(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重ね合わせ手段は、前記複数の区分領域のうち前記一の方向に沿った両端部の区分領域に前記対象物が存在するタイミングで撮影した前記撮影領域の画像を重ね合わせない、請求項1に記載の撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0020】
始めに、本発明の一実施の形態におけるX線検査装置の概略的な構成について説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態におけるX線検査装置1の構成を模式的に示す断面図である。なお、x軸、y軸、およびz軸は互いに直交しているものとする。
【0022】
図1を参照して、本実施の形態のX線検査装置1(検査装置の一例)は、撮影領域PAを矢印AR1で示す方向(x軸方向)に移動するワークWK(対象物の一例)に対してX線を照射し、ワークWKからのX線に基づいてワークWKを検査するものである。X線検査装置1は、X線受光装置10(撮影装置の一例)と、搬送部60と、X線照射装置70(電磁波発生源の一例)と、制御部80などを備えている。
【0023】
X線照射装置70は、その内部でX線を発生し、矢印AR2で示すように、撮影領域PAに対してX線を照射する。X線照射装置70は、ターゲット(X線発生源)で反射したX線を利用する反射型のものであってもよいし、ターゲットを透過したX線を利用する透過型のものであってもよい。
【0024】
搬送部60は、テーブル61上に配置されたワークWKを、矢印AR1で示す方向に搬送する。搬送部60は、たとえばベルトコンベアなどよりなっている。
【0025】
X線受光装置10は、撮影領域PAを移動するワークWKを撮影する。X線受光装置10は、矢印AR3で示すように、撮影領域PAを通過したX線(ワークWKを透過したX線)を受光し、受光したX線の強度を示す信号を制御部80に送信する。
【0026】
制御部80は、X線受光装置10、搬送部60、およびX線照射装置70の各々と電気的に接続されており、X線検査装置1全体の制御を行う。制御部80は、たとえばPC(Personal Computer)であり、制御プログラムに基づいて動作するCPU(Central Processing Unit)と、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)と、CPUのワークエリアであるRAM(Random Access Memory)とにより構成されている。制御部80は、X線発生制御部81と、テーブル制御部82と、画像生成部83と、表示部84と、操作部85とを含んでいる。
【0027】
X線発生制御部81は、X線照射装置70に印加する電圧などを制御することにより、X線照射装置70から発生するX線を制御する。
【0028】
テーブル制御部82は、搬送部60によるテーブル61の移動を制御する。
【0029】
画像生成部83は、X線受光装置10から受信した信号に基づいて画像を生成し、表示部84に表示する。また画像生成部83は、X線受光装置10に印加する電圧、タイミング、クロックなどを制御する。
【0031】
操作部85は、各種操作を受け付ける。
【0032】
ワークWKの位置は、時間経過とともに矢印AR1で示す方向に移動するので、ワークWKにおけるX線が透過する位置もまた、時間経過とともに矢印AR1で示す方向に移動する。従ってX線検査装置1は、時間経過とともに、ワークWKにおける矢印AR1に沿った異なる位置を検査することができる。
【0033】
なお、本明細書では、テーブル61の移動方向(矢印AR1で示す方向)をx軸の正の方向としている。X線受光装置10で受光するX線の進行方向(矢印AR3で示す方向)をz軸の正の方向としている。x軸とz軸とは互いに直交している。さらに、x軸およびz軸の各々に対して直角な方向(紙面に対して垂直な方向)をy軸方向としている。
【0034】
図2は、本発明の一実施の形態におけるX線受光装置10の構成を模式的に示す断面図である。
【0035】
図2を参照して、X線受光装置10は、イメージインテンシファイア20(変換手段の一例)と、光学レンズ30(集束手段の一例)と、検出部40とを含んでいる。イメージインテンシファイア20、光学レンズ30、および検出部40の各々は、X線の進行方向に沿ってワークWKから離れる方向(矢印AR3で示すz軸の正の方向)に沿ってこの順序で配置されている。
