特許第6809946号(P6809946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809946
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】車両用前照灯装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/675 20180101AFI20201221BHJP
   F21S 45/47 20180101ALI20201221BHJP
   F21V 29/505 20150101ALI20201221BHJP
   F21V 29/70 20150101ALI20201221BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20201221BHJP
   F21S 41/13 20180101ALI20201221BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20201221BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20201221BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20201221BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20201221BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20201221BHJP
【FI】
   F21S41/675
   F21S45/47
   F21V29/505
   F21V29/70
   F21V29/503
   F21S41/13
   G01S7/481 A
   F21W102:13
   F21Y101:00 100
   F21Y101:00 300
   F21Y115:10
   F21Y115:30
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-53406(P2017-53406)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-156862(P2018-156862A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】毛利 文彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 晋
(72)【発明者】
【氏名】山村 聡志
【審査官】 山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/033764(WO,A1)
【文献】 特開2015−174551(JP,A)
【文献】 特開2009−018726(JP,A)
【文献】 特開2015−064963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00 − 45/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方側の視界を確保するための可視光を照射する可視光源と、
障害物を検知する検知光を照射する検知光源と、
前記可視光源から照射された可視光を車両前方側へ向けて反射させる第1角度と前記検知光源から照射された検知光を車両前方側へ向けて反射させる前記第1角度とは異なる第2角度とを取り得るMEMSミラーと、
前記検知光が前記障害物に当たって反射された反射光を受光する受光素子と、
を備え
車両前後方向から見た正面視で、前記可視光源と前記受光素子とは、前記MEMSミラーを間に挟んで上下に配置され、前記受光素子は、前記MEMSミラーに照射されて反射された前記反射光を受光する車両用前照灯装置。
【請求項2】
車両前後方向から見た正面視で、前記可視光源と前記検知光源とは、前記MEMSミラーを間に挟んで上下に配置されている請求項1に記載の車両用前照灯装置。
【請求項3】
前記可視光源から照射された可視光を反射して前記MEMSミラーに照射する凹面反射鏡を備えた請求項1又は請求項2に記載の車両用前照灯装置。
【請求項4】
前記MEMSミラーに照射されて反射された前記反射光を反射して前記受光素子に照射する折返反射鏡を備えた請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用前照灯装置。
【請求項5】
前記折返反射鏡と前記受光素子との間に、該受光素子に照射する前記反射光を集光する集光レンズが配置されている請求項4に記載の車両用前照灯装置。
【請求項6】
前記可視光源、前記検知光源及び前記MEMSミラーは、単一のヒートシンクによって保持されている請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両用前照灯装置。
