特許第6809917号(P6809917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809917
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】複合シール材
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   F16J15/10 T
   F16J15/10 N
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-15233(P2017-15233)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-123863(P2018-123863A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】キム サンホ
(72)【発明者】
【氏名】黒田 路
(72)【発明者】
【氏名】吉田 延博
(72)【発明者】
【氏名】中川 一平
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−124213(JP,A)
【文献】 特開2009−144735(JP,A)
【文献】 特開2012−072863(JP,A)
【文献】 特開2007−120738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方部材の本体面に設けられたシール溝内に装着され、前記一方部材に対して他方部材を近づけ、前記一方部材と他方部材との間を封止状態とする複合シール材であって、
前記複合シール材は、
前記シール溝の一方側壁側に配置され、弾性部材からなる第1シール部材と、
前記シール溝の他方側壁側に配置され、前記第1シール部材よりも硬質の材料からなる第2シール部材と、
を備え、
前記第2シール部材が、
前記シール溝の他方側壁に対して略平行であり面接触する他方側壁当接面と、
前記他方部材のシール面に対して略平行であり、前記封止状態の際に他方部材のシール面と面接触するシール当接面と、
を少なくとも有し、
前記第1シール部材が、
前記一方部材の本体面よりも他方部材のシール面側に突出するシール突部と、
前記シール溝の一方側壁に向かって膨出する側方膨出部と、
前記シール溝の底面と当接する底部と、
前記第2シール部材を載置する載置部と、
を少なくとも有し、
前記第1シール部材の底部が、
前記シール溝の一方側壁側の端部に位置する一方突起と、
前記シール溝の他方側壁側の端部に位置する他方突起と、
前記一方突起と他方突起との間に位置する中央突起と、
を少なくとも有することを特徴とする複合シール材。
【請求項2】
前記第1シール部材の側方膨出部の垂直方向の中心位置が、前記載置部に載置された第2シール部材の垂直方向の上端部から下端部の間に位置するよう構成されていることを特徴とする請求項に記載の複合シール材。
【請求項3】
前記一方側壁の高さが他方側壁の高さよりも高く設定されたシール溝内に装着されることを特徴とする請求項1または2に記載の複合シール材。
【請求項4】
前記封止状態において、
前記第2シール部材のシール当接面の水平方向の幅が、前記一方部材のシール溝の他方側壁側の本体面から他方部材のシール面までの垂直方向の高さの4倍以上であることを特徴とする請求項に記載の複合シール材。
【請求項5】
前記封止状態において、
前記第2シール部材の他方側壁当接面の垂直方向の幅が、前記一方部材のシール溝の他方側壁側の本体面から他方部材のシール面までの垂直方向の高さの4倍以上であることを特徴とする請求項3または4に記載の複合シール材。
【請求項6】
前記第1シール部材において、
前記シール突部と、前記第2シール部材が載置される載置部との間に、凹部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合シール材。
【請求項7】
前記中央突起の水平方向の中心位置と、前記凹部の水平方向の中心位置とが、略同位置であることを特徴とする請求項に記載の複合シール材。
【請求項8】
前記第1シール部材のシール突部の水平方向の中心位置が、前記一方突起と中央突起との間に位置するよう構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の複合シール材。
【請求項9】
前記第1シール部材と前記第2シール部材とは、接着剤により接着されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の複合シール材。
【請求項10】
