特許第6809857号(P6809857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6809857-螺旋管の製管方法及び製管装置 図000002
  • 特許6809857-螺旋管の製管方法及び製管装置 図000003
  • 特許6809857-螺旋管の製管方法及び製管装置 図000004
  • 特許6809857-螺旋管の製管方法及び製管装置 図000005
  • 特許6809857-螺旋管の製管方法及び製管装置 図000006
  • 特許6809857-螺旋管の製管方法及び製管装置 図000007
  • 特許6809857-螺旋管の製管方法及び製管装置 図000008
  • 特許6809857-螺旋管の製管方法及び製管装置 図000009
  • 特許6809857-螺旋管の製管方法及び製管装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809857
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】螺旋管の製管方法及び製管装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/32 20060101AFI20201221BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B29C63/32
   F16L1/00 J
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-192571(P2016-192571)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-52009(P2018-52009A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】菅原 宏
(72)【発明者】
【氏名】長束 順一
(72)【発明者】
【氏名】馬場 達郎
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−105267(JP,A)
【文献】 特開2011−104777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/32
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状部材を螺旋状に巻回しながら前記帯状部材の一周違いに隣接する縁どうしを接合することによって、螺旋状の螺旋管を形成する製管方法であって、
環状の外周規制体を前記螺旋管の延伸方向に沿ってスライド可能に設置し、
前記外周規制体の内部に、前記帯状部材における先行して製管された先行螺旋管部の延伸方向の先端部と製管機を配置するとともに、前記製管機によって、前記帯状部材における前記先行螺旋管部に続く後続帯部と前記先行螺旋管部との前記隣接する縁どうしを、前記外周規制体の内周面上で接合させることによって前記先行螺旋管部を延伸させ、
前記延伸に応じて、前記外周規制体を前記延伸方向に前進させることを特徴とする製管方法。
【請求項2】
帯状部材を螺旋状に巻回しながら前記帯状部材の一周違いに隣接する縁どうしを接合することによって、螺旋状の螺旋管を形成する製管装置であって、
外周規制手段と、製管機を備え、
前記外周規制手段が、環状の外周規制体と、前記外周規制体を前記螺旋管の延伸方向に沿ってスライド可能とするスライド機構とを含み、前記外周規制体の内部に、前記帯状部材における先行して製管された先行螺旋管部の延伸方向の先端部と前記製管機とが配置され、
前記製管機が、前記帯状部材における前記先行螺旋管部に続く後続帯部と前記先行螺旋管部との前記隣接する縁どうしを、前記外周規制体の内周面上で接合させることを特徴とする製管装置。
【請求項3】
前記製管機が、前記後続帯部を前記外周規制体の内側から前記外周規制体へ向けて押し込んで前記外周規制体の内周面上の先行螺旋管部と嵌合させるとともに推進力を得る製管駆動部を含むことを特徴とする請求項2に記載の製管装置。
【請求項4】
前記製管機が、前記先行螺旋管部に対して該先行螺旋管部を構成する帯状部材の延び方向にスライド可能に係止される係止部を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の製管装置。
【請求項5】
前記外周規制体が、周方向に並べられた複数の規制部材と、これら規制部材どうしを分離可能に連結する連結材を含むことを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の製管装置。
【請求項6】
