【実施例】
【0057】
本明細書に記載されているガスセンサ素子の実施形態が、アセトンおよびイソプレンを検出する能力を改善するということが発見された。これらの利点は次の例によってさらに示され、それらは本開示の実施形態を例示することを意図されているが、範囲または基本的な原理を限定することは全く意図されていない。
【0058】
例1:ホウ素ドープイプシロン相WO
3の作製(例1)
例1では、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)水和物(シグマアルドリッチ、セントルイス、MO、USA)の5g、100mgのホウ酸(アルドリッチ)、2gのカルボヒドラジド(アルドリッチ)、および硝酸アンモニウム(アルドリッチ)の10gを脱イオン(DI)水の50mL中に溶解した。それから、水溶液を約420℃に予熱されたマッフル炉内に置き、それから約20min、または材料の燃焼が実質的に完了するまで加熱した。試料材料の燃焼が完了した後、生成物を空気中で約420℃において追加の約20min焼鈍した。もたらされた粉末は橙黄色に見え、標準のε−WO
3のX線回折(ICFFのPDFカード番号01−087−2404)と測定されたXRDパターン(
図6)を比較することによって、ホウ素ドープWO
3であると確認された。結果は、0.19wt%の割合のホウ素ドープWO
3または化合物#1、C−1の4.6gであった。
【0059】
【表1】
【0060】
例2:ホウ素ドープイプシロン相WO
3のCuO担持
例2では、上に記載されている様式で作られたC−1の1.0g、CuCl
2・2H
2O(アルドリッチ)の27.18mg、および尿素(アルドリッチ)の50mgを蒸留水の10mL中に置き、約110℃の温度において約17時間、40mL密閉バイアル反応器内で撹拌した。それから、密閉バイアルを室温の水道水中で冷やし、メンブレンフィルタ(0.05μm孔径)によって濾過し、DI水によって少なくとも3回洗浄し、最後に約110℃で約2時間乾燥した。それから、もたらされた材料を約400℃で周囲雰囲気および圧力下において約2時間焼鈍し、1wt%の割合のCuO担持、0.19wt%の割合のBドープのε−WO
3または化合物#2、C−2の約4.6gをもたらした。
【0061】
例3:ホウ素ドープイプシロン相WO
3の貴金属担持
例3では、上に記載されている様式で作られたC−1の1.0g、Pt(NH
3)
4・(NO
3)
2(アルドリッチ)の17.12g、および尿素(アルドリッチ)の50mgを蒸留水の10mL中に置き、約110℃の温度において約17時間、40mL密閉バイアル反応器内で撹拌した。それから、密閉バイアルを室温の水道水中で冷やし、メンブレンフィルタ(0.05μm孔径)によって濾過し、DI水によって少なくとも3回洗浄し、最後に約110℃で約2時間乾燥した。それから、もたらされた材料を約400℃で周囲雰囲気および圧力下において約2時間焼鈍し、1wt%の割合のPt担持、0.19wt%の割合のBドープのε−WO
3または化合物#3、C−3の約4.6gをもたらした。
【0062】
例4:貴金属およびホウ素ドープのイプシロン相WO
3
例4では、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)水和物(アルドリッチ)の5g、100mgのホウ酸(アルドリッチ)、Pt(NH
3)
4・(NO
3)
2(アルドリッチ)の1.826mg、2gのカルボヒドラジド(アルドリッチ)、および硝酸アンモニウム(アルドリッチ)の10gを脱イオン(DI)水の50mL中に溶解した。それから、水溶液を約420℃に予熱されたマッフル炉内に置き、それから約20min、または材料の燃焼が実質的に完了するまで加熱した。試料材料の燃焼が完了した後、生成物を空気中において約420℃で追加の約20min焼鈍した。もたらされた粉末は、標準のε−WO
3のX線回折(ICFFのPDFカード番号01−087−2404)と測定されたXRDパターン(
図7)を比較することによって、Ptドープかつホウ素ドープのWO
3であると確認された。結果は、0.19wt%の割合のホウ素ドープWO
3または化合物#4、C−4の約4.6gであった。
【0063】
例5:バナジウムおよびホウ素ドープのイプシロン相WO
3(予想例)
例5では、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)水和物(アルドリッチ)の5g、100mgのホウ酸(アルドリッチ)、6.995mgのVC
