(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
  以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
 
【0015】
  本開示において「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
 
【0016】
  本開示において「感圧接着」とは、使用温度範囲で、例えば0℃以上、50℃以下の範囲で恒久的に粘着性であり、軽い圧力で様々な表面に接着し、相変化(液体から固体へ)を呈さない材料又は組成物の特性を意味する。
 
【0017】
  本開示の一実施態様のアクリル系感圧接着剤は、重量平均分子量が約450,000以下のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、無機フィラー、分散剤、及びエポキシ架橋剤及びビスアミド架橋剤からなる群より選択される架橋剤を含む。無機フィラーの含有量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して1〜50質量部である。
 
【0018】
  高い低温初期接着力が得られるように感圧接着剤の組成を調整したときに、同時に高い保持力を達成することは従来困難であると考えられてきた。いかなる理論に拘束されることを望むわけではないが、本開示のアクリル系感圧接着剤が低温での高い初期接着力のみならず高い保持力を同時にもたらす理由は以下のようなものであると推定される。本開示のアクリル系感圧接着剤を用いて形成される感圧接着層では、重量平均分子量が約450,000以下と比較的低分子量の、すなわち比較的短いポリマー主鎖を有するカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのカルボキシル基と無機フィラーとの間で形成される非共有結合性架橋と、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと架橋剤との反応により形成された共有結合性架橋が併存している。非共有結合性架橋は、感圧接着層を変形させるとその一部が一旦切断されその後同じ場所又は別の場所で再形成されるような、共有結合性架橋よりも弱い架橋であることから、感圧接着層に低温での濡れ性を付与するとともにいくらかの凝集力を付与する。一方、共有結合性架橋は感圧接着層にベースとなる凝集力を付与して感圧接着層に必要な粘弾性特性を担保している。また、過度に高い凝集力は、感圧接着層を硬くして感圧接着層と被着体表面との間での界面剥離を生じさせやすくするため、保持力には不利に作用するところ、比較的短いポリマー主鎖はポリマー鎖のエンタングルメント(絡み合い)に起因した凝集力の過度の上昇を抑制している。このように、非共有結合性架橋と共有結合性架橋の2つの架橋様式が存在し、かつポリマー主鎖が比較的短いことが、本開示のアクリル系感圧接着剤を用いて形成された感圧接着層における保持力と低温での初期接着力の両立に寄与していると考えられる。
 
【0019】
  カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分として、これとカルボキシル基を含有するモノエチレン性不飽和モノマー(カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマー)とを共重合することにより得ることができる。カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは粘着性ポリマーであってよい。粘着性ポリマーとは使用温度(例えば5℃、10℃、15℃、20℃又は25℃)でタックを有して感圧接着剤に感圧接着性を付与するポリマーを意味する。
 
【0020】
  モノエチレン性不飽和モノマーは、ポリマーの主成分となるものであって、一般には式CH
2=CR
1COOR
2(式中、R
1は水素又はメチル基であり、R
2は直鎖、環状又は分岐状のアルキル基、フェニル基、アルコキシアルキル基、フェノキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は環状エーテル基である。)で表されるものに加えて、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類も含まれる。式CH
2=CR
1COOR
2で表されるモノエチレン性不飽和モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル含有(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。モノエチレン性不飽和モノマーは、必要に応じて、1種又は2種以上のモノエチレン性不飽和モノマーを使用することができる。
 
【0021】
  カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸;ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などを挙げることができる。
 
【0022】
  カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、例えばモノエチレン性不飽和モノマーを約85質量部以上、約90質量部以上、又は約92質量部以上、約99.5質量部以下、約99質量部以下、又は約98質量部以下と、カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーを約0.5質量部以上、約1質量部以上、又は約2質量部以上、約15質量部以下、約10質量部以下、又は約8質量部以下の量で用いて共重合することにより得ることができる。
 
【0023】
  カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は約450,000以下である。いくつかの実施態様において、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、約100,000以上、約150,000以上、又は約200,000以上、約400,000以下、約350,000以下、又は約300,000以下である。本開示における重量平均分子量は、GPC法による標準ポリスチレンで換算した分子量を意味する。
 
【0024】
  いくつかの実施態様において、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、約−30℃以下、約−35℃以下、又は約−40℃以下であり、約−80℃以上、約−70℃以上、又は約−60℃以上である。Tgが上記範囲であることにより感圧接着層に十分な凝集力と接着性を付与することができる。
 
