(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6809768
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】アンケートデータの管理・分析システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20201221BHJP
【FI】
G06Q30/02 312
G06Q30/02 320
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-230710(P2019-230710)
(22)【出願日】2019年12月20日
【審査請求日】2019年12月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519095256
【氏名又は名称】株式会社レシカ
(74)【代理人】
【識別番号】100139033
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 賢治
(72)【発明者】
【氏名】戴 有造
【審査官】
田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2019−176432(JP,A)
【文献】
特開2014−164585(JP,A)
【文献】
国際公開第2018/043599(WO,A1)
【文献】
特開2016−143356(JP,A)
【文献】
DR.-ING. CHRISTIAN LANGE,あなたの個人データの価値はおいくら? HOW MUCH IS YOUR DATA WORTH?,ICO CROWD JAPAN,ICO CROWD合同会社,2019年 4月19日,第5号,p.24〜25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回答したユーザーが回答データの所有権を有するアンケート回答データの管理・分析システムであって、
前記ユーザーが、インターネット回線を通じてアンケート票を受信し、かつ回答内容を送信するためのユーザー端末と、
前記アンケート票に回答した内容がインターネット回線を介して前記ユーザー端末から送信され、当該回答した内容を公開鍵暗号方式で暗号化した回答データとして蓄積するサーバーと、
前記回答データのハッシュ値を記録するブロックチェーン層と、
前記サーバーに記録され前記回答データを分析及び解析するアプリケーションと、を含み、
前記ユーザー端末と前記サーバーは前記ブロックチェーン層に接続されており、
前記ユーザーが前記回答データの公開を承諾した場合、前記ユーザー端末は前記サーバーから暗号化された前記回答データをダウンロードし、
前記ユーザー端末は管理している秘密鍵で前記回答データを復号し、さらに復元した回答データを前記ブロックチェーン層に記録された前記アプリケーションの公開鍵を用いて暗号化して前記アプリケーションに送信し、
前記アプリケーションは、前記ユーザー端末から送信される暗号化された回答データを秘密鍵で復号し、前記ブロックチェーン層に記録されたハッシュ値が前記アプリケーションで計算したハッシュ値と一致した場合、当該復号された回答データを一時的に保存し、当該回答データに対して目的に応じたデータ処理を実行し、当該データ処理が終了した後に前記ユーザーから送信された暗号化された回答データと前記復号した回答データを削除する、
ことを特徴とするアンケートデータの管理・分析システム。
【請求項2】
前記アプリケーションは、前記ユーザー端末から送信される暗号化された回答データの前記ハッシュ値が、前記アプリケーションで計算したハッシュ値と一致した場合、前記ユーザー端末に対して、所定のトークン又はポイント或いは仮想通貨からなる報酬を付与する、
ことを特徴とする請求項1に記載のアンケートデータ管理・分析システム。
【請求項3】
前記アプリケーションは、スマートコントラクトによって前記ユーザーとの間で契約を実行する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアンケートデータの管理・分析システム。
【請求項4】
前記サーバーに蓄積されている前記回答データの信頼性について分析するアルゴリズムを更に含む、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアンケートデータの管理・分析システム。
【請求項5】
前記アプリケーションは、目的に応じたデータ処理を実行した後、ダウンロードした全ての前記復号した回答データを削除する、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のアンケートデータの管理・分析システム。
