特許第6809791号(P6809791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社名城ナノカーボンの特許一覧

<>
  • 特許6809791-積層体シートおよびその製造方法 図000002
  • 特許6809791-積層体シートおよびその製造方法 図000003
  • 特許6809791-積層体シートおよびその製造方法 図000004
  • 特許6809791-積層体シートおよびその製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809791
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】積層体シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20201221BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20201221BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   H01B5/14 Z
   H01B5/14 B
   H01B13/00 503D
   H01B13/00 503Z
   H05K1/09 C
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-2511(P2016-2511)
(22)【出願日】2016年1月8日
(65)【公開番号】特開2017-123303(P2017-123303A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2019年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】507046521
【氏名又は名称】株式会社名城ナノカーボン
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100142239
【弁理士】
【氏名又は名称】福富 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】橋本 悟
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0230146(US,A1)
【文献】 特開2014−044839(JP,A)
【文献】 特開2008−240149(JP,A)
【文献】 特開2015−069908(JP,A)
【文献】 特表2013−527974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
H01B 13/00
H05K 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の絶縁性基材と、
前記絶縁性基材上に設けられたカーボンナノチューブ層と、
前記カーボンナノチューブ層上に設けられた金属メッキ層と
を含み、
前記絶縁性基材の単位面積(1平方センチメートル)当たりの前記カーボンナノチューブ層の重さが、0.01μg〜30μgである、積層体シート。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ層に含まれるカーボンナノチューブは、10層以下のカーボンナノチューブである、請求項1に記載の積層体シート。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ層の表面抵抗率が、200Ω/sq以下である、請求項1または2に記載の積層体シート。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブ層は、実質的に樹脂バインダを含まない、請求項1〜の何れか一つに記載の積層体シート。
【請求項5】
前記金属メッキ層の厚みが、10nm〜10000nmである、請求項1〜の何れか一つに記載の積層体シート。
【請求項6】
前記金属メッキ層は、Cu、Ni、Au、Sn、Ti、Ag、Co、Pd、W、Pt、Rh、Ir、Ru、Os、Fe、MoおよびMnからなる群から選択された少なくとも一種の金属元素を含む、請求項1〜の何れか一つに記載の積層体シート。
【請求項7】
請求項1〜の何れか一つに記載の積層体シートを用いてなる、フレキシブル基板。
【請求項8】
請求項1〜の何れか一つに記載の積層体シートを用いてなる、電磁シールドフィルム。
【請求項9】
請求項1〜の何れか一つに記載の積層体シートを用いてなる、プリント配線板。
【請求項10】
シート状の絶縁性基材と、該絶縁性基材上に設けられたカーボンナノチューブ層と、該カーボンナノチューブ層上に設けられた金属メッキ層とを含む積層体シートの製造方法であって、
シート状の絶縁性基材を用意すること;
前記絶縁性基材上にカーボンナノチューブを含むスラリーを付与することにより該絶縁性基材上に、前記絶縁性基材の単位面積(1平方センチメートル)当たりの前記カーボンナノチューブ層の重さが0.01μg〜30μgのカーボンナノチューブ層を形成すること;および、
