(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809944
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】コード用ゴム被覆装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/154 20190101AFI20201221BHJP
B29C 48/05 20190101ALI20201221BHJP
B29C 48/30 20190101ALI20201221BHJP
B29C 48/685 20190101ALI20201221BHJP
B29C 48/90 20190101ALI20201221BHJP
D07B 1/16 20060101ALI20201221BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20201221BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20201221BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
B29C48/154
B29C48/05
B29C48/30
B29C48/685
B29C48/90
D07B1/16
B29K21:00
B29K105:08
B29L30:00
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-52401(P2017-52401)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-154009(P2018-154009A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】浅図 真吾
【審査官】
山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−259831(JP,A)
【文献】
特開2012−184523(JP,A)
【文献】
特開平06−106595(JP,A)
【文献】
実公昭48−001355(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00−48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コード本体の周囲にラッピングワイヤーを螺旋状に巻き付けてなるコードをゴム被覆するコード用ゴム被覆装置であって、
未加硫ゴムが充填されると共に前記コードが通過するゴム被覆ヘッドと、該ゴム被覆ヘッドに前記コードを導入する入口側ダイスと、前記ゴム被覆ヘッドから前記コードを導出する出口側ダイスと、を備え、
前記入口側ダイスは、そのダイス孔を前記コードよりも大径に設定されると共に、前記ダイス孔の上流側開口の周縁部にテーパーが形成され、
前記テーパーは、前記コードが偏心してダイス孔の内面に接触しながら下流側に移動する際、前記テーパーの下流端よりも上流側に離れた部位に前記ラッピングワイヤーが接触するテーパー比に設定されると共に、ダイス孔の中心線に対する傾斜角がコードの上流側の撓み角よりも大きくなるテーパー比に設定されたことを特徴とするコード用ゴム被覆装置。
【請求項2】
前記テーパーは、前記コードが偏心してダイス孔の内面に接触しながら下流側に移動する際、前記テーパーの下流端へのコード本体の接触を回避するテーパー比に設定されたことを特徴とする請求項1に記載のコード用ゴム被覆装置。
【請求項3】
前記テーパーの上流側開口の周縁部にR加工がされたことを特徴とする請求項1又は2に記載のコード用ゴム被覆装置。
【請求項4】
入口側ダイス及び出口側ダイスに複数のダイス孔が形成された請求項1〜3のいずれかに記載のコード用ゴム被覆装置と、該コード用ゴム被覆装置でゴム被覆された複数のコードを狭圧して補強コード入りゴムシートを形成する狭圧ローラーと、を備えたことを特徴とするゴムシート製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ゴム被覆した複数のコードを狭圧してシート状に形成するゴムシート製造装置に装備し、コード本体の周囲にラッピングワイヤーを螺旋状に巻き付けてなるコードをゴム被覆するコード用ゴム被覆装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴムホースなどに設けられる補強コード層は、本体ゴムに補強コード入りゴムシートを積層することによって構成される。