(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る魚群探知機1(探知装置、水中探知装置)の構成を示すブロック図である。以下では、本発明の実施形態に係る魚群探知機1について、図を参照して説明する。
図1に示す魚群探知機1は、水中における探知領域内の魚の数を推定可能に構成されている。魚群探知機1は、例えば漁船等の船舶に装備される。なお、以下では、魚群探知機1の探知対象として単体魚を例に挙げて説明するが、その他の単体水生種についても探知対象に含めることができる。
【0029】
[全体構成]
魚群探知機1は、
図1に示すように、送受波器2と、送受信装置3と、信号処理部10と、操作・表示装置4とを備えている。
【0030】
送受波器2は、電気信号を超音波に変換して、所定のタイミング毎に(すなわち、所定の周期で)水中へ超音波を送信するとともに、受波した超音波を電気信号に変換する。本実施形態の送受波器2からは、周波数が時間経過に応じて徐々に変化するチャープ波が、一定時間、所定のタイミング毎に送信される。
【0031】
送受信装置3は、送受切替部5と、送信部6と、受信部7とを備えている。送受切替部5は、送信時には、送信部6から送受波器2に送信信号が送られる接続に切り替える。また、送受切替部5は、受信時には、送受波器2によって超音波から変換された電気信号が送受波器2から受信部7に送られる接続に切り替える。
【0032】
送信部6は、操作・表示装置4において設定された条件に基づいて生成した送信信号を、送受切替部5を介して送受波器2に対して出力する。本実施形態の送信部6は、上述したようなチャープ波が送受波器2から送波されるように、該チャープ波の基となるチャープ信号を送受波器2に出力する。
【0033】
受信部7は、送受波器2から送られた電気信号を増幅し、増幅した受信信号をA/D変換する。その後、受信部7は、デジタル信号に変換された受信信号を、信号処理部10に対して出力する。
【0034】
信号処理部10は、受信部7から出力される受信信号を処理し、物標の映像信号を生成する処理を行う。また、信号処理部10は、魚群探知機1が搭載された自船を基準とした海中の所定範囲内に存在する魚の数を魚の体長毎に区分した度数分布グラフを生成する。信号処理部10の構成については、詳しくは後述する。
【0035】
図2は、
図1に示す魚群探知機1の操作・表示装置4に表示される表示画面4aの一例を模式的に示す図である。
図2に示すように、操作・表示装置4は、信号処理部10から出力された映像信号に応じた映像Pを表示画面4aに表示する。ユーザは、当該表示画面4aの映像Pを見て、自船下方における海中の状態(魚群の有無、自船に対する魚群の位置等)を推測することができる。また、操作・表示装置4は、種々の入力キー等の入力手段を備えており、超音波の送受信、信号処理、又は映像表示に必要な種々の設定又は種々のパラメータ等を入力できるように構成されている。なお、
図2で表示される表示画面4aの縦軸は深度方向に対応している。また、
図2で表示される表示画面4aの横軸の数値の単位はピング(ping)であり、1ピングは、あるタイミングで送波されたチャープ波1パルス分に対応している。
【0036】
そして、
図2に示すように、操作・表示装置4の表示画面4aには、信号処理部10で生成された度数分布グラフDが表示される。度数分布グラフDでは、単体魚として検出された魚の匹数が、体長毎にパーセント表示される。また、
図2に示す例では、度数分布グラフDの右上の部分に、検出された魚の全数が表示されている。
【0037】
[信号処理部の構成]
図3は、
図1に示す魚群探知機1の信号処理部10の構成を示すブロック図である。信号処理部10は、
図3に示すように、パルス圧縮部11(圧縮部)と、第1SV算出部12(第1エコー強度算出部)と、第2SV算出部13(第2エコー強度算出部)と、TS算出部14と、単体魚検出部20(物標検出部)と、魚体長算出部15(単体物標サイズ算出部)と、度数分布生成部16と、を有している。この信号処理部10は、例えば図示しないプロセッサ(CPU、FPGA等)及びメモリ等のデバイスで構成される。例えば、CPUがメモリからプログラムを読み出して実行することにより、信号処理部10を、パルス圧縮部11、第1SV算出部12、第2SV算出部13等として機能させることができる。
【0038】
パルス圧縮部11は、受信部7から出力される受信信号(第1受信信号)に対して、パルス圧縮処理を行う。具体的には、パルス圧縮部11は、例えばマッチドフィルタ(図示省略)を有している。マッチドフィルタは、送受波器2で受波された受信波から得られる受信信号と、送信波(チャープ波)に基づいて予め設定した基準信号との相関処理を行うことによって、受信信号をパルス圧縮する。これにより、受信信号の長さが深度方向に短くなり、第2受信信号が生成される。
【0039】
第1SV算出部12は、受信部7から出力される受信信号(第1受信信号)に基づき、エコー強度(第1エコー強度)としての体積散乱強度(Volume Backscattering Strength、SV値)を算出する。SV値は、以下の(1)式で表すことができる。また、第1SV算出部12は、深さ位置毎にSV値を算出する。なお、以下では、第1SV算出部12によって算出されるSV値を、第1SV値と称する場合もある。
【0040】
[数1]
SV=EL−SL−ME+Cb+Cd …(1)
【0041】
上述した(1)式において、ELはエコー信号の受信電圧であり(ELの単位:dB ref 1V)、SLは超音波送信波のソースレベルであり(SLの単位:dB ref 1μPa)、MEは振動子の受波感度である(MEの単位:dB ref 1V/μPa)。