前記カーボンナノチューブ層付絶縁性基材と陽極とをメッキ液中に浸漬し、前記カーボンナノチューブ層と該陽極との間に電流を流すことにより、該カーボンナノチューブ層上に金属メッキ層を形成すること;
を包含する、積層体シートの製造方法。
【請求項11】
前記カーボンナノチューブ層付絶縁性基材を長手方向に搬送して前記メッキ液内を通過させることにより、前記カーボンナノチューブ層上に前記金属メッキ層を形成する、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記メッキ液と、該メッキ液と混ざらない有機溶媒とを相互に分離した状態で収容したメッキ処理槽を用意し、
前記カーボンナノチューブ層付絶縁性基材を長手方向に搬送して前記メッキ液内と前記有機溶媒内とを順次通過させることにより、前記カーボンナノチューブ層上に前記金属メッキ層を形成する、請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記カーボンナノチューブ層に含まれるカーボンナノチューブは、10層以下のカーボンナノチューブである、請求項10〜12の何れか一つに記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体シートおよび該積層体シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、可堯性を有するシート状絶縁性基材に金属層を積層することにより得られた積層体シートは、例えばフレキシブル回路基板や電磁シールドフィルム等の電子部品として広く利用されている(例えば特許文献1)。かかる積層体シートは、一般に、ポリイミドフィルム等の樹脂シート上に金属箔(例えば銅箔)を接着剤で貼り付ける方法で製造されている。また、接着剤を使用せずに、樹脂シート上に金属層を直接形成する技術も検討されている。例えば、無電解メッキ法により樹脂シート上に金属薄膜を所定パターンに沿って直接形成する方法や、金属薄膜を樹脂シート上に形成した後、エッチングして所定のパターンに形成する方法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−091431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂シート上に金属箔を接着剤で貼り付ける方法は、使用する金属箔の厚みに制限があり、薄い積層体シートを形成することができない(ひいては近年の薄型・軽量化に対応することが難しい)という欠点がある。また、無電解メッキ法により樹脂フィルム上に金属薄膜を直接形成する方法は、金属薄膜を形成できる利点があるものの、無電解メッキ処理は一般に遅く、低品質の金属を生成するので、低品質の積層体シートになりやすく、また生産性が悪いという問題がある。絶縁性基材上により高品質な金属層を効率よく形成し得る技術が提供されれば有用である。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決し得る積層体シートの提供を目的とする。本発明の他の一つの目的は、上記課題を解決し得る積層体シート製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、シート状の絶縁性基材と、該絶縁性基材上に設けられたカーボンナノチューブ層と、該カーボンナノチューブ層上に設けられた金属メッキ層とを含む積層体シートの製造方法が提供される。この製造方法は、シート状の絶縁性基材を用意すること;前記絶縁性基材上にカーボンナノチューブを含むスラリーを付与することにより該絶縁性基材上にカーボンナノチューブ層を形成すること;および、前記カーボンナノチューブ層付絶縁性基材と陽極とをメッキ液中に浸漬し、前記カーボンナノチューブ層と該陽極との間に電流を流すことにより、該カーボンナノチューブ層上に金属メッキ層を形成すること;を包含する。かかる製造方法によれば、カーボンナノチューブ層によって絶縁性基材の表面を導電化し、そのうえで電解メッキを行うことで、絶縁性基材上に高品質な金属メッキ層を備えた積層体シートを効率よく製造することができる。
【0007】
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、前記カーボンナノチューブ層付絶縁性基材を長手方向に搬送して前記メッキ液内を通過させることにより、前記カーボンナノチューブ層上に前記金属メッキ層を形成する。このようにすれば、メッキ析出量に場所による偏りが生じる事象が解消または緩和され、より均一な厚みの金属メッキ層を形成することができる。
【0008】
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、前記メッキ液と、該メッキ液と混ざらない有機溶媒とを相互に分離した状態で収容したメッキ処理槽を用意する。そして、前記カーボンナノチューブ層付絶縁性基材を長手方向に搬送して前記メッキ液内と前記有機溶媒内とを順次通過させることにより、前記カーボンナノチューブ層上に前記金属メッキ層を形成する。このようにすれば、より高品質な金属メッキ層を形成することができる。
【0009】
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、前記カーボンナノチューブ層に含まれるカーボンナノチューブは、10層以下のカーボンナノチューブ(CNT)である。10層以下のCNT(典型的には単層CNT)は、10層を上回るCNT(典型的には多層CNT)に比べて導電性が高いため、本発明の目的に適したCNTとして好適である。