【請求項7】
前記MEMSミラーは、
前記可視光源から可視光が照射されているときには、通電されずに前記第1角度に配置され、
前記検知光源から検知光が照射されているときには、通電されて前記第2角度に配置される請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両用前照灯装置。
【請求項8】
前記MEMSミラーは、
前記可視光源から可視光が照射されているときには、該可視光を車両前方側へ向けて反射する必要がない遮光領域が、通電されて前記第2角度に配置される請求項7に記載の車両用前照灯装置。
【請求項9】
前記検知光源から検知光が照射されているときの照射時間は、人が認識できる時間よりも短くされている請求項7又は請求項8に記載の車両用前照灯装置。
【請求項10】
前記検知光源から検知光が照射されているときには、自動運転モード時が含まれる請求項7に記載の車両用前照灯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前方の障害物を検出する障害物検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、光軸方向を変更可能な灯具と、障害物検出手段によって検出された障害物及び車速検出手段で検出された車速に応じて灯具の照明光の光軸方向を変更する制御を行う制御部と、を有するヘッドランプ制御システムは、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−67294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、灯具を有するヘッドランプユニットに、その灯具の横に並べて、レーダー等の障害物検出手段を搭載する場合には、ヘッドランプユニットの車幅方向への大型化を招くおそれがある。また、その場合には、レーダー等の障害物検出手段が、車両の外装となる意匠面から外部へ露出する可能性があるため、車両の外観が損なわれるおそれもある。
【0005】
そこで、本発明は、ヘッドランプユニットの車幅方向への大型化を抑制でき、かつ車両の外観が損なわれるのも抑制できる車両用前照灯装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車両用前照灯装置は、車両前方側の視界を確保するための可視光を照射する可視光源と、障害物を検知する検知光を照射する検知光源と、前記可視光源から照射された可視光を車両前方側へ向けて反射させる第1角度と前記検知光源から照射された検知光を車両前方側へ向けて反射させる前記第1角度とは異なる第2角度とを取り得るMEMSミラーと、前記検知光が前記障害物に当たって反射された反射光を受光する受光素子と、を備え、車両前後方向から見た正面視で、前記可視光源と前記受光素子とは、前記MEMSミラーを間に挟んで上下に配置され、前記受光素子は、前記MEMSミラーに照射されて反射された前記反射光を受光する
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、第1角度に配置されたMEMSミラーが、車両前方側の視界を確保する可視光を車両前方側へ向けて反射して照射し、第1角度とは異なる第2角度で配置されたMEMSミラーが、障害物を検知する検知光を車両前方側へ向けて反射して照射する。したがって、ヘッドランプユニットに可視光源と検知光源とが横に並んで設けられ、それらから直接可視光及び検知光が照射される構成に比べて、ヘッドランプユニットの車幅方向への大型化が抑制され、かつ車両の外観が損なわれるのも抑制される。
【0008】
また、請求項2に記載の車両用前照灯装置は、請求項1に記載の車両用前照灯装置であって、車両前後方向から見た正面視で、前記可視光源と前記検知光源とは、前記MEMSミラーを間に挟んで上下に配置されている。
【0009】
ここで、例えば可視光源と検知光源とが、両方ともMEMSミラーの上側又は下側に配置されていると、第1角度と第2角度とに殆ど差が無くなるため、制御部の制御により、検知光源をオンにして検知光を照射しているときに、運転者が誤って可視光源をオンにしてしまうと、その可視光の少なくとも一部がMEMSミラーによって直ちに反射され、車両の前方側にその可視光が漏れて、対向車や先行車に眩しさを与えるような不具合が発生するおそれがある。
【0010】
しかしながら、請求項2に記載の発明によれば、可視光源と検知光源とが、MEMSミラーを間に挟んで上下に配置されているため、第1角度と第2角度とに比較的大きな差を付けることが可能となる。したがって、制御部の制御により、検知光源をオンにして検知光を照射しているときに、運転者が誤って可視光源をオンにしても、その可視光がMEMSミラーによって直ちに反射されることがなく、車両の前方側に可視光が漏れることがない。よって、対向車や先行車に眩しさを与えるような不具合の発生が抑制される。
