(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電気車(車両)を駆動する電動機を制御する電気車制御装置の一例として、演算により電動機の回転速度を求めて、電動機のトルク制御を行う電気車制御装置が特許文献1に開示されている。このような電気車制御装置によれば、瞬時の速度演算値を用いて、トルク指令TQrに従い電動機を制御することができるので、高応答のトルク制御が可能となる。
【0003】
図14は、上述したような、演算により電動機の回転速度を求めて電動機の制御を行う電気車制御装置20の構成例を示す図である。
【0004】
図14に示す電気車制御装置20は、電力変換器21と、電流検出器22と、二次磁束演算部23と、速度演算部24と、トルク制御部25とを備える。
【0005】
電力変換器21は、電動機1の出力電圧を指示する電圧指令V
*がトルク制御部25から入力され、入力された電圧指令V
*を増幅し、増幅した電圧指令V
*に応じた電圧vを電動機1に印加する。
【0006】
電流検出器22は、電動機1に流れる電流iを検出し、検出結果を二次磁束演算部23、速度演算部24およびトルク制御部25に出力する。
【0007】
二次磁束演算部23は、トルク制御部25により生成された電圧指令V
*と、電流検出器22により検出された電流iとに基づき、以下の式(1),(2)に従い、電動機1の二次磁束φ2を演算し、速度演算部24に出力する。
【0008】
【数1】
【0009】
ここで、R1は電動機1の一次抵抗であり、L1,L2はそれぞれ電動機1の一次自己インダクタンス、二次自己インダクタンスであり、Mは相互インダクタンスである。なお、電圧指令V
*の代わりに、電動機1に印加する電圧vを用いて二次磁束φ2を演算してもよい。
【0010】
速度演算部24は、電流検出器22により検出された電流iと、二次磁束演算部23により演算された二次磁束φ2とに基づき、以下の式(3)〜(5)に従い、電動機1の回転速度(演算速度ωmc)を演算する。
【0011】
【数2】
【0012】
ここで、R2は電動機1の二次抵抗である。また、FAおよびFBは、式(1)で求められる電動機1の二次磁束φ2のa軸成分およびb軸成分である。
【0013】
速度演算部24は、演算した演算速度ωmcをトルク制御部25に出力する。
【0014】
トルク制御部25は、電流検出器22により検出された電流iと、速度演算部24により演算された演算速度ωmcとに基づき、電動機1のトルクおよび磁束が、トルク指令TQrおよび磁束指令FLUXrと一致するような電圧指令V
*を生成し、電力変換器21および二次磁束演算部23に出力する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気車制御装置10の構成例を示す図である。
【0030】
図1に示す電気車制御装置10は、電気車を駆動する電動機1のトルク制御を行うものであり、電力変換器11と、電流検出器12と、二次磁束演算部13と、速度演算部14と、速度センサ15と、重み付け演算部16と、制御速度演算部17と、トルク制御部18とを備える。
【0031】
電力変換器11は、電動機1の出力電圧を指示する電圧指令V
*がトルク制御部18から入力され、入力された電圧指令V
*を増幅し、増幅した電圧指令V
*に応じた電圧vを電動機1に印加する。
【0032】
電流検出器12は、電動機1に流れる電流iを検出し、検出結果を二次磁束演算部13、速度演算部14およびトルク制御部18に出力する。
【0033】
二次磁束演算部13は、電圧指令V
*と、電流検出器22により検出された電流iとに基づき、上述した式(1),(2)に従い、電動機1の二次磁束φ2を演算し、速度演算部14および重み付け演算部16に出力する。
【0034】
速度演算部14は、電流検出器12により検出された電流iと、二次磁束演算部23により演算された二次磁束φ2とに基づき、上述した式(3)〜(5)に従い、電動機1の回転速度(演算速度ωmc)を演算し、制御速度演算部17に出力する。
【0035】
速度センサ15は、電動機1の回転速度を検出し、検出結果を実速度ωpgとして制御速度演算部17に出力する。
【0036】
重み付け演算部16は、二次磁束演算部13により演算された二次磁束φ2に基づき、演算速度ωmcおよび実速度ωpgに対する重み付け量である二次磁束重み付け量weight1を演算し、制御速度演算部17に出力する。
【0037】
図2は、重み付け演算部16の構成例を示す図である。