【0010】
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、前記絶縁性基材の単位面積(1平方センチメートル)当たりの前記カーボンナノチューブ層の重さ(目付量)が、0.01μg〜30μg(例えば1.5μg〜3.5μg)である。このようなカーボンナノチューブ層の重さの範囲内であると、カーボンナノチューブ層の剥がれを抑えつつ、絶縁性基材の表面に良好な導電性を付与することができる。
【0011】
また、本発明は、他の側面として、積層体シートを提供する。この積層体シートは、シート状の絶縁性基材と、前記絶縁性基材上に設けられたカーボンナノチューブ層と、前記カーボンナノチューブ層上に設けられた金属メッキ層とを含む。かかる積層体シートは、絶縁性基材上に高品質な金属メッキ層を備えていることから、種々の電子部品の用途(例えばフレキシブル基板や電磁シールドフィルムなど)に適した材料として好適に用いることができる。
【0012】
ここで開示される積層体シートの好ましい一態様では、前記カーボンナノチューブ層の表面抵抗率が、200Ω/sq以下である。このようにすれば、カーボンナノチューブ層上により高品質な金属メッキ層を形成することができる。
【0013】
ここで開示される積層体シートの好ましい一態様では、前記カーボンナノチューブ層は、実質的に樹脂バインダを含まない。本発明の態様によれば、カーボンナノチューブ同士の分子間力に起因した結着力によってカーボンナノチューブ層の形が保持され、また絶縁性基材に結合される。そのため、実質的に樹脂バインダを含まない積層体シートを実現することができる。かかる積層体シートは、樹脂バインダを含まないことで、樹脂バインダに起因してカーボンナノチューブ層の抵抗が大きくなって高品質な金属メッキ層が得られない等の不都合を解消し得る。
【0014】
ここで開示される積層体シートの好ましい一態様では、前記金属メッキ層の厚みが、10nm〜10000nm(例えば200nm〜10000nm)である。本発明の態様によれば、金属メッキ層の厚みの選択自由度が高いため、積層体シートの用途に応じて種々の厚みに対応した金属メッキ層を実現することができる。
【0015】
ここで開示される積層体シートの好ましい一態様では、前記金属メッキ層は、Cu、Ni、Au、Sn、Ti、Ag、Co、Pd、W、Pt、Rh、Ir、Ru、Os、Fe、MoおよびMnからなる群から選択された少なくとも一種の金属元素を含む。これらの金属元素は、本発明の目的に適した金属メッキ層の構成成分として好適に使用し得る。
【0016】
また、本発明は、他の側面として、フレキシブル基板(すなわち容易に撓む材質および形状からなる可撓性基板)を提供する。このフレキシブル基板は、ここに開示される何れかの積層体シートを用いて構成されている。かかるフレキシブル基板は、上記積層体シートを用いて構成されていることから、より高性能なものであり得る。
【0017】
また、本発明は、他の側面として、電磁波シールドフィルムを提供する。この電磁波シールドフィルムは、ここに開示される何れかの積層体シートを用いて構成されている。かかる電磁シールドフィルムは、上記積層体シートを用いて構成されていることから、より高性能なものであり得る。また、本発明は、他の側面として、プリント配線板を提供する。このプリント配線板は、ここに開示される何れかの積層体シートを用いて構成されている。好ましい一態様では、上記プリント配線板が備える金属メッキ層の厚みが10nm〜10000nm(例えば0.2μm〜0.5μm)であり得る。かかるプリント配線板は、上記積層体シートを用いて構成されていることから、より高性能なものであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る積層体シートの断面を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電解メッキ装置を模式的に示す図である。
図3】積層体シートのSEM画像である。
図4】本発明の他の実施形態に係る電解メッキ装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、絶縁性基材やカーボンナノチューブの原料の作製方法など)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0020】
<積層体シート>
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体シートの断面を模式的に示す図である。ここで開示される積層体シート100は、シート状の絶縁性基材10と、該絶縁性基材10上に設けられたカーボンナノチューブ層(以下、「CNT層」とも称する。)20と、該CNT層20上に設けられた金属メッキ層30とを含む。
【0021】
<絶縁性基材>