【0042】
また、Cb(=−10log(cτ/2)−20logθ+31.6)は超音波ビームの特性に基づく補正項であり、Cd(=+20logr+2αr/1000)は距離方向(深度方向)の減衰に関する補正項である。ここで、cは音速(cの単位:m/s)、τは受信信号の長さ(τの単位:s)(具体的には、第1受信信号の長さτ
1、又は第2受信信号の長さτ
2)、θは送信ビーム幅の半角(θの単位:deg)、rは物標までの距離(rの単位:m)、αは水中での吸収損失係数である(αの単位:dB/km)。具体的に、近似として、第1受信信号の長さτ
1は送信部6が生成する送信信号(例えば、チャープ信号)の長さに設定する。
【0043】
第2SV算出部13は、パルス圧縮部11によってパルス圧縮処理が行われた受信信号(第2受信信号)に基づき、上述した(1)式を用いて、エコー強度(第2エコー強度)としてのSV値を算出する。また、第2SV算出部13も、第1SV算出部12の場合と同様、深さ位置毎にSV値を算出する。なお、以下では、第2SV算出部13によって算出されるSV値を、第2SV値と称する場合もある。具体的に、近似として、(1)式の第2受信信号の長さτ
2は、送信部6が生成するチャープ信号がパルス圧縮部11に圧縮された後の長さに設定する。その長さは理論的に計算することができる。
【0044】
図4は、魚群探知機1によって探知される複数の魚の海中における位置状態の一例を、送受波器2によって形成されるビーム形状とともに示す模式図である。
図4では、深度方向における互いの距離が比較的近接している2匹の魚を図示している。また、
図5は、第1SV値グラフ及び第2SV値グラフの一例を示す図であって、破線で示す波形が第1SV値グラフ、実線で示す波形が第2SV値グラフである。なお、第1SV値グラフとは、深度方向に対する第1SV値の変化を示すグラフであり、第2SV値グラフとは、深度方向に対する第2SV値の変化を示すグラフである。
【0045】
上述したように、
図4では、2匹の魚が深度方向において比較的近接している状態が例示されている。第2SV値グラフは、パルス圧縮された受信信号(第2受信信号)に基づいて生成されるため、深度方向の分解能が比較的高い。しかし、その分解能には限界があり、例えば2匹の魚が深度方向において近接している場合には、各魚に起因するピーク波形の一部が互いに重なり合った状態となる。具体的には、
図5に示す例では、左側のピーク波形の立ち下がり部分と、右側のピーク波形の立ち上がり部分とが、互いに重なった状態となっている。そうなると、2つのピーク波形が十分に離間している場合と比べると、波形の立ち上がり部分及び立ち下がり部分の特徴が変わってしまうため、従来の方法(例えば上述した特許文献1に開示される方法)では、2匹の魚を区別することができなくなる。その結果、単体魚の数を正確に推定することができなくなってしまう。これに対して、本実施形態に係る魚群探知機1によれば、以下で詳しく説明する単体魚検出部20によって、互いに近接する複数の魚のそれぞれを、単体魚として検出することができる。
【0046】
TS算出部14は、各ピングにおける各深さ位置から帰来するエコーの強度として、例えば一例としてターゲットストレングス値(以下、TS値と称する場合もある)を算出する。
【0047】
単体魚検出部20は、第1SV算出部12で算出された第1SV値と、第2SV算出部13で算出された第2SV値とを比較し、その比較結果に応じて、単体魚(単体の物標)を検出する。
図3に示すように、単体魚検出部20は、ΔSV算出部21と、比較判定部22とを有している。
【0048】
ΔSV算出部21は、深さ位置毎に、第1SV値と第2SV値との差(ΔSV値)を算出する。具体的には、ΔSV算出部21は、深さ位置毎に、第2SV値から第1SV値を減算した値をΔSVとして算出する。なお、本実施形態では、第1SV値及び第2SV値がログスケールで表される場合について説明する。第1SV値及び第2SV値がリニアスケールで表される場合には、ΔSV算出部21は、深さ位置毎に、第1SV値と第2SV値との比を算出する。
【0049】
比較判定部22は、ΔSV算出部21で算出されたΔSV値と所定の閾値Thr1とを比較し、ΔSV値が閾値Thr1以上であるか否かを判定する。また、比較判定部22は、閾値Thr1以上となったΔSV値が深度方向に連続する個数をカウント値Nとして記憶するカウンタ22aを有している。そして、比較判定部22は、カウンタ22aで記憶されるカウント値Nが下限値N
min以上且つ上限値N
max以下であるか否かを判定する。比較判定部22は、カウント値Nが下限値N
min以上且つ上限値N
max以下である場合、そのピーク波形が単体魚に起因する波形であると判定し、単体魚を検出する。
【0050】
魚体長算出部15は、単体魚検出部20によって検出された単体魚のTS値に基づき、当該単体魚の魚体長(単体物標のサイズ)を算出する。TS値に基づいて単体魚の魚体長を算出する手法については、公知の技術であるため、詳細については省略する。
【0051】
度数分布生成部16は、単体魚検出部20によって検出された各単体魚を、魚体長算出部15によって算出された魚体長毎に区分し、度数分布グラフDを生成する(
図2参照)。
【0052】
[魚群探知機1の動作]
図6は、魚群探知機1の動作を示すフローチャートである。以下では、
図6を参照して、魚群探知機1の動作について説明する。
【0053】
まず、ステップS1では、送受波器2からチャープ波が送波される。そして、ステップS2では、そのチャープ波が物標に反射して帰来する反射波が、送受波器2によって受波される。