【0025】
  カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、各ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、FOXの式(下式)より求めることができる。
【数1】
(Tg
1:成分1のホモポリマーのガラス転移温度
  Tg
2:成分2のホモポリマーのガラス転移温度
  ・・・
  Tg
n:成分nのホモポリマーのガラス転移温度
  X
1:重合の際に添加した成分1のモノマーの質量分率
  X
2:重合の際に添加した成分2のモノマーの質量分率
  ・・・
  X
n:重合の際に添加した成分nのモノマーの質量分率
  X
1+X
2+・・・+X
n=1)
 
【0026】
  無機フィラーとして種々の公知の無機フィラーを使用することができる。無機フィラーとして、例えば炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化チタン(二酸化チタン)、酸化鉄系顔料、水酸化鉄系顔料、酸化クロム系顔料、スピネル型焼成系顔料、クロム酸系顔料、クロムバーミリオン系顔料、紺青系顔料、アルミニウム粉末系顔料、ブロンズ粉末系顔料、カーボンブラックなどの顔料、タルク、カオリン、アルミナ、ジルコニア、シリカ、炭酸カルシウム、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウムなどが挙げられる。これらの無機フィラーは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
 
【0027】
  一実施態様では無機フィラーは顔料である。顔料は塩基性顔料であることが有利である。無機フィラーとして塩基性顔料を用いることで、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのカルボキシル基との非共有結合性架橋をより有利に形成することができる。塩基性顔料として、前述の顔料のうち、酸化チタンなどの金属酸化物が挙げられる。無機フィラーとして酸化チタン、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛などの白色顔料を用いると、下地(基材)の隠蔽性を備えた白色の感圧接着層を得ることができる。分散性、低温初期接着力、及び保持力の点で酸化チタンを用いることが有利であり、無機フィラー自身の安定性の点でルチル型酸化チタンを用いることが特に有利である。
 
【0028】
  無機フィラーは、球状、針状、平板状又はフレーク状などの様々な形状の粒子であってよい。分散性が良好であることから無機フィラーは球状粒子であることが望ましい。
 
【0029】
  無機フィラーは、その分散性をより高めるために、シラン、シラザン、アルミネート、チタネートなどの表面処理剤又はカップリング剤で表面処理されていてもよい。酸化チタンを無機フィラーとして用いる場合は、このような表面処理を施すことにより、分散性を高めるだけでなく化学安定性も付与して、酸化チタンの劣化及びそれに伴う黄変を防止又は抑制することができる。
 
【0030】
  いくつかの実施態様において、無機フィラーの平均一次粒径は、約0.10μm以上、約0.15μm以上、又は約0.20μm以上、約2μm以下、約1μm以下、又は約0.80μm以下である。無機フィラーの平均一次粒径を上記範囲とすることにより、無機フィラーをより均一に感圧接着剤に分散して、低温初期接着力及び保持力を好適な範囲で得ることができる。無機フィラーの平均一次粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定を用いて得られる体積累積粒径D
50である。
 
【0031】
  無機フィラーの配合量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して約1質量部以上、約50質量部以下である。無機フィラーの配合量は、上記範囲内で、無機フィラーの種類、表面処理の有無、平均一次粒径などを考慮して、感圧接着剤をゲル化させずに無機フィラーを感圧接着剤中に均一に分散できるように適宜選択することができる。いくつかの実施態様において、無機フィラーの配合量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して約10質量部以上、又は約15質量部以上、約45質量部以下、又は約40質量部以下である。別のいくつかの実施態様において、例えば平均一次粒径が比較的小さいことが多いシリカなどを無機フィラーとして使用する場合、無機フィラーの配合量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して約1質量部以上、又は約2質量部以上、約10質量部以下、又は約5質量部以下である。さらに別のいくつかの実施態様において、例えば無機フィラーとして酸化チタンなどの白色顔料を用いて感圧接着層に隠蔽性を付与する場合、無機フィラーの配合量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して約20質量部以上、又は約30質量部以上、約50質量部以下、又は約45質量部以下である。
 