絶縁性基材10としては、絶縁質ものであればよく特に制限されないが、容易に撓ませることができる可撓性(外力により撓み変形する性質)を有するものであることが好ましい。例えば、絶縁性基材10としては、樹脂シート、紙、布、ゴムシート、これらの複合体や積層体などを用いることができる。なかでも、寸法安定性および加工性等の観点から、樹脂シートまたは紙を含むことが好ましい。樹脂シートの好適例として、ポリイミド(PI);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン(Nylon)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)等の各種アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂などが挙げられる。樹脂シートのなかでは、PIシートまたはポリエステルシートが好ましく、特にはPIシートまたはPETシートの使用が好ましい。紙としては、一般的な植物パルプからなる紙や合成品(合成繊維)からなる紙などを各種用いることができる。あるいは、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラス・コンポジット基板、ガラス・エポキシ基板などの一般的なプリント配線板用の基板を用いてもよい。かかるプリント配線板用の基板に金属箔(例えば電解銅箔)を貼り合わせる従来の態様では、金属箔の厚みに制限があり、例えば金属箔の厚みが1μmを下回るような薄いプリント基板を形成することが難しかった。これに対し、本態様によれば、このようなプリント基板においても、従来よりも薄膜(例えば0.5μm以下、例えば0.2μm程度)の金属層を備えた積層体シートを好適に形成し得る。上記シート状絶縁性基材は、単層構造であってもよく、2層または3層以上の多層構造であってもよい。
【0022】
絶縁性基材10の形状(外形)は、シート状であり得る。ここでいうシート状とは、典型的には薄い形状をいい、長尺状、フィルム状、テープ状、板状等の平面形状のものが含まれる。絶縁性基材10の厚みは、積層体シートの用途に応じて適宜設定することができるが、通常は5μm〜2000μm、好ましくは10μm〜200μmである。
【0023】
<カーボンナノチューブ層>
カーボンナノチューブ層20は、カーボンナノチューブ(CNT)を含む層であり、絶縁性基材10上に設けられている。CNT層20に含まれるCNTの種類は特に限定されない。例えば、アーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相蒸着法(CVD法)等の各種方法により製造されたCNTであり得る。CNT層20に含まれるCNTは、単層(例えば1〜3層、典型的には1層または2層)であってもよく、多層(例えば4層〜200層、典型的には4層〜60層)であってもよい。また、単層CNTと多層CNTとを任意の割合(単層CNT:多層CNTの質量比が例えば100:0〜50:50、好ましくは100:0〜80:20)で含むCNT層20であってもよい。CNT層20に含まれるCNTは、10層以下のCNTであることが好ましい。10層以下のCNTは導電性が高いため、本発明の目的に適したCNTとして好適である。導電性を高める等の観点から、実質的に10層以下のCNTのみから構成されたCNT層20であることがより好ましい。
【0024】
CNT層20に含まれるCNTのアスペクト比(CNTの長さ/直径)の平均値は、概ね100以上であることが適当である。上記アスペクト比を有するCNTは、相互に絡みやすく、積層体シートを折り曲げても割れることなく、CNT層20の形を好適に維持し得る。また、分子間力に起因した結着力によってCNT層20が絶縁性基材10に結着しやすくなる。CNTのアスペクト比の平均値は、好ましくは250以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは800以上、特に好ましくは1000以上である。CNTのアスペクト比の上限は特に限定されないが、取扱性や製造容易性等の観点からは、概ね10000以下にすることが適当であり、好ましくは8000以下、より好ましくは7000以下、さらに好ましくは6000以下、特に好ましくは5000以下である。例えば、CNTの平均アスペクト比が100〜8000(好ましくは3000〜5000)であるCNTが好適である。なお、CNTの平均アスペクト比(CNTの長さ/直径)は、典型的には電子顕微鏡(SEM)観察に基づく測定で得られた値を採用することができる。
【0025】
CNTの直径の平均値は、概ね50nm以下であることが好ましい。上記直径を有するCNTは、相互に絡みやすく、積層体シートを折り曲げても割れることなく、CNT層20の形を好適に維持し得る。また、分子間力に起因した結着力によってCNT層20が絶縁性基材10に結着しやすくなる。CNTの直径の平均値は、好ましくは40nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。CNTの直径(平均値)の下限は特に限定されないが、概ね1nm以上にすることが適当であり、好ましくは1.2nm以上である。例えば、CNTの平均直径が1nm〜10nm(好ましくは1.2nm〜2nm)であるCNTが好適である。
【0026】