【0038】
図2に示す重み付け演算部16は、二次磁束大きさ演算部161と、重み付け量演算部162とを備える。
【0039】
二次磁束大きさ演算部161は、電動機1の二次磁束φ2の大きさφ2volを演算し、重み付け量演算部162に出力する。
【0040】
重み付け量演算部162は、二次磁束大きさ演算部161により演算された二次磁束φ2の大きさφ2volに基づき、二次磁束重み付け量weight1を演算する。重み付け量演算部162は、例えば、
図3に示すように、φ2vol<φ2v1の場合には、二次磁束重み付け量weight1を1とし、φ2vol>φ2v2(≧φ2v1)の場合には、二次磁束重み付け量weight1を0とし、φ2v1≦φ2vol≦φ2v2の場合には、二次磁束重み付け量weight1を0〜1の間で、φ2volが大きい程、小さい値とする。
【0041】
重み付け量演算部162は、演算した二次磁束重み付け量weight1を制御速度演算部17に出力する。
【0042】
図1を再び参照すると、制御速度演算部17は、速度演算部14により演算された演算速度ωmcと、速度センサ15により検出された実速度ωpgと、重み付け演算部16により演算された二次磁束重み付け量weight1とに基づき、以下の式(6)に従い、トルク制御に用いられる制御速度ωmを演算する。
【0044】
式(6)に示すように、制御速度演算部17は、実速度ωpgおよび演算速度ωmcに対して、二次磁束重み付け量weight1に基づく重み付けを行って制御速度ωmを演算する。制御速度演算部17は、演算した制御速度ωmをトルク制御部18に出力する。
【0045】
トルク制御部18は、電流検出器12により検出された電流iと、制御速度演算部17により演算された制御速度ωmとに基づき、電動機1のトルクおよび磁束が、トルク指令TQrおよび磁束指令FLUXrと一致するような電圧指令V
*を生成し、電力変換器11および二次磁束演算部13に出力する。
【0046】
図3に示したように、φ2vol<φ2v1の場合には、二次磁束重み付け量weight1は1となり、制御速度ωmは実速度ωpgとなる。また、φ2v2<φ2volの場合には、二次磁束重み付け量weight1は0となり、制御速度ωmは演算速度ωmcとなる。このように、二次磁束重み付け量weight1に基づき、演算速度ωmcと実速度ωpgとに対して重み付けを行うことで、二次磁束φ2の大きさに基づき、制御速度ωmに対する演算速度ωmcおよび実速度ωpgの寄与度を制御することができる。そのため、二次磁束φ2が小さい場合には、大きな演算誤差を含む可能性のある演算速度ωmcを用いることなく(あるいは演算速度ωmcの寄与を小さくし)、実速度ωpgを用いたトルク制御により、電動機1のトルクをトルク指令TQrに従い制御することができる。また、二次磁束φ2が大きい場合には、瞬時の速度演算値(演算速度ωmc)を用いたトルク制御により、高応答のトルク制御が可能となる。
【0047】
このように本実施形態においては、電気車制御装置10は、電動機1に流れる電流iを検出する電流検出器12と、電動機1の回転速度を実速度ωpgとして検出する速度センサ15と、電流検出器12により検出された電流iと、電動機1の電圧指令V
*とに基づき、電動機1の二次磁束φ2を演算する二次磁束演算部13と、電流検出器12により検出された電流iと、二次磁束演算部13により演算された二次磁束φ2とに基づき、電動機1の演算速度ωmcを演算する速度演算部14と、二次磁束演算部13により演算された二次磁束φ2に基づき、二次磁束重み付け量weight1を演算する重み付け演算部16と、速度センサ15により検出された実速度ωpgと、速度演算部14により演算された演算速度ωmcとに対して、重み付け演算部16により演算された二次磁束重み付け量weight1に基づく重み付けを行って制御速度ωmを演算する制御速度演算部17と、電流検出器12により検出された電流iと、制御速度演算部17により演算された制御速度ωmとに基づき、電圧指令V
*を生成するトルク制御部18とを備える。
【0048】
実速度ωpgと演算速度ωmcとに対して、二次磁束重み付け量weight1に基づく重み付けを行って制御速度ωmを演算し、制御速度ωmを用いて電圧指令V
