特許第6809907号(P6809907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6809907-ドレンポットおよびドレン回収システム 図000002
  • 特許6809907-ドレンポットおよびドレン回収システム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809907
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ドレンポットおよびドレン回収システム
(51)【国際特許分類】
   F22D 11/06 20060101AFI20201221BHJP
   F16T 1/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   F22D11/06 A
   F16T1/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-1187(P2017-1187)
(22)【出願日】2017年1月6日
(65)【公開番号】特開2018-112322(P2018-112322A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】北田 大空
【審査官】 吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−180799(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/052726(WO,A1)
【文献】 特開2007−315443(JP,A)
【文献】 実開昭61−135100(JP,U)
【文献】 実開昭57−013903(JP,U)
【文献】 特開2007−247971(JP,A)
【文献】 米国特許第04987918(US,A)
【文献】 国際公開第2016/056481(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 11/06
F16T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ上下方向に延び、互いに下端で連通する上流側通路および下流側通路、前記上流側通路に形成された流入口、前記下流側通路において前記流入口よりも高い位置に形成された流出口、前記下流側通路の上端に形成された排気口を有するドレンの貯留部と、
前記流入口に接続された流入管と、
前記排気口と前記流入管とを連通させる均圧管とを備えている
ことを特徴とするドレンポット。
【請求項2】
請求項1に記載のドレンポットにおいて、
前記均圧管に設けられ、前記均圧管における前記排気口側から前記流入管側へ向かう流体の流れのみを許容する逆止弁を備えている
ことを特徴とするドレンポット。
【請求項3】
ドレン流通部と、
前記ドレン流通部における頂部よりも低い位置に接続されるメイン配管、該メイン配管に接続され、前記ドレン流通部のドレンが前記メイン配管を介して流入し、該流入したドレンを外部に排出するメイン排出機器を有するメイン系統と、
前記ドレン流通部に接続される請求項1または2に記載のドレンポット、該ドレンポットの流出口に接続されるバックアップ配管、該バックアップ配管に接続され、前記ドレン流通部のドレンが前記ドレンポットおよびバックアップ配管を介して流入し、該流入したドレンを外部に排出するバックアップ排出機器を有するバックアップ系統とを備え、
前記ドレンポットは、前記流入管が前記ドレン流通部の頂部に接続され、前記流出口の位置が前記ドレン流通部の頂部よりも高くなるように設置されている
ことを特徴とするドレン回収システム。
【請求項4】
請求項3に記載のドレン回収システムにおいて、
前記メイン排出機器およびバックアップ排出機器は、それぞれ、前記メイン配管およびバックアップ配管が接続されるドレンの流入口と、ドレンの圧送口と、作動気体の導入口とを有すると共に内部にドレンの貯留空間が形成され、前記導入口から前記貯留空間に作動気体を導入し該作動気体の圧力によって前記貯留空間のドレンを前記圧送口から排出する
ことを特徴とするドレン回収システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載のドレン回収システムにおいて、
前記ドレン流通部は、蒸気を凝縮させる蒸気使用機器で発生したドレンが流入し貯留されるドレンヘッダである
