(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2有効電力指令値演算部は、前記第2発電電力変化率指令値に対して前記第1発電電力変化率指令値の前記第2有効電力指令値への影響度が大きくなるように前記第2有効電力指令値を算出する、請求項1に記載の複合発電システム。
前記第1内部起電圧指令値演算部は、第1無効電力指令値と前記第1計測器で計測された値に基づいて得られる無効電力との偏差を比例演算する第2の比例演算器と、当該第2の比例演算器の出力に基準電圧を加算して前記第1内部起電圧指令値を算出する第2の加算器とから構成される、請求項1または2に記載の複合発電システム。
前記発電設備は、前記発電装置と、前記発電装置に接続され前記発電装置の電力を所定の交流電力に変換する第2電力変換器と、を有し、前記第2システム制御装置は、前記第2有効電力指令値に基づいて前記第2電力変換器の出力電流の指令値を算出する第2電流指令値演算部を備え、前記第2電流指令値演算部の出力に基づき前記第2電力変換器を制御するよう構成される、請求項1から3の何れかに記載の複合発電システム。
前記発電装置は、原動機で駆動される発電機を用いた発電装置であり、前記発電機が直接的に前記施設内配電系統に同期投入するように構成され、前記発電機の出力が前記第2有効電力指令値に追従するように前記発電機を駆動する原動機の駆動力が制御される請求項1から3の何れかに記載の複合発電システム。
前記第2システム制御装置は、前記周波数演算器で算出された前記周波数が予め定められた第1のしきい値未満の状態となり、かつ、当該第1のしきい値未満の状態が所定の時間継続した場合に、前記発電設備における発電を開始し、前記周波数が前記第1のしきい値以上の値として予め定められた第2のしきい値以上の状態となり、かつ、当該第2のしきい値以上の状態が所定の時間継続した場合に、前記発電設備における発電を停止するように制御する、請求項1から6の何れかに記載の複合発電システム。
前記第2システム制御装置は、前記受電電力を積算した値に基づいて前記第2有効電力指令値を補正する指令値補正演算部を備えている、請求項1から9の何れかに記載の複合発電システム。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一または同じ機能を有する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0034】
図1は、本発明の一実施の形態における複合発電システムの概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、複合発電システム100は、複数の施設101A〜101E(以下、施設101Xと略記する場合がある)が電力授受可能に接続された交流の電源系統113を構成している。
【0035】
複数の施設101A〜101Eは、それぞれ、施設間配電系統102から分岐した施設内配電系統112A〜112Eを備え、施設内配電系統112A〜112Eには、蓄電設備103、発電設備104および負荷設備105の少なくとも1つが接続されている。そして、施設間配電系統102は、施設内配電系統112A〜112Eと接続されることにより、蓄電設備103、発電設備104および負荷設備105を少なくとも1つずつ備えた電源系統113を構成している。
図1において、施設内配電系統112A,112Bは、蓄電設備103、発電設備104および負荷設備105を備え、施設内配電系統112Cは、発電設備104および負荷設備105を備え、施設内配電系統112Dは、蓄電設備103および負荷設備105を備え、施設内配電系統112Eは、負荷設備105を備えている。なお、施設の数は、これ以上でも以下でもよい。また、負荷設備105を有しない施設を接続してもよい。このように、施設101Xは、例えば、一般の住宅、公共施設、工場、ビル等であり、蓄電設備103、発電設備104および負荷設備105の少なくとも1つを有する施設であれば、本複合発電システム100の施設となり得る。
【0036】
複合発電システム100は、複数の施設101Xごとに、対応する施設101X内に設けられた各設備の電力授受に関する制御を行う制御装置110Xを備えている。制御装置110Xは、対応する101Xに設けられる施設に応じて、蓄電設備103を制御する第1システム制御装置11、発電設備104を制御する第2システム制御装置124および負荷設備105を制御する第3システム制御装置131のうちの少なくとも何れか1つを備えている。
【0037】
発電設備104を含む施設内配電系統112A,112B,112Cは、発電設備104を含む施設内配電系統112A,112B,112Cに供給される受電電力を計測する受電電力計測器111を有している。受電電力計測器111は、施設内配電系統112A,112B,112Cと施設間配電系統102との接続点(受電点)に設けられる。
【0038】
電源系統113は、商用系統106と遮断器107および変圧器108を介して接続され、遮断器107が開閉することにより、電源系統113が商用系統106と連係運転するか自立運転するかが切り替えられる。さらに、電源系統113には、自然エネルギーを利用した発電施設である太陽光発電施設109が接続される。各負荷設備105は、蓄電設備103、発電設備104、商用系統106、太陽光発電施設109のうちの少なくとも1つの設備から電力の供給を受け、電力を消費する。太陽光発電施設109は、第4システム制御装置132により制御される。太陽光発電施設109は、
図1に示すように、施設101Xとは独立して設けられてもよいし、何れかの施設101Xを構成する設備の1つとして設けられてもよい。なお、複合発電システム100において、太陽光発電施設109は、必須の構成要素ではない。また、複合発電システム100には、太陽光発電施設109の代わりに、風力発電施設等の他の自然エネルギーを利用した発電施設が設けられていてもよい。
【0039】
なお、上記実施の形態に代えて、各設備103,104,105,109ごとに独立した制御装置が設けられる構成としてもよい。また、複数の施設101Xを制御する1つの制御装置が設けられる構成としてもよい。この場合、蓄電設備103、発電設備104および負荷設備105の制御装置と、太陽光発電施設109の制御装置とを1つの制御装置で構成してもよい。
【0040】
[蓄電設備]
まず、蓄電設備103の構成について説明する。
図2は、
図1に示す蓄電設備の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、各蓄電設備103は、蓄電デバイス5と、蓄電デバイス5に接続され蓄電デバイス5の直流電力を所定の交流電力に変換する第1電力変換器6とを有する。
【0041】
蓄電デバイス5は直流電力ライン7を介して第1電力変換器6に接続されている。この第1電力変換器6は図示しないパワー半導体素子を高速にON/OFFを行うことにより、蓄電デバイス5からの直流電力を所定の交流電力に変換して施設内配電系統112X(X=A,B,…)に出力する、もしくは施設内配電系統112Xからの交流電力を直流電力に変換して蓄電デバイス5を充電する。蓄電デバイス5は、一次電池、二次電池、電気二重層キャパシタ等が適用できる。
【0042】
施設内配電系統112Xには、電源系統113の電圧を計測するための電圧計測器4および電圧計測器4で計測した電圧から周波数を求めるための周波数演算器と、施設内配電系統112Xに流れる電流(受電電流)を計測するための電流計測器3とが設置されている。なお、電圧計測器4は、施設101Xごとに設けられる代わりに、電源系統113の何れかに設けられた電圧計測器4で計測された値が各施設101Xにおいて共通して用いられてもよい。電圧計測器4の出力は配線22を介して第1システム制御装置11の電圧・回転速度・位相演算部14に接続されている。
【0043】
電流計測器3の出力は、配線21を介して第1システム制御装置11の電流演算部13に接続されている。電圧計測器4はPT(Potential Transformer)として知られる変成器であり、また電流計測器3はCT(Current Transformer)として知られる変流器である。
【0044】