前記第1シール部材と第2シール部材とは、いずれか一方に形成された凸嵌合部といずれか他方に形成された凹嵌合部とで組付けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の複合シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば真空状態で使用される複合シール材に関し、特に半導体製造装置に使用されて好適な複合シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の進歩により、半導体製造装置に使用される部材に対する要求が更に厳しくなっており、その要求も様々なものになっている。
例えば、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置などの半導体製造装置に使用されるシール材は、基本的な性能として真空シール性能が必要である。そして、使用される装置やシール材の装着箇所により、耐プラズマ性や耐腐食ガス性などの性能を併せ持つことが要求される。
【0003】
このように真空シール性能に加えて、耐プラズマ性や耐腐食ガス性が求められるシール領域では、これまで流体の影響を受けにくいフッ素ゴムが使用されてきた。
しかし、使用条件が厳しくなるにつれ、フッ素ゴムでは、耐プラズマ性や耐腐食ガス性などの性能が不十分となり新しい材料が求められている。
【0004】
このような要求に対し、真空シール性能、耐プラズマ性、耐腐食ガス性などの特性を併せ持ち、繰り返しの使用によっても所望の真空シール性能を維持することのできる複合シール材として、既に本発明者らは特許文献1に開示された複合シール材を提案している。
【0005】
特許文献1に開示された複合シール材100は、図8に示したように、一方部材110に形成された片あり溝112内に装着され、弾性部材(例えばフッ素ゴム)からなる第1シール部材130と、第1シール部材130よりも硬質な材料(例えばフッ素樹脂)からなる第2シール部材140とから成るものである。
このような複合シール材100は、主に第1シール部材130で、真空シール性能を確保し、第2シール部材140で耐プラズマ性,耐腐食ガス性などの耐性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−174627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらこのような従来の複合シール材100は、他方部材120と当接する第2シール部材140のシール当接面142が断面円弧状の曲面であるため、図9に示したような封止状態の際に、他方部材120のシール面122と当接する第2シール部材140のシール当接面142の当接面積および片あり溝112の内周壁114と接する第2シール部材140の内周壁当接面144の当接面積は、両者ともに少なくなりがちであった。
【0008】
このように当接面積が少なくなると、封止状態の際に、第2シール部材140が、内周側から受ける腐食性ガスやプラズマに対して、耐性寿命を長期間確保することが困難となる場合がある。
【0009】
また、従来の複合シール材100は、第1シール部材130の底部132には、片あり溝112の外周壁116側の端部に位置する外周突起136と、内周壁114側の端部に位置する内周突起134とが設けられているが、外周突起136と内周突起134との間に大きな空間150が形成されてしまうため、封止状態の際には、図9に示した矢印のように、第1シール部材130と第2シール部材140が元の位置からそれぞれに空間150に向かって転動を生ずる場合が想定された。そのため、確実なシール特性を発揮させるために、第2シール部材140のシール当接面142が断面円弧状の曲面で形成される必要があった。
したがって、内周側から受ける腐食性ガスやプラズマに対して、耐性寿命を長期間確保するため、更なる改良を重ねた複合シール材が求められているのが実状である。
【0010】
本発明はこのような実状に鑑み発明されたものであって、真空シール性能、耐プラズマ性、耐腐食ガス性などの性能を長期間にわたって確実に維持することのできる複合シール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記したような課題を解決するために発明されたものであって、
本発明の複合シール材は、
一方部材の本体面に設けられたシール溝内に装着され、前記一方部材に対して他方部材を近づけ、前記一方部材と他方部材との間を封止状態とする複合シール材であって、
前記複合シール材は、
前記シール溝の一方側壁側に配置され、弾性部材からなる第1シール部材と、
前記シール溝の他方側壁側に配置され、前記第1シール部材よりも硬質の材料からなる第2シール部材と、
を備え、
前記第2シール部材が、
前記シール溝の他方側壁に対して略平行であり面接触する他方側壁当接面と、
前記他方部材のシール面に対して略平行であり、前記封止状態の際に他方部材のシール面と面接触するシール当接面と、
を少なくとも有することを特徴とする。
【0012】
このように構成すれば、封止状態の際には第2シール部材と他方部材のシール面との間、および第2シール部材とシール溝の他方側壁との間のいずれも広範囲に面接触されることとなるため、真空シール性能、耐プラズマ性、耐腐食ガス性などの性能を長期間にわたって確実に維持することができる。