ことを特徴とするドレン回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ドレンポットおよびドレン回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドレンヘッダ等のドレン流通部のドレンを機器で回収するドレン回収システムが知られている。このようなドレン回収システムでは、機器が故障等で作動不能になることを考慮し、メインの機器とバックアップ用の機器の2台を設けることがある。その場合、例えば特許文献1に開示されているように、2台の機器(圧送ポンプ)はそれぞれドレン流通部(液体タンク)と流入管によって接続される。ドレン貯留部において、バックアップ機器用の流入管はメイン機器用の流入管よりも開口位置を高くする。こうすることで、メイン機器が故障した場合、ドレン流通部のドレンはメイン機器には回収されないため水位が上昇するが、ドレンの水位がバックアップ機器用の流入管の開口位置まで上昇するとドレンはバックアップ機器に回収される。こうして、ドレン流通部においてドレンを排出することができ新たなドレンを流通させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−130147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ドレン流通部ではドレン水面に一様ではなく揺れ動く場合がある。そうすると、上述したような構成では、メイン機器が故障していないにも拘わらず、即ち実質的にドレンの水位が所定位置まで上昇していないにも拘わらず、ドレンがバックアップ機器にも流入する虞がある。そのため、バックアップ機器が不用に作動してしまい、バックアップ機器の故障や寿命低下を招く。
【0005】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドレン流通部のドレンを回収するメイン機器およびバックアップ機器を備えたシステムにおいて、バックアップ機器が不用に作動することを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願のドレンポットは、ドレンの貯留部と、流入管と、均圧管とを備えている。前記貯留部は、上流側通路および下流側通路と、流入口と、流出口と、排気口とを有している。前記上流側通路および下流側通路は、それぞれ上下方向に延び、互いに下端で連通している。前記流入口は、前記上流側通路に形成されている。前記流出口は、前記下流側通路において前記流入口よりも高い位置に形成されている。前記排気口は、前記下流側通路の上端に形成されている。前記流入管は、前記流入口に接続されている。前記均圧管は、前記排気口と前記流入管とを連通させる。
【0007】
また、本願のドレン回収システムは、ドレン流通部と、メイン系統と、バックアップ系統とを備えている。前記メイン系統は、前記ドレン流通部における頂部よりも低い位置に接続されるメイン配管と、該メイン配管に接続され、前記ドレン流通部のドレンが前記メイン配管を介して流入し、該流入したドレンを外部に排出するメイン排出機器とを有している。前記バックアップ系統は、前記ドレン流通部に接続される上述のドレンポットと、該ドレンポットの流出口に接続されるバックアップ配管と、該バックアップ配管に接続され、前記ドレン流通部のドレンが前記ドレンポットおよびバックアップ配管を介して流入し、該流入したドレンを外部に排出するバックアップ排出機器とを有している。そして、前記ドレンポットは、前記流入管が前記ドレン流通部の頂部に接続され、前記流出口の位置が前記ドレン流通部の頂部よりも高くなるように設置されている。
【発明の効果】
【0008】
本願のドレンポットおよびドレン回収システムによれば、バックアップ機排出機器が不用に作動することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るドレンポットおよびドレン回収システムの概略構成を示す配管系統図である。
図2図2は、実施形態に係るドレンポットおよびドレン回収システムの概略構成を示す配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0011】
本実施形態のドレン回収システム1は、蒸気使用機器11で発生したドレンを回収すると共に、回収したドレンを利用設備に供給するものである。利用設備の一例として、ボイラー設備が挙げられる。図1に示すように、ドレン回収システム1は、回収管12と、ドレンヘッダ14と、ドレンヘッダ14のドレンを回収する(排出させる)メイン系統20およびバックアップ系統30とを備えている。
