(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
レストラン等の各種飲食店などでは、厨房から出る排水に油分が混ざっているため、そのまま油分がたれ流しにならないように、グリーストラップ(油分分離槽)などを設けて油分を分離し回収することが義務づけられている。通常、グリーストラップは、流し台の排水路に接続されており、この流入路からグリーストラップ内に導入される。導入された排水は、グリーストラップ内に設けられた生ゴミバスケット(集塵網)によって生ゴミ等が収集されるようになっている。
【0003】
生ゴミ等の固形分が分離された排水はグリーストラップ内に溜められ、油分と水との比重の違いによって油分が上層に、水が下層に分離される。グリーストラップ内にはまた適宜数の仕切り板が固定されて複数の貯留室が形成されており、グリーストラップに溜まっている下層の水のみが仕切り板の下方を通って貯留室に溜められるようになっている。貯留室に溜められた水は排水管を通じて排水され、グリーストラップ内で水と分離され上層に溜まった浮上油脂がグリーストラップにトラップされるようになっている。
【0004】
上記のように、グリーストラップは、油分をトラップして水分のみが排水されるようになっている。トラップされた油分は、時間とともに酸化・腐敗し、悪臭を発するようになるため定期的に除去する必要がある。ところで、ビル内の飲食店(特に駅前の雑居ビル等に入居する飲食店)では、床下のクリアランスを深くとることができず(通常300mm程度)、また、厨房もできる限りデッドスペースがないように設計される。このため、通常サイズの深型のグリーストラップを設置することができず、浅型もしくは超浅型といわれる深さ150mm〜250mm程度のグリーストラップを設置することで上記問題を解決している。しかし、上記のような浅型もしくは超浅型グリーストラップを利用する場合、水位が浅く容量が少ないため、油分がすぐに溜まるという問題が生じる。
【0005】
このような駅前の雑居ビル等に入居する飲食店では、グリーストラップの油分は、定期的(1〜2回/月)もしくは必要に応じて回収業者が契約先の飲食店を訪問して回収しているのが現状である。しかしながら、この回収においては、通常グリーストラップ内の水分ごと吸引して油分を回収するため、大型のタンク(50〜100リットル)を備えたバキューム装置を準備する必要がある。このため、ワゴン等の車両にバキューム装置を積み込んで飲食店を回る必要があるが、駅前では車両を駐車する場所を確保した後、大型のバキューム装置を狭い店舗内へ運び込む必要があり、非常に効率の悪いものとなっている。このため、回収の費用も高額となっている。
【0006】
このような問題を解決するために、従来から種々の方法が提案されている。浅型ではないが、例えば、特許文献1には、油分解性能の高い酵母Candida lipolyticaをセルロース系多孔質担体に含有させ、これをその担体を通さない材質からなる不織布を袋状に加工した袋に投入後、密閉することにより形成した多孔質担体パックをグリーストラップ又は汚水処理層に投入することが提案されている。また、通常のエアレーションに代えてマイクロバブル発生装置を併用することが提案されている。
【0007】
また、特許文献2には、特定の波長(波長242nm以下及び波長254nm)を有する紫外線を酸素に照射することによってオゾンを発生させ、得られたオゾン及び酸素原子をグリーストラップ内の排水中へエアレーションすることにより、グリーストラップ内に堆積した油脂等の有機物を酸化分解処理して流れやすくするとともに、排水の悪臭をも除去するようにしたグリーストラップの浄化方法及びその装置が提案されている。
【0008】
また、特許文献3には、マイナスイオンを含む気体を貯留排水に曝気するエアレーション機を備えた装置が提案されている。
【0009】
また、特許文献4には、油吸着剤、サポニン等の脱臭剤入りカセットケ−スを、排水流入管、排出管相互を脱着自在に接続して蓋付き外ケ−ス内に取り替え自在に収納したグリ−ストラップが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に提案される方法では、定期的にバクテリアを補充する必要がある。また、バクテリアが排水とともに下水道管へと流されるため環境に少なからず影響を及ぼしてしまうという問題がある。また、油分を分解して排水するためグリーストラップに溜まった油分を再生して利用することができず環境への負荷が低減できないという問題がある。
【0012】
また、特許文献2、3に提案される方法では、油分が分解されるとしているが、分解後の油分は水分には溶解せず白濁化したいわゆるオイルボールとなるため下水道管にオイルボールがこびりついて固まったり、下水道管が油脂により閉塞したりするという問題がある。また、油分は排水してしまうためグリーストラップに溜まった油分を再生して利用することができず環境への負荷が低減できないという問題がある。