2O
5(EVRAZ−Stratcor、シカゴ、IL、USA)、2gのカルボヒドラジド(アルドリッチ)、および硝酸アンモニウム(アルドリッチ)の10gを脱イオン(DI)水の50mL中に溶解し得る。それから、水溶液を約420℃に予熱され得るマッフル炉内に置き、それから約20min、または材料の燃焼が実質的に完了するまで加熱し得る。試料材料の燃焼が完了した後、それから生成物を空気中で約420℃において追加の約20min焼鈍し得る。結果は、0.02wt%の割合のVドープかつ0.19wt%の割合のホウ素ドープのε−WO
3または化合物#5、C−5であると予期される。
【0064】
例6:サマリウムおよびホウ素ドープのイプシロン相WO
3(予想例)
例6では、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)水和物(アルドリッチ)の5g、100mgのホウ酸(アルドリッチ)、Sm(NO
3)
3・6H
2O(アルドリッチ)の6.595mg、2gのカルボヒドラジド(アルドリッチ)、および硝酸アンモニウム(アルドリッチ)の10gを脱イオン(DI)水の50mL中に溶解し得る。それから、水溶液を約420℃に予熱され得るマッフル炉内に置き、それから約20min、または材料の燃焼が実質的に完了するまで加熱し得る。試料材料の燃焼が完了した後、それから生成物を空気中で約420℃において追加の約20min焼鈍し得る。結果は、0.02wt%の割合のSmドープかつ0.19wt%の割合のホウ素ドープのε−WO
3または化合物#6、C−6であると予期される。
【0065】
例7:バナジウム、白金、およびホウ素ドープイプシロン相WO
3
例7では、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)水和物(アルドリッチ)の5g、100mgのホウ酸(アルドリッチ)、VC
2O
5(EVRAZ−Stratcor)の6.995mg、Pt(NH
3)
4](NO
3)
2(アルドリッチ)の1.826mg、カルボヒドラジド(アルドリッチ)の2g、および硝酸アンモニウム(アルドリッチ)の10gを脱イオン(DI)水の50mL中に溶解した。それから、水溶液を約420℃に予熱されたマッフル炉内に置き、それから約20min、または材料の燃焼が実質的に完了するまで加熱した。試料材料の燃焼が完了した後、生成物を空気中で約420℃において追加の約20min焼鈍した。もたらされた粉末は、標準のε−WO
3のX線回折(ICFFのPDFカード番号01−087−2404)と測定されたXRDパターン(
図8)を比較することによって、Vドープ、Ptドープ、かつホウ素ドープのWO
3であると確認された。結果は、約4.6gの0.02wt%の割合のVドープ、0.02wt%の割合のPtドープ、かつ0.19wt%の割合のホウ素ドープのε−WO
3または化合物#7、C−7であった。
【0066】
例8:サマリウム、白金、およびホウ素ドープのイプシロン相WO
3
例8では、メタタングステン酸アンモニウム(AMT)水和物(アルドリッチ)の5g、ホウ酸(アルドリッチ)の100mg、Sm(NO
3)
3・6H
2O(アルドリッチ)の6.595mg、Pt(NH
3)
4](NO
3)
2(アルドリッチ)の1.826mg、カルボヒドラジド(アルドリッチ)の2g、および硝酸アンモニウム(アルドリッチ)の10gを脱イオン(DI)水の50mL中に溶解した。それから、水溶液を約420℃に予熱されたマッフル炉内に置き、それから約20min、または材料の燃焼が実質的に完了するまで加熱した。試料材料の燃焼が完了した後、生成物を空気中で約420℃において追加の約20min焼鈍した。もたらされた粉末は、標準のε−WO
3のX線回折(ICFFのPDFカード番号01−087−2404)と測定されたXRDパターン(
図9)を比較することによって、Smドープ、Ptドープ、かつホウ素ドープのWO
3であると確認された。結果は、約4.6gの0.02wt%の割合のSmドープ、0.02wt%の割合のPtドープ、かつ0.19wt%の割合のホウ素ドープのε−WO
3または化合物#8、C−8であった。
【0067】
例9:粒径を減少させるためにボールミル処理されたスラリー
例9では、C−1の2.0gおよびメタノール(アルドリッチ)の15.0mLを高純度アルミナジャーに加えて、溶剤系スラリー調製物を形成し、それから、混合物が液状様に見えるまでジャーの内容を手動で撹拌した。それから、3mm直径のZrO
