弁体15が冷房位置(上端位置)(
図1に示される如くの第1連通状態)にあるときにおいて、後述する四方パイロット弁90を介して、第1作動室31を吐出側高圧ポートであるポートpAに連通させるとともに、第2作動室32を吸入側低圧ポートであるポートpDに連通させると、第1作動室31に高温高圧の冷媒が導入されるとともに、第2作動室32から高温高圧の冷媒が排出される。そのため、主弁室12の一端側(上端側)の第1作動室31の圧力が主弁室12の他端側(下端側)の第2作動室32の圧力より高くなり、
図2に示される如くに、第1、第2ピストン21、22及び主弁体15が下方に移動して第2ピストン22が下端側蓋部材11Bに接当係止され、主弁体15が暖房位置(下端位置)(
図2に示される如くの第2連通状態)をとる。
【0071】
これにより、ポートpAとポートpFとが(第1Uターン通路16Aを介して)連通せしめられ、ポートpEとポートpDとが(第2Uターン通路16Bを介して)連通せしめられ、ポートpCとポートpBとが(主弁室12を介して)連通せしめられるので、
図8(A)、(B)に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100において、暖房運転が行われる。
【0072】
[四方パイロット弁90の構成]
パイロット弁としての四方パイロット弁90は、その構造自体はよく知られているもので、
図4(A)、(B)に拡大図示されている如くに、基端側(左端側)外周に電磁コイル91が外嵌固定された円筒状のストレートパイプからなる弁ケース92を有し、該弁ケース92に、基端側から順次、吸引子95、圧縮コイルばね96、プランジャ97が直列的に配在されている。
【0073】
弁ケース92の左端部は、吸引子95の鍔状部(外周段丘部)に溶接等により密封接合されており、吸引子95は、通電励磁用の電磁コイル91の外周を覆うカバーケース91Aにボルト92Bにより締結固定されている。
【0074】
一方、弁ケース92の右端開口部には、高圧冷媒を導入するための細管挿着口(高圧導入ポートa)を有するフィルタ付き蓋部材98が溶接、ろう付け、かしめ等により気密的に取着されており、蓋部材98とプランジャ97と弁ケース92とで囲まれる領域が弁室99となっている。弁室99には、蓋部材98の細管挿着口(高圧導入ポートa)に気密的に挿着された可撓性を有する高圧細管#aを介して前記ポート(吐出側高圧ポート)pAから高温高圧の冷媒が導入されるようになっている。
【0075】
また、弁ケース92におけるプランジャ97と蓋部材98との間には、その内端面が平坦な弁シート面とされた弁座93がろう付け等により気密的に接合されており、この弁座93の弁シート面(内端面)には、先端側(右端側)から順次、前記した六方弁本体10の第1作動室31に細管#bを介して接続されるポートb、ポート(吸入側低圧ポート)pDに細管#cを介して接続されるポートc、第2作動室32に細管#dを介して接続されるポートdが弁ケース92の長手方向(左右方向)に沿って所定間隔をあけて横並びに開口せしめられている。
【0076】
吸引子95に対向配置されたプランジャ97は、基本的には円柱状とされ、弁ケース92内を軸方向(弁ケース92の中心線Lに沿う方向)に摺動自在に配在されている。そのプランジャ97の吸引子95側とは反対側の端部には、弁体94をその自由端側で厚み方向に摺動可能に保持する弁体ホルダ94Aがその基端部を取付具94Bと共に圧入、かしめ等により取付固定されている。この弁体ホルダ94Aには、弁体94を弁座93に押し付ける方向(厚み方向)に付勢する板ばね94Cが取り付けられている。弁体94は、弁座93の弁シート面に開口するポートb、c、d間の連通状態を切り換えるべく、当該弁座93の弁シート面に対接せしめられた状態で、弁座93の弁シート面をプランジャ97の左右方向の移動に伴って摺動するようになっている。
【0077】
また、弁体94には、弁座93の弁シート面に開口する3個のポートb〜dのうちの隣り合うポートb−c間、c−d間を選択的に連通させ得るような大きさの凹部94aが設けられている。
