特許第6809942号(P6809942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809942
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20201221BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20201221BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20201221BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B01J35/04 301E
   B01J23/889 AZAB
   B01D53/94 222
   B01D53/94 241
   F01N3/035 A
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-50174(P2017-50174)
(22)【出願日】2017年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-185481(P2017-185481A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年10月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-68420(P2016-68420)
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】泉 有仁枝
(72)【発明者】
【氏名】森本 健司
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−002534(JP,A)
【文献】 特開2005−248726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/00 − 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の細孔を有する多孔質の隔壁を有し、前記隔壁によって排ガスの流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造部と、
前記複数のセルの排ガスの流入側となる一方の開口端部と排ガスの流出側となる他方の開口端部とを互い違いに目封止する目封止部と、を備え、
前記複数のセルは、前記流入側の前記開口端部が開口した流入セルと、前記流出側の前記開口端部が開口した流出セルとから構成され、
前記隔壁の気孔率は、70%以下であり、
前記隔壁の前記流出セル側に、NOガスを酸化する少なくともFeとMnとを含有する遷移金属酸化物の酸化触媒、またはCeOに担持されたNOガスを酸化する少なくともFeとMnとを含有する遷移金属酸化物の酸化触媒が担持され、
前記酸化触媒の触媒担持量が5.0g/L以上50g/L以下であるハニカム構造体。
【請求項2】
FeとMnとを含有する前記遷移金属酸化物は、FeとMnのモル比率の合計を1とした場合にMnのモル比率が0.1以上である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
FeとMnとを含有する前記遷移金属酸化物の酸化触媒はCeOに担持されたFe−Mn−O/CeOである請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記隔壁の厚さ方向において、厚さの1/2より前記流出セル側に60%以上の前記遷移金属酸化物が担持されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスを浄化するための排ガス浄化フィルタとして用いることができるハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等から排出される排ガスを浄化するため、エンジンの排気路には複数のフィルタが配置されている。上記フィルタとしては、ディーゼルパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter(DPF))、このDPFの下流側に配置されるSCR触媒(Selective Catalytic Reduction:還元反応によって被浄化成分を選択還元する触媒、選択還元触媒)コンバータなどがある。そして、DPFは、主に排ガス中のススを含む粒子状物質(パティキュレートマター Particulate Matter(PM))を捕集し、粒子状物質が大気中に放出されることを防止している。SCR触媒コンバータは、その上流側に配置された尿素噴射器から噴射された尿素が分解して生成するアンモニア(NH)を用いて排ガス中のNOを還元している。
【0003】
上記DPFには、通常、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を酸化除去するなどの目的のために貴金属を含む触媒が担持されている。つまり、DPFでは、内部に溜まったススを燃焼除去すること(燃焼再生処理)が行われている。このとき、上記触媒によって、ススの燃焼を促進している。また、上記触媒によって、ススの燃焼時においてススが分解して生じる一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を酸化除去している。