【0011】
また、請求項3に記載の車両用前照灯装置は、請求項1又は請求項2に記載の車両用前照灯装置であって、前記可視光源から照射された可視光を反射して前記MEMSミラーに照射する凹面反射鏡を備えている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、可視光源から照射された可視光は、凹面反射鏡によって反射されてMEMSミラーに照射される。したがって、凹面反射鏡が設けられていない構成に比べて、MEMSミラーに照射する可視光が効率よく集光される。
【0013】
また、請求項4に記載の車両用前照灯装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用前照灯装置であって、前記MEMSミラーに照射されて反射された前記反射光を反射して前記受光素子に照射する折返反射鏡を備えている。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、反射光がMEMSミラーに照射されて反射された後、更に折返反射鏡によって反射されて受光素子に照射される。したがって、折返反射鏡が設けられていない構成に比べて、受光素子の配置スペースが良好に確保される。
【0015】
また、請求項5に記載の車両用前照灯装置は、請求項4に記載の車両用前照灯装置であって、前記折返反射鏡と前記受光素子との間に、該受光素子に照射する前記反射光を集光する集光レンズが配置されている。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、折返反射鏡と受光素子との間に、受光素子に照射する反射光を集光する集光レンズが配置されている。したがって、その集光レンズが設けられていない構成に比べて、受光素子に照射する反射光が効率よく集光される。
【0017】
また、請求項6に記載の車両用前照灯装置は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両用前照灯装置であって、前記可視光源、前記検知光源及び前記MEMSミラーは、単一のヒートシンクによって保持されている。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、視光源、検知光源及びMEMSミラーが、単一のヒートシンクによって保持されている。したがって、可視光源、検知光源及びMEMSミラーが、それぞれ独立したヒートシンクによって保持されている構成に比べて、可視光源、検知光源及びMEMSミラーの各々の位置合わせが容易となる。
【0019】
また、請求項7に記載の車両用前照灯装置は、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両用前照灯装置であって、前記MEMSミラーは、前記可視光源から可視光が照射されているときには、通電されずに前記第1角度に配置され、前記検知光源から検知光が照射されているときには、通電されて前記第2角度に配置される。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、MEMSミラーは、可視光源から可視光が照射されているときには、通電されずに第1角度に配置され、検知光源から検知光が照射されているときには、通電されて第2角度に配置される。つまり、夜間走行時には、可視光源から可視光が照射されるが、その可視光が照射されているときには、MEMSミラーに通電されない。したがって、夜間走行時において、車両に搭載されているバッテリの省電力化が図れる。また、昼間走行時には、可視光源がオフとされるので、MEMSミラーに通電し、検知光源から検知光が常に照射されるようにすれば、障害物に対する検知精度が向上される。
【0021】
また、請求項8に記載の車両用前照灯装置は、請求項7に記載の車両用前照灯装置であって、前記MEMSミラーは、前記可視光源から可視光が照射されているときには、該可視光を車両前方側へ向けて反射する必要がない遮光領域が、通電されて前記第2角度に配置される。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、MEMSミラーは、可視光源から可視光が照射されているときには、車両前方側へ向けて反射する必要がない遮光領域が、通電されて第2角度に配置される。つまり、車両前方側の視界を確保するために最低限必要な領域にのみ、MEMSミラーによって可視光が照射される。したがって、余計な可視光により、対向車や先行車に眩しさを与えるような不具合の発生が抑制される。
【0023】
また、請求項9に記載の車両用前照灯装置は、請求項7又は請求項8に記載の車両用前照灯装置であって、前記検知光源から検知光が照射されているときの照射時間は、人が認識できる時間よりも短くされている。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、人が認識できる時間よりも短い時間で検知光源から検知光が照射されている。したがって、夜間走行時において、人の目には、可視光源が消灯しているようには見えず、夜間走行時の安全性が確保される。なお、「人が認識できる時間」とは、10ms(100Hz)前後である。
