特許第6809770号(P6809770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6809770マルチアームロボットによる塗装プロセスの同期
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809770
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】マルチアームロボットによる塗装プロセスの同期
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   B25J13/00 A
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-248243(P2013-248243)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-108515(P2014-108515A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2016年11月28日
【審判番号】不服2019-2399(P2019-2399/J1)
【審判請求日】2019年2月21日
(31)【優先権主張番号】13/689,890
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514079114
【氏名又は名称】ファナック アメリカ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】ランディ エー.グレイサ
(72)【発明者】
【氏名】ディ シャオ
(72)【発明者】
【氏名】サイ−カイ チェン
【合議体】
【審判長】 刈間 宏信
【審判官】 見目 省二
【審判官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−515305(JP,A)
【文献】 特開平7−156085(JP,A)
【文献】 特開平8−229493(JP,A)
【文献】 特開平4−322986(JP,A)
【文献】 特開平6−262564(JP,A)
【文献】 特開平9−1484(JP,A)
【文献】 特開平10−128684(JP,A)
【文献】 米国特許第5724489(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアに沿って移動する部材を処理するために、フレームレールに取付けられた少なくとも2つの塗装ロボットを同期させる方法であって、
コンピュータプログラム形式で書かれたマスターシーケンスを、少なくとも前記塗装ロボットの各々のために生成するステップを含み、前記マスターシーケンスは、前記塗装ロボットによって実行されるべき動作を規定した一連のプログラムを含んでおり前記マスターシーケンスは予め定められた複数の同期ポイントのそれぞれにおいて、対応する前記塗装ロボットおよび前記コンベアの位置データを含み、前記マスターシーケンスを生成するときに、前記フレームレールの所定位置に対する、前記コンベアの上の前記部材のオフセットを、記録オフセットとして、前記複数の同期ポイント毎に記録しており、
さらに、
前記対応する塗装ロボットを移動させるために、前記対応する塗装ロボットに接続された制御部にて前記マスターシーケンスを実行し、前記対応する塗装ロボットおよび前記コンベアの現在の経路における、前記フレームレールの所定位置に対する、前記コンベア上の前記部材の実際のオフセットと、前記マスターシーケンスを生成したときに記録した前記記録オフセットとを比較するステップと、
前記実際のオフセットが前記記録オフセットに対して到達しない場合に、前記制御部は、前記実際のオフセットが第一許容値内に達するまで、前記対応する塗装ロボットを待機させ、その後に、該対応する塗装ロボットの動作を再開させると共に、前記実際のオフセットが前記記録オフセットに対して先行している場合に、前記制御部は、前記実際のオフセットが第二許容値内に達するまで前記コンベアを停止させ、その後に、該コンベアの動作を再開させるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