*を生成することで、二次磁束φ2の大きさに基づき、制御速度ωmに対する実速度ωpgおよび演算速度ωmcの寄与度を制御することができる。そのため、二次磁束φ2が小さい場合には、大きな演算誤差を含む可能性のある演算速度ωmcを用いることなく(あるいは演算速度ωmcの寄与を小さくし)、実速度ωpgを用いたトルク制御により、電動機1のトルクをトルク指令TQrに従い制御することができる。また、二次磁束φ2が大きい場合には、瞬時の速度演算値(演算速度ωmc)を用いたトルク制御により、高応答のトルク制御が可能となる。
【0049】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る電気車制御装置10Aの構成例を示す図である。
図4において、
図1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0050】
図4に示す電気車制御装置10Aは、
図1に示す電気車制御装置10と比較して、重み付け演算部16を重み付け演算部16Aに変更した点と、制御速度演算部17を制御速度演算部17Aに変更した点とが異なる。なお、本実施形態においては、二次磁束演算部13により演算された二次磁束φ2は、速度演算部14にのみ出力される。また、トルク制御部18により生成された電圧指令V
*は、電力変換器11および二次磁束演算部13に加えて、重み付け演算部16Aにも出力される。
【0051】
重み付け演算部16Aは、トルク制御部18により生成された電圧指令V
*に基づき、演算速度ωmcおよび実速度ωpgに対する重み付け量である電圧重み付け量weight2を演算し、制御速度演算部17Aに出力する。
【0052】
図5は、重み付け演算部16Aの構成例を示す図である。
【0053】
図5に示す重み付け演算部16Aは、電圧大きさ演算部163と、重み付け量演算部164とを備える。
【0054】
電圧大きさ演算部163は、電圧指令V
*の大きさVvolを演算し、重み付け量演算部164に出力する。
【0055】
重み付け量演算部164は、電圧大きさ演算部163により演算された電圧指令V
*の大きさVvolに基づき、電圧重み付け量weight2を演算する。重み付け量演算部164は、例えば、
図6に示すように、Vvol<Vv1の場合には、電圧重み付け量weight2を1とし、Vvol>Vv2(≧Vv1)の場合には、電圧重み付け量weight2を0とし、Vv1≦Vvol≦Vv2の場合には、電圧重み付け量weight2を0〜1の間で、Vvolが大きい程、小さい値とする。
【0056】
重み付け量演算部164は、演算した電圧重み付け量weight2を制御速度演算部17Aに出力する。
【0057】
図4を再び参照すると、制御速度演算部17Aは、速度演算部14により演算された演算速度ωmcと、速度センサ15により検出された実速度ωpgと、重み付け演算部16Aにより演算された電圧重み付け量weight2とに基づき、以下の式(7)に従い、制御速度ωmを演算する。
【0059】
式(7)に示すように、制御速度演算部17Aは、実速度ωpgおよび演算速度ωmcに対して、電圧重み付け量weight2に基づく重み付けを行って制御速度ωmを演算する。制御速度演算部17Aは、演算した制御速度ωmをトルク制御部18に出力する。
【0060】
図6に示したように、Vvol<Vv1の場合には、電圧重み付け量weight2は1となり、制御速度ωmは実速度ωpgとなる。また、Vv2<Vvolの場合には、電圧重み付け量weight2は0となり、制御速度ωmは演算速度ωmcとなる。このように、電圧重み付け量weight2に基づき、演算速度ωmcと実速度ωpgとに対して重み付けを行うことで、制御速度ωmに対する演算速度ωmcおよび実速度ωpgの寄与度を制御することができる。そのため、電圧指令V
*の大きさVvolが小さい場合(電動機1の電圧が小さい場合)には、大きな演算誤差を含む可能性ある演算速度ωmcを用いることなく(あるいは演算速度ωmcの寄与を小さくし)、実速度ωpgを用いたトルク制御により、電動機1のトルクをトルク指令TQrに従い制御することができる。また、電圧指令V
*の大きさVvolが大きい場合(電動機1の電圧が大きい場合)には、瞬時の速度演算値(演算速度ωmc)を用いたトルク制御により、高応答のトルク制御が可能となる。
【0061】
このように本実施形態においては、電気車制御装置10Aは、電動機1に流れる電流iを検出する電流検出器12と、電動機1の回転速度を実速度ωpgとして検出する速度センサ15と、電流検出器12により検出された電流iと、電動機1の電圧指令V
*とに基づき、電動機1の二次磁束φ2を演算する二次磁束演算部13と、電流検出器12により検出された電流iと、二次磁束演算部13により演算された二次磁束φ2とに基づき、電動機1の演算速度ωmcを演算する速度演算部14と、電圧指令V