上記CNTとしては、電気抵抗率が10−3Ω・cm以下のものを好適に使用し得る。CNTの電気抵抗率の低減によって、より低い電極抵抗が実現され得る。CNTの電気抵抗率は、好ましくは8×10−4Ω・cm以下、より好ましくは5×10−4Ω・cm以下、さらに好ましくは3×10−4Ω・cm以下である。CNTの電気抵抗率の下限は特に限定されないが、製造容易性等の観点から、例えば10−5Ω・cm以上、典型的には5×10−5Ω・cm以上、例えば10−4Ω・cm以上であってもよい。
【0027】
絶縁性基材10の単位面積(1平方センチメートル)当たりのCNT層20の重さ(すなわち固形分換算目付量)は、概ね0.01μg以上、例えば0.1μg以上、典型的には1μg以上、例えば1.5μg以上であることが好ましい。これにより、絶縁性基材10の表面に良好な導電性を付与して高品質な金属メッキ層30を形成することができる。絶縁性基材10の単位面積(1平方センチメートル)当たりのCNT層20の重さは、良好な導電性を付与する観点から、好ましくは1.8μg以上、より好ましくは2.2μg以上、さらに好ましくは2.5μg以上である。CNT層20の重さの上限は特に限定されないが、CNT層20の目付量が多すぎると、CNT層20が絶縁性基材10から剥がれやすくなる場合があり得る。剥離抑制の観点からは、絶縁性基材10の単位面積(1平方センチメートル)当たりのCNT層20の重さは、概ね30μg以下、例えば15μg以下、典型的には3.5μg以下にすることが適当であり、好ましくは3.2μg以下、より好ましくは3μg以下、さらに好ましくは2.8μg以下である。例えば、絶縁性基材10の単位面積(1平方センチメートル)当たりのCNT層20の重さが2.0μg〜3.0μgである積層体シートが、良好な導電性と剥離抑制とを高度に両立させる観点から好適である。
【0028】
CNT層20の表面抵抗率は、概ね200Ω/sq以下であることが好ましい。このようにすれば、絶縁性基材10の表面に良好な導電性を付与して高品質な金属メッキ層30を形成することができる。CNT層20の表面抵抗率は、好ましくは180Ω/sq以下、より好ましくは160Ω/sq以下である。CNT層20の表面抵抗率の下限は特に限定されないが、製造容易性等の観点から、概ね100Ω/sq以上、例えば120Ω/sq以上、典型的には140Ω/sq以上である。なお、CNT層20の表面抵抗率は、市販の表面抵抗測定装置を用いて四探針法により測定した値が採用され得る。
【0029】
好ましい一態様では、CNT層20は、実質的に樹脂バインダを含まない。ここでいう樹脂バインダの具体例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリルニトリル(PAN)、フッ素系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)など)、ゴム類(酢酸ビニル共重合体、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)など)、セルロース系ポリマー(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC))等が挙げられる。CNT層20中に樹脂バインダが含まれていると、抵抗が大きくなって高品質な金属メッキ層が得られない等の不都合が生じ得る。これに対し、上記構成によれば、CNT層20が樹脂バインダを実質的に含まないので、そのような不都合を回避し得る。
【0030】
<金属メッキ層>
金属メッキ層30は、後述する電解メッキにより得られる層であり、上述したCNT層20上に設けられている。金属メッキ層30を構成する金属としては、この種の金属メッキ層に常套的に用いられている金属であれば特に制限されない。例えば、金属メッキ層30の構成金属元素は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、銀(Ag)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)およびマンガン(Mn)のうちのいずれか1種または2種以上の組み合わせが好ましい。このうち、Cu、Ni、Auのうちのいずれか1種または2種以上の組み合わせが好ましい。
【0031】
好ましい一態様では、金属メッキ層30とCNT層20とは、二層に分離した状態で配置されている。すなわち、CNT層20の上に金属メッキ層30が積層されている。金属メッキ層30の厚みは、通常は10nm〜10000nm(10μm)、例えば200nm〜10000nm、例えば300nm〜5000nm、典型的には400nm〜2000nm(2μm)であり得る。ここに開示される技術によると、金属メッキ層30の厚みの選択自由度が高いので、積層体シート100の用途に応じて種々の厚みに対応した金属メッキ層30を形成することができる。例えば10nm〜200nm程度の薄膜の金属メッキ層30を好適に実現することができる。また、10000nm程度の厚い金属メッキ層30を好適に実現することができる。
【0032】
<積層体シートの製造方法>
ここに開示される積層体シート100は、シート状の絶縁性基材10を用意すること;前記絶縁性基材10上にカーボンナノチューブを含むCNT層形成用スラリーを付与(典型的には塗布、乾燥)することにより該絶縁性基材10上にCNT層20を形成すること;および、前記CNT層20付絶縁性基材10と陽極とをメッキ液中に浸漬し、前記CNT層20と該陽極との間に電流を流すことにより、該CNT層20上に金属メッキ層30を形成すること;を含む方法により製造され得る。