【0036】
イメージインテンシファイア20は、撮影領域PAを通過したX線を可視光線に変換し、変換後の可視光線の強度を増倍させて出力する。イメージインテンシファイア20は、入力蛍光面21と、光電面22と、集束電極23と、陽極24と、出力蛍光面25と、筐体26と、集束電源27と、加速電源28とを含んでいる。集束電極23、陽極24、集束電源27、および加速電源28は加速集束部を構成し、静電レンズ系として機能する。
【0037】
筐体26は、減圧された中空部を有している。筐体26の内部には、入力蛍光面21、光電面22、集束電極23、陽極24、および出力蛍光面25が配置されている。光電面22は、入力蛍光面21よりもワークWKから離れた側(z軸の正方向の側)において、入力蛍光面21と近接して配置されている。出力蛍光面25は、光電面22よりもワークWKから離れた側(z軸の正方向の側)において、光電面22と大きな間隔を空けて配置されている。入力蛍光面21、光電面22、および出力蛍光面25の各々は、x軸方向に延在している。集束電極23は、たとえば円筒形状を有しており、z軸方向に延在している。集束電極23は、光電面22と出力蛍光面25との間に配置されている。陽極24は、出力蛍光面25の近傍に配置されている。陽極24は、たとえば円筒形状を有しており、z軸方向に延在している。出力蛍光面25は、陽極24の内部に配置されている。集束電源27は、光電面22と集束電極23との間に電圧を印加する。加速電源28は、光電面22と陽極24との間に電圧を印加する。
【0038】
光学レンズ30は、凸レンズであり、イメージインテンシファイア20から出力された可視光線を集束させる。
【0039】
検出部40は、制御部80の制御の下で、光学レンズ30で集束された可視光線を受光することにより、撮影領域PAを撮影する。
【0040】
ワークWKを透過したX線は、矢印AR3で示すように、イメージインテンシファイア20に入射する。イメージインテンシファイア20に入射したX線は、入力蛍光面21によって可視光線(蛍光)に変換される。入力蛍光面21により変換された可視光線は、光電面22によって光電子に変換される。光電面22によって変換された光電子は、集束電極23、陽極24、集束電源27、および加速電源28によって加速および集束される。加速および集束された光電子は、出力蛍光面25に衝突し、出力蛍光面25によって可視光線(蛍光)としてイメージインテンシファイア20の外部に放出(出力)される。イメージインテンシファイア20から出力される可視光線は、イメージインテンシファイア20に入射するX線の強度に対応した強度を有している。イメージインテンシファイア20から出力された可視光線は、光学レンズ30によって集束され、検出部40に入射する。
【0041】
図3は、本発明の一実施の形態における検出部40の構成を模式的に示す平面図である。
【0042】
図3を参照して、検出部40は、複数の受光素子41(受信素子の一例)と、基板42とを含んでいる。複数の受光素子41および基板42は、二次元カメラ(エリアカメラ)を構成しており、可視光線の二次元の強度分布を検出可能である。複数の受光素子41の各々は、基板42上に配置されている。複数の受光素子41の各々は、x軸方向にn2個の列を構成しており、各列はy軸方向に配列したn1個の受光素子41によって構成されている。複数の受光素子41は、光学レンズ30で集束された可視光線(つまり、撮影領域PAからのX線)を受信する。
【0044】
次に、本実施の形態における検出部40によるワークWKの撮影方法について説明する。
【0045】
図4および
図5は、本発明の一実施の形態において検出部40が撮影する画像を模式的に示す図である。なお
図4および
図5においては、「M」というアルファベットの平面形状を有するワークWKが検出の対象である場合について説明する。
図4および
図5における左側の図は、撮影領域PAを通過するワークWKの位置を示している。右側の図の点線は、撮影した画像を示しており、右側の図の実線は、撮影した画像から抽出される区分画像を示している。ここでは、ワークWKの撮影の積算回数Mが6回である場合について示している。
【0046】
以降、ワークWKにおける搬送方向の上流側(
図4中下部)の部分をワーク下部e1と記し、ワークWKにおける搬送方向の下流側(