【0013】
またこのように構成された複合シール材は、第2シール部材の他方側壁当接面とシール当接面とにより、シール溝の他方側壁と他方部材のシール面に対する当接面積が広範囲であるため、特に一方部材と他方部材との間の封止状態をそのまま長期間にわたって維持するような環境下において好適である。
【0014】
また、本発明の複合シール材は、
前記第1シール部材が、
前記一方部材の本体面よりも他方部材のシール面側に突出するシール突部と、
前記シール溝の一方側壁に向かって膨出する側方膨出部と、
前記シール溝の底面と当接する底部と、
前記第2シール部材を載置する載置部と、
を少なくとも有することを特徴とする。
このように第1シール部材が構成されていれば、特に第1シール部材と他方部材のシール面との間で真空シール性能を長期間にわたって確実に維持することができる。
【0015】
また、本発明の複合シール材は、
前記第1シール部材の側方膨出部の垂直方向の中心位置が、前記載置部に載置された第2シール部材の垂直方向の上端部から下端部の間に位置するよう構成されていることを特徴とする。
【0016】
このように構成されていれば、複合シール材が他方部材に押圧された際に、第1シール部材と第2シール部材の両方に対して均等に力が加わり易くなり、転動が生ずるようなことを確実に防止することができる。
【0017】
また、本発明の複合シール材は、
前記一方側壁の高さが他方側壁の高さよりも高く設定されたシール溝内に装着されることを特徴とする。
【0018】
このようにシール溝の一方側壁の高さと他方側壁の高さが異なっていれば、封止状態の際に、他方側壁側に位置する他方部材の一部が、真空環境下による圧力で一方部材側に撓んだとしても、他方側壁側の一方部材に、撓んだ他方部材が接触してしまうことがなく、複合シール材で両部材間を確実に封止することができる。
【0019】
また、本発明の複合シール材は、
前記封止状態において、
前記第2シール部材のシール当接面の水平方向の幅が、前記一方部材のシール溝の他方側壁側の本体面から他方部材のシール面までの垂直方向の高さの4倍以上であることを特徴とする。
このように第2シール部材のシール当接面の水平方向の幅を設定すれば、特に耐プラズマ性、耐腐食ガス性などの性能を長期間にわたって確実に維持することができる。
【0020】
また、本発明の複合シール材は、
前記封止状態において、
前記第2シール部材の他方側壁当接面の垂直方向の幅が、前記一方部材のシール溝の他方側壁側の本体面から他方部材のシール面までの垂直方向の高さの4倍以上であることを特徴とする。
このように第2シール部材の他方側壁当接面の垂直方向の幅を設定すれば、特に耐プラズマ性、耐腐食ガス性などの性能を長期間にわたって確実に維持することができる。
【0021】
また、本発明の複合シール材は、
前記第1シール部材の底部が、
前記シール溝の一方側壁側の端部に位置する一方突起と、
前記シール溝の他方側壁側の端部に位置する他方突起と、
前記一方突起と他方突起との間に位置する中央突起と、
を少なくとも有することを特徴とする。
【0022】
このように少なくとも3種類の突起が設けられていれば、従来のように一方突起と他方突起との間に大きな空間が形成されて生ずるような転動を確実に防止することができる。
特に封止状態の際に、中央突起によって第1シール部材の一部が一方突起と他方突起との間に入り込むことを遮っているため、複合シール材の回転方向の変形が生じ難く、転動を確実に防止することができる。
【0023】
また、本発明の複合シール材は、
前記第1シール部材において、
前記シール突部と、前記第2シール部材が載置される載置部との間に、凹部が設けられていることを特徴とする。
【0024】
このような位置に凹部が設けられていれば、最初に他方部材と当接して変形する第1シール部材のシール突部の一部が、この凹部内に入り込むこととなり、全体として転動の発生を防止することができる。すなわち、変形時の逃がし部分として凹部が機能するため、他の部分の動きを極力最小限とすることができ、転動の発生を防止することができる。
【0025】
また、本発明の複合シール材は、
前記中央突起の水平方向の中心位置と、前記凹部の水平方向の中心位置とが、略同位置であることを特徴とする。
【0026】
このように凹部の真下に中央突起が位置するようになっていれば、封止状態に至る際に、第1シール部材の一部が変形したとしても大きく変形することがなく、全体として転動の発生を極力防止することができる。
【0027】
また、本発明の複合シール材は、
前記第1シール部材のシール突部の水平方向の中心位置が、前記一方突起と中央突起との間に位置するよう構成されていることを特徴とする。
【0028】
このように構成されていれば、シール突部が他方部材と当接して封止状態に至る際に、一方突起と中央突起との間に生ずる小さな隙間内に第1シール部材の一部が真っ直ぐ垂直方向から入り込むようになるため、確実に転動の発生を防止することができる。