【0033】
上記CNT層形成用スラリーは、例えばCNTと液状媒体とを含むものであり得る。液状媒体としては、溶媒の含有割合が95質量%以上である(換言すれば、溶媒以外の成分すなわち不揮発分の含有割合が5質量%未満である)ものが好ましく、上記割合が99%以上である液状媒体がさらに好ましい。実質的に不揮発分を含まない液状媒体であってもよい。該液状媒体を構成する溶媒の組成は、目的および態様等に応じて適宜選択することができ、例えば水、有機溶媒またはこれらの混合溶媒であり得る。加熱により容易に(例えば200℃以下、より好ましくは120℃以下の温度域で)除去可能な溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール等の炭素原子数1〜4程度のアルコール)、低級ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、低級アルコールの酢酸エステル(例えば酢酸エチル)、等から選択されるいずれかの一種または二種以上の溶媒であり得る。
【0034】
ここに開示されるCNT層形成用スラリーは、例えば、その固形分含量(non-volatile content;NV)が0.01質量%〜5質量%であり、残部が液状媒体である形態である形態で好ましく実施され得る。上記NVが0.05質量%〜0.1質量%である形態がより好ましい。
【0035】
上記CNT層形成用スラリーは、本発明の目的から逸脱しない範囲において、上記以外の種々の添加剤を含ませることができる。添加剤の好適例として、例えば、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、分散剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0036】
上記CNT層形成用スラリーを絶縁性基材10上に適当量塗布し、乾燥することによって、絶縁性基材上にCNT層20が形成されたCNT層20付絶縁性基材10を得ることができる。上記CNT層形成用スラリーを絶縁性基材10上に塗布する方法としては特に制限はなく、例えば、スプレー噴霧、スクリーン印刷等の公知の塗布方法を採用することができる。必要に応じて、上記塗布操作を複数回(例えば2〜10回、典型的には3〜5回)繰り返してもよい。また、上記液状媒体の除去も、従来の一般的な乾燥手段(例えば加熱乾燥や真空乾燥)により行うことができる。スラリーを乾燥させる際の加熱温度は、液状媒体の組成(特に溶媒の沸点)等を勘案して適宜設定することができる。通常は、該乾燥温度を凡そ40℃〜250℃(例えば凡そ60℃〜150℃)程度とすることが好ましい。乾燥後、必要に応じて、加熱処理や洗浄処理等を施し、CNT層20中に含まれる添加剤を除去してもよい。
【0037】
図2は、本実施形態に係る金属メッキ層の形成工程を具現化する電解メッキ装置40を示す模式図である。電解メッキ装置40は、搬送装置42と、メッキ処理槽44と、陽極46と、陰極48とを備えている。
【0038】
搬送装置42は、CNT層20付絶縁性基材10を搬送する装置である。CNT層20付絶縁性基材10は、搬送装置42によって、予め定められた搬送経路に沿って搬送される。図中の矢印Fは、CNT層20付絶縁性基材10の搬送方向を示している。この実施形態では、搬送装置42は、搬送ローラ42を備えている。CNT層20付絶縁性基材10は、図2に示すように、搬送ローラ42によって長手方向に搬送されつつ電解メッキ処理が施される。
【0039】
メッキ処理槽44は、その内部にメッキ液44aが貯えられた槽である。この実施形態では、メッキ液44aの下方には、該メッキ液44aと混ざらない有機溶媒44bが貯水されている。すなわち、メッキ処理槽44内には、メッキ液44aと有機溶媒44bとが相互に分離した状態で(ここでは上下二層に分かれた状態で)収容されている。ここではメッキ液44aが上層を構成し、有機溶媒44bが下層を構成している。
【0040】
メッキ処理槽44に収容されるメッキ液44aは、金属元素を含有している。この金属元素は典型的には金属イオンの形態であり得る。この電解メッキ装置40で形成されるメッキは、この金属元素を含有する金属メッキ(すなわち金属元素の単体または金属元素を含む合金からなるメッキ)である。かかる金属元素としては、前述したように、積層体シートの用途に応じて適宜選択することができる。
【0041】
ここで開示されるメッキ液44aに用いられる溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒が挙げられる。かかる混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。水と均一に混合し得る低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、2‐プロパノール、n‐ブタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の水との相溶性の大きなアルコールが例示される。水と均一に混合し得る低級ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、4‐メチル‐2‐ブタノン等が例示される。例えば、該混合溶媒の50質量%以上(より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上)が水である混合溶媒の使用が好ましい。このような混合溶媒を用いることにより、メッキ液中に金属元素(典型的には金属イオンの形態)を安定的に保持することができる。