【0032】
  分散剤として、無機フィラーを感圧接着剤中に分散するための種々の公知の分散剤、例えばアニオン性化合物、カチオン性化合物及び非イオン性化合物を包含する低分子分散剤又はアニオン性、カチオン性若しくは非イオン性の極性基を有する高分子分散剤を用いることができる。
 
【0033】
  分散剤の配合量は、無機フィラー100質量部に対して約1質量部以上、約5質量部以上、又は約10質量部以上、約100質量部以下、約50質量部以下、又は約30質量部以下とすることができる。
 
【0034】
  一実施態様では分散剤はアミノ基含有ポリマーを含む。アミノ基含有ポリマーは、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましく、芳香族ビニルモノマーに由来するモノマー単位を含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー(以下、本開示において「アミノ基含有非芳香族(メタ)アクリル系ポリマー」という場合がある。)であることが特に好ましい。アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー、特に芳香族ビニルモノマーに由来するモノマー単位を含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーとの相溶性に優れていることに加えて、無機フィラーとして酸化チタンなどの金属酸化物を用いるときに、これらの無機フィラーの分散性を向上させて感圧接着層の保持力及び低温初期接着力を安定させることができる。
 
【0035】
  芳香族ビニルモノマーに由来するモノマー単位を含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー(アミノ基含有非芳香族(メタ)アクリル系ポリマー)は、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分とし、これとアミノ基含有不飽和モノマーとを共重合することにより得られるものであって、芳香族ビニルモノマーをポリマーの構成成分として含まないものである。アミノ基含有非芳香族(メタ)アクリル系ポリマーは、無機フィラーの分散剤として作用するだけではなく、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと相互作用して、感圧接着層の凝集力を高めることにも寄与していると考えられる。モノエチレン性不飽和モノマーは、芳香族ビニルモノマーを除いてカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様であり、必要に応じて1種又は2種以上のモノエチレン性不飽和モノマーを使用することができる。芳香族ビニルモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルアントラキノン、芳香族アミンの(メタ)アクリルアミド、水酸基含有芳香族化合物の(メタ)アクリレートなどを包含する。芳香族アミンとして、アニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、アミノアントラセン、アミノアントラキノン又はこれらの誘導体が挙げられる。水酸基含有芳香族化合物として、上記芳香族アミンに対応する水酸基含有化合物が挙げられる。
 
【0036】
  アミノ基含有不飽和モノマーとして、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルビニルエーテルなどのジアルキルアミノアルキルビニルエーテルなどが挙げられる。必要に応じて1種又は2種以上のアミノ基含有不飽和モノマーを使用することができる。
 
【0037】
  アミノ基含有非芳香族(メタ)アクリル系ポリマーは、例えばモノエチレン性不飽和モノマーを約80質量部以上、約85質量部以上、又は約90質量部以上、約99.5質量部以下、約99質量部以下、又は約97質量部以下と、アミノ基含有不飽和モノマーを約0.5質量部以上、約1質量部以上、又は約3質量部以上、約20質量部以下、約15質量部以下、又は約10質量部以下の割合で共重合することにより得ることができる。
 
【0038】
  アミノ基含有非芳香族(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、例えば、約1,000以上、約5,000以上、約10,000以上、約500,000以下、約200,000以下、又は約100,000以下とすることができる。
 
【0039】
  いくつかの実施態様では、アミノ基含有非芳香族(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は約0℃以上、約20℃以上、又は約40℃以上、約150℃以下、約135℃以下、又は約120℃以下である。アミノ基含有非芳香族(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと同様にFOXの式を用いて決定することができる。
 
【0040】
  カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有非芳香族(メタ)アクリル系ポリマーの共重合は、ラジカル重合により行なうことが好ましく、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などの公知の重合方法を用いることができる。開始剤として、過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどの有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(AVN)などのアゾ系重合開始剤を用いることができる。開始剤の使用量は、モノマー混合物100質量部に対して、一般に約0.01質量部以上、又は約0.05質量部以上、約5質量部以下、又は約3質量部以下である。
 