【0025】
また、請求項10に記載の車両用前照灯装置は、請求項7に記載の車両用前照灯装置であって、前記検知光源から検知光が照射されているときには、自動運転モード時が含まれる。
【0026】
請求項10に記載の発明によれば、自動運転モード時には、可視光源が常にオフとされる。したがって、自動運転モードでの夜間走行時において、車両に搭載されているバッテリの省電力化が図れる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明によれば、ヘッドランプユニットの大型化を抑制することができ、かつ車両の外観が損なわれるのも抑制することができる。
【0028】
請求項2に係る発明によれば、対向車や先行車に眩しさを与えるような不具合の発生を抑制することができる。
【0029】
請求項3に係る発明によれば、MEMSミラーに照射する可視光を効率よく集光することができる。
【0030】
請求項4に係る発明によれば、受光素子の配置スペースを良好に確保することができる。
【0031】
請求項5に係る発明によれば、受光素子に照射する反射光を効率よく集光することができる。
【0032】
請求項6に係る発明によれば、可視光源、検知光源及びMEMSミラーの各々の位置合わせが容易にできる。
【0033】
請求項7に係る発明によれば、夜間走行時において、車両に搭載されているバッテリの省電力化を図ることができる。
【0034】
請求項8に係る発明によれば、余計な可視光により、対向車や先行車に眩しさを与えるような不具合の発生を抑制することができる。
【0035】
請求項9に係る発明によれば、夜間走行時の安全性を確保することができる。
【0036】
請求項10に係る発明によれば、自動運転モードでの夜間走行時において、車両に搭載されているバッテリの省電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本実施形態に係る車両用前照灯装置が搭載された車両を示す正面図である。
図2】本実施形態に係る車両用前照灯装置の構成を示す図1のX−X線矢視断面図である。
図3】(A)本実施形態に係る車両用前照灯装置の可視光源がオンのときの状態を示す説明図である。(B)本実施形態に係る車両用前照灯装置の検知光源がオンのときの状態を示す説明図である。
図4】(A)本実施形態に係る車両用前照灯装置の夜間走行時における可視光源、検知光源及びMEMSミラーのオン・オフの時間を示す表である。(B)本実施形態に係る車両用前照灯装置のMEMSミラーにおける遮光領域を示す模式図である。
図5】本実施形態に係る車両用前照灯装置の第1変形例を示す図2に相当する断面図である。
図6】本実施形態に係る車両用前照灯装置の第2変形例を示す図2に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを車両上方向、矢印FRを車両前方向、矢印RHを車両右方向とする。したがって、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車両上下方向の上下、車両前後方向の前後、車両左右方向(車幅方向)の左右を示すものとする。
【0039】
図1に示されるように、車両12には、車両12の前方側の視界を確保するための左右一対のヘッドランプユニット14が備えられている。すなわち、車両12の前端部における右側端部には、ヘッドランプユニット14Rが配置され、車両12の前端部における左側端部には、ヘッドランプユニット14Lが配置されており、ヘッドランプユニット14R、14Lは、車幅方向において左右対称に構成されている。
【0040】
したがって、本実施形態においては、右側のヘッドランプユニット14Rについて説明し、左側のヘッドランプユニット14Lについての説明は省略する。右側のヘッドランプユニット14Rは、車幅方向外側部分を構成するロービームユニット16と、車幅方向内側部分を構成するハイビームユニット18と、を含んで構成されている。
【0041】
ロービームユニット16は、車両12の前方側の路面におけるロービーム配光エリアに可視光を照射するように構成されている。そして、ハイビームユニット18は、ロービームユニット16によって照射されるロービーム配光エリアよりも上斜め前方側のハイビーム配光エリアに可視光を照射するようになっている。
【0042】
なお、ロービームユニット16とハイビームユニット18とは、ほぼ同じ構成になっているが、本実施形態においては、車両用前照灯装置10をハイビームユニット18に適用した場合を例に採る。したがって、以下においては、ハイビームユニット18について説明する。
【0043】