【0078】
また、圧縮コイルばね96は、吸引子95とプランジャ97との間に縮装されてプランジャ97を吸引子95から引き離す方向(図では、右方)に付勢するようになっているが、本例では、弁座93(の左端部)が、プランジャ97の右方への移動を阻止するストッパとされている。なお、このストッパの構成としては、その他の構成を採用し得ることは言うまでも無い。
【0079】
なお、上記四方パイロット弁90は、取付具92Aを介して六方弁本体10の背面側等の適宜の箇所に取付けられる。
【0080】
[四方パイロット弁90の動作]
上記した如くの構成とされた四方パイロット弁90においては、電磁コイル91への通電OFF時には、
図1及び
図4(A)に示される如くに、プランジャ97は圧縮コイルばね96の付勢力により、その右端が弁座93に接当する位置まで押し動かされている。この状態では、弁体94がポートbとポートc上に位置し、その凹部94aによりポートbとポートcが連通するとともに、ポートdと弁室99とが連通するので、ポート(吐出側高圧ポート)pAに流入する高圧流体が高圧細管#a→弁室99→ポートd→細管#d→ポートp12を介して第2作動室32に導入されるとともに、第1作動室31の高圧流体がポートp11→細管#b→ポートb→凹部94a→ポートc→細管#c→ポート(吸入側低圧ポート)pDへと流れて排出される。
【0081】
それに対し、電磁コイル91への通電をONにすると、
図2及び
図4(B)に示される如くに、プランジャ97は吸引子95の吸引力により、その左端が吸引子95に接当する位置まで(圧縮コイルばね96の付勢力に抗して)引き寄せられる。このときには、弁体94がポートcとポートd上に位置し、その凹部94aによりポートcとポートdが連通するとともに、ポートbと弁室99とが連通するので、ポート(吐出側高圧ポート)pAに流入する高圧流体が高圧細管#a→弁室99→ポートb→細管#b→ポートp11を介して第1作動室31に導入されるとともに、第2作動室32の高圧流体がポートp12→細管#d→ポートd→凹部94a→ポートc→細管#c→ポート(吸入側低圧ポート)pDへと流れて排出される。
【0082】
したがって、電磁コイル91への通電をOFFにすると、六方弁本体10の主弁体15が暖房位置(第2連通状態)から冷房位置(第1連通状態)に移行し、前記した如くの流路切換が行われる一方、電磁コイル91への通電をONにすると、六方弁本体10の主弁体15が冷房位置(第1連通状態)から暖房位置(第2連通状態)に移行し、前記した如くの流路切換が行われる。
【0083】
このように、本実施形態の六方切換弁1では、電磁式四方パイロット弁90への通電をON/OFFで切り換えることで、六方切換弁1内を流通する高圧流体(高圧部分であるポートpAを流れる流体)と低圧流体(低圧部分であるポートpDを流れる流体)との差圧を利用して六方弁本体10を構成する主弁体15を主弁室12内で移動させることにより、主弁ハウジング11に合計で6個設けられたポート間の連通状態が切り換えられ、
図8(A)、(B)に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100において、暖房運転から冷房運転への切り換え、及び、冷房運転から暖房運転への切り換えを行うことができる。
【0084】
[六方切換弁1の作用効果]
以上の説明から理解されるように、本実施形態の六方切換弁1においては、主弁室12に、ポートpB、ポートpA、及びポートpFが軸線O方向に並んで開口せしめられるとともに、ポートpB、ポートpA、及びポートpFとは軸線O周りで異なる位置に、ポートpC、ポートpD、及びポートpEが軸線O方向に並んで開口せしめられ、主弁体15内に、第1Uターン通路16Aと第2Uターン通路16Bとが設けられ、主弁室12内で主弁体15を移動させることにより、ポートpAとポートpBが第1Uターン通路16Aを介して連通せしめられ、ポートpCとポートpDが第2Uターン通路16Bを介して連通せしめられ、ポートpEとポートpFが主弁室12を介して連通せしめられる第1連通状態と、ポートpAとポートpFが第1Uターン通路16Aを介して連通せしめられ、ポートpEとポートpDが第2Uターン通路16Bを介して連通せしめられ、ポートpCとポートpBとが主弁室12を介して連通せしめられる第2連通状態と、を選択的にとり得るようにされている。