特許第6809871号(P6809871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6809871原料、活性エステル樹脂、熱硬化性樹脂組成物、当該熱硬化性樹脂組成物の硬化物、層間絶縁材料、プリプレグ、およびプリプレグの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809871
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】原料、活性エステル樹脂、熱硬化性樹脂組成物、当該熱硬化性樹脂組成物の硬化物、層間絶縁材料、プリプレグ、およびプリプレグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 39/225 20060101AFI20201221BHJP
   C08G 61/02 20060101ALI20201221BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   C07C39/225CSP
   C08G61/02
   C08J5/24CEZ
   C08J5/24CFC
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-216213(P2016-216213)
(22)【出願日】2016年11月4日
(65)【公開番号】特開2018-70564(P2018-70564A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100116241
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 一郎
(72)【発明者】
【氏名】恩田 真司
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−069524(JP,A)
【文献】 特許第6025952(JP,B2)
【文献】 特開2015−187190(JP,A)
【文献】 特開2010−043029(JP,A)
【文献】 特開2016−108268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 39/00
C08G 61/00
C08J 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1GHzにおける誘電正接が0.0074以下である硬化物を形成可能な熱硬化性樹脂組成物の成分となる活性エステル樹脂を製造するための原料であって、下記一般式(1)で示されるビニルベンジル化フェノール化合物を含有することを特徴とする原料。
【化1】
(上記一般式(1)中、Ar0は単環または多環の芳香核を2個以上有する2官能フェノール化合物残基であって下記一般式(11)で示される構造であり、R1〜R5は同一または異なってもよく、水素またはメチル基であり、pは1〜4の整数である。)
【化2】
(上記一般式(11)中のZは、−(CH2)−、−C(CH32−、−CH(CH3)−、−CH(Ph)−、もしくは−C(CH3)(Ph)−、または下記一般式(21)で表される構造である。)
【化3】
(R26〜R29は、同一または異なってもよく、水素またはメチル基である。)
【請求項2】
下記一般式(6)で示される成分を含有することを特徴とする活性エステル樹脂。
【化4】
(上記一般式(6)中、Xは下記一般式(13)で示される構造であり、Ar1およびAr2は同一または異なってもよく、フェニル基、芳香核上に炭素原子数1〜4のアルキル基を1〜3個有するフェニル基、ナフチル基、または芳香核上に炭素原子数1〜4のアルキル基を1〜3個有するナフチル基であり、平均繰り返し数nは0.5〜30である。)
【化5】
(上記一般式(13)中、Zは、−(CH2)−、−C(CH32−、−CH(CH3)−、−CH(Ph)−、もしくは−C(CH3)(Ph)−、または下記一般式(21)で表される構造であり、R16〜R25は、同一または異なってもよく、水素またはメチル基であり、平均繰り返し数j、iはそれぞれ独立に0.1〜2である。)
【化6】
(R26〜R29は、同一または異なってもよく、水素またはメチル基である。)
【請求項3】
1GHzにおける誘電正接が0.0074以下である硬化物を形成可能な熱硬化性樹脂組成物の成分である、請求項2に記載の活性エステル樹脂。
【請求項4】
1GHzにおける誘電正接が0.0074以下である硬化物を形成可能な熱硬化性樹脂組成物であって、請求項2または請求項3に記載される活性エステル樹脂とエポキシ樹脂とを含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに硬化促進剤を含む、請求項4に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに無機充填材を含む、請求項4または請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載される熱硬化性樹脂組成物の硬化物であって、1GHzにおける誘電正接が0.0074以下である硬化物。
【請求項8】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載される熱硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とする層間絶縁材料。
【請求項9】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載される熱硬化性樹脂組成物の半硬化体と繊維状補強部材とを備えることを特徴とするプリプレグ。
【請求項10】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載される熱硬化性樹脂組成物を繊維状補強材に含浸させ加熱して、前記繊維状補強材に含浸した前記熱硬化性樹脂組成物を半硬化することを特徴とするプリプレグの製造方法。
【請求項11】
請求項1の一般式(1)のカッコ内に示される構造部位の芳香核への結合数が異なる複数種類の化合物を含み、前記構造部位の平均繰り返し数が0.1〜4である組成物を含有する、請求項1に記載の原料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物の成分として有用な活性エステル樹脂、その活性エステル樹脂の製造方法、その活性エステル樹脂を製造するための原料の1種であるビニルベンジル化フェノール化合物、そのビニルベンジル化フェノール化合物の製造方法、上記の活性エステル樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物、当該熱硬化性樹脂組成物の硬化物、当該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる層間絶縁材料、当該熱硬化性樹脂組成物を用いてなるプリプレグ、および当該プリプレグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信機器の高機能化、高密度化などの性能向上に従い、プリント配線板にも、それに適応した性能が求められている。プリント配線板を形成する絶縁材料として熱硬化性樹脂組成物の硬化物が用いられ、熱硬化性樹脂組成物の中でも、価格面や接着性などの観点からエポキシ系化合物を含有するエポキシ系樹脂組成物が汎用されている。とりわけ近年は電子機器の薄型化、小型化、高性能化に合わせて配線板の多層化が進んでいる。
