(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る一つの実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0018】
一般に、電子メールの送信時に宛先を間違えて送信する誤送信の防止のために、送信直前に送信者に宛先の詳細情報を提示して宛先の確認と注意喚起を促す仕組みがある。実際に発生したメール送信事故に関して、急いでメールを作成して宛先の選択や入力を誤ったケースや、メール送付の都度の宛先確認作業に慣れが生じ、注意が不足したケースが報告されることもある。
【0019】
電子メールの誤送信防止システムでは、電子メールの安全性/危険性を、その送信履歴やドメイン、暗号化の有無や添付ファイルの有無、指定キーワードの含有等、静的に構造を分析して評価し、送信者へ注意喚起を行うものもある。これは、送信者に関係なく、電子メールがどのようなデータを含むのか、という観点で分析しているものである。いいかえると、このような分析を行ってリスクが低いメールと判定されても、送信者の不注意な操作があれば誤送信する可能性があり、リスクが高いメールと判定されても、送信者が注意深く操作すれば正常送信することが可能である。
【0020】
したがって、メールの誤送信防止に関しては、送信者の行動に着目し、送信者の行動が優れている場合には誤送信のおそれが少なく、優れていない場合には誤送信のおそれがあるとの考え方が、誤送信の防止に有効と想定される。なお、電子メールの静的な構造から判定した、危険性が高いものについては、送信時に誤送信が発生しないよう、より注意深く行動するのが望ましいことは言うまでもない。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るメール誤送信防止システム1の構成例を示す図である。図示するように、メール誤送信防止システム1は、メール誤送信防止装置100と、ネットワーク50と、メールサーバー装置200とを備える。メール誤送信防止装置100と、メールサーバー装置