さらに特許文献3に提案される方法では、油分を吸収して回収するため、特許文献1〜3に提案されるような問題は生じないが、油分を吸収した吸着材自体が産廃(産業廃棄物)となるため産廃が増えてしまうという問題がある。また、油分は吸着材とともに産廃として廃棄するためグリーストラップに溜まった油分を再生して利用することができず環境への負荷が低減できないという問題がある。
【0013】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、グリーストラップに浮遊する油分を確実に回収することができるコンパクトな油分回収装置、および該油分回収装置を用いた油分回収方法、および回収した油分のリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決すべく、第1の発明に係る油分回収装置は、グリーストラップから油分を回収するための油分回収装置であって、中央部が端縁部に比して低い位置となるように少なくとも一部が窪んだ形状を有する皿状部材と、前記皿状部材を支持する軸方向に伸縮可能に構成された支持部材と、前記油分回収装置を把持するための把持部材とを備えることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、把持部を把持して、皿状部材の端縁部の位置がグリーストラップ内の液体表面よりも低くなるまで皿状部材を押し下げし、グリーストラップにトラップされて浮遊している油分を確実に皿状部材内に回収することができる。また、バクテリア、オゾン、イオン、吸着材等を用いた方法と異なり、回収した油分は再生エネルギーとして再利用することができるため環境への負荷を低減することができる。また、グリーストラップ内の水分までを含む全体を回収する必要がなく、従来に比して回収量を1/10程度(5〜10リットル)と、大幅に削減することができ、コンパクトな油分回収装置とすることができる。また、回収に要する時間を短縮することができる。さらに、油分回収装置がコンパクトであるため狭い店舗内への運び込みの容易であり、非常に効率よく油分を回収することができる。
【0016】
上記の課題を解決すべく、第2の発明に係る油分回収装置は、第1の発明に係る油分回収装置において、前記支持部材は、前記皿状部材の下面側で係合される第1部材と、前記第1部材に係止された軸方向に伸縮可能な弾性部材とを備えることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、グリーストラップに浮遊する油分を回収する際に皿状部材を支持する支持部材が伸縮可能な弾性部材を備えているので、グリーストラップ内での皿状部材の高さを調整することができ、グリーストラップに浮遊する油分を効率よく確実に回収することができる。
【0018】
上記の課題を解決すべく、第3の発明に係る油分回収装置は、第1の発明に係る油分回収装置において、前記支持部材は、前記皿状部材の下面側で係合される軸方向に伸縮可能な弾性部材と、前記弾性部材に係止された第1部材とを備えることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、グリーストラップに浮遊する油分を回収する際に皿状部材を支持する支持部材が伸縮可能な弾性部材を備えているので、グリーストラップ内での皿状部材の高さを調整することができ、グリーストラップに浮遊する油分を効率よく確実に回収することができる。
【0020】
上記の課題を解決すべく、第4の発明に係る油分回収装置は、第1の発明に係る油分回収装置において、前記支持部材は、前記皿状部材の下面側で係合される第1部材と、前記第1部材とは独立して構成され、前記グリーストラップの底面に当接して前記油分回収装置を支持する第2部材と、前記第1部材および前記第2部材の夫々に係止され、前記第1部材および前記第2部材間で軸方向に伸縮する弾性部材とを備えることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、グリーストラップに浮遊する油分を回収する際に皿状部材を支持する支持部材が伸縮可能な弾性部材を備えているので、グリーストラップ内での皿状部材の高さを調整することができ、グリーストラップに浮遊する油分を効率よく確実に回収することができる。
【0022】