【0042】
なお、メッキ液44aは、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、メッキ析出促進剤、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤などの公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
【0043】
メッキ処理槽44に収容される有機溶媒44bとしては、常温(例えば25℃)で液体であり、かつ上述したメッキ液44aと実質的に混合しない(すなわち疎水性の)有機溶媒であることが好ましい。また、メッキ液44aの下層に安定的に保持され得る(すなわちメッキ液44aよりも比重が大きい)有機溶媒であることが好ましい。さらに、メッキする際に分解や酸化還元反応が起こらない、電気化学的に安定な有機溶媒を用いることが好ましい。このような条件を満たす有機溶媒を特に制限なく用いることができる。かかる有機溶媒としては、例えば二硫化炭素や、ジクロルメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロルエタン、1,1,2,2−テトラクロルエタン、1,2ジクロルエチレン、トリクロルエチレン等の塩素系溶媒が例示される。これらの有機溶媒は常温(例えば25℃)で液体であり、かつメッキ液44aと実質的に混ざりにくい性質を示すため、本発明の目的に適した有機溶媒として好適に使用し得る。なかでも二硫化炭素の使用が好ましい。
【0044】
なお、有機溶媒44bは、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤などの公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
【0045】
陽極(アノード)46は、メッキ処理槽44のメッキ液44a中に配置されている。陽極46は、導電性材料の薄板からなり、図示しないリード線により電源(図示せず)に電気的に接続されている。電源は、例えば直流電源であり、陽極46と陰極48(CNT層20)との間を通電するようになっている。
【0046】
陰極(カソード)48は、搬送ローラ42がCNT層20付絶縁性基材10に当たる面の裏側に配置されている。図2に示す例では、搬送ローラ42においては、CNT層20が形成されている面を陰極48に向けて、CNT層20付絶縁性基材10を搬送し、CNT層20に陰極48を当てる。陰極48は、導電性材料(例えばステンレス)からなり、図示しないリード線により電源(図示せず)に電気的に接続されている。ここに開示される技術によると、陰極48からメッキ液44aまでの最小距離が、例えば20mm以下(例えば5mm〜15mm)に設定され得る。陰極48からメッキ液44aまでの最小距離が上記数値範囲にある態様で製造される積層体シート100では、ここに開示される技術の適用効果が特によく発揮され得る。
【0047】
上記構成の電解メッキ装置40において電解メッキを行うには、前述のようにメッキ液44aと、該メッキ液44aと混ざらない有機溶媒44bとを相互に分離した状態で収容したメッキ処理槽44を用意する。そして、CNT層20付絶縁性基材10を搬送ローラ42によって長手方向に搬送しつつ、メッキ液44a内と有機溶媒44b内とを順次通過させる。また、搬送ローラ42においては、CNT層20が形成されている面を陰極48に向けて、CNT層20付絶縁性基材10を搬送し、CNT層20に陰極48を当てる。その状態で、陰極48と陽極46との間を通電し、CNT層20と陽極46との間に電流を流すと、CNT層20付絶縁性基材10がメッキ液44a内を通過している間に、CNT層20上に金属が析出する。かかる析出によって、CNT層20上に金属メッキ層30が形成される。
【0048】
ここで、CNT層20付絶縁性基材10を長手方向に搬送せずに、CNT層20付絶縁性基材10全体をメッキ液44aに浸漬して電解メッキを行う従来の態様では、陰極48からの距離に依存して電流密度の分布に偏りが生じる(典型的には陰極48からの距離が近い場所ほど、抵抗値が低く電流が流れやすい)ため、絶縁性基材10上に均一な金属メッキ層30を形成することは困難になりがちである。これに対し、上記電解メッキ装置40によると、CNT層20付絶縁性基材10を長手方向に搬送してメッキ液44a内と有機溶媒44b内とを順次通過させることにより、CNT20層上に金属メッキ層30を形成するので、CNT層20付絶縁性基材10のメッキされる部位(メッキ液44a内に浸漬した部位)と陰極48との距離が概ね一定に保たれる。そのため、陰極48からの距離に依存して電流密度の分布に偏りが生じる(ひいてはメッキ析出量に場所による偏りが生じる)事象が解消または緩和され、より均一な厚みの金属メッキ層30を形成することができる。
【0049】
<用途>