【請求項6】
前記アプリケーションは、新規なアンケート票を作成し、当該新規なアンケート票をインターネット回線を通じて前記ユーザー端末に送信する、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のアンケートデータの管理・分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンケートデータの管理システムに関し、特にユーザーがユーザー端末を用いて回答した回答内容(回答データ)について所有権を有するデータベース型アンケートプラットフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット回線を利用し、モニター(以下、これをユーザーと言う)が保有するスマートフォンやPC等を使ってアンケートを行う仕組みは従来から知られており、代表的な仕組みとしては以下のように構成されている。まず、アンケートを行いたい企業や自治体(アンケートの依頼主)は、実際にアンケート調査を実施する調査会社に依頼し、依頼された調査会社が目的に沿ったアンケート票を作成し、それをユーザーの端末にインターネット回線を介して配信する。
【0003】
端末上でアンケート票を受け取ったユーザーは、端末上で回答を行い、その結果を調査会社に送信する。ユーザーが回答した内容は、調査会社のデータベースに蓄積されるとともに、調査会社はユーザーに対してアンケートへの回答謝礼としてポイント等を付与し、端末に送信する。付与されたポイント等は、現金やギフト券などに交換ができるようになっている。その後、調査会社はアンケートの回答データを集計し、その分析結果を依頼主に提供する。なお通常、ユーザーの個人情報などは、調査会社から依頼主に提供するデータから除外するようになっている。
【0004】
また、ブロックチェーン技術を利用し、アンケート回答者に対しトークンを回答への報酬として付与し、トークンという形で付与した報酬を仮想通貨へ変換できるシステムも構想されている。当該システムにより、金銭的なものをアンケートに回答するインセンティブとして設定することができるようになり、またこれにより報酬を細かく設定することも可能である。
【0005】
しかしながら、上記のブロックチェーン技術を利用したシステムであっても、結局、依頼主が調査会社に依頼し、依頼を受けた調査会社が抱えているターゲットユーザー(モニター)に対してアンケート票を配信して回答してもらい、その結果を依頼主に提供する一連の流れは同じである。
【0006】
こうした従来のシステムでは、回答者であるユーザーの個人情報(性別、年齢、家族構成、住所等)はアンケートを実施する調査会社が保有しているとともに、依頼主が調査会社に依頼するためのコスト(仲介手数料)が必要となることから、回答者に渡される報酬が少なくなってしまう。更に回答者は、他の複数の調査会社から送信されてくる同様の質問、例えば上記個人情報に対して、毎回同じ回答をしなければ
ならず、非常に面倒であった。
【0007】
また依頼主は、回答者の回答時点での回答内容しか把握できず、過去からどのように趣向が変化してきたかという時系列データを取得することができない。
【0008】
更に、依頼主は多くのモニターを抱えている調査会社に依頼する方が良い結果が得られるため、多くのユーザーに使用されているプラットフォームを運営している調査会社に対して依頼することになり、結果としてこうした会社がアンケート市場を寡占する状態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−279972号公報
【特許文献2】特開2019−067119号公報
【特許文献3】特開2015−092335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来のユーザー端末を利用したアンケート調査に係る各種の問題の解決を図り、ユーザーの利便性、依頼主の利便性、アンケート調査市場の活性化を図ることを目的とする。
【0011】
上記した従来技術が有する問題を解決するため、本願発明は、回答したユーザーが回答データの所有権を有するアンケート回答データの管理・分析システムであって、前記ユーザーが、インターネット回線を通じてアンケート票を受信し、かつ回答内容を送信するためのユーザー端末と、前記アンケート票に回答した内容がインターネット回線を介して前記ユーザー端末から送信され、当該回答した内容を
公開鍵暗号方式で暗号化した回答データとして蓄積するサーバーと、前記回答データのハッシュ値を記録するブロックチェーン層と、