上記の課題を解決すべく、第5の発明に係る油分回収装置は、第1〜第4の発明のいずれかに係る油分回収装置において、前記皿状部材に回収される油分を前記皿状部材から排出するチューブポンプと、前記チューブポンプと前記皿状部材とを連結する連結部材とを備え、前記把持部材は、前記チューブポンプに設けられていることを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、皿状部材に回収される油分を皿状部材から排出するチューブポンプを備えているので、連続してグリーストラップに浮遊する油分を回収することができるため効率がよい。また、チューブポンプは、構造が簡易であり小型化できるので、ポンプを備えても油分回収装置をコンパクトに構成することができる。また、チューブポンプと皿状部材とを連結する連結部材とを備えており、把持部材は、チューブポンプに設けられている。このため、チューブポンプに設けられている把持部材を把持することで、片手で油分回収装置を操作することができる。
【0024】
上記の課題を解決すべく、第6の発明に係る油分回収方法は、グリーストラップにトラップされる油分を回収するための油分回収方法であって、中央部が端縁部に比して低くなるように湾曲して形成された皿状部材と、前記皿状部材を支持する伸縮可能に構成された支持部材と、把持部材とを備える油分回収装置の前記把持部を把持して、前記皿状部材の端縁部の位置が前記グリーストラップ内の液体表面よりも低くなるまで前記皿状部材を押し下げし、前記グリーストラップにトラップされて浮遊している油分を前記皿状部材内に回収することを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、把持部を把持して、皿状部材の端縁部の位置がグリーストラップ内の液体表面よりも低くなるまで皿状部材を押し下げし、グリーストラップにトラップされて浮遊している油分を確実に皿状部材内に回収することができる。また、バクテリア、オゾン、イオン、吸着材等を用いた方法と異なり、回収した油分は再生エネルギーとして再利用することができるため環境への負荷を低減することができる。また、グリーストラップ内の水分までを含む全体を回収する必要がなく、従来に比して回収量を1/10程度(5〜10リットル)と、大幅に削減することができ、コンパクトな油分回収装置とすることができる。また、回収に要する時間を短縮することができる。さらに、油分回収装置がコンパクトであるため狭い店舗内への運び込みの容易であり、非常に効率よく油分を回収することができる。
【0026】
上記の課題を解決すべく、第7の発明に係る油分リサイクル方法は、契約先の飲食店を訪問し、上記第1〜第5の発明の油分回収装置を用いて前記飲食店に設置されグリーストラップから油分を回収する工程と、前記回収した油分を加盟店の店舗内もしくは集積場へ集積する工程と、前記飲食店から所定額を徴収する工程と、前記加盟店の店舗内もしくは前記集積場から排水油を回収する工程と、前記回収した排水油を油水分離機にて油分と水分に分離する工程と、熱分解式燃料製造装置を用いて前記油分からA重油を精製する工程と、精製されたA重油を売却し、売却代金を回収する工程とを有することを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、契約先の飲食店を訪問し、飲食店に設置されグリーストラップから油分を回収し、この回収した油分から熱分解式燃料製造装置を用いてA重油を精製することができる。このため従来は廃棄されていた飲食店に設置されたグリーストラップの油分を再生エネルギーとして再利用することができるため環境への負荷を低減することができる。また、従来では、油分を廃棄するための費用が生じていたが、本発明では精製されたA重油を売却することで油分の回収サービスからの収入のみならず回収した油分からも収入を得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、グリーストラップに浮遊する油分を確実に回収することができるコンパクトな油分回収装置を提供することができる。また、バクテリア、オゾン、イオン、吸着材等を用いた方法と異なり、回収した油分は再生エネルギーとして再利用することができるため環境への負荷を低減することができる。また、大型のバキューム装置を積み込む必要がなく、油分を主に回収するため、回収量が1/10程度(5〜10リットル)となり、ワゴン等の車両を用意する必要がなく、自転車等で契約先の飲食店を回ることができ、環境への負荷をさらに低減することができる。さらに、装置がコンパクトであるため狭い店舗内への運び込みの容易であり、非常に効率よく油分を回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施例)
以下、図面を参照して実施例に係る油分回収装置について説明する。
【0031】
(グリーストラップ1の構成)
始めに実施例に係るグリーストラップ1の構成について
図1を参照して説明する。本実施例では、グリーストラップ1は、浅型もしくは超浅型のグリーストラップであり、飲食店の厨房部分に設置されている。厨房部分は、図に示すように、鉄筋コンクリート造の床スラブ102上に、シンダーコンクリートからなる表層103が形成され、この表層103に、厨房の水を排水するための排水溝104もしくは排水パイプが設けられている(