図4中上部)の部分をワーク上部e3と記し、ワーク下部e1とワーク上部e3との間の部分をワーク中央部e2と記すことがある。
【0047】
図4(a)を参照して、撮影領域PAは、矢印AR1で示す搬送方向に沿って複数(ここでは6つ)の区分領域s1〜s6に仮想的に区分されている。区分領域s1〜s6の各々は、矢印AR1で示す方向に沿ってこの順序で配置されている。
【0048】
時刻T=t0において、ワークWKの搬送が開始される。時刻T=t1となると、ワーク下部e1は撮影領域PAに進入し、区分領域s1に到達する。検出部40は、制御部80の制御の下で、ワーク下部e1が区分領域s1に存在するタイミングで、複数の受光素子41を用いて受信した光に基づいて、撮影領域PA全体の画像IM1を撮影する。検出部40は、撮影した画像IM1を画像生成部83に送信する。
【0049】
画像生成部83は、画像IM1を受信すると、区分領域s1〜s6の各々に対応する区分画像IM11〜IM16の各々に画像IM1を分割する。そして画像生成部83は、区分領域s1に対応する区分画像IM11を画像IM1から抽出する。
【0050】
図4(b)を参照して、時刻T=t1から時間Δt(s)後の時刻T=t2となると、ワーク下部e1は区分領域s2に到達する。ワーク中央部e2は撮影領域PAに進入し、区分領域s1に到達する。検出部40は、制御部80の制御の下で、ワーク下部e1が区分領域s2に存在するタイミングで、複数の受光素子41を用いて受信した光に基づいて、撮影領域PA全体の画像IM2を撮影する。検出部40は、撮影した画像IM2を画像生成部83に送信する。
【0051】
画像生成部83は、画像IM2を受信すると、区分領域s1〜s6の各々に対応する区分画像IM21〜IM26の各々に画像IM2を分割する。そして画像生成部83は、区分領域s1に対応する区分画像IM21と、区分領域s2に対応する区分画像IM22とを画像IM2から抽出する。
【0052】
図4(c)を参照して、時刻T=t2から時間Δt(s)後の時刻T=t3となると、ワーク下部e1は区分領域s3に到達し、ワーク中央部e2は区分領域s2に到達する。ワーク上部e3は撮影領域PAに進入し、区分領域s1に到達する。検出部40は、制御部80の制御の下で、ワーク下部e1が区分領域s3に存在するタイミングで、複数の受光素子41を用いて受信した光に基づいて、撮影領域PA全体の画像IM3を撮影する。検出部40は、撮影した画像IM3を画像生成部83に送信する。
【0053】
画像生成部83は、画像IM3を受信すると、区分領域s1〜s6の各々に対応する区分画像IM31〜IM36の各々に画像IM3を分割する。そして画像生成部83は、区分領域s1に対応する区分画像IM31と、区分領域s2に対応する区分画像IM32と、区分領域s3に対応する区分画像IM33とを画像IM3から抽出する。
【0054】
図4(d)を参照して、時刻T=t3から時間Δt(s)後の時刻T=t4となると、ワーク下部e1は区分領域s4に到達し、ワーク中央部e2は区分領域s3に到達し、ワーク上部e3は区分領域s2に到達する。検出部40は、制御部80の制御の下で、ワーク下部e1が区分領域s4に存在するタイミングで、複数の受光素子41を用いて受信した光に基づいて、撮影領域PA全体の画像IM4を撮影する。検出部40は、撮影した画像IM4を画像生成部83に送信する。
【0055】
画像生成部83は、画像IM4を受信すると、区分領域s1〜s6の各々に対応する区分画像IM41〜IM46の各々に画像IM4を分割する。そして画像生成部83は、区分領域s2に対応する区分画像IM42と、区分領域s3に対応する区分画像IM43と、区分領域s4に対応する区分画像IM44とを画像IM4から抽出する。
【0056】
図5(a)を参照して、時刻T=t4から時間Δt(s)後の時刻T=t5となると、ワーク下部e1は区分領域s5に到達し、ワーク中央部e2は区分領域s4に到達し、ワーク上部e3は区分領域s3に到達する。検出部40は、制御部80の制御の下で、ワーク下部e1が区分領域s5に存在するタイミングで、複数の受光素子41を用いて受信した光に基づいて、撮影領域PA全体の画像IM5を撮影する。検出部40は、撮影した画像IM5を画像生成部83に送信する。
【0057】