図2に示されるように、ハイビームユニット18は、後述する可視光源30等によって発生する熱を放熱する放熱部材として機能するヒートシンク20を有している。ヒートシンク20は、ハイビームユニット18のハウジング(図示省略)に固定されており、熱伝導率の高いアルミニウム合金により、車幅方向から見た側断面視で前方側が開放された略「U」字状をなすブロック状に形成されている。つまり、ヒートシンク20は、その上端部及び下端部が、中間部よりも前方側へ突出されている。
【0044】
ヒートシンク20の下端部であるアンダー部22の前面上側には、車幅方向から見た側面視で前方に行くに従って下方へ傾斜する傾斜面22Aが形成されている。そして、その傾斜面22Aに可視光源30が配置(固定)されている。可視光源30は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、ハロゲンランプ、ディスチャージランプ、半導体レーザ(LD:Laser Diode)等の複数の高輝度光源であり、制御部(図示省略)にも電気的に接続されている。つまり、運転者のスイッチ操作だけではなく、制御部の制御によっても可視光源30のオン・オフが実行される構成になっている。
【0045】
ヒートシンク20のアンダー部22の前方側には、可視光源30から照射された可視光を上斜め後方側へ反射する凹面反射鏡32が所定の傾斜角度で配置されている。凹面反射鏡32は、前方側へ凸に湾曲された板状に形成されており、その後面が凹曲面形状の反射面33とされている。なお、凹面反射鏡32及びヒートシンク20のアンダー部22は、車両12の前端部を構成するバンパカバー15(図1参照)によって前方側から覆われている。
【0046】
ヒートシンク20の中間部であるセンター部24には、凹面反射鏡32の反射面33によって上斜め後方側へ集光反射された可視光が照射されるMEMS(Micro Electro Mechanical system)ミラー50が配置されている。MEMSミラー50に照射された可視光は、前方側へ向けて反射されるようになっている。なお、MEMSミラー50は、後述する検知光源40から照射された赤外光も反射可能に構成されており、その具体的な構造については、後で詳述する。
【0047】
また、凹面反射鏡32の上側には、MEMSミラー50によって反射された可視光を透過させるレンズ36を保持する樹脂製のレンズ保持部34が一体的に設けられている。レンズ保持部34は、前後方向を光軸方向とした略筒状に形成されており、レンズ保持部34の下側の後端部が、凹面反射鏡32の上部前面に結合されている。そして、レンズ36がレンズ保持部34に保持されている。
【0048】
すなわち、レンズ36の光軸方向中途部には、径方向に張り出す張出部38が周方向に(全周に亘って)一体に形成されており、レンズ36は、前方側からレンズ保持部34に挿入され、その張出部38がレンズ保持部34の前端部に突き当たった状態で固定されている。これにより、レンズ36が、MEMSミラー50の前方側に光軸を一致させて配置される構成になっている。なお、レンズ36の前面36Aは、車幅方向から見た側面視で前方側へ凸となる湾曲面形状に形成されている。
【0049】
また、ヒートシンク20の上端部であるアッパー部26の前端下部には、折返反射鏡としてのハーフミラー42が所定の(下斜め後方側を向く)傾斜角度で配置(固定)されている。そして、ハーフミラー42の裏側(上斜め前方側)におけるアッパー部26には、凹部28が形成されており、その凹部28に検知光としての赤外光を照射する検知光源40が、ハーフミラー42と平行に(同じ傾斜角度で)配置(固定)されている。
【0050】
なお、検知光源40は、制御部に電気的に接続されている。つまり、制御部の制御によって検知光源40のオン・オフが実行される構成になっている。また、MEMSミラー50よりも上側となるセンター部24の上部には、ハーフミラー42で反射された赤外光を受光する受光素子44が配置(固定)されている。受光素子44も、制御部に電気的に接続されている。
【0051】
MEMSミラー50は、ミラー本体部54と、ミラー本体部54を支持する支持部52と、を含んで構成されている。支持部52は、略直方体形状に形成されており、ヒートシンク20のセンター部24の前面に固定されている。そして、ミラー本体部54が、支持部52の前面に支持されている。ミラー本体部54は、二次元状に配列された複数の微小可動ミラー(図示省略)によって構成されており、複数の微小可動ミラーは、半導体プロセスにより半導体基板上に形成されている。
【0052】
また、ミラー本体部54には、制御部が電気的に接続されており、制御部の制御によって各微小可動ミラーが駆動する構成になっている。詳細に説明すると、制御部の制御によって各微小可動ミラー(ミラー本体部54)が駆動しない(非通電とされて各微小可動ミラーの角度が変更されない)状態が、MEMSミラー50のオフ状態であり、各微小可動ミラー(ミラー本体部54)が第1角度を取るようになっている(図3(A)において、第1角度に配置された微小可動ミラーの1つを、微小可動ミラー55として誇張して示す)。