【0003】
こうしたエポキシ系樹脂組成物における硬化剤として、例えば、特許文献1には、活性エステル樹脂を用いることが記載されている。特許文献1に開示されるエステル樹脂を用いることによって、その硬化物において低誘電率、低誘電正接でありながら、優れた耐熱性と難燃性とを兼備させた熱硬化性樹脂組成物が得られるとされている。
【0004】
特許文献1には、上記のエステル樹脂は、フェノール性水酸基を含有する物質と、芳香族ジカルボン酸または芳香族ジカルボン酸塩化物とを反応させることによって生成することが記載されている。
【0005】
一方、特許文献2には、高温高湿環境下での吸湿後も優れた誘電特性(低誘電率・低誘電正接)を有し、かつ高いガラス転移温度と難燃性を有する硬化物を与える芳香族ビニルベンジルエーテル化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5120520号公報
【特許文献2】特開2014−62243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた誘電特性および優れた耐熱性を備える硬化物を形成可能な熱硬化性樹脂組成物の成分として有用な活性エステル樹脂、その活性エステル樹脂の製造方法、その活性エステル樹脂を製造するための原料の1種であるビニルベンジル化フェノール化合物、そのビニルベンジル化フェノール化合物の製造方法、上記の活性エステル樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物、当該熱硬化性樹脂組成物の硬化物、当該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる層間絶縁材料、当該熱硬化性樹脂組成物を用いてなるプリプレグ、および当該プリプレグの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
[1]1GHzにおける誘電正接が0.0074以下である硬化物を形成可能な熱硬化性樹脂組成物の成分となる活性エステル樹脂を製造するための原料であって、下記一般式(1)で示されるビニルベンジル化フェノール化合物を含有することを特徴とする原料。
【化1】
(上記一般式(1)中、Ar0は単環または多環の芳香核を2個以上有する2官能フェノール化合物残基であって下記一般式(11)で示される構造であり、R1〜R5は同一または異なってもよく、水素またはメチル基であり、pは1〜4の整数である。)
【化4】
(上記一般式(11)中のZは、−(CH2)−、−C(CH32−、−CH(CH3)−、−CH(Ph)−、もしくは−C(CH3)(Ph)−、または下記一般式(21)、上記一般式(22)もしくは上記化学式(23)で表される構造である。)
【化5】
(R26〜R29は、同一または異なってもよく、水素またはメチル基である。)
【0011】
[2]下記一般式(6)で示される成分を含有することを特徴とする活性エステル樹脂。
【化10】
(上記一般式(6)中、Xは下記一般式(13)で示される構造であり、Ar1およびAr2は同一または異なってもよく、フェニル基、芳香核上に炭素原子数1〜4のアルキル基を1〜3個有するフェニル基、ナフチル基、または芳香核上に炭素原子数1〜4のアルキル基を1〜3個有するナフチル基であり、平均繰り返し数nは0.5〜30である。)
【化13】
(上記一般式(13)中、Zは、−(CH2)−、−C(CH32−、−CH(CH3)−、−CH(Ph)−、もしくは−C(CH3)(Ph)−、または下記一般式(21)で表される構造であり、R16〜R25は、同一または異なってもよく、水素またはメチル基であり、平均繰り返し数j、iはそれぞれ独立に0.1〜2である。)
【化14】
(R26〜R29は、同一または異なってもよく、水素またはメチル基である。)
【0012】
[3]1GHzにおける誘電正接が0.0074以下である硬化物を形成可能な熱硬化性樹脂組成物の成分である、上記[2]に記載の活性エステル樹脂。
【0014】
[4]1GHzにおける誘電正接が0.0074以下である硬化物を形成可能な熱硬化性樹脂組成物であって、上記[2]または上記[3]に記載される活性エステル樹脂とエポキシ樹脂とを含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【0015】
[5]さらに硬化促進剤を含む、上記[4]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0016】
[6]さらに無機充填材を含む、上記[4]または上記[5]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0017】
[7]上記[4]から上記[6]のいずれかに記載される熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
【0018】
[8]上記[4]から上記[6]のいずれかに記載される熱硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とする層間絶縁材料。
【0019】
[9]上記[4]から上記[6]のいずれかに記載される熱硬化性樹脂組成物の半硬化体と繊維状補強部材とを備えることを特徴とするプリプレグ。
【0020】
[10]上記[4]から上記[6]のいずれかに記載される熱硬化性樹脂組成物を繊維状補強材に含浸させ加熱して、前記繊維状補強材に含浸した前記熱硬化性樹脂組成物を半硬化することを特徴とするプリプレグの製造方法。
【0021】
[11]上記[1]の一般式(1)のカッコ内に示される構造部位の芳香核への結合数が異なる複数種類の化合物を含み、前記構造部位の平均繰り返し数が0.1〜4である組成物を含有する、上記[1]に記載の原料
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、優れた誘電特性(誘電率、誘電正接)および優れた耐熱性(ガラス転移温度、高温環境下での重量減少)を備える硬化物を形成可能な熱硬化性樹脂組成物の成分として有用な活性エステル樹脂、その活性エステル樹脂の製造方法、その活性エステル樹脂を製造するための原料の1種であるビニルベンジル化フェノール化合物、そのビニルベンジル化フェノール化合物の製造方法、上記の活性エステル樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物、当該熱硬化性樹脂組成物の硬化物、当該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる層間絶縁材料、当該熱硬化性樹脂組成物を用いてなるプリプレグ、および当該プリプレグの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】参考例1により得られたビニルベンジル化物溶液(A−1)のGPCチャートである。
図2】参考例1により得られたビニルベンジル化物溶液(A−1)のFD‐MSのスペクトルである。
図3】参考例5により得られたビニル基含有活性エステル樹脂溶液(B−1)のGPCチャートである。
図4】参考例5により得られたビニル基含有活性エステル樹脂溶液(B−1)のFD‐MSのスペクトルである。
図5】実施例2により得られたビニルベンジル化物溶液(A−6)のGPCチャートである。
図6】実施例2により得られたビニルベンジル化物溶液(A−6)のFD‐MSのスペクトルである。