【0029】
また、本発明の複合シール材は、
前記第1シール部材と前記第2シール部材とは、接着剤により接着されていることを特徴とする。
このように接着剤で互いに接着されていれば、両部材間の固定を容易にかつ強固にすることができる。
【0030】
また、本発明の複合シール材は、
前記第1シール部材と第2シール部材とは、いずれか一方に形成された凸嵌合部といずれか他方に形成された凹嵌合部とで組付けられていることを特徴とする。
このような構成であれば、第1シール部材と第2シール部材とを、予め一体的に組み付けることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の複合シール材によれば、特に第2シール部材において、シール溝の他方側壁に対して略平行であり面接触する他方側壁当接面と、他方部材のシール面に対して略平行であり、封止状態の際に他方部材のシール面と面接触するシール当接面とを有することにより、真空シール性能、耐プラズマ性、耐腐食ガス性などの性能を長期間にわたって確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の複合シール材をシール溝として角溝に装着した状態の断面図である。
図2図2は、本発明の複合シール材の断面図である。
図3図3は、本発明の複合シール材をシール溝として角溝に装着して他方部材を一方部材に向かって移動させた状態の断面図である。
図4図4は、本発明の複合シール材をシール溝として角溝に装着して封止した状態の断面図である。
図5図5は、本発明の複合シール材の他の実施形態の断面図である。
図6図6(a)〜図6(c)は、本発明の複合シール材の他の実施形態を示した断面図である。
図7図7は、本発明の複合シール材をシール溝として片あり溝に装着した状態の断面図である。
図8図8は、従来の複合シール材をシール溝として片あり溝に装着した状態の断面図である。
図9図9は、従来の複合シール材をシール溝として片あり溝に装着して封止した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいてより詳細に説明する。
本発明の複合シール材10は、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置などの半導体製造装置に使用され、真空シール性能に加え、耐プラズマ性や耐腐食ガス性などの性能を併せ持つものである。
【0034】
このような複合シール材10は、図1に示したように、他方側壁(本実施形態では内周壁26)と一方側壁(本実施形態では外周壁28)とが略垂直な角型のシール溝(角溝)24内に装着される。
【0035】
このシール溝24は、例えば、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置の半導体製造装置の一方部材20と他方部材30とからなる継手部分など動作の無い固定部に形成されるものである。
【0036】
このシール溝24内に、第1シール部材50と第2シール部材40とからなる複合シール材10を装着し、一方部材20に他方部材30を近づけていくことで、一方部材20と他方部材30との間を複合シール材10を介して封止状態とすることができる。
【0037】
複合シール材10は、弾性部材からなる第1シール部材50が、シール溝24の外周壁28側(外気側)に配置され、第1シール部材50よりも硬質の材料からなる第2シール部材40が、シール溝24の内周壁26側(腐食性ガス、プラズマなどの厳しい環境側)に配置される。
【0038】
第1シール部材50は、一方部材20の本体面22よりも他方部材30のシール面32側に突出するシール突部52と、シール溝24の外周壁28に向かって膨出する側方膨出部54と、シール溝24の底面25と当接する底部56と、第2シール部材40を載置する載置部57と、を有している。
【0039】
これに対して第2シール部材40は、シール溝24の内周壁26に対して略平行であり面接触する他方側壁当接面(本実施形態では内周壁当接面42)と、他方部材30のシール面32に対して略平行であり、封止状態の際に他方部材30のシール面32と面接触するシール当接面44と、を有し、第1シール部材50の載置部57に載置されるように構成されている。
【0040】
ここで、弾性部材からなる第1シール部材50は、ゴムから構成されていることが好ましく、ゴムとしては、天然ゴム、合成ゴムのいずれも使用可能である。第1シール部材50をゴムから構成することによって、複合シール材10を一方部材20と他方部材30との間で圧接した際に、第1シール部材50のシール突部52が、他方部材30のシール面32により圧接され高いシール性を付与することができる。
なお、第1シール部材50を合成ゴムで構成する場合には、フッ素ゴムであることが好ましい。
【0041】
このようなフッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/トリフルオロクロロエチレン系共重合体、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン系共重合体等の2元系のフッ化ビニリデン系ゴム、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体等の3元系のフッ化ビニリデンゴムやテトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体、熱可塑性フッ素ゴムなどを挙げることができる。
【0042】
このようなフッ素ゴムであれば、万が一、第1シール部材50が腐食性ガス、プラズマに接触したとしても、腐食性ガス、プラズマなどへの耐久性が高く、シール性が低下することがない。
【0043】
一方、第2シール部材40は、第1シール部材50より硬質であり、腐食性ガス、プラズマなどへの耐久性がある材料であれば良く、例えば、合成樹脂や、合成樹脂の外表面に腐食環境へ耐性を持つ被膜がコーティングされている部材や、真空環境に適した、ステンレス鋼、アルミ合金、ニッケル合金、チタン等から選択した1種以上の金属や、軟質ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、セラミックス等から選択した1種以上の無機材料から構成されていても良いものである。
【0044】
合成樹脂としては、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂から選択した1種以上の合成樹脂を挙げることができる。
【0045】
特に上記した合成樹脂の一つであるフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)樹脂、ポリビニリデンフルオライト(PVDF)樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)樹脂、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)樹脂、ポリビニルフルオライド(PVF)樹脂などを挙げることができる。この中で、耐熱性、耐腐食ガス性、耐プラズマ性などを考慮すれば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂が好ましい。
【0046】
本発明の複合シール材10は、後述するシール形状によって、第2シール部材40のシール当接面44が確実に他方部材30のシール面32にぴったりと当接し、第1シール部材50の弾性力によって、第2シール部材40の表面に加わる応力が低く抑えられる。したがって第2シール部材40の表面は変形せず、表面の破壊により発塵が生ずるリスクを抑えることができる。
【0047】
このような第1シール部材50と第2シール部材40とは、両者の間が、接合されて一体化されていることが好ましく、接合方法としては溶接,溶着,接着など公知の接合方法が採用可能であり、好ましくは接着剤、より好ましくは耐熱性接着剤にて接合一体化することが好ましい。接着剤を塗布する場合には、全面接着でも一部のみを接着でも良い。
【0048】
また第1シール部材50と第2シール部材40と接合一体化する箇所は、例えば第1シール部材50の載置部57と第2シール部材40の下端部48との間や、第1シール部材50の垂直面61と第2シール部材40の側端面59との間であり、いずれか一方を接合しても両方を接合しても良いものである。
【0049】
このような複合シール材10は、図2に示したように、第1シール部材50の底部56の下端部から第2シール部材40のシール当接面44までの垂直方向の高さH1が、第1シール部材50の底部56の下端部からシール突部52の上端部までの垂直方向の高さH2よりも低く設定されている。
【0050】
これにより、一方部材20のシール溝24に複合シール材10が装着された状態で、一方部材20に他方部材30を近づけて行くと、図3に示したように、まず最初に第1シール部材50のシール突部52が、他方部材30のシール面32と接することとなり、最初に真空シール性能が確保される。
【0051】
なお、第1シール部材50の側方膨出部54の垂直方向の中心位置C1が、載置部57に載置された第2シール部材40の垂直方向の上端部46から下端部48の間に位置するよう構成されている。
【0052】
これにより封止状態に至る際に、複合シール材10が他方部材30に押圧され、第1シール部材50と第2シール部材40の両方に対して均等に力が加わり易くなり、従来のように転動が生ずるようなことを確実に防止することができる。
【0053】
このように本発明の複合シール材10は、非常に厳しい環境下で使用されることを前提としたものであり、このような厳しい環境下での使用において、複合シール材10が所望のシール性能を維持するため、下記のような更なる工夫がなされている。
【0054】