【0053】
この第1角度を各微小可動ミラー(ミラー本体部54)が取るときに、可視光源30から照射され、凹面反射鏡32によって集光反射された可視光が、MEMSミラー50(ミラー本体部54)に照射されて反射され、レンズ36を後方から前方へ透過して車両12の前方側へ照射されるようになっている。つまり、車両12の前方側におけるハイビーム配光エリアが可視光によって照射されるようになっている。
【0054】
一方、制御部の制御によって各微小可動ミラー(ミラー本体部54)が駆動する(通電されて各微小可動ミラーの角度が変更された)状態が、MEMSミラー50のオン状態であり、各微小可動ミラー(ミラー本体部54)が、第1角度とは異なる第2角度を取るようになっている(図3(B)において、第2角度に配置された微小可動ミラーの1つを、微小可動ミラー55として誇張して示す)。
【0055】
この第2角度を各微小可動ミラー(ミラー本体部54)が取るときに、検知光源40から照射され、ハーフミラー42を透過した赤外光が、MEMSミラー50(ミラー本体部54)に照射されて反射され、レンズ36を後方から前方へ透過して車両12の前方側へ照射されるようになっている。
【0056】
そして、レンズ36を後方から前方へ透過して車両12の前方側へ照射された赤外光は、障害物(歩行者を含む:図示省略)に当たって反射されると(反射光とされると)、レンズ36を前方から後方へ透過してMEMSミラー50(ミラー本体部54)に照射され、そのMEMSミラー50(ミラー本体部54)によってハーフミラー42へ向けて反射されるようになっている。
【0057】
MEMSミラー50(ミラー本体部54)によって反射されてハーフミラー42へ向けて照射された赤外光(反射光)は、そのハーフミラー42によって反射されて受光素子44へ照射されるようになっている。つまり、検知光源40から照射され、障害物に当たって反射された赤外光(反射光)が、受光素子44によって受光されるようになっている。これにより、車両12の前方側に配置されている障害物等が、制御部によって検知される構成になっている。
【0058】
以上のような構成とされた本実施形態に係る車両用前照灯装置10において、次にその作用について説明する。
【0059】
図3(A)に示されるように、車両12(図1参照)の夜間走行時には、運転者のスイッチ操作により、可視光源30をオンにする。すなわち、可視光源30から照射された可視光V1を凹面反射鏡32の反射面33で集光反射してMEMSミラー50のミラー本体部54に照射する。ここで、MEMSミラー50のミラー本体部54(複数の微小可動ミラー)は、非通電とされたオフ状態とされており、第1角度に配置されている。
【0060】
したがって、MEMSミラー50のミラー本体部54に照射された可視光V2は、そのMEMSミラー50のミラー本体部54によって反射されて前方側へ向かい、レンズ36の後方から前方へ透過する。これにより、車両12の前方側におけるハイビーム配光エリアに可視光V3が照射される。
【0061】
なお、このとき、図4(B)に斜線にて示されるように、制御部の制御により、MEMSミラー50のミラー本体部54を構成する複数の微小可動ミラーのうちの幾つかの遮光領域S(可視光を車両12の前方側へ向けて反射する必要がない領域であり、例えばミラー本体部54の周縁領域)に通電し、その遮光領域Sの微小可動ミラーが第2角度(第1角度とは異なれば他の角度でもよい)に配置されるようにすることが好ましい。
【0062】
これによれば、車両12の前方側の視界を確保するために最低限必要な領域にのみ、MEMSミラー50のミラー本体部54によって可視光が照射されるようになるため、余計な可視光により、対向車や先行車に眩しさを与えるような不具合の発生を抑制することができる。
【0063】
また、車両12の夜間走行時において、車両12の前方側に障害物がないか(歩行者がいないか)を検知するときには、制御部の制御により、MEMSミラー50のミラー本体部54(複数の微小可動ミラー)に通電されてオン状態とされ、そのミラー本体部54が第2角度に配置される。
【0064】
そして、制御部の制御により、可視光源30がオフとされるとともに検知光源40がオンとされる。すると、図3(B)に実線で示されるように、検知光源40から照射された赤外光F1がハーフミラー42を透過し、MEMSミラー50のミラー本体部54に照射される。
【0065】
ここで、ミラー本体部54は、第2角度に配置されているため、MEMSミラー50のミラー本体部54に照射された赤外光F1は、そのMEMSミラー50のミラー本体部54によって反射されて前方側へ向かい、レンズ36の後方から前方へ透過する。これにより、車両12の前方側に赤外光F2が照射される。
【0066】