図7】実施例4により得られたビニル基含有活性エステル樹脂溶液(B−6)のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0025】
本発明の一実施形態に係るビニルベンジル化フェノール化合物(a)は、下記一般式(1)で示される。
【化15】
【0026】
上記一般式(1)中、Arは単環または多環の芳香核を2個以上有する2官能フェノール化合物残基であって、下記一般式(3)または下記一般式(11)で示される構造を有する。R〜Rは同一または異なってもよく、水素またはメチル基である。pは1〜4の整数である。本発明の一実施形態に係る組成物は、上記一般式(1)のカッコ内に示される構造部位の芳香核への結合数が異なる複数種類の化合物を含み、前記構造部位の平均繰り返し数が0.1〜4である。なお、平均繰り返し数が非整数となるのは、ビニルベンジル化フェノール化合物(a)は、上記一般式(1)のカッコ内に示される構造部位の芳香核への結合数が異なる複数種類の化合物を含む組成物からなる場合があるためである。他の一般式における平均繰り返し数についても同様である。
【化16】
【0027】
上記一般式(3)における2つの水酸基の芳香核上の位置は任意である。上記一般式(3)中のYは、下記一般式(22)または下記化学式(23)で表される構造である。
【化17】
【0028】
上記一般式(22)におけるR30〜R33は、同一または異なってもよく、水素またはメチル基である。
【化18】
【0029】
上記一般式(11)中のZは、直接結合、−(CH)−、−C(CH−、−CH(CH)−、−CH(Ph)−、−C(CH)(Ph)−、フルオレニル基、シクロヘキシリデン基、もしくは3,3,5−トリメチルシクロへキシリデン基、または下記一般式(21)、上記一般式(22)もしくは上記化学式(23)で表される構造である。
【化19】
【0030】
上記一般式(21)におけるR26〜R29は、同一または異なってもよく、水素またはメチル基である。上記一般式(21)の具体例として、1,3−フェニレンジイソプロピリデン基、1,4−フェニレンジイソプロピリデン基などが挙げられる。
【0031】
上記の本発明の一実施形態に係るビニルベンジル化フェノール化合物(a)の製造方法は限定されない。次に説明する製造方法により、ビニルベンジル化フェノール化合物(a)を効率的に製造することができる。
【0032】
ビニルベンジル化フェノール化合物(a)の本発明の一実施形態に係る製造方法では、下記一般式(5)または下記一般式(12)で示される単環または多環の芳香核を2個以上有する2官能フェノール化合物(α)およびビニルベンジルハライド化合物(β)を、ハイドロタルサイト類(γ)を脱ハロゲン化水素剤として反応させる。
【化20】
【0033】
ここで、上記一般式(5)中のYは、下記一般式(22)または下記化学式(23)で表される構造を含む。
【化21】
【0034】
上記一般式(22)におけるR30〜R33は、同一または異なってもよく、水素またはメチル基である。
【化22】
【0035】
上記一般式(12)中のZは、直接結合、−(CH)−、−C(CH−、−CH(CH)−、−CH(Ph)−、−C(CH)(Ph)−、フルオレニル基、シクロヘキシリデン基、もしくは3,3,5−トリメチルシクロへキシリデン基、または下記一般式(21)、上記一般式(22)もしくは上記化学式(23)で表される構造である。
【化23】
【0036】
上記一般式(21)におけるR26〜R29は、同一または異なってもよく、水素またはメチル基である。
【0037】
ビニルベンジルハライド化合物(β)は、芳香核にビニル基およびハロゲン化メチル基が結合していればよく、ビニル基とハロゲン化メチル基との位置関係は限定されない。
【0038】
本発明の一実施形態に係る製造方法では、上記の2官能フェノール化合物(α)とビニルベンジルハライド化合物(β)との反応における脱ハロゲン化水素剤として、ハイドロタルサイト類(γ)を用いる。ハイドロタルサイト類(γ)はマグネシウムおよびアルミニウムの炭酸塩および水酸化物の複合体の水和物であり、その一般式としてはMgAl12(OH)16(CO)・4HO、Mg4.5Al(OH)13CO・qHO(qは3〜3.5)である。また、それらの無水化物の例としては、Mg0.7Al0.31.15が挙げられる。ハイドロタルサイト類(γ)の具体例となる製品としては、KW−500SH、KW−500SN、KW−500PL、KW−500G−7、KW−1000、KW−1015、KW−2000、KW−2100(いずれも協和化学工業社製)が挙げられる。ハイドロタルト類(γ)を脱ハロゲン化水素剤として用いることにより、2官能フェノール化合物(α)のフェノール性水酸基を残したまま、ビニルベンジルハライド化合物(β)に基づく残基を芳香核の骨格に直接的に結合させることが実現される。
【0039】
この点に関し、例えば特許文献2に記載される芳香族ビニルベンジルエーテル化合物は多価フェノール化合物とビニルベンジルハライドとから形成され、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物を脱ハロゲン化水素剤として用いることにより、多価フェノール化合物におけるフェノール性水酸基とビニルベンジルハライドのハロゲンとが反応して、エーテル結合が形成される。このような反応では、多価フェノール化合物の一部を消費する形でビニル基を導入することになり、その後の活性エステル樹脂の構造制御性が低くなってしまう。これに対し、本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、活性エステル樹脂を形成するための反応の際に、2官能フェノール化合物(α)が有するフェノール性水酸基をカルボン酸ハロゲン化物との反応点とすることができるため、活性エステル樹脂の分子設計が容易となる。
【0040】
2官能フェノール化合物(α)とビニルベンジルハライド化合物(β)との反応における原料の仕込み量や反応条件は、所望の反応生成物の構造に応じて、ハイドロタルサイト類(γ)による脱ハロゲン化水素反応が適切に進行するように適宜設定される。2官能フェノール化合物(α)の仕込み量に対するビニルベンジルハライド化合物(β)の仕込み量のモル比率(β/α)は、0.1〜2.0とすることが好ましい場合がある。ハイドロタルサイト類(γ)の使用量のビニルベンジルハライド化合物(β)の仕込み量に対するモル比率(γ/β)は、0.70〜1.50とすることが好ましい場合がある。ハイドロタルサイト類(γ)を脱ハロゲン化水素剤として用いる場合には、脱ハロゲン化水素反応が二酸化炭素および水の発生を伴うため、反応中における炭酸ガスの発生を適切に制御することや、水分を適切に系外に排出することなどを考慮して、加熱温度などの反応条件を設定することが好ましい。
【0041】
限定されない例示を行えば、脱ハロゲン化水素反応は、2官能フェノール化合物(α)およびハイドロタルサイト類(γ)を含有するスラリー状の反応液を50℃〜80℃の範囲内、好ましくは60℃〜70℃の範囲内に維持しつつ、ビニルベンジルハライド化合物(β)を滴下することにより、急激な炭酸ガスの発生を抑制することができる。また、上記のスラリー状の反応液における溶媒をトルエンやメチルイソブチルケトンなどとし、ビニルベンジルハライド化合物(β)を全量滴下した後、反応液の温度を100℃以上に加温して、反応液内の水分を除去することが好ましい。
【0042】
2官能フェノール化合物(α)とビニルベンジルハライド化合物(β)との反応に用いる溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトン、メチルn‐アミルケトン、メチルイソアミルケトンなどが挙げられる。