第1システム制御装置11は、第1有効電力指令値演算部96、電流演算部13、電圧・回転速度・位相演算部14、有効・無効電力演算部15、回転速度指令値演算部40、内部起電圧指令値演算部50、内部相差角演算部60、電流指令値演算部70および電力変換器制御部16を備え、第1電力変換器6を制御するよう構成されている。第1システム制御装置11における電流指令値演算部70が第1電流指令値演算部として機能し、電力変換器制御部16が第1電力変換器制御部として機能する。
【0045】
電力変換器制御部16からのゲート駆動信号20は第1電力変換器6に送られる。ゲート駆動信号20は、パワー半導体素子のゲートをPWM制御することにより、蓄電デバイス5の直流電力は所望の電圧、回転速度、位相の交流電力に変換されて施設内配電系統112Xに供給される。もしくは施設内配電系統112Xからの交流電力が直流電力に変換されて蓄電デバイス5を充電する。
【0046】
蓄電デバイス5には蓄電デバイス5の電圧、電流、温度、圧力等の電池の状態を検出するための状態検出器17が取り付けられている。蓄電デバイス監視装置18は、状態検出器17からの信号に基づき、蓄電デバイス5の状態を監視する他、蓄電デバイス5のSOC(State Of Charge)の計算を行う。
【0047】
蓄電デバイス監視装置18は配線23を介して第1システム制御装置11に接続されている。第1システム制御装置11は、蓄電デバイス5の状態に異常を検知した場合、第1電力変換器制御部16を介して、第1電力変換器6の運転を停止する。また、第1システム制御装置11は、蓄電デバイス5のSOCを第1システム制御装置11に伝える。
【0048】
次に、本実施の形態における蓄電設備103の制御態様について説明する。以下の説明で用いられる演算方式は、一例であって、同等の結果を導く他の演算手法も採用可能である。
【0049】
(1)電圧・回転速度・位相演算部(PLL演算回路)
図3Aは、
図2に示す電圧・回転速度・位相演算部におけるPLL演算回路を示す制御ブロック図であり、
図3Bは、
図3Aに示すPLL演算回路のより具体的な演算内容を示す図である。
【0050】
電源系統113の回転速度・位相は、電圧計測器4からの電圧信号に基づき、PLL演算回路31において計算で求められる。具体的には、第1電力変換器6に設置された電圧計測器4により電源系統113の線間電圧の瞬時値v
RS、v
STが計測され、PLL演算回路31に入力される。PLL演算回路31において、この電圧の瞬時値v
RS、v
STを用いて電源系統113の回転速度・位相の推定計算が行われる。
【0051】
図3Aおよび
図3Bに示すPLL演算回路31の演算ブロック図において、PLL演算回路31は、線間電圧値(v
RS、v
ST)から位相φを算出するαβ変換器30と、αβ変換器30により算出された位相φとPLL演算回路31内で推定された位相(以下、推定位相)φ'との偏差を求める位相比較器32と、位相偏差から電源系統113の角速度(周波数)を推定するループフィルタ34と、推定された角速度を積分し、推定位相φ'を算出する積分器35とで構成されている。
【0052】
電源系統113の位相φは、電圧計測器4から得られた系統線間電圧の瞬時値v
RS,v
STをαβ変換することで求められる。系統側の各相の相電圧の瞬時値をv
R、v
S、v
T、とし、瞬時値ベクトルv
αβを次式のように定義する。
【0054】
オイラーの式(e
jφ=cosφ+j・sinφ)より瞬時値ベクトルv
αβは以下のように表現することができる。
【0057】
ここで瞬時値ベクトルv
αβはa相を基準にした固定座標系(αβ軸)上で角速度ωで回転するベクトルとなる。ここで、角速度ωは、系統電圧の角周波数に一致する。
【0058】
実際の電圧計測器4で計測された系統瞬時線間電圧v
RS、v
STと瞬時相電圧v
R、v
S、v
Tは次のような関係にある。
【0061】
従って瞬時値ベクトルは瞬時線間電圧から以下のように求められる。
【0064】
また、αβ変換器30において、次式よりcosφおよびsinφが計算される。
【0067】
sin変換器36の出力とαβ変換器30の出力cosφとの積と、cos変換器37の出力とαβ変換器30の出力sinφとの積とが、それぞれ位相比較器32に入力される。位相比較器32は、系統電圧の瞬時値から求めた位相φとPLL演算回路31内で推定された位相φ'との偏差φ−φ'(以下、位相偏差という)を求める。具体的には、以下のような演算により位相偏差が算出される。αβ変換器30の出力ε(
図3B参照)は、はオイラーの式より、数10から求められる。
【0069】
したがって、φ−φ'が十分小さい場合、ε=sin(φ−φ’)がφ−φ'とほぼ等しくなるため、εが位相偏差φ−φ'とみなされる。
【0070】
ループフィルタ34は、位相比較器32で求められた位相偏差から、電源系統113の回転速度を求める。電源系統113の回転速度(推定同期回転速度)ω
sは、ループフィルタ34の出力から求められる。ループフィルタの伝達関数G(s)は例えば次式で表される。
【0072】
上記回転速度ω
sを積分器35にて積分して、推定位相φ'が求められる。上記のPLL演算回路は、位相偏差φ−φ'を0とするように動作するため、推定位相φ'および推定同期回転速度ω
sはそれぞれ位相φおよび回転速度ωの推定値となっていることは明らかである。
【0073】
ここで、αβ座標系に対して推定同期回転速度ω
sで回転するdq座標系を想定して系統の電圧がdq変換により求められる。すなわち、αβ座標系に対するdq座標系の位相角はφ'となるので、dq座標系での電圧は、以下のように求められる。
【0076】
以上のようにして、電圧・回転速度・位相演算部14は、電圧計測器4からの線間電圧の瞬時値v
RS、v
STから、電圧V
d,V
q、電源系統113の回転速度ω
s、および推定位相φ'を算出する。
【0077】
(2)電流演算部
電流演算部13は、電圧・回転速度・位相演算部14で計算された推定位相φ’を入力として、次式により電流I
d,I
qを算出する。
【0079】
よって、dq座標系での電流ベクトルは次式となる。
【0081】
(3)有効・無効電力演算部
有効・無効電力演算部15は、電圧・回転速度・位相演算部14で計算された電圧V
d,V
qと電流演算部13で計算された電流I
d,I
qを入力として、有効電力Pと無効電力Qとを算出する。すなわち、本実施の形態において、蓄電設備103に設けられた電流計測器3、電圧計測器4、電流演算部13、電圧・回転速度・位相演算部14、および有効・無効電力演算部15は、第1電力変換器6の出力端における有効電力および無効電力を得るための値を計測する第1計測器として機能する。
【0083】
(4)第1有効電力指令値演算部
第1有効電力指令値演算部96は、蓄電デバイス5のSOCと蓄電デバイス5のSOC指令値SOC
refとの偏差に基づいて、第1有効電力指令値P
ref1を算出する。
図4は、
図2に示す第1有効電力指令値演算部96における演算内容を示す制御ブロック図である。
図4に示すように、第1有効電力指令値演算部96は、減算器93および有効電力指令値設定器94を有する。減算器93は、SOC指令値SOC
refと蓄電デバイス監視装置18で計算されたSOCとの偏差ΔSOCを計算する。
【0084】
ここで、第1有効電力指令値演算部96は、第1有効電力指令値P
ref1が負の値をとることを許容するよう構成される。すなわち、第1有効電力指令値設定器94は、減算器93の出力ΔSOCが所定の値(例えば+10%)を超えた場合、第1有効電力指令値P
ref1を蓄電デバイス5を充電するための値(負の値、例えば定格電力の20%)に設定する。また、有効電力指令値設定器94は、減算器93の出力ΔSOCが所定の値(例えば−10%)未満となった場合、第1有効電力指令値P
ref1を蓄電デバイス5を放電するための値(正の値、例えば定格電力の20%)に設定する。このように、第1有効電力指令値演算部96において、仮想発電機における回生領域の動作が想定される。これにより、放電時と同様に、蓄電設備103の充電時における制御を仮想発電機を模擬した態様とすることができる。
【0085】
なお、
図4に示すように、有効電力指令値設定器94は、第1有効電力指令値P
ref1を変更するための所定の値(充電側および放電側のそれぞれ)に対してヒステリシスを持つように設定される。また、