スプレーパターンが互いに重なり合う位置がないように、前記塗装ロボットを、衝突させることなく動作させるステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塗布命令が無効とされた前記塗装ロボットと、前記コンベアとでシミュレーションされた製造ジョブを実行することによって、前記マスターシーケンスを生成するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マスターシーケンスに含まれる複数のプログラムのうちの一つのプログラムにおける動作命令の変化に応じて前記マスターシーケンスを再生成するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マスターシーケンスに含まれるコンピュータプログラム命令は、前記同期ポイントを特定する、予め定められた同期命令を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの開放用ロボットに前記予め定められた同期命令を提供し、該開放用ロボットの移動と前記コンベアの移動との間で同期させるステップを備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記マスターシーケンスの実行の間に、前記制御部は、前記フレームレールの所定位置に対する、前記コンベアの上の前記部材の前記実際のオフセットを確認することによって、前記予め定められた同期命令に応答し、前記実際のオフセットが予め定められた許容値内にある場合に、前記対応する塗装ロボットと前記コンベアの動作を継続する、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動するコンベア上の物体を塗装する複数のロボットの同期に関し、特に、ワークセルで塗装するための複数のロボットアームの動作を同期することに関する。ワークセルにおいて、塗装されるべき物体は、移動するコンベアに沿って搬送されており、該コンベアには、複数且つランダムのコンベア停止イベントおよびコンベア再始動イベントが存在する。
【背景技術】
【0002】
現行の典型的な塗装システムは、明示的に特定されたコンベアの位置または配置の命令文を含む待機/放出コマンドを用いる。このことは、ロボットが同期して退去するのを補助することに適用可能である。命令を如何に配置して管理するか決定することの負担は、エンドユーザにあり、これが、専門的な知識を要する大変複雑な作業となっている。従来技術の他の例は、干渉領域を用いるシステム、または、アームが互いに近接して移動しないようにロボットの間におけるマスター/スレーブ関係(例えば、協調動作(Coordinated motion))を用いるシステムを備える。他の例として、「コンベア同期」アルゴリズムが用いられる。このアルゴリズムは、コンベア停止および始動イベントと同時にロボットを明確に停止および始動し、および/または、コンベアの速度変化に正比例してロボット速度を変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0166703号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に係るシステムは、以下に示す欠点を有する。
(a)明示的なコンベア位置の命令文、または待機/放出の命令文は、ロボットが明示的に定義されたコンベア位置の間で停止したような場合に対処できない。
(b)協調動作、および他のマスター/スレーブ型のアルゴリズムは、より複雑なプログラミングを伴い、且つ、コンベアが外部機器によって制御されているような場合に、実行不能となり得る。
(c)コンベア同期は、TCP速度が物体に対して常に適切に維持されない可能性がある点において、塗装品質を低下させ得る。また、トリガーポイント(すなわち、塗装ガンが物体に対してオンまたはオフされる)を、容易に定義することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る塗装ロボット同期方法は、以下に示すように、従来技術の欠点を克服するものである。
(a)ロボットアームは、塗装ストロークの定義に基づいて、互いに自動的に同期し、且つ、コンベアと自動的に同期する。この塗装ストロークの定義は、エンドユーザが既に理解しプログラムしているものである。
(b)ロボット動作またはコンベア移動の制御に係る追加のプログラミングを必要としない。
(c)ロボットアームは、物体に対して適切なTCP速度を維持し得る。また、ロボットアームは、コンベアが停止または減速したときに、予め指定された塗装ガンのオフ配置へ、塗装ストロークを継続することができる。
【0006】
本発明に係る方法は、コンベアに沿って移動する物体を処理する、複数のロボットマニピュレータによる塗装作業を同期する方法である。この方法は、
a.衝突のない最適な経路が記録され、ロボットマニピュレータの位置とコンベアの位置をともに含むマスターシーケンスを記録するステップを備え、
b.マスターシーケンスは、予め定められた同期ポイントにおいて、ロボットマニピュレータの位置とコンベアの位置を含み、
c.ランタイムソフトウェアは、現在の製造経路の動作とマスターシーケンスとを比較し、
d.動作計画に影響するランタイムソフトウェアは、マスターシーケンスと現在の経路との間の比較に基づいており、
e.ランタイムソフトウェアは、同期を容易とするために、必要に応じて、コンベアの停止を要求する。
【0007】
本発明に係る、領域内のロボットアームの間の同期は、以下のステップを通して達成される。