【0043】
本発明の一実施形態に係る活性エステル樹脂(A)は、下記一般式(6)で示される構造を有する成分を含有する。
【化24】
【0044】
上記一般式(6)中、Xは下記一般式(8)または下記一般式(13)で示される構造である。ArおよびArは同一または異なってもよく、フェニル基、芳香核上に炭素原子数1〜4のアルキル基を1〜3個有するフェニル基、ナフチル基、または芳香核上に炭素原子数1〜4のアルキル基を1〜3個有するナフチル基である。平均繰り返し数nは0.5〜30である。
【化25】
【0045】
上記一般式(8)中、R〜R15は同一または異なってもよく、水素またはメチル基である。平均繰り返し数lおよび平均繰り返し数kはそれぞれ独立に0.1〜2である。上記一般式(8)中のYは、上記一般式(3)や上記一般式(5)におけるYと同様であって、下記一般式(22)または下記化学式(23)で表される構造である。
【化26】
【0046】
上記一般式(22)および上記化学式(23)におけるR30〜R33は、同一または異なってもよく、水素またはメチル基である。
【化27】
【0047】
上記一般式(13)中、Zは、直接結合、−(CH)−、−C(CH−、−CH(CH)−、−CH(Ph)−、−C(CH)(Ph)−、フルオレニル基、シクロヘキシリデン基、もしくは3,3,5−トリメチルシクロへキシリデン基、または下記一般式(21)、上記一般式(22)もしくは上記化学式(23)で表される構造であり、R16〜R25は、同一または異なってもよく、水素またはメチル基であり、平均繰り返し数j、iはそれぞれ独立に0.1〜2である。
【化28】
【0048】
上記一般式(21)におけるR26〜R29は、同一または異なってもよく、水素またはメチル基である。
【0049】
本発明の一実施形態に係る活性エステル樹脂(A)は、特許文献1に開示される活性エステル樹脂と異なり、重合反応が可能なビニル基をベンジル基の芳香核に有している。このため、ビニル基の二重結合を反応部位とする反応が進行した場合に、その反応により形成された炭素鎖と、活性エステル樹脂(A)のエステル結合を含む主鎖との相対位置が変化しにくい。それゆえ、本発明の一実施形態に係る活性エステル樹脂(A)を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、加熱された際に、変形や分解が生じにくく、ガラス転移温度が高く耐熱安定性に優れる材料となりやすい。活性エステル樹脂(A)の主鎖の動きにくさ(主鎖を回転軸とする回転のしにくさなど)をより安定的に高める観点から、本発明の一実施形態に係る活性エステル樹脂(A)は、上記一般式(6)中のXが上記一般式(7)で示される構造であることが好ましい場合もある。
【0050】
本発明の一実施形態に係る活性エステル樹脂(A)の製造方法は限定されない。例えば、本発明の一実施形態に係るビニルベンジル化フェノール化合物(a)と、1官能フェノール化合物(b)と、芳香核含有ジカルボン酸およびそのハライド化合物からなる群から選ばれる1種からなる芳香族カルボン酸系化合物(c)以上とを反応させることによって、活性エステル樹脂(A)を得ることができる。
【0051】
1官能フェノール化合物(b)の具体例として、フェノール、ナフトール等の無置換1官能フェノール化合物、およびクレゾール、ジメチルフェノール、エチルフェノール等のアルキル置換1官能フェノール化合物が挙げられる。アルキル置換1官能フェノール化合物におけるアルキル基の置換数は3以下であってアルキル基の炭素数は4以下であることが、後述するエポキシ樹脂(B)との硬化性および誘電特性のバランスの観点から好ましい場合がある。
【0052】
芳香族カルボン酸系化合物(c)の具体例として、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、およびこれらの酸塩化物が挙げられる。
【0053】
上記反応の条件は、活性エステル樹脂(A)を適切に生成できる限り、任意である。多官能フェノール化合物(特許文献1におけるフェノール性水酸基含有樹脂が例示される。)と1官能フェノール化合物(b)と芳香族カルボン酸系化合物(c)とを反応させることにより活性エステル樹脂が得られることは公知であるから、その製造方法を参考にしてもよい。
【0054】
本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、本発明の一実施形態に係る活性エステル樹脂(A)およびエポキシ樹脂(B)を含有する。
【0055】
エポキシ樹脂(B)は公知のものを使用することができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール、ナフトールなどのキシリレン結合によるアラルキル樹脂のエポキシ化物、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化物、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などの2価以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が挙げることができる。これらエポキシ樹脂は単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0056】
これらエポキシ樹脂(B)の中でも、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール、ナフトールなどのキシリレン結合によるアラルキル樹脂のエポキシ化物、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化物のようなエポキシ当量が大きい樹脂を使用するのが好ましい。良好な誘電特性を得る観点からである。
【0057】
本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物における、活性エステル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)の配合比は、活性エステル樹脂(A)に含まれるエステル基とエポキシ樹脂(B)に含まれるエポキシ基の当量比(B/A)が0.5〜1.5の範囲にあることが好ましく、0.8〜1.2の範囲にあることが特に好ましい。
【0058】
本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、さらに硬化促進剤を含んでいてもよい。かかる硬化促進剤の例としては、活性エステル樹脂(A)に含まれるビニル基の反応を促進する観点から、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド等有機過酸化物、アゾ化合物、トリアルキルボラン等有機ホウ素化合物などが挙げられる。また、活性エステル樹脂(A)に含まれるエステル基とエポキシ樹脂(B)の硬化促進剤として公知の物質を用いることができる。この様な硬化促進剤としては例えば、3級アミン化合物、4級アンモニウム塩、イミダゾール類、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩などを挙げることができる。より具体的には、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの3級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレ−ト、テトラフェニルホスホニウムテトラナフトエ酸ボレ−トなどのホスホニウム塩、トリフェニルホスホニオフェノラ−ト、ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンの反応物などのベタイン状有機リン化合物を挙げることができる。