【0041】
  エポキシ架橋剤及びビスアミド架橋剤からなる群より選択される架橋剤は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのポリマー鎖間に共有結合性架橋を形成するために用いられる。エポキシ架橋剤として、例えばN,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンジ(メタンアミン)(三菱ガス化学株式会社製:TETRAD−X、綜研化学株式会社製:E−AX、E−5XM)、N,N’−(シクロヘキサン−1,3−ジイルビスメチレン)ビス(ジグリシジルアミン)(三菱ガス化学株式会社製:TETRAD−C、綜研化学株式会社製:E−5C)などが挙げられる。ビスアミド架橋剤として、例えば、1,1’−(1,3−フェニレンジカルボニル)−ビス−(2−メチルアジリジン)、1,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ベンゼン、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、1,8−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)オクタンなどが挙げられる。
 
【0042】
  架橋剤の配合量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、約0.01質量部以上、約0.02質量部以上、又は約0.05質量部以上、約0.5質量部以下、約0.4質量部以下、又は約0.3質量部以下とすることができる。
 
【0043】
  感圧接着剤は、その他の成分として、上記無機フィラー以外のフィラー、酸化防止剤、UV安定剤、粘着付与剤などを含んでもよい。
 
【0044】
  感圧接着剤は溶剤系でもあってもよく、無溶剤系であってもよい。一実施態様では感圧接着剤は溶剤系感圧接着剤である。感圧接着剤に含まれる溶剤として、例えばメタノール、エタノール、ヘキサン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなど又はこれらの混合溶剤が挙げられる。溶剤としてアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステルなどの非プロトン性極性溶剤を含む溶剤を有利に使用することができる。
 
【0045】
  いくつかの実施態様では、感圧接着剤の固形分含量は、約10質量%以上、約20質量%以上、又は約30質量%以上、約95質量%以下、約90質量%以下、又は約80質量%以下である。固形分含量にはカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、無機フィラー、分散剤及び架橋剤、並びに任意に添加されるその他の不揮発成分が含まれる。本開示のアクリル系感圧接着剤は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーが比較的低分子量であること、及びそれらのポリマーと無機フィラーとの間で非共有結合性架橋が形成されることから、剪断力を掛けたときにチキソ性を示し、固形分含量が比較的高い場合であっても良好な塗工性を有している。感圧接着剤の固形分含量が比較的高い実施態様では、感圧接着剤の固形分含量は、約40質量%以上、約50質量%以上、又は約55質量%以上、約99質量%以下、約95質量%以下、又は約90質量%以下である。
 
【0046】
  感圧接着剤は、無機フィラーと分散剤とを混合したプレミックス剤を含んでもよい。プレミックス剤の形態で、すなわち分散剤中に予め分散した状態で無機フィラーを感圧接着剤に含ませることによって、より多くの無機フィラーを感圧接着剤中に安定に分散することができる。
 
【0047】
  プレミックス剤は、無機フィラーと分散剤とを公知の方法で混合することにより得ることができる。混合には、例えば、ペイントシェイカー(株式会社シンキー製)、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、三本ロールミルなどを用いることができる。必要に応じて、水系溶剤又は有機溶剤を混合時に使用してもよい。
 
【0048】
  プレミックス剤に含まれる分散剤の量を、感圧接着剤に含まれる分散剤の100質量%としてもよい。分散剤をプレミックス剤とは別に感圧接着剤に添加してもよい。
 
【0049】
  プレミックス剤において、分散剤の配合量は、無機フィラー100質量部に対して約1質量部以上、約5質量部以上、又は約10質量部以上、約100質量部以下、約50質量部以下、又は約30質量部以下とすることができる。
 
【0050】
  感圧接着剤は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、無機フィラーと、分散剤と、架橋剤とを、公知の方法を用いて混合することにより得ることができる。
 
【0051】
  例えば、各成分をほぼ同時に又は順次混合容器に入れ、ペイントシェイカー(株式会社シンキー製)、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、三本ロールミルなどを用いて混合してもよい。必要に応じて、水系溶剤又は有機溶剤を混合時に使用してもよい。無機フィラーを水系溶剤又は有機溶剤中に分散してから、他の成分と混合することもできる。
 
【0052】
  上述のとおり、無機フィラーの全量又は一部と分散剤の全量又は一部とを混合してプレミックス剤を調製した後、得られたプレミックス剤と残りの成分を公知の方法で混合して、感圧接着剤を調製することもできる。一実施態様では、感圧接着剤の製造方法は、無機フィラーと分散剤とを混合してプレミックス剤を調製すること、及び前記プレミックス剤と、重量平均分子量が450,000以下のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、エポキシ架橋剤及びビスアミド架橋剤からなる群より選択される架橋剤とを混合することを含む。
 