(a)ロボットプログラマーは、所望により動作する(例えば、衝突がなく、且つ、スプレーパターンが互いに重なり合ってしまう箇所もない)ように、セル内全ての装置をプログラムする。
(b)マスターシーケンスは、シミュレーションされたコンベアおよび部材検知信号を用い、且つ、全ての塗布器が無効としつつ、シミュレーションされた製造ジョブ(「ゴーストジョブ」としても知られている)を実行することによって、生成される。または、マスターシーケンスは、オフラインのシミュレーションプログラムにおいてジョブを実行すること、または、製造ジョブを実行することによって、生成される。
(c)マスターシーケンスは、コンピュータプログラムに類似する、一連のプログラム命令を含む。これらプログラム命令は、ロボットによって実行されるべき動作を規定する。また、マスターシーケンスは、上記(b)にて述べたジョブを実行することから学習されたデータを含む。
(d)マスターシーケンスからのデータは、プロセスTPプログラムに格納される。
(e)シーケンスは、プロセスTPにて動作に対して変更がなされた場合、再生成される。
(f)Gun=ONおよび/またはGun=OFF命令は、「ストローク」を規定するために用いられる。ここで、Gun=ON命令は、同期ポイントを表している。
(g)Gun=ON/OFF命令は、同じTCP極端挙動(TCP extreme behavior)を有する(ドア、フード、トランクの)開放用ロボット、および塗装ロボットで、利用可能とされる。
(h)ロボットアームの各々において、Gun=ON命令に達したときに、マスターシーケンスデータに基づいて、決定がなされる。このマスターシーケンスデータは、それ自体が、ロボット世界の0に対する、コンベア上の物体のオフセットに基づいている。
(i)オフセットが許容値内である場合、ロボットは、動作の実行を継続し、且つ、コンベアも、移動を継続する。
(j)オフセットがマスターシーケンスに遅れている場合、ロボットは、オフセットが許容値内に達するまで待機し、そして、ロボットは、動作実行を再開する。
(k)オフセットがマスターシーケンスに先行している場合、オフセットが許容値内に達するまでコンベアを停止させるために、適切なデジタル出力が生成される。そして、コンベアに移動を再開させるべ、デジタル出力がクリアとされる。
(l)個々の許容値は、上述の「遅れ」および「先行」の場合において利用可能である。これら個々の許容値は、ユーザプログラム内からのフライ(on the fly)上で変更され得る。
(m)本発明に係るアプローチは、顧客および/またはエンドユーザに、以下に示すような複数の利点をもたらす。
(n)コンベア速度の変動に起因した衝突のリスクを伴うことなく、同じ塗装用ブース、または同じ「スプレー領域」を用いて、ロボットをプログラムすることが可能となる。例えば、2つのフード塗装ロボットが、車体に亘って車体の中心線に至る全経路を塗装し、且つ、中央にて「互いに重複して塗装する」、または衝突することができないように、該ロボットをプログラムすることができる。
(o)複雑な移動ラインセルの妥当性を確認することが、大幅に簡単となる。複数のコンベア停止の発生を検証しようと試みることに反して、ロボットプログラマーは、ロボットがコンベア停止の後に稼働する時間の最悪なケースを考慮しさえすればよい。
(p)コンベア停止、またはコンベア速度の変動に関わらず、ロボットが常にブース内の同じ位置で車体を処理するので、製造をより反復可能とすることができる。
(q)異なるアーム間でロボット動作を「交互」させる必要性を無くすことによって、ブースサイズを小さくできる可能性がある。
【0008】
本発明に係る、領域内のロボットアームの間の同期は、以下のステップを通して達成される。
(a)ロボットプログラマーは、所望により動作する(例えば、衝突がなく、且つ、スプレーパターンが互いに重なり合ってしまう箇所もない)ように、セル内全ての装置をプログラムする。
(b)マスターシーケンスは、シミュレーションされたコンベアおよび部材検知信号を用い、且つ、全ての塗布器が無効としつつ、シミュレーションされた製造ジョブを実行することによって、生成される。または、マスターシーケンスは、オフラインのシミュレーションプログラムにおいてジョブを実行すること、または、製造ジョブを実行することによって、生成される。
(c)マスターシーケンスは、コンピュータプログラムに類似する、一連のプログラム命令を含む。これらプログラム命令は、ロボットによって実行されるべき動作を規定する。また、マスターシーケンスは、上記(b)にて述べたジョブを実行することから学習されたデータを含む。
(d)マスターシーケンスからのデータは、プロセスTPプログラムに格納される。
(e)シーケンスは、プロセスTPにて動作に対して変更がなされた場合、再生成される。
(f)Gun=ONおよび/またはGun=OFF命令は、「ストローク」を規定するために用いられる。ここで、Gun=ON命令は、同期ポイントを表している。
