特許第6809752号(P6809752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6809752雄型成形面ファスナーおよびそれを用いた固定用ベルト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809752
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】雄型成形面ファスナーおよびそれを用いた固定用ベルト
(51)【国際特許分類】
   A44B 18/00 20060101AFI20201221BHJP
   A41F 9/02 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   A44B18/00
   A41F9/02 F
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-252906(P2016-252906)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-102668(P2018-102668A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】591017939
【氏名又は名称】クラレファスニング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高▲くわ▼ 一則
(72)【発明者】
【氏名】小野 悟
(72)【発明者】
【氏名】清水 篤史
【審査官】 大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−534584(JP,A)
【文献】 特開2010−099448(JP,A)
【文献】 特開2014−234467(JP,A)
【文献】 特開2013−043981(JP,A)
【文献】 特開2014−103469(JP,A)
【文献】 特開2016−214716(JP,A)
【文献】 特開2005−319142(JP,A)
【文献】 特開2013−208137(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0167605(US,A1)
【文献】 実開平02−084511(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板およびその表面から立ち上がる多数の雄型係合素子からなる雄型成形面ファスナーにおいて、同基板および同係合素子がともにアクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルのブロック共重合体であって、アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルの重量比が55:45〜75:25であるブロック共重合体からなることを特徴とする雄型成形面ファスナー。
【請求項2】
雄型成形面ファスナーが、基板から突出するステムの先端が逆J字型に曲がっている形状を有している雄型係合素子が基板表面に列をなして多数存在しており、同一列に存在している雄型係合素子は曲がっている方向が列方向でかつ同一であり、さらに1列単位であるいは複数列単位で曲がっている方向が逆となっている請求項1に記載の雄型成形面ファスナー。
【請求項3】
雄型係合素子の高さが、0.3mm〜1.2mmで、雄型係合素子を上面から見た場合に係合素子が基板に占める面積割合が15〜40%である請求項1または2に記載の雄型成形面ファスナー。
【請求項4】
請求項1に記載の雄型成形面ファスナーの裏面に、表面にループ状係合素子を多数有する雌型面ファスナーの裏面が直接または他のシートを介して貼り合わされている固定用ベルト。
【請求項5】
雄型成形面ファスナーと雌型面ファスナーの間に模様が挿入されている請求項4に記載の固定用ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れかつ柔軟性と耐候性に優れた雄型成形面ファスナーおよび同雄型成形面ファスナーとループ状係合素子を多数有する雌型面ファスナー(以下ループ面ファスナーと称する場合がある)の裏面同士を貼り合わせた固定用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フック状やキノコ状の雄型係合素子を有する雄型面ファスナーと、ループ状の雌型係合素子を有する雌型面ファスナーの裏面(すなわち係合素子を有する面とは反対側の面)同士を貼り合わせたものを結束ベルト等に使用することは公知であり、例えば、特許文献1には、ゴム等の伸縮体からなるベルトの表面側にフック状係合素子を有する面ファスナー小片を貼り付け、裏面側にループ状係合素子を有する面ファスナー小片を貼りつけたものが記載されている。
【0003】
このような片面に雄型係合素子が存在し、反対面に雌型係合素子が存在しているベルトの場合、従来の織編物製の面ファスナーを用いると、雄型係合素子を有する面は、雄型面ファスナーが不透明であることから、好みの色を持たせるためには、雄型面ファスナーを好みの色に染色または着色する必要があり、まして、好みの模様、例えばキャラクターグッズの模様を付与することは不可能である。