【0004】
尿素SCRシステムに関する出願として、例えば、特許文献1が知られている。SCR触媒コンバータにてNOをNとHOに分解するには、SCR触媒コンバータに流入するNOとNOとの比率が1:1であることが反応速度の観点から好ましい。しかしながら、SCR触媒コンバータの上流に位置するDPF(DOC(Diesel Oxidation Catalyst:ディーゼル酸化触媒)+CSF(Catalyzed Soot Filter:キャタライズド・スート・フィルタ)において、PM燃焼にNOが消費され、DPFから排出されるのは、NOがNOに比べてかなり多いのが現状である。したがって、NO浄化効率が良くない。
【0005】
そこで、SCR触媒コンバータに流入するNOとNOとの比率を1:1に近づける技術が求められている。
【0006】
NOとNOとの比率を1:1に近づけるため、CSFの後段にPt等の貴金属触媒を備えることにより、NOの一部を酸化してNOとすることが考えられる。しかしながら、貴金属触媒は、コストアップの要因となりやすい。また、貴金属触媒は、酸化力が強いため、NOからNOへと変化させる量を調整することが難しい。
【0007】
排ガス浄化システム全体に対する出願ではあるが、特許文献2には、SCR触媒コンバータの前段の酸化触媒にCoO、MnO、ZrOを用いることが開示されている。
【0008】
また、特許文献3,4には、酸化物触媒を用いた触媒担持ハニカムが開示されている。さらに特許文献5には、窒素酸化物を浄化する触媒を有する排ガス浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−100699号公報
【特許文献2】特開平5−195756号公報
【特許文献3】特開2014−57951号公報
【特許文献4】特開2008−302355号公報
【特許文献5】特開2006−346605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2では、CoOは800℃以上でないと安定でないため低温時の排ガス中での安定性に懸念がある。またMnOは、550℃以上でMnへ分解するため高温時の排ガス中での安定性に懸念がある。
【0011】
特許文献3は、ススの燃焼作用を高め、セル壁に経時的に蓄積するスス量を少なく抑えることを目的とする。このため、触媒が細かく、SCR触媒コンバータにおけるNOとNOとの反応を促進させるためには、十分に機能しない。触媒が細かいため、焼結が進みやすく耐久性に問題がある。
【0012】
特許文献4は、低い圧力損失と高いPMの捕集効率とを両立させるために、気孔率が非常に高く、強度に問題がある。
【0013】
特許文献5は、触媒の担持量が多く、NOxを還元して浄化する技術である。
【0014】
そこで、SCR触媒コンバータにおけるNOとNOとの反応を促進させるために、これらのNOの一部をNOとするための安価で容易な技術が求められている。本発明の課題は、排ガスを浄化するための排ガス浄化フィルタとして用いることができるハニカム構造体を提供することにある。特に、SCR触媒コンバータの上流に配置して、CSFとして使用することができ、NOの一部を適度にNOとすることができるハニカム構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明によれば、以下のハニカム構造体が提供される。
【0016】
[1] 多数の細孔を有する多孔質の隔壁を有し、前記隔壁によって排ガスの流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造部と、前記複数のセルの排ガスの流入側となる一方の開口端部と排ガスの流出側となる他方の開口端部とを互い違いに目封止する目封止部と、を備え、前記複数のセルは、前記流入側の前記開口端部が開口した流入セルと、前記流出側の前記開口端部が開口した流出セルとから構成され、前記隔壁の気孔率は、70%以下であり、前記隔壁の前記流出セル側に、NOガスを酸化する少なくともFeとMnとを含有する遷移金属酸化物の酸化触媒、またはCeOに担持されたNOガスを酸化する少なくともFeとMnとを含有する遷移金属酸化物の酸化触媒が担持され、前記酸化触媒の触媒担持量が5.0g/L以上50g/L以下であるハニカム構造体。
【0017】
[2] FeとMnとを含有する前記遷移金属酸化物は、FeとMnのモル比率の合計を1とした場合にMnのモル比率が0.1以上である前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0018】
[3] FeとMnとを含有する前記遷移金属酸化物の酸化触媒はCeOに担持されたFe−Mn−O/CeOである前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体。
【0019】