図1では、排水溝104が設けられている例を示している)。
【0032】
排水溝104の終端付近に、排水溝104からの排水を受け入れ自在な状態にグリーストラップ1が設置されている。排水溝104の上にはグレーチング105Aが設けられ、グリーストラップ1の上には蓋105Bが設けられている。グリーストラップ1は、四角いボックス形状の本体ケーシング106を備えて構成してあり、本体ケーシング106の一方側には、排水溝104もしくは排水パイプと連通する排水流入部107を、他方に排水管接続部108を設けてなる。本体ケーシング106内は、排水流入部107から排水管接続部108にかけて、仕切板115により仕切られるとともに下部で連通する複数の区画109が形成してある。複数の区画の内、本体ケーシング内流路の最も上流側(排水流入部側)に位置する区画109aは、排水溝104からの排水に混ざった粗ごみ等を除去できるように構成された槽であり、フィルタFが設けてある。また、複数の区画の内、流路方向中間部の区画109bは、油分を比重分離する区画として構成してある。最も下流側(排水管接続部側)に位置する区画109bは、トラップ部110として構成されている。109a、109bの区画を合わせてグリース分離部111が構成される。
【0033】
トラップ部110には、トラップ管112が設けてある。トラップ管112は、その一端部は、トラップ部110内の水位より下方に下向きに開口させてあり、他端部は、本体ケーシング106の下流側の周壁部106aから外方へ突出する状態に形成してあり、この突出部分に排水管113が接続されている。このトラップ管112の突出部分を排水管接続部108と言う。また、トラップ管112には、トラップ部110内に位置する部分に、トラップ管112および排水管113を清掃するための分岐口112aが設けられている。分岐口112aには通常蓋114されており、この蓋114を取り外すことでトラップ管112内を清掃することができる。
【0034】
(油分回収装置2の構成)
実施例に係る油分回収装置2は、グリーストラップ1から油分を回収するための油分回収装置であり、より具体的には、グリーストラップ1のトラップ部110に捕獲され、トラップ部110の水面上に溜まった油分(油脂)を回収するための装置である。
【0035】
油分回収装置2は、
図2に示すように、全体が湾曲して形成された皿状部材210と、皿状部材210を支持する軸方向に伸縮可能に構成された支持部材220と、油分回収装置2を把持するための把持部材230と、皿状部材210に回収される油分を皿状部材210から排出するチューブポンプ240と、チューブポンプ240と皿状部材210とを連結する連結部材250とを備えている。
【0036】
皿状部材210は、グリーストラップ1のトラップ部110に捕獲された油分を回収するための容器である。皿状部材210は、
図3に示すように、中央部211が端縁部212に比して低い位置となるように少なくとも一部が窪んだ形状を有する。具体的には、実施例に係る皿状部材210は、端縁部212が最も高く、中央部211が最も低くなるように端縁部212から中央部211に向かって湾曲して構成されている。このため、グリーストラップ1のトラップ部110から油分を回収する際に、皿状部材210の端縁部212を乗り越えて皿状部材210内に流入する油分は、皿状部材210の中央部211に溜まることとなる。なお、皿状部材210の中心には、連結部材250を挿通するための貫通孔(不図示)が形成されている。
【0037】
皿状部材210は、上記貫通孔に連結部材250が挿通された状態で両側からナットNを螺合することで、皿状部材210が連結部材250に係止される。また、貫通孔からの液漏れを抑制する目的で、皿状部材210と、皿状部材210の表面側に螺合されるナットNとの間にワッシャWが挟まれている。
【0038】
なお、皿状部材210の形状は、グリーストラップ1のトラップ部110から油分を回収することができる形状であればよい。このため、皿状部材210の断面形状は、
図3に示す例に限られず、種々のバリエーションをとることができる。
図4は、皿状部材210のバリエーションを示す断面図である。
【0039】
図4(a)に示す例では、皿状部材210は、中央部211を含む平面部210aと、該平面部210aの端縁から立ち上がるようにして延出し、平面部210aを取り囲む断面形状が直線形状の囲繞部210bとで構成されている。
【0040】
図4(b)に示す例では、皿状部材210は、中央部211を含む平面部210aと、該平面部210aの端縁から立ち上がるようにして延出し、平面部210aを取り囲む断面形状が曲線形状の囲繞部210bとで構成されている。