補強コード入りゴムシートは、例えば、それぞれをゴム被覆した複数のコードを狭圧して一体のシート状にすることによって形成することができ、この場合、コード用ゴム被覆装置を用いて各コードをゴム被覆する(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1のコード用ゴム被覆装置は、ゴム被覆ヘッドに、それぞれ複数のダイス孔を有する入口側ダイス及び出口側ダイスを装着した構造とされ、そのゴム被覆ヘッドに未加硫ゴムを充填して、複数のコードを通過させることにより、各コードをゴム被覆するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−160698号公報(段落番号0020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、補強コード層を構成するコードは、その曲げ剛性を十分に小さく抑えるよう、複数の素線からなる撚線とされており、各コードが長さ方向に強く圧縮されることにより、その撚りが解れるおそれがある。このようなコードの解れを規制すべく、コードの周囲にラッピングワイヤーを螺旋状に巻き付けることがあるが、これをコード用ゴム被覆装置でゴム被覆しようとすると、コードが振動などによって偏心した際、そのラッピングワイヤーが入口側ダイスの開口周縁に接触して切断するおそれがある。
【0006】
これに対し、
図13に示すように、入口側ダイス101の開口周縁に面取り102を形成して、コード本体103に巻き付けたラッピングワイヤー104が入口側ダイス101の開口周縁の角部に接触するのを阻止することも考えられるが、このような単なる面取り102を形成したとしても、その面取り102の下流端の角部105に小さい接触面積でラッピングワイヤー104が接触して切断するおそれがある。
【0007】
本発明は、ラッピングワイヤーを巻き付けたコードをそのラッピングワイヤーを切断することなくゴム被覆することのできるコード用ゴム被覆装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るコード用ゴム被覆装置は、コード本体の周囲にラッピングワイヤーを螺旋状に巻き付けてなるコードをゴム被覆するものであり、未加硫ゴムが充填されると共にコードが通過するゴム被覆ヘッドと、このゴム被覆ヘッドにコードを導入する入口側ダイスと、ゴム被覆ヘッドからコードを導出する出口側ダイスと、を備えたものである。さらに、入口側ダイスは、そのダイス孔をコードよりも大径に設定すると共に、ダイス孔の上流側開口の周縁部にテーパーを形成したものであり、テーパーは、コードが偏心してダイス孔の内面に接触しながら下流側に移動する際、このテーパーの下流端よりも上流側に離れた部位にラッピングワイヤーが接触するテーパー比に設定したものである。
【0009】
上記構成によれば、コードが偏心して下流側に移動する際、入口側ダイスの開口周縁部に形成したテーパーのうち、その下流端から上流側に離れた部位にラッピングワイヤーを接触させるので、ラッピングワイヤーが突然にテーパーの下流端の角部に小さい接触面積で衝撃的に接触して切断するのを防止することができる。
【0010】
ここで、テーパーの下流端から上流側に離れた部位にラッピングワイヤーを接触させるには、ダイス孔の径、コード本体の径、ラッピングワイヤーの径、ラッピングワイヤーの螺旋ピッチなどを勘案して、そのテーパーのテーパー比を適宜設定すればよいが、実用的な範囲としては、テーパー比を1/2以下に設定すればよい。
【0011】
また、テーパーを、コードが偏心してダイス孔の内面に接触しながら下流側に移動する際、このテーパーの下流端へのコード本体の接触を回避するテーパー比に設定するようにしてもよい。
【0012】
この構成によると、テーパーの下流端にコード本体が接触するのを回避するので、コードを偏心させる強い力が作用する場合であっても、ラッピングワイヤーを上流側の早い段階で緩やかにテーパーに接触させることができ、ラッピングワイヤーが突然にテーパーに強く衝撃的に接触して切断するのを防止することができる。
【0013】
つまり、ダイス孔の一般部位においては、あるいは、ダイス孔のテーパー付近においても、ある程普度以下のテーパー比に設定する場合には、偏心したコードは、コード本体よりも径方向に突出するラッピングワイヤーがダイス孔の内面に接触することによって、長さに直交する方向の位置が安定する。