図4の例に代えて、第1有効電力指令値演算部96は、上記減算器93の出力ΔSOCに所定の比例ゲインKを乗じることによって、第1有効電力指令値P
ref1を算出してもよい。
【0086】
(5)回転速度指令値演算部
回転速度指令値演算部40は、第1電力変換器6を仮想発電機として動作させるために、第1有効電力指令値P
ref1と有効電力Pと基準回転速度ω
oとから仮想発電機における所定の周波数ドループ特性および所定の慣性特性に応じた仮想的な回転速度指令値ω
refを算出する。蓄電設備103の回転速度指令値演算部40は、第1回転速度指令値を算出する第1回転速度指令値演算部として機能する。
【0087】
より詳しく説明する。回転速度指令値演算部40は、第1有効電力指令値P
ref1と有効電力Pとの偏差から比例制御により回転速度指令値(第1回転速度指令値)ω
refを算出する。ここで、
図5Aは、
図2に示す回転速度指令値演算部40の演算内容の一例を示す制御ブロック図である。
図5Aに示すように、回転速度指令値演算部40は、減算器43、比例制御器(第1の比例演算器)44、上下限リミッタ46および加算器(第1の加算器)47を有している。減算器43は第1有効電力指令値P
refから有効電力Pを減算して、比例制御器44に出力する。比例制御器44は、減算器43の出力に比例ゲイン(Dr)を乗じて、次段の上下限リミッタ46に送る。そして、上下限リミッタ46は、比例制御器44の出力をω
dr_maxとω
dr_minの間に制限して出力する。加算器47は、上下限リミッタ46の出力に基準回転速度ω
oを加えて、回転速度指令値ω
refとして出力する。
【0088】
図5Bは、
図2に示す回転速度指令値演算部40の演算内容の他の一例を示す制御ブロック図である。すなわち、
図5Aの代わりに
図5Bに示すように、比例制御器44と上下限リミッタ46との間に一次遅れ演算器45を配してもよい。比例制御器44の比例ゲイン(Dr)は有効電力と回転速度との間に所定の垂下特性を有するように調整される。
【0089】
(6)内部起電圧指令値演算部
[第1の例]
図6Aは、
図2に示す内部起電圧指令値演算部50の演算内容の一例を示す制御ブロック図である。
図6Aに示すように、内部起電圧指令値演算部50は無効電力指令値Q
refと無効電力Qとの偏差から比例制御により内部起電圧指令値E
fを算出する。蓄電設備103の内部起電圧指令値演算部50は、第1内部起電圧指令値を算出する第1内部起電圧指令値演算部として機能する。具体的には、内部起電圧指令値演算部50は、減算器53、比例制御器(第2の比例演算器)54、上下限リミッタ56、加算器(第2の加算器)57、および関数演算器58を有している。減算器53は無効電力指令値Q
refから無効電力Qを減算して、比例制御器54に出力する。比例制御器54は、減算器53の出力に比例ゲイン(Dr)を乗じて、次段の上下限リミッタ56に送る。そして、上下限リミッタ56は、比例制御器54の出力をV
dr_maxとV
dr_minとの間に制限して出力する。加算器57は、上下限リミッタ56の出力に電圧基準値V
oを加算して電圧目標値V
refを出力する。電圧目標値V
refは、関数演算器58に送られる。関数演算器58は、下式に示す演算を行い、内部起電圧指令値E
fを出力する。
【0091】
上記式で求められる内部起電圧指令値E
fは、第2の加算器57の出力である電圧目標値V
refから、蓄電設備の内部インピーダンスと、蓄電設備と電源系統との間の外部インピーダンスとの和である総合インピーダンス(r,x)による電圧降下を差し引いて求めたものということができる(後述する
図8B参照)。内部インピーダンスは、例えばテブナンの定理により求めることができる。後述するように、実際の電動機における内部インピーダンスは一般に非常に小さな値(ほぼゼロ)であるといわれている。外部インピーダンスは第1電力変換器6と電源系統113との間に設けられたリアクトルと配線抵抗とからなる。第1電力変換器6に流れる電流値は計測されるので、総合インピーダンスが定まれば、電源系統113の電圧値から内部起電圧は逆算により求めることができる。
【0092】
[第2の例]
図6Bは、
図2に示す内部起電圧指令値演算部50の演算内容の他の一例を示す制御ブロック図である。
図6Bに示すように、内部起電圧指令値演算部50は無効電力指令値Q
refと無効電力Qとから内部起電圧指令値E
fを算出する。この例においては、内部起電圧指令値演算部50は、
図6Aの例と同様に、減算器53、比例制御器(第2の比例演算器)54、上下限リミッタ56、および加算器(第2の加算器)57を有している。
図6Bの例においては、
図6Aにおける関数演算器58に代えて演算式が異なる第2の関数演算器58Bを有している。第2の関数演算器58Bには、電流I
d,I
qの代わりに、電圧V
d,V
qが入力される。第2の関数演算器58Bは、下式に示す演算を行い、内部起電圧指令値E
fを出力する。
【0094】
上記式で求められる内部起電圧指令値E
fは、無効電力の偏差に応じて電圧指令値をドループさせて実際の電圧を電圧指令値に追従させるような指令値である。すなわち、本例における内部起電圧指令値E
fは、通常の発電機で行われるAVR(Automatic Voltage Regulator)による界磁の制御に基づいた電圧指令値を模したものとなっている。
【0095】
[第3の例]
図6Cは、
図2に示す内部起電圧指令値演算部50の演算内容の他の一例を示す制御ブロック図である。すなわち、内部起電圧指令値演算部50は、
図6A、
図6Bに示すような比例制御器54の出力を直接上下限リミッタ56に入力する態様に代えて、
図6Cに示すように、比例制御器54と上下限リミッタ56との間に一次遅れ演算器55を配してもよい。比例ゲイン(Dr)は無効電力と出力電圧との間に所定の垂下特性を有するように調整される。
【0096】
(7)内部相差角演算部
図7は、
図2に示す内部相差角演算部60の演算内容を示す制御ブロック図である。
図7に示すように、内部相差角演算部60は回転速度指令値ω
refと電源系統113の同期回転速度ω
sとの偏差から、内部相差角θを算出する。蓄電設備103の内部相差角演算部60は、第1内部相差角を算出する第1内部相差角演算部として機能する。具体的には、内部相差角演算部60は、減算器63、積分器64を有している。減算器63は、回転速度指令値ω
refと同期回転速度ω
sとの偏差を算出する。減算器63の次段に設けられる積分器64は、この偏差を積分し、内部相差角θとして出力する。なお、本実施形態においては、回転速度指令値ω
refと同期回転速度ω
sとを用いて回転速度(単位:rpm)を比較する構成としているが、角速度(単位:rad/sec)、回転数(単位:Hz)等を比較する構成としてもよい。角速度、回転数および周波数は、本発明において、回転速度と等価な概念である。したがって、後述する電源系統113の周波数も電圧・回転速度・位相演算部14において同期回転速度ω
sから得られる。
【0097】
(8)電流指令値演算部
図8Aは、
図2に示す電流指令値演算部70の演算内容を示す制御ブロック図である。また、
図8Bは、本実施の形態の電源系統における概念図である。
図8Aに示すように、電流指令値演算部70において、内部起電圧指令値E
f、内部相差角θ、電圧V
d、V
qは関数演算器72に入力される。関数演算器72は、下記式の演算を行い、電流指令値I
d_ref、I
q_refを電力変換器制御部16に出力する。
【0099】
上記式で求められる電流値は、電圧計測器4により計測された系統電圧の電源と内部起電圧指令値電圧の電源との間に総合インピーダンスが接続されたと仮定した場合に、総合インピーダンスに流れる電流値である。この電流値は第1電流指令値として蓄電設備103の電流指令値演算部70から出力される(
図8B参照)。
【0100】
ところで、実際の蓄電設備103の内部インピーダンスr
a,x
sはほぼゼロに等しく、総合インピーダンスr=r
a+r
l、x=x
s+x
lはほぼ蓄電設備103と電源系統113との間の外部インピーダンスr
l,x
lに等しい。しかしながら、前述のとおり、本実施の形態においては、内部起電圧指令値E
f、第1電流指令値I
d_ref、I