【0054】
次に、ステップS3では、送受波器2によって受波された反射波(チャープ波)から生成された受信信号がパルス圧縮処理される。これにより、受信信号の長さが深度方向に短くなる。
【0055】
一方、ステップS4では、ステップS3の前若しくは後、又はステップS3と並行して、(1)式に基づいて第1SV値の算出が行われる。
【0056】
ステップS3におけるパルス圧縮処理が行われた後、ステップS5及びステップS6で示すステップが行われる。ステップS5では、(1)式に基づいて第2SV値の算出が行われる。また、ステップS6では、パルス圧縮処理が行われた信号のTS値が、ピング毎及び深度位置毎に算出される。
【0057】
次に、ステップS10では、ステップS4で算出された第1SV値、及びステップS5で算出された第2SV値に基づき、単体魚を検出する処理が行われる。
【0058】
図7は、ステップS10(単体魚検出処理)で行われる各ステップを示すフローチャートである。ステップS10では、以下で説明するステップが行われることにより、従来の魚群探知機よりも正確に単体魚を検出することができる。
【0059】
まず、ステップS11では、ΔSV値が算出される。具体的には、ステップS11では、ΔSV算出部21が、ステップS5で算出された第2SV値から、ステップS4で算出された第1SV値を減算した値を、ΔSV値として算出する。ΔSV算出部21は、深さ位置毎にΔSV値を算出する。
【0060】
次に、ステップS12では、ΔSV値が閾値Thr1以上であるか否かが判定される。
【0061】
ΔSV値が閾値Thr1以上である場合(ステップS12のYes)、その時点でカウンタ22aに記憶されているカウント値Nに1が加算される(ステップS13)。そして、直近で閾値Thr1との比較が行われたΔSV値よりも深度方向に1サンプル分深い位置のΔSV値が次にThr1と比較される対象とされ(ステップS16)、このΔSV値とThr1とが再び比較される(ステップS12)。
【0062】
一方、ΔSV値が閾値Thr1未満である場合(ステップS12のNo)、その時点でカウンタ22aに記憶されているカウント値Nが、下限値N
min以上且つ上限値N
max以下であるか否かが判断される。測定開始時点では、カウント値Nがゼロに設定されているため、カウント値Nが下限値N
min未満となり(ステップS14のNo)、カウント値Nがリセットされる(ステップS15)。そして、直近で閾値Thr1との比較が行われたΔSV値よりも深度方向に1サンプル分深い位置のΔSV値が次にThr1と比較される対象とされ(ステップS16)、このΔSV値とThr1とが再び比較される(ステップS12)。
【0063】
そして、閾値Thr1以上となるΔSV値が深度方向にある程度連続した後(すなわち、ステップS12、ステップS13及びステップS16のループがある程度繰り返された後)、ステップS12においてΔSV値が閾値Thr1未満となり、ステップS14においてカウント値Nが、下限値N
min以上且つ上限値N
max以下であると判定された場合(ステップS14のYes)、比較判定部22は、そのピーク波形が単体魚に起因する波形であると判定し、単体魚として検出する。そして、上述したステップS11からステップS17を含む単体魚検出処理(ステップS10)では、魚群探知機1の探知範囲に含まれる全てのエコー信号に対して上述のような処理が行われることにより、探知範囲内における全ての単体魚を検出する。
【0064】
一方、閾値Thr1以上となるΔSV値が深度方向に連続する数が多くなりすぎた場合(すなわち、ステップS12、ステップS13及びステップS16のループが繰り返される数が多くなりすぎた場合)であって、その後、ステップS12においてΔSV値が閾値Thr1未満となった場合、ステップS14においてカウント値Nが上限値N
maxを超えていると判定される(ステップS14のNo)。そうなると、ステップS15においてカウント値Nがリセットされ(ステップS15)、その後、直近で閾値Thr1との比較が行われたΔSV値よりも深度方向に1サンプル分深い位置のΔSV値が次にThr1と比較される対象とされ(ステップS16)、このΔSV値とThr1とが再び比較される(ステップS12)。
【0065】
また、閾値Thr1以上となるΔSV値が深度方向に連続する数が少ない場合(すなわち、ステップS12、ステップS13及びステップS16のループが繰り返される数が少ない場合)であって、その後、ステップS12においてΔSV値が閾値Thr1未満となった場合、ステップS14においてカウント値Nが下限値N
min未満であると判定される(ステップS14のNo)。そうなると、上述した場合と同様、ステップS15においてカウント値Nがリセットされ(ステップS15)、その後、直近で閾値Thr1との比較が行われたΔSV値よりも深度方向に1サンプル分深い位置のΔSV値が次にThr1と比較される対象とされ(ステップS16)、このΔSV値とThr1とが再び比較される(ステップS12)。
【0066】
次に、ステップS7では、ステップS10によって検出された全ての単体魚の魚体長が、ステップS6によって算出されたTS値に基づいて算出される。
【0067】
そして、ステップS8では、ステップS10で検出された全ての単体魚が、ステップS7によって算出された魚体長毎に区分される。これにより、探知範囲内における単体魚が魚体長毎に区分された度数分布グラフDが生成される。このように生成された度数分布グラフDは、海中におけるエコーの映像Pとともに、操作・表示装置4の表示画面4aに表示される(
図2参照)。
【0068】
[単体魚検出について]
