特許第6809761号(P6809761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809761
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】セメント組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20201221BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20201221BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20201221BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20201221BHJP
   C04B 24/04 20060101ALI20201221BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C04B22/08 Z
   C04B24/06 A
   C04B22/10
   C04B24/04
   C04B22/14 A
   C04B22/14 B
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-24799(P2017-24799)
(22)【出願日】2017年2月14日
(65)【公開番号】特開2018-131349(P2018-131349A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋朗
【審査官】 永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/019131(WO,A1)
【文献】 特開2000−264712(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/043568(WO,A1)
【文献】 特開平8−310845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B7/00−32/02
C04B40/00−40/06
C04B103/00−111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セメント、(B)カルシウムアルミネート類、(C)有機酸又はその塩、(D)アルカリ金属炭酸塩、(E)ギ酸又はその塩を含むベース組成物と、
液体急結剤と、を含むセメント組成物。
【請求項2】
前記ベース組成物が(F)石膏類を更に含む、請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
前記(C)有機酸又はその塩が、クエン酸及び酒石酸からなる群から選択される少なくとも一方の有機酸又はその塩である、請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項4】
(A)セメント100質量部に対して、
(B)カルシウムアルミネート類を2〜45質量部、(C)有機酸又はその塩を0.2〜4.5質量部、(D)アルカリ金属炭酸塩を0.2〜10質量部、(E)ギ酸又はその塩を0.05〜4質量部含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセメント組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のベース組成物と、液体急結剤とを、吹付ノズルの先端で混合させる、セメント組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
掘削したトンネル、地下空間等での建設工事においては、掘削露出面に対してベース組成物に粉体急結剤を添加したモルタルを吹付けてライニングし、該露出面の崩落を防止することが広く行われている(例えば、特許文献1)。粉体急結剤としては、カルシウムアルミネートを主成分とし、アルミン酸塩、アルカリ金属炭酸塩等が配合された急結剤が知られている。この粉体急結剤は急結性に優れるものの、一方で粉塵発生量が多いこと、吹付けたモルタルのリバウンド量が多いこと等の課題がある。
【0003】
この問題を解決する方策として、粉体急結剤に代わり液体急結剤が用いる技術が提案されている(例えば、特許文献2、3)。液体急結剤を用いた場合、粉塵やリバウンド量は低減できるものの、急結性、初期強度発現性等は一般的に粉体急結剤に比べて劣る。その改善方法としてベースモルタルにあらかじめカルシウムアルミネート類からなる急結剤を添加する方法が提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−019910号公報
【特許文献2】特表2001−509124号公報
【特許文献3】特開平10−087358号公報
【特許文献4】国際公開第2001/060760号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カルシウムアルミネート類をベースモルタルに添加すると可使時間が短くなる可能性があり、また可使時間を得るために一般的なセメントの遅延剤を使用した場合は、急結剤を添加した際に急結性が著しく低下する可能性がある。可使時間と急結性を両立させるためには、ベースの温度により遅延剤の量を調製することとなり、作業が煩雑となる。
【0006】