q_refを算出するに際して、蓄電設備103の内部インピーダンスと、蓄電設備103と電源系統113との間の外部インピーダンスとの和である総合インピーダンスを用いることとした。特に、蓄電設備103の内部インピーダンスを仮想的に大きくして、総合インピーダンスを求め、この仮想インピーダンスを用いて内部起電圧指令値E
f、第1電流指令値I
d_ref、I
q_refを算出すれば、安定した運転が可能となる。なぜならば、複数の第1電力変換器6を並列運転した場合、第1電力変換器6間のわずかな電圧差で大きく出力バランスが崩れてしまうのは、第1電力変換器6のインピーダンスが低いためであり、蓄電設備103の内部インピーダンスを仮想的に大きくすることにより、第1電力変換器6のインピーダンスが高くなり、電圧差による出力バランスが不安定になるのを防止できるからである。例えば、内部インピーダンスが現実的にはほぼゼロのところ、総合インピーダンスにおいて抵抗分を0.1pu、リアクタンス分を0.4puとすればかなりの安定化を図ることができる。
【0101】
つまり、電流指令値演算部70は、仮想的な第1電力変換器6が内部起電圧指令値演算部50と内部相差角演算部60とにより求められた内部起電圧を発生させた場合に、施設内配電系統112Xに出力される電流値を推定している。
【0102】
これにより、第1電力変換器6の見掛け上のインピーダンスが上昇し、商用系統106との連系運転時および電力変換装置同士の並列運転時の何れの場合でもシステムが不安定になることを抑制している。
【0103】
(9)電力変換器制御部
電力変換器制御部16には電圧・回転速度・位相演算部14で算出された推定位相φ’と、電流演算部13で算出された電流I
d,I
qと、電流指令値演算部70で算出された第1電流指令値I
d_ref、I
q_refとが入力される。電力変換器制御部16は、第1電力変換器6の出力電流が電流指令値演算部70で算出された第1電流指令値となるようなゲート駆動信号20を出力する。
【0104】
蓄電デバイス監視装置18において、蓄電デバイス5に異常が見つかれば、電池異常信号を配線23を介してシステム制御装置11の電力変換器制御部16に送り、ゲート駆動信号20の送出を停止させる。これにより、第1電力変換器6の作動が停止するため、蓄電デバイス5の保護が図れる。蓄電デバイスの異常としては、例えば過電流、電圧低下、過電圧、過充電、過放電、電池温度異常、電池圧力異常、装置異常等がある。
【0105】
蓄電デバイス監視装置18は、蓄電デバイス5のSOCを算出して、配線23を介してシステム制御装置11に送信する。SOCは、蓄電デバイスに流れる電流を積算して求められるSOC(積算SOC)を電流、電圧、温度から求められるSOC(瞬時SOC)で補正することにより計算される。
【0106】
電力変換器6は、蓄電デバイス5のSOCが目標とするSOC指令値より小さいとき、有効電力の出力を減らす方向に制御し、反対にSOCが目標とするSOC指令値より大きいとき、有効電力の出力を増やす方向に制御する。この結果、蓄電デバイス5のSOCは適正な範囲に保たれる。
【0107】
[発電設備]
次に、発電設備104の構成について説明する。
図9は、
図1に示す発電設備が電力変換器を介して施設内配電系統に接続される場合の概略構成を示すブロック図である。
図9において、
図2で示した第1システム制御装置11の制御ブロックと共通する部分については同じ符号を付し、説明を省略する。また、
図9の例は、発電設備104の他に蓄電設備103および負荷設備105が接続された施設内配電系統112Aを例示するが、発電設備104が接続されている限り、施設内配電系統に蓄電設備103および/または負荷設備105が接続されていない場合(例えば施設内配電系統112B,112C等)であっても、発電設備104は、
図9の例と同様の構成を採用し得る。
【0108】
図9に示すように、各発電設備104は、発電装置122と、発電装置122に接続され発電装置122の電力を所定の交流電力に変換する第2電力変換器125とを有する。発電装置122は、出力制御が可能な発電装置であって、例えば、燃料電池発電装置、あるいはディーゼル発電装置、タービン発電装置等の原動機駆動発電装置等が採用可能である。太陽光発電装置や風力発電装置などの出力が自然条件に依存する発電装置であっても、出力制御が可能となっていれば採用可能である。また、原動機駆動発電装置においては、第2電力変換器125を設けなくてもよい。
【0109】
図9に示すように、発電設備104には発電装置122(例えば燃料電池発電装置)が接続されている。発電装置122は第2電力変換器125に接続されている。第2電力変換器125は第2システム制御装置124から配線を介してゲート駆動信号127を受けて作動する。第2システム制御装置124は、第2電力変換器125を制御するよう構成されている。受電電力計測器111は、施設内配電系統112Aの電流を計測する電流計測器115と、施設内配電系統112Aの電圧を計測する電圧計測器114とを備えている。第2システム制御装置124には、電流計測器115により計測された電流および電圧計測器114により計測された電圧が入力される。
【0110】
発電設備104の電圧・回転速度・位相演算部14は、電源系統113の周波数を算出する周波数演算器として機能する。すなわち、電圧・回転速度・位相演算部14は、電源系統113の回転速度ω
sから周波数f(=ω
s/2π)を算出する。有効・無効電力演算部15は、電圧・回転速度・位相演算部14で計算された電圧V
d,V
qと電流演算部13で計算された電流I
d,I
qとを入力として、有効電力Pと無効電力Qとを算出する。有効・無効電力演算部15から出力される有効電力Pが施設内配電系統112Aに供給される受電電力Pとなる。したがって、受電電力計測器111で計測される電流、電圧から施設内配電系統112Aに供給される受電電力Pを得ることができる。
【0111】
第2有効電力指令値演算部86は、電圧・回転速度・位相演算部14で計算された電源系統113の周波数fと基準周波数f
oと有効・無効電力演算部15で演算される受電電力Pとに基づいて第2有効電力指令値P
ref2を算出する。発電設備104の電流指令値演算部70は、第2有効電力指令値P
ref2および系統電圧V
d,V
qを入力とし、第2電力変換器125が出力するべき電流指令値I
d_ref,I
q_refを出力する。その計算式は例えば次式で与えられる。
【0113】
一方、発電設備104が原動機駆動の発電設備である場合には、第2電力変換器125を設けずに、よく知られるガバナ制御によって第2有効電力指令値P
ref2を目標値とする電力制御ループが構成されてもよい。すなわち、発電装置122として、原動機で駆動される発電機を用いた発電装置を採用する場合、発電機が直接的に施設内配電系統112Aに同期投入するように構成され、発電機の出力が第2有効電力指令値P
ref2に追従するように発電機を駆動する原動機の駆動力が制御されてもよい。
【0114】
図10は、
図9に示す第2有効電力指令値演算部86の演算内容の一例を示す制御ブロック図である。第2有効電力指令値演算部86は、減算器83と、第1発電電力変化率指令値演算部84と、第2発電電力変化率指令値演算部85と、加算器87と、積分器88と、を備えている。減算器83は、電源系統113の周波数fと周波数指令値(基準周波数)f
oとの偏差Δf(=f
o−f)を計算する。第1発電電力変化率指令値演算部84は、当該偏差Δfから第1発電電力変化率指令値R
fを算出する。第1発電電力変化率指令値演算部84は、周波数fが基準周波数f
oより低い場合、発電装置122の発電量を増やすような第1発電電力変化率指令値R
fを出力し、周波数fが基準周波数f
oより高い場合、発電装置122の発電量を減らすような第1発電電力変化率指令値R
fを出力する。例えば、第1発電電力変化率指令値演算部84は、+2%の偏差Δfごとに第1発電電力変化率指令値R
fを20%/min増やし、−2%の偏差Δfごとに第1発電電力変化率指令値R
fを20%/min減らすように変化させる。
【0115】
第2発電電力変化率指令値演算部85は、対応する施設内配電系統112Aの受電電力Pから第2発電電力変化率指令値R
pを算出する。第2発電電力変化率指令値演算部85は、受電電力Pが、受電していることを示す値である場合(P>0)に、発電装置122の発電量を増やすような第2発電電力変化率指令値R
pを出力する。
【0116】