【0059】
上記の硬化促進剤の使用量は限定されない。硬化促進剤の機能に応じて適宜設定されるべきものである。
【0060】
本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、さらに無機充填剤を含んでいてもよい。かかる無機充填剤としては、非晶性シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、ガラス、珪酸カルシウム、石膏、炭酸カルシウム、マグネサイト、クレー、タルク、マイカ、マグネシア、または硫酸バリウムなどを挙げることができる。中でも、非晶性シリカ、結晶性シリカなどが好ましい。
【0061】
また優れた成形性を維持しつつ、充填剤の配合量を高めるためには、細密充填を可能とするような粒度分布の広い球形の充填剤を使用することが好ましい。その場合、粒径が0.1〜3μmの小粒径の球形無機充填剤5〜40重量%、粒径が5〜30μmの大粒径の球形無機充填剤95〜60重量%の割合で混合して使用するのが好ましい。
【0062】
本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物が無機充填剤を含有する場合において、無機充填剤の配合量は無機充填剤の種類や用途などに応じて適宜設定される。限定されない例として、無機充填剤の配合量を熱硬化性樹脂組成物全体の60質量%〜93質量%とすることが挙げられる。
【0063】
本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、溶剤、カップリング剤、離型剤、着色剤、難燃剤、低応力剤、増粘剤などを添加、あるいは予め反応して用いることができる。カップリング剤の例としては、ビニルシラン系、アミノシラン系、エポキシシラン系等のシラン系カップリング剤、チタン系カップリングなどが挙げられる。離型剤の例としてはカルナバワックス、パラフィンワックス、ステアリン酸、モンタン酸、カルボキシル基含有ポリオレフィンワックスなどが挙げられる。また着色剤としては、カーボンブラックなどが挙げられる。難燃剤の例としては、ハロゲン化エポキシ樹脂、ハロゲン化合物、リン化合物など、また難燃助剤としては三酸化アンチモンなどが挙げられる。低応力剤の例としては、シリコンゴム、変性ニトリルゴム、変性ブタジエンゴム、変性シリコンオイルなどが挙げられる。
【0064】
本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を加熱することにより、硬化物を得ることができる。かかる本発明の一実施形態に係る硬化物は、ビニル基を有する活性エステル樹脂(A)に由来する構造部分を有するため、誘電率が低い、誘電正接が低い、など誘電特性に優れる。
【0065】
また、活性エステル樹脂(A)はビニルベンジル基が芳香核に直接結合した構造を有するため、ビニル基が重合反応した際に形成される炭素鎖が、水酸基を利用して導入したビニルベンジルエーテルと比較して分子運動しにくい。このため、本発明の一実施形態に係る硬化物が加熱されても、硬化物における活性エステル樹脂(A)に由来する構造部分は回転運動などが生じにくい。それゆえ、本発明の一実施形態に係る硬化物は、ガラス転移温度が高くなりやすく、耐熱安定性にも優れたものとなりやすい。
【0066】
本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を硬化させる温度は、その硬化物の組成に応じて適宜設定される。限定されない例示として、100〜250℃の温度範囲で加熱することが挙げられる。
【0067】
硬化のための具体的な作業も限定されない。例えば、本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を必要に応じて溶媒で希釈し、得られた希釈溶液を基材に塗工して、加熱により乾燥、硬化させる。得られた硬化塗膜を基材から剥すことにより、本発明の一実施形態に係る硬化物(硬化物フィルム)を得ることができる。本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を成形型内で硬化させることにより、成形材を得ることができる。本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の硬化物をバインダーとしても用いてもよいし、コーティング材として用いてもよいし、硬化物を含む部材を積層材として用いてもよい。
【0068】
本発明の一実施形態に係る層間絶縁材料は、本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物からなる。例えば、本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解させることにより、回路基板に塗布して絶縁層とするための層間絶縁用ワニスとすることができる。
【0069】
得られた層間絶縁用ワニスを支持フィルム上に展開したのち加熱処理してフィルム状とすれば、層間絶縁材料用途の接着シートとすることができる。この接着シートは多層プリント配線基板における層間絶縁材とすることができる。本発明の一実施形態に係る層間絶縁材料を、半導体封止用に使用する場合は、熱硬化性樹脂組成物は上述したような無機充填剤を含有することが好ましい。
【0070】
本発明の一実施形態に係るプリプレグは、本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の半硬化体とガラス繊維など繊維状補強部材とを備える。このプリプレグは多層プリント配線基板における層間絶縁材とすることができる。本発明の一実施形態に係るプリプレグの製造方法は限定されない。本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を、必要に応じて溶剤を加えてワニス状として、繊維状補強部材に含浸させて加熱処理を行うことにより、本発明の一実施形態に係るプリプレグを製造することができる。
【0071】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0072】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0073】
<水酸基当量>
試料をピリジンと過剰の無水酢酸でアセチル化し、試料中に存在する水酸基に消費される無水酢酸から生成する酢酸を、水酸化カリウムアルコール溶液で滴定することで求めた。
【0074】
<GPC分析条件>
(1)使用機器:東ソー社製「HLC−8320 GPC」
(2)カラム:いずれも東ソー社製、「TSKgel superHZ4000」(1本)+「TSKgel superHZ3000」(1本)+「TSKgel superHZ2000」(2本)+「TSKgel superHZ1000」(1本)(各々6.0mm×15cmのカラムを接続)
(3)溶媒:テトラヒドロフラン
(4)流量:0.6ml/min
(5)温度:40℃
(6)検出器:示差屈折率(RI)計(測定装置「HLC−8320 GPC」内蔵RI検出器)
【0075】
<FD‐MS分析条件>
(1)装置:日本電子製「JMS‐T100GCV」
(2)カソード電圧:−10kV
(3)エミッタ電流:0mA→35mA(51.2mA/min.)