画像生成部83は、画像IM5を受信すると、区分領域s1〜s6の各々に対応する区分画像IM51〜IM56の各々に画像IM5を分割する。そして画像生成部83は、区分領域s3に対応する区分画像IM53と、区分領域s4に対応する区分画像IM54と、区分領域s5に対応する区分画像IM55とを画像IM5から抽出する。
【0058】
図5(b)を参照して、時刻T=t5から時間Δt(s)後の時刻T=t6となると、ワーク下部e1は区分領域s6に到達し、ワーク中央部e2は区分領域s5に到達し、ワーク上部e3は区分領域s4に到達する。検出部40は、制御部80の制御の下で、ワーク下部e1が区分領域s6に存在するタイミングで、複数の受光素子41を用いて受信した光に基づいて、撮影領域PA全体の画像IM6を撮影する。検出部40は、撮影した画像IM6を画像生成部83に送信する。
【0059】
画像生成部83は、画像IM6を受信すると、区分領域s1〜s6の各々に対応する区分画像IM61〜IM66の各々に画像IM6を分割する。そして画像生成部83は、区分領域s4に対応する区分画像IM64と、区分領域s5に対応する区分画像IM65と、区分領域s6に対応する区分画像IM66とを画像IM6から抽出する。
【0060】
図5(c)を参照して、時刻T=t6から時間Δt(s)後の時刻T=t7となると、ワーク下部e1は撮影領域PAを外れ、ワーク中央部e2は区分領域s6に到達し、ワーク上部e3は区分領域s5に到達する。検出部40は、制御部80の制御の下で、ワーク中央部e2が区分領域s6に存在するタイミングで、複数の受光素子41を用いて受信した光に基づいて、撮影領域PA全体の画像IM7を撮影する。検出部40は、撮影した画像IM7を画像生成部83に送信する。
【0061】
画像生成部83は、画像IM7を受信すると、区分領域s1〜s6の各々に対応する区分画像IM71〜IM76の各々に画像IM7を分割する。そして画像生成部83は、区分領域s5に対応する区分画像IM75と、区分領域s6に対応する区分画像IM76とを画像IM7から抽出する。
【0062】
図5(d)を参照して、時刻T=t7から時間Δt(s)後の時刻T=t8となると、ワーク中央部e2は撮影領域PAを外れ、ワーク上部e3は区分領域s6に到達する。検出部40は、制御部80の制御の下で、ワーク上部e3が区分領域s6に存在するタイミングで、複数の受光素子41を用いて受信した光に基づいて、撮影領域PA全体の画像IM8を撮影する。検出部40は、撮影した画像IM8を画像生成部83に送信する。
【0063】
画像生成部83は、画像IM8を受信すると、区分領域s1〜s6の各々に対応する区分画像IM81〜IM86の各々に画像IM8を分割する。そして画像生成部83は、区分領域s6に対応する区分画像IM86を画像IM8から抽出する。
【0064】
図6は、本発明の一実施の形態において画像生成部83が生成するワークWKの出力画像OIを模式的に示す図である。
【0065】
図6を参照して、画像生成部83は、抽出した区分画像を、その次のタイミングで撮影した画像から抽出した区分画像のうち1つ下流側の区分画像と順次重ね合わせ、合計6枚分の区分画像を重ね合わせる。そして画像生成部83は、ワーク下部e1、ワーク中央部e2、およびワーク上部e3の各々の重ね合わせた画像を、ワークWKの搬送方向に結合する。これにより、出力画像が生成される。
【0066】
具体的には、画像生成部83は、区分画像IM11(T=t1で撮影)と、区分画像IM22(T=t2で撮影)と、区分画像IM33(T=t3で撮影)と、区分画像IM44(T=t4で撮影)と、区分画像IM55(T=t5で撮影)と、区分画像IM66(T=t6で撮影)とを重ね合わせることにより、ワーク下部e1の出力画像OIを生成する。
【0067】
同様に、画像生成部83は、区分画像IM21(T=t2で撮影)と、区分画像IM32(T=t3で撮影)と、区分画像IM43(T=t4で撮影)と、区分画像IM54(T=t5で撮影)と、区分画像IM65(T=t6で撮影)と、区分画像IM76(T=t7で撮影)とを重ね合わせることにより、ワーク中央部e2の出力画像OIを生成する。
【0068】
同様に、画像生成部83は、区分画像IM31(T=t3で撮影)と、区分画像IM42(T=t4で撮影)と、区分画像IM53(T=t5で撮影)と、区分画像IM64(T=t6で撮影)と、区分画像IM75(T=t7で撮影)と、区分画像IM86(T=t8で撮影)とを重ね合わせることにより、ワーク上部e3の出力画像OIを生成する。画像生成部83は、生成した出力画像OIを表示部84に表示(出力)する。