(g)Gun=ON/OFF命令は、同じTCP極端挙動(TCP extreme behavior)を有する(ドア、フード、トランクの)開放用ロボット、および塗装ロボットで、利用可能とされる。
(h)ロボットアームの各々において、Gun=ON命令に達したときに、マスターシーケンスデータに基づいて、決定がなされる。このマスターシーケンスデータは、それ自体が、ロボット世界の0に対する、コンベア上の物体のオフセットに基づいている。
(i)オフセットが許容値内である場合、ロボットは、動作の実行を継続し、且つ、コンベアも、移動を継続する。
(j)オフセットがマスターシーケンスに遅れている場合、ロボットは、オフセットが許容値内に達するまで待機し、そして、ロボットは、動作実行を再開する。
(k)オフセットがマスターシーケンスに先行している場合、オフセットが許容値内に達するまでコンベアを停止させるために、適切なデジタル出力が生成される。そして、コンベアに移動を再開させるべ、デジタル出力がクリアとされる。
(l)個々の許容値は、上述の「遅れ」および「先行」の場合において利用可能である。これら個々の許容値は、ユーザプログラム内からのフライ(fly)上で変更され得る。
(m)本発明に係るアプローチは、顧客および/またはエンドユーザに、以下に示すような複数の利点をもたらす。
(n)コンベア速度の変動に起因した衝突のリスクを伴うことなく、同じ塗装用ブース、または同じ「スプレー領域」を用いて、ロボットをプログラムすることが可能となる。例えば、2つのフード塗装ロボットが、車体に亘って車体の中心線に至る全経路を塗装し、且つ、中央にて「互いに重複して塗装する」、または衝突することができないように、該ロボットをプログラムすることができる。
(o)複雑な移動ラインセルの妥当性を確認することが、大幅に簡単となる。複数のコンベア停止の発生を検証しようと試みることに反して、ロボットプログラマーは、ロボットがコンベア停止の後に稼働する時間の最悪なケースを考慮しさえすればよい。
(p)コンベア停止、またはコンベア速度の変動に関わらず、ロボットが常にブース内の同じ位置で車体を処理するので、製造をより反復可能とすることができる。
(q)異なるアーム間でロボット動作を「交互」させる必要性を無くすことによって、ブースサイズを小さくできる可能性がある。
【0009】
本発明の、上述のおよび他の利点は、添付の図面を斟酌すれば、後述する好ましい実施形態の詳細な説明から、当業者に容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】塗装スプレーブースの部分概略図を示し、この塗装スプレーブースには、本発明に係る方法に従って同期された、塗装および操作/開放用ロボットが備えられている。
図2図1に示す塗装スプレーブースの部分斜視図である。
図3図1および図2に示すロボット用の制御システムのブロック図である。
図4】本発明に係る各ロボット用のプログラム解釈タスクのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明、および添付の図面は、本発明の種々の例示的実施形態を説明し、図示している。これらの記載および図面は、本発明を作製し、使用することを可能とするためのものであって、如何なる事項であれ、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。開示されている方法に関して、提示されているステップは、本質的に例示的なものであり、それ故に、これらステップの順序は、必須または重要ではない。
【0012】
図1および図2を参照して、スプレーまたは塗装ブース21は、塗装ロボット10、12と、操作ロボット14、16の配置を示すように、図示されている。これら塗装ロボット10、12、および操作ロボット14、16は、例えば車体28のような物体に対する作業を実行するためのものである。図1において、塗装ロボット10、21の各々は、ロボットアームを備えており、該ロボットアームの各々は、塗布器17、19を有している。操作ロボット14、16の各々は、ロボットアームを備えており、該ロボットアームの各々は、操作工具13、15を有している。操作ロボット14、16は、車体28の内部を外部に露出させるべく、ドア、フード、トランクの蓋、および/またはハッチ(ここでは、揺動金属パネル24として言及される)を把持し、開き、保持し、および閉める動作のうちの1つを行うことによって、塗装ロボット10、12を補助する。この動作により、塗装ロボット10、12のうちの1つは、自動塗装プロセスに従って車体28の内側の面を塗装することが可能となる。本開示に係るシステムおよび方法は、操作工具13、15を有する塗装ロボット10、12とともに用いられ得るので、所望により、塗装ロボットおよび操作ロボット14、16の双方として動作することができることを、理解されたい。さらに、例えば開扉用の操作ロボット14、16の使用に関して本稿で説明された特定の特徴は、フードやハッチといった他の揺動金属パネルに同様に適用され得ることを理解されたい。