(4)測定質量範囲:m/z=10〜2000(実施例1)
m/z=10〜3000(実施例5)
【0076】
(参考例1)
窒素ガス導入管、温度計および撹拌機を備えた四口の2Lフラスコに、2,7‐ジヒドロキシナフタレン160.2g、ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「KW‐500SH)311.0g、およびトルエン1251.3gを仕込み、60〜70℃に昇温した。次いで、クロロメチルスチレン152.6g(AGCセイミケミカル社製「CMS‐P」)を炭酸ガスによる急激な発泡に注意しながら、滴下して添加した。さらに、100〜110℃の温度に昇温して、炭酸ガスおよび水を系外へ排出しながら5時間反応させた。得られた反応溶液からハイドロタルサイトを濾過して取り除いた後、トルエンでハイドロタルサイトを洗浄することで、2,7‐ジヒドロキシナフタレンのビニルベンジル化物溶液(A−1)1606.6gを得た。固形分収率78.5%、固形分13.5%、水酸基当量は、144.5g/eqであった。得られたビニルベンジル化物溶液(A−1)のGPCチャートを図1に示す。
【0077】
得られたビニルベンジル化物溶液(A−1)のFD‐MSのスペクトルを図2に示す。2,7‐ジヒドロキシナフタレン(Mw:160)にビニルベンジル基(Mw:116)が1個付加したピーク(M=276)、ビニルベンジル基(Mw:116)が2個付加したピーク(M=392)、ビニルベンジル基(Mw:116)が3個付加したピーク(M=508)が検出された。
【0078】
したがって、2,7‐ジヒドロキシナフタレン1モルにビニルベンジル基が1〜3モル結合した化合物であることが確認された。
【0079】
また、2,7‐ジヒドロキシナフタレン1モルにクロロメチルスチレン1モル全量が水酸基に反応した場合、理論水酸基当量は276g/eqとなる。一方、2,7−ジヒドロキシナフタレン1モルの芳香核側にクロロメチルスチレン1モル全量が反応した場合、理論水酸基当量が138g/eqとなる。ビニルベンジル化物(A−1)の実測水酸基当量は138g/eqに近いことから、クロロメチルスチレンの大部分が芳香核側に付加していることが確認された。
【0080】
(参考例2)
窒素ガス導入管、温度計および撹拌機を備えた四口の2Lフラスコに、1,6‐ジヒドロキシナフタレン160.2g、ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「KW‐500SH)311.0g、およびトルエン1251.3gを仕込み、60〜70℃に昇温した。次いで、クロロメチルスチレン152.6g(AGCセイミケミカル社製「CMS‐P」)を炭酸ガスによる急激な発泡に注意しながら、滴下して添加した。さらに、100〜110℃の温度に昇温して、炭酸ガスおよび水を系外へ排出しながら5時間反応させた。得られた反応溶液からハイドロタルサイトを濾過して取り除いた後、トルエンでハイドロタルサイトを洗浄することで、1,6‐ジヒドロキシナフタレンのビニルベンジル化物溶液(A−2)1646.1gを得た。固形分収率79.0%、固形分13.3%、水酸基当量は150.1g/eqであった。
【0081】
(参考例3)
窒素ガス導入管、温度計および撹拌機を備えた四口の2Lフラスコに、1,6‐ジヒドロキシナフタレン208.3g、ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「KW‐500SH)412.2g、およびメチルイソブチルケトン948.9gを仕込み、60〜70℃に昇温した。次いで、クロロメチルスチレン198.4g(AGCセイミケミカル社製「CMS‐P」)を炭酸ガスによる急激な発泡に注意しながら、滴下して添加した。さらに、100〜115℃の温度に昇温して、炭酸ガスおよび水を系外へ排出しながら5時間反応させた。得られた反応溶液からハイドロタルサイトを濾過して取り除いた後、メチルイソブチルケトンでハイドロタルサイトを洗浄することで、1,6‐ジヒドロキシナフタレンのビニルベンジル化物溶液(A−3)1401.4gを得た。固形分収率83.1%、固形分21.3%、水酸基当量153.7g/eqであった。
【0082】
(参考例4)
窒素ガス導入管、温度計および撹拌機を備えた四口の2Lフラスコに、1,6‐ジヒドロキシナフタレン128.2g、ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「KW‐500SH)157.0g、およびメチルイソブチルケトン385.4gを仕込み、60〜70℃に昇温した。次いで、クロロメチルスチレン79.4g(AGCセイミケミカル社製「CMS‐P」)を炭酸ガスによる急激な発泡に注意しながら、滴下して添加した。さらに、100〜115℃の温度に昇温して、炭酸ガスおよび水を系外へ排出しながら5時間反応させた。得られた反応溶液からハイドロタルサイトを濾過して取り除いた後、メチルイソブチルケトンでハイドロタルサイトを洗浄することで、1,6‐ジヒドロキシナフタレンのビニルベンジル化物溶液(A−4)665.5gを得た。固形分収率92.8%、固形分26.3%、水酸基当量127.3g/eqであった。
【0083】
(参考例5)