【0069】
図7は、本発明の一実施の形態における検出部40の撮影条件を模式的に示す図である。
図7(a)は、撮影領域PAを示す図であり、
図7(b)は検出部40を示す図である。
【0070】
図7を参照して、受光素子41上を通過するワークWKの画像の速度V(mm/s)、撮影領域PAのy軸方向の長さL1(mm)、撮影領域PAのx軸方向の長さL2(mm)、y軸方向に配列した受光素子41の個数n1(個)、x軸方向に配列した受光素子41の個数n2(個)、および検出部40の単位時間当たりの撮影回数(フレームレート)C(回/s)などは、変数であり、自由に設定することができる。またこれらの変数を適切に設定することにより、積算回数Mを以下のように任意の値に設定することができる。なお、ワークWKの画像の速度V(mm/s)は、テーブル61によるワークWKの搬送速度(mm/s)と、光学レンズ30の拡大率との積として規定される値である。
【0071】
1フレーム当たりのワークWKの移動量は、「V/C(=V×Δt)(mm)」と表されるので、ワークWKの撮影の積算回数Mは、「M=L2/(V/C)=(L2×C)/V(回)」と表される。
【0072】
上記の式から、出力画像OIの積算回数MとワークWKの画像の速度Vとはトレードオフの関係になることが分かる。すなわち、ワークWKの画像の速度Vを低下させれば、積算回数Mを増加することで出力画像OIの光量を増加し、高品質な出力画像を得ることができる。一方、積算回数Mを低下させれば、ワークWKの画像の速度Vを増加することで撮影速度を速くすることができる。また、フレームレートCを増加させると、積算回数Mを増加することで、高品質な出力画像OIを得ることができる。
【0073】
また、ワークWKの搬送方向1mm当たりに存在する受光素子の数は、「n2/L2(個)」と表されるので、1つの区分画像を撮影する受光素子における搬送方向に配列した受光素子の数N(個)は、「N=(V/C)×(n2/L2)=(V×n2)/(C×L2)(個)」と表される。
【0074】
図8は、本発明の一実施の形態における制御部80の動作を示すフローチャートである。なお
図8では、1つの区分領域についての出力画像を生成する場合の動作を示している。
【0075】
図8を参照して、制御部80は、ワークWKの搬送を開始すると、撮影回数kを1に設定し(S101)、前回の撮影から時間Δtが経過したか否かを判別する(S103)。時間Δtが経過したと判別するまで、制御部80は、ステップS103の処理を繰り返す。
【0076】
ステップS103において、前回の撮影から時間Δtが経過したと判別した場合(S103でYES)、制御部80は、撮影領域の画像を撮影し(S105)、撮影した画像を区分画像に分割する(S107)。続いて制御部80は、分割した区分画像の中から搬送方向の上流側からk番目の区分領域に対応する区分画像を抽出し(S109)、重ね合わせ画像があるか否かを判別する(S111)。
【0077】
ステップS111において、重ね合わせ画像が無いと判別した場合(S111でNO)、制御部80は、抽出した区分画像を重ね合わせ画像に設定し(S113)、ステップS117の処理へ進む。
【0078】
ステップS111において、重ね合わせ画像があると判別した場合(S111でYES)、制御部80は、抽出した区分画像を重ね合わせ画像に対して重ね合わせ(S115)、ステップS117の処理へ進む。
【0079】
ステップS117において、制御部80は、撮影回数kが積算回数Mに到達したか否かを判別する(S117)。
【0080】
ステップS117において、撮影回数kが積算回数Mに到達しないと判別した場合(S117でNO)、制御部80は、撮影回数kをインクリメントし(S119)、ステップS103の処理へ進む。
【0081】
ステップS117において、撮影回数kが積算回数Mに到達したと判別した場合(S117でYES)、制御部80は、重ね合わせ画像を出力画像として出力し(S121)、処理を終了する。
【0082】
次に、本実施の形態の効果について説明する。
【0083】
図9は、TDIカメラ400の原理を模式的に示す図である。
【0084】
図9を参照して、TDIカメラ400は、矢印AR11で示すワークの搬送方向に沿って配列したn個の受光素子の列LN1〜LNnを備えている。搬送方向の最上流側に配置された列LN1は、対応する検知領域をワークが通過した場合に、ワークからの光を受光し、列LN1には光量に応じた電子が発生する。列LN1に存在する電子は、隣接する下流側の列LN2に移動される。