前記スライド機構が、前記外周規制体を前記延伸方向へ案内するレールを含むことを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載の製管装置。
【請求項7】
前記スライド機構が、前記外周規制体の底部の外周面に設けられた車輪を含むことを特徴とする請求項2〜6の何れか1項に記載の製管装置。
【請求項8】
前記スライド機構が、前記外周規制体に対して前記延伸方向に沿う前進力を付与するスライド駆動部を含むことを特徴とする請求項2〜7の何れか1項に記載の製管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状部材を螺旋状に巻回することによって螺旋管を製造する方法及び装置に関し、例えば老朽化した下水道管等の既設管を螺旋管(更生管)によってライニングして更生する既設管更生工法等に適した製管方法及び製管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水管等の既設管を更生管でライニングすることによって更生することは公知である。例えば特許文献1等には、既設管更生工法の一例として、SPR(Spiral Pipe Renewal)工法が開示されている。該工法によれば、製管機を用いて、合成樹脂製の帯状部材を既設管の内周面に沿って螺旋状に巻回しながら、前記帯状部材における、先行して螺旋管状に形成された先行螺旋管部と後続帯部との互いに隣接する縁の嵌合部どうしを嵌合させる。先行螺旋管部が製管されていくのに伴って、製管機が推進(自走)される。
【0003】
この種の製管機には、先行螺旋管部の内部に内周規制体が設けられている。例えば特許文献1の製管機は、内周規制体(リンクローラ)として、複数の案内ローラと環状のフレームを有している。複数の案内ローラが環状フレームの周方向に間隔を置いて配置されている。先行螺旋管部が各案内ローラに押し当てられることによって、先行螺旋管部の形状が規制されている。
【0004】
特許文献2の製管機は、内周規制体として、放射状に延びる複数のフレームを備えている。各フレームの先端部に案内ローラが設けられている。これら案内ローラに先行螺旋管部の内周面が押し当てられることによって、先行螺旋管部に張力が働いている。後続帯部を先行螺旋管部との嵌合位置へ向けて押し込むと、先行螺旋管部が前記張力による反力のみで対抗することで、後続帯部の嵌合部が先行螺旋管部の嵌合部と嵌合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4866428号公報
【特許文献2】特許第4505142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の製管方法においては、更生管の内部に内周規制体が配置されるために、流水阻害を招くおそれがあった。そこで、発明者等は、帯状部材を既設管の内周面に押し付けて製管することによって、既設管を先行螺旋管部の形状規制体とすることを着想した。一方、既設管の内周面は、必ずしも平滑ではなく、経年変化等によって凹凸が形成されている場合がある。これに倣って製管すると、更生管の内周面にも凹凸が出来てしまい、断面形状が均一にならない。
本発明は、かかる事情に鑑み、螺旋状の更生管等の螺旋管を製管する際、螺旋管を均一な断面形状にでき、かつ内周規制体を省略しても製管可能とし、既設管更生工法に適用する場合には流水阻害を抑制又は緩和できる製管装置及び製管方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明方法は、帯状部材を螺旋状に巻回しながら前記帯状部材の一周違いに隣接する縁どうしを接合することによって、螺旋状の螺旋管を形成する製管方法であって、
環状の外周規制体を前記螺旋管の延伸方向に沿ってスライド可能に設置し、
前記外周規制体の内部に、前記帯状部材における先行して製管された先行螺旋管部の延伸方向の先端部と製管機を配置するとともに、前記製管機によって、前記帯状部材における前記先行螺旋管部に続く後続帯部と前記先行螺旋管部との前記隣接する縁どうしを、前記外周規制体の内周面上で接合させることによって前記先行螺旋管部を延伸させ、
前記延伸に応じて、前記外周規制体を前記延伸方向に前進させることを特徴とする。
【0008】
当該製管方法によれば、外周規制体の内周面に沿って製管を行なうことによって、先行螺旋管部の形状を外周側から規制することができる。これによって、外周規制体に合わせた均一断面の螺旋管を形成することができる。かつ、内周規制体を省略できる。老朽化した下水道管等の既設管を螺旋管でライニングして更生する既設管更生工法に適用する場合、内周規制体を無くすことで、既設管内の流水阻害を緩和することができる。既設管が非円形断面であってもこれに合わせて外周規制体を作製することによって、既設管と相似の非円形かつ均一な断面の螺旋管を形成することができる。既設管の内周面に凹凸があっても、螺旋管には凹凸が表れないようにすることができる。