2ミル材の20gおよび5mm直径のZrO
2ミル材の4gを、それからアルミナジャーに加え、ジャー内の混合物をベンチトップ遊星ボールミル(MTIコーポレーション、リッチモンド、CA)によって室温において約15.00Hzで約17時間ミル処理した。それから、もたらされた混合物を室温の空気中において約110℃で約2時間乾燥した。結果はC−9またはボールミル処理されたBドープWO
3であった。
【0068】
ボールミル処理される前および後の粒径分布は、HoribaのLA−300粒径分布アナライザ(Horibaサイエンティフィク、エジソン、NJ、USA)によって達成した。
【0069】
径の特定のためには、水性ピロリン酸ナトリウム十水和物(SPD)(アルドリッチ)の2gを逆浸透水(ROH
2O)の約2L中に溶解して、SPD溶液(0.1wt%ピロリン酸ナトリウム十水和物)を作った。
【0070】
それから、クリーニングのために、追加のROH
2Oの2LをHoribaのLA−300試料チャンバーに循環させて1分間ソニケーションした(「De−bubble」オン)。循環およびソニケーションされたてのROH
2Oを試料チャンバーから排水し、チャンバーにSPD溶液を再充填した(Horibaの設定は循環「8」および「Debubble」)。機械をブランク調整し(設定は「Init.Alignment」、「Alignment」、「Blank」)、繰り返してブランクの総透過パーセント(T%)がT%=100%であるということを保証した。
【0071】
ボールミル処理されたホウ素ドープWO
3、C−9の約200mgの初期量をSPD溶液の約25mL中に移し、約5分間良く混合して分散液を作り出した。もたらされた混合物は、T%が約75%から約80%に落ちるまで、SPD溶液を含有する試料チャンバーに漸増的に担持した。所望のT%に達したときに、設定を循環「8」、10分間のソニケーション、約10minのソニケーション中に「De−bubble」、および約1.654(すなわちR
powder/R
solvent=R
WO3/R
H2O=(2.22/1.33)=1.654)の「R.R.Index」(溶剤の屈折率の比」)に選択した。
【0072】
もたらされたボールミル処理されたスラリーの実施形態の走査電子顕微鏡写真が
図10に示されている。ボールミル処理なしのWO
3/0.05%B粒子のメディアン直径は約13.7233μmであり、一方、上に記載されているボールミル処理ありのWO
3/0.05%B粒子のメディアン直径は約0.5086μmであった。
【0073】
例10〜16:粒径を減少させるためにボールミル処理されたスラリー
例10〜16を、下の表2に記載されている組成物を用いて例9に記載されているようにボールミル処理する。
【0074】
【表2】
【0075】
例17:ガスセンサ素子(SE−1)の作製
例17ではガスセンサ素子を構築した。上で調製されたボールミル処理されたホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−9の約10mgを1.0mLのメタノール(アルドリッチ)と混合し、60minソニケーションした。分散液の約7つの10μlアリコートを約120℃の表面温度を有するセンサ素子(0.1インチ×0.1インチ電極、Al
2O
3基板、10mil厚、電極材料Au、電極間隔4mil、指幅4mil、指長さ0.1インチ、3電極対を有する、P/N614、Synテクノロジーズ、コロラド、USA)上に滴下し、各追加の滴下の間に乾燥した。それから、もたらされた組立品を300W出力電力のフルスペクトルキセノンランプの下で約120℃で約60分間ベーキングした。結果は、ドロップコートされたガスセンサ素子(SE−1)であった。
【0076】
【表3】
【0077】
例18:ガスセンサ素子(SE−2)の作製
センサ素子2(SE−2)を、センサ素子1(SE−1)について上に記載されている同じ様式で構築した。ただし、ボールミル処理されたホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−9を用いる代わりに、表3に示されているようにインプットはボールミル処理されたCuO担持ホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−10の約10mgに変えた。結果はドロップコートされたガスセンサ素子(SE−2)であった。
【0078】