[4] 前記隔壁の厚さ方向において、厚さの1/2より前記流出セル側に60%以上の前記遷移金属酸化物が担持されている前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0020】
本発明のハニカム構造体は、複数のセルの排ガスの流入側となる一方の開口端部と排ガスの流出側となる他方の開口端部とを互い違いに目封止する目封止部を備えている。そして、ハニカム構造体は、排ガスが流入する流入セルと、隔壁を通過後に排ガスが流出する流出セルから構成されている。隔壁の流出セル側に、NOガスを酸化する少なくともFeとMnとを含有する遷移金属酸化物の酸化触媒、またはCeOに担持されたNOガスを酸化する少なくともFeとMnとを含有する酸化触媒が担持されている。そして酸化触媒の触媒担持量が5.0g/L以上50g/L以下である。これにより、下流に配置されるSCR触媒コンバータに流入するNOとNOとのバランスがよくなり、NO、NO、NHの反応が効率よく行われる。つまり、排ガスの浄化効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
図2】ハニカム構造体のセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
図3A】ハニカム構造体のセルの延びる方向に平行な断面の一部を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
図3B】ハニカム構造体のセルの延びる方向に平行な断面の一部を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
図4】CeOに担持された遷移金属酸化物を模式的に示す模式図である。
図5】排ガス浄化システムを模式的に示す模式図である。
図6】排ガス浄化システムにおける反応を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0023】
[1]ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一実施形態を、図1、及び図2に示す。図1は、ハニカム構造体1を模式的に示す斜視図である。図2は、ハニカム構造体1のセル3の延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。ハニカム構造体1は、多数の細孔を有する多孔質の隔壁4を有し、隔壁4によって排ガスの流路となる複数のセル3が区画形成されたハニカム構造部10と、複数のセル3の排ガスの流入側となる一方の開口端部と排ガスの流出側となる他方の開口端部とを互い違いに目封止する目封止部8と、を備える。複数のセル3は、流入側の開口端部が開口した流入セル3aと、流出側の開口端部が開口した流出セル3bとから構成されている。目封止部8は、所定のセル3の流入端面2a側に配設された流入側目封止部8aと、残余のセル3の流出端面2b側に配設された流出側目封止部8bを含む。
【0024】
図3A、及び図3Bに、図2の領域Aの拡大図を示す。図3A、及び図3Bに示すように、隔壁4の流出セル3b側に、NOガスを酸化する少なくともFeとMnとを含有する遷移金属酸化物5aの酸化触媒5、またはCeOに担持されたNOガスを酸化する少なくともFeとMnとを含有する遷移金属酸化物5aの酸化触媒5が担持されている。酸化触媒の担持量は、5.0g/L以上50g/L以下である。酸化触媒5の粒子径は、1μmより大きく50.0μmより小さいことが好ましい。隔壁4の気孔率は、70%以下である。ハニカム構造体1は、排ガス浄化フィルタとして用いることができ、ハニカム構造体1に流入した排ガスに含まれるNOは、NOに酸化される。ハニカム構造体1は、NO変換率が250℃において3.0%より大きく35%より小さいことが好ましい。NO変換率は、NOがNOに変換される割合を示す。NO変換率がこの範囲であると、後段のSCR触媒コンバータ70(図5参照)に流入した排ガスを効率よく浄化することができる。
【0025】
隔壁4に担持される遷移金属酸化物5aは、少なくともFeとMnとを含有する。FeとMnとを含有する遷移金属酸化物としては、具体的には、FeMnOや、Mnを固溶したFe、Feを固溶したMnが挙げられる。これらの少なくともFeとMnとを含有する遷移金属酸化物5aは、NOをNOへ適度に酸化することができる。したがって、担持する触媒の量の調整が容易である。特に、Fe、Mnは、200〜800℃で安定な物質であり、安定性に懸念がない。FeとMnとを含有する遷移金属酸化物は、FeとMnのモル比率の合計を1とした場合にMnのモル比率が0.1以上であることが好ましい。この範囲とすることにより、NO変換率を向上させることができる。
【0026】
CeOに担持された少なくともFeとMnとを含有する遷移金属酸化物5aの酸化触媒5は、Fe−Mn−O/CeOであることが好ましい。Fe−Mn−O/CeOは、図4に示すように、CeOに、Fe−Mn−Oが担持されている酸化触媒5である。Fe−Mn−Oは、FeとMnとを含む複合酸化物であり、Fe:Mnが9:1〜2:8の酸化物で結晶構造がヘマタイト型のもの(Mnを固溶したFe)、ビクスバイト型のもの(Feを固溶したMn)、またはFeMnOが好ましい。Fe−Mn−Oは、1000℃以上まで材料的に安定であるため、耐熱性が高い。また、難焼結性材料のため、焼結しにくく失活しにくい。