【0014】
一方、ある程普度以上のテーパー比に設定する場合、ダイス孔のテーパー付近においては、テーパーの下流端が内向きに突出してコード本体に接触し、この接触によってコードが安定する。この場合、コードを偏心させる強い力が作用していたとしても、ラッピングワイヤーは、テーパーから離れた状態となり、その後、突然にテーパーに強く衝撃的に接触して切断するおそれがある。これに対し、テーパーの下流端にコード本体が接触するのを回避することにより、ラッピングワイヤーを上流側の早い段階で緩やかにテーパーに接触させて、その切断を防止することができる。
【0015】
ここで、テーパーの下流端にコード本体が接触するのを回避するには、ダイス孔の径、コード本体の径、ラッピングワイヤーの径、ラッピングワイヤーの螺旋ピッチなどを勘案して、そのテーパーのテーパー比を適宜設定すればよいが、実用的な範囲としては、テーパー比を1/4以下に設定すればよい。
【0016】
上記構成に加えて、テーパーを、ダイス孔の中心線に対する傾斜角がコードの上流側の撓み角よりも大きくなるテーパー比に設定するように
する。
【0017】
この構成によると、振動などによって入口側ダイスよりも上流側のコードに撓みが生じるとしても、その撓み角よりもテーパーの傾斜角を大きくするので、そのラッピングワイヤーがテーパーの開口周縁に接触するのを防止することができ、その接触によるラッピングワイヤーの切断を防止することができる。ここで、テーパーの傾斜角をコードの上流側の撓み角よりも大きくするには、入口側ダイスよりも上流側におけるコードの長さや張力などを勘案して、そのテーパーのテーパー比を適宜設定すればよいが、実用的な範囲としては、テーパー比を1/6以上に設定すればよい。
【0018】
また、テーパーの上流側開口の周縁部にR加工をするようにしてもよい。この構成によると、振動などによって入口側ダイスよりも上流側のコードが一時的に大きく撓んで、ラッピングワイヤーがテーパーの開口周縁に接触したとしても、その接触によるラッピングワイヤーの切断を防止することができる。
【0019】
また、本発明は、入口側ダイス及び出口側ダイスに複数のダイス孔が形成された上記のコード用ゴム被覆装置と、このコード用ゴム被覆装置でゴム被覆された複数のコードを狭圧して補強コード入りゴムシートを形成する狭圧ローラーと、を備えたゴムシート製造装置を提供する。この構成によると、上記のコード用ゴム被覆装置の構成を採用することによる効果と同じ効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によると、コードが偏心したとき、入口側ダイスの開口周縁のテーパーのうち、その下流端から上流側に離れた部位にラッピングワイヤーを接触させるようにしている。これにより、ラッピングワイヤーが突然にテーパーの下流端の角部に小さい接触面積で衝撃的に接触して切断するのを防止することができ、ラッピングワイヤーを巻き付けたコードをそのラッピングワイヤーを切断することなくゴム被覆することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るコード用ゴム被覆装置のゴム被覆ヘッドの横断面図
【
図2】上半分はゴム被覆ヘッドの縦断面図で、下半分はゴム被覆ヘッドの正面図
【
図9】入口側ダイスの内部で偏心するコードを示す図
【
図10】
図9のコードについて、コードの長さ方向を横軸とし、ダイス孔の径方向におけるラッピングワイヤーの位置を示す図
【
図11】テーパーの下流端付近にラッピングワイヤーが接触する状態について、
図10に入口側ダイスの内面を図示した図
【
図12】テーパーの下流端にコード本体が接触する限界状態について、
図10に入口側ダイスの内面を図示した図
【
図13】開口周縁に面取りを有する入口側ダイスを通過するコードの側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るコード用ゴム被覆装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0023】
図1〜
図6に示すように、コード用ゴム被覆装置1は、コード本体2の周囲にラッピングワイヤー3を螺旋状に巻き付けてなるコード4をゴム被覆するためのものであり、例えば、その下流側に、ゴム被覆した複数のコードを狭圧して補強コード入りゴムシートを形成する狭圧ローラーを装備することによって、ゴムシート製造装置を構成する。
【0024】