【0085】
列LN2は、対応する検知領域をワークが通過した場合に、ワークからの光を受光し、列LN2には光量に応じた電子が発生する。列LN2に存在する電子は、隣接する下流側の列LN3に移動される。
【0086】
このようにして、列LN1〜LNnで発生した電子は、搬送方向の下流側に向かってLN1〜LNnを順次移動し、最終的に列LNnに蓄積する。列LNnに蓄積した電子は、図示しないアンプにて増幅され、検出器で検出される。
【0087】
TDIカメラ400では、受光素子の列LN1〜LNnの各々で発生する電子は、受光素子の列LN1〜LNnの各々で受光した光に含まれるノイズを反映したものとなるため、列LNn内に存在する電子が示す画像は、受光素子の各列で発生した、TDIカメラ400がアンプから受ける熱などに起因するノイズが積算されたものとなる。その結果、ノイズが多く、撮影した画像の画質が悪いという問題がある。
【0088】
本実施の形態において、複数の受光素子41は、TDIカメラの受光素子と同様に、受光光に応じた電子を発生するものである。また各区分画像には、アンプやX線の揺らぎ、シンチレータの変換効率、または受光した光に含まれる揺らぎなどに起因する様々なノイズが含まれている。しかし、本実施の形態では、1つの区分画像の撮影に用いられる受光素子41で発生した電子は、他の区分画像の撮影に用いられる受光素子に移動しない。このため、各区分画像のノイズは積算されない。本実施の形態では、複数の区分画像を重ね合わせることで、それぞれの区分画像で発生したノイズが相殺されるので、出力画像のS/N比を向上することができる。その結果、撮影した画像の画質を向上することができる。また、複数の区分画像を重ね合わせることで、出力画像の光量を増加し、撮影した画像を明るくすることができる。
【0089】
加えて、本実施の形態における区分画像を重ね合わせる使用方法と、区分画像を重ね合わせず撮影した画像をそのまま使用する通常の使用方法との間でX線受光装置10の使用方法を切り替えることで、区分画像を重ね合わせて生成した出力画像と、通常の方法で撮影した画像(静止画)との両方を用いてワークWKの状態を検査することが可能である。
【0090】
さらに、従来のラインカメラと比較して、高速で移動するワークを撮影した場合でも、残像の発生を抑止しつつ光量を増加することができ、撮影した画像の画質を向上することができる。
【0092】
図10は、本発明の一実施の形態の第1の変形例において画像生成部83が生成するワークWKの出力画像OIを模式的に示す図である。
【0093】
図4、
図5、および
図10を参照して、区分領域s1およびs6は、撮影領域PAにおいて、矢印AR1で示す搬送方向に沿った両端部に位置している。本変形例において、画像生成部83は、複数の区分領域s1〜s6のうち区分領域s1およびs6に存在するタイミングで撮影した撮影領域PAの画像を重ね合わせない。
【0094】
具体的には、画像生成部83は、ワーク下部e1の出力画像を生成する際に、画像IM1の区分画像IM11(T=t1で撮影)および画像IM6(T=t6で撮影)の区分画像IM66を抽出しない。画像生成部83は、区分画像IM22(T=t2で撮影)と、区分画像IM33(T=t3で撮影)と、区分画像IM44(T=t4で撮影)と、区分画像IM55(T=t5で撮影)とを重ね合わせることにより、ワーク下部e1の出力画像OIを生成する。
【0095】
同様に、画像生成部83は、ワーク中央部e2の出力画像を生成する際に、画像IM2の区分画像IM21(T=t2で撮影)および画像IM7の区分画像IM76(T=t7で撮影)を抽出しない。画像生成部83は、区分画像IM32(T=t3で撮影)と、区分画像IM43(T=t4で撮影)と、区分画像IM54(T=t5で撮影)と、区分画像IM65(T=t6で撮影)とを重ね合わせることにより、ワーク中央部e2の出力画像OIを生成する。
【0096】
同様に、画像生成部83は、ワーク上部e3の出力画像を生成する際に、画像IM3の区分画像IM31(T=t3で撮影)および画像IM8(T=t8で撮影)の区分画像IM86を抽出しない。画像生成部83は、区分画像IM42(T=t4で撮影)と、区分画像IM53(T=t5で撮影)と、区分画像IM64(T=t6で撮影)と、区分画像IM75(T=t7で撮影)とを重ね合わせることにより、ワーク上部e3の出力画像OIを生成する。