【0004】
もし、雄型面ファスナーが透明性を有するものである場合には、染色することなく、裏面に貼り合わせたシートや雌型面ファスナーの色をそのまま利用できることとなり、また好みの模様を付与したシートを裏面に貼り合わせることにより、雄型面ファスナーの表面側から裏面の模様が見えることとなる。
【0005】
従来から雄型面ファスナーとして、織物や編物を基布とし、その表面に基布に織り込んだモノフィラメントを基布表面から立ち上がらせてフック状としたものが広く用いられているが、このような雄型面ファスナーでは透明性を有する面ファスナーは到底得ることができない。
【0006】
また、このような織編物を基布とする面ファスナーの他に、プラスチック基板の表面に同プラスチックからなる鏃状やフック状、キノコ状の係合素子を多数立ち上がらせたものが雄型成形面ファスナーとして知られており、このような雄型成形面ファスナーを構成する樹脂としてポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6で代表されるポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸等のポリエステル系樹脂などが一般的に用いられているが、これら樹脂を用いて成形した雄型成形面ファスナーは、結晶性の点で白濁しており、さらに係合素子の存在が透明性を大きく損なっており、したがって透明性に優れた面ファスナーは得られない。
【0007】
以上のことから、従来の雄型面ファスナーでは、固定用ベルトに使用した場合、裏面に貼り付けたシートやループ面ファスナーの色調を利用することや、裏面に貼り付けた模様を表面から鮮明に見ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平2−84511号公報(実用新案登録請求の範囲および第1図第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点、すなわち雄型係合素子を有する面ファスナーは不透明であったり、透明性に劣るものであることから、その用途が限定されており、例えば固定用ベルトに使用した場合でも、裏面に貼り付けたシートや面ファスナーの色調や模様を利用することができないという問題点を解決することができる面ファスナーおよびそれを用いた固定用ベルトを提供することを目的とするものである。
【0010】
さらに本発明は、屋外で使用する固定用ベルトとして使用しても耐候性に優れている雄型成形面ファスナー及びそれを用いた固定用ベルトを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、基板およびその表面から立ち上がる多数の雄型係合素子からなる雄型成形面ファスナーにおいて、同基板および同係合素子がともにアクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルのブロック共重合体からなることを特徴とする雄型成形面ファスナーである。
【0012】
そして、このような雄型成形面ファスナーにおいて、好ましくは、基板から突出するステムの先端が逆J字型に曲がっている形状を有している雄型係合素子が基板表面に列をなして多数存在しており、同一列に存在している雄型係合素子は曲がっている方向が列方向でかつ同一であり、さらに1列単位であるいは複数列単位で曲がっている方向が逆となっている場合であり、また好ましくは、雄型係合素子の高さが、0.3mm〜1.2mmで、雄型係合素子を上面から見た場合に係合素子が基板に占める面積割合が15〜40%である場合である。
【0013】
また、本発明は、基板およびその表面から立ち上がる多数の雄型係合素子からなる雄型成形面ファスナーにおいて、同基板および同係合素子がともにアクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルのブロック共重合体からなる雄型成形面ファスナーの裏面に、表面にループ状係合素子を多数有する雌型面ファスナーの裏面が直接または他のシートを介して貼り合わされている固定用ベルトである。
【0014】
そして好ましくは、このような固定用ベルトにおいて、雄型成形面ファスナーと雌型面ファスナーの間に模様が挿入されている場合である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の雄型成形面ファスナーは、それを形成しているアクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルのブロック共重合体が透明性に極めて優れ、さらに柔軟なエラストマー樹脂であることから、貼り付ける対象物が曲面であっても粘着剤や接着剤で面に沿って貼り付けることができ、さらに貼り付ける際に、間に空気等が入り難くかつ空気を追い出し易く、したがって透明性を損なうことが少ない。しかも、上記共重合体は、耐候性に優れていることから、太陽光や照明が当たる用途に適し、特に屋外で使用する結束ベルトや縛りベルトなどの固定用ベルトに使用しても黄変することがない。