【0009】
本発明装置は、帯状部材を螺旋状に巻回しながら前記帯状部材の一周違いに隣接する縁どうしを接合することによって、螺旋状の螺旋管を形成する製管装置であって、
外周規制手段と、製管機を備え、
前記外周規制手段が、環状の外周規制体と、前記外周規制体を前記螺旋管の延伸方向に沿ってスライド可能とするスライド機構とを含み、前記外周規制体の内部に、前記帯状部材における先行して製管された先行螺旋管部の延伸方向の先端部と前記製管機とが配置され、
前記製管機が、前記帯状部材における前記先行螺旋管部に続く後続帯部と前記先行螺旋管部との前記隣接する縁どうしを、前記外周規制体の内周面上で接合させることを特徴とする。
【0010】
当該製管装置によれば、外周規制体の内周面に沿って螺旋管を製管することができ、外周規制体に合わせた均一断面の螺旋管を形成することができる。形成すべき螺旋管形状が非円形断面であっても対応できる。かつ内周規制体を省略でき、前記既設管更生工法に適用する場合には、流水阻害を緩和できる。先行螺旋管部の延伸が進むのに応じて、スライド機構によって外周規制体を前進させる。これによって、常に外周規制体内で製管を行なうことができる。製管機を常に外周規制体内で駆動できる。
【0011】
前記製管機が、前記後続帯部を前記外周規制体の内側から前記外周規制体へ向けて押し込んで前記外周規制体の内周面上の先行螺旋管部と嵌合させるとともに推進力を得る製管駆動部を含むことが好ましい。
これによって、後続帯部を外周規制体の内周面に押し当てながら先行螺旋管部と嵌合させることができる。更に、外周規制体によって先行螺旋管部の形状を確実に規制することができ、螺旋管を外周規制体に倣った均一断面にすることができる。更に、押し込み力の周方向分力を推進反力として、製管機を外周規制体の周方向へ推進させることで、先行螺旋管部を延伸させることができる。
【0012】
前記製管機が、前記先行螺旋管部に対して該先行螺旋管部を構成する帯状部材の延び方向にスライド可能に係止される係止部を含むことが好ましい。
これによって、製管機が後続帯部等からのモーメントによって回転したり帯状部材から脱落したりするのを防止でき、安定的に製管を行なうことができる。
【0013】
前記外周規制体が、周方向に並べられた複数の規制部材と、これら規制部材どうしを分離可能に連結する連結材を含むことが好ましい。
これによって、外周規制体の設置作業及び施工後の撤去作業を容易化できる。また、規制部材の数や隣接する規制部材どうし間の角度等を調節することによって、形成すべき螺旋管の大きさや断面形状に容易に対応できる。
【0014】
前記スライド機構が、前記外周規制体を前記延伸方向へ案内するレールを含むことが好ましい。
これによって、外周規制体を延伸方向へ確実にスライドさせることができる。前記既設管更生工法に適用する場合、前記レールは、既設管の内壁に敷設することが好ましい。
【0015】
前記スライド機構が、前記外周規制体の底部の外周面に設けられた車輪を含むことが好ましい。
これによって、外周規制体のスライド操作を容易化できる。外周規制体が重くても、人力でスライド可能となる。
【0016】
前記スライド機構が、前記外周規制体に対して前記延伸方向に沿う前進力を付与するスライド駆動部を含むことが好ましい。
これによって、作業者の負担を軽減できる。スライド駆動部は、外周規制体を牽引するウィンチ(牽引機)でもよく、外周規制体に設けた車輪を回転駆動させるモータでもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る製管方法及び製管装置によれば、螺旋管を均一な断面形状に製管できる。かつ、内周規制体を省略しても製管可能であり、既設管更生工法に適用する場合には流水阻害を抑制又は緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1実施形態を示し、老朽化した既設管を製管装置によって更生する様子を示す側面断面図である。
図2図2は、図1のII−II線に沿う正面断面図である。
図3図3は、前記製管装置の外周規制手段の斜視図である。
図4図4(a)は、同図(b)のIVa−IVa線に沿う、前記外周規制手段の底部の規制ユニットの正面断面図である。図4(b)は、同図(a)のIVb−IVb線に沿う、前記規制ユニットの側面断面図である。
図5図5は、前記製管装置の製管機を模式的に示す正面図である。
図6図6(a)は、図5のVIa−VIa線に沿う断面図である。図6(b)は、図5のVIb−VIb線に沿う断面図である。