そのため、従来のスライド式主弁体を使用した六方切換弁と比べて、ポートが設けられる主弁座(第1主弁座13及び第2主弁座14)や主弁体15を(軸線O方向で)短くできるので、主弁座(第1主弁座13及び第2主弁座14)の弁シート面や主弁体15のシール面の面精度(平面度)が確保しやすくなり、弁漏れを抑えられるとともに、流体(例えば高圧流体(冷媒))が第1Uターン通路16Aを介して流されるので、圧力損失を低減することもできる。
【0085】
また、本実施形態では、六方弁本体10内を流れる流体(例えば低圧冷媒)が第2Uターン通路16Bを介して流されるとともに、流体(例えば中圧冷媒)が主弁室12内を左右方向に(ストレート状に)流されるので、これによっても、圧力損失を低減することが可能となる。
【0086】
上記に加えて、本発明に係る六方切換弁1をヒートポンプ式冷暖房システム等の、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒が流される環境で使用する場合、高温高圧の冷媒が流される第1Uターン通路16Aと低温低圧の冷媒が流される第2Uターン通路16Bが、例えば金属製の主弁座を介することなく比較的大きく離されて設けられるので、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒とが金属製の主弁座を介して近接した状態で流される従来のものに比べて、それらの間の熱交換量(つまり、熱損失)を大幅に低減でき、そのため、システムの効率を向上できるという効果も得られる。
【0087】
また、本発明に係る六方切換弁1では、主弁体15が、第1Uターン通路16Aを有する第1スライド弁体15Aと第2Uターン通路16Bを有する第2スライド弁体15Bとが第1Uターン通路16Aと第2Uターン通路16Bとが反対向きに開口するように(言い換えれば、摺動面である環状シール面同士が逆向きになるように)背面合わせの状態で配在され、その第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとの間に、高圧流体が導入される圧力室17が設けられるので、当該圧力室17に導入された高圧流体によって第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとがポートが設けられる第1主弁座13及び第2主弁座14にそれぞれ押し付けられる(圧接せしめられる)とともに、前述のように、高温高圧の冷媒が流される第1Uターン通路16Aと低温低圧の冷媒が流される第2Uターン通路16Bが(前記圧力室17分だけ)さらに大きく離されて設けられるので、これによっても、弁漏れを抑えられるとともに、高温高圧の冷媒と低温低圧の冷媒の間の熱交換量(つまり、熱損失)をさらに大幅に低減できる。
【0088】
<第2実施形態>
図5及び
図6は、本発明に係る六方切換弁の第2実施形態を示す縦断面図であり、
図5は、第1連通状態(冷房運転時)、
図6は、第2連通状態(暖房運転時)を示す図である。
【0089】
図示第2実施形態の六方切換弁2は、前述した第1実施形態の六方切換弁1に対し、主に六方弁本体を構成する主弁体の構成が相違しており、その他の構成は略同じであるので、六方切換弁1の各部に対応する部分には共通の符号を付して重複説明を省略し、以下においては、相違点を重点的に説明する。
【0090】
図示実施形態の六方切換弁2は、第1実施形態の六方切換弁1と同様、例えば前述した
図8(A)、(B)に示されるヒートポンプ式冷暖房システム100における六方切換弁180として用いられるスライド式のものであるが、本例では、上記第1実施形態の六方切換弁1と比べて、六方弁本体10を構成する主弁ハウジング11(主弁室12)、主弁ハウジング11に固着された第1主弁座13及び第2主弁座23、主弁室12内に移動可能に配在されたスライド式の主弁体15等が、上下(軸線O方向)に若干長く形成されている。