例えば、第2発電電力変化率指令値演算部85は、受電電力Pが正の値である場合、第2発電電力変化率指令値R
pを+10%/min変化させる。なお、本実施の形態では、第2発電電力変化率指令値演算部85は、受電電力Pが所定の正の値以上である場合に、発電装置122の発電量を増やすような第2発電電力変化率指令値Rpを出力する。すなわち、受電電力Pが0から所定の正の値までの間は不感帯として発電装置122の発電量を維持するような指令値を出力するようにしている。また、受電電力Pが、対応する施設101Xから送電していることを示す値である場合(P<0の場合)、第2発電電力変化率指令値演算部85は、発電装置122の発電量を維持するような第2発電電力変化率指令値R
p(すなわちR
p=0)を出力する。
【0117】
上記のように、第2有効電力指令値演算部86は、第2発電電力変化率指令値R
pに対して第1発電電力変化率指令値R
fの影響度が大きくなるように設定する。例えば上述したように、周波数変化に基づく第1発電電力変化率指令値R
fの変化は、20%/minを最小単位とするのに対し、受電電力変化に基づく第2発電電力変化率指令値Rpの変化は、10%/minを最小単位とする。
【0118】
加算器87は、第1発電電力変化率指令値R
fと第2発電電力変化率指令値R
pとを加算して得られる発電電力変化率指令値R
gを出力する。積分器88は、発電電力変化率指令値R
gを積分して、第2有効電力指令値P
ref2を算出する。
【0119】
第2システム制御装置124は、第1システム制御装置11と同様に、回転速度指令値演算部40、内部起電圧指令値演算部50、内部相差角演算部60、電流指令値演算部70および電力変換器制御部16を有している。第2システム制御装置124における電流指令値演算部70が出力する電流指令値I
d_ref,I
q_refが第2電力変換器6の出力電流の指令値である第2電流指令値となる。
【0120】
このように、本実施の形態において、第1システム制御装置11における回転速度指令値演算部40、内部起電圧指令値演算部50、内部相差角演算部60、および電流指令値演算部70が、それぞれ第1回転速度指令値演算部、第1内部起電圧指令値演算部、第1内部相差角演算部、および第1電流指令値演算部として機能する。
【0121】
上記構成によれば、第1システム制御装置11が蓄電デバイス5に対する充放電を第1電力変換器6を通じて制御することにより、蓄電設備103が仮想発電機として機能する。すなわち、蓄電設備103において、第1電力変換器6に出力電流の指令値が入力されることにより、第1電力変換器6の有効電力および電源系統113の周波数の閉ループ制御系と第1電力変換器6の無効電力および電源系統113の電圧の閉ループ制御系とが形成され、これらの制御量(被制御量)がフィードバック制御される。
【0122】
したがって、蓄電設備103は、電流制御型および電圧制御型の双方として機能し、自立運転から連系運転、あるいは連系運転から自立運転に移行するときに、制御方式の変更をする必要がなく、かつ自立状態で並列運転が可能な電力変換器を備える。しかも、蓄電設備103のフィードバック制御システムは実際の発電機ではなくソフトウエアによって実現されるので原理的に応答速度が速い。したがって、発電設備104のための第2電力変換器125に加えて、仮想発電機として機能する蓄電設備103のための第1電力変換器6を用いることにより、急激な負荷変動に対しては、発電設備104の発電電力の負荷電力に対する過不足を発電設備104に比べて応答速度の速い蓄電設備103によって補償することができる。
【0123】
より詳しく説明すると、まず、第1システム制御装置11の働きにより、第1電力変換器6を介して蓄電デバイスのSOCの変化分が補償される。
【0124】
次に、電源系統113が自立している場合には、蓄電設備103の仮想発電機としての働きにより、電源系統113に接続される負荷量と、蓄電設備への充放電量の増減に応じて電源系統113の周波数が増減するため、その周波数の変化に応じて、発電設備104の発電出力を増減させることにより、電源系統113の全体の負荷量および充放電量と発電量をバランスさせることができる。
【0125】
さらに、各施設の受電電力量に応じて各施設の発電設備104の発電電力を調節することにより、各施設で消費される電力は、可能な限り同じ施設で発電するように調整される。すなわち、各施設における発電設備104同士の間での負荷分担を適切に行うことができる。
【0126】
また、第2有効電力指令値P
ref2が、第2発電電力変化率指令値R
pに対して第1発電電力変化率指令値R
fの第2有効電力指令値P
ref2への影響度が大きくなるような値に設定される。これによれば、電源系統113全体の電力の需給バランスを維持しつつ、発電設備104と同じ施設101X内に配置された負荷設備105への給電は当該発電設備104から優先的に行うことができる。
【0127】
なお、第2システム制御装置124は、周波数演算器で算出された電源系統113の周波数fが予め定められた第1のしきい値未満の状態となり、かつ、当該第1のしきい値未満の状態が所定の時間継続した場合に、発電設備104における発電を開始し、周波数fが第1のしきい値以上の値として予め定められた第2のしきい値以上の状態となり、かつ、当該第2のしきい値以上の状態が所定の時間継続した場合に、発電設備104における発電を停止するように制御してもよい。これにより、電源系統113の電力が不足している場合に制御態様を変更することなく電源系統113に電力を供給するとともに過剰な電力の供給を抑えることができ、電源系統113における電力の需給バランスを安定的に維持させることができる。
【0128】
なお、本実施の形態においては、発電設備104を備える施設内配電系統112A,112B,112Cに受電電力計測器111が設けられる態様について説明したが、その他の施設内配電系統112D,112Eにも受電電力計測器111を設けてもよい。各施設内配電系統112Xの受電電力を取得する構成とすることにより、各施設101Xにおける他の施設との電力の需給状況を把握することができる。したがって、発電設備104を制御する第2システム制御装置124は、当該電力の需給状況に応じて当該発電設備104の発電量を調整することができる。
【0129】
図11は、
図9に示す第2有効電力指令値演算部の演算内容の他の一例を示す制御ブロック図である。
図11に示すように、第2システム制御装置124は、受電電力を積算した値に基づいて第2有効電力指令値P
ref2を補正する指令値補正演算部92を備えてもよい。
図11の例では、指令値補正演算部92は、積分器89と、第3発電電力変化率指令値演算部90と、加算器91とを備えている。
【0130】
積分器89は、施設内配電系統の受電電力Pを所定期間積算し、当該施設の電力量Wを出力する。なお、当該施設の電力量Wは、施設101X外への給電が続けば負の値となり、施設101X内への受電が続けば正の値となる。第3発電電力変化率指令値演算部90は、積分器89から出力された当該施設の電力量Wに基づいて第3発電電力変化率指令値R
Wを生成する。例えば、第3発電電力変化率指令値演算部90は、当該施設の電力量Wが正の値である場合、第3発電電力変化率指令値R
Wを+5%/min変化させる。また、第3発電電力変化率指令値演算部90は、当該施設の電力量Wが負の値である場合、第3発電電力変化率指令値R
Wを−5%/min変化させる。なお、本実施の形態では、当該施設の電力量Wの大きさが0から所定の値までの間は不感帯として発電装置122の発電量を維持するような指令値を出力するようにしている。
【0131】
加算器91は、第1発電電力変化率指令値R
fと第2発電電力変化率指令値R
pとを加算した加算器87の出力と、第3発電電力変化率指令値R
Wとを加算して得られる発電電力変化率指令値R
gを出力する。
図10の例と同様に、積分器88は、発電電力変化率指令値R
gを積分して、第2有効電力指令値P
ref2を算出する。なお、これに代えて、指令値補正演算部92は、積分器88の出力に対して当該施設の電力量Wに基づく第2有効電力指令値P
ref2の補正値を加算してもよい。
【0132】
このように、施設101Xごとの受電電力を積算することにより、施設101Xごとの定期的な所定期間あたりの電力需給量が算出される。これに基づいて第2有効電力指令値P