図7図7は、更生施工済みの既設管を示す側面断面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態を示し、製管装置によって更生施工中の既設管の正面断面図である。
図9図9(a)は、同図(b)のIXa−IXa線に沿う、前記第2実施形態に係る外周規制手段の底部の規制ユニットの正面断面図である。図9(b)は、同図(a)のIXb−IXb線に沿う、前記規制ユニットの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図7に示すように、本発明形態は、老朽化した既設管1を更生するものである。既設管1としては、下水道管、上水道管、農業用水管、ガス管等が挙げられる。図2に示すように、既設管1は、非円形断面(真円でない断面)になっている。既設管1の内壁に更生管9(螺旋管)がライニングされている。図7に示すように、更生管9は、発進人孔4から到達人孔4Bまでの間の既設管1の全長にわたって設けられる。更生管9は、長尺の1本の帯状部材90によって構成され、螺旋管状になっている。既設管1の内周と更生管9の外周との間の環状間隙1eには、モルタル等の裏込め材6が充填されている。
【0020】
図1に示すように、製管途中の帯状部材90は、先行螺旋管部91と、後続帯部92とを含む。図2に示すように、帯状部材90が、図2において例えば時計回りの巻回方向に巻回されることで、螺旋管状の先行螺旋管部91が形成されている。図1に示すように、先行螺旋管部91は、既設管1における発進人孔4側(図1において右側)の端部から到達人孔4B側(図1において左側)へ向かって、既設管1の管軸Lに沿う延伸方向へ延伸される。
【0021】
先行螺旋管部91における巻回方向の先端部から未製管の後続帯部92が続いている。後続帯部92は、先行螺旋管部91の内部及び発進人孔4の内部に通されている。
【0022】
図6(a)に示すように、帯状部材90は、一定の断面を有して、同図の紙面直交方向へ延びている。帯状部材90の帯本体90aの材質は、例えばポリ塩化ビニル等の合成樹脂である。帯状部材90の裏側(外周側、図6(a)において下側)に補強帯材96が設けられている。補強帯材96は、鋼板などの金属板によって構成されている。補強帯材96は、帯本体90aよりも外周側(図6(a)において下側)へ突出されているが、帯本体90aと補強帯材96の外周側の面(図6(a)において下面)どうしが互いに面一になっていてもよい。
補強帯材96が省略されていてもよい。平板状の補強帯材が樹脂製の帯本体90aに埋め込まれていてもよい。
帯状部材90の裏側部(外周側部、図6(a)において下側部)には、溝95bが形成されている。溝95bは、帯状部材90と同方向(図6(a)の紙面直交方向)へ延びている。
【0023】
帯状部材90の幅方向の一方側(図6(a)において左側)の縁部には第1嵌合部93が形成されている。帯状部材90の幅方向の他方側(図6(a)において右側)の縁部には、第1嵌合部93を反転させた形状の第2嵌合部94が形成されている。図6(b)に示すように、先行螺旋管部91ひいては更生管9における、一周違いに隣接する縁の嵌合部93,94どうしが互いに凹凸嵌合によって接合されている。
【0024】
図1に示すように、先行螺旋管部91の延伸方向の先端部91e(図1において左端部)に製管装置2が配置されている。製管装置2は、製管機3と、外周規制手段5を備えている。
【0025】
図2及び図3に示すように、外周規制手段5は、外周規制体50と、スライド機構60を含む。外周規制体50は、既設管1の内周面に沿う環状になっている。外周規制体50の軸方向は、既設管1の管軸L図1)に沿っている。外周規制体50は、周方向に複数の規制ユニット50xに分割されており、分解・組立可能になっている。
【0026】
図4に示すように、各規制ユニット50xは、複数の規制部材51と、ユニット内連結材53(連結材)を含む。各規制部材51は、外周規制体50の軸方向(図4(a)の紙面直交方向)へ延びる長板状になっている。規制部材51の外周側(図4(a)において下側)の面には、リブ51bが規制部材51の長手方向(図4(a)の紙面直交方向)へ延びるように形成されている。
なお、規制部材51が、パンチングメタルや格子板等によって構成されていてもよい。
【0027】
規制ユニット50xにおける複数の規制部材51が、互いに幅方向(図4(a)において左右方向)に並べられている。規制部材51の幅方向ひいては複数の規制部材51の並び方向は、外周規制体50の周方向に沿っている。各規制ユニット50xにおける規制部材51どうしが、ユニット内連結材53を介して連結されている。詳細な図示は省略するが、ユニット内連結材53と各規制部材51とは、ボルト等の連結手段によって分離可能に連結されている。