【0053】
  本開示のアクリル系感圧接着剤を用いてマーキングフィルムを形成することができる。一実施態様のマーキングフィルムは、ベースフィルム層と、アクリル系感圧接着剤の硬化物を含む感圧接着層とを含む。
 
【0054】
  ベースフィルム層は透明材料であってもよく、不透明材料又は着色された材料で形成されていてもよい。ベースフィルム層として、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルムなどを使用することができる。
 
【0055】
  ベースフィルム層と感圧接着層は直接接触していてもよく、これらの層の間に他の層、例えば他の接着層、着色層、金属層、印刷層、バルク層などが介在してもよい。ベースフィルム層の上に他の層、例えば他の接着層、着色層、金属層、印刷層、バルク層、表面保護層、クリア層などが積層されていてもよい。マーキングフィルムはプライマー層などの他の機能層をさらに有してもよい。
 
【0056】
  マーキングフィルムは、ベースフィルム層とは反対側の感圧接着層の表面にライナーを有していてもよい。任意の構成要素であるライナーとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロースなどのプラスチック材料、紙、及び前記プラスチック材料で被覆された紙などを挙げることができる。これらのライナーは、シリコーンなどにより剥離処理した表面を有してもよい。
 
【0057】
  感圧接着層は中実であってもよく、多孔質又は発泡体であってもよい。感圧接着層の接着面は平坦であってもよく、凹凸を有してもよい。凹凸接着面には、感圧接着層の接着面に、感圧接着剤の硬化物を含む凸部と、その凸部の周りを取り囲んだ凹部とが形成され、被着体に接着された状態で被着体表面と接着面との間に凹部が画する外部と連通した連通路が形成される接着面を含む。凹凸接着面を形成する方法の一例を以下説明する。
 
【0058】
  所定の凹凸構造を有する剥離面を持つライナーを用意する。このライナーの剥離面に、感圧接着剤を塗布し、必要に応じて加熱して、感圧接着層を形成する。これにより、感圧接着層のライナーと接する面(これがマーキングフィルムにおける接着面となる。)に、ライナーの凹凸構造(ネガ構造)を転写し、接着面に所定の構造(ポジ構造)を有する凹凸接着面を形成する。接着面の凹凸は、前述したように、被着体に凸部が接着した際に連通路が形成可能な溝を含むように予め設計される。
 
【0059】
  感圧接着層の溝は、マーキングフィルムを施工する際に気泡残りを防止できる限り、一定形状の溝を規則的パターンに沿って接着面に配置して規則的パターンの溝を形成してもよく、不定形の溝を配置し不規則なパターンの溝を形成してもよい。複数の溝が互いに略平行に配置される様に形成される場合、溝の配置間隔は約10μm以上、約2000μm以下であることが好ましい。溝の深さ(接着面からベースフィルム層の方向に向かって測定した溝の底までの距離)は、通常約10μm以上、約100μm以下である。溝の形状も、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。例えば、溝の形状を、接着面に垂直な方向の溝の断面において、略矩形(台形を含む)、略半円形、又は略半楕円形とすることができる。
 
【0060】
  マーキングフィルムにおいて、各層の厚さは特に限定されない。ベースフィルム層の厚さは、例えば約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約500μm以下、約300μm以下、又は約200μm以下とすることができる。感圧接着層の厚さは、約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約200μm以下、約100μm以下、又は約50μm以下とすることができる。ライナーの厚さは、通常約10μm以上、又は約25μm以上、約500μm以下、又は約200μm以下とすることができる。
 
【0061】
  マーキングフィルムは公知の方法によって製造することができる。例えば、感圧接着剤又は感圧接着剤を必要に応じて有機溶剤などで希釈した溶液を、ナイフコート、バーコートなどによりライナー上に塗布し乾燥して、感圧接着層を形成する。架橋剤を反応させるために乾燥時に熱風、オーブンなどを用いて感圧接着層を加熱してもよい。得られた感圧接着層の上にベースフィルム層をドライラミネートなどにより積層してマーキングフィルムを形成することができる。
 
【0062】
  本開示のマーキングフィルムは、車両、外壁及び内壁を含む建築物、交通標識、包装材料、看板等に使用することができ、特に低温環境下又は気温変化の大きい環境下で好適に使用することができる。
 