車両12の前方側へ照射された赤外光F2は、障害物(歩行者を含む)に当たって反射されると、図3(B)に破線で示されるように、反射光C1となってレンズ36の前面36Aへ入射される。レンズ36の前面36Aに入射された反射光C1は、レンズ36を前方から後方へ透過して、第2角度に配置されているMEMSミラー50のミラー本体部54に照射され、そのMEMSミラー50のミラー本体部54によってハーフミラー42へ向けて反射される。
【0067】
ハーフミラー42へ向けて反射された反射光C2は、そのハーフミラー42によって更に反射されて受光素子44へ照射される。つまり、検知光源40から照射され、障害物に当たって反射された赤外光(反射光C3)が、受光素子44によって受光される。これにより、車両12の前方側に配置されている障害物(歩行者を含む)等が制御部によって検知される。なお、赤外光(反射光C3)を受光素子44が受光するか、又は一定時間が経過すると、制御部の制御により、検知光源40がオフとされるとともに可視光源30がオンとされる。
【0068】
ここで、検知光源40から赤外光を照射する照射時間(検知光源40がオンとされて受光される時間)は、人が認識できる時間(10ms(100Hz)前後)よりも短い微小な時間となっている。具体的に説明すると、例えば図4(A)に示されるように、100ms(ミリ秒)間に1回、障害物を検知するように設定されている場合には、可視光源30がオンとされる時間は95msであり、検知光源40がオンとされて受光される時間は5ms(200Hz)である。よって、夜間走行時において、人の目には、可視光源30が消灯しているようには見えず、夜間走行時の安全性が確保される。
【0069】
また、MEMSミラー50のミラー本体部54(複数の微小可動ミラー)は、可視光源30から可視光が照射されているときには、(遮光領域S以外は)通電されずに(非通電とされて)第1角度に配置され、検知光源40から赤外光が照射されているときには、通電されて第2角度に配置される。
【0070】
すなわち、夜間走行時には、可視光源30から可視光が照射されるが、その可視光が照射されているときには、MEMSミラー50のミラー本体部54に通電されない。したがって、夜間走行時において、車両12に搭載されているバッテリの省電力化を図ることができる。
【0071】
また、図2図3に示されるように、車両前後方向から見た正面視で、可視光源30と検知光源40とは、MEMSミラー50を間に挟んで上下に配置されている。ここで、例えば可視光源30と検知光源40とが、両方ともMEMSミラー50の上側又は下側に配置されていると、第1角度と第2角度とに殆ど差が無くなる。
【0072】
したがって、後述する昼間走行時など、制御部の制御により、検知光源40をオンにして赤外光を照射しているときに、運転者が誤って可視光源30をオンにしてしまうと、その可視光の少なくとも一部がMEMSミラー50によって直ちに反射され、車両12の前方側にその可視光が漏れて、対向車や先行車に眩しさを与えるような不具合が発生するおそれがある。
【0073】
しかしながら、本実施形態によれば、可視光源30と検知光源40とが、MEMSミラー50を間に挟んで上下に配置されているため、第1角度と第2角度とに比較的大きな差を付けることが可能となる。したがって、制御部の制御により、検知光源40をオンにして赤外光を照射しているときに、運転者が誤って可視光源30をオンにしても、その可視光がMEMSミラー50によって直ちに反射されることがなく、車両12の前方側に可視光が漏れることがない。
【0074】
よって、対向車や先行車に眩しさを与えるような不具合の発生を抑制又は防止することができる。なお、運転者が可視光源30をオンにしてから一定時間が経過すると、そのスイッチ操作が制御部によって有効(夜間走行)と判断され、その制御部の制御により、検知光源40がオフとされるとともに、MEMSミラー50が第1角度に配置される。つまり、車両12の前方側におけるハイビーム配光エリアに可視光が照射される。
【0075】
また、本実施形態に係る車両用前照灯装置10では、ヘッドランプユニット14(ハイビームユニット18)において、可視光源30と検知光源40とが縦(上下)に並んで設けられ、MEMSミラー50によって反射されて可視光又は赤外光が照射される。そのため、可視光源30と検知光源40とが横(左右)に並んで設けられ、それらから直接可視光及び赤外光が照射される構成に比べて、ヘッドランプユニット14(ハイビームユニット18)の車幅方向内側への大型化を抑制することができ、かつ車両12の外観(意匠性)が損なわれるのも抑制することができる。
【0076】
また、可視光源30、検知光源40、MEMSミラー50及び受光素子44が、単一のヒートシンク20によって一体的に保持されているため、可視光源30、検知光源40、MEMSミラー50及び受光素子44が、それぞれ独立したヒートシンク20に保持されている構成に比べて、可視光源30、検知光源40、MEMSミラー50及び受光素子44のハイビームユニット18への搭載性がよく、各々の位置ずれも抑制することができる。すなわち、可視光源30、検知光源40、MEMSミラー50及び受光素子44の各々の位置合わせが容易にできる。