【0041】
図4(c)に示す例では、皿状部材210は、円錐をさかさまにした形状となっている。このため、皿状部材210は、中央部211の位置が最も低く、端縁部212の位置が最も高くなっており、断面形状がV字状となっている。
【0042】
図4(d)に示す例では、皿状部材210は、中央部211の位置が最も低くなるようにボール状に湾曲して形成された湾曲部210cと、該湾曲部210cの端縁から立ち上がるようにして延出し、湾曲部210cを取り囲む断面形状が直線形状の囲繞部210bとで構成されている。
【0043】
図4に示すいずれの形状においても、中央部211の位置が端縁部212の位置よりも低いため、グリーストラップ1のトラップ部110に浮遊する油分を皿状部材210内に回収することができる。なお、油分の回収方法については、
図7を参照して詳細に説明する。
【0044】
支持部材220は、グリーストラップ1のトラップ部110に浮遊する油分を回収する際に油分回収装置2を支えるための部材である。支持部材220は、
図5に示すように、皿状部材210の下面側で連結部材250に係合される第1部材221と、第1部材221とは独立して構成され、グリーストラップ1の底面に当接して油分回収装置2を支持する第2部材222と、第1部材221および第2部材222の夫々に係止され、第1部材221および第2部材222間で軸方向に伸縮する弾性部材223とを備えている。
【0045】
第1部材221は、内部に中空部221Aを有する筒状体であり、この筒状体の下部側に2つの長孔221Hが設けられている。この長孔221Hは、第1部材221に第2部材222を係止するために設けられており、この長孔221Hにねじ224を挿通することで第1部材221に第2部材222が係止される構成となっている。
【0046】
第2部材222は、円柱部材222Aと、この円柱部材222Aの下端部に設けられた幅広部材222Bとで構成される。円柱部材222Aの上端側には、ねじ224を挿通するための貫通孔222Hが設けられており、円柱部材222Aの貫通孔222Hおよび第1部材221の長孔221Hにねじ224を挿通することで、第1部材221に第2部材222が係止され、第2部材222が第1部材221の長孔221Hに沿って動作可能となっている。
【0047】
また、第1部材221の中空部221A内には、弾性部材223が収容されており、上端が、第1部材221の中空部221Aの上端に当接し、下端が第2部材222の幅広部材222Bに当接している。そして、通常時は、弾性部材223の弾性力により、支持部材220は、伸長した状態となっているが、油分回収装置2を使用する際は、把持部材230を把持して油分回収装置2の皿状部材210を押し下げすることで縮んだ状態となる。なお、本実施例では、弾性部材223として、コイルばねを用いているが、伸縮可能な弾性部材であればよく、コイルばねに限られず使用することが可能である。
【0048】
なお、支持部材220は、油分回収装置2を支持することができればよい。このため、支持部材220の構成は、
図5に示す例に限られず、種々のバリエーションをとることができる。
図6は、支持部材220のバリエーションを示す断面図である。
【0049】
図6(a)に示す例では、支持部材220は、柱状部材225からなる。
図6(a)に示す例では、支持部材220が伸縮しないため、油分回収装置2を傾けて皿状部材210の端縁部212の位置がグリーストラップ1のトラップ部110に浮遊する油分よりも低い位置となる状態にして、グリーストラップ1のトラップ部110から油分を回収する。
【0050】
図6(b)に示す例では、支持部材220は、皿状部材210の下面側で連結部材250に係合される柱状部材225と、柱状部材225に係止された軸方向に伸縮可能な弾性部材223(実施例では、コイルばね)とを備えている。
【0051】
図6(c)に示す例では、支持部材220は、皿状部材210の下面側で連結部材250に係合され、軸方向に伸縮可能な弾性部材223(実施例では、コイルばね)と、この弾性部材223に係止された柱状部材225とを備えている。
【0052】
図6(d)に示す例では、第1部材221と第2部材222との位置関係を入れ替えて構成されている。
【0053】
図6に示すいずれの形状においても、油分回収装置2を支持することができ、特に、
図6(b)〜(d)に示す例では、支持部材220が伸縮するため、油分回収装置2を傾けることなく、グリーストラップ1のトラップ部110の油分を皿状部材210内に回収することができる。また、(b)〜(d)に示す例では、皿状部材210の端縁部212全体から油分が皿状部材210内に流入するための効率よく、グリーストラップ1から油分を回収することができる。なお、