本実施形態に係る魚群探知機1では、上述のように単体魚検出を行うことにより、従来の場合よりも正確に単体魚を検出することができる。以下では、その理由について説明する。
【0069】
図8は、第2SV値グラフであって、(A)は2匹の単体魚の深度方向における距離が比較的離れている場合のグラフ、(B)は2匹の単体魚の深度方向における距離が(A)よりも近い場合のグラフ、である。
【0070】
従来の魚群探知機では、単体魚に起因する波形の立ち上がり部分及び立ち下がり部分の特徴に基づいて、単体魚の検出が行われる。具体的には、従来の魚群探知機では、波形の立ち上がり部分及び立ち下がり部分の傾斜度合が急峻であることを条件として当該波形が単体魚に起因するものであると判定し、単体魚の検出を行っている。これにより、例えば
図8(A)に示すように、2匹の単体魚のそれぞれに起因する各波形が互いに干渉していない場合には、2つの波形のそれぞれが単体魚に起因する波形であると判定される。しかし、2匹の単体魚が深度方向において近接している場合には、
図8(B)に示すように、各単体魚に起因する波形の立ち上がり部分及び立ち下がり部分が重なり合ってしまう。そうすると、立ち上がり部分及び立ち下がり部分の特徴が変わってしまうため、正確な単体魚検出を行うことができなくなってしまう。
【0071】
これに対して、本実施形態に係る魚群探知機1では、上述のように、第1受信信号に基づいて生成された第1エコー強度としての第1体積散乱強度(第1SV値)と、第2受信信号に基づいて生成された第2エコー強度としての第2体積散乱強度(第2SV値)とを比較することにより、物標(単体魚)を検出している。
【0072】
図5に示すように、第2SV値グラフは、パルス圧縮された受信信号(第2受信信号)に基づいて生成されるため、深度方向の分解能が比較的高い。よって、第2SV値グラフは、第1SV値グラフと比べて各単体魚に起因するピーク波形の幅が小さく、且つそのピーク値が大きくなる。よって、上述のように、第1SV値グラフの深度方向の値と第2SV値グラフの深度方向の値とを比較することで、結果的に、第2SV値グラフのピーク部分付近の特徴により、単体魚を検出できる。すなわち、従来のように、各単体魚に起因するピーク波形の立ち上がり部分及び立ち下がり部分の特徴に基づいて単体魚を検出する必要がなくなる。これにより、各単体魚が互いに密集して各単体魚に起因するピーク波形の立ち上がり部分及び立ち下がり部分が互いに重なるような状況であっても、当該立ち上がり部分及び立ち下がり部分の状態に関係なく、各単体魚を正確に検出することができる。
【0073】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る魚群探知機1では、互いに長さが異なる2つの受信信号(第1受信信号及び第2受信信号)のそれぞれから得られる2つの値(第1エコー強度としての第1SV値、及び第2エコー強度としての第2SV値)の比較に基づき、単体魚を検出している。こうすると、従来のように、各単体魚に起因するピーク波形の立ち上がり部分及び立ち下がり部分の特徴に基づいて単体魚検出を行う必要がなくなるため、各単体魚が深度方向において互いに近接して位置している場合であっても、各単体魚を正確に検出することができる。
【0074】
従って、魚群探知機1では、物標の検出を正確に行うことができる。
【0075】
また、魚群探知機1では、2つの受信信号のうちの一方の受信信号(本実施形態では、第2受信信号)の長さを第1受信信号の長さよりも短くするために、パルス圧縮処理を行っている。こうすると、例えば第2受信信号の長さを第1受信信号の長さよりも短くするために、互いに異なるパルス幅を有する2種類の送信波を生成する必要がなくなる。すなわち、魚群探知機1によれば、複数種類の送信波を生成する必要がなくなるため、送信部6等の構成を簡略化できる。
【0076】
また、魚群探知機1では、単体魚検出部20は、第2SV値が第1SV値よりも大きいことを条件として単体魚を検出している。これにより、単体魚を適切に検出することができる。
【0077】
また、魚群探知機1では、単体魚検出部20は、第2SV値が第1SV値よりも閾値Thr1以上大きいことを条件として単体魚を検出している。これにより、ノイズの影響を加味して単体魚を検出できるため、より正確に単体魚を検出することができる。
【0078】
また、魚群探知機1では、各受信信号のエコー強度を各受信信号の長さによって補正した値を各エコー強度として算出している。これにより、適切に第1エコー強度及び第2エコー強度を算出することができる。
【0079】
また、魚群探知機1では、各受信信号のエコー強度を送信波が送波される送波部のビーム幅で補正した値を各エコー強度として算出している。これにより、より適切に第1エコー強度及び第2エコー強度を算出することができる。
【0080】
また、魚群探知機1では、第1エコー強度及び第2エコー強度として、体積散乱強度を算出している。これにより、一般的に知られている体積散乱強度を用いて、第1エコー強度及び第2エコー強度を算出することができる。
【0081】
また、魚群探知機1では、探知対象となる単体物標として単体魚又は単体水生種を探知し、これらの数量を推定することができる。
【0082】
また、魚群探知機1では、単体魚の魚体長を、該単体魚のTS値に基づいて算出している。これにより、単体魚の魚体長を適切に算出することができる。
【0083】
また、魚群探知機1では、閾値Thr1以上のΔSV値が所定数(下限値N
min)以上、深度方向に連続することを条件として単体魚を検出している。これにより、単体魚のエコーとは関係ないΔSV値が突発的に大きくなった値を、単体魚として誤検出してしまうことを防止できる。