*に基づき、電圧重み付け量weight2を演算する重み付け演算部16Aと、速度センサ15により検出された実速度ωpgと、速度演算部14により演算された演算速度ωmcとに対して、重み付け演算部16Aにより演算された電圧重み付け量weight2に基づく重み付けを行って制御速度ωmを演算する制御速度演算部17Aと、電流検出器12により検出された電流iと、制御速度演算部17Aにより演算された制御速度ωmとに基づき、電圧指令V
*を生成するトルク制御部18とを備える。
【0062】
実速度ωpgと演算速度ωmcとに対して、電圧重み付け量weight2に基づく重み付けを行って制御速度ωmを演算し、制御速度ωmを用いて電圧指令V
*を生成することで、電圧指令V
*の大きさに基づき、制御速度ωmに対する実速度ωpgおよび演算速度ωmcの寄与度を制御することができる。そのため、電圧指令V
*が小さい(電動機1の電圧が小さい)場合には、大きな演算誤差を含む可能性のある演算速度ωmcを用いることなく(あるいは演算速度ωmcの寄与を小さくし)、実速度ωpgを用いたトルク制御により、電動機1のトルクをトルク指令TQrに従い制御することができる。また、電圧指令V
*が大きい(電動機1の電圧が大きい)場合には、瞬時の速度演算値(演算速度ωmc)を用いたトルク制御により、高応答のトルク制御が可能となる。
【0063】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態に係る電気車制御装置10Bの構成例を示す図である。
図7において、
図1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0064】
図7に示す電気車制御装置10Bは、
図1に示す電気車制御装置10と比較して、重み付け演算部16を重み付け演算部16Bに変更した点と、制御速度演算部17を制御速度演算部17Bに変更した点とが異なる。なお、本実施形態においては、速度センサ15により検出された実速度ωpgは、重み付け演算部16Bおよび制御速度演算部17Bに入力される。
【0065】
重み付け演算部16Bは、二次磁束演算部13により演算された二次磁束φ2と、速度センサ15により検出された実速度ωpgとに基づき、演算速度ωmcおよび実速度ωpgに対する重み付け量である速度磁束重み付け量weight4を演算し、制御速度演算部17Bに出力する。
【0066】
図8は、重み付け演算部16Bの構成例を示す図である。
図8において、
図2と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0067】
図8に示す重み付け演算部16Bは、
図2に示す重み付け演算部16と比較して、絶対値演算部165と、重み付け量演算部166と、重み付け選択部167とを追加した点が異なる。
【0068】
絶対値演算部165は、実速度ωpgの絶対値である絶対値速度ωpgvを演算し、重み付け量演算部166に出力する。
【0069】
重み付け量演算部166は、絶対値演算部165により演算された絶対値速度ωpgvに基づき、速度重み付け量weight3を演算する。重み付け量演算部166は、例えば、
図9に示すように、ωpgvl<ω1の場合には、速度重み付け量weight3を1とし、ωpgv>ω2(≧ω1)の場合には、速度重み付け量weight3を0とし、ω1≦ωpgv≦ω2の場合には、速度重み付け量weight3を0〜1の間で、ωpgvが大きい程、小さい値とする。
【0070】
重み付け量演算部166は、演算した速度重み付け量weight3を重み付け選択部167に出力する。
【0071】
すなわち、本実施形態に係る重み付け演算部16Bは、二次磁束大きさ演算部161および重み付け量演算部162を有し、二次磁束φ2に基づき二次磁束重み付け量weight1(第1の重み付け量)を演算する演算部201(第1の演算部)と、絶対値演算部165および重み付け量演算部166を有し、実速度ωpgに基づき速度重み付け量weight3(第2の重み付け量)を演算する演算部202(第2の演算部)とを有する。
【0072】
重み付け選択部167は、重み付け量演算部162により演算された二次磁束重み付け量weight1および重み付け量演算部166により演算された速度重み付け量weight3のうち、大きい方を速度磁束重み付け量weight4として選択し、制御速度演算部17Bに出力する。二次磁束重み付け量weight1と速度重み付け量weight3とが同じである場合には、重み付け選択部167は、いずれか一方を速度磁束重み付け量weight4として選択し、制御速度演算部17Bに出力する。