前記サーバーに記録され前記回答データを分析及び解析するアプリケーションと、を含み、
前記ユーザー端末と前記サーバーは前記ブロックチェーン層に接続されており、前記ユーザーが前記回答データの公開を承諾した場合、前記ユーザー端末は前記サーバーから暗号化された前記回答データをダウンロードし、前記ユーザー端末は管理している秘密鍵で前記回答データを復号し、さらに復元した回答データを前記ブロックチェーン層に記録された前記アプリケーションの公開鍵を用いて暗号化して前記アプリケーションに送信し、前記アプリケーションは、
前記ユーザー端末から送信される暗号化された回答データを秘密鍵で復号し、前記ブロックチェーン層に記録されたハッシュ値が前記アプリケーションで計算したハッシュ値と一致した場合、当該復号された回答データを一時的に
保存し、当該
回答データに対して目的に応じたデータ処理を実行し、当該データ処理が終了した後に
前記ユーザーから送信された暗号化された回答データと前記復号した回答データを削除する、ことを特徴する。
【発明の効果】
【0012】
上記構成からなる本願発明によれば、アンケートに回答したユーザーの回答データをユーザー個人の所有物とし、ユーザーの公開鍵で暗号化した状態でサーバー内に蓄積し、公開鍵暗号方式を用いて暗号化された回答データのハッシュ値をブロックチェーン上に記録することで秘密に管理し、ユーザーによる利用承諾があった場合にのみ、アプリケーションによって当該回答データを
復元して一時的に保存し、依頼主の目的に応じたデータ処理を実行することができる。
【0013】
また本発明の一実施形態によれば、前記アプリケーションは、
前記ユーザー端末から送信される暗号化された回答データの前記ハッシュ値が、前記アプリケーションで計算したハッシュ値と一致した場合、前記ユーザー端末に対して、所定のトークン又はポイント或いは仮想通貨からなる報酬を付与することで、回答するユーザーのインセンティブを高めることができる。
【0014】
また本発明の他の実施形態によれば、前記アプリケーションは、スマートコントラクトによって前記ユーザーとの間で契約を実行することにより、ユーザーとの間の契約に係る手間とコストを削減できる。
【0015】
また本発明の他の実施形態によれば、前記サーバーに蓄積されている前記回答データの信頼性について分析するアルゴリズムを更に含むことにより、依頼主は、信頼性のあるデータに基づいた結果を得ることができる。
【0016】
また本発明の他の実施形態によれば、前記アプリケーションは、目的に応じたデータ処理を実行した後、
復号した前記回答データを削除することにより、ユーザーが所有する権利を違法に使用できないため、ユーザーの利益を保証することができる。
【0017】
さらに本発明の他の実施形態によれば、前記アプリケーションは、新規なアンケート票を作成し、当該新規なアンケート票をインターネット回線を通じて前記ユーザー端末に送信することにより、分析可能な新たな回答データを蓄積し続けることができ、また過去の回答内容との比較によりユーザーの趣向の変化を時系列として取得することができ、かつ同じ質問に対する回答内容を複数のアンケート会社や依頼者に販売することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本願発明の実施形態に係るシステム全体の概略図
【
図2】本願発明の実施形態に係るユーザーによる回答データを蓄積していく流れを示す図
【
図3】本願発明の実施形態に係るクライアントがユーザーの回答データにアクセスするまでの一連の流れを示す図
【
図4】本願発明の実施形態に係るDMPによる分析結果がクライアントに届くまでの一連の流れを示す図
【
図5】本願発明の実施形態に係るスマートコントラクトを利用する場面の流れの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお以下に説明する実施形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明を当該実施の形態のみに限定するものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0020】
図1は、ユーザー(アンケート対象となるモニター)が回答した内容からなる回答データの所有権を有するデータベース型アンケートプラットフォームの基礎となる全体像の模式図である。
【0021】
図示のとおり、システム全体の構成としては、サーバーに構築されているデータベース層1、本システムを運用するアプリケーション層2、アプリケーション層3、及びユーザー端末4から構成されている。
【0022】