窒素ガス導入管、温度計および撹拌機を備えた四口の300mLフラスコに、ビニルベンジル化物溶液(A−1)190.0g、1‐ナフトール20.9g、およびテトラn‐ブチルアンモニウムブロマイド0.6gを仕込み室温で溶解した。次いで、イソフタル酸クロライド32.5gを仕込み溶解し、20%水酸化ナトリウム水溶液64.1gを20〜60℃の範囲内の温度で滴下した後、50〜60℃の温度で6時間反応させた。さらに、静置して分離した水層を排出した後、純水でpHが中性になるまで洗浄した。その後、減圧留去で濃縮して、固形分67.7%、理論官能基当量209g/eqのビニル基含有の活性エステル樹脂溶液(B−1)を得た。得られたビニル基含有活性エステル樹脂溶液(B−1)のGPCチャートを図3に示す。
【0084】
得られたビニル基含有活性エステル樹脂溶液(B−1)のFD‐MSのスペクトルを図4に示す。下記一般式(9)において、i=0に相当するピーク(M=418)、i=1、j=1に相当するピーク(M=824)が検出された。
【化29】
【0085】
(参考例6)
窒素ガス導入管、温度計および撹拌機を備えた四口の300mLフラスコに、ビニルベンジル化物溶液(A−2)190.0g、1‐ナフトール19.8g、およびテトラn‐ブチルアンモニウムブロマイド0.6gを仕込み室温で溶解した。次いで、イソフタル酸クロライド30.8gを仕込み溶解し、20%水酸化ナトリウム水溶液60.7gを20〜60℃の範囲内の温度で滴下した後、50〜60℃の温度で6時間反応させた。さらに、静置して分離した水層を排出した後、純水でpHが中性になるまで洗浄した。その後、減圧留去で濃縮して、固形分65.2%、理論官能基当量212g/eqのビニル基含有の活性エステル樹脂溶液(B−2)を得た。
【0086】
(参考例7)
窒素ガス導入管、温度計および撹拌機を備えた四口の2Lフラスコに、ビニルベンジル化物溶液(A−3)400.0g、1‐ナフトール120.0g、およびメチルイソブチルケトン233.4gを仕込み室温で溶解した。次いで、イソフタル酸クロライド140.2gを仕込み溶解し、20%水酸化ナトリウム水溶液290.0gを20〜40℃の範囲内の温度で滴下した後、30〜40℃の温度で6時間反応させた。さらに、静置して分離した水層を排出した後、純水でpHが中性になるまで洗浄した。その後、シクロヘキサノン158.9gを徐々に添加しながらメチルイソブチルケトンを減圧留去して、固形分61.3%、理論官能基当量213g/eqのビニル基含有の活性エステル樹脂溶液(B−3)を得た。
【0087】
(参考例8)
窒素ガス導入管、温度計および撹拌機を備えた四口の300mLフラスコに、ビニルベンジル化物溶液(A−4)40.0g、1‐ナフトール22.1g、およびメチルイソブチルケトン50.8gを仕込み室温で溶解した。次いで、イソフタル酸クロライド23.7gを仕込み溶解し、20%水酸化ナトリウム水溶液49.1gを20〜40℃の範囲内の温度で滴下した後、30〜40℃の温度で6時間反応させた。さらに、静置して分離した水層を排出した後、純水でpHが中性になるまで洗浄した。その後、シクロヘキサノン25.8gを徐々に添加しながらメチルイソブチルケトンを減圧留去して、固形分79.1%、理論官能基当量205g/eqのビニル基含有の活性エステル樹脂溶液(B−4)を得た。
【0088】
(実施例1)1,1’‐メチレンビス(2‐ナフトール)のビニルベンジル化
窒素ガス導入管、温度計、撹拌機を備えた四口の500mLフラスコに、1,1’‐メチレンビス(2‐ナフトール)75.8g、ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「KW‐1000」)42.9g、メチル‐n‐アミルケトン(以下「MAK」と略記する。)302.7gを仕込み、60〜70℃に昇温した。次いで、クロロメチルスチレン25.0g(AGCセイミケミカル社製「CMS‐P」)を炭酸ガスによる急激な発泡に注意しながら、滴下して添加した。さらに、120〜130℃の温度に昇温して、炭酸ガスおよび水を系外へ排出しながら5時間反応させた。得られた反応溶液からハイドロタルサイトを濾過して取り除いた後、MAKでハイドロタルサイトを洗浄することで、1,1’‐メチレンビス(2‐ナフトール)のビニルベンジル化物溶液(A−5)431.8gを得た。固形分収率94.6%、固形分20.8%、水酸基当量は201.5g/eqであった。
【0089】
(実施例2)ナフトールザイロック樹脂のビニルベンジル化
窒素ガス導入管、温度計、撹拌機を備えた四口の2Lフラスコに、ナフトールザイロック樹脂(新日鉄住金化学社製「SN‐485」)172.0g、ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「KW‐1000」)125.4g、トルエン981.0gを仕込み、60〜70℃に昇温した。次いで、クロロメチルスチレン73.3g(AGCセイミケミカル社製「CMS‐P」)を炭酸ガスによる急激な発泡に注意しながら、滴下して添加した。さらに、100〜110℃の温度に昇温して、炭酸ガスおよび水を系外へ排出しながら5時間反応させた。得られた反応溶液からハイドロタルサイトを濾過して取り除いた後、トルエンでハイドロタルサイトを洗浄することで、ナフトールザイロック樹脂のビニルベンジル化物溶液(A−6)1223.9gを得た。固形分収率92.7%、固形分17.3%、水酸基当量は289.2g/eqであった。得られたビニルベンジル化物溶液(A−6)のGPCチャートを図5に示す。
【0090】