図6(b)〜(d)に示す例でも、弾性部材223として、コイルばねを用いているが、伸縮可能な弾性部材であればよく、コイルばねに限られず使用することが可能である。
【0054】
チューブポンプ240は、皿状部材210内に回収される油分を油分回収容器(不図示)へと排出するためのポンプである。チューブポンプ240は、弾力性のあるチューブをローラでしごいて管内の液体を押出す方式のポンプであり、ローラを備えた本体241と、チューブ242を少なくとも備えている。チューブポンプ240は、ポンプ自体が液体に接触しない、弁構造がなく液体に脈動や衝撃が掛からない、高粘度液体や固形物交じりでの搬送も可能といった利点を有する。また、構造が簡易であるため、小型・軽量であり故障も少ない利点を有する。
【0055】
皿状部材210に回収される油分は、吸引側チューブ242Aから吸引されて、排出側チューブ242Bから排出されて回収容器(不図示)へと回収される。また、吸引側チューブ242Aを用いて区画109の底部に沈んだスカム(沈殿物)を吸引することもできる。また、本体241の上側(上面)には、把持部材230が設けられている。ユーザ(使用者)は、この把持部材230を把持することで、片手で油分回収装置2を扱うことができるため利便性に優れる(他方の手で、他の作業を行うことができる)。
【0056】
連結部材250は、皿状部材210とチューブポンプ240とを連結する。連結部材250は、外表面にねじ山が形成された長ボルトであり、この連結部材250の一端側を皿状部材210の中央に設けられた貫通孔(不図示)に挿通し、皿状部材210の両側からナットNを螺合することで、皿状部材210が連結部材250に係止される。また、貫通孔からの液漏れを抑制する目的で、皿状部材210と、皿状部材210の表面側に螺合されるナットNとの間にワッシャWが挟まれている。
【0057】
このように、皿状部材210は、連結部材250に螺合された2つのナットにより挟持された状態となっているため、連結部材250に螺合された2つのナットの位置を調整することで、皿状部材210の位置、すなわち皿状部材210の高さを容易に調整することができ、利便性に優れる。なお、連結部材250の他端側には、チューブポンプ240が取り付けられる。
【0058】
(油分回収装置2による油分回収方法)
次に、本実施例に係る油分回収装置2を用いて、グリーストラップ1にトラップされる油分を回収するための油分回収方法について
図7を参照して説明する。グリーストラップ1のトラップ部110の深さに合わせて、油分回収装置2の連結部材250に螺合しているナットの位置を調整して皿状部材210の位置(高さ)を調整する。この皿状部材210の位置(高さ)の調整はあらかじめ行っていてもよい。
【0059】
次いで、油分回収装置2の把持部材230を把持し、油分回収装置2の支持部材220をグリーストラップ1のトラップ部110内に入れて、油分回収装置2を起立した状態で保持する(
図7(a)参照)。次いで、皿状部材210の端縁部212の位置がグリーストラップ1のトラップ部110内の油層20表面よりも低い位置となるまで皿状部材210を押し下げる(
図7(b)参照)。
【0060】
すると、グリーストラップ1のトラップ部110に浮遊している油分が皿状部材210内に流入する(
図7(b)参照)。なお、皿状部材210の端縁部212の位置は、水層10表面と略同じか少し低い程度の位置にあることが好ましい。皿状部材210の端縁部212の位置が、水層10表面よりも低いと油分とともに大量の水分が皿状部材210内に流入するためである。
【0061】
次いで、チューブポンプ240の吸引側チューブ242Aを皿状部材210へ差し込み、排出側チューブ242Bを回収容器(不図示)へ差し込んでチューブポンプ240を駆動する。皿状部材210内に流入する油分や水分(主に油分)が、チューブポンプ240により回収容器(不図示)へと排出される。そして、グリーストラップ1のトラップ部110に浮遊している油分を回収できるまで、上記作業を行った後、チューブポンプ240を停止して作業を終了する。
【0062】
次に、実施例に係る油分回収装置2を用いた油分リサイクルビジネスについて、
図8を参照して説明する。
【0063】
本部(フランチャイザー)と契約した加盟店(フランチャジー)が存在する場合、
図8(a)に示すように、本部(フランチャイザー)と契約した加盟店(フランチャジー)が、契約先である飲食店を定期的(例えば、週1回)に訪問し、
図2〜6を参照して説明した油分回収装置2を用いて、
図7を参照して説明した手順によりグリーストラップ1から油分を回収する。なお、このグリーストラップ1から回収した油分には水分が含まれているため後述のように油水分離機にて油分と水分に分離することが必要となる。
【0064】