【0028】
ユニット内連結材53は、規制部材51の外周側(図4(a)において下側)に配置され、規制部材51どうしの並び方向(外周規制体50の周方向)へ延びている。更に、ユニット内連結材53には、その配置箇所における既設管1の内周面に合わせた曲率が付与されている。これによって、隣接する規制部材51どうし間の角度が、それらの配置箇所における既設管1の曲率に合わせられている。
なお、ユニット内連結材53は、規制ユニット50xの内周側(図4(a)において上側)に配置されていてもよい。
【0029】
図2及び図3に示すように、複数の規制ユニット50xが環状に並べられている。これら規制ユニット50xが、ユニット間連結材52(連結材)を介して連結されている。ユニット間連結材52は、外周規制体50の内周面に沿う環状になっている。詳細な図示は省略するが、ユニット間連結材52と各規制ユニット50xとは、ボルト等の連結手段によって分離可能に連結されている。ひいては、外周規制体50における規制部材51どうしが、ユニット間連結材52を介して分離可能に連結されている。
なお、ユニット間連結材52は、外周規制体50の外周面に沿って設けられていてもよい。
【0030】
外周規制体50は、スライド機構60によって、既設管1の管軸Lひいては更生管9の延伸方向に沿ってスライド可能となっている。
図1及び図2に示すように、スライド機構60は、複数のレール61と、ウィンチ64を含む。レール61は、既設管1の内周面に例えばアンカーボルト等によって定着されている。レール61の延び方向は、既設管1の管軸Lに沿っている。図3に示すように、このレール61が、隣接する規制ユニット50xどうし間に介在されることによって、外周規制体50と係合されている。外周規制体50は、レール61に対してスライド可能になっている。
【0031】
図1に示すように、既設管1内における外周規制体50の前方(図1において左方)には、ウィンチ64(スライド駆動部)が配置されている。ウィンチ64からのワイヤー65(連繋索体)が、外周規制体50に係着されている。
【0032】
図1及び図2に示すように、外周規制体50の内部に、先行螺旋管部91の延伸方向の先端部91eと、製管機3とが配置されている。
製管機3は、先行螺旋管部91の巻回方向(図2において時計回り)に沿って推進(自走)される。製管機3内に嵌合位置9pが設定されている。嵌合位置9pにおいて、先行螺旋管部91の第1嵌合部93と、後続帯部92の第2嵌合部94との凹凸嵌合(接合)が行われる。
【0033】
図5に示すように、製管機3は、二点鎖線にて示す装置フレーム3aと、製管駆動部10と、ガイド手段20を備えている。装置フレーム3aによって製管駆動部10とガイド手段20の相対位置が固定されている。
【0034】
製管駆動部10は、嵌合位置9pに対して、製管機3の推進方向の前方(図5において左側)、かつ先行螺旋管部91の内周側(図5において上側)に離れて配置されている。製管駆動部10は、一対の駆動ローラ13,13を含む。駆動ローラ13の軸線は、製管機3の推進方向と直交する幅方向(図5において紙面と直交する方向)へ向けられている。一対の駆動ローラ13,13によって、後続帯部92が両側から挟み付けられている。少なくとも一方の駆動ローラ13にモータ等の回転駆動機構(図示省略)が接続されている。回転駆動機構によって、駆動ローラ13が自軸まわりに回転駆動される。駆動ローラ13の回転方向は、後続帯部92を先行螺旋管部91の内周側から嵌合位置9pへ向けて、先行螺旋管部91の径方向に対して斜めに押し込む向きに設定されている。
【0035】
図5に示すように、製管駆動部10よりも外周側(図5において下側)に前後一対のガイド手段20が設けられている。各ガイド手段20は、外周ガイド板21と、内周ローラ22を有している。外周ガイド板21は、扁平な板状になっており、先行螺旋管部91に外周側(図5において下側)から宛がわれている。図6に示すように、外周ガイド板21における後記係止部21f,21gを除く板本体の厚みは、補強帯材96の帯本体90aからの突出量以下である。
【0036】
図5に示すように、内周ローラ22は、軸線を製管機3の幅方向へ向けて、先行螺旋管部91の内周面に接するとともに、自らの軸線まわりに従動回転可能になっている。内周ローラ22は、外周ガイド板21に対して推進方向の前後に少しずれて配置されているが、外周ガイド板21とちょうど対向する位置に配置されていてもよい。外周ガイド板21と内周ローラ22との間に先行螺旋管部91が挟まれている。前後のガイド手段20どうしの間に嵌合位置9pが設定されている。
【0037】