【0097】
図11は、本発明の一実施の形態の第1の変形例における制御部80の動作を示すフローチャートである。なお
図11では、1つの区分領域についての出力画像を生成する場合の動作を示している。
【0098】
図11を参照して、本変形例において、制御部80は、
図8に示すフローチャートのステップS101〜S107の処理を行う。ステップS107において、撮影した画像を区分画像に分割した後、制御部80は、撮影回数kが1またはMであるか否かを判別する(S201)。
【0099】
ステップS201において、撮影回数kが1またはMであると判別した場合(S201でYES)、制御部80は、対象物がワークWKの搬送方向に沿った両端部の区分領域に位置するタイミングであると判断する。制御部80は、k番目の区分画像を抽出せず(S203)、ステップS117の処理へ進む。
【0100】
ステップS201において、撮影回数kが1およびMではないと判別した場合(S201でNO)、制御部80は、対象物がワークWKの搬送方向に沿った両端部の区分領域に位置するタイミングではないと判断する。制御部80は、k番目の区分画像を抽出し(S109)、ステップS111の処理へ進む。
【0101】
図2に示すように、撮影領域PAからの光は、通常、光学レンズ30などの集光手段によって集束されて検出部40に入射する。これにより、より多くの光が検出部40で受光できるようにされている。一方、検出部40で受光する光は、光学レンズ30などによって集束されるため、検出部40で受光する光が形成する像には歪みが生じる。この歪みは特に撮影領域PAの端部において顕著になる。
【0102】
本変形例によれば、撮影領域PAにおけるワークWKの搬送方向に沿った両端部の区分領域s1およびs6に存在するタイミングで撮影した撮影領域PAの画像を重ね合わせないので、光学レンズ30などによる像の歪みが出力画像OIに及ぼす影響を低くすることができる。その結果、撮影した画像の画質を向上することができる。
【0103】
図12は、本発明の一実施の形態の第2の変形例における検出部40の構成を模式的に示す平面図である。
【0104】
図12を参照して、本変形例では、検出部40は複数の区分画像を撮影して画像生成部83に送信し、画像生成部83は検出部40から受信した複数の区分画像を重ね合わせる。
【0105】
本変形例における検出部40は、走査回路43と、複数のアンプ44a〜44lとをさらに含んでいる。複数の受光素子41は、x軸方向に配列したn2列(ここでは12列)の受光素子列40a〜40lを含んでいる。複数の受光素子列40a〜40lの各々は、y軸方向に配列したn1個の受光素子41によって構成されている。複数の受光素子列40a〜40lの各々は、x軸方向の走査回路43と、複数のアンプ44a〜44lの各々とを介して画像生成部83に接続されている。走査回路43は、たとえばFPGA(Field−Programmable Gate Array)よりなっている。
【0106】
複数の受光素子列40a〜40lは、撮影領域PAの画像を撮影し、撮影した画像のデータを走査回路43に送信する。走査回路43は、複数の受光素子列40a〜40lから受信した画像のデータに基づいて、
図4に示す区分領域s1〜s6の各々に対応する区分画像を作成する。
【0107】
具体的には、走査回路43は、受光素子列40aおよび40bから受信した画像のデータに基づいて区分領域s1に対応する区分画像を作成し、受光素子列40cおよび40dから受信した画像のデータに基づいて区分領域s2に対応する区分画像を作成し、受光素子列40eおよび40fから受信した画像のデータに基づいて区分領域s3に対応する区分画像を作成し、受光素子列40gおよび40hから受信した画像のデータに基づいて区分領域s4に対応する区分画像を作成し、受光素子列40iおよび40jから受信した画像のデータに基づいて区分領域s5に対応する区分画像を作成し、受光素子列40kおよび40lから受信した画像のデータに基づいて区分領域s6に対応する区分画像を作成する。
【0108】
走査回路43は、作成した区分画像のデータを画像生成部83に送信する。区分画像のデータの各々はアンプ44a〜44lのうちいずれかによって増幅される。
【0109】