【0016】
さらに本発明では、雄型成形面ファスナーの雄型係合素子の形状を前記したような逆J字型とするのが好ましく、このような形状の係合素子が表面に存在することによる透明性の低下を軽減している。さらに、係合素子の高さや面積割合を規定することにより、透明性の低下をより一層防いでいる。
【0017】
さらに、本発明の雄型成形面ファスナーの裏面に、ループ状係合素子を有する面ファスナーを背中合わせで一体化した固定用ベルトは、両方の面ファスナーの間に模様を入れることにより雄型係合素子面から、その模様が鮮やかに見えることとなり、あるいはループ状係合素子を有する面ファスナーの色を利用することができる。さらに両方の面ファスナーの間にシートを挿入する場合には、シートの色調をそのまま利用でき、雄型成形面ファスナーの存在が目立たなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の雄型成形面ファスナーの一例を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の雄型成形面ファスナーの一例を模式的に示す上面図と正面図である。
図3】本発明の固定用ベルトの一例を模式的に拡大して示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の雄型成形面ファスナーについて、さらにこのような雄型成形面ファスナーを用いて作製した固定用ベルトについて、添付の図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
まず、本発明の雄型成形面ファスナーは、前記したように、アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルのブロック共重合体からなる。アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルのブロック共重合体としては、重量平均分子量が4万〜10万であり、アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルの重量比が55:45〜75:25であるブロック共重合体が成形性と柔軟性の点で好ましい。もちろん、アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチル以外の第3成分が少量共重合されていてもよい。アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルの重量比に関しては、上記範囲を外れるようなブロック共重合をブレンドして上記範囲内とすることもできる。
【0021】
そして、このようなブロック共重合体は、1個のアクリル酸ブチル単位を主体とする重合体ブロック(a1)と2個のメタクリル酸メチル単位を主体とする重合体ブロック(a2)からなる(a2)−(a1)−(a2)構造を有しているのが好ましい。重合体ブロック(a1)がソフトセグメント成分、重合体ブロック(a2)がハードセグメント成分を形成し、このハードセグメント成分とソフトセグメント成分が、樹脂に柔軟性と伸縮性を与えることとなる。なお、このようなブロック共重合体は、株式会社クラレから「クラリティ」の商品名で販売されている。
【0022】
このようなブロック共重合体から雄型成形面ファスナーを形成する。雄型成形面ファスナーは、基板およびその表面から立ち上がる多数の雄型係合素子からなり、同基板および同係合素子がともにアクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルのブロック共重合体からなる。好ましくは、図1に示すように雄型成形面ファスナーが、基板(1)から突出するステムの先端が逆J字型に曲がっている形状を有している雄型係合素子(2)が基板表面に列をなして多数存在しており(図1ではMD方向に列をなして存在している)、同一列に存在している雄型係合素子は曲がっている方向が列方向でかつ同一であり、さらに1列単位あるいは複数列単位(図1では1列単位)で曲がっている方向が逆となっている雄型成形面ファスナーである。
【0023】
固定用ベルトに使用されるためには、雄型成形面ファスナーは、広い幅を有するものであることが好ましい。このような広い幅の成形面ファスナーを製造する方法としては、係合素子形状のキャビティを多数設けた金属ロール面上に樹脂を流し、固化後に金属ロール面から固化した、表面に雄型係合素子を多数有する樹脂シートを剥離して製造する方法と、成形面ファスナーの断面形状を有するノズルから樹脂をシート状に押し出し、シート上に係合素子条を有するシートを作製し、そして係合素子条にシート幅方向に切れ目を入れ、そしてシートを長さ方向に延伸して係合素子条を独立した係合素子の列とする押出成形方法の二通りがあるが、本発明では、より透明性に優れた成形面ファスナーが得られやすいことおよびより幅広い成形面ファスナーが得られ易いことから前者の方法を用いるのが好ましい。
【0024】