次いで、回収した油分を加盟店の店舗内や集積場へ持ち込み、回収した油分をドラム缶等にストックする。本部は、契約先である飲食店から定額を徴収し、本部管理費や指導料等の諸経費を差し引いたのち、所定の金額を加盟店へ支払う。また、本部は、加盟店の店舗内や排水油の集積場から定期的(例えば、月1回)に排水油を回収して、自社工場にて油水分離機にて油分と水分に分離して摘出した油分だけを熱分解式燃料製造装置にてA重油を精製し、この精製されたA重油を重油買い取り業者等(例えば、地域内のホテル、ハウス農家、銭湯など)へ売却する。
【0065】
また、
図8(b)に示すように、加盟店(フランチャザー)を通さずに、本部が直接、契約先である飲食店を定期的(例えば、週1回)に訪問し、
図2〜6を参照して説明した油分回収装置2を用いて、
図7を参照して説明した手順によりグリーストラップ1から油分を回収するようにしてもよい。
【0066】
図9は、油分リサイクルビジネスの流れを説明するためのフローチャートである。以下、
図9を参照して油分リサイクルビジネスのフローについて説明する。
【0067】
初めに、本リサイクルビジネスのオーナーは、飲食店等とグリーストラップの油分の回収について契約を行う(S101)。なお、この契約は、定期的に飲食店等を訪れ、油分を回収する契約であることが好ましいが、スポットでの契約でも構わない。次いで、オーナーは、契約に基づき、上記飲食店等を定期的(例えば、週1回)に訪問し、
図1〜
図7を参照して説明した油分回収装置2を用いて上記飲食店に設置されグリーストラップから油分を回収する(S102)。なお、この油分の回収は、フランチャイズ契約をおこなったフランチャイジーに行わせても良い。この場合、上記オーナーはフランチャイザーとなる。
【0068】
次いで、飲食店等のグリーストラップ1から回収した油分をフランチャイズ加盟店の店舗内もしくは集積場に置かれたドラム缶等へ集積(ストック)する(S103)。次いで、上記契約先の飲食店から油分回収のサービス料として所定額を徴収する(S104)。次いで、加盟店の店舗内もしくは集積場のドラム缶等にストックされた排水油を定期的(例えば、月1回)に回収して、自社工場にて油水分離機にて油分と水分に分離して摘出した油分だけを熱分解式燃料製造装置にてA重油を精製する(S105)。
【0069】
次いで、この精製されたA重油を重油買い取り業者等へ売却し、売却代金を回収する(S106)。なお、この売却代金は、オーナーの収益としてもよいし、一定額もしくは全額を上記飲食店へ渡してもよい。この際、油分回収のサービス料と相殺し残額を上記飲食店へ請求するようにしてもよい。
【0070】
なお、上記油分リサイクルビジネスをシステム化してもよい。この場合、上記飲食店等との契約に基づいて、上記飲食店を訪問する時期をサーバへ入力・記憶しておく。訪問の時期が近づくとサーバから本リサイクルビジネスのオーナーやフランチャイジーが所持するタブレットPC等の端末へサーバを介してアラートが発信される。なお、グリーストラップ1にトラップされる油分量を検知するセンサを取り付けて、該センサにより検知されるグリーストラップ1の油分量をサーバにてモニタし、グリーストラップ1の容量に基づいて予め決められた所定量を超えると上記アラートを送信するようにしてもよい。この場合、センサのIDと飲食店のIDとを関連付けてサーバに格納しておくことが好ましい。
【0071】
アラートを受けた本リサイクルビジネスのオーナーやフランチャイジーは、アラートが発せられた上記飲食店等を訪問し、油分回収装置2を用いてグリーストラップ1の油分を回収する。油分を回収した後は、タブレットPC等の端末を操作して、油分を回収した飲食店を選択し、該飲食店の油分の回収が終了したことを入力する。これによりタブレットPC等の端末からは、サーバへ選択した飲食店のIDおよび油分の回収が終了したことを示す信号が送信される。サーバでは、飲食店のIDおよび油分の回収が終了したことを示す信号にもとづいて、IDに対応する飲食店のアラートが解除されるとともに、油分の回収が終了したことが記憶される。
【0072】
また、フランチャイズ加盟店の店舗内や集積場にストックされている排水油についても同様に、定期的(例えば、月1回)にサーバから本リサイクルビジネスのオーナーやフランチャイジーが所持するタブレットPC等の端末へサーバを介してアラートが発信される。アラートを受けた本リサイクルビジネスのオーナーやフランチャイジーは、ストックされた排水油を自社工場へ運び込み、油水分離機にて油分と水分に分離して摘出した油分だけを熱分解式燃料製造装置にてA重油を精製する。
【0073】
以上のように、実施例に係る油分回収装置2は、グリーストラップ1から油分を回収するための油分回収装置であって、中央部211が端縁部212に比して低い位置となるように平面視にて少なくとも一部が窪んだ形状を有する皿状部材210と、皿状部材210を支持する軸方向に伸縮可能に構成された支持部材220と、油分回収装置2を把持するための把持部材230とを備える。