例19:ガスセンサ素子(SE−3)の作製
センサ素子3(SE−3)を、センサ素子1(SE−1)について上に記載されている同じ様式で構築した。ただし、ボールミル処理されたホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−9を用いる代わりに、表3に示されているようにインプットはボールミル処理されたPt担持ホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−11の約10mgに変えた。結果はドロップコートされたガスセンサ素子(SE−3)であった。
【0079】
例20:ガスセンサ素子(SE−4)の作製
センサ素子4(SE−4)を、センサ素子1(SE−1)について上に記載されている同じ様式で構築した。ただし、ボールミル処理されたホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−9を用いる代わりに、表3に示されているようにインプットはボールミル処理されたPtドープホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−12の約10mgに変えた。結果はドロップコートされたガスセンサ素子(SE−4)であった。
【0080】
例21:ガスセンサ素子(SE−5)の作製(予想)
センサ素子5(SE−5)は、センサ素子1(SE−1)について上に記載されている同じ様式で構築されるであろう。ただし、ボールミル処理されたホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−9を用いる代わりに、表3に示されているようにインプットはボールミル処理されたVドープホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−13の約10mgに変えた。結果はドロップコートされたガスセンサ素子(SE−5)であろう。
【0081】
例22:ガスセンサ素子(SE−6)の作製(予想)
センサ素子6(SE−6)は、センサ素子1(SE−1)について上に記載されている同じ様式で構築されるであろう。ただし、ボールミル処理されたホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−9を用いる代わりに、表3に示されているようにインプットはボールミル処理されたSmドープホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−14の約10mgに変えた。結果はドロップコートされたガスセンサ素子(SE−6)であろう。
【0082】
例23:ガスセンサ素子(SE−7)の作製
センサ素子7(SE−7)を、センサ素子1(SE−1)について上に記載されている同じ様式で構築した。ただし、ボールミル処理されたホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−9を用いる代わりに、表3に示されているようにインプットはボールミル処理されたPtドープVドープホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−15の約10mgに変えた。結果はドロップコートされたガスセンサ素子(SE−7)であった。
【0083】
例24:ガスセンサ素子(SE−8)の作製
センサ素子8(SE−8)を、センサ素子1(SE−1)について上に記載されている同じ様式で構築した。ただし、ボールミル処理されたホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−9を用いる代わりに、表3に示されているようにインプットはボールミル処理されたPtドープSmドープホウ素ドープイプシロン相酸化タングステンC−16の約10mgに変えた。結果はドロップコートされたガスセンサ素子(SE−8)であった。
【0084】
例25:シングルセンサのガスセンサの試験[SE−2]
例25では、シングルガスセンサ素子の検証のために、上に記載されているように構築されたセンサ素子2、SE−2(CuO担持Bドープイプシロン相WO
3)(ヒータ回路基板Synkera−P/N614を有する)を、上および
図5に記載されているガスセンサシステムの実施形態のチャンバー5を模倣したT字型検査チャンバー内に置き、センサをマルチメータ(テクトロニクスDMM4050、6.1/2桁高精度マルチメータ、テクトロニクスInc.、ビーバートン、OR、USA)に接続し、抵抗率(オーム)を約40kΩにおいて周囲大気かつ暗条件下で測定するように設定した。センサの検査チャンバーへの入口の気流を制御するために用いられる実験セットアップのダイアグラムを