【0084】
また、魚群探知機1では、閾値Thr1以上のΔSV値が所定数(上限値N
max)以下、深度方向に連続することを条件として単体魚を検出している。これにより、単体魚のエコーとは関係ない深度方向になだらかな波形を、単体魚として誤検出してしまうことを防止できる。
【0085】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0086】
(1)
図9は、変形例に係る魚群探知機の信号処理部10aの構成を示すブロック図である。本変形例に係る魚群探知機は、高周波成分低減部17を有している点において、上記実施形態に係る魚群探知機1と異なっている。以下では、上記実施形態に係る魚群探知機1と異なる点について主に説明し、それ以外の部分については説明を省略する。
【0087】
図10は、第1SV値の深度方向に対する変化の一例を示すグラフであって、破線で示す波形が高周波成分低減部17で高周波成分の低減を行う前のグラフ、実線で示す波形が高周波成分の低減を行った後のグラフ、である。
図10で例示されるグラフは、2匹の単体魚が深度方向に近接している場合のグラフであり、2つのグラフの立ち上がり部分及び立ち下がり部分が互いに重なっている状態を示している。そして、このように2つのグラフ(波形)が重なると、各波形同士が互いに干渉するため、
図10の破線で示すように、その重なり部分の第1SV値が大きく変動してしまう。そうなると、当該第1SV値と第2SV値との比較結果が本来の比較結果と異なるため正確な比較判定を行うことができず、単体魚を正確に検出することができなくなってしまう場合がある。
【0088】
これに対して、本変形例に係る魚群探知機の信号処理部10aでは、高周波成分低減部17によって、第1SV値の深度方向における高周波成分を低減する処理を行っている。こうすると、上述したような第1SV値の大きな変動が平滑化され、
図10の実線で示すようなグラフを得ることができる。これにより、大きな脈動が除去された適切な第1SV値のグラフを得ることができるため、単体魚をより正確に検出することができる。
【0089】
更に、本変形例の信号処理部10aによれば、高周波成分低減部17によって、第1SV値のグラフのノイズも低減することができるため、より正確に単体魚を検出することができる。
【0090】
また、本変形例の信号処理部10aによれば、第1SV値の高周波成分を低減する処理として、移動平均処理を行っている。これにより、第1SV値の高周波成分を適切に低減することができる。
【0091】
(2)
図11は、変形例に係る魚群探知機の信号処理部10bの構成を示すブロック図である。本変形例に係る魚群探知機は、詳しくは後述するが、単体魚検出部20で検出された各単体魚の検出結果の妥当性を判断し、検出結果が妥当であると判断された単体魚のみで度数分布グラフを生成するように構成されている。すなわち、本変形例に係る魚群探知機は、検出結果が妥当でないと判断された単体魚を度数分布グラフから除外する。これにより、単体魚としての確度が高いデータのみで度数分布グラフを生成することができる。
【0092】
本変形例に係る魚群探知機は、第1高周波成分低減部18、第2高周波成分低減部19、及び妥当性評価部25を有する点において、上記実施形態に係る魚群探知機1と異なっている。また、本変形例の魚体長算出部15aは、上記実施形態の魚体長算出部15とやや動作が異なっている。以下では、上記実施形態に係る魚群探知機1と異なる点について主に説明し、それ以外の部分については説明を省略する。
【0093】
第1高周波成分低減部18は、
図9に示す魚群探知機の高周波成分低減部17の場合と同様、第1SV値の深度方向における高周波成分を低減する処理を行う。具体的には、第1高周波成分低減部18は、
図9の高周波成分低減部17の場合と同様、移動平均処理を行うことにより、第1SV値の高周波成分を低減している。なお、本変形例の第1高周波成分低減部18で低減可能な周波数の下限値は、
図9の高周波成分低減部17で低減可能な周波数の下限値よりも小さくなるように設定されている。
【0094】
第2高周波成分低減部19は、第2SV値の深度方向における高周波成分を低減する処理を行う。具体的には、第2高周波成分低減部19は、第1高周波成分低減部18の場合と同様、移動平均処理を行う。
【0095】
妥当性評価部25は、単体魚検出部20による単体魚の検出結果の妥当性を評価するように構成されている。具体的には、妥当性評価部25は、第1高周波成分低減部18において移動平均処理が行われた第1SV値グラフと、第2高周波成分低減部19において移動平均処理が行われた第2SV値グラフとの比較結果に基づいて、単体魚検出部20の検出結果の妥当性の評価を行う。
【0096】
図12は、第1SV値グラフ及び第2SV値グラフを重ねて表示する図であって、複数の単体魚が深度方向に比較的離れて位置している状態を示す図であり、破線で示す波形が第1SV値グラフであり、実線で示す波形が第2SV値グラフである。また、(A)は高周波低減処理前の波形、(B)は高周波低減処理後の波形、である。また、
図13は、第1SV値グラフ及び第2SV値グラフを重ねて表示する図であって、複数の単体魚が深度方向に比較的近接して位置している状態を示す図であり、破線で示す波形が第1SV値グラフであり、実線で示す波形が第2SV値グラフである。また、(A)は高周波低減処理前の波形、(B)は高周波低減処理後の波形、である。
【0097】