【0012】
回収管12は、一端(上流端)が蒸気使用機器11に接続され、他端(下流端)がドレンヘッダ14に接続されている。蒸気使用機器11は、例えば熱交換器であり、別の設備より蒸気が供給され、その蒸気が対象物に放熱して凝縮し、対象物が加熱される。蒸気は、凝縮することによってドレン(復水)になる。つまり、蒸気使用機器11では蒸気の凝縮潜熱によって対象物が加熱(潜熱加熱)される。
【0013】
回収管12は、蒸気使用機器11で蒸気の凝縮により発生したドレン(復水)が回収(排出)される。回収管12の途中には、スチームトラップ13が設けられている。スチームトラップ13は、蒸気使用機器11で発生したドレンが回収管12を介して流入する。スチームトラップ13は、その上下流の圧力差(上流側の圧力と下流側の圧力との差)によって、流入したドレンのみを下流側へ自動的に排出するものである。なお、実際、スチームトラップ13には蒸気混じりのドレンが流入する。
【0014】
回収管12は、ドレンヘッダ14の頂部16に接続されている。ドレンヘッダ14は、蒸気使用機器11で発生したドレンが回収管12を介して流入し、一時的に貯留される。ドレンヘッダ14は、本願の請求項に係るドレン流通部に相当する。本願において、ドレン流通部とは、ドレンが流れる箇所や、ドレンが貯留される箇所、ドレンが発生して溜まる箇所等を意味する。
【0015】
メイン系統20は、流入管21と、メイン排出機器22とを備えている。流入管21は、一端(上流端)がドレンヘッダ14の底部15に接続され、他端(下流端)がメイン排出機器22に接続されている。なお、流入管21は本願の請求項に係るメイン配管に相当する。
【0016】
メイン排出機器22は、作動気体を導入し該作動気体の圧力によってドレンの排出動作を行う液体圧送機器である。メイン排出機器22は、流入管21が接続されるドレンの流入口23と、ドレンの圧送口24と、作動気体の導入口26と、作動気体の排出口25とを有する。圧送口24には、圧送管27が接続されている。また、メイン排出機器22は、図示しないが、内部にドレンの貯留空間が形成され、その貯留空間のドレン水位に応じて上昇下降するフロートが貯留空間に収容されている。さらに図示はしないが、メイン排出機器22は、フロートの上昇下降によって、排出口25および導入口26を開閉する開閉機構を有している。
【0017】
メイン排出機構20では、ドレンが貯留空間に溜まっていない場合、フロートは貯留空間の底部に位置する。この状態において、導入口26は閉じられ排出口25は開いている。そして、ドレンヘッダ14のドレンが流入管21を通って流入口23から流入し貯留空間に溜まる。貯留空間にドレンが溜まっていくに従って、フロートが上昇する。なお、貯留空間ではドレンが溜まっていくにつれて作動気体が排出口25から排出される。そして、貯留空間におけるドレン水位が所定高水位に達すると、開閉機構により導入口26が開くと共に排出口25が閉じられる。
【0018】
導入口26が開くと、作動気体が導入口26から流入し貯留空間の上部に導入される。これにより、貯留空間に溜まっていたドレンは、導入された作動気体の圧力によって下方へ押されて圧送口24から排出される。圧送口24から排出されたドレンは、圧送管27を通じて利用設備へ供給される。ドレンの排出によって貯留空間のドレン水位が低下すると、フロートが下降する。そして、貯留空間におけるドレン水位が所定低水位に達すると、開閉機構により導入口26が閉じられると共に排出口25が開く。こうして、メイン排出機器22ではドレンの流入動作と排出動作とが交互に繰り返される。
【0019】
このように、メイン排出機器22は、導入された作動気体の圧力を動力源として、ドレンヘッダ14のドレンを回収する(排出させる)ものである。つまり、メイン排出機器22は非電動式の(電力を用いない)機器である。なお、導入口26には、ドレン回収システム1が組み込まれる設備で用いられる高圧蒸気が作動気体として導入される。
【0020】
バックアップ系統30は、メイン排出機器22の故障等により作動不能となった場合に、メイン系統20に代わってドレンヘッダ14のドレンを回収する(排出させる)ものである。メイン排出機器22が作動不能になると、ドレンヘッダ14のドレンがメイン系統20に回収されなくなるため、ドレンヘッダ14においてドレン水位が上昇し、やがて満杯になる。そうすると、蒸気使用機器11で発生したドレンがドレンヘッダ14に流入できなくなり問題となる。バックアップ系統30は、ドレンヘッダ14においてドレンが満杯になると、ドレンヘッダ14のドレンを回収し(排出させ)、蒸気使用機器11からドレンヘッダ14へのドレンの流入を可能にする。