ref2が補正されることにより、施設101Xごとの所定期間あたりの電力需給量に応じた電力の需給相殺処理を行うことができる。すなわち、第2システム制御装置124は、施設101Xにおける電力量Wが受電過多(正の値)である場合、当該施設101X内の発電設備103における発電量を増やし、施設101Xにおける電力量Wが送電過多(負の値)である場合、当該施設101X内の発電設備103における発電量を減らすように制御する。これにより、施設101X内の発電設備103は、当該施設101Xにおける電力量Wが0に近づくように制御される。このような態様を利用することにより、施設101Xごとの電力の支払い処理を簡単化することができる。
【0133】
なお、第3発電電力変化率指令値演算部90は、第1発電電力変化率指令値R
fおよび第2発電電力変化率指令値R
pに対して第3発電電力変化率指令値R
Wの影響度が小さくなるように設定する。これにより、需給バランスへの影響を抑えつつ電力の需給相殺処理を行うことができる。
【0134】
[負荷設備]
本実施の形態において、電源系統113全体の電力需給状況に応じて、負荷設備105の負荷電力が調整されてもよい。例えば、第3システム制御装置131は、電源系統113の周波数が予め定められた第3のしきい値未満の状態となり、かつ、当該第3のしきい値未満の状態が所定の時間継続した場合に、負荷設備105が消費する電力を低減させるように制御する。
【0135】
本実施の形態によれば、電源系統113の需給状況は当該電源系統113の周波数の変動から判断することが可能である。上述したように、負荷電力が増加した場合、負荷の増加分は一時的に蓄電設備103が分担して負担するとともに、蓄電設備103の第1電力変換器6に対する仮想発電機制御における垂下特性に基づいて電源系統113の周波数が低下する。この周波数低下に基づいて各発電設備104は出力を増加させることにより需給バランスを保つ。負荷電力がさらに増加し、発電設備104の発電能力を超え、全ての発電設備104の出力が上限に達すると、不足分は蓄電設備103から供給される。この結果、電源系統113の周波数は基準周波数(定格周波数)よりも低い状態となり、この状態が継続される。蓄電設備103からの電力供給が継続されると、蓄電デバイス5のSOCが低下することため、第1電力変換器6への第1有効電力指令値P
ref1が負の値となり、仮想発電機の垂下特性から電源系統113の周波数がさらに低下する(第3しきい値未満の状態となる)。
【0136】
このような状態が所定の時間継続した場合に、負荷設備105を制御する第3システム制御装置131は、電源系統113全体で供給される電力が不足しているものと判断し、負荷設備105の抑制操作または停止操作を行う。複数の負荷設備105における抑制操作または停止操作を行う順位は、周波数の低下量および継続時間のしきい値の設定で調整が可能である。負荷設備105を抑制または停止させる場合、例えば、第3システム制御装置131は、負荷設備105に対して直接的に出力等の抑制命令または停止命令を与えてもよいし、負荷設備105と電源系統113との接続箇所に接続または遮断する遮断器(例えば電磁接触器等)を設け、当該遮断器に対して両者の接続を遮断する指令を与えてもよい。また、第3システム制御装置131は、該当する負荷設備105が含まれる施設101Xに対して警報等を報知して、負荷設備105の利用者に節電を促すようにしてもよい。
【0137】
上記のように、負荷設備105に対しても上記のような制御を行うことにより、電源系統113の負荷が大きくなった場合に制御態様を変更することなく負荷設備105への電力の供給を減少させることができ、電源系統113における電力の需給バランスを安定的に維持させることができる。
【0138】
[太陽光発電施設]
図1に示すように、電源系統113に、各施設101Xとは別に太陽光発電施設109等の自然エネルギーを利用した発電施設が接続されている場合には、電源系統113全体の電力需給状況に応じて、当該発電施設の発電電力が調整されてもよい。例えば、第4システム制御装置132は、電源系統113の周波数が予め定められた第4のしきい値以上の状態となり、かつ、当該第4のしきい値以上の状態が所定の時間継続した場合に、太陽光発電施設109の発電電力を低減させるように制御する。
【0139】
太陽光発電施設109の発電電力が増加すると、蓄電設備103が一時的に余剰分を充電する。このとき仮想発電機の垂下特性により、電源系統113の周波数が上昇する。これにより、発電設備104の出力が低下することで、需給バランスが維持される。太陽光発電施設109の発電電力がさらに増加すると、発電設備104の発電電力が全て下限値に達し、蓄電設備103の充電状態が継続する。この結果、蓄電デバイス5のSOCが上昇するため、第1電力変換器6に対する有効電力指令値P
refは放電側の値(正の値)となるため、電源系統113の周波数が上昇した状態が継続する(第4しきい値以上の状態となる)。
【0140】
このような場合に、太陽光発電施設109を制御する第4システム制御装置132は、電源系統113の周波数の上昇が所定時間継続した場合、電源系統113全体で供給されている電力が過剰であると判断し、太陽光発電施設109から出力される電力を制限または停止させる。太陽光発電施設109の出力電力を制限する方法として、例えば第4システム制御装置132は、太陽光発電施設109の出力上限値を下げるような命令を与えたり、個別に制御可能な複数のセグメントで構成される太陽光発電施設109の場合、当該複数のセグメントのうちの一部のセグメントの発電を停止させたりすることが例示できる。このような太陽光発電施設109の出力電力を制限または停止させる前に、第1システム制御装置11が、蓄電設備103のSOC指令値をより高い値に設定し直してもよい。
【0141】
これにより、電源系統113の電力が過剰になっている場合に制御態様を変更することなく電源系統113への電力の供給を減少させることができ、電源系統113における電力の需給バランスを安定的に維持させることができる。
【0142】
[システムの全体的な動作]
以下、本実施の形態における複合発電システム100の全体的な動作について説明する。
【0143】
(1)定常状態
負荷設備105における負荷の変動、発電設備104の出力電力の変動および太陽光発電施設109における発電電力の変動がなく、しかも、蓄電設備103の蓄電デバイス5におけるSOCが蓄電デバイス5のSOC指令値SOC
refに一致している状態では、負荷設備105には、対応する施設101Xの発電設備104および/または太陽光発電施設109から電力が供給される。このとき、発電設備104は自身の施設101X内の負荷設備105へ電力を供給するとともに、余剰分を他の施設に融通する。蓄電設備103の出力はゼロで、電源系統113の周波数は基準周波数(定格周波数)に一致している。
【0144】
(2)負荷が増加した場合
定常状態から施設101Aの負荷が増加した場合を考える。負荷が増加することにより、電源系統113全体としては発電設備104の供給不足となる。このため、当該不足分を蓄電設備103が賄って放電するようになる。この結果、蓄電設備103の垂下特性により電源系統113の周波数が低下する。電源系統113の周波数が低下することにより、各施設101Xの発電設備104は発電電力を上昇させる。施設101Aには受電電力Pが発生する(正の値となる)ため、施設101Aにおける発電設備104は、他の施設の発電設備104よりも発電電力が大きくなるように発電電力を上昇させる。施設101Aの発電設備104の発電電力が上昇することにより、蓄電設備103の出力が減少し、電源系統113の周波数も上昇する。やがて、蓄電設備103の出力がゼロとなり、電源系統113の周波数も基準周波数に戻る。しかし、施設101Aの受電電力が正の値であることから、施設101Aの発電設備104の発電電力は上昇を続けるため、電源系統113の周波数も上昇を続ける。この結果、蓄電設備103が上昇した発電電力を吸収すべく充電状態となる。電源系統113の周波数が上昇することに従って、他の施設の発電設備104の発電電力は、減少し、最終的には施設101Aの発電設備104のみが出力を上昇させた状態で静定する。
【0145】
(3)負荷が減少した場合