図11に示す。
【0085】
センサ温度を制御するための抵抗ヒータに5.8ボルトの電圧および0.162ampの電流を印加することによって、センサを約350℃に加熱した。それから、90%より高い相対湿度を有するアセトン不含空気(圧縮合成空気[CAS132259−10−0]、エアガスLLC、サンマルコス、CA、USA)をT字管内に約1.5L/minで放出して、センサのベースライン抵抗率を約300秒間安定化させた。
【0086】
それから、1.5L/minの合成空気流(エアガス)と同時に、15.1ppmアセトン(アルドリッチ)/合成空気(エアガス)混合物を約110mL/minの速度でシステム内に通し、抵抗率の変化を約350℃の温度において約150秒間モニターした。。それから、アセトン流を閉じてセンサをセンサの抵抗率のベースラインまで再度安定化させ、アセトン不含合成空気を約300秒間フラッシュした。
【0087】
それから、10mL/minの流量のエタノールガス(99.4ppmアセトン(アルドリッチ)/合成空気(エアガス)混合物を合成空気(エアガス)の1.5L/minと混合して、抵抗率の変化を約350℃の温度において約150秒間観察した。エタノール流を再び閉じてセンサの抵抗率のベースラインを安定化させ、エタノール不含合成空気(エアガス)を約300秒間フラッシュした。
【0088】
それから、10mL/minの流量のイソプレンガス(100.9ppmイソプレン(アルドリッチ)/合成空気(エアガス)混合物を合成空気(エアガス)の1.5L/minと混合して、抵抗率の変化を350℃の温度において約150秒間観察した。それから、イソプレン流を再び閉じてセンサの抵抗率のベースラインを安定化させた。
【0089】
上の手順を、195℃を包含する種々の温度について繰り返し、ヒータは3.8ボルトの電圧、0.143ampの電流で設定した。
【0090】
抵抗率の変化は、それぞれ350℃および195℃のセンサ温度について
図13および14に図示されている。加えて、抵抗率の変化は、同じ手順を用いて210℃から約360℃の範囲の他の種々の温度において測定された。センサ抵抗率対さまざまな温度の結果が
図15に示されている。
【0091】
例26:多重検出器のガスセンサ素子の試験[SE−1およびSE−1]
例26では、多重検出器のガスセンサシステムを構築し、例25において上に記載されているように測定した。ただし、単一のセンサ素子の代わりに、2つのセンサ素子をT字型チャンバー内に置いた。個別のセンサと平行に流体連通するようにSE−1(ホウ素ドープイプシロン相WO
3)およびSE−1(ホウ素ドープイプシロン相WO
3)を装置内に置き、
図12に示されているいくつかの実施形態と同様に多重検出器のガスセンサ素子デュアルセンサ#1をもたらした。加えて、測定されたセンサ温度がそれぞれ約350℃および約250℃であるように、センサは抵抗ヒータを用いて加熱された。各センサは同じ材料から作られるが、各センサの異なる温度は、それらが同じ成分ガスに対して異なる抵抗率の応答を呈することを引き起こすであろう。約350℃のセンサ温度を得るために、第1のセンサのためのヒータ素子は0.162Aの電流と5.8Vの電圧で設定した。約250℃のセンサ温度を得るために、第2のセンサのためのヒータ素子は0.137Aの電流と3.8Vの電圧で設定した。各センサの抵抗率の動的な変化が、それぞれ350℃および250℃について
図16および17に示されている。推定対測定の濃度値が、アセトンおよびイソプレンについてそれぞれ
図18および19に示されている。加えて、アセトンおよびイソプレン両方についてのセンサの応答、例えば感度の変動が
図22に示されており、アセトンおよびイソプレン両方についてのセンサ予測が
図23に示されている。
【0092】
例27:多重検出器のガスセンサ素子の試験[SE−1およびSE−3]
多重検出器のガスセンサシステムを、例26において上に記載されているように構築した。ただし、センサ素子SE−3(Pt担持ホウ素ドープイプシロン相WO
3)がSE−1(ホウ素ドープイプシロン相WO
3)に取って代わった。これは、
図12に示されているいくつかの実施形態と同様の構成で材料的に異なるセンサを有するツーセンサシステム、デュアルセンサ#2をもたらした。測定のためには、例26の手順を踏んだが、両方のセンサは約350℃で設定した。推定対測定の結果を、それぞれアセトンおよびイソプレンについて