データベース層1では、ユーザーによるアンケートの回答データ(回答内容の情報)が公開鍵暗号方式によって暗号化された状態で蓄積される。暗号化技術の公開鍵暗号方式では、必ず秘密鍵と公開鍵が存在する。秘密鍵はプライベートキーとも呼ばれ、対になる公開鍵(パブリックキー)が存在する。なお、公開鍵暗号で保護されているデータはユーザーによる回答内容であり、質問項目等の書誌データは暗号化されていない。また、ブロックチェーン層3には、暗号化された回答データのハッシュ値が記録されている。本システムを運用するアプリケーション層2は、例えば分散型個人データマーケットプレイスを行う会社(以下、DMPと言う)によって構築・運用され、ユーザーとアンケートの依頼主(以下、クライアント5と言う)とをつなぐ役割を果たすものである。
【0023】
ハッシュ値とは、ハッシュ関数を用いて暗号化された英数字の羅列のことであり、あるデータから算出されるハッシュ値は必ず同一のものになり、データ内容が少しでも異なると全く違うハッシュ値が算出されるという特徴を有している。これにより、データが改竄されていれば、異なるハッシュ値が算出されるため、回答データに信頼性を持たせることができる。
【0024】
上記のとおり、アンケートの回答データは公開鍵暗号方式によって暗号化され、公開鍵で暗号化された状態でデータベース層1に蓄積されていく。秘密鍵はユーザーが保管しており、ユーザーが許可しない限り、秘密鍵で情報を復元化しアンケートの回答データを確認することはできないようになっている。また回答データをデータベース層1に蓄積する際に何らかのタグをつけておけば、アンケートに対する回答者数、属性(性別・年齢層など)、実施時期などを閲覧することができる。
【0025】
上記にように、ユーザーが自らデータベース層1上の公開鍵に対応する秘密鍵を管理していることから、ユーザーが回答データの所有権を持つことを可能にし、アンケート実施企業がユーザーの回答データを保有する従来の方法に比べ、高い安全性とプライバシーを保護することができる。
【0026】
図2は、ユーザーによる回答データを蓄積していく流れを示している。暗号化された回答データがサーバー内のデータベース層1に蓄積され、当該回答データをハッシュ化したものを、
ブロックチェーン層3上に記録する。その際、同じくハッシュ化したユーザー個人のID情報と紐づけることにより、回答データ管理の構造を簡易化することができるとともに、回答データを
ブロックチェーン層3上に記録することにより、回答データの改竄をより困難にすることができる。
【0027】
図3は、クライアント5がユーザーの回答データにアクセスするまでの一連の流れを示している。まず、ユーザーの嗜好等を知りたいクライアント5企業は、既に登録されている回答データをDMPが運用するアプリケーション層2を介して検索・閲覧し、所望の回答データがあるかを調査する。
【0028】
このとき、前述のとおりユーザーによる回答内容は公開鍵暗号で保護されているため回答データの全内容は閲覧することができないが、質問項目については閲覧可能であることから、クライアント5は、必要なデータが有るか無いかについて判断する。
【0029】
クライアント5が、情報として欲しい質問項目があった場合、DMPに当該質問項目に関する回答データの収集と分析を依頼する。依頼を受けたDMPは、アプリケーション層2を介してユーザー端末4に対し回答データへのアクセス権申請を行う。ユーザーが申請を確認し、閲覧を許可した際に得られるトークン等の報酬インセンティブに満足する場合、ユーザーはユーザー端末4上から閲覧を許可する。当該許可が得られた場合、DMPからユーザー端末4に対し、報酬が付与される。なお、当該報酬の原資は、クライアント5からDMPに依頼した金額の一部である。
【0030】
図4は、DMPによる分析結果がクライアント5に届くまでの、一連の流れを示している。上記したとおり、ユーザーによる回答データは公開鍵暗号方式を用いてデータベース層1上に蓄積されている。そして、クライアント5が提示した報酬に満足し、回答内容の公開を承諾した場合、データベース層1からユーザーに対して暗号化された回答データが送信され、ユーザーが管理している秘密鍵で復元化する。その後、回答データをさらにDMPの公開鍵を用いて暗号化し、アプリケーション層2に送信する。
【0031】
アプリケーション層2は、管理している秘密鍵で回答データを復元化させ元データを得る。当該元データからクライアント5が必要としている目的物を分析する。元データはアプリケーション層2より先には送信されず、分析結果のデータのみをクライアント5に送信する。なお、クライアント5の秘密を保護するため、公開鍵を用いて暗号化して送信してもよい。この場合、暗号化されたデータを受け取ったクライアント5は、自身の管理している秘密鍵を用いて、分析結果のデータを得る。また、分析結果のデータ送信が完了したら、アプリケーション層2は、収集した回答データを削除するようにプログラムを組むことで、ユーザーの回答情報保護が保障される。