定常状態から施設101Aの負荷が減少した場合を考える。負荷が減少することにより、電源系統113全体としては発電設備104の供給過剰となる。このため、当該過剰分を蓄電設備103が吸収するように充電状態となる。この結果、電源系統113の周波数が上昇する。電源系統113の周波数が上昇することにより、各施設101Xの発電設備104は発電電力を減少させる。発電設備104の発電電力の減少に伴い、蓄電設備103の充電量が減少し、電源系統113の周波数も低下する。蓄電設備103の充電量がゼロになると、電源系統113の周波数も基準周波数に戻る。しかし、他の施設の受電電力Pが正の値となっていることから、他の施設の発電設備104の発電電力は増加に転じ、電源系統113の周波数もそれに応じて再び上昇する。これに伴い、施設101Aの発電設備104の発電電力が減少し、最終的には施設101Aの発電設備104のみが出力を減少させた状態で静定する。
【0146】
(4)発電設備の発電電力が上限に達した場合
上記(2)において、施設101Aの負荷が上昇し、施設101Aの発電設備104の発電電力が上限に達した場合を考える。施設101Aは電力の不足分を電源系統113から受電することになるため、電源系統113の周波数が低下する。その結果、他の施設の発電設備104の発電電力が上昇する。最終的には、施設101Aの蓄電設備103の出力がゼロとなり、電源系統113の周波数が基準周波数に戻った時点で静定する。この結果、施設101Aは他の施設の発電設備104から電力の融通を受ける状態が維持される。
【0147】
(5)太陽光発電施設の発電電力が上昇した場合
太陽光発電施設109の発電電力が上昇すると、電源系統113は供給過剰の状態となり、電源系統113の周波数が上昇し、各施設101Xの蓄電設備103が余剰分を充電する。電源系統113の周波数の上昇に伴い、各施設101Xの発電設備104は、発電電力を減少させ、施設外に融通していた電力を減少させる。太陽光発電施設109の発電電力がさらに大きい場合、各施設101Xの発電設備104は発電電力の減少を継続し、施設外から受電する状態で静定する。
【0148】
(6)電源系統全体が供給不足となった場合
定常状態から電源系統113の負荷が上昇し、各施設101Xの発電設備104の供給能力を上回った場合を考える。各施設101Xの発電設備104の出力が上限に達すると、電源系統113の周波数の基準周波数からの低下を元に戻すことができない。したがって、各施設101Xの蓄電設備103から電力の不足分が電源系統113に供給される。この状態が継続すると、蓄電デバイス5のSOCが充電側に調整されるため、電源系統113の周波数がさらに低下する。電源系統113の周波数が所定の値(上述した第3のしきい値)未満となった状態が所定の時間継続した場合、電源系統113は、供給不足と判断され、各施設101Xの負荷設備105は、負荷の低減または停止を行い、供給不足を改善するように制御される。
【0149】
(7)電源系統全体が供給過剰となった場合
電源系統113全体の負荷が低い状態で、太陽光発電施設109の発電電力が上昇し、供給過剰状態となった場合を考える。各施設101Xの発電設備104は発電電力を減少させ、下限値に達すると、余剰分は蓄電設備103の蓄電デバイス5に充電される。蓄電デバイス5のSOCが上昇すると、蓄電設備103は放電側に調整されるため、電源系統113の周波数がさらに上昇する。電源系統113の周波数が所定の値(上述した第4のしきい値)以上の状態となり、この状態所定の時間継続した場合、電源系統113は、供給過剰と判断され、太陽光発電施設109は、発電電力の抑制または停止を行い、供給過剰を改善するように制御される。
【0150】
[本実施の形態における効果]
上記のような一連の動作が制御態様の切り替えなしに行われる本実施の形態における複合発電システム100によれば、以下のような効果を奏し得る。
【0151】
(1)複数の施設101Xに分散配置された蓄電設備103および発電設備104を結合し、自立電源系統を構成することができる。上述したように、本実施の形態においては、複数の施設101Xは、例えば一般家庭、工場、ビル、商業施設、公共施設等が含まれる。複合発電システム100において、施設数や、各施設の規模などに関する制約はなく、各施設内部の設備の種類や容量、構成などが異なる任意の数の施設101Xを複合させて構成することが可能である。従来、このような自立電源系統を構成しようとした場合、電源系統全体の負荷変動を1台で吸収できる容量を持った大容量の蓄電設備が必要であったり、原動機発電機が必須であったりといった制約があった。しかし、上記実施の形態においては複数の蓄電設備103および発電設備104が協業して自立電源系統を維持する能力を有することにより、従来の制約が取り除かれる。
【0152】
(2)電力変換器のみで自立系統の電圧および周波数を適切に維持することができる。自立系統の電圧および周波数は、仮想発電機モデル制御される第1電力変換器6を備えた蓄電設備103が維持している。本実施の形態における第1電力変換器6は、原動機発電機の垂下特性、慣性モーメント、インピーダンスを模擬するように制御されることから、第1電力変換器6のみでも良好な電源品質を維持することができる。従来の電力変換器で自立系統を構成しようとした場合、1台を電圧制御型電力変換装置とし、残りを電流制御型電力変換装置とする必要があった。この方式では電圧および周波数を維持する能力があるのは電圧制御型電力変換装置のみであり、電圧および周波数を維持するためには大容量の電圧制御型電力変換装置が必要であった。しかし、上記実施の形態においては複数の蓄電設備103の協業により、このような異なる制御態様の併存は不要となる。
【0153】
(3)自立系統の需給バランスを適切に維持することができる。複合発電システム100内の施設101Xにおける負荷の変動に伴って、発電設備104の発電電力と負荷設備105で消費される負荷電力との間で一時的な需給バランスの乱れが生じるが、この乱れは、蓄電設備103によって吸収される。これによって、負荷変動に伴って電源系統113の擾乱が抑制される。しかも、このとき、蓄電設備103は、第1システム制御装置11によって所定の垂下特性を有する仮想発電機として制御されるため、複数の蓄電設備103間で電力の分担量を均等に配分することができる。
【0154】
(4)複数の施設101X間で電力の融通が可能となる。本実施の形態における複合発電システム100においては、施設101X間で電力を融通しあうことで発電設備104を効率的に運用することができる。これにより、従来のスマートグリッドのような、発電設備および蓄電設備の運用を集中管理する必要のあるシステムのように、高速な通信手段および電力計等の多数の計測機器を必要とすることがなく、しかも煩雑な制御を不要とすることができる。
【0155】
(5)太陽光発電施設109等の自然エネルギーを利用した発電施設を有効に活用することができる。太陽光、風力等の自然エネルギーを利用した発電施設は、日射量または風速等により発電量が変化する。また、このような発電施設は、負荷電力に追従させることもできない。したがって、このような発電施設は、商用系統と連系運転することが前提となっており、商用系統が停電した場合、給電することができなくなる問題がある。本実施の形態によれば、このような自然エネルギーを利用した発電施設の発電電力の余剰分を施設101X間で融通することにより、発電電力を有効活用することができる。また、出力変動による電源系統113の擾乱を抑制することができる。
【0156】
(6)システム構成の自由度が高い。本実施の形態における複合発電システム100においては、蓄電設備103、発電設備104、負荷設備105、太陽光発電施設109等に対する制御は原理上独立して構成されている。また、施設101X内の各設備の構成および各設備の容量について特段の制約はない。このため、上述したように、発電設備104および蓄電設備103の何れか一方を有する施設101C,101Dや負荷設備105のみを有する施設101Eが存在してもよい。また、施設101X間での情報のやりとりも行われないため、施設101Xの追加または変更も容易であり、システム構成の自由度は高い。これに対して、従来の一般的なスマートグリッドで、施設を追加しようとすると、施設間の通信手段を確保するとともに、集中管理している制御装置のプログラムも変更する必要があり、設備構成変更に手間がかかる。
【0157】
[他の適用例1]