この前者の方法の代表例について説明すると、まず雄型係合素子の形状(逆J字型形状)を外円周上に彫った厚さ0.1〜0.5mmのリング状金型、そのような形状に彫っていない金属製リング、上記逆J字型形状と逆の方向を逆J字が向いている逆J字型形状を外円周上に彫った厚さ0.1〜0.5mmのリング状金型、そのような形状に彫っていない金属製リングを順々に重ね合わせることにより、その外周表面に逆J字型形状のキャビティおよび逆J字の方向が逆方向である逆J字型形状のキャビティを表面に多数有する金型ローラーをまず用意する。このとき、重ね合わせた金属製リング間で表面に段差および隙間が生じないように、同一径のリングを隙間なく重ね合わせることが透明性を高める上で好ましい。なお、上記説明では、逆J字型キャビティを有するリング状金型と逆の方向を向いている逆J字型キャビティを1枚単位で挿入する場合を説明したが、2枚以上の単位で挿入してもよい。
【0025】
次にこのローラーと相対する位置に存在する別のドラムローラーとの隙間に前記アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルのブロック共重合体からなるペレットの溶融物を押し出し、圧迫することによりそのキャビティ内にアクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルのブロック共重合体を充填させると共にローラー表面に均一な厚さを有するシートを形成し、金型ローラーが回転している間にローラー内に常時循環される冷媒によりキャビティ内の該共重合体を冷却固化させたのち、得られる成形雄型面ファスナーの基板厚さとなるように隙間調整したニップローラーにより引き延ばすとともに冷却されたシートを金型ローラー表面から引き剥がす。場合によっては、係合素子間の平坦部をより平坦とするために、該平坦部を加熱ロールで押さえつけて、リング間の段差や隙間を解消して雄型成形面ファスナーの透明性を高める方法を用いてもよい。
【0026】
このようして得られた雄型成形面ファスナーは、雄型係合素子の高さが、0.3mm〜1.2mmで、雄型成形面ファスナーを上面から見た場合に、雄型係合素子が基板に占める面積割合が15〜40%であるのが係合力を損なわず透明性を高度に達成できる上で好ましい。より好ましくは、雄型係合素子の高さが0.4〜0.8mmで、係合素子の面積割合が20〜35%の場合である。
【0027】
一般に、基板から突出するステムの先端が逆J字型に曲がっている形状を有している雄型係合素子が基板表面に列をなして多数存在している雄型成形面ファスナーの場合、基板に占める面積割合として25〜35%、係合素子の高さとして1.3〜2.0mmのものが用いられている。本発明で規定する係合素子の高さの範囲はこの一般的な係合素子の高さの範囲から外れており、これにより前記したように特に優れた透明性が得られることとなる。
【0028】
なお係合素子が基板に占める面積割合とは、図2に示すように、雄型成形面ファスナーを上面から見た場合に、雄型係合素子がMD方向およびCD方向に隣り合う雄型係合素子との間の面積(S1)に対する雄型係合素子が占める面積(S2)の割合(S2/S1)である。そして、雄型係合素子が基板面から切り立っておらずに、徐々に立ち上がっている場合には、明らかに立ち上がっていることが分かる部分から上が雄型係合素子となる。
【0029】
また雄型成形面ファスナーの基板の厚さとしては0.1〜1.0mm、雄型係合素子の素子密度としては70〜200個/cm2、基板の幅としては5〜15cmの範囲がそれぞれ好ましい。
【0030】
なお、本発明の雄型成形面ファスナーには、透明性を損なわない範囲で、各種安定剤や粘度調整剤等が添加されていてもよく、さらに透明性を損なわない範囲の着色剤により透明着色されていてもよい。
【0031】
次に本発明の雄型成形面ファスナーの用途である固定用ベルトについて説明する。図3は固定用ベルトの一例を模式的に示す正面図であり、雄型成形面ファスナー(1と2)の裏面に、表面にループ状係合素子(4)を多数有する雌型面ファスナー(5)の裏面が直接または他のシート(6)を介して貼り合わされている。なお、この図では雄型成形面ファスナー(1と2)とシート(6)、および雌型面ファスナー(4と5)とシート(6)の間には両者を一体化する手段(粘着剤層や接着剤層)を省略して記載した。
【0032】
貼り合わせるループ状係合素子を有する雌型面ファスナーとしては、織物基布の表面にループ状係合素子となるマルチフィラメントループを形成した織物雌型面ファスナーの他に、表面にループ状毛羽を存在させたトリコット編物、表面にループ状毛羽や捲縮繊維毛羽を存在させた不織布などが挙げられる。また、雌型面ファスナーの表面にはループ状係合素子の他に、フック状係合素子が混在していてもよい。
【0033】
雄型成形面ファスナーとループ状係合素子を有する雌型面ファスナーは、直接または他のシートを介して貼り合わされる。特に抗張力が要求される固定用ベルトの場合には、間に伸度が低く高強力なシートや織物を介在させるのが好ましく、また固定用ベルトに伸縮性が要求される場合には、伸縮性を有するエラストマー系のシートや編物を介在させるのが好ましい。
【0034】