図20および21に示す。加えて、センサ応答、例えば感度の変動をアセトンおよびイソプレン両方について
図25に示す。
【0093】
例28:他の多重検出器のガスセンサ素子の試験(予想)
多重検出器のガスセンサシステムは、マルチセンサ素子を検査チャンバー内に置いて同時に抵抗率を測定することによって、センサ素子のいずれかの組み合わせから構築され得る。
【0094】
例29:曲線あてはめを特定し、異なる温度においてデュアルBドープWO
3ガスセンサ素子を用いてアセトンを検出するための方法論を提供すること
それから、例29においては、デュアルセンサ#1を取り上げ、第1のセンサが5.6Vで約350℃の温度へ加熱され、第2のセンサが4.6Vで約250℃のセンサ温度へ加熱されるようにして既知のアセトン比率に対して測定し、アセトンおよびイソプレンの濃度は例25において用いられた手順と同様に変えた。結果は、センサ応答が
図22に示されているようにアセトンおよびイソプレンの既知レベルについて記録された。結果として、それから、
図22に示されている曲線あてはめ関係を方程式系、方程式3および4に変換して、センサの抵抗率に基づいてアセトンおよびイソプレンの濃度を予測した。結果は、ガスセンサ素子が、高温のセンサの感度および低温のセンサの感度からアセトンおよびイソプレンの濃度を予測するための方法に用いられ得る。感度は、測定されようとするガスについて測定されたセンサの抵抗を空気について測定されたそのセンサの抵抗によって正規化したものとして定められる。それから、前記の関係を用いて、それからセンサをガス試料に対して試験して、異なる温度のセンサを有するデュアルセンサのガスセンサ素子を用いてガス混合物中のアセトンおよびイソプレンの濃度を特定する方法の実施形態をバリデーションした。結果は
図23に示されており、アセトンおよびイソプレンの存在を検出する能力を示している。
【0095】
例30:曲線あてはめを特定し、同じ温度において2つの異なるBドープWO
3センサを用いてアセトンを検出するための方法論を提供すること
それから、例#30においては、デュアルセンサ#2を取り上げ、第1および第2のセンサ両方が5.6Vで約350℃の温度へ加熱されるようにして既知のアセトン比率に対して測定し、アセトンおよびイソプレンの濃度は例25において用いられた手順と同様に変えた。結果は、センサ応答が
図24に示されているようにアセトンおよびイソプレンの既知レベルについて記録された。結果として、それから、
図24に示されている曲線あてはめ関係を用いて方程式系、方程式7および8を形成して、センサの抵抗率に基づいてアセトンおよびイソプレンのレベルを予測した。結果は、センサが、2つの異なるセンサの感度からアセトンおよびイソプレンの濃度を予測するための方法に用いられ得る。感度は、測定されようとするガスについて測定されたセンサの抵抗を空気について測定されたそのセンサの抵抗によって正規化したものとして定められる。それから前記の関係を用いて、それからセンサをガス試料に対して試験して、異なる物質センサを有するデュアルセンサのガスセンサ素子を用いてガス混合物中のアセトンおよびイソプレンの濃度を特定する方法の実施形態をバリデーションした。結果は
図25に示されており、アセトンおよびイソプレンの存在を検出する能力を示している。
【0096】
(実施形態)
本開示の主題の応用の限定しないリストとして、次の実施形態が企図される。
1. ガスセンサ素子であって、
第1の電極と第2の電極と第1の多結晶性n型半導体材料とを含む第1のセンサを含み、
第1の電極および第2の電極は約1milから約10milのギャップによって離間され、
第1の多結晶性n型半導体材料は、任意でV、Sm、CuO、またはその組み合わせをドープまたは担持されるホウ素ドープWO
3を含み、
第1の多結晶性n型半導体材料は第1および第2の電極両方と物理的接触をする。
2. 実施形態1のガスセンサ素子であって、
第3の電極と第4の電極と第2の多結晶性n型半導体材料とを含む第2のセンサをさらに含み、
第3の電極および第4の電極が約1milから約10milのギャップによって離間され、
第2の多結晶性n型半導体材料はホウ素ドープWO
3を含み、
第2の多結晶性n型半導体材料は第3の電極および第4の電極両方と物理的接触をする。