以下、前後のガイド手段20を互いに区別するときは、推進方向前側(図5において左側)のガイド手段20を「前側ガイド手段20F」と表記し、推進方向後側(図5において右側)のガイド手段20を「後側ガイド手段20R」と表記する。
図6(a)に示すように、前側ガイド手段20Fの外周ガイド板21の一側部には、係止部21fが形成されている。係止部21fは、先行螺旋管部91の延伸端部91eの溝95bにスライド可能に係止されている。これによって、前側ガイド手段20Fの外周ガイド板21が、溝95bの幅方向(図6(a)の左右方向)へ移動規制された状態で、溝95bの延び方向(図6(a)の紙面直交方向)へスライド可能になっている。
【0038】
図6(b)に示すように、後側ガイド手段20Rの外周ガイド板21の両側部には、一対の係止部21gが形成されている。これら係止部21gが、嵌合部93,94を挟んで両側の溝95bにスライド可能に係止されている。これによって、後側ガイド手段20Rの外周ガイド板21が、溝95bの幅方向(図6(b)の左右方向)へ移動規制された状態で、溝95bの延び方向(図b(a)の紙面直交方向)へスライド可能になっている。
【0039】
図5において二点鎖線にて簡略的に図示するが、製管機3の装置フレーム3aは、後側ガイド手段20Rの外周ガイド板21のための支持アーム3bを有している。支持アーム3bは、後続帯部92の外周側(図5において下側)の面に沿って、嵌合部93,94と外周規制体50との間へ挿し入れられている。支持アーム3bの先端部に後側ガイド手段20Rの外周ガイド板21が連結されて支持されている。
なお、後側ガイド手段20Rの外周ガイド板21は、嵌合位置9pよりも製管機3の後側(図5において右側)に少しずれて配置されているが、ちょうど嵌合位置9pに配置されていてもよい。
【0040】
既設管1は、製管装置2によって次のようにして更生施工される。
図1に示すように、既設管1の内壁(内周面)に沿って先行螺旋管部91がある程度形成されているものとする。
帯状部材90の後続帯部92を、発進人孔4から先行螺旋管部91の内部を経て、外周規制体50の内部の製管機3へ導入する。
図5に示すように、製管駆動部10の駆動ローラ13を回転駆動させることによって、後続帯部92を嵌合位置9pへ向けて押し込む。押し込み方向は、先行螺旋管部91の径方向に対して斜めに向けられる。この押し込み力の径方向分力によって、嵌合位置9pにおける帯状部材90が外周規制体50の内周面に押し当てられながら、後続帯部92の第2嵌合部94と先行螺旋管部91の第1嵌合部93どうしが、外周規制体50の内周面上で嵌合される。なお、前記押し込み力の径方向分力によって、先行螺旋管部91が外周ガイド板21に押し付けられることによっても、嵌合部93,94どうしが嵌合可能である。また、内周ローラ22によって、先行螺旋管部91を内周側(図5において上側)から押さえることによって、嵌合部93,94どうしを安定的に嵌合させることができる。
【0041】
更に、押し込み力の周方向分力を推進反力として、製管機3を、外周規制体50の周方向ひいては既設管1の周方向へ推進させることができる。これによって、外周規制体50の内部において製管機3を周回させながら先行螺旋管部91を延伸させて、更生管9を製管することができる。
前後の係止部21f,21gが溝95bに係止されることによって、製管機3が後続帯部92等からのモーメントにより回転したり帯状部材90から脱落したりするのを防止でき、製管機3の姿勢を安定させることができる。
【0042】
当該製管方法によれば、外周規制体50の内周面に沿って製管を行なうことによって、先行螺旋管部91の形状を外周側から規制することができる。これによって、更生管9を外周規制体50に倣った均一断面にすることができる。
図2の二点鎖線にて示すように、既設管1の内周面に多少の凹凸部1dがあっても、更生管9の内周面は、凹凸の無い平滑面にすることができる。
更に、外周規制体50における規制部材51もしくは規制ユニット50xの数や、連結材52,53の曲率ないしは隣接する規制部材51どうし間の角度などを調節することによって、外周規制体50を既設管1の断面の大きさや形状に適合させることができる。すなわち、既設管1の非円形の断面形状に合わせて外周規制体50を容易に作製することができる。これによって、更生管9を既設管1と相似の非円形断面に形成することができる。言い換えると、既設管1が非円形断面であっても、その断面形状に合わせた更生管9を確実に作製することができる。
外周規制体50によって更生管9の形状を外周側から規制できるから、内周規制体は不要である。このため、既設管1内に水を流しながら製管作業を行なったとしても、内周規制体を省略することによって、流水阻害を緩和することができる。
【0043】