【0063】
  本明細書においては、表1に示す以下の略称を使用することがある。
 
【実施例】
【0065】
  以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0066】
<分散剤(D1)の製造>
  MMA60質量部、BMA34質量部、及びDMAEMA6質量部を酢酸エチル150質量部に溶解させ、重合開始剤としてジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(商品名V−601、和光純薬工業株式会社製)0.6質量部を加えた後、窒素雰囲気下65℃で24時間反応させ、分散剤(D1)の酢酸エチル溶液(固形分40%)を調製した。D1の重量平均分子量(Mw)は70,000、ガラス転移温度(Tg)は63℃であった。Tgは、各ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、FOXの式(下式)より求めた。
【数2】
(Tg
1:成分1のホモポリマーのガラス転移温度
  Tg
2:成分2のホモポリマーのガラス転移温度
  ・・・
  Tg
n:成分nのホモポリマーのガラス転移温度
  X
1:重合の際に添加した成分1のモノマーの質量分率
  X
2:重合の際に添加した成分2のモノマーの質量分率
  ・・・
  X
n:重合の際に添加した成分nのモノマーの質量分率
  X
1+X
2+・・・+X
n=1)
【0067】
<粘着性ポリマー1(ADH1)の製造>
  2EHA64質量部、BA30質量部、及びAA6質量部を、酢酸エチル66.7質量部に溶解させ、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名V−65、和光純薬工業株式会社製)0.6質量部を加えた後、窒素雰囲気下75℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー1(ADH1)の酢酸エチル溶液(固形分60%)を調製した。ADH1の重量平均分子量(Mw)は260,000、ガラス転移温度(Tg)は−57℃であった。
【0068】
<粘着性ポリマー2(ADH2)の製造>
  2EHA64質量部、BA30質量部、及びAA6質量部を、酢酸エチル66.7質量部に溶解させ、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名V−65、和光純薬工業株式会社製)0.7質量部を加えた後、窒素雰囲気下75℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー2(ADH2)の酢酸エチル溶液(固形分60%)を調製した。ADH2の重量平均分子量(Mw)は220,000、ガラス転移温度(Tg)は−57℃であった。
【0069】
<粘着性ポリマー3(ADH3)の製造>
  2EHA64質量部、BA30質量部、及びAA6質量部を、酢酸エチル66.7質量部に溶解させ、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(商品名V−601、和光純薬工業株式会社製)0.65質量部を加えた後、窒素雰囲気下65℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー3(ADH2)の酢酸エチル溶液(固形分60%)を調製した。ADH3の重量平均分子量(Mw)は250,000、ガラス転移温度(Tg)は−57℃であった。
【0070】
<粘着性ポリマー4(ADH4)の製造>
  BA94質量部、及びAA6質量部を、酢酸エチル203質量部に溶解させ、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(商品名V−601、和光純薬工業株式会社製)0.2質量部を加えた後、窒素雰囲気下65℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー4(ADH4)の酢酸エチル溶液(固形分33%)を調製した。ADH4の重量平均分子量(Mw)は540,000、ガラス転移温度(Tg)は−48℃であった。
【0071】
<粘着性ポリマー5(ADH5)の製造>
  2EHA64質量部、BA30質量部、及びAA6質量部を、酢酸エチル66.7質量部に溶解させ、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(商品名V−601、和光純薬工業株式会社製)0.5質量部を加えた後、窒素雰囲気下75℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー5(ADH5)の酢酸エチル溶液(固形分60%)を調製した。ADH5の重量平均分子量(Mw)は300,000、ガラス転移温度(Tg)は−57℃であった。
【0072】
<粘着性ポリマー6(ADH6)の製造>