さらに表面に存在する雄型成形面ファスナーと裏面に貼り合わせるループ状係合素子を有する雌型面ファスナーは、固定用ベルトの端から端まで連続して存在している必要はなく、断続的に存在していても、あるいは必要箇所にスポット状に存在していてもよい。
【0035】
このような固定用ベルトの表裏両方の面ファスナーの間(間に介在シートが存在している場合には雄型成形面ファスナー側)に模様を入れることにより雄型係合素子面からその模様が鮮やかに見えることとなる。あるいはループ状係合素子を有する面ファスナーは繊維製であることから鮮明な色に染色が可能であるが、この色を利用して、雄型成形面ファスナー面からこの鮮やかな色を見ることができる(介在シートが存在しない場合あるいは存在していないベルト部分)。したがって、従来の固定用ベルトのように、両面の色調が相違するとか、雌型面ファスナーの色調に合わせて予め雄型面ファスナーの方も着色しておく必要がなく、色々な色調の雄型面ファスナーを予め用意しておく必要がない。
固定用ベルトの大きさとしては、用途によって種々の大きさとすることができるが、一般的には、幅1〜5cm、長さ20〜100cmが好ましい。
【0036】
また、雄型成形面ファスナーの裏面に、表面にループ状係合素子を多数有する雌型面ファスナーの裏面が直接または他のシートを介して貼り合わす方法としては、透明な接着剤で貼り合わせる方法でもよいが、より好ましくは透明な粘着剤で貼り合わせる方法である。表裏両方の面ファスナーの間に入れる模様は、絵や文字、あるいは幾何学模様等いずれでも良い。
【0037】
本発明の固定用ベルトは、雄型成形面ファスナーが前記したように、柔軟なエラストマー樹脂から形成されていることから、手触り感や肌触り感が優しく、従来の雄型成形面ファスナーを用いた固定用ベルトでは、その肌触り感や手触り感の点で雄型成形面ファスナーが内側となるように使用することが当然であったが、本発明の固定用ベルトでは、雄型成形面ファスナーを外側とすることができ、その点から雄型成形面ファスナーが透明であることからその下に設けた色や模様を鮮やかに発現でき、人目に美しいこととなる。
【0038】
本発明の固定用ベルトは、結束ベルト、サポーター、縛り紐等の面ファスナーを用いた日用雑貨、文房具、衣類、靴、帽子、農園芸用、医療、電気器具、自動車、建築資材、荷造り資材等の多くの用途に用いることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1
[成形に用いた樹脂の準備]
成形樹脂として、株式会社クラレから販売されている「クラリティLA4285」と「クラリティLB550」を重量比60:40でブレンドすることにより、アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルのブロック共重合体であって重量平均分子量が6万であり、アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルの重量比が60:40であり、アクリル酸ブチルのブロック成分の両末端にメタクリル酸メチルのブロック成分が存在しているブロック共重合体を用意した。
【0040】
[成形用金型]表面被覆率
金型として、雄型係合素子の形状(逆J字型形状)を外円周上に彫った厚さ0.2mmで直径212mmのリング状金型、そのような形状を彫っていない外周面がフラットな厚さ0.3mmで直径212mmの金属製リング、上記逆J字型形状と逆の方向を逆J字が向いている逆J字型形状を外円周上に彫った厚さ0.2mmで直径212mmのリング状金型、そのような形状を彫っていない外周面がフラットな厚さ0.3mmで直径212mmの金属製リングを順々に重ね合わせることにより、その外周表面に逆J字型形状のキャビティおよび逆J字の方向が逆方向である逆J字型形状のキャビティを表面に多数有する、表面がキャビティー以外は極めてフラットである幅120mmの金型ローラーを用意した。なお、重ね合わせた金属製リング間で表面に段差や隙間が全く生じないように、重ね合わせる際にリングの位置を微調整した。
【0041】
[雄型成形面ファスナーの製造]
上記の金型ローラーと相対する位置に存在する別のドラムローラーとの隙間に上記アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルのブロック共重合体からなる溶融物を押し出し、圧迫することによりそのキャビティ内にブロック共重合体を充填させると共にローラー表面に均一な厚さを有するシートを形成し、金型ローラーが回転している間にローラー内に常時循環されている水によりキャビティ内の該共重合体を冷却固化させたのち、基板厚さが0.25mmとなるように隙間調整したニップローラーにより引き延ばすとともに冷却されたシートを金型ローラー表面から引き剥がして、雄型成形面ファスナーを製造した。
【0042】
得られた雄型成形面ファスナーの雄型係合素子の形状は逆J字型であり、その高さは基板面から0.75mm、雄型係合素子密度は120個/cm2であり、また係合素子の面積割合は22%、基板厚さは0.3mm、基板の幅は120mmであった。