【0074】
上記構成によれば、把持部材230を把持して、皿状部材210の端縁部212の位置がグリーストラップ1内の液体表面よりも低くなるまで皿状部材210を押し下げし、グリーストラップ1に浮遊している油分を確実に皿状部材210内に回収することができる。また、バクテリア、オゾン、イオン、吸着材等を用いた方法と異なり、回収した油分は再生エネルギーとして再利用することができるため環境への負荷を低減することができる。また、大型のバキューム装置を積み込む必要がなく、油分を主に回収するため、回収量が1/10程度(5〜10リットル)となり、ワゴン等の車両を用意する必要がなく、自転車等で契約先の飲食店を回ることができ、環境への負荷をさらに低減することができる。さらに、装置がコンパクトであるため狭い店舗内への運び込みの容易であり、非常に効率よく油分を回収することができる。
【0075】
また、本実施例に係る油分回収装置2の支持部材220は、皿状部材210の下面側で連結部材250と係合される第1部材221と、第1部材221とは独立して構成され、グリーストラップ1のトラップ部110の底面に当接して油分回収装置2を支持する第2部材222と、第1部材221および第2部材222の夫々に係止され、第1部材221および第2部材222間で軸方向に伸縮する弾性部材223とを備える。
【0076】
上記構成によれば、グリーストラップ1に浮遊する油分を回収する際に皿状部材210を支持する支持部材220が伸縮可能な弾性部材を備えているので、グリーストラップ1内での皿状部材210の高さを調整することができ、グリーストラップ1に浮遊する油分を効率よく確実に回収することができる。
【0077】
また、実施系に係る油分回収装置2は、皿状部材210に回収される油分を皿状部材210から排出するチューブポンプ240と、チューブポンプ240と皿状部材210とを連結する連結部材250とを備え、把持部材230は、チューブポンプ240に設けられている。
【0078】
上記構成によれば、皿状部材210に回収される油分を皿状部材210から排出するチューブポンプ240を備えているので、連続してグリーストラップ1に浮遊する油分を確実に回収することができるため効率がよい。また、チューブポンプ240は、構造が簡易であり小型化できるので、ポンプを備えても油分回収装置2をコンパクトに構成することができる。また、チューブポンプ240と皿状部材210とを連結する連結部材250とを備えており、把持部材230は、チューブポンプ240に設けられている。このため、チューブポンプ240に設けられている把持部材230を把持することで、片手で油分回収装置2を操作することができる。
【0079】
なお、実施例に係る油分回収装置2において、支持部材220は、皿状部材210の下面側で連結部材250に係合される柱状部材225(第1部材)と、柱状部材225(第1部材)に係止された軸方向に伸縮可能な弾性部材223とを備える構成としてもよい。
【0080】
また、実施例に係る油分回収装置2において、支持部材220は、皿状部材210の下面側で連結部材250に係合される軸方向に伸縮可能な弾性部材223と、弾性部材223に係止された柱状部材225(第1部材)とを備える構成としてもよい。
【0081】
上記構成としても、グリーストラップ1に浮遊する油分を回収する際に皿状部材210を支持する支持部材220が伸縮可能な弾性部材223を備えているので、グリーストラップ1内での皿状部材210の高さを調整することができ、グリーストラップ1に浮遊する油分を効率よく確実に回収することができる。
【0082】
また、実施例に係る油分リサイクル方法は、契約先の飲食店を訪問し、油分回収装置2を用いて飲食店に設置されグリーストラップ1から油分を回収する工程と、回収した油分を加盟店の店舗内もしくは集積場へ集積する工程と、飲食店から所定額を徴収する工程と、加盟店の店舗内もしくは前記集積場から排水油を回収する工程と、回収した排水油を油水分離機にて油分と水分に分離する工程と、熱分解式燃料製造装置を用いて油分からA重油を精製する工程と、精製されたA重油を売却し、売却代金を回収する工程とを有している。
【0083】
上記構成によれば、契約先の飲食店を訪問し、飲食店に設置されグリーストラップから油分を回収し、この回収した油分から熱分解式燃料製造装置を用いてA重油を精製することができる。このため従来は廃棄されていた飲食店に設置されたグリーストラップの油分を再生エネルギーとして再利用することができるため環境への負荷を低減することができる。また、従来では、油分を廃棄するための費用が生じていたが、本発明では精製されたA重油を売却することで油分の回収サービスからの収入のみならず回収した油分からも収入を得ることができる。