  2EHA94質量部、及びAA6質量部を、酢酸エチル66.7質量部に溶解させ、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(商品名V−601、和光純薬工業株式会社製)0.7質量部を加えた後、窒素雰囲気下75℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー6(ADH6)の酢酸エチル溶液(固形分60%)を調製した。ADH6の重量平均分子量(Mw)は190,000、ガラス転移温度(Tg)は−60℃であった。
【0073】
<粘着性ポリマー7(ADH7)の製造>
  2EHA58質量部、BA36質量部、AN1質量部、及びAA5質量部を、酢酸エチル203質量部に溶解させ、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(商品名V−601、和光純薬工業株式会社製)0.2質量部を加えた後、窒素雰囲気下75℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー7(ADH7)の酢酸エチル溶液(固形分33%)を調製した。ADH7の重量平均分子量(Mw)は500,000、ガラス転移温度(Tg)は−53℃であった。
【0074】
<粘着性ポリマー8(ADH8)の製造>
  BA78質量部、MA17質量部、AN3質量部、及びAA2質量部を、酢酸エチル100質量部に溶解させ、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(商品名V−601、和光純薬工業株式会社製)0.5質量部を加えた後、窒素雰囲気下75℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー8(ADH8)の酢酸エチル溶液(固形分50%)を調製した。ADH8の重量平均分子量(Mw)は360,000、ガラス転移温度(Tg)は−40℃であった。
【0075】
<粘着性ポリマー9(ADH9)の製造>
  BA95質量部、AN3質量部、及びAA2質量部を、酢酸エチル100質量部に溶解させ、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(商品名V−601、和光純薬工業株式会社製)0.5質量部を加えた後、窒素雰囲気下75℃で24時間反応させ、粘着性ポリマー9(ADH9)の酢酸エチル溶液(固形分50%)を調製した。ADH9の重量平均分子量(Mw)は350,000、ガラス転移温度(Tg)は−49℃であった。
【0076】
  本実施例においてマーキングフィルムの作製に使用した材料を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
<評価方法>
  マーキングフィルムの特性を以下の方法に従って評価した。
【0079】
1.リワーク性
  試験片を300mm長さ、210mm幅に切断する。試験片をパルテック製メラミン焼き付け塗装板に23℃の環境下においてスキージで貼り付ける。試験片を手で高速剥離する。試験片の変形なく容易に剥離できた場合は「良」、試験片の変形はないが剥離が重い場合は「不良」、タックが強く高速での剥離が困難であった場合は「劣悪」と判断する。
【0080】
2.20℃初期接着力
  試験片を150mm長さ、25mm幅に切断する。JIS  Z  0237  8.2.3.に準拠して試験片をパルテック製メラミン焼き付け塗装板に20℃の環境下で貼り付ける。試験片を20℃環境下に5分間放置する。20℃の環境下で引張試験機(株式会社オリエンテック製テンシロン「Tensilon(商標)」)により180度接着力を測定する。掴み間隔は100mm、剥離速さは300mm/分とする。
【0081】
3.20℃常態接着力
  試験片を150mm長さ、25mm幅に切断する。JIS  Z  0237  8.2.3.に準拠して試験片をパルテック製メラミン焼き付け塗装板に20℃の環境下で貼り付ける。試験片を20℃環境下に48時間放置する。20℃の環境下で引張試験機(株式会社オリエンテック製テンシロン「Tensilon(商標)」)により180度接着力を測定する。掴み間隔は100mm、剥離速さは300mm/分とする。
【0082】
4.5℃初期接着力
  試験片を150mm長さ、25mm幅に切断する。JIS  Z  0237  8.2.3.に準拠して試験片をパルテック製メラミン焼き付け塗装板に5℃の環境下で貼り付ける。試験片を5℃環境下に5分間放置する。5℃の環境下で引張試験機(株式会社オリエンテック製テンシロン「Tensilon(商標)」)により180度接着力を測定する。掴み間隔は100mm、剥離速さは300mm/分とする。低温接着性として、5℃初期接着力が6N/25mm未満であった場合「不良」と判断する。5℃初期接着力が6N/25mm以上であった場合「良」と判断する。
【0083】
5.5℃常態接着力
  試験片を150mm長さ、25mm幅に切断する。JIS  Z  0237  8.2.3.に準拠して試験片をパルテック製メラミン焼き付け塗装板に5℃の環境下で貼り付ける。試験片を5℃環境下に24時間放置する。5℃の環境下で引張試験機(株式会社オリエンテック製テンシロン「Tensilon(商標)」)により180度接着力を測定する。掴み間隔は100mm、剥離速さは300mm/分とする。