3A. 実施形態2のガスセンサ素子であって、第1の多結晶性n型半導体材料は第2の多結晶性n型半導体材料とは異なる化学組成を有する。
3. 実施形態1のガスセンサ素子であって、第1の多結晶性n型半導体材料はV、Sm、またはその組み合わせをドープまたは担持されている。
4. 実施形態1のガスセンサ素子であって、第1の多結晶性n型半導体材料はさらに貴金属をドープまたは担持されている。
5. 実施形態2のガスセンサ素子であって、第2の多結晶性n型半導体材料はさらに貴金属をドープまたは担持されている。
6. 実施形態4のガスセンサ素子であって、貴金属はパラジウム、金、白金、またはその組み合わせである。
7. 実施形態5のガスセンサ素子であって、貴金属はパラジウム、金、白金、またはその組み合わせである。
7A. 実施形態6または7のガスセンサ素子であって、貴金属は白金である。
8. 実施形態2のガスセンサ素子であって、第2の多結晶性n型半導体材料はさらにV、Sm、CuO、またはその組み合わせをドープまたは担持されている。
9. 実施形態1のガスセンサ素子であって、第1の多結晶性n型半導体材料はさらにTi、Ce、またはその組み合わせをドープされている。
10. 実施形態2のガスセンサ素子であって、第2の多結晶性n型半導体材料はさらにTi、Ce、またはその組み合わせをドープされている。
11. 実施形態1のガスセンサ素子であって、WO
3はイプシロン相WO
3である。
12. 実施形態2のガスセンサ素子であって、WO
3はイプシロン相WO
3である。
13. アセトンの存在について検査するための方法であって、
(a)ガス試料を350℃において第1のセンサによって検査すること、
ここで、第1のセンサは第1の電極と第2の電極と第1の多結晶性n型半導体材料とを含み、
第1の電極および第2の電極は約1milから約10milのギャップによって離間され、
第1の多結晶性n型半導体材料は、Ti、Ce、V、Sm、CuO、またはその組み合わせをドープまたは担持されたホウ素ドープWO
3を含み、
第1の多結晶性n型半導体材料は第1の電極および第2の電極両方と物理的接触をする;
(b)同じガス試料を250℃において第2のセンサによって検査すること、
ここで、第2のセンサは第3の電極と第4の電極と第2の多結晶性n型半導体材料とを含み、
第3の電極および第4の電極は約1milから約10milのギャップによって離間され、
第2の多結晶性n型半導体材料はWO
3を含み、任意でTi、Ce、V、Sm、CuO、貴金属、またはその組み合わせをドープまたは担持され、
第2の多結晶性n型半導体材料は第3の電極および第4の電極両方と物理的接触をする;ならびに
(c)第1および第2のセンサのそれぞれの抵抗率を比較して、アセトンおよび第2のガスの量の特定に至ることを含む。
14. 実施形態13の方法であって、第2の多結晶性n型半導体材料はさらにホウ素をドープされている。
15. 実施形態13の方法であって、第1の多結晶性n型半導体材料はV、Sm、CuO、貴金属、またはその組み合わせをドープまたは担持されている。
16. 実施形態15の方法であって、貴金属はパラジウム、金、白金、またはその組み合わせである。
17. 実施形態13の方法であって、WO
3はイプシロン相WO
3である。
18. 実施形態13の方法であって、検出される1つのガスはアセトンであり、検出される他方のガスはイソプレンである。
19. アセトンの存在について検査するための方法であって、
(a)ガス試料を350℃において第1のセンサによって検査すること、
ここで、第1のセンサは第1の電極と第2の電極と第1の多結晶性n型半導体材料とを含み、
第1の電極および第2の電極は約1milから約10milのギャップによって離間され、
第1の多結晶性n型半導体材料は、Ti、Ce、V、Sm、CuO、またはその組み合わせをドープまたは担持されたホウ素ドープWO
3を含み、
第1の多結晶性n型半導体材料は第1の電極および第2の電極両方と物理的接触をする;
(b)同じガス試料を350℃において第2のセンサによって検査すること、
ここで、第2のセンサは第3の電極と第4の電極と第2の多結晶性n型半導体材料とを含み、
第3の電極および第4の電極は約1milから約10milのギャップによって離間され、
第2の多結晶性n型半導体材料はWO
3を含み、材料特性が第1のセンサおよび第2のセンサの間で異なるようにTi、Ce、V、Sm、CuO、貴金属、またはその組み合わせをドープまたは担持され、
第2の多結晶性n型半導体材料は第3の電極および第4の電極両方と物理的接触をする;ならびに