本実施の形態の複合発電システム100に含まれる施設101Xは、すべて住宅として構成されてもよいし、住宅以外の施設が含まれていてもよい。例えば、複数の住宅に加えて、施設101Xは、体育館等、災害発生時には避難所として利用される公共施設を含んでいてもよい。
【0158】
例えば、公共施設には、太陽光発電施設および/またはディーゼル発電設備等の非常用発電設備が含まれ得る。これらの発電設備は、比較的大容量(例えば数100kW)の発電設備として構成される。このような構成の場合、従来の構成では商用系統が正常動作している際、太陽光発電施設による発電電力は公共施設内の負荷に給電され、余剰分を商用系統に供給(売電)することができるが、商用系統が災害等により停電した際は、当該余剰分を処理することができず、太陽光発電施設における発電を停止させる必要が生じる。そのため、停電時においては当該公共施設内の負荷の全量を非常用発電設備による発電電力によって賄うこととなり、太陽光発電施設があるにもかかわらずその発電電力が利用できない。この結果、非常用発電設備を停電中常時運転しておくことが必要となる。災害等の停電時においては、当該災害等の影響により発電に要する備蓄燃料が補充できない状況が生じ得る。この場合、燃料が枯渇し、非常用発電設備が運転できなくなるおそれがある。
【0159】
これに対し、本実施の形態における複合発電システム100では、商用系統106の停電時において、公共施設と住宅等の他の施設とで自立電源系統を構築することができる。本実施の形態によれば、自立電源系統の電圧および周波数は当該他の施設に設けられた蓄電設備によって維持される。一方、公共施設における太陽光発電施設による発電電力の余剰分は住宅等の他の施設に融通される。また、公共施設における非常用発電設備は、自立電源系統において電力供給能力が不足していると判断されるときのみ運転すればよく、非常用発電設備のための備蓄燃料の消費を極力低減することが可能となる。
【0160】
さらに、例えば、停電を伴う災害が発生し、近隣住民が避難所として上記公共施設に避難している場合、住宅等の他の施設の消費電力を制限することで、避難所として使用されている公共施設への電力供給を効率よく行うことも可能となる。また、計画停電等、公共施設が避難所として使用されていない停電の場合、公共施設の負荷を制限し、公共施設の太陽光発電施設による発電電力および非常用発電設備による発電電力を他の施設に供給することも可能となる。したがって、複合発電システム100を、公共施設が同システム内に含まれるように構成することにより、停電の状況に応じて、公共施設における発電設備の有効活用が可能となる。
【0161】
[他の適用例2]
また、本実施の形態の複合発電システム100は、離島等においても適用可能である。離島等においては、複合発電システム100が広域の商用系統106に接続される代わりに、小規模な商用系統に接続される。このような小規模商用系統の場合、発電のための燃料費が高く、発電コストが高くなる傾向がある。このため、このようなケースでは、太陽光等の自然エネルギーを利用した発電施設を導入したいという要求がある。しかしながら、従来の構成では、小規模商用系統の需給調整能力が低くなりがちで、自然エネルギーを利用した発電施設を大規模に導入した場合、当該発電施設の発電電力の変化によって小規模商用系統の電圧、周波数が変動し、適切な電源品質を維持できなくなるおそれがある。
【0162】
これに対し、本実施の形態における複合発電システム100では、蓄電設備103が原動機発電機と同等の垂下特性を有するようになるため、小規模商用系統の需給調整能力を補強する効果が得られる。また、模擬的な慣性モーメントおよび内部インピーダンスを有することから、小規模商用系統の安定性を強化する効果が得られる。また、各施設に設置されている燃料電池等の発電設備104は自身の負荷電力に追従して発電電力を調整するため、電源系統113全体に与える負荷変動を低減させる効果が期待される。さらに、電源系統113側で発電電力が不足した場合、電力を小規模商用系統に融通することもできる。したがって、離島等の小規模商用系統の需給調整能力と系統安定性とが高まり、自然エネルギーを利用した発電設備の導入が容易になる。さらに、小規模商用系統は過剰な発電設備を運転する必要がなくなり、発電コストを低減することができる。
【0163】
[シミュレーション]
以下、本発明の複合発電システムにより複数の施設の間で負荷の分担および電力の融通が好適に行われることをシミュレーションにより示す。
図12Aおよび
図12Bは、本発明の一実施の形態におけるシミュレーション結果を示すグラフである。
図12Aは各施設における各電力値の時間的変化を示すグラフであり、
図12Bは電源系統113の周波数変化を示すグラフである。
【0164】
シミュレーションにおいては、電源系統113が
図1における施設101A,101B,101Cの3施設からなっている場合を想定する。太陽光発電施設は接続されておらず、それぞれの施設は蓄電設備103、発電設備104、および負荷設備105を有している。発電設備104としては燃料電池発電設備を想定しており、発電電力には上下限および変化率の制約が課されている。初期状態として、施設101A,101B,101Cはそれぞれ100W,200W,300Wの負荷があり、それらはそれぞれの施設の燃料電池発電設備104が負担している。
【0165】
図12Aおよび
図12Bは、100秒の時点において800Wの負荷が施設101Aの負荷にステップ状に追加された場合のシミュレーション結果を示している。
図12Aにおいて負荷の増加の様子は、実線で示されている。施設101Aにおける負荷の増加後、蓄電設備103の仮想発電機としての働きにより、
図12Bに示すように、周波数は、ステップ状に低下するが、燃料電池発電設備104の出力の変化率の制約により、
図12Aにおいて破線で示される燃料電池発電設備104の出力の増加は緩やかとなる。また、このとき
図12Aにおいて鎖線で示される蓄電設備103の出力は、負荷の増加当初、3つの施設101A〜101Cの蓄電設備103が当該負荷の増加分を等しく分担するように減少(放電)している。
【0166】
周波数の低下に伴い、燃料電池発電設備104の出力は、徐々に増加する。これに伴って電源系統113の周波数は徐々に上昇し、蓄電設備103が分担する電力は減少していく。また、施設101Aにおいて増加した負荷を補うために、施設101Aは、施設101Bおよび施設101Cからの電力を受電するため、
図12Aの点線で示すように受電電力が増大する。このため、施設101Aの燃料電池発電設備104は、受電電力を減少させるように発電量を継続的に増大させていく。一方、施設101Bおよび施設101Cの燃料電池発電設備104は、電源系統113の周波数が元に戻った後は送電している電力を減らす(受電電力が送電側である)ために出力を減少させる。最終的には、施設101Aの燃料電池発電設備104の出力の制約(700W)により、当初の負荷と増加負荷分を合わせた900Wに対して施設101Aは不足分の200Wを受電する状態となる。また、施設101Bおよび施設101Cは、施設101Aの不足分200Wを100Wずつ分担する状態で落ち着く。
【0167】
このように、本発明によると施設の負荷の変動分に対しては、どの施設で変動があったかという情報を用いることなく、それぞれの施設101Xの受電電力および電源系統113の周波数のみから自立的に好適な負荷分担を実現することができる。なお、上記シミュレーションにおいては、SOCの補償については実施していないが、今回のシミュレーションにおいては、施設101Aの蓄電設備103に対する充電の指令が施設101Bおよび施設101Cの蓄電設備103に対する充電の指令よりも大きくなるため、施設101Aの受電量がシミュレーションの結果よりも増大し、最終的にはそれぞれのSOCがバランスして、平衡状態に達することになる。
【0168】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0169】
例えば、上記実施の形態においては、複合発電システムが適用される電源系統が三相系統である場合について説明したが、これに限られない。例えば、電源系統が単相二線系統または単相三線系統の場合であっても、各種演算の方法が系統の方式に応じて異なることを除いて同様の複合発電システムを構築可能である。