【0027】
酸化触媒の粒子径は、1μmより大きく50.0μmより小さいことが好ましい。より好ましくは、2μmより大きく30.0μmより小さく、さらに好ましくは、3μmより大きく15.0μmより小さい。本明細書において、粒子径は、以下のようにして求めたものである。まず、SEMによって、1000倍視野の画像(原料の画像)を3視野観察する。各視野の観察においては、それぞれの視野に含まれている全ての粒子を観察の対象とする。そして、3視野における全ての粒子について、3視野分全体で平均した値を粒子径とする。
【0028】
また、酸化触媒の触媒担持量は、5.0g/L以上50g/L以下であり、より好ましくは、5.0g/L以上45g/L以下であり、さらに好ましくは、5.0g/L以上40g/L以下である。なお、本明細書における、触媒の担持量(g/L)は、ハニカム構造体単位容積(L)当たりに担持される触媒の量(g)を示す。
【0029】
隔壁4の厚さ方向において、厚さの1/2より流出セル3b側に60%以上の遷移金属酸化物5aが担持されていることが好ましい。図3Aは、隔壁4の厚さ方向において、厚さの1/2より流出セル3b側に60%以上の遷移金属が担持されているところを模式的に示している。さらに、図3Bは、流出セル3b側の隔壁4の表面及びその周辺に遷移金属が担持されているところを模式的に示している。本明細書において、遷移金属酸化物5aの担持量は、次のようにして測定したものである。まず、樹脂にて包含した本発明の多孔質材料をダイヤモンドスラリー等を用いて鏡面研磨したものを観察試料とする。この断面研磨面を100倍の倍率で観察し得た微構造写真中の全ての触媒粒子の個数を計測し、これを全触媒粒子数Nとする。次に隔壁の半分から出口側の触媒粒子の個数を計測し、これを隔壁厚さの1/2を占める触媒数Nとする。これらの測定値から隔壁4の厚さの1/2を占める触媒の割合をN/Nで算出する。
【0030】
このようなハニカム構造体1は、排ガスが隔壁4を通過すると、遷移金属酸化物5aによって、NOの一部が酸化されてNOに変化する。これにより、後段のSCR触媒コンバータ70に流入するNOとNOとのバランスが良好となり、排ガス浄化の化学反応が促進され、効率よく排ガスが浄化される。
【0031】
なお、隔壁4の厚さ方向の、流入セル3a側には、スートの燃焼を促進するための触媒を担持することが好ましい。スートの燃焼を促進するための触媒としては、貴金属を含む触媒が5〜30g/L程度の割合で担持されていることが好ましい。また、本明細書では流入セル3a側に担持されているとは、隔壁4の流入セル側表面から厚さの1/2までに、貴金属を含む触媒が全体の60%以上担持されていることをいう。
【0032】
本発明のハニカム構造体1を通過した排ガスは、ハニカム構造体1の下流に配置されるSCR触媒コンバータ70に供給される。このSCR触媒コンバータ70では、NO、NO及び、アンモニアによって排ガス中のNOを良好に浄化することができる。つまり、SCR触媒コンバータ70で、尿素噴射器60によって供給される尿素に由来するアンモニアによって排ガス中のNOを浄化している。
【0033】
[1−1]ハニカム構造部:
隔壁4の厚さは、50〜500μmであることが好ましく、100〜450μmであることが更に好ましく、150〜450μmであることが特に好ましい。隔壁4の厚さが下限値以上であると、強度が十分である。上限値以下であると、圧力損失を抑制することができる。
【0034】
隔壁4の気孔率は、25〜70%であることが好ましく、30〜70%であることが更に好ましく、34〜68%であることが特に好ましい。気孔率が下限値以上であると、圧力損失の増大を抑制できる。上限値以下であると、強度を十分なものとすることができる。隔壁4の気孔率は、まず、隔壁4の断面のSEM画像を1000倍以上の拡大率で撮影し、撮影したSEM画像について、固体部と空隙部の輝度の差により2値化処理を行う。次に、空隙部と固体部の面積比率を20箇所以上の視野で求め、面積比率の平均値を算出して気孔率とする。
【0035】
隔壁4の平均細孔径は、5〜40μmであることが好ましく、8〜30μmであることが更に好ましく、9〜25μmであることが特に好ましい。隔壁4の平均細孔径が下限値以上であると、圧力損失の増加を抑制することができる。上限値以下であると、ススの捕集効率が向上する。平均細孔径は、以下のようにして算出した値である。まず、隔壁4の断面のSEM画像を1000倍以上の拡大率で撮影し、撮影したSEM画像について、固体部と空隙部の輝度の差により2値化処理を行う。次に、空隙部内で固体部の輪郭に内接する円をランダムな位置で20箇所以上描き、その内接円の直径の平均値を算出して平均細孔径とする。
【0036】
ハニカム構造部10のセル密度は、8〜95個/cmであることが好ましく、15〜78個/cmであることが更に好ましい。セル密度が下限値以上であると、濾過面積を十分なものとし、ススの捕集効率を向上させることができる。上限値以下であると、ススが堆積していないときの圧力損失(初期圧力損失)を抑制することができる。
【0037】