【0032】
図5は、本発明において、スマートコントラクト6を利用する場面の流れの一例を示している。多数の回答者を集める際、ターゲット層に対してフォロワーを抱えているインフルエンサーや機関に、アフィリエイトを依頼することが考えられる。そこで、アプリケーション層2を介して、クライアント5がアフィリエイト側に集客を依頼し、そこで拡散された情報を通してアンケートに参加してきた人数を把握し、集客数に応じて支払額が決定されるように、スマートコントラクト6上でプログラムを組む。
【0033】
これにより、宣伝効果が不確実なものに対して推測で報酬額を決定するのではなく、出た効果に応じた正確な支払いをすることができる。またスマートコントラクト6の技術によって、クライアント5が必要としているアンケートデータを入手するまでの手続きの一部を自動化することで、ユーザーのデータ所有権を確立しながら、より利便性の高いアンケートプラットフォームを構築することが可能になる。
【0034】
また、上記した構成によれば、インフルエンサーとして小さな影響力しかない場合でも、その集合体として大きなデータを得られることが可能となるため、予め多くのモニターを抱えているプラットフォームでなくても多くのモニターを集めることができ、アンケート調査市場がより競争的になり、活性化させることができる。すなわち、多くのモニターを抱えていない小さいプラットフォームであっても、本システムを利用することで、自ら抱えるメンバーのマネタイズができるようになる。
【0035】
なお、スマートコントラクトとは、契約内容をプログラムにより自動的に実行することを指す。管理者が契約を事前に定義しておくと、契約条件の確認と、当該条件を満たした際の履行が自動的に実行されるものである。ブロックチェーン層3上でスマートコントラクト6を実行することで、契約が改竄される危険性が極めて少なく、かつ人を介さないことで人為的な失敗を防止することができる。また、当該技術を用いて契約の取引過程を自動化することで、仲介者を不要とし人件費を抑えることができる。一方、スマートコントラクト6での契約において、明確でない内容や細かい解釈が必要とされるものは定義づけが困難であり、従来の契約をそのままこのプログラムに当てはめることは困難であるが、使用する契約内容を簡潔なものとすることで十分に対応可能である。
【0036】
また必要に応じて、データベース層1に蓄積されている回答データが、真面目に回答されたものかどうかを確かめるために、別のアルゴリズムにより、ユーザーの回答の整合性をランキングすることもできる。このランキングによって回答内容の質(回答者の質)を表現でき、回答内容が
真面目に回答したものであるかどうかを評価することができる。
【0037】
上記構成からなる本発明の一実施形態によれば、従来のアンケート調査会社による実施方法とは異なり、ユーザーの回答データをアンケート調査会社が保有するのではなくユーザー自身が保有することにより、プライバシーの保護を確立でき、またデータベース層1に回答内容を蓄積しておくことで、同様の質問に対する回答の二度手間を省き、パーソナライズ化された時系列で分析可能な基本データや趣向データの収集が可能となる。またスマートコントラクト6の利用によって、仲介機関に支払うコストを減少させることができ、契約の実行までを自動化することによるコストの削減が可能となる。
【0038】
さらに、データベース層1には暗号化された回答データが蓄積されており、当該データを復元化するための秘密鍵は、ユーザー自身が保有する分散的な管理方法を採用しているため、悪意ある外部機関による回答データの盗難危険性を低くすることができる。
【0039】
例えば、第三者が回答データを盗用しようとする場合、その方法は以下の二つが考えられる。まず一つは、ユーザーが保有している秘密鍵データを盗み、それぞれに対応する暗号化された情報をデータベース層1上で探し出し、一つ一つ復元化していくという方法である。もう一つは、DMPが、分析データを作成している間に攻撃を受け、元データを盗まれるという場合である。しかし、個人データは大量に存在して初めて意味を持つものであるため、個別データに対して攻撃を仕掛けても意味は無い。また、従来のように元データを全て所持しているデータベース層1に比べ、分析データを作成しているわずかな時間にのみ元データを保存する本システムの方が安全性は極めて高い。これによりデータ管理の安全性と、管理にかかるコストを従来のクライアントサーバーモデルと比較すると安価にすることができる。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、暗号化技術の公開鍵暗号方式を用いて、ユーザーが自らの回答データの所有権を有する環境としているため、高いレベルでのプライバシー保護を可能とし、現行のGDPRなど個人情報保護強化の要請、また必要以上に個人情報を保持することに対する規制にとって、非常に効果的である。