【0077】
また、可視光源30から照射された可視光は、凹面反射鏡32によって集光反射されてMEMSミラー50のミラー本体部54に照射される。したがって、凹面反射鏡32が設けられていない構成に比べて、MEMSミラー50のミラー本体部54に照射する可視光を効率よく集光することができる。
【0078】
また、障害物によって反射されてレンズ36の前面36Aから入射され、そのレンズ36を前方から後方へ透過してMEMSミラー50のミラー本体部54に照射された反射光が、そのMEMSミラー50のミラー本体部54によって反射された後、更にハーフミラー42によって反射されて受光素子44に照射される。したがって、ハーフミラー42が設けられていない構成に比べて、受光素子44の配置箇所の自由度が増し、ヒートシンク20における受光素子44の配置スペースを良好に確保することができる。
【0079】
なお、図5に示されるように、ハーフミラー42と受光素子44との間に、受光素子44に照射する反射光(赤外光)を集光する集光レンズ(反射光制御レンズ)46を配置するようにしてもよい(第1変形例)。これによれば、ハーフミラー42と受光素子44との間に、集光レンズ46が配置されていない構成に比べて、受光素子44に照射する反射光(赤外光)を効率よく集光することができ、障害物(歩行者)に対する検知性能を向上させることができる。
【0080】
また、折返反射鏡は、ハーフミラー42に限定されるものではなく、例えば図6に示されるように、通常のミラー48とされていてもよい。この場合は、検知光源40が、例えばミラー48の下側に配置されていればよい(第2変形例)。また、図示は省略するが、この場合において、検知光源40をミラー48の中央部に配置する構成にしてもよい。
【0081】
一方、車両12の昼間走行時には、可視光源30をオンにする必要がないため、制御部の制御により、MEMSミラー50のミラー本体部54が常に第2角度に配置され、検知光源40によって常に赤外光が車両12の前方側へ照射されるようにすることが可能となる。これによれば、車両12の昼間走行時において、障害物(歩行者)に対する検知精度を向上させることができる。
【0082】
また、車両12が自動運転車両の場合で、かつ運転者が運転しない自動運転モードとされているときには、昼間走行時はもちろん、夜間走行時でも可視光源30をオンにする必要がない。つまり、自動運転モード時には、制御部の制御により、MEMSミラー50のミラー本体部54が常に第2角度に配置され、検知光源40によって常に赤外光のみが車両12の前方側へ照射される。よって、自動運転車両に搭載されているバッテリの省電力化を図ることができる。
【0083】
また、これらの場合、MEMSミラー50のミラー本体部54(複数の微小可動ミラー)は、常に第2角度に配置され、上記した車両12の夜間走行時のように、第1角度と第2角度とに頻繁に(例えば100ms(ミリ秒)間に1回)変更されることがない。したがって、MEMSミラー50(ミラー本体部54)の耐久性(寿命)が低下するのを抑制することができる。
【0084】
以上、本実施形態に係る車両用前照灯装置10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る車両用前照灯装置10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、検知光は、赤外光に限定されるものではない。
【0085】
また、ヒートシンク20の形状も、図示の形状に限定されるものではない。また、検知光源40の上側にミラー48が配置される図6に示される態様において、図5に示される集光レンズ46を設けるようにしてもよい。更に、ハーフミラー42やミラー48が設けられず、受光素子44が、例えば検知光源40と上下に並んでヒートシンク20のアッパー部26の前端下部に設けられる構成とされていてもよい。
【0086】
つまり、MEMSミラー50のミラー本体部54で反射された反射光は、ハーフミラー42やミラー48で更に反射することなく、直接受光素子44で受光するように構成されていてもよい。また、受光素子44は、ヒートシンク20に一体的に保持されていなくてもよい。更に、本実施形態に係る車両用前照灯装置10は、ハイビームユニット18に適用される構成に限定されるものではなく、ロービームユニット16に適用される構成とされていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 車両用前照灯装置
20 ヒートシンク
30 可視光源
32 凹面反射鏡
40 検知光源
42 ハーフミラー(折返反射鏡)
44 受光素子
46 集光レンズ
50 MEMSミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6