ハニカム構造部10の材質については、セラミックを好適例として挙げることができる。強度、耐熱性、耐食性等の観点から、コージェライト、炭化珪素、アルミナ、ムライト、アルミニウムチタネート、窒化珪素、及び炭化珪素を骨材とし金属珪素を結合部形成原料として形成された珪素−炭化珪素系複合材料のうちのいずれかであることが好ましい。これらの材質の中でも、コージェライトが特に好ましい。
【0038】
[1−2]目封止部:
ハニカム構造体1は、流入側目封止部8aと流出側目封止部8bとを備えている。これらの目封止部8を備えることにより、排ガス中の粒子状物質を良好に捕集することができる。ハニカム構造体1のハニカム構造部10において、流出側目封止部8bが配設されたセル3は流入セル3aであり、流入側目封止部8aが配設されたセル3は流出セル3bである。
【0039】
ハニカム構造体1のセル3の延びる方向の長さは、30〜500mmとすることができる。
【0040】
本発明のハニカム構造体は、ハニカム構造部10の側面に外周壁7(図1参照)を更に備えていてもよい。
【0041】
ハニカム構造部10は、複数のハニカムセグメントからなる接着体であってもよい。即ち、ハニカム構造部10は、複数のハニカムセグメントの集合体と、これらのハニカムセグメントを互いに接着する接着材からなる接着部とを備えるものであってもよい。
【0042】
また、ハニカム構造体1は、流入セル3aと流出セル3bの、セル3の延びる方向に垂直な断面の形状を異ならせた形状(HAC構造:High Ash Capacity構造)としてもよい。例えば、断面が八角形と四角形を組み合わせ、セル断面積の大きな流入セル3aと断面積の小さな流出セル3bとを有するようにすると、粒子状物質等が堆積する流入セル3aの表面の表面積が大きくなるため、圧力損失の増大を抑制することが可能となる。
【0043】
[2]ハニカム構造体の製造方法:
本実施形態のハニカム構造体1の製造方法について説明する。まず、ハニカム構造体1を作製するための坏土を調整し、この坏土を成形して、ハニカム成形体を作製する(成形工程)。その後、流入端面における所定のセル3の開口部、及び流出端面における残余のセル3の開口部に目封止を施して、流入側目封止部及び流出側目封止部を形成する(目封止工程)。その後、交互に目封止部8が形成されたハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体を作製する(焼成工程)。このようにしてハニカム構造体1を作製することができる。
【0044】
なお、触媒は、目封止部8を形成する前に担持してもよく、目封止部8を形成した後に担持してもよい。以下、各製造工程について更に詳細に説明する。
【0045】
[2−1]成形工程:
成形工程は、セラミック原料を含有するセラミック成形原料からなる坏土を調製し、この坏土を成形して、流体の流路となる複数のセル3を区画形成するハニカム成形体を形成する工程である。
【0046】
このセラミック成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体1の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0047】
坏土を調製する方法としては、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を成形する方法としては、例えば、押出成形、射出成形等の従来公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。
【0048】
ハニカム成形体の形状は、例えば、中心軸に直交する断面が、円形、楕円形、レーストラック形状、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の柱状などを挙げることができる。
【0049】
得られたハニカム成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらの中でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
【0050】
[2−2]焼成工程:
ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前には、そのハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものであり、その方法は、特に限定されるものではなく、中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)を除去することができればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の条件としては、大気雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0051】
ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、適当な条件を選択すればよい。例えば、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜7時間が好ましい。
【0052】
[2−3]目封止工程:
目封止部8の形成方法については、所定のセル3の一方の開口部にマスクを配設し、残余のセル3の開口部に目封止スラリーを充填する方法を挙げることができる。なお、このような目封止部8の形成方法は、例えば、公知のハニカム構造体における目封止部8の作製方法に準じて行うことができる。
【0053】
目封止部8の原料としては、ハニカム構造部10の原料と同様の原料を用いることができる。このようにすると、ハニカム成形体と目封止部8の焼成時の膨張率を同じにすることができる。そのため、ハニカム構造体1の耐久性を向上させることができる。
【0054】
[2−4]触媒担持:
酸化触媒5を、ハニカム構造体1の隔壁4の流出セル3b側に担持する方法としては、例えば、酸化触媒5のスラリーが貯留された容器に、目封止部8が配設されたハニカム構造体1を、その流出端面2bから、浸漬させる。そして、流入セル3a側からスラリーを吸引する。目封止部8が配設される前であれば、ハニカム構造体1の端面に所定のセル3に対応する部分に孔が形成されたマスクを貼付して同様に行えばよい。
【0055】
なお、酸化触媒5のスラリーの粘度や、含有される酸化触媒5の粒径、また、スラリーを吸引する吸引力を調整することによって、隔壁4の表面だけでなく、隔壁4の細孔の内部にまで触媒を担持することができ、更に、担持する触媒の量を調節することもできる。また、スラリーの吸引を複数回行うことによって、担持する触媒の量を調節することもできる。
【0056】
[3]排ガス浄化システム:
図5は、DPF30、SCR触媒コンバータ70を備える排ガス浄化システム100を示す。DPF30は、さらにDOC40(上流側酸化触媒)、CSF50を備える。本発明のハニカム構造体1は、CSF50として使用することができる。また、排ガス浄化システム100は、DPF30とSCR触媒コンバータ70との間に、尿素噴射器60を備える。
【0057】
SCR触媒コンバータ70は、CSF50(ハニカム構造体1)の下流側に配置され、SCR触媒が担持されたフィルタである。DOC40(上流側酸化触媒)は、CSF50(ハニカム構造体1)の上流側に配置され、酸化触媒が担持されたフィルタである。尿素噴射器60は、尿素を噴射可能な装置であり、ハニカム構造体1とSCR触媒コンバータ70との間に配置される。
【0058】
排ガス浄化システム100は、エンジンから排出される排ガスを浄化するものである。エンジンから排出された排ガスは、DPF30(DOC40、CSF50)を通過後、尿素とともにSCR触媒コンバータ70に流入し、浄化される。排ガス浄化システム100は、SCR触媒コンバータ70の下流に、アンモニアを酸化するための下流側酸化触媒80を備えても良い。図6を用いて、それぞれにおいて起こる反応を説明する。
【0059】
DOC40にNO、O、N図6のI)が流入すると、DOC40において、下記の反応が起こり、NOが生成される(図6のII)。
【0060】
2NO+O=2NO (式1)
SOF+O=CO,CO,HO (式2)
【0061】
なお、SOF(有機溶媒可溶性成分、Soluble Organic Fraction)は、PM(粒子状物質)に含まれるものである。
【0062】
DOC40(上流側酸化触媒)は、NOを酸化し、SOFを浄化する。DOC40は、公知のものを適宜採用することができる。上流側酸化触媒は、具体的には、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状のハニカム構造体と、このハニカム構造体の隔壁の表面に担持された酸化触媒とを備えている。
【0063】
CSF50(ハニカム構造体1)において、下記の反応が起こり、NOからNOが生成される(図6のIII)。
【0064】
C(スス)+2NO=CO+2NO (式3)
C(スス)+NO=CO+NO (式4)
C(スス)+1/2O+NO=CO+NO (式5)
【0065】
尿素噴射器60は、SCR触媒コンバータ70の上流において尿素を噴射して、SCR触媒コンバータ70に尿素から分解生成されたアンモニアを供給するものである。なお、尿素噴射器60は、所定量の尿素を噴射することができる従来公知の尿素噴射器を用いることができる。
【0066】
CSF50から排出されたガスと、尿素噴射器60から噴射された尿素とがSCR触媒コンバータ70に流入することにより、SCR触媒コンバータ70において、下記の反応が起こり、排ガスが浄化される(図6のIV)。
【0067】
4NO+4NH+O=4N+6HO (式6)
NO+NO+2NH=2N+3HO (式7)
6NO+8NH=7N+12HO (式8)
【0068】
SCR触媒コンバータ70は、尿素噴射器60から噴射される尿素が分解して生成されるアンモニアによってNOを浄化する。SCR触媒コンバータ70は、公知のものを採用することができる。SCR触媒コンバータ70は、具体的には、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状のハニカム構造体と、このハニカム構造体の隔壁の表面に担持されたSCR触媒とを備えている。
【0069】
式7に示されているように、NOとNOとが1:1で反応して、NやHOが生成される。したがって、SCR触媒コンバータ70に流入するNOとNOとが、1:1であることがSCR触媒コンバータ70における反応を効率よくするために必要である。