さらに、コード用ゴム被覆装置1は、未加硫ゴム5を充填した状態でコード4を通過させてゴム被覆するゴム被覆ヘッド6と、このゴム被覆ヘッド6にコード4を導入する入口側ダイス7と、ゴム被覆ヘッド6からコード4を導出する出口側ダイス8と、を備え、その入口側ダイス7及び出口側ダイス8に複数のダイス孔9、10が形成されたものであり、ダイス孔9、10がコード4よりも大径に設定されると共に、入口側ダイス7のダイス孔9の上流側開口の周縁部にテーパー11が形成されたものである。
【0025】
ゴム被覆ヘッド6は、例えば鋼製で、中央穴12を有する略直方体とされ、その一端を押出機13に取り付けられて、この押出機13が供給する未加硫ゴム5を中央穴12に充填するようになっている。ゴム被覆ヘッド6の正面及び背面には、中央穴12に通じる長方形の開口14、15が形成され、それぞれの開口14、15に、入口側ダイス7及び出口側ダイス8のダイス本体16、17が嵌合している。なお、ゴム被覆ヘッド6の上下には、温水循環用配管18が設けられ、ゴム被覆ヘッド6の上下の空間19で温水を循環させることにより、内部の未加硫ゴム5が所定の温度に維持される。
【0026】
入口側ダイス7は、例えば鋼製で、複数のダイス孔9を有するダイス本体16を長方形の取付板20の中央から一面側に突出させると共に、取付板20のうちのダイス本体16の他面側部分に長方形の凹部21を形成した構造とされる。この入口側ダイス7は、ダイス本体16をゴム被覆ヘッド6の開口14に嵌合させると共に、凹部21を露出させる中央穴22を有する補強板23で覆ってボルト締結することにより、ゴム被覆ヘッド6に装着される。
【0027】
出口側ダイス8は、例えば鋼製で、複数のダイス孔10を有するダイス本体17を長方形の取付板24の中央から一面側に突出させると共に、取付板24のうちのダイス本体17の他面側部分に長方形の凹部25を形成した構造とされる。この出口側ダイス8は、ダイス本体17をゴム被覆ヘッド6の開口15に嵌合させると共に、凹部25を露出させる中央穴26を有する補強板27で覆ってボルト締結することにより、ゴム被覆ヘッド6に装着される。
【0028】
ダイス孔9、10は、ダイス本体16、17の中央に二段かつ千鳥配置で形成され、単位幅当たりに十分な数のダイス孔9、10が配置されている。ダイス孔9、10を千鳥配置にすることにより、例えば、孔径が2.2mmのダイス孔9、10を3.1mm以下のピッチで配置することもできる。
【0029】
ダイス孔9、10のうち、入口側ダイス7のダイス孔9は、テーパー11によって上流側開口の径(D1)が一般部の孔径(d1)よりも大きく設定され、さらに、そのテーパー11の外縁部に半径(R)でR加工がされている。なお、ダイス孔9は、例えば、その一般部、テーパー11及びR部を専用キリによって一工程で形成される。また、出口側ダイス8のダイス孔10は、ゴム被覆したコード4を導き出す分、ゴム被覆する前のコード4を導き入れる入口側ダイス7のダイス孔9よりも、その孔径を大きく設定される。
【0030】
図7に示すように、コード用ゴム被覆装置1でゴム被覆するコード4は、例えばスチールコードとされ、そのコード本体2を複数の素線28からなる径(d2)の撚線とされ、その周囲に径(d3)のラッピングワイヤー3を螺旋ピッチ(P)で螺旋状に巻き付けて構成される。ここで、ラッピングワイヤー3を含むコード4の径(D2)は、D2=d2+d3×2で表され、ダイス孔9の一般部の孔径(d1)よりも小さく設定される。
【0031】
例えば、コード4の径(D2)を1.2〜1.6mmとし、1インチ(25.4mm)当たりの打ち込み本数を15本以下として、シート厚さが2.5mm以下のゴムシートを製造する場合、ダイス孔9、10の孔径をコード4の径(D2)の1.25〜1.6倍の大きさに設定する。
【0032】
図8に示すように、コード4は、入口側ダイス7よりも上流側における振動や、ゴム被覆ヘッド6の内部における未加硫ゴム5の流動によって偏心した際、ダイス孔9の内面にラッピングワイヤー3又はコード本体2が接触することにより、コード長さに直交する方向の位置が安定する。
【0033】
さらに、コード4は、その供給装置から入口側ダイス7よりも上流側に張り渡された部位が振動して撓んだ際に、コード本体2よりも突出するラッピングワイヤー3が上流側開口の周縁部に引っ掛かって切断するのをテーパー11によって防止される。
【0034】