【0013】
図2に示すように、複数の塗装ロボット10が、ブース21の側壁25の上に設置されている。3つのこのようなロボット10が、図示されており、その各々は、4軸多関節のロボットアームであってもよい。このロボットアームは、塗布器17による自由端にて終端する。
【0014】
このアームは、肩軸、肘軸、手首回転軸、および手首傾斜軸を有する。塗布器17として回転式のベル型塗布器が示されているが、例えばスプレーガンのような如何なる公知の装置が用いられてもよい。好ましくは、塗装装置10、12は、物体28(図1)の互いに反対側となる表面を同時に塗装するために、互いに対向して配置された一対の装置として設置される。物体28は、例えば車体等(図示せず)であって、軸31に沿ってコンベア30上にてブース21を通過するように移動する。
【0015】
ブース21は、前壁(または入口壁)20と、後壁(または出口壁)22と、下壁(または床)23と、一対の側壁25と、頂壁(天井)26とを有する。右側壁25、前壁20、および頂壁26は、ブース21の内部を視認可能とすべく、図から省略されている。塗装ロボット10、12は、塗装ブース21の上部において側壁25上に配置されている。フレームレール11は、左側壁25の内面に沿って延在している。フレームレール11は、適当な如何なる手段によって、側壁25に取り付けられてもよい。第2のフレームレール11(図示せず)は、塗装ロボット12を取り付けるために、対向する右側壁25の内面上に配置されている。代替的には、フレームレール11は、床23から鉛直に上方へ延びる柱(またはポスト)上に支持されてもよい。
【0016】
図3には、図1に示すロボットのための動作制御システム40が示されている。複数の動作制御部32、33、34、35のうちの1つは、ロボット10、12、14、16のうちの、関連付けられている1つに接続され、車体28の塗装中にロボットの動作を制御する。ロボットシステム制御部36は、動作制御部32、33、34、35に接続され、プロセッサ(CPU)37を有する。CPU37は、該CPU37に接続されたメモリ38に格納されたプログラム命令を実行する。また、ユーザインターフェース(または入力装置)39が、CPU37に接続されている。ユーザインターフェース39は、例えば教示ペンダントであって、ユーザが制御部36に情報を入力するのを可能とする。教示ペンダントの代わりに、ユーザインターフェース装置は、CRTディスプレイを備えるPCのキーパッドであってもよいし、または、当業者に公知である、他の如何なる入力装置であってもよい。制御部32、33、34、35、36は、双方向通信のために、バス41によって接続されている。塗装ブース21に配置されているロボット10、12、14、16の追加の1つが、他の類似の制御部36に同様に接続されてもよい。この追加のロボットは、独自の入力装置を備えてもよいし、他のロボットシステム制御部と入力装置を共有してもよいし、または、その双方であってもよい。また、制御ユニット42と関連付けられたコンベア30が、設けられている。少なくとも、CPU37は、状態に関する情報の読み出しおよびコンベア停止の要求ができるように、制御ユニット42にアクセス可能となっている。
【0017】
動作制御システム40は、塗装ロボットシステムのために「経路同期」を提供すべく動作する。本稿における「経路同期」は、以下を意味する。すなわち、製造サイクルにおけるロボットアームの相対的な位置が、コンベアの速度および/またはコンベアの停止(再始動)イベントに関わらず、維持される。この同期は、「マスターシーケンス」を学習することによって達成される。このマスターシーケンスは、同期されているロボットが如何にして理想的な状態の下で製造ジョブを実行するかに係るものである。このマスターシーケンスからのデータは、プロセスTPプログラムのアプリケーションによって記録される。そして、アプリケーションは、このデータを再生時に動作システムへ提供し、動作制御システム40は、適切な同期動作を行う。ロボットアームの各々は、自身をコンベア位置に同期させる。したがって、全てのアームが同じコンベアに同期するという事実から、アーム間の同期が達成される。
【0018】
同期ソフトウェア用に3つのモードがある。すなわち、学習モード、再生モード、および無効モードである。学習モードおよび再生モードが、図4のフローチャートに図示されている。学習モードにおいては、部材オフセットデータが、それぞれの同期ポイントにて記録され、対応するプロセスTPプログラムラインデータに格納される。「同期ポイント」は、「Gun=ON」命令を含む動作線として定義される。再生モードにおいては、データは、同期ポイント(すなわち、Gun=ON命令を付与した)として定義されたプロセスTPプログラムラインから読み出される。このデータ読み出しは、実際の部材オフセットに依存して、ロボットの動作を停止する、または、コンベアを停止するために、用いられる。無効モードにおいては、同期フィーチャは、全体的に無効とされる。