ここに開示される積層体シート100は、前述のように、シート状の絶縁性基材10上に高品質で均一な厚みの金属メッキ層30を有する。そのため、種々の電子部品の用途に適した材料として好ましく用いることができる。上記電子部品は、例えば、屈曲する可動部分への配線や立体的な配線に用いられるフレキシブル基板(例えばフレキシブル回路基板)であり得る。あるいは、電磁波等を遮蔽する電磁シールドフィルムやプリント配線板用の積層板などに上記積層体シート100を用いることができる。かかる用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。
【0050】
なお、上記積層体シート100をフレキシブル基板等に用いて金属メッキ層30をパターニングする場合には、絶縁性基材10上にCNT層20および金属メッキ層30を順次形成した後、例えばレーザ照射によりCNT層20および金属メッキ層30の一部をエッチング(除去)して所定のパターンに形成する方法を好ましく採用し得る。レーザ照射に代えて、プラズマ(真空プラズマまたは大気圧プラズマ)や紫外線オゾン処理によりCNT層20をエッチングしてもよい。この場合、例えば、一般的なプリント基板製法と同様の手法で金属メッキ層をエッチング(典型的には金属メッキ層表面にレジストを塗布し、マスクを介して所定パターンに露光した後、現像してレジストの一部を除去し、露出した金属メッキ層をウェットエッチングまたはドライエッチング)し、その後に露出した下地のCNT層をプラズマまたは紫外線オゾン処理等で除去するとよい。あるいは、絶縁性基材10上にマスク等を用いて下地のCNT層20を所定パターンに沿って形成し、そのうえに金属メッキ層30を前述した電解メッキ処理により形成してもよい。ここで開示される積層体シート100には、CNT層20および金属メッキ層30が所定パターンに沿って形成された態様のものも含まれ得る。
【0051】
次に、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0052】
平均アスペクト比が5000である10層以下のCNTと液状媒体としての水とを混合してCNT層形成用スラリーを調整した。このスラリーを長尺シート状のPIシート(絶縁性基材)10上にスプレー噴霧により塗布して乾燥することにより、絶縁性基材10の片面にCNT層20が設けられたCNT層20付絶縁性基材10を作製した。絶縁性基材の単位面積(1平方センチメートル)当たりのCNT層の重さ(目付量)は、約2.3μgとなるように調整した。
【0053】
次いで、図2に示すような電解メッキ装置40を用いて、上記CNT層20付絶縁性基材10を長手方向に搬送してメッキ液44a内と有機溶媒44b内とを順次通過させることにより、CNT層20上に金属メッキ層30を形成した。ここでは金属メッキ層30を構成する金属は銅とし、金属メッキ層30の膜厚は10nm〜200nmとした。このようにして、絶縁性基材10上にCNT層20および金属メッキ層30が順次形成された積層体シートを得た。
【0054】
上記得られた積層体シートの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。結果を図3に示す。図3に示されるように、絶縁性基材上にCNT層および金属メッキ層が二層に分離した状態で形成されていることが確認された。また、得られた積層体シートの密着の程度を評価するために該積層体シートを垂直に折り曲げた。その結果、CNT層および金属メッキ層の剥離等は認められなかった。すなわち、本例によると、樹脂バインダを実質的に使用することなく、CNT層および金属メッキ層が絶縁性基材上に強固に固着した積層体シートが製造されたことを確認した。
【0055】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0056】
例えば、上述した実施形態では、メッキ液44aと、該メッキ液44aと混ざらない有機溶媒44bとを相互に分離した状態で収容したメッキ処理槽44を用いる場合を例示したが、電解メッキ装置40の構成はこれに限定されない。例えば図4に示すように、メッキ処理槽44にメッキ液44aを単独で収容し、搬送中のCNT層20付絶縁性基材10を押えローラ42aで押さえつけることで、その一部がメッキ液44a内に浸漬するように構成してもよい。かかる場合でも、CNT層20付絶縁性基材10のメッキされる部位(メッキ液44a内に浸漬した部位)と陰極48との距離が一定に保たれるので、メッキ析出量に場所による偏りが生じる事象が解消または緩和され、より均一な厚みの金属メッキ層30を形成することができる。
【0057】
また、上述した実施形態では、絶縁性基材10の片面にCNT層20および金属メッキ層30が形成されている場合を例示したが、これに限定されない。例えば、積層体シート100は、絶縁性基材10の両面にCNT層20および金属メッキ層30がそれぞれ形成されていてもよい。かかる態様であっても、前述した作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0058】
10 絶縁性基材
20 カーボンナノチューブ(CNT)層
30 金属メッキ層
40 電解メッキ装置
42 搬送ローラ
44 メッキ処理槽
44a メッキ液
44b 有機溶媒
46 陽極
48 陰極
100 積層体シート
図1
図2
図3
図4