【0073】
図7を再び参照すると、制御速度演算部17Bは、速度演算部14により演算された演算速度ωmcと、速度センサ15により検出された実速度ωpgと、重み付け演算部16Bにより演算された速度磁束重み付け量weight4とに基づき、以下の式(8)に従い、制御速度ωmを演算する。
【0075】
式(8)に示すように、制御速度演算部17Bは、実速度ωpgおよび演算速度ωmcに対して、速度磁束重み付け量weight4に基づく重み付けを行って制御速度ωmを演算する。制御速度演算部17Bは、演算した制御速度ωmをトルク制御部18に出力する。
【0076】
図3に示したように、φ2vol<φ2v1の場合には、二次磁束重み付け量weight1は1となり、φ2v2<φ2volの場合には、二次磁束重み付け量weight1は0となる。また、
図9に示したように、ωpgvl<ω1の場合には、速度重み付け量weight3は1となり、ωpgv>ω2の場合には、速度重み付け量weight3は0となる。
【0077】
重み付け選択部167は、二次磁束重み付け量weight1および速度重み付け量weight3のうち、大きい方を速度磁束重み付け量weight4として選択する。そして、制御速度演算部17Bは、式(8)に従い、制御速度ωmを演算する。
【0078】
したがって、
図10に示すように、φ2vol<φ2v1であれば、絶対値速度ωpgvの大きさに関わりなく、ωm=ωpgとなる。すなわち、二次磁束φ2が小さい場合には、実速度ωpgが制御速度ωmとして用いられる。また、ωpgv<ω1であれば、二次磁束φ2の大きさφ2volに関わりなく、ωm=ωpgとなる。すなわち、電動機1の速度(回転速度)が低速である場合には、実速度ωpgが制御速度ωmとして用いられる。また、φ2v2<φ2volであり、かつ、ω2<ωpgvである場合には、すなわち、電動機1の二次磁束φ2が大きく、かつ、電動機1の速度が高速である場合には、演算速度ωmcが制御速度ωmとして用いられる。
【0079】
このように、速度磁束重み付け量weight4に基づき、演算速度ωmcと実速度ωpgとに対して重み付けを行うことで、二次磁束φ2の大きさおよび電動機1の速度に基づき、制御速度ωmに対する演算速度ωmcおよび実速度ωpgの寄与度を制御することができる。そのため、二次磁束φ2が小さい、あるいは、電動機1の速度が低速である場合には、大きな演算誤差を含む可能性のある演算速度ωmcを用いることなく(あるいは演算速度ωmcの寄与を小さくし)、実速度ωpgを用いたトルク制御により、電動機1のトルクをトルク指令TQrに従い制御することができる。また、二次磁束φ2が大きく、かつ、電動機1の速度が高速である場合には、瞬時の速度演算値(演算速度ωmc)を用いたトルク制御により、高応答のトルク制御が可能となる。
【0080】
このように本実施形態においては、電気車制御装置10Bは、電動機1に流れる電流iを検出する電流検出器12と、電動機1の回転速度を実速度ωpgとして検出する速度センサ15と、電流検出器12により検出された電流iと、電動機1の電圧指令V
*とに基づき、電動機1の二次磁束φ2を演算する二次磁束演算部13と、電流検出器12により検出された電流iと、二次磁束演算部13により演算された二次磁束φ2とに基づき、電動機1の演算速度ωmcを演算する速度演算部14と、二次磁束φ2と、実速度ωpgとに基づき、速度磁束重み付け量weight4を演算する重み付け演算部16Bと、速度センサ15により検出された実速度ωpgと、速度演算部14により演算された演算速度ωmcとに対して、重み付け演算部16Bにより演算された速度磁束重み付け量weight4に基づく重み付けを行って制御速度ωmを演算する制御速度演算部17Bと、電流検出器12により検出された電流iと、制御速度演算部17Bにより演算された制御速度ωmとに基づき、電圧指令V
*を生成するトルク制御部18とを備える。
【0081】
実速度ωpgと演算速度ωmcとに対して、速度磁束重み付け量weight4に基づく重み付けを行って制御速度ωmを演算し、制御速度ωmを用いて電圧指令V