【0021】
バックアップ系統30は、流出管31と、バックアップ排出機器32と、ドレンポット40とを備えている。流出管31は、一端(上流端)がドレンポット40に接続され、他端(下流端)がバックアップ排出機器32に接続されている。なお、流出管31は本願の請求項に係るバックアップ配管に相当する。
【0022】
バックアップ排出機器32は、メイン排出機器22と同様に構成されており、作動気体を導入し該作動気体の圧力によってドレンの排出動作を行う液体圧送機器である。つまり、バックアップ排出機器32は、流出管31が接続されるドレンの流入口33と、ドレンの圧送口34と、作動気体の導入口36と、作動気体の排出口35とを有する。圧送口34には、圧送管37が接続されている。そして、バックアップ排出機器32は、図示しないが、内部にドレンの貯留空間が形成されており、その貯留空間に収容されるフロートと、フロートの上昇下降によって排出口35および導入口36を開閉する開閉機構とを有し、メイン排出機器22と同様の流入動作および排出動作を行う。
【0023】
ドレンポット40は、ドレンヘッダ14と流出管31との間に接続されている。ドレンポット40は、ドレンヘッダ14のドレンが満杯でない(即ち、ドレンヘッダ14のドレン水位が頂部16に達していない)ときは、ドレンヘッダ14のドレンが流出管31に流れるのを阻止する。そして、ドレンポット40は、ドレンヘッダ14のドレンが満杯になる(即ち、ドレンヘッダ14のドレン水位が頂部16に達する)と、ドレンヘッダ14のドレンが流出管31に流れるのを許容する。ドレンポット40は、貯留部41と、流入管49と、均圧管51と、逆止弁52とを備えている。
【0024】
貯留部41は、ドレンを一時的に貯留する外形が縦長の円柱状容器に形成されている。貯留部41は、内部に仕切部材42が設けられている。仕切部材42は、上下方向に延びる部材であり、貯留部41の内部を水平方向に仕切っている。貯留部41の内部は、仕切部材42によって上流側通路43と下流側通路44に仕切られている。仕切部材42は、貯留部41の底板と間隔を置いて設けられている。この間隔は、上流側通路43と下流側通路44とが互いに下端で連通する連通部45となっている。こうして、貯留部41には、上流側通路43と連通部45と下流側通路44とによって、略U字状の流体通路が形成されている。
【0025】
上流側通路43および下流側通路44は、上下方向に延びる通路(空間)である。また、上流側通路43は貯留部41において底板から略中央部まで形成されており、下流側通路44は貯留部41において底板から上板まで形成されている。つまり、上流側通路43は下流側通路44よりも長さが短く、上流側通路43の上端は下流側通路44の上端よりも低い。なお、上流側通路43の下端と下流側通路44の下端とは同じ設置高さである。貯留部41の側壁には、上流側通路43の上部に開口するドレンの流入口46と、下流側通路44の上部に開口するドレンの流出口47とが形成されている。また、貯留部41の上板には、下流側通路44に開口する排気口48が形成されている。つまり、排気口48は下流側通路44の上端に設けられている。
【0026】
流入管49は、ドレンヘッダ14と貯留部41との間に接続されている。つまり、流入管49の一端(上流端)はドレンヘッダ14の頂部16に接続され、他端(下流端)は貯留部41の流入口46に接続されている。均圧管51は、排気口48と流入管49とを連通させる。つまり、均圧管51の一端(上流端)は排気口48に接続され、他端(下流端)は流入管49の途中に接続されている。貯留部41の流出口47には、流出管31が接続されている。
【0027】
逆止弁52は、均圧管51に設けられており、均圧管51における排気口48側から流入管49側へ向かう流体の流れのみを許容するものである。逆止弁52は、弁体が付勢部材によって上流側へ付勢されて閉弁している。そして、逆止弁52は、上流側の流体圧力が所定値以上に上昇すると、付勢部材の付勢力に抗して開弁する。
【0028】
ドレンポット40は、貯留部41の流入口46とドレンヘッダ14の頂部16とが同じ設置高さH1となるように設置されている。また、ドレンポット40は、貯留部41の流出口47の設置高さH2が、ドレンヘッダ14の頂部16の設置高さH1よりも高くなるように設定されている。つまり、ドレンポット40では流出口47が流入口46よりも高い位置にある。
【0029】
〈運転動作〉