【0084】
6.定荷重剥離
  試験片を150mm長さ、25mm幅に切断する。試験片のうち長さ50mmをアルミニウム基材にスキージで貼り付け23℃環境下に24時間放置する。試験片の自由端(貼り付けていない部分)に1kg重のおもりを固定し、おもりを鉛直下方に設置してアルミニウム基材に対して90度方向に荷重をかける。基材に貼り付けた50mmの試験片が剥離するまでの時間を測定する。保持力として、定荷重剥離時間が100秒未満の場合「不良」と判断し、定荷重剥離時間が100秒以上1000秒未満の場合「良」と判断し、定荷重剥離時間が1000秒以上の場合「優良」と判断する。
【0085】
<例1>
  無機フィラー(F1)、分散剤(D1)及びメチルエチルケトンを混合して白色顔料分散溶液(プレミックス)を調製した。無機フィラー1と分散剤の質量比は固形分で5:1であった。白色顔料分散溶液の固形分は約66%であった。白色顔料分散溶液と粘着性ポリマー1(ADH1)を混合して白色接着剤溶液を調製した。粘着性ポリマー1は100質量部、フィラー1は40質量部及び分散剤1は8質量部であった。白色接着剤溶液に架橋剤1(CL1)を粘着性ポリマー1が100質量部に対して架橋剤1を0.10質量部の量で添加した。溶液の固形分は約58%であった。白色接着剤溶液を剥離紙1(L1)のシリコーン処理面上にナイフコータで塗布した。塗布層を95℃で5分間乾燥して、厚さ39μmの白色感圧接着層を得た。白色感圧接着層をエンボス処理された170μm厚ポリ塩化ビニルフィルムの平滑面と貼り合わせて例1のマーキングフィルムを得た。
【0086】
<例2〜13及び比較例1〜8>
  例2〜13及び比較例1〜8のマーキングフィルムを例1のマーキングフィルムと同様に作製した。これらのマーキングフィルムの粘着性ポリマーの種類、フィラーの量、分散剤の量、架橋剤の種類及び量、粘着剤厚さ、及び剥離紙の種類を表3に示す。
【0087】
  例1〜13及び比較例1〜8のマーキングフィルムの評価結果を表4に示す。また、フィラー量が30質量部、剥離紙がL1で感圧接着層の厚さがほぼ同等の例9(粘着性ポリマーの重量平均分子量190,000、以下括弧内は粘着性ポリマーの重量平均分子量を示す。)、例3(220,000)、例4(250,000)及び例8(300,000)並びに比較例2(540,000)、フィラー量が30質量部、剥離紙がL2で感圧接着層の厚さがほぼ同等の例11(190,000)、例5(220,000)、例6(250,000)、例10(300,000)及び例13(350,000)について、重量平均分子量と定荷重剥離の関係を
図1にグラフで示す。
【0088】
【表3】
【表4】
【0089】
  本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることは当業者には明らかである。
本開示は以下の態様1〜9を包含する。
[態様1]
  重量平均分子量が450,000以下のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、
  無機フィラー、
  分散剤、及び
  エポキシ架橋剤及びビスアミド架橋剤からなる群より選択される架橋剤
を含み、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して前記無機フィラーの含有量が1〜50質量部であるアクリル系感圧接着剤。
[態様2]
  前記無機フィラーが顔料である態様1に記載のアクリル系感圧接着剤。
[態様3]
  前記無機フィラーの平均粒径が0.10μm〜2μmである態様1又は2のいずれかに記載のアクリル系感圧接着剤。
[態様4]
  前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して前記無機フィラーの含有量が10〜50質量部である態様1〜3のいずれかに記載のアクリル系感圧接着剤。
[態様5]
  前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が100,000〜400,000である態様1〜4のいずれかに記載のアクリル系感圧接着剤。
[態様6]
  前記アクリル系感圧接着剤が溶剤系感圧接着剤である態様1〜5のいずれかに記載のアクリル系感圧接着剤。
[態様7]
  前記アクリル系感圧接着剤の固形分含量が50質量%以上である態様6に記載のアクリル系感圧接着剤。
[態様8]
  ベースフィルム層と、態様1〜7のいずれかに記載のアクリル系感圧接着剤の硬化物を含む感圧接着層とを含むマーキングフィルム。
[態様9]
  無機フィラーと分散剤とを混合してプレミックス剤を調製すること、及び
  前記プレミックス剤と、重量平均分子量が450,000以下のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、エポキシ架橋剤及びビスアミド架橋剤からなる群より選択される架橋剤とを混合することを含む、態様1〜7のいずれかに記載のアクリル系感圧接着剤の製造方法。