図12を用いて説明すると、妥当性評価部25は、単体魚検出部20によって検出された単体魚の波形と推測されたピーク値P1〜P3の各深さ位置Z1〜Z3において、移動平均後の第1SV値と、移動平均後の第2SV値とを比較する。具体的には、妥当性評価部25は、移動平均後の第1SV値のうち単体魚の波形のピーク値P1〜P3に対応する深さ位置Z1〜Z3での第1SV値から、移動平均後の第2SV値のうち対応する深さ位置Z1〜Z3での第2SV値を減算する。そして、妥当性評価部25は、その減算値ΔSV_1〜ΔSV_3のそれぞれが所定の閾値Thr2以上であるか否かを判定する。減算値がThr2以上である場合、妥当性評価部25は、その深さ位置Z1〜Z3において検出された単体魚の検出結果が妥当であると判定し、その旨の評価結果を魚体長算出部15aに通知する。一方、減算値がThr2未満である場合、妥当性評価部25は、その深さ位置Z1〜Z3において検出された単体魚の検出結果が妥当でないと判定し、その旨の評価結果を魚体長算出部15aに通知する。
【0098】
魚体長算出部15aは、単体魚検出部20で検出された単体魚のうち、妥当性評価部25によってその検出結果が妥当であると判定された単体魚の魚体長のみを算出する。すなわち、魚体長算出部15aは、妥当性評価部25によってその検出結果が妥当でないと判定された単体魚の魚体長については、算出しない。
【0099】
度数分布生成部16は、魚体長算出部15aによって魚体長が算出された各単体魚を魚体長毎に区分し、度数分布グラフを生成する。すなわち、度数分布生成部16は、単体魚検出部20による検出結果が妥当であると判断された単体魚のみを対象として、度数分布グラフを生成する。
【0100】
[妥当性評価部について]
上述のように、妥当性評価部25では、高周波低減処理(本変形例の場合、移動平均処理)が行われた第1SV値及び第2SV値に基づいて、単体魚検出部20での検出結果の妥当性を評価している。以下では、このような手法で評価される妥当性について、
図12及び
図13を用いて説明する。
【0101】
図12(A)に示すように、複数の単体魚が深度方向に比較的離れて位置している場合、各波形同士の干渉が比較的少ないため、単体魚検出部20による単体魚検出を比較的正確に行うことができる。そして、このように複数の単体魚が深度方向に比較的離れて位置している場合の第1グラフ及び第2グラフの特徴として、各グラフの深度方向に対する大きな脈動が比較的少なくなっていることが挙げられる。この場合、移動平均後の第1SV値と、移動平均後の第2SV値との差ΔSV_1〜ΔSV_3が、比較的大きくなる。
【0102】
一方、
図13(A)に示すように、複数の単体魚が深度方向に比較的近接して位置している場合、各波形同士の干渉が大きくなるため、単体魚検出部20による単体魚検出を正確に行うことができない場合がある。そして、このように複数の単体魚が深度方向に比較的近接して位置している場合の第1グラフ及び第2グラフの特徴として、各グラフの深度方向に対する大きな脈動が比較的大きくなっていることが挙げられる。この場合、移動平均後の第1SV値と、移動平均後の第2SV値との差ΔSV_4〜ΔSV_8が、比較的小さくなる。
【0103】
すなわち、本変形例に係る妥当性評価部25のように、単体魚のピーク波形毎にΔSV_1〜ΔSV_8を算出し、その値と閾値Thr2とを比較することにより、単体魚検出部20による検出結果の妥当性を適切に評価することができる。
【0104】
なお、本変形例では、妥当性評価部25によって検出結果が妥当であると判断された単体魚のデータのみで度数分布グラフを生成したが、これに限らない。具体的には、例えば一例として、検出された全ての単体魚のデータで生成した度数分布グラフ(総数度数分布グラフ)と、検出結果が妥当であると判断された単体魚のデータのみで生成した度数分布グラフ(妥当性評価後度数分布グラフ)とを、切り替えて表示するようにしてもよい。また、上述した総数度数分布グラフ及び妥当性評価後度数分布グラフを同時に表示してもよい。
【0105】
(3)上記実施形態に係る魚群探知機1では、閾値Thr1を固定値としているが、これに限らない。具体的には、例えば一例として、
図11に示す変形例に係る魚群探知機の妥当性評価部25での結果から魚群の密集度の指標値を算出し、当該指標値に基づいて閾値Thr1を設定してもよい。これにより、単体魚の密集度合に応じた適切な閾値Thr1を設定することができる。
【0106】
(4)
図14は、変形例に係る魚群探知機1cの構成を示すブロック図である。本変形例に係る魚群探知機1cは、上記実施形態に係る魚群探知機1と比べて、送信部6c、受信部7c及び信号処理部10cの構成が異なっている。以下では、上記実施形態に係る魚群探知機1と異なる点について主に説明し、それ以外の部分については説明を省略する。
【0107】
本変形例の送信部6cは、互いにパルス幅が異なる2つのパルス波(第1超音波及び第2超音波)が送受波器2から送波されるように、互いにパルス幅が異なる2つの送信信号を、送受波器2に対して交互に出力する。これにより、送受波器2からは、パルス幅が異なる第1超音波及び第2超音波が、交互に送波される。本変形例では、第2超音波のパルス幅は、第1超音波のパルス幅よりも短くなるように設定されている。送受波器2は、第1超音波の送波及び受波と、第2超音波の送波及び受波とを、交互に繰り返す。なお、第1超音波及び第2超音波の周波数は、同じであってもよく、又は互いに異なっていてもよい。
【0108】
受信部7cは、上記実施形態の場合と同様、送受波器2が受波した受信波から得られる信号を増幅し、増幅した受信信号をA/D変換し、その後、デジタル信号に変換された受信信号を信号処理部10cに対して出力する。また、本変形例の受信部7cは、第1超音波の反射波から得られる受信信号(第1受信信号)を第1SV算出部12に出力するとともに、第2超音波の反射波から得られる受信信号(第2受信信号)を、第2SV算出部13及びTS算出部14に出力する。