得られたビニルベンジル化物溶液(A−6)のFD‐MSのスペクトルを図6に示す。下記一般式(10)において、q=0、r=0、s=1に相当するピーク(M=390)、q=1、r=0、s=1に相当するピーク(M=506)、q=1、r=1、s=1に相当するピーク(M=622)が検出された。
【化30】
【0091】
(実施例3)1,1’‐メチレンビス(2‐ナフトール)のビニルベンジル化物のエステル化物
窒素ガス導入管、温度計、撹拌機を備えた四口の300mLフラスコに、ビニルベンジル化物溶液(A−5)200.0g、1‐ナフトール36.4g、テトラn‐ブチルアンモニウムブロマイド0.6gを仕込み室温で溶解した。次いで、イソフタル酸クロライド46.5gを仕込み溶解し、20%水酸化ナトリウム水溶液91.7gを20〜40℃の範囲内の温度で滴下した後、50〜60℃の温度で6時間反応させた。さらに、静置して分離した水層を排出した後、純水でpHが中性になるまで洗浄した。その後、減圧留去で濃縮して、固形分72.0%、理論官能基当量235g/eqのビニル基含有の活性エステル樹脂溶液(B−5)を得た。
【0092】
(実施例4)ナフトールザイロック樹脂のビニルベンジル化物のエステル化物
窒素ガス導入管、温度計、撹拌機を備えた四口の500mLフラスコに、ビニルベンジル化物溶液(A−6)250.0g、1‐ナフトール39.9g、テトラn‐ブチルアンモニウムブロマイド0.7gを仕込み室温で溶解した。次いで、イソフタル酸クロライド43.3gを仕込み溶解し、20%水酸化ナトリウム水溶液83.5gを20〜40℃の範囲内の温度で滴下した後、50〜60℃の温度で6時間反応させた。さらに、静置して分離した水層を排出した後、純水でpHが中性になるまで洗浄した。その後、減圧留去で濃縮して、固形分69.5%、理論官能基当量260g/eqのビニル基含有の活性エステル樹脂溶液(B−6)を得た。得られたビニル基含有活性エステル樹脂溶液(B−6)のGPCチャートを図7に示す。
【0093】
(比較例1)
窒素ガス導入管、温度計および撹拌機を備えた四口の300mLフラスコに、1‐ナフトール36.1g、イソフタル酸クロライド25.3g、およびトルエン183.5gを仕込み、室温で溶解した。次いで、20%水酸化ナトリウム水溶液52.0gを20〜60℃の範囲内の温度で滴下した後、50〜60℃の温度で6時間反応させた。その後、反応液を室温まで冷却して、析出した結晶を濾過して回収した。さらに、得られた結晶を純水で洗浄した後、80℃で減圧乾燥し、ジメチルアセトアミドに溶解して固形分30%の活性エステル化合物溶液(B−7)を得た。理論官能基当量は209g/eqであった。
【0094】
(比較例2)
ビフェニルアラルキルフェノール樹脂(エア・ウォーター社製「HE200C−17」、150℃でのICI粘度150mPa・s、水酸基当量210g/eq)をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して固形分60%の樹脂溶液(B−8)とした。
【0095】
(参考例9〜12、実施例5および6ならびに比較例3および4)
参考例5〜8、実施例3および4ならびに比較例1および2において製造した樹脂溶液(B−1〜B−8)のそれぞれに、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC−3000H」、エポキシ当量290g/eq)の固形分75%のメチルエチルケトン(MEK)溶液、およびジメチルアミノピリジン(DMAP)を混合し、樹脂組成物ワニスを作製した。各樹脂組成物ワニスを製造するための配合量は表1に記載のとおり(表1中の配合量の数値は質量部を意味する。)であった。銅箔光沢面に各樹脂組成物ワニスを塗工し、100℃で8分間乾燥し、200℃で6時間硬化させた。硬化後、銅箔から引き剥がして膜厚約80μmの硬化物フィルム(硬化物)を得た。
【0096】
(ガラス転移温度Tgの測定)
参考例9〜12、実施例5および6ならびに比較例3および4で得られた硬化物フィルムを、所定の大きさにカット(切り出)してガラス転移温度測定のサンプルとした。以下の条件にてサンプルのガラス転移温度Tgを測定した。
測定機器:リガク社製熱機械分析装置「TMA8310evo」
サンプル寸法:幅5mm×長さ15mm×厚さ0.080mm(80μm)
雰囲気:窒素中
測定温度:25〜300℃
昇温速度:10℃/分
測定モ−ド:引張
【0097】
(誘電特性の評価)
参考例9〜12、実施例5および6ならびに比較例3および4で得られた硬化物フィルムを所定の大きさに切り出して、測定用のサンプルとした。下記の測定機器を用いて、以下の条件にてサンプルの誘電特性を測定した。
測定機器:キーサイトテクノロジー社製「ネットワークアナライザーE5071C」
関東電子応用開発社製空洞共振器摂動法誘電率測定装置
周波数:1GHz
サンプル寸法:幅2mm×長さ100mm×厚さ0.080mm(80μm)
【0098】
評価結果を表1に示す。表1に示されるように、本発明の構成を備えるビニルベンジル化フェノール化合物(実施例1および2)を用いて製造された活性エステル樹脂(実施例1および2)を含む樹脂組成物ワニス(実施例5および6)から得られた硬化フィルム(実施例5および6)は、参考例に係る硬化フィルム(参考例9〜12)に比べて、誘電正接が低い。
【0099】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7