また、シール溝24の外周壁28の高さH4が、内周壁26の高さH3よりも高く設定されている。
すなわち、内周側(内周壁26側)の本体面22aを外周側(外周壁28側)の本体面22bよりも低く設定することにより、真空状態で内周側に位置する他方部材30が撓んだとしても、内周側の一方部材20と他方部材30とが接触してしまうことがなく、換言すればメタルタッチを生ずることがなく、確実に複合シール材10で両部材間を封止することができるようになっている。
【0055】
ところで、本発明の複合シール材10をシール溝24内に装着し、一方部材20に対して他方部材30を近づけて行き、図3に示したように、他方部材30に第1シール部材50のシール突部52が当接した状態からさらに押圧を続けていくと、図4に示したように、他方部材30のシール面32に第2シール部材40のシール当接面44がぴったりと当接され、これにより真空シール性能に加えて、耐プラズマ性、耐腐食ガス性の性能が加わり、完全な封止状態となる。
【0056】
この封止状態において、第2シール部材40のシール当接面44の水平方向の幅T2が、一方部材20のシール溝24を挟んで内周側の本体面22aから他方部材30のシール面32までの垂直方向の高さH5の4倍以上であることが好ましい。
【0057】
このように第2シール部材40のシール当接面44の水平方向の幅T2を設定すれば、特に耐プラズマ性、耐腐食ガス性などの性能を長期間にわたって確実に維持することができる。
【0058】
なお同じように、封止状態において、第2シール部材40の内周壁当接面42の垂直方向の幅T3が、一方部材20のシール溝24を挟んで内周側の本体面22aから他方部材30のシール面32までの垂直方向の高さH5の4倍以上であることが好ましい。
【0059】
このような内周壁当接面42であれば、シール溝24の内周壁26から内周側の本体面22aに至るコーナー部21にコーナーRが施されていても、シール溝24の内周壁26と、第2シール部材40の内周壁当接面42との当接面が、十分確保できるため、耐プラズマ性、耐腐食ガス性などの性能を長期間にわたって確実に維持することができる。
【0060】
ここでシール溝24の内周壁26から本体面22aに至るコーナー部21のコーナーRは、一般的にシール溝深さの6〜26%の範囲内で設定される。ここでシール溝深さとは、シール溝24の内周側の内周壁26の高さH3と、外周側の外周壁28の高さH4のいずれかのうち、高さが高い方の値とする。
【0061】
さらに、上記した第2シール部材40のシール当接面44の水平方向の幅T2と、第2シール部材40の内周壁当接面42の垂直方向の幅T3は、略同幅であることが好ましいが、T2:T3の比、すなわち横:縦の比が好ましくは1:0.5〜2.0の範囲内、より好ましくは1:1.0〜1.8の範囲内であれば、所望のシール性能を長期間にわたって維持することができる。
【0062】
また、複合シール材10の底部56には、図1に示したように、シール溝24の外周壁28側の端部に位置する一方突起(本実施形態では外周突起60)と、シール溝24の内周壁26側の端部に位置する他方突起(本実施形態では内周突起58)と、これら外周突起60と内周突起58との間に位置する中央突起62と、が設けられている。
【0063】
これにより、外周突起60と中央突起62との間、および内周突起58と中央突起62との間に小さな空間66,64が形成されている。
そして、第1シール部材50のシール突部52と、第2シール部材40が載置される載置部57との間に、凹部70が設けられ、この凹部70の水平方向の中心位置C3と、底部56の中央突起62の水平方向の中心位置C2とが、略同位置となっている。
【0064】
このような位置関係に凹部70と中央突起62とを配置することにより、特にこの中央突起62によって、従来において封止状態の際に第1シール部材50の一部分が、外周突起60と内周突起58との間に生ずる空間内に入り込むことを物理的に遮ることができる。
【0065】
そして封止状態に至る際に、最初に他方部材30と当接して変形する第1シール部材50のシール突部52の一部分が、この凹部70内に入り込むこととなり、変形時の逃がし領域として凹部70が機能するため、他の部分の動きを極力最小限とすることができる。
【0066】
また、このとき凹部70の真下に中央突起62が位置するため、封止状態に至る際に、第1シール部材50の一部が変形したとしても、複合シール材10の全体が大きく変形することがない。
なお、凹部70の水平方向の中心位置C3と、底部56の中央突起62の水平方向の中心位置C2とは、なるべく同位置であることが好ましいが、中心位置C3に対して、中心位置C2のずれ量が、左右に、複合シール材10の水平方向の最大寸法T1の5〜10%の範囲内であれば、許容されるものである。
【0067】
さらには、第1シール部材50のシール突部52の水平方向の中心位置C4が、外周突起60と中央突起62との間の位置C5に位置するよう構成されることが好ましい。