本発明は、低温条件下から高温条件下まで一つの配合にて液体急結剤添加前のベース組成物において十分な可使時間を確保した上で、液体急結剤添加後には良好な急結性及び初期強度発現性を示すセメント組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、ベース組成物の可使時間と、セメント組成物の急結性及び初期強度発現性を両立することができる配合を見出した。すなわち、本発明は、例えば以下の[1]〜[5]のセメント組成物及びその製造方法である。
[1](A)セメント、(B)カルシウムアルミネート類、(C)有機酸又はその塩、(D)アルカリ金属炭酸塩、(E)ギ酸又はその塩を含むベース組成物と、液体急結剤と、を含むセメント組成物。
[2]ベース組成物が(F)石膏類を更に含む、[1]に記載のセメント組成物。
[3](C)有機酸又はその塩が、クエン酸及び酒石酸からなる群から選択される少なくとも一方の有機酸又はその塩である、[1]又は[2]に記載のセメント組成物。
[4](A)セメント100質量部に対して、(B)カルシウムアルミネート類を2〜45質量部、(C)有機酸又はその塩を0.2〜4.5質量部、(D)アルカリ金属炭酸塩を0.2〜10質量部、(E)ギ酸又はその塩を0.05〜4質量部含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のセメント組成物。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のベース組成物と、液体急結剤とを、吹付ノズルの先端で混合させる、セメント組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温条件下から高温条件下まで一つの配合にて液体急結剤添加前のベース組成物において十分な可使時間を確保した上で、液体急結剤添加後には良好な急結性及び初期強度発現性を示すセメント組成物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0010】
本実施形態のセメント組成物は、(A)セメント、(B)カルシウムアルミネート類、(C)有機酸又はその塩、(D)アルカリ金属炭酸塩、(E)ギ酸又はその塩を含むベース組成物と、液体急結剤と、を含む。なお、本明細書において、「セメント組成物」とは、ベース組成物に細骨材を配合したモルタル組成物、モルタル組成物に粗骨材を配合したコンクリート組成物等の形態も含みうるものである。
【0011】
(ベース組成物)
(A)セメントは特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ又はシリカ混合剤等を混合した各種混合セメント、焼却灰、汚泥等の廃棄物を原料としたエコセメント等が挙げられる。また、セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0012】
カルシウムアルミネート類としては、カルシウムアルミネート、カルシウムハロアルミネート、カルシウムナトリウムアルミネート、カルシウムサルホアルミネート等が挙げられる。カルシウムアルミネート類としては、性能を損ねない範囲でSiO、Fe、TiO等が固溶又は化合したものも含まれる。これらのカルシウムアルミネート類は、結晶質であってもよく、非晶質であってもよく、結晶質と非晶質が混在したものであってもよい。また、カルシウムアルミネート類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
カルシウムアルミネート類のCaOとAlとのモル比([CaO]/[Al])は、十分な可使時間を得ること及び十分な速硬性を得ることという観点から、0.9〜2.7が好ましく、1.2〜2.7がより好ましい。
カルシウムアルミネート類のブレーン比表面積は特に限定されるものではないが、良好な強度発現性を得ること及び十分な可使時間を得ることという観点から、3000〜8000cm/gが好ましい。
【0013】
カルシウムアルミネート類の含有量は、液体急結剤の添加後により速やかに硬化させるとともに、より良好な強度発現性を得るという観点から、セメント100質量部に対し、2〜45質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましく、3〜15質量部が更に好ましく、4〜7質量部が特に好ましい。
【0014】
(C)有機酸又はその塩は特に限定されるものではなく、通常有機酸系の遅延剤として用いられるものであればよい。有機酸又はその塩としては、例えば、グリコール酸、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、グルクロン酸、ヘプトン酸、リンゴ酸等のオキシカルボン酸類、ピルビン酸、ケトグルタル酸、ケトコハク酸、ケトマロン酸等のケトカルボン酸類、プロピオン酸、カプロン酸等の脂肪酸類、シュウ酸、マレイン酸等のジカルボン酸類等が挙げられる。有機酸又はその塩としては、少ない量でも可使時間が確保しやすく、強度発現性に更に優れるという観点から、オキシカルボン酸類が好ましく、中でもクエン酸、酒石酸、又はその塩がより好ましい。有機酸又はその塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。なお、本明細書において、(C)有機酸又はその塩としてはギ酸又はその塩は含まれない。
【0015】