*を生成することで、二次磁束φ2および実速度ωpgの大きさに基づき、制御速度ωmに対する実速度ωpgおよび演算速度ωmcの寄与度を制御することができる。そのため、二次磁束φ2が小さい、あるいは、電動機1の速度が低速である場合には、大きな演算誤差を含む可能性のある演算速度ωmcを用いることなく(あるいは演算速度ωmcの寄与を小さくし)、実速度ωpgを用いたトルク制御により、電動機1のトルクをトルク指令TQrに従い制御することができる。また、二次磁束φ2が大きく、かつ、電動機1の速度が高速である場合には、瞬時の速度演算値(演算速度ωmc)を用いたトルク制御により、高応答のトルク制御が可能となる。
【0082】
(第4の実施形態)
図11は、本発明の第4の実施形態に係る電気車制御装置10Cの構成例を示す図である。
図11において、
図4と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0083】
図11に示す電気車制御装置10Cは、
図4に示す電気車制御装置10Aと比較して、重み付け演算部16Aを重み付け演算部16Cに変更した点と、制御速度演算部17Aを制御速度演算部17Cに変更した点とが異なる。なお、本実施形態においては、速度センサ15により検出された実速度ωpgは、重み付け演算部16Cおよび制御速度演算部17Cに入力される。
【0084】
重み付け演算部16Cは、トルク制御部18により生成された電圧指令V
*と、速度センサ15により検出された実速度ωpgとに基づき、演算速度ωmcおよび実速度ωpgに対する重み付け量である速度電圧重み付け量weight5を演算し、制御速度演算部17Cに出力する。
【0085】
図12は、重み付け演算部16Cの構成例を示す図である。
図12において、
図5,8と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0086】
図12に示す重み付け演算部16Cは、
図5に示す重み付け演算部16Aと比較して、絶対値演算部165と、重み付け量演算部166と、重み付け選択部168とを追加した点が異なる。
【0087】
絶対値演算部165は、第3の実施形態と同様に、実速度ωpgの絶対値である絶対値速度ωpgvを演算し、重み付け量演算部166に出力する。
【0088】
重み付け量演算部166は、第3の実施形態と同様に、絶対値演算部165により演算された絶対値速度ωpgvに基づき、速度重み付け量weight3を演算し、重み付け選択部168に出力する。
【0089】
すなわち、本実施形態に係る重み付け演算部16Cは、電圧大きさ演算部163および重み付け量演算部164を有し、電圧指令V
*に基づき電圧重み付け量weight2(第1の重み付け量)を演算する演算部203(第1の演算部)と、絶対値演算部165および重み付け量演算部166を有し、実速度ωpgに基づき速度重み付け量weight3(第2の重み付け量)を演算する演算部204(第2の演算部)とを有する。
【0090】
重み付け選択部168は、重み付け量演算部164により演算された電圧重み付け量weight2および重み付け量演算部166により演算された速度重み付け量weight3のうち、大きい方を速度電圧重み付け量weight5として選択し、制御速度演算部17Bに出力する。電圧重み付け量weight2と速度重み付け量weight3とが同じである場合には、重み付け選択部167は、いずれか一方を速度電圧重み付け量weight5として選択し、制御速度演算部17Cに出力する。
【0091】
図11を再び参照すると、制御速度演算部17Cは、速度演算部14により演算された演算速度ωmcと、速度センサ15により検出された実速度ωpgと、重み付け演算部16Cにより演算された速度電圧重み付け量weight5とに基づき、以下の式(9)に従い、制御速度ωmを演算する。
【0093】
式(9)に示すように、制御速度演算部17Cは、実速度ωpgおよび演算速度ωmcに対して、速度電圧重み付け量weight5に基づく重み付けを行って制御速度ωmを演算する。制御速度演算部17Cは、演算した制御速度ωmをトルク制御部18に出力する。
【0094】
図6に示したように、Vvol<Vv1の場合には、電圧重み付け量weight2は1となり、Vvol>Vv2の場合には、電圧重み付け量weight2は0となる。また、
図9に示したように、ωpgvl<ω1の場合には、速度重み付け量weight3は1となり、ωpgv>ω2の場合には、速度重み付け量weight3は0となる。
【0095】
重み付け選択部168は、電圧重み付け量weight2および速度重み付け量weight3のうち、大きい方を速度電圧重み付け量weight5として選択する。そして、制御速度演算部17Bは、式(9)に従い、制御速度ωmを演算する。