画像生成部83は、たとえばワーク下部e1の出力画像を生成する場合には、時刻T=t1で受光素子列40aおよび40bが撮影した区分画像IM11と、時刻T=t2で受光素子列40cおよび40dが撮影した区分画像IM22と、時刻T=t3で受光素子列40eおよび40fが撮影した区分画像IM33と、時刻T=t4で受光素子列40gおよび40hが撮影した区分画像IM44と、時刻T=t5で受光素子列40iおよび40jが撮影した区分画像IM55と、時刻T=t6で受光素子列40kおよび40lが撮影した区分画像IM66とを重ね合わせることにより、ワーク下部e1の出力画像OIを生成する。ワーク中央部e2およびワーク上部e3の出力画像OIも、同様の方法で出力される。
【0110】
撮影領域PAにおける区分領域の数(言い換えれば、1つの撮影領域PAの画像に基づいて走査回路43が作成する区分画像の数)は、画像生成部83が走査回路43に対して行う設定により変更することが可能である。
【0111】
本変形例によれば、検出器40のクロック周波数を下げることができる。
【0112】
すなわち、検出器40全体におけるy軸方向に配列した受光素子41の個数をn1(個)とし、x軸方向に配列した受光素子41の個数(言い換えれば、受光素子列の数)をn2(個)とし、検出部40の単位時間当たりの撮影回数(フレームレート)をC(回/s)とした場合、検出器40全体の(検出部40が複数の受光素子列に区分されていない場合の)ピクセルクロック(1秒間に描画されるピクセル数)は、「n1×n2×C(Hz)」と表される。
【0113】
一方、本変形例のように撮影領域PAがk(個)の区分領域に区分されている場合のピクセルクロックは、「n1×n2×C/k(Hz)」と表される。したがって、区分領域の数が増加するに従ってクロック周波数は低下する。なお、一例としてn1は1000(個)であり、n2は500(個)であり、Cは280(回/s)である。
【0114】
上述のように、検出器40のクロック周波数を下げることができるので、高周波ノイズの発生や受光素子41の発熱を抑えることができる。その結果、出力画像に含まれるノイズを低減することができ、検出部40の高寿命化を図ることができる。
【0116】
本発明の撮影装置は、撮影領域からの電磁波を受信する複数の受信素子を備え、撮影領域を一の方向に移動する対象物を撮影するものであればよい。撮影領域から受信する電磁波は、X線のみならず、可視光線、赤外線、または紫外線などであってもよい。特に撮影装置が撮影領域から受信する電磁波が可視光などである場合、撮影装置は、対象物を透過した光ではなく対象物で反射した光を受光するものであってもよい。
【0117】
本発明において、撮影領域から受信する電磁波がX線、赤外線、および紫外線のうち少なくともいずれかを含んでいる場合に、撮影装置は、電磁波を可視光に変換する変換手段(上述の実施の形態ではイメージインテンシファイア)を備えていることが好ましい。また、撮影装置は、イメージインテンシファイアを備える代わりに、放射線の入射により蛍光を発するシンチレータ、波長を選択的に透過させる光学フィルタ、または入射光の波長を別の波長に変換して出射光とする波長変換器などを備えていてもよい。さらに、これらをレンズに固定することにより、電磁波を集束する機能と電磁波の波長を調整する機能との両方を有する構造を、撮影装置は備えていてもよい。
【0118】
上述の実施の形態では、ワークWKの画像の速度Vと出力画像OIの積算回数Mとが所定の関係を満たす場合について説明したが、本発明の撮影装置は、ワークWKが任意の速度Vで撮影領域PAを通過する際に任意の積算回数Mだけ撮影を行い、撮影した複数の画像の各々から特徴抽出などの技術を用いてワークWKの区分画像を抽出し、抽出した複数の区分画像を重ね合わせてもよい。
【0119】
上述の実施の形態および変形例は適宜組み合わせることが可能である。
【0120】
上述の実施の形態における処理は、ソフトウェアにより行っても、ハードウェア回路を用いて行ってもよい。また、上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザーに提供することにしてもよい。プログラムは、CPUなどのコンピューターにより実行される。また、プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。
【0121】
上述の実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。