この雄型成形面ファスナーは透明性に極めて優れており、文庫本のページの上に3枚重ねておき、その上からでも文字を十分に読むことができた。また伸縮性にも優れ、折り曲げても力を除去すると元の状態に直ちに戻り、折り曲げた箇所には筋等の痕跡が全く残らなかった。さらに耐候性にも優れ、屋外に置き、4〜11月の9か月間にわたり太陽光に晒したが、全く透明性や形状や係合性能に変化はなかった。
【0043】
[固定用ベルト(1)の製造]
上記の雄型成形面ファスナーの裏面に、ループ状織物面ファスナー(クラレファスニング製E50000)をアクリル系粘着剤で貼り合わせた。なお用いたループ状織物面ファスナーは鮮やかな青色に染色されている。貼り合された両面ファスナーを長さ100cm、幅2cmに切断した。この両面ファスナーは、雄型成形面ファスナー側から見ても鮮やかな青色を有しており、両面が表面として使用できる固定用ベルトとして活用できた。
【0044】
この固定用ベルトを、本やノートを重ねて持ち運びする固定用ベルトとして、雄型成形面ファスナー面が外側となるように巻き付けたところ、本やノートと接する面は肌触りの優しいループ面ファスナーであり、人目に触れる外側は透明な雄型成形面ファスナーを通して鮮やかなループ面ファスナーの青色が反映したものであった。さらに係合力においても全く問題なく、持ち運び易いものであった。
【0045】
[固定用ベルト(2)の製造]
上記の雄型成形面ファスナーの裏面に、ループ状織物面ファスナー(クラレファスニング製E50000)をアクリル系粘着剤で貼り合わせ、間に「くまモン」(登録商標)のシールを所々挿入した。なお用いたループ状織物面ファスナーは鮮やかな黄色に染色されている。貼り合された両面ファスナーを長さ100cm、幅2cmに切断して固定用ベルトとした。
【0046】
この両面ファスナーは、雄型成形面ファスナー側から見て鮮やかな黄色をバックに「くまモン」(登録商標)の模様が鮮明に見えるものであった。この固定用ベルトを用いて、雄型成形面ファスナーの面を外側にして、子供のお弁当箱を縛る固定用ベルトとして使用したところ、子供達に好評であった。
【0047】
比較例1
上記実施例1において、使用する樹脂をアクリル酸ブチル単独からなる樹脂を使用する以外は上記実施例1と同様に行い、雄型成形面ファスナーを製造した。しかしながら、キャビティから引き抜かれた雄型係合素子の形状は逆J字型をしているものが少なく、中には係合できない形状のものも多かった。さらにこの雄型成形面ファスナーをループ面ファスナーと係合させたところ、数回の係合・剥離で雄型係合素子がちぎれ、弱い係合力が一層弱くなり、面ファスナーの働きを有しないものとなった。
【0048】
比較例2
上記実施例1において、使用する樹脂をメタクリル酸メチル単独からなる樹脂(すなわちPMMA)を使用する以外は上記実施例1と同様に行い雄型成形面ファスナーを製造した。このものはキャビティーから引き抜かれる際に多くの係合素子が根元から又は逆J字の曲がり部分がちぎれ、さらにこの雄型成形面ファスナーをループ面ファスナーと係合させたところ、多くの係合素子が数回の係合剥離によりで折れ、繰り返し使用できるようなものではなかった。
【0049】
実施例2
上記実施例1において、アクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルのブロック共重合体を、株式会社クラレから販売されている「クラリティLA2250」(アクリル酸ブチルブロックとメタクリル酸メチルブロックの重量比は68:32、重量平均分子量は6.8万、アクリル酸ブチルのブロック成分の両末端にメタクリル酸メチルのブロック成分が存在している)に置き換える以外は実施例1と同様にして雄型成形面ファスナーの雄型係合素子の形状は逆J字型の雄型係合素子を有する雄型成形面ファスナーを製造した。
【0050】
この雄型成形面ファスナーを用いて、実施例1の固定用ベルト(2)と同様に、間に「くまモン」(登録商標)のシールを挿入して片面雄型成形面ファスナー、片面ループ面ファスナーの固定用ベルトを作製した。この両面ファスナーは、雄型成形面ファスナー側から見て鮮やかな黄色をバックに「くまモン」(登録商標)の模様が鮮明に見え、この固定用ベルトを用いて、雄型成形面ファスナーの面を外側にして、子供の絵本を束ねて固定するベルトとして使用したところ、実施例1のものと同様に、子供に好評であった。
【0051】
実施例3
実施例1において、雄型係合素子の高さを基板面から1.1mm、雄型係合素子密度を110個/cm2であり、また係合素子の面積割合は37%に変更する以外は実施例1と同様に雄型成形面ファスナーを製造した。
このものは透明性の点で実施例1のものよりわずかに劣るものであり、上記固定用ベルトに使用したところ、雄型成形面ファスナーの存在により裏面に存在させたキャラクターの絵の鮮明さが若干実施例1のものより劣るものではあった。しかしながら、間に存在させた模様の存在が十分に分かるものであった。
【符号の説明】
【0052】
1:基板
2:雄型係合素子
4:ループ状係合素子
5:ループ面ファスナーの基布
6:雄型成形面ファスナーとループ面ファスナーの間に存在するシート
S1:雄型係合素子がMD方向およびCD方向に隣り合う雄型係合素子との間の面積
S2:雄型係合素子が占める面積
図1
図2
図3