先ず、メイン排出機器22が作動可能な場合について図1を参照しながら説明する。図1に太線の矢印で示すように、蒸気使用機器11で発生したドレンは回収管12を介してドレンヘッダ14に流入し貯留される。ドレンヘッダ14に貯留されたドレンは、流入管21を介してメイン排出機器22に流入し貯留され、やがて排出される。こうして、ドレンヘッダ14では、蒸気使用機器11からドレンが流入する一方、ドレンがメイン排出機器22によって排出される。そのため、ドレンヘッダ14のドレンは満杯にならない。
【0030】
一方、ドレンポット40では、貯留部41において連通部45よりも高い位置までドレンが貯留されている。つまり、貯留部41では連通部45がドレンによって水封されている。ドレンヘッダ14の上部に存在する蒸気は、ドレンポット40に流れる。具体的に、ドレンヘッダ14に存在する蒸気は、流入管49を介して貯留部41の上流側通路43に流入する。上流側通路43に流入した蒸気は、連通部45がドレンによって水封されているため、下流側通路44には流れない。また、ドレンヘッダ14の蒸気は、流入管49を介して均圧管51にも流入する。均圧管51に流入した蒸気は、逆止弁52が閉弁しているため、貯留部41の下流側通路44には流れない。こうして、ドレンヘッダ14に存在する蒸気がドレンポット40を通過してバックアップ排出機器32に流入するのを阻止することができる。
【0031】
また、ドレンヘッダ14では、実質的にドレン水位が頂部16まで達していない場合でも、ドレンの水面が揺れ動いてドレンがドレンポット40の流入管49に流入する場合がある。その場合、流入管49に流入したドレンは貯留部41の上流側通路43に流れて貯留される。これにより、貯留部41のドレンの貯留水位は上昇するが、流出口47の位置まで上昇することはない。つまり、流入口46がドレンヘッダ14の頂部16と同じ設置高さH1であり、流出口47は流入口46よりも高い位置にあるため、貯留部41におけるドレンの貯留水位は流入口46よりも高い位置まで上昇することはない。こうして、ドレンヘッダ14において水面が揺れ動いてドレンが流入管49に流入しても、そのドレンが貯留部41を通過してバックアップ排出機器32に流入するのを阻止することができる。これにより、バックアップ排出機器32が不用に作動することを防止することができる。
【0032】
次に、メイン排出機器22が作動不能になった場合について図2を参照しながら説明する。この場合、ドレンヘッダ14では、蒸気使用機器11からドレンが流入する一方、そのドレンはメイン系統20によっては排出されない。そのため、ドレンヘッダ14ではドレン水位が徐々に上昇し、やがてドレンが満杯になる。そうすると、図2に太線の矢印で示すように、ドレンヘッダ14のドレンは流入管49を介して貯留部41の上流側通路43に流入する。一方、ドレンヘッダ14には蒸気使用機器11からドレンが流入する。
【0033】
そのため、貯留部41ではドレンが上流側通路43から下流側通路44へ流れ、下流側通路44の貯留水位が上昇する。下流側通路44における貯留水位の上昇に伴い、下流側通路44の上部に存在していた蒸気が圧縮され蒸気の圧力が上昇する。そして、下流側通路44において蒸気圧力が所定値まで上昇すると、逆止弁52が開弁し、下流側通路44の蒸気は均圧管51を介して流入管49に排出される。こうして、下流側通路44から蒸気が排出されることにより、上流側通路43から下流側通路44にドレンが流れやすくなり、下流側通路44のドレンの貯留水位が更に上昇しやすくなる。つまり、貯留部41では蒸気が排出されると共にドレンが流入する気液置換が行われる。
【0034】
そして、下流側通路44のドレンの貯留水位が流出口47の位置まで上昇すると、下流側通路44のドレンは流出管31を介してバックアップ排出機器32に流入する。このように、ドレンヘッダ14においてドレンが満杯になると、自動的にドレンヘッダ14のドレンがバックアップ排出機器32に流入し排出される。こうして、メイン排出機器22が作動不能によりドレンヘッダ14のドレンが満杯になっても、ドレンヘッダ14のドレンはバックアップ系統30によって排出される。
【0035】
以上のように、上記実施形態のドレンポット40は、互いに下端で連通する上流側通路43および下流側通路44と、上流側通路43に形成された流入口46と、下流側通路44において流入口46よりも高い位置に形成された流出口47と、下流側通路44の上端に形成された排気口48とを有するドレンの貯留部41を備えている。また、ドレンポット40は、流入口46に接続された流入管49と、排気口48と流入管49とを連通させる均圧管51とを備えている。
【0036】