テーパー11は、ダイス孔9の中心線に対する傾斜角(a1)がコードの上流側における撓み角(a2)よりも大きくなるよう、そのテーパー比を例えば1/6以上に設定され、開口周縁へのラッピングワイヤー3の引っ掛かりを防止している。また、テーパー11は、コード4がダイス孔9の内面に接触しながら下流側に移動する際、テーパー11の下流端29よりも上流側に離れた部位にラッピングワイヤー3が接触するよう、そのテーパー比を例えば1/2以下に設定され、さらに、テーパー11の下流端29へのコード本体2の接触を回避するよう、そのテーパー比を例えば1/4以下に設定されている。
【0035】
ここで、
図9を用いて、コード4を偏心させてコード本体2をダイス孔9に仮想的に内接させた状態について、コード4のコード本体2及びラッピングワイヤー3とダイス孔9及びテーパー11との位置関係を説明する。
【0036】
図9に示すように、テーパー11の外縁30がダイス孔9(中心:O1)よりも大径で、ダイス孔9がコード本体2及びコード4(中心:O2)よりも大径で、コード4(すなわち、ラッピングワイヤー3の外縁31)がコード本体2よりも大径であり(D1>d1>D2>d2)、テーパー11の深さ((D1−d1)/2)がラッピングワイヤー3の径(d3)よりも大きく設定されている((D1−d1)/2>d3)。
【0037】
コード本体2を偏心させてダイス孔9に仮想的に内接させると、ラッピングワイヤー3の外縁31の一部がダイス孔9よりも仮想的に突出する。ダイス孔9の径方向における外縁31の仮想の突出長(h)は、コード本体2の中心(O2)から見て偏心方向を基準(θ=0)とする中心角(θ)に対応して変化し、偏心方向(θ=0)において、最大で、ラッピングワイヤー3の径(d3)に等しく(h=d3)、テーパー11の深さよりも小さい(h<(D1−d1)/2)。また、偏心方向の前後の範囲(θ1>θ>−θ1)でプラスの突出長(h>0)になり、残りの範囲(θ1<θ、θ<−θ1)でマイナスの突出長(h<0)となる。
【0038】
ここで、ラッピングワイヤー3は、コード本体2の周りに螺旋状に巻き付けられたものであり、中心角(θ)の変化に対応して、コード4の長さ方向における位置が変化するようになっており、中心角(θ)の360°が螺旋ピッチ(P)に対応する。
【0039】
図10に示すように、コード4の長さ方向の位置(中心角(θ))を横軸として、ラッピングワイヤー3の仮想の突出長(h)を示すと、偏心方向(θ=0)で山の高さが最大(h=d3)となる谷の深い波形の形状になる。すなわち、ダイス孔9にコード本体2を仮想的に内接させると、ラッピングワイヤー3は、中心角の360°に対応する螺旋ピッチ(P)のうち、偏心方向の前後L1の範囲(θ1>θ>−θ1)で、ダイス孔9の内面よりも外側に仮想的に突出し、残りのL2の範囲(θ1<θ、θ<−θ1)で、ダイス孔9の内面よりも内側に位置する。
【0040】
図11は、
図10にダイス孔9の内面を追加で図示したものであり、上流側のラッピングワイヤー3の仮想の突出長(h)がh=0になる位置(θ=θ1)で、コード本体2がテーパー11の下流端29に現実的に接触し、下流側のラッピングワイヤー3の仮想の突出長(h)が最大(h=d3)になる位置(θ=360°)で、ラッピングワイヤー3がダイス孔9の内面に現実的に接触するよう、ダイス孔9の内面を傾斜させている。さらに、上流側のラッピングワイヤー3の仮想の突出長(h)が最大(h=d3)になる位置(θ=0)で、ラッピングワイヤー3がテーパー11に接触するよう、そのテーパー比を例えば1/2に設定している。
【0041】
図11に示す状態よりも、テーパー比を小さくすることにより(例えば1/2以下)、コード4が下流側に移動する際、テーパー11の下流端29よりも上流側に離れた部位にラッピングワイヤー3が接触することになり、ラッピングワイヤー3がテーパー11に十分に接触することなく、突然に下流端29に接触するということがない。なお、突出長(h)は、L1の範囲(θ1>θ>0)で上に凸の曲線を示すので、直線状のテーパー11に接触させることにより、多少の位置ずれが生じるが、実用上は誤差の範囲である。
【0042】
図12は、
図10にダイス孔9の内面を追加で図示したものであり、ラッピングワイヤー3の仮想の突出長(h)がマイナス(h<0)になるL2の範囲の中央で、コード本体2がテーパー11の下流端29に現実的に接触し、下流側のラッピングワイヤー3の仮想の突出長(h)が最大(h=d3)になる位置(θ=360°)で、ラッピングワイヤー3がダイス孔9の内面に現実的に接触するよう、ダイス孔9の内面を傾斜させている。さらに、上流側のラッピングワイヤー3の仮想の突出長(h)が最大(h=d3)になる位置(θ=0)で、ラッピングワイヤー3がテーパー11に接触するよう、そのテーパー比を例えば1/4に設定している。