【0109】
図15は、変形例に係る魚群探知機1cの信号処理部10cの構成を示すブロック図である。本変形例の信号処理部10cは、上記実施形態の信号処理部10と比べて、パルス圧縮部が省略された構成となっている。そして、本変形例の信号処理部10cでは、第1SV算出部12が、比較的長さが長い第1受信信号に基づいて第1SV値を算出する一方、第2SV算出部13が、第1受信信号よりも長さが短い第2受信信号に基づいて第2SV値を算出する。また、TS算出部14は、第2受信信号に基づいて、各深さ位置から帰来する反射波から得られるTS値を算出する。
【0110】
以上のように、本変形例に係る魚群探知機1cでも、上記実施形態に係る魚群探知機1の場合と同様、第1SV算出部12及び第2SV算出部13のそれぞれに、互いに異なる長さを有する受信信号を入力することができる。これにより、本変形例に係る魚群探知機1cでも、上記実施形態に係る魚群探知機1の場合と同様、単体の物標の検出を正確に行うことができる。
【0111】
なお、本変形例において、第1超音波及び第2超音波を同時に送波可能なように送信部及び送受波器を構成してもよい。この場合、互いに分離可能なように、第1超音波及び第2超音波の周波数を互いに異なる値に設定する必要がある。
【0112】
(5)上記実施形態に係る魚群探知機1では、受信信号の長さを短くするためにパルス圧縮部11を設けたが、これに限らない。具体的には、逆フィルタ或いは適応ビームフォーミング法等、他の手法を用いて受信信号の長さを圧縮してもよい。
【0113】
(6)
図9に示す変形例に係る魚群探知機では、高周波成分低減部17で行われる高周波成分低減処理として移動平均を例に挙げて説明したが、これに限らず、その他の処理、例えばローパスフィルタを用いた高周波成分低減処理を行ってもよい。同様に、
図11に示す変形例に係る魚群探知機では、第1高周波成分低減部18及び第2高周波成分低減部19で行われる高周波成分低減処理として移動平均を例に挙げて説明したが、これに限らず、その他の高周波成分低減処理、例えば、上述した場合と同様、ローパスフィルタを用いた高周波成分低減処理を行ってもよい。
【0114】
(7)上記実施形態及び変形例に係る魚群探知機の信号処理部の構成要素として、例えば、異常値検出部(図示省略)を設けてもよい。この異常値検出部は、ΔSV値と所定の閾値とを比較して、当該ΔSV値が閾値以上となる場合、そのΔSV値については、単体魚検出を行う際に考慮されない。この場合、当該閾値としては、ΔSV値としての値として適切でない異常値を取り除くことが可能な値が設定される。これにより、ΔSV値として異常な値を考慮にいれずに単体魚の検出を行うことができるため、より正確に単体魚を検出することができる。
【0115】
(8)
図16は、変形例に係る魚群探知機の動作を示すフローチャートである。上記実施形態では、
図7のステップS14に示すように、閾値Thr1以上となるΔSV値が、深度方向において連続して所定数(下限値N
min)以上且つ所定数(上限値N
max)以下存在する場合には、その波形に基づいて単体魚を検出しているが、これに限らない。具体的には、
図16のステップS14aに示すように、閾値Thr1以上となるΔSV値が、深度方向において連続して所定数(下限値N
min)以上存在する場合に、その波形に基づいて単体魚を検出してもよい。
【0116】
(9)上記実施形態及び上記変形例では、探知装置の一例として魚群探知機を挙げて説明したが、これに限らず、レーダ装置に適用することもできる。
【0117】
図17は、本発明の実施形態に係るレーダ装置1dの構成を示すブロック図である。レーダ装置1dは、海上の物標(例えば他船)を探知するために用いられる。レーダ装置1dは、例えば漁船等の船舶に装備される。
【0118】
以下、レーダ装置1dについて、上記実施形態に係る魚群探知機1と異なる点について主に説明し、魚群探知機1と同様の構成の説明については、図面において同一の符号を付すことで又は同一の符号を引用して説明することで、省略する。
【0119】
[構成]
図17に示すように、レーダ装置1dは、アンテナ2aと、送受信装置3と、信号処理部10と、操作・表示装置4を、を備えている。
【0120】
アンテナ2aは、電磁波の送受信を行うため、例えば船上に装備されている。本実施形態におけるアンテナ2aは、送信素子アレイ及び受信素子アレイの双方として動作する。アンテナ2aは、送信素子及び受信素子の双方として動作するアンテナ素子(図示省略)を複数有している。これらのアンテナ素子は、例えば、直線状に配列されている。しかし、複数のアンテナ素子の配置については、これに限らず、例えば、2次元状又は3次元状に配置されていてもよい。
【0121】
そして、レーダ装置1dの送受信装置3、信号処理部10、及び操作・表示装置4は、送信波及び受信波として電磁波を取り扱う点と、単体の物標として他船又は航空機等を検出する点を除き、上記実施形態に係る魚群探知機1の場合と同様に動作する。
【0122】
例えば、雨が降っている状況において従来のレーダ装置によって他船等の物標を探知する場合、雨の影響によって単体の物標を正確に検出できないことがある。これに対して、本実施形態に係るレーダ装置1dによれば、雨の影響を受けずに単体の物標を検出することができる。従って、レーダ装置1dによれば、上記実施形態に係る魚群探知機1の場合と同様、単体の物標の検出を正確に行うことができる。
【0123】
(10)上記実施形態では、送受波器2からチャープ波を送波しているが、これに限らず、その他の波形であってもよい。