【0070】
本願のCSF50に用いられるハニカム構造体は、NOガスを酸化する少なくともFeとMnとを含有する遷移金属酸化物5aの酸化触媒5、またはCeOに担持されたNOガスを酸化する少なくともFeとMnとを含有する遷移金属酸化物5aの酸化触媒5が隔壁4の流出セル3b側に担持されている。したがって、CSF50から排出されるNOの一部をNOにすることができる(図6のIIIのNO→NO)。このため、SCR触媒コンバータ70に流入するNOとNOとのバランスがよくなり、NO、NO、NHの反応が効率よく行われる。
【0071】
図5に示す排ガス浄化システム100は、下流側酸化触媒80を更に備えている。下流側酸化触媒80は、SCR触媒コンバータ70の下流側に配置され、酸化触媒が担持されたハニカム構造体である。SCR触媒コンバータ70からアンモニアが大気中に排出されてしまうおそれがあり、下流側酸化触媒80を備えることにより、SCR触媒コンバータ70から排出されるアンモニアを酸化除去することができる。
【0072】
下流側酸化触媒80は、上流側酸化触媒と同様のものを用いることができる。具体的には、下流側酸化触媒80は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状のハニカム構造体と、このハニカム構造体の隔壁の表面に担持された酸化触媒とを備えている。
【0073】
上記構成により、本発明のハニカム構造体1を用いた排ガス浄化システム100は、NO、NO、NHの反応が効率よく行われ、排ガスの浄化効率が向上している。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
タルク、カオリン、アルミナを主原料とするコージェライト化原料に、造孔材、有機バインダ、及び水を加えて、成形原料を調製した。造孔材としては平均粒子径が20μmの中空樹脂粒子を用いた。尚、この平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。また、有機バインダとしては、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロースを用いた。各原料の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、造孔材15質量部、有機バインダ4質量部、水27質量部とした。
【0076】
次に、この成形原料をニーダーを用いて混練し、円柱状の坏土を作製した。そして、得られた円柱状の坏土を真空押出成形機を用いてハニカム形状に成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機で乾燥した後、更に熱風乾燥機で乾燥して、ハニカム乾燥体を得た。
【0077】
次いで、このハニカム乾燥体の各セル3の一方の開口端部に、目封止部8を形成した。目封止部8の形成は、開口端部に目封止部8が形成されたセル3と、開口端部に目封止部8が形成されていないセル3とによって、ハニカム乾燥体の各端面(流入端面及び流出端面)が、市松模様を呈するように行った。目封止部8の形成方法としては、まず、ハニカム乾燥体の端面にシートを貼り付け、このシートの、目封止部8を形成しようとするセル3に対応した位置に穴を開けた。続いて、このシートを貼り付けたままの状態で、目封止部8の形成材料をスラリー化した目封止用スラリーに、ハニカム乾燥体の端面を浸漬し、シートに開けた孔を通じて、目封止しようとするセル3の開口端部内に目封止用スラリーを充填した。尚、目封止部8の形成材料には、前記成形原料と同じものを用いた。
【0078】
こうして、セル3の開口端部内に充填した目封止用スラリーを乾燥した後、このハニカム乾燥体を、大気雰囲気にて550℃で3時間かけて仮焼(脱脂)した。その後、約1400℃〜1500℃で7時間焼成して、ハニカム構造体を得た。このハニカム構造体は、直径が144mm、長さが152mmの円筒形で、セル形状が正方形、セル密度が47セル/cm、隔壁全体の厚さ(T)が300μm、隔壁全体の気孔率が41.0%、隔壁全体の平均細孔径が20μmであった。
【0079】
続いて、このハニカム構造体の流出側隔壁表面に、少なくともFeとMnとを含有する遷移金属酸化物5aの酸化触媒5(一部のMnを固溶したFeと非晶質相)を担持させた。具体的な担持方法としては、まず、遷移金属酸化物5aの酸化触媒5を含む触媒スラリーを調製した。触媒スラリーの分散剤としては、水を用いた。水の量は、スラリーの粘度が7mPa・sに調節した。この触媒スラリーを、ハニカム構造体1の流出セル3b内に導入し、ハニカム構造体1の流入端面側から吸引することにより、流出セル3b側の隔壁4にコートした。その後、このハニカム構造体1を熱風乾燥機で乾燥して、遷移金属酸化物5aの酸化触媒5が担持された実施例1のハニカム構造体1を得た。
【0080】
(実施例2〜7、比較例1〜4)
実施例2〜7、比較例1〜4についても、実施例1と同様にして、遷移金属酸化物5aの酸化触媒5が担持されたハニカム構造体1を得た。詳細は、表1に示す。なお、比較例3は、酸化触媒5の代わりにPtを用いた。