(c)第1および第2のセンサのそれぞれの抵抗率を比較して、アセトンおよび第2のガスの量の特定に至ることを含む。
20. 実施形態19の方法であって、第2の多結晶性n型半導体材料はさらにホウ素をドープされている。
21. 実施形態19の方法であって、第1の多結晶性n型半導体材料はV、Sm、CuO、貴金属、またはその組み合わせをドープまたは担持されている。
22. 実施形態21の方法であって、貴金属はパラジウム、金、白金、またはその組み合わせである。
23. 実施形態19の方法であって、WO
3はイプシロン相WO
3である。
24. 実施形態19の方法であって、第1のガスおよび第2のガスの1つはアセトンであり、第1のガスおよび第2のガスの他方はイソプレンである。
【0097】
別様に指示されていない限り、本明細書および請求項において用いられる成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す全ての数は、全ての場合に用語「約」によって修飾されるものと理解されるべきである。従って、それと反対に指示されない限り、明細書および添付の請求項において示される数的パラメータは、得られることを求められる所望の特性に応じて変わり得る概算である。少なくとも、請求項の範囲への均等論の適用を限定しようとするものとしてではなく、各数的パラメータは、少なくとも、報告される有効桁の数に照らし、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0098】
本明細書を記載する文脈において(特に、次の請求項の文脈において)用いられる用語「a」、「an」、「the」、および類似の指示物は、本明細書において別様に指示されていないかまたは文脈によって明白に否定されない限り、単数形および複数形両方をカバーすると解釈されるべきである。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書において別様に指示されていないかまたはさもなければ文脈によって明白に否定されない限り、いずれかの好適な順序で実施され得る。本明細書において提供されるいずれかおよび全ての例または例示的な文言(例えば、「などの」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図されており、いずれかの請求項の範囲に限定を課さない。本明細書におけるいかなる文言も、いずれかの請求されていない要素が本発明の実施に必須であるということを指示するものと解釈されるべきではない。
【0099】
本明細書において開示される代替的な要素または実施形態の群は限定として解釈されるべきではない。各群構成要素は、個別に、または群の他の構成要素もしくは本明細書に見いだされる他の要素とのいずれかの組み合わせで参照および請求され得る。便宜および/または特許性の理由で、ある群の1つ以上の構成要素がある群において包含または削除され得るということが予期される。いずれかのかかる包含または削除が生ずるときには、本明細書は改変された群を含有すると見なされ、それゆえに、添付の請求項に用いられる全てのマーカッシュ群の記述要件を満たす。
【0100】
本発明を実施するための本発明者に既知のベストモードを包含するある種の実施形態が本明細書に記載されている。当然のことながら、それらの記載されている実施形態の変形は先行する記載を読み取ることによって当業者には明らかとなろう。本発明者は、当業者がかかる変形を適宜使用することを予期し、本発明者は、本発明が具体的に本明細書に記載されるものとは別様に実施されることを意図する。従って、請求項は、適用法令によって許容される請求項に記載される主題の全ての改変および均等物を包含する。その上、上に記載されている要素のいずれかの組み合わせは、本明細書において別様に示されていないかまたは文脈によって明白に否定されない限り、その全てのあり得る変形において企図される。
【0101】
結びに、本明細書において開示される実施形態は請求項の原理を例示しているということが理解されるべきである。使用され得る他の改変は請求項の範囲内である。それゆえに、限定ではなく例として、代替的な実施形態が本明細書の教示に従って利用され得る。従って、請求項は、まさに示され記載されているままの実施形態には限定されない。
【0102】
本願は、2015年11月25日出願の米国仮特許出願62/260,132からの優先権を主張し、その全体の内容は参照によって本明細書に組み込まれる。