【0124】
(11)上記実施形態では、第1エコー強度及び第2エコー強度として体積散乱強度を用いているが、これに限らない。具体的には、エコー強度を受信信号の長さで補正した値、又は、エコー強度を、送信波が送波される送波部のビーム幅で補正した値、等であってもよい。
【0125】
(12)
図18は、変形例に係る魚群探知機1eの構成を示すブロック図である。また、
図19は、
図18に示す魚群探知機1eの信号処理部10eの構成を示すブロック図である。本変形例に係る魚群探知機1eは、
図14に示す変形例に係る魚群探知機1cと比べて、送信部6e、受信部7e及び信号処理部10eの構成が異なっている。以下では、
図14に示す魚群探知機1cと異なる点について主に説明し、それ以外の部分については説明を省略する。
【0126】
送信部6eは、互いにビーム幅が異なる2つのパルス波(第1送信波及び第2送信波)が送受波器2から送波されるように、互いに周波数が異なる2つの送信信号を、送受波器2に対して交互に出力する。これにより、送受波器2からは、ビーム幅が異なる第1超音波(第1送信波)及び第2超音波(第2送信波)が、交互に送波される。本変形例では、第2超音波のビーム幅は、第1超音波のビーム幅よりも小さくなるように設定されている。送受波器2は、第1超音波の送波及び受波と、第2超音波の送波及び受波とを、交互に繰り返す。
【0127】
受信部7eは、上記実施形態の場合と同様、送受波器2が受波した受信波から得られる信号を増幅し、増幅した受信信号をA/D変換し、その後、デジタル信号に変換された受信信号を信号処理部10eに対して出力する。また、本変形例の受信部7eは、第1超音波の反射波から得られる受信信号(第1受信信号)を、信号処理部10eの第1エコー強度算出部12eに出力するとともに、第2超音波の反射波から得られる受信信号(第2受信信号)を、信号処理部10eの第2エコー強度算出部13eに出力する。
【0128】
信号処理部10eは、
図15に示す信号処理部10cの第1SV算出部12の代わりに第1エコー強度算出部12eが設けられ、第2SV算出部13の代わりに第2エコー強度算出部13eが設けられ、ΔSV算出部21の代わりに強度差算出部21eが設けられた構成となっている。第1エコー強度算出部12eは、第1受信信号のエコー強度を第1超音波のビーム幅で補正した値を、第1エコー強度として算出している。また、第2エコー強度算出部13eは、第2受信信号のエコー強度を第2超音波のビーム幅で補正した値を、第2エコー強度として算出している。強度差算出部21eは、深さ位置毎に、第1エコー強度と第2エコー強度との差(強度差)を算出する。具体的には、強度差算出部21eは、深さ位置毎に、第2エコー強度から第1エコー強度を減算した値を強度差として算出する。
【0129】
そして、本変形例の信号処理部10eでは、比較判定部22が、強度差算出部21eで算出された強度差と所定の閾値との比較結果と、該比較判定部22のカウンタ22aでカウントされたカウント値とに基づき、上記実施形態の場合と同様にして単体魚を検出する。信号処理部10eにおけるその後の処理については、上記実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0130】
以上のように、本変形例に係る魚群探知機1eでも、上記実施形態に係る魚群探知機1の場合と同様、単体魚(物標)の検出を正確に行うことができる。
【0131】
また、魚群探知機1eでは、各受信信号のエコー強度を各送信ビームの幅によって補正した値を、各エコー強度として算出している。これにより、適切に第1エコー強度及び第2エコー強度を算出することができる。
【0132】
なお、本変形例では、第1受信信号のエコー強度を第1超音波のビーム幅で補正した値を、第1エコー強度として算出し、第2受信信号のエコー強度を第2超音波のビーム幅で補正した値を、第2エコー強度として算出している。しかし、これに限らず、第1受信信号のエコー強度を第1受信信号の長さで補正した値を、第1エコー強度として算出し、第2受信信号のエコー強度を第2受信信号の長さで補正した値を、第2エコー強度として算出してもよい。また、これに限らず、第1エコー強度及び第2エコー強度として体積散乱強度を用いてもよい。
【0133】
また、本変形例では、互いにビーム幅が異なる2つの送信波を形成するために、互いに異なる周波数を有する送信波を形成したが、これに限らず、ビーム幅が異なる2つの送信波を形成できれば、どのような手法が用いられてもよい。具体的には、例えば一例として、互いに形状、超音波素子の数、超音波素子のサイズ等が異なる2つの送波部を設けることにより、各送受波部から送波される送信波のビーム幅を調整してもよい。
【0134】
また、本変形例では、送受波器2が、第1超音波の送波と第2超音波の送波とを交互に繰り返す例を挙げて説明したが、これに限らず、第1超音波の送波と第2超音波の送波とを同時に行ってもよい。この場合、第1超音波の周波数と第2超音波の周波数とを互いに異なる周波数に設定する必要がある。
【0135】
(13)上記実施形態では、上述した(1)式を用いてエコー強度を算出する際、近似として、第1受信信号の長さを、送信部が生成する送信信号(例えば、チャープ信号)の長さに設定し、第2受信信号の長さを、送信部が生成するチャープ信号がパルス圧縮部に圧縮された後の長さに設定する例を挙げて説明したが、これに限らない。上述した近似をせずに、各受信信号の実際の長さを測定してもよい。例えば一例として、受信信号の立ち上がりと立ち下りを検出して、立ち上がりと立ち下りの時間差で該受信信号の長さを測定してもよい。