【0081】
(1)基材の開気孔率、平均細孔径
本明細書において、開気孔率は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)による全細孔容積(単位:cm/g)とアルキメデス法により測定した見掛け密度(単位:g/cm)から、算出した値である。開気孔率を算出する際には、「気孔率[%]=全細孔容積/{(1/見掛け密度)+全細孔容積}×100」という式を用いた。平均細孔径は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)で測定した値である。
【0082】
(2)触媒の結晶相
結晶相は次のようにして同定した。X線回折装置を用いてX線回折パターンを得た。X線回折装置としては、回転対陰極型X線回折装置(理学電機製、RINT)を用いた。X線回折測定の条件は、CuKα線源、50kV、300mA、2θ=10〜60°とした。X線回折データの解析は、MDI社製の「X線データ解析ソフトJADE7」を用いて結晶相を同定した。
【0083】
実施例1は、一部のMnを固溶したFeと非晶質相であった。実施例2は、FeMnOと、Mnを固溶したFe((Fe,Mn)と表記)と、Feを固溶したMn((Mn,Fe)と表記)であった。実施例3は、FeMnO、実施例4は、FeMnOであった。実施例5は、Mnを固溶したFeであった。実施例6は、FeMnOと、Mnを固溶したFeと、Feを固溶したMnであった。実施例7は、FeMnOであった。一方、比較例1〜4は、表1に記載の通りであった。
【0084】
(3)触媒粒子径
触媒粒子径は、次のようにして測定した。樹脂にて包含した本発明の多孔質材料をダイヤモンドスラリー等を用いて鏡面研磨したものを観察試料とした。この断面研磨面を1000倍の倍率で観察し得た微構造写真中の全ての触媒粒子を測定した。これを3視野分を行いその平均値を算出した。この平均値を触媒粒子径とした。
【0085】
(4)隔壁厚さの1/2を占める触媒の割合
隔壁厚さの1/2を占める触媒の割合は、次のようにして測定した。樹脂にて包含した本発明の多孔質材料をダイヤモンドスラリー等を用いて鏡面研磨したものを観察試料とし、この断面研磨面を100倍の倍率で観察し得た微構造写真中の全ての触媒粒子の個数を計測し、これを全触媒粒子数Nとした。次に隔壁の半分から出口側の触媒粒子の個数を計測し、これを隔壁厚さの1/2を占める触媒数Nとした。これらの測定値から隔壁厚さの1/2を占める触媒の割合(N/N)を求めた。
【0086】
(5)耐熱試験
触媒を担持したハニカム構造体を、酸素10%、水蒸気10%、窒素80%の混合ガス中で750℃、16時間保持した。その後取り出したハニカム構造体を用いて、NO変換率を測定した。
【0087】
(6)NO変換率
上記によって作製されたハニカム構造体(実施例1〜7、比較例1〜4)をそれぞれ、直径25.4mm×長さ50.8mmの試料片に加工し、加工した外周を基材の共材でコートした。これを測定試料として自動車排ガス分析装置を用いて評価を行った。このとき、昇温炉の中の反応管に上記測定試料をセットし、250℃に保持した。一方、250℃のガス温度に調整されたNO(一酸化窒素):200ppm、O(酸素):10%の窒素バランスの混合ガスを作製し、反応管中にセットされた測定試料の中に導入した。このとき、測定試料から排出されたガス(排出ガス)を排気ガス測定装置(HORIBA製:MEXA−6000FT)を用いて分析し、それぞれの排出濃度(NO濃度、及びNO濃度)の測定を行った。測定結果に基づいて、NO変換率(1−(NO濃度/(NO濃度+NO濃度)))を算出した。
【0088】
【表1】
【0089】
触媒としてMnを含まない比較例1、触媒としてFeを含まない比較例2、触媒がPtである比較例3は、耐熱試験前に比べ耐熱試験後はNO変換率が大幅に悪化した。また、比較例4は、FeMnOが少なく、NO変換率が低かった。
【0090】
実施例1〜7については、NO変換率を適切な範囲内(3.0%より大きく、35%より小さい)にすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のハニカム構造体は、ディーゼルエンジン等の内燃機関、又は各種燃焼装置から排出される排ガスを浄化するための排ガス浄化フィルタとして用いることができ、特に、排ガス中に含まれるPMを捕集するための微粒子捕集フィルタとして使用できる。さらに具体的には、本発明のハニカム構造体は、SCR触媒コンバータの上流に配置して、CSFとして使用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1:ハニカム構造体、2:端面、2a:流入端面、2b:流出端面、3:セル、3a:流入セル、3b:流出セル、4:隔壁、5:酸化触媒、5a:遷移金属酸化物、7:外周壁、8:目封止部、8a:流入側目封止部、8b:流出側目封止部、10:ハニカム構造部、30:DPF、40:DOC(上流側酸化触媒)、50:CSF、60:尿素噴射器、70:SCR触媒コンバータ、80:下流側酸化触媒、100:排ガス浄化システム。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6