【0043】
図12に示す状態よりも、テーパー比を小さくすることにより(例えば1/4以下)、テーパー11の下流端29にコード本体2が接触するのを回避することになり、偏心方向に強い力を受けるコード4がそのコード本体2を下流端29で支持されるということがない。これにより、偏心方向に強い力を受けつつテーパー11から強制的に離されたラッピングワイヤー3が、突然にテーパー11に強い力で接触するということがない。
【0044】
上記構成によれば、ダイス孔9の中心線に対するテーパー11の傾斜角(a1)をコードの上流側における撓み角(a2)よりも大きくするので、ラッピングワイヤー3がテーパー11の開口周縁に引っ掛かって切断するのを防止することができる。また、テーパー11の下流端29よりも上流側に離れた部位にラッピングワイヤー3が接触するので、ラッピングワイヤー3が突然に下流端29に接触して切断するのを防止することができる。また、下流端29へのコード本体2の接触を回避するので、ラッピングワイヤー3が突然にテーパー11に強い力で接触して切断するのを防止することができる。
【0045】
ここで、具体的な数値を例示して説明する。まず、ダイス孔9の径(d1)を2.2mm、テーパー11の外縁30の径(D1)を2.8mm、コード本体2の径(d2)を1.22mm、ラッピングワイヤー3の外縁31の径(D2)を1.52mm、ラッピングワイヤー3の径(d3)を0.15mm、ラッピングワイヤー3の螺旋ピッチ(P)を5mmとする。この場合、
図9におけるθ1が58.2°となり、
図10におけるL1が0.808mmで、L2が3.384mmになる。
【0046】
図11において、ダイス孔9の内面の傾斜がd3/(L1+L2)=0.15/(0.808+3.384)=1/27.95で、テーパー11の傾斜がd3/L1=0.15/0.808=1/5.39であり、ダイス孔9に対するテーパー11の傾斜は、1/27.95+1/5.39=1/4.52と概算される。これにより、テーパー11のテーパー比は、1/4.52×2=1/2.26≒1/2となる。
【0047】
図12において、ダイス孔9の内面及びテーパー11の傾斜は、d3/(P/2)=0.15/(5/2)=1/16.66であり、ダイス孔9に対するテーパー11の傾斜は、1/16.66+1/16.66=1/8.33と概算される。これにより、テーパー11のテーパー比は、1/8.33×2=1/4.17≒1/4となる。
【0048】
以上の条件において、入口側ダイス7及び出口側ダイス8の孔数が164で、種々のテーパー比のコード用ゴム被覆装置1を用いて、2m/minの速度でコード4にゴム被覆し、ラッピングワイヤー3が切断するまでのコード4のゴム被覆長さを調べたところ、テーパー比が1/1で20m、1/2で75m、1/3で150m、1/7で450mであり、1/4、1/5及び1/6のテーパー比では、ゴム被覆長さが2500mに至るまでラッピングワイヤー3の切断は生じなかった。
【0049】
これにより、テーパー比を1/2以下にすると、テーパー比が1/1の場合よりも、ラッピングワイヤー3の切断が生じるまでのゴム被覆長さを4倍程度まで延ばすことができることがわかる。さらに、テーパー比を1/4〜1/6の範囲にすると、ラッピングワイヤー3の切断をほぼ防止することができることがわかる。
【0050】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、コード用ゴム被覆装置1は、入口側ダイス7及び出口側ダイス8に複数のダイス孔9、10を設けてゴムシート製造装置に装備するだけでなく、1本のコード4にゴム被覆して、ゴム製品に巻き付けるためのものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 コード用ゴム被覆装置
2 コード本体
3 ラッピングワイヤー
4 コード
5 未加硫ゴム
6 ゴム被覆ヘッド
7 入口側ダイス
8 出口側ダイス
9、10 ダイス孔
11 テーパー
12 中央穴
13 押出機
14、15 開口
16、17 ダイス本体
18 温水循環用配管
19 空間
20 取付板
21 凹部
22 中央穴
23 補強板
24 取付板
25 凹部
26 中央穴
27 補強板
28 素線
29 テーパーの下流端
30 テーパーの外縁
31 ラッピングワイヤーの外縁