これらの相乗効果によって、全体として複合シール材10の転動の発生を極力防止することができる。
【0068】
このように本発明の複合シール材10は、上記したような特徴的な形態を有し、特に第2シール部材40が、シール溝24の内周壁26に対して略平行であり面接触する内周壁当接面42と、他方部材30のシール面32に対して略平行であり、封止状態の際に他方部材30のシール面32と面接触するシール当接面44と、を有することで、真空シール性能に加えて、耐プラズマ性、耐腐食ガス性などの性能を長期間にわたって確実に維持することができるものである。
【0069】
以上、本発明の複合シール材10の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、例えば図1〜4に示した第2シール部材40は、第1シール部材50の載置部57に載置され、接着剤で接着されているが、図5に示したように第1シール部材50と第2シール部材40は、いずれか一方(図5では第2シール部材40)に凸嵌合部71といずれか他方(図5では第1シール部材50)に凹嵌合部72を設け、互いに嵌合するようにしても良いものである。このように互いを嵌合する構造の場合には、接着剤は不要であるが、凹凸嵌合に加えて接着剤による接着を行っても構わないものである。
【0070】
さらには、図1〜4に示した第2シール部材40は、断面略四角形であるが、他にも例えば図6(a)に示したような断面略三角形、図6(b)に示したような断面略L字形、図6(c)に示したような断面略台形など、要は、最低限シール溝24の内周壁26に対して略平行であり面接触する内周壁当接面42と、他方部材30のシール面32に対して略平行であり、封止状態の際に他方部材30のシール面32と面接触するシール当接面44と、を有していれば、特に限定されるものではないものである。
【0071】
またシール溝24の形状についても、角溝に本発明の複合シール材10を装着するのが好ましいが、場合によっては、図7に示したような片あり溝に本発明の複合シール材10を装着しても良いものである。片あり溝に本発明の複合シール材10を装着した場合には、傾斜面である外周壁28側に第1シール部材50が位置するようにし、第1シール部材50の側方膨出部54が、常温において片あり溝の傾斜面に当接するようにすれば良いものである。
【0072】
複合シール材10を片あり溝内に装着した際には、片あり溝の開口部27における水平方向の最大寸法T4よりも、複合シール材10の水平方向の最大寸法T1の方が大きいため、複合シール材10が片あり溝から不用意に脱落することを防止することができる。
【0073】
また、上記した角溝に複合シール材10を装着する際には、一端封止状態にした後、メンテナンス時などを除いては封止状態を常に維持する場所、すなわち、固定部を想定している。
【0074】
一方、片あり溝に複合シール材10を装着する際には、一端封止状態にした後、他方部材30を一方部材20から離す動作が繰り返し行われる場所、すなわち可動部を想定している。
しかしながら、これらに限定されるものではなく、固定部を片あり溝としたり、可動部を角溝としても構わないものである。
【0075】
さらに上記実施例では、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置などの半導体装置に適用した場合について説明したが、本願発明の複合シール材10は、その他の環境の厳しい条件で使用するその他の装置のシール部分に用いることも可能である。
このように本発明の複合シール材10は、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0076】
10 複合シール材
20 一方部材
21 コーナー部
22 本体面
22a 本体面
22b 本体面
24 シール溝
25 底面
26 内周壁
27 開口部
28 外周壁
30 他方部材
32 シール面
40 第2シール部材
42 内周壁当接面
44 シール当接面
46 上端部
48 下端部
50 第1シール部材
52 シール突部
54 側方膨出部
56 底部
57 載置部
58 内周突起
59 側端面
60 外周突起
61 垂直面
62 中央突起
64 空間
66 空間
70 凹部
71 凸嵌合部
72 凹嵌合部
C1 中心位置
C2 中心位置
C3 中心位置
C4 中心位置
C5 外周突起と中央突起との間の位置
H1 高さ
H2 高さ
H3 高さ
H4 高さ
H5 高さ
T1 複合シール材の水平方向の最大寸法
T2 幅
T3 幅
T4 最大寸法
100 複合シール材
110 一方部材
112 シール溝
114 内周壁
116 外周壁
120 他方部材
122 シール面
130 シール部材
132 底部
134 内周突起
136 外周突起
140 シール部材
142 シール当接面
144 内周壁当接面
150 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9