先行螺旋管部91の延伸の進展状況に応じて、外周規制体50を適宜前進させる。例えば、図4(b)の二点鎖線にて示すように、製管機3が外周規制体50のユニット間連結材52等と干渉しそうな位置まで、先行螺旋管部91が延伸されたときは、製管機3を停止したうえで、外周規制体50をレール61に沿ってスライドさせる。詳しくは、図1に示すように、ワイヤー65を外周規制体50に繋着してウィンチ64を作動させることによって、外周規制体50を延伸方向の前方(図1において左方)へ牽引する。なお、人力で外周規制体50を動かしてもよい。このとき、製管機3は、先行螺旋管部91及び既設管1に対して位置固定されている。これによって、相対的に製管機3を外周規制体50内における後端部(図4(b)において右端部)までずらすことができる。その後、製管機3の運転を再開することで、製管を進める。
このようにして、常に外周規制体50内で製管作業を行なうことができる。製管機3を常に外周規制体50内で駆動させることができる。
なお、製管機3の駆動と併行してウィンチ64を駆動することで、先行螺旋管部91の延伸と同時併行して外周規制体50を移動させてもよい。
【0044】
外周規制体50は規制ユニット50xごとに分解でき、かつ組み立てることができる。更に、各規制ユニット50xは、複数の規制部材51と連結材53に分解でき、かつ組み立てることができる。したがって、外周規制体50の既設管1内への搬入、設置、及び施工後の撤去作業を簡易化できる。
【0045】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
図8及び図9は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態においては、スライド機構60が、レール61に代えて、車輪63を含む。車輪63は、外周規制体50の底部の外周面(図8において下側面)に設けられ、既設管1の底部の内周面上を延伸方向(図8の紙面直交方向)へ転動可能になっている。これによって、外周規制体50を容易に前進スライドさせることができる。外周規制体50が重くても、人力でもスライド可能となる。
第2実施形態においては、レール61が不要であり、レール61の敷設作業を省略できる。
なお、車輪63は、外周規制体50の底部だけでなく、外周規制体50の側部や外周規制体50の上部にも設けられていてもよい。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、製管機3が、先行螺旋管部91等との当たりを反力にして、外周規制体50を延伸方向の前方へ押し動かすようになっていてもよい。
外周規制体50の内部にブレース(筋交い)を設けてもよい。この場合、休工時には、流水阻害を防止するためにブレース(筋交い)を撤去しておくことが好ましい。
外周規制体50は、周方向に複数の規制ユニット50xひいては複数の規制部材51に分割されているだけでなく、外周規制体50の軸方向(図2図8の紙面直交方向)にも複数部材に分割されていてもよい。
製管機3が一対の嵌合ローラを有していてもよい。これら嵌合ローラどうしの間において、後続帯部92と先行螺旋管部91とが直接的に嵌合されるとともに、嵌合ローラの回転によって推進力が得られるようにしてもよい。この場合、駆動ローラ13を省略するか従動ローラに変更してもよい。
内周ローラ22を省略してもよい。
スライド機構60として、既設管1の内壁にはレール61が敷設され、かつ外周規制体50には車輪63が設けられていてもよい。車輪63がレール61上を走行されるようになっていてもよい。
第2実施形態(図8及び図9)において、車輪63をモータ(スライド駆動部)によって回転駆動させることで、外周規制体50をスライドさせてもよい。
本発明は、螺旋管を製造するものであれば、既設管の更生工法以外の工法にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば老朽化した下水道管や農業用水管等の既設管の更生工法に適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 既設管
9 更生管(螺旋管)
90 帯状部材
91 先行螺旋管部
91e 延伸端部(延伸方向の先端部)
92 後続帯部
95b 溝
9p 嵌合位置
2 製管装置
3 製管機
10 製管駆動部
13 駆動ローラ
20 ガイド手段
21 外周ガイド板
21f 係止部
21g 係止部
5 外周規制手段
50 外周規制体
50x 規制ユニット
51 規制部材
52 ユニット間連結材(連結材)
53 ユニット内連結材(連結材)
60 スライド機構
61 レール
63 車輪
64 ウィンチ(スライド駆動部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9