有機酸又はその塩の含有量は、より良好な可使時間及び急硬性を確保するという観点から、セメント100質量部に対し、0.2〜4.5質量部が好ましく、0.2〜2質量部がより好ましく、0.3〜1.5質量部が更に好ましい。
【0016】
(D)アルカリ金属炭酸塩は、アルカリ金属の炭酸塩及び炭酸水素塩を含む。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが挙げられる。これらの中でもリチウム、ナトリウム及びカリウムが好ましい。アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0017】
アルカリ金属炭酸塩の含有量は、より良好な可使時間を確保し、硬化後においてより優れた初期強度発現性が得られるという観点から、セメント100質量部に対し、0.2〜10質量部が好ましく、0.3〜5質量部がより好ましく、0.3〜2質量部が更に好ましく、0.5〜2質量部が特に好ましい。
【0018】
(E)ギ酸又はその塩としては、例えば、ギ酸、ギ酸カルシウム、ギ酸アンモニウム、ギ酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、汎用な粉体であるとともに、カルシウム塩であることからアルカリ骨材反応に悪影響を与えにくく、カルシウムアルミネート類及びセメントの水和反応に必要なカルシウムイオンを更に供給するという観点から、ギ酸カルシウムが好ましい。ギ酸又はその塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0019】
ギ酸又はその塩の含有量は、より良好な可使時間及び急結性を確保し、硬化後においてより優れた初期強度発現性が得られるという観点から、セメント100質量部に対し、0.05〜4質量部が好ましく、0.1〜2質量部がより好ましく、0.1〜1質量部が更に好ましく、0.3〜1質量部が特に好ましい。
【0020】
本実施形態に係るベース組成物は、更に(F)石膏類を含んでいてもよい。石膏類としては、例えば、無水石膏、二水石膏、半水石膏等が挙げられる。石膏類としては、中でも無水石膏が好ましい。
【0021】
石膏類の含有量は、硬化後においてより優れた初期強度発現性が得られるという観点から、セメント100質量部に対し、2〜45質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましく、3〜15質量部が更に好ましく、4〜7質量部が特に好ましい。
【0022】
本実施形態に係るベース組成物は、更に減水剤を含んでいてもよい。減水剤は特に限定されるものではなく、市販されている減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等を適宜用いることができる。減水剤としては、より良好な可使時間を確保しやすいという観点から、ポリカルボン酸系の減水剤が好ましい。減水剤の含有量は、セメント100質量部に対し、固形分濃度で0.05〜2質量部が好ましく、0.05〜1質量部がより好ましく、0.06〜0.5質量部が更に好ましい。
【0023】
本実施形態に係るベース組成物は、上記構成成分に加えて、本発明の効果を喪失させない範囲でその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、増粘剤、膨張材、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、炭酸カルシウム微粉末(石灰石微粉末)、収縮低減剤、顔料、消泡剤、発泡剤、繊維、シリカフューム、ポリマー等が挙げられる。その他の成分は、それぞれ一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0024】
本実施形態に係るベース組成物は、骨材を使用してモルタルやコンクリートとして調製することもできる。骨材は、特に限定されるものではなく、通常のモルタル、コンクリート等の製造に使用される細骨材及び粗骨材をいずれも使用することができる。細骨材及び粗骨材としては、例えば川砂、海砂、山砂、砕砂、人工細骨材、スラグ細骨材、再生細骨材、珪砂、川砂利、陸砂利、砕石、人工粗骨材、スラグ粗骨材、再生粗骨材等が挙げられる。
【0025】
骨材の含有量は、セメント100質量部に対し、50〜500質量部が好ましく、70〜450質量部がより好ましく、90〜400質量部が更に好ましい。
【0026】
本実施形態に係るベース組成物において、水セメント比(セメント総質量に対する水の総質量の質量比(質量%):W/C)は、強度発現性に一層優れるという観点から、15〜120質量%が好ましく、20〜100質量%がより好ましく、25〜90質量%が更に好ましい。
【0027】
本実施形態に係るベース組成物は、上記の各成分を混合して製造される。混合方法は特に制限されるものではなく、例えば、傾動ミキサ、パン型ミキサ、2軸ミキサ、グラウトミキサ、ホバートミキサ、オムニミキサ等の汎用的なミキサを用いることができる。
【0028】
(液体急結剤)
液体急結剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、アルミン酸塩、ケイ酸ナトリウム等を有効成分とする液体急結剤が挙げられる。硫酸アルミニウムを有効成分とする液体急結剤は、通常、粉末状の硫酸アルミニウム(又はその水和物)を水と混ぜ、水溶液として調製されるが、特にこれに限定されるものではない。硫酸アルミニウムを有効成分とする液体急結剤は、可溶性アルミニウム成分と硫酸等の硫黄源を調整して、硫酸アルミニウムを水溶液として調製したものと同じ効果をもたらすものであってもかまわない。硫酸アルミニウムの濃度は、液体急結剤全量に対して、7質量%以上が好ましく、15〜65質量%がより好ましく、30〜60質量%が更に好ましい。また、本発明の効果が損なわれない程度において、更に他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、沈降性シリカ、アルカノールアミン、フッ化物、硫酸マグネシウム、シュウ酸等が挙げられる。