【0041】
また本発明の一実施形態によれば、過去に実施したアンケートの質問及び回答のデータをデータベース層1に蓄積しておく(過去の回答データも保存されており、新しい回答データも追加蓄積される)ことにより、同一の質問に対する二重回答を省くことができ、回答者の回答負担を軽減でき、一人当たりの回答数を増加させ、結果として、アンケート市場全体で、従来よりもより多くのアンケート回答情報を得ることができる。
【0042】
さらに本発明の一実施形態によれば、回答者の回答データを時系列的に観測することを可能とし、一時点のみのデータを収集していた従来の購買データやクラスター分析ではできなかった、その人の嗜好が時系列的にどのように変化したのか、またしていないのかを観測することができる。実用例としては、デジタルマーケティングの戦略立案において、今までは消費者を群として捉えることで行動導線を捉えていたが、ユーザーごとの嗜好を追えるようになることで、完全にパーソナライズ化したマーケティング戦略を打つことができる。
【0043】
さらに本発明の一実施形態によれば、クライアント5は、これまで仲介機関であるアンケート調査会社や大量のモニターを抱えている機関に多くの仲介料を支払っていたが、スマートコントラクト6を用いて契約を自動化することにより、小さいアフィリエイターが持つユーザーを有効に利用し、共通されたアンケートの分散型の仕組みを作ることにより、仲介機関の規模の制限と作業量を大幅に削減し、全体のコストを下げることができる。また回答データの二次利用もコスト削減に貢献でき、アンケート回答者に回すリソースが増加し、回答者へのインセンティブが充実することにより、業界全体でより多くのデータが収集できるようになる。
【0044】
さらに本発明の一実施形態によれば、従来のシステムでは、調査会社が抱えているモニターの母数のみしか分からず、実際に得られる回答数は実施するまで未知数であったが、クライアント5は、必要としているアンケートデータを検索し、予めその数量を確認することができ、アンケートを実施することによる効果を、ある程度事前に把握することができる。
【0045】
さらに本発明の一実施形態によれば、ユーザーは自身に関するあらゆるデータ(購買データ・GPSデータ・検索履歴・診断データなど)を登録しておくことで、クライアント5から申請があれば、それら全てに自ら価値を付けることができるようになることから、個人情報を管理する手法としても最適である。個人的に出したくないデータは登録をしない選択も可能である。また、ユーザーに回答データの所有権があるため、登録はしたが当該企業には情報提供をしないなど、提供先はユーザーで自由に選択することができる。
【0046】
従来のシステムでは、クライアント5とユーザーであるアンケート回答者は毎回一時点のみの関係であったため、回答者が本当に真面目に回答したかどうかを確認するすべがなく、適当で無意味な回答をされてしまう危険性があったが、本発明の一実施形態によれば、過去の回答結果との対比により真面目に回答したアンケートバリューの高い人の回答データみを抽出することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1 データベース層
2 アプリケーション層
3 ブロックチェーン層
4 ユーザー端末
5 クライアント
6 スマートコントラクト
【要約】 (修正有)
【課題】回答したユーザーが回答データの所有権を有するアンケートデータの管理・分析システムを提供する。
【解決手段】アンケートデータの管理システムにおいて、ユーザーが、インターネット回線を通じてアンケート票を受信し、かつ、回答内容を送信するためのユーザー端末4と、アンケート票に回答した内容がインターネット回線を介してユーザー端末4から送信され、回答した内容をユーザーの暗号鍵で暗号化した回答データとして蓄積するサーバーと、回答データのハッシュ値を記録するブロックチェーン層3と、回答データを分析及び解析するアプリケーション2とを含む。アプリケーション2は、ユーザーからの利用許可を受けた場合にのみ暗号鍵を解いて回答データを回答データベースに一時的にダウンロードし、目的に応じたデータ処理を実行した後、回答データを削除する。
【選択図】
図1