この構成によれば、流入管49をドレンヘッダ14(ドレン流通部)の頂部16に
接続し、流入口46がドレンヘッダ14の頂部16と同じ設置高さH1となるように、ドレンポット40をドレンヘッダ14とバックアップ排出機器32との間に接続することにより、ドレンヘッダ14におけるドレンの水面が揺れ動いてドレンが流入管49を介して貯留部41に流入しても、そのドレンが貯留部41から流出するのを防止することができる。これにより、メイン排出機器22が作動可能なときに、即ちドレンヘッダ14が満杯でないときに、ドレンヘッダ14のドレンがバックアップ排出機器32に流入するのを防止することができる。よって、バックアップ排出機器32が不用に作動するのを防止することができる。
【0037】
一方、メイン排出機器22の作動不能によりドレンヘッダ14が満杯になったときは、自動的にドレンヘッダ14のドレンをドレンポット40を通過させてバックアップ排出機器32に流入させることができる。このように、必要なときにだけバックアップ排出機器32を作動させることができる。
【0038】
また、上記実施形態のドレンポット40は、均圧管51に逆止弁52が設けられている。この構成によれば、ドレンヘッダ14に存在する蒸気がドレンポット40を通過してバックアップ排出機器32に流入するのを防止することができる。停止しているバックアップ排出機器32に蒸気が流入して長時間経過すると、流入した蒸気が凝縮しドレンとなる。このドレンにより、バックアップ排出機器32に錆が発生し故障や寿命低下の原因となる。上記実施形態では、こういったバックアップ排出機器32の故障や寿命低下を未然に防止することができる。
【0039】
また、上記実施形態のドレン回収システム1は、ドレンヘッダ14(ドレン流通部)と、ドレンヘッダ14の頂部よりも低い位置に流入管21を介して接続されるメイン排出機器22と、ドレンヘッダ14に接続される上述のドレンポット40と、ドレンポット40の流出口47に流出管31を介して接続されるバックアップ排出機器32とを備えている。そして、ドレンポット40は、流入管49がドレンヘッダ14の頂部16に接続され、流出口47の位置がドレンヘッダ14の頂部16よりも高くなるように設置されている。この構成によれば、ドレンポット40について上述した効果を奏するドレン回収システム1を提供することができる。
【0040】
また、上記実施形態のドレン回収システム1は、メイン排出機器22およびバックアップ排出機器32が、作動気体を導入しその作動気体の圧力によって作動する非電動式の機器である。そのため、例えば、ドレンヘッダ14のドレン水位を検出し、その検出信号に基づいてバックアップ排出機器32を作動させることは困難である。この点、上記実施形態のドレン回収システム1では、上述したドレンポット40を設けることにより、ドレンヘッダ14のドレン水位を検出しなくても、必要なときにバックアップ排出機器32を確実に作動させることができる。
【0041】
(その他の実施形態)
上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0042】
例えば、上流側通路43は、貯留部41において底板から上板まで形成されていてもよい。その場合、流入口46は上記実施形態と同様に流出口47よりも低い位置に形成される。
【0043】
また、上記実施形態では、ドレン流通部としてドレンヘッダ14を例示したが、本願に開示の技術はこれに限らず、ドレンが流れるドレン配管や、蒸気の凝縮によってドレンが発生して溜まるドレン溜まり部をドレン流通部として適用してもよい。
【0044】
また、メイン排出機器およびバックアップ排出機器は、上記実施形態で説明したように作動気体を導入しその作動気体の圧力によってドレンを排出(圧送)する機器に限らず、スチームトラップ等の流入したドレンのみを外部に排出するドレントラップであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本願に開示の技術は、ドレンポットおよびドレン回収システムについて有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 ドレン回収システム
14 ドレンヘッダ(ドレン流通部)
16 頂部
20 メイン系統
21 流入管(メイン配管)
22 メイン排出機器
30 バックアップ系統
31 流出管(バックアップ配管)
32 バックアップ排出機器
40 ドレンポット
41 貯留部
43 上流側通路
44 下流側通路
46 流入口
47 流出口
48 排気口
49 流入管
51 均圧管
図1
図2