【0029】
液体急結剤の含有量は、液体急結剤に含まれる有効成分の割合によって適宜設定することができる。例えば、硫酸アルミニウムを有効成分とする液体急結剤の含有量は、セメント100質量部に対して、硫酸アルミニウムの固形分換算で0.3〜12.0質量部が好ましく、1.0〜9.0質量部がより好ましく、2.5〜7.0質量部が更に好ましい。
【0030】
本実施形態のセメント組成物は、上記ベース組成物と上記液体急結剤とを混合することで製造することができる。混合方法は特に限定されず、使用目的に応じて適宜設定することができる。ただし、ベース組成物と液体急結剤とを混合すると、セメント組成物が急速に硬化するため、使用直前に混合することが好ましい。例えばセメント組成物を吹付用に用いる場合、製造方法としては、ベース組成物及び液体急結剤をそれぞれ別のホース等で送り、吹付ノズルの先端で混合させることが好ましい。この際、吹付装置或いは吹付施工方法については、一般的に使用されている液体急結剤を使用する吹付システムを利用することができる。
【0031】
本実施形態のセメント組成物は、液体急結剤添加前のベース組成物において十分な可使時間を確保した上で、液体急結剤添加後には良好な急結性及び初期強度発現性を示すことができる。また、ベース組成物は30℃付近の条件下でも十分な可使時間を示し、これに液体急結剤を添加したセメント組成物は10℃付近の条件下でも急結性に優れているため、本実施形態のセメント組成物は、低温環境下から高温環境下までの様々な環境面で利用することができる。
このようなセメント組成物は、例えば、トンネルの壁面等に対する吹付用として用いることもできる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
<材料>
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)社製、密度3.16g/cm
エコセメント(太平洋セメント(株)社製、密度3.15g/cm
骨材(栃木県産3号珪砂)
カルシウムアルミネート([CaO]/[Al]=2.0、ガラス化率80%、ブレーン比表面積5000cm/g)
クエン酸試薬(関東化学社製)
酒石酸試薬(関東化学社製)
炭酸ナトリウム試薬(関東化学社製)
ギ酸カルシウム試薬(関東化学社製)
無水石膏(旭硝子社製)
高性能減水剤(ポリカルボン酸系、市販品)
硫酸アルミニウム系液体急結剤((固形分濃度:55%)、市販品)
【0034】
<試験方法>
(可使時間)
ベース組成物における各成分は表1に示す割合で配合した。ベース組成物は、水に対し、セメント、骨材、各種混和材を添加し、ホバートミキサで3分間練り混ぜることで製造した。ベース組成物の可使時間は、ベース組成物が硬化するまでの始発時間で評価した。始発時間は、油圧式のプロクター試験値を用い、貫入抵抗値が3.5N/mmとなる時間とした。始発時間の測定は30℃の環境下で行った。
【0035】
(急結性評価)
各ベース組成物に対し、液体急結剤を添加し、ホバートミキサで撹拌した後、プロクター貫入抵抗値を測定した。液体急結剤の添加量は、実施例1、2、4〜7、比較例1〜3では、セメント100質量部に対し、固形分換算で2.75質量部となるように調整し、実施例3では、固形分換算で6.88質量部となるように調整した。測定は油圧式のプロクター試験機を用いて行った。試験は液体急結剤添加直後を0秒とし、急結剤を添加してからホバートミキサで5秒間撹拌し型枠へ充填し、30秒後及び6分後の各材齢で行った。急結性の評価は10℃の環境下で行った。
【0036】
(圧縮強度の試験)
「急硬性の評価」において、6分後のプロクター貫入抵抗値が20N/mm以上を示したセメント組成物の硬化体を用いて圧縮強度試験を行った。試験は、ベース組成物に液体急結剤を混合し、4×4×16cmの型枠に成型した試験体の材齢3時間での圧縮強度を測定した。試験は、JIS R 5201:2015に準拠して実施した。試験及び養生はすべて20℃の環境下で行い、湿空箱内で養生した。
【0037】
<結果>
試験結果を表2に示す。表2の結果から、実施例のセメント組成物であれば、急結剤添加前においては30℃と高い温度条件下でも30分以上の可使時間を確保することができ、且つ、急結剤添加後においては10℃と低い温度条件下でも良好な急結性を示した。更に、実施例のセメント組成物の硬化体は材齢3時間において高い圧縮強度も示した。一方、有機酸を含まない比較例1では、急結剤添加前のベース組成物を調整する時点で硬化が始まってしまい、その後の測定を行うことができなかった。ギ酸カルシウムを含まない比較例2では、ベース組成物の可使時間がやや短く、その後急結剤を添加しても急結性が得られなかった。炭酸ナトリウムを含まない比較例3では、急結剤添加前においては30分以上の可使時間を確保することができるものの、急結剤添加後の硬化体において圧縮強度が不十分であった。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】