【0019】
図4に、塗装ロボットの各々のためのプログラム解釈タスク50が示されている。プログラム解釈タスク50は、ユーザによって教示されたTPプログラムを実行する。同期フィーチャは、TPプログラムにおいて、動作およびアプリケーションの動作線計画に対して影響を与える(54)。動作計画58の間に、学習モード55は、TPプログラムラインに関連付けられた、内部の動作データ構造にて、セットされる(56)。追跡フィーチャは、追跡境界に対する、行き先位置またはTCP Extreme(アクティブとなっている場合)を確認する。そして、追跡フィーチャは、この確認の結果に依存して、計画動作を待機するか、または継続する。この確認は、コンベアと関連付けられた検出スイッチの出力から部材オフセットを計算することを要求する。
【0020】
経路同期の学習モード59において、Gun=ON命令を含むTPプログラムラインが計画され、また、境界条件がこのラインに関して満たされるものと判断されたとき、計算された部材オフセットは、内部の動作データ構造に記録される(60)。これにより、部材オフセットは、後にアプリケーションによって検索可能となり、プロセスTPプログラムラインデータに格納可能となる。
【0021】
Gun=ON命令を含むTPプログラム動作ラインが、学習モード63において実行されたとき(62)、アプリケーションは、内部に格納されたオフセットデータを検索し、命令ラインデータにオフセット値を書き込む(64)。
【0022】
再生モード55の間に、TPラインが計画されているとき、アプリケーションは、TPラインからオフセットデータを検索する(53)。再生モード55およびオフセットが、TPプログラムラインと関連付けられた、内部の動作データ構造にてセットされる(57)。そして、TPラインデータからのオフセット値が、計画動作を待機するかまたは継続するかを判断するために、実際の現在の部材オフセットと比較される(61)。
【0023】
また、動作計画の間に、ロボットが想定されているコンベア位置の後方に在る場合に、コンベアを停止すべくデジタル出力がアサートされ得るように、ライン追跡において存在する外方マージン機能(outbound margin function)のための変数が、設定される。
【0024】
無効モードの間には、上述の全てのフィーチャは、無視される。
【0025】
最後に、同期時にロボット動作(またはコンベア)を停止することに対してマージンを(例えばミリ単位のコンベア移動で)関連付けるために、ユーザインターフェース(入力装置)39が、エンドユーザのために設けられる。
【0026】
考慮すべき主な異常(エラー)状態は、学習モードがアクティブであるが、「クリーンラン(clean run)」が得られていない場合である。この場合においては、ジョブの最後に警告が掲示される。考慮すべき他の場合としては、エンドユーザが、動作および/またはタイミングに影響する可能性があるプロセスTPプログラムに変化を加えた場合がある。この場合は、「クリーンラン」が失敗したときと同様にして処理される。このような場合を検知するために、TPプログラムのヘッダにある「最終処理日時(Last Processed Date)」アイテムが使用され、TPプログラムの「最終変更日時(Last Modified Date)」と比較される。「最終処理日時」領域に格納されているデータは、同期データをアップデートするために「クリーンラン」が適正に行われたときの日時を表す。「クリーンラン」が得られなかったとき、「最終処理日時」領域は、アップデートされない。
【0027】
双方のモードにおいて、上述したオフセットデータの取り扱いは、Gun=ON命令にのみ、適用される。オフセットデータは、塗装ストロークを定義するので、塗装アプリケーションにおいて同期ポイントを表す。
【0028】
学習モードにおいて、ジョブ実行の間には、記録されたデータを無効とすべき2つのシナリオがある。すなわち、ジョブ実行の間のコンベア停止およびフォルト(E−stop)である。これらのイベントのうち1つが発生すると、システムは学習モードにある場合、如何なるその後の動作は、データを記録することはなく、「最終処理日時」領域がアップデートされることもない。そして、ジョブの最後に、学習モードにおける同期が適正に行われなかったことを報知するために、警告アラームが計時される。
【0029】
特許法の規定に従って、本発明を、その好ましい実施形態を示すものと考えられる事項において説明した。しかしながら、本発明の概念または範囲を逸脱することなく、特に図示および記載されたもの以外の形態で、本発明を実施することができることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4