【0096】
したがって、
図13に示すように、Vvol<Vv1であれば、絶対値速度ωpgvの大きさに関わりなく、ωm=ωpgとなる。すなわち、電圧指令V
*(電動機1の電圧)が小さい場合には、実速度ωpgが制御速度ωmとして用いられる。また、ωpgv<ω1であれば、電圧指令V
*(電動機1の電圧)の大きさに関わりなく、ωm=ωpgとなる。すなわち、電動機1の速度が低速である場合には、実速度ωpgが制御速度ωmとして用いられる。また、Vv2<Vvolであり、かつ、ω2<ωpgvである場合には、すなわち、電圧指令V
*(電動機1の電圧)が大きく、かつ、電動機1の速度が高速である場合には、演算速度ωmcが制御速度ωmとして用いられる。
【0097】
このように、速度電圧重み付け量weight5に基づき、演算速度ωmcと実速度ωpgとに対して重み付けを行うことで、電圧指令V
*(電動機1の電圧)の大きさおよび電動機1の速度に基づき、制御速度ωmに対する演算速度ωmcおよび実速度ωpgの寄与度を制御することができる。そのため、電圧指令V
*(電動機1の電圧)、あるいは、電動機1の速度が低速である場合には、大きな演算誤差を含む可能性のある演算速度ωmcを用いることなく(あるいは演算速度ωmcの寄与を小さくし)、実速度ωpgを用いたトルク制御により、電動機1のトルクをトルク指令TQrに従い制御することができる。また、電圧指令V
*(電動機1の電圧)が大きく、かつ、電動機1の速度が高速である場合には、瞬時の速度演算値(演算速度ωmc)を用いたトルク制御により、高応答のトルク制御が可能となる。
【0098】
このように本実施形態においては、電気車制御装置10Cは、電動機1に流れる電流iを検出する電流検出器12と、電動機1の回転速度を実速度ωpgとして検出する速度センサ15と、電流検出器12により検出された電流iと、電動機1の電圧指令V
*とに基づき、電動機1の二次磁束φ2を演算する二次磁束演算部13と、電流検出器12により検出された電流iと、二次磁束演算部13により演算された二次磁束φ2とに基づき、電動機1の演算速度ωmcを演算する速度演算部14と、電圧指令V
*と、実速度ωpgとに基づき、速度電圧重み付け量weight5を演算する重み付け演算部16Cと、速度センサ15により検出された実速度ωpgと、速度演算部14により演算された演算速度ωmcとに対して、重み付け演算部16Cにより演算された速度電圧重み付け量weight5に基づく重み付けを行って制御速度ωmを演算する制御速度演算部17Cと、電流検出器12により検出された電流iと、制御速度演算部17Cにより演算された制御速度ωmとに基づき、電圧指令V
*を生成するトルク制御部18とを備える。
【0099】
実速度ωpgと演算速度ωmcとに対して、速度電圧重み付け量weight5に基づく重み付けを行って制御速度ωmを演算し、制御速度ωmを用いて電圧指令V
*を生成することで、電圧指令V
*(電動機1の電圧)および実速度ωpgの大きさに基づき、制御速度ωmに対する実速度ωpgおよび演算速度ωmcの寄与度を制御することができる。そのため、電圧指令V
*が小さい、あるいは、電動機1の速度が低速である場合には、大きな演算誤差を含む可能性のある演算速度ωmcを用いることなく(あるいは演算速度ωmcの寄与を小さくし)、実速度ωpgを用いたトルク制御により、電動機1のトルクをトルク指令TQrに従い制御することができる。また、電圧指令V
*が大きく、かつ、電動機1の速度が高速である場合には、瞬時の速度演算値(演算速度ωmc)を用いたトルク制御により、高応答のトルク制御が可能となる。
【0100】
なお、上述した各実施形態では、二次磁束φや電圧重み付け量weight2を電圧指令V
*に基づき演算する例を用いて説明したが、これに限られるものではなく、電動機1に印加する電圧vを用いてもよい。
【0101】
本発明を図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形または修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ブロックなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数のブロックを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。