【0091】
前記主弁体15は、上記第1実施形態の六方切換弁1と同様、第1主弁座13側(左側)の第1スライド弁体15Aと、第2主弁座14側(右側)の第2スライド弁体15Bとが、背面合わせの状態で配在された二分割構成となっており、第1スライド弁体15Aの左面側中央に第1Uターン通路16Aが開設されるとともに、第2スライド弁体15Bの右面側中央に第2Uターン通路16Bが開設されている。
【0092】
上記に加えて、本実施形態では、前記主弁体15における第1Uターン通路16Aと第2Uターン通路16Bの下側及び上側に(言い換えれば、第1Uターン通路16Aと第2Uターン通路16Bを挟んで)、
図5に示される如くの冷房位置(上端位置)をとるときにポートpEとポートpFとを連通させ得る下側貫通路(連通路)52と、
図6に示される如くの暖房位置(下端位置)をとるときにポートpCとポートpBとを連通させ得る上側貫通路(連通路)51とがそれぞれ設けられている。
【0093】
前記上側貫通路51及び下側貫通路52は、主弁体15を左右方向(軸線Oに対して垂直な方向)に貫通するように設けられており、ここでは、通路径(内径)が一定かつ各ポートpA〜pEの口径と略同じストレート状通路とされている。
【0094】
詳細には、主弁体15の左部を構成する第1スライド弁体15Aには、第1Uターン通路16Aの上下に、左右方向に向けて各ポートpA〜pEの口径と略同径の第1上側貫通路部51A及び第1下側貫通路部52Aがそれぞれ開設されている。主弁体15(の第1スライド弁体15A)が冷房位置(上端位置)にあるときには、第1上側貫通路部51Aの左面開口が第1主弁座13(の上側部分)に対接せしめられて閉塞されるとともに、第1Uターン通路16AがポートpB及びポートpAの真横に位置し、第1下側貫通路部52Aの左面開口がポートpFの真横に位置し、主弁体15(の第1スライド弁体15A)が暖房位置(下端位置)にあるときには、第1下側貫通路部52Aの左面開口が第1主弁座13(の下側部分)に対接せしめられて閉塞されるとともに、第1Uターン通路16AがポートpA及びポートpFの真横に位置し、第1上側貫通路部51Aの左面開口がポートpBの真横に位置するように、各部の寸法形状が設定されている。
【0095】
また、主弁体15の右部を構成する第2スライド弁体15Bには、第2Uターン通路16Bの上下に、左右方向に向けて前記第1上側貫通路部51A及び第1下側貫通路部52Aと同径(同じ通路径)の第2上側貫通路部51B及び第2下側貫通路部52Bがそれぞれ開設されている。この第2上側貫通路部51B及び第2下側貫通路部52Bは、前記第1スライド弁体15Aの第1上側貫通路部51A及び第1下側貫通路部52Aの真横に位置している。主弁体15(の第2スライド弁体15B)が冷房位置(上端位置)にあるときには、第2上側貫通路部51Bの右面開口が第2主弁座14(の上側部分)に対接せしめられて閉塞されるとともに、第2Uターン通路16BがポートpC及びポートpDの真横に位置し、第2下側貫通路部52Bの右面開口がポートpEの真横に位置し、主弁体15(の第2スライド弁体15B)が暖房位置(下端位置)にあるときには、第2下側貫通路部52Bの右面開口が第2主弁座14(の下側部分)に対接せしめられて閉塞されるとともに、第2Uターン通路16BがポートpD及びポートpEの真横に位置し、第2上側貫通路部51Bの右面開口がポートpCの真横に位置するように、各部の寸法形状が設定されている。
【0096】
第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bの2つの部材を合わせて、第1上側貫通路部51A及び第2上側貫通路部51Bで構成される直線状の上側貫通路(連通路)51並びに第1下側貫通路部52A及び第2下側貫通路部52Bで構成される直線状の下側貫通路(連通路)52が形成される。
【0097】
また、上側貫通路51と下側貫通路52は、前述の如くに、主弁体15の第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとに跨がる分割連通路となっているので、シール性を確保すべく、次のような方策が講じられている。すなわち、上側貫通路51を代表して説明するに、上側貫通路51を構成する第2スライド弁体15Bの第2上側貫通路部51Bの左端部(の内周部分)に大径部54が形成されるとともに、第1スライド弁体15Aの第1上側貫通路部51Aの右端部に、前記大径部54に摺動自在に挿入される円筒状の嵌挿筒部53が延設され、大径部54と嵌挿筒部53との間(具体的には、嵌挿筒部53の外周に設けられた環状溝)に、シール材としてのOリング55が(圧縮状態で)介装されている。下側貫通路52も同様な構成となっている。
【0098】
本実施形態では、主弁体15の上部に設けられた上側貫通路51と主弁体15の下部に設けられた下側貫通路52において、前記嵌挿筒部53が前記大径部54に(間にOリング55を挟んで)摺動自在に内嵌されることにより、上記第1実施形態と同様、第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとは、左右方向(軸線Oに対して垂直な方向)に相互に若干の移動自在、かつ、上下方向(軸線O方向)に一体的に移動自在とされている。
【0099】
なお、第1スライド弁体15Aの嵌挿筒部53と第2スライド弁体15Bの大径部54との配置関係は逆でも良い。つまり、第1スライド弁体15Aに大径部を設け、第2スライド弁体15Bに円筒状の嵌挿筒部を設け、第1スライド弁体15Aの大径部に第2スライド弁体15Bの嵌挿筒部を内嵌して、当該第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとを一体としても良い。
【0100】
また、本実施形態では、第1スライド弁体15Aの右面中央(上下の嵌挿筒部53の間の部分)と第2スライド弁体15Bの左面中央(上下の大径部54の間の部分)との間に、若干の隙間が形成されるとともに、第1スライド弁体15A(における第1Uターン通路16Aの底部)に、第1Uターン通路16Aと前記隙間とを連通する横孔からなる連通孔16aが設けられており、前記隙間を含む部分(つまり、主弁体15の中央部分)は、ポート(吐出側高圧ポート)pAから第1Uターン通路16A及び連通孔16aを介して高圧流体(冷媒)が導入される圧力室17となっているが、
図7を参照すればよく分かるように、圧力室17と主弁室12とは常時連通している。
【0101】
すなわち、上記第1実施形態では、Oリング18によって圧力室17が主弁室12から封止され、主弁室12は、ポートpEもしくはポートpCから導入される中圧流体(冷媒)で満たされることになるが、本第2実施形態では、圧力室17と主弁室12とが常時連通しており、主弁室12は、圧力室17を介して導入される高圧流体(冷媒)で満たされることになる。
【0102】
本例でも、上記第1実施形態と同様、左右方向(軸線Oに対して垂直な方向)で視て、第1スライド弁体15Aにおける圧力室17側(右面側)の受圧面積Sbは第1主弁座13側(左面側)の受圧面積Saより大きくされるとともに、第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとの間に、それらを相互に逆方向に付勢する圧縮コイルばね19が縮装されており、これによって、第1スライド弁体15Aの左面(の環状シール面)が第1主弁座13の弁シート面に圧接せしめられる(押し付けられる)とともに、第2スライド弁体15Bの右面(の環状シール面)が第2主弁座14の弁シート面に圧接せしめられる(押し付けられる)。ただし、本例では、主弁室12が、圧力室17を介して導入される高圧流体(冷媒)で満たされており、第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとが全面(主弁室12に露出する面)で高圧を受けることになるので、第1スライド弁体15Aの左面(の環状シール面)が第1主弁座13の弁シート面により強く圧接せしめられるとともに、第2スライド弁体15Bの右面(の環状シール面)が第2主弁座14の弁シート面により強く圧接せしめられる。
【0103】
前記主弁体15は、前述のように、第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとが一体となって軸線O方向に移動せしめられ、
図5に示される如くの、ポートpBとポートpAとを第1スライド弁体15Aの第1Uターン通路16Aを介して連通させ、ポートpCとポートpDとを第2スライド弁体15Bの第2Uターン通路16Bを介して連通させるとともに、ポートpFとポートpEとを下側貫通路52(第1スライド弁体15Aの第1下側貫通路部52A及び第2スライド弁体15Bの第2下側貫通路部52B)を介して連通させる冷房位置(上端位置)と、
図6に示される如くの、ポートpAとポートpFとを第1スライド弁体15Aの第1Uターン通路16Aを介して連通させ、ポートpDとポートpEとを第2スライド弁体15Bの第2Uターン通路16Bを介して連通させるとともに、ポートpBとポートpCとを上側貫通路51(第1スライド弁体15Aの第1上側貫通路部51A及び第2スライド弁体15Bの第2上側貫通路部51B)を介して連通させる暖房位置(下端位置)とを選択的にとり得るようにされている。
【0104】
主弁体15の第1スライド弁体15Aは、3個のポート(ポートpB、ポートpA、ポートpF)の真上に位置し、主弁体15の第2スライド弁体15Bは、3個のポート(ポートpC、ポートpD、ポートpE)の真上に位置し、第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとの間に設けられた圧力室17(に導入された高圧冷媒)からの圧力や圧縮コイルばね19の付勢力、主弁室12(に導入された高圧冷媒)からの圧力によりそれぞれ左右に押圧されて第1主弁座13及び第2主弁座14の弁シート面に圧接せしめられている。
【0105】
なお、本例では、主弁体15が冷房位置(上端位置)をとるときに第1主弁座13の下側のポートpFと第2主弁座14の下側のポートpEとは主弁体15内に設けられた下側貫通路52を介して連通し、主弁体15が暖房位置(下端位置)をとるときに第1主弁座13の上側のポートpBと第2主弁座14の上側のポートpCとは主弁体15内に設けられた上側貫通路51を介して連通するので、第1ピストン21と第2ピストン22とを連結する主連結体25において、上記第1実施形態における円形開口25b、25cは省略されている。
【0106】
上記した如くの構成を有する六方弁本体10では、主弁ハウジング11内に配在された主弁体15が暖房位置(下端位置)(
図6に示される如くの第2連通状態)にあるときにおいて、上記第1実施形態と同様の構成を有する四方パイロット弁90を制御する(すなわち、四方パイロット弁90の電磁コイル91への通電をOFFにする)と、主弁体15が冷房位置(上端位置)(
図5に示される如くの第1連通状態)をとる。
【0107】
これにより、ポートpAとポートpBとが(第1Uターン通路16Aを介して)連通せしめられ、ポートpCとポートpDとが(第2Uターン通路16Bを介して)連通せしめられ、ポートpEとポートpFとが(下側貫通路52を介して)連通せしめられるので、
図8(A)、(B)に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100において、冷房運転が行われる。
【0108】
一方、主弁体15が冷房位置(上端位置)(
図5に示される如くの第1連通状態)にあるときにおいて、上記第1実施形態と同様の構成を有する四方パイロット弁90を制御する(すなわち、四方パイロット弁90の電磁コイル91への通電をONにする)と、主弁体15が暖房位置(下端位置)(
図6に示される如くの第2連通状態)をとる。
【0109】
これにより、ポートpAとポートpFとが(第1Uターン通路16Aを介して)連通せしめられ、ポートpEとポートpDとが(第2Uターン通路16Bを介して)連通せしめられ、ポートpCとポートpBとが(上側貫通路51を介して)連通せしめられるので、
図8(A)、(B)に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100において、暖房運転が行われる。
【0110】
このように、本実施形態の六方切換弁2でも、上記第1実施形態の六方切換弁1と同様に、電磁式四方パイロット弁90への通電をON/OFFで切り換えることで、六方切換弁2内を流通する高圧流体(高圧部分であるポートpAを流れる流体)と低圧流体(低圧部分であるポートpDを流れる流体)との差圧を利用して六方弁本体10を構成する主弁体15を主弁室12内で移動させることにより、主弁ハウジング11に合計で6個設けられたポート間の連通状態が切り換えられ、
図8(A)、(B)に示される如くのヒートポンプ式冷暖房システム100において、暖房運転から冷房運転への切り換え、及び、冷房運転から暖房運転への切り換えを行うことができる。
【0111】
以上の説明から理解されるように、本実施形態の六方切換弁2においては、上記第1実施形態の六方切換弁1と同様の作用効果が得られることに加えて、冷房位置(第1連通状態)において、ポートpEとポートpFが主弁体15を貫通して設けられた直線状の(言い換えれば、左右方向に亘って通路径が一定のストレート状通路からなる)下側貫通路52を介して連通せしめられ、暖房位置(第2連通状態)において、ポートpCとポートpBとが主弁体15を貫通して設けられた直線状の(言い換えれば、左右方向に亘って通路径が一定のストレート状通路からなる)上側貫通路51を介して連通せしめられる。そのため、冷房位置(第1連通状態)においてポートpEからポートpFへ流れる中圧流体(冷媒)及び暖房位置(第2連通状態)においてポートpCからポートpBへ流れる中圧流体(冷媒)の流路径が一定となるので、当該中圧流体(冷媒)の圧力損失をより一層低減することが可能となる。
【0112】
また、本実施形態では、主弁室12と圧力室17とが常時連通せしめられ、ポート(吐出側高圧ポート)pAから第1Uターン通路16A及び連通孔16aを介して圧力室17に導入された高圧流体(冷媒)が主弁室12にも充填されるため、主弁室12に導入された高圧冷媒によっても、主弁体15を構成する第1スライド弁体15Aと第2スライド弁体15Bとがポートが設けられる第1主弁座13及び第2主弁座14にそれぞれ圧接せしめられる。そのため、第1主弁座13及び第2主弁座14への押し付け荷重が増加し、弁漏れをより効果的に抑えることが可能となる。
【0113】
なお、上記第1及び第2実施形態の六方切換弁1、2では、構成を簡素化するために、第1主弁座13に設けられた各ポート(ポートpB、ポートpA、ポートpF)と第2主弁座14に設けられた各ポート(ポートpC、ポートpD、ポートpE)とが対向配置されているが、6個のポートpA〜pFの配置構成(向きや位置関係等)は、図示例に限られないことは勿論である。例えば、第1主弁座13に設けられた各ポート(ポートpB、ポートpA、ポートpF)と第2主弁座14に設けられた各ポート(ポートpC、ポートpD、ポートpE)とを、軸線O周りで(主弁ハウジング11の周方向で)90度の角度間隔だけ離れた位置、言い換えれば、第1主弁座13に設けられた各ポート(ポートpB、ポートpA、ポートpF)と第2主弁座14に設けられた各ポート(ポートpC、ポートpD、ポートpE)とが直交するように設けても良い。
【0114】
また、上記第1及び第2実施形態の六方切換弁1、2では、四方パイロット弁90を用いて主弁室12内で主弁体15を駆動する構成について説明したが、例えば四方パイロット弁90に代えてモータを用いて主弁室12内で主弁体15を駆動する構成でも良い。
【0115】
また、本第1及び第2実施形態の六方切換弁1、2は、ヒートポンプ式冷暖房システムのみならず、他のシステム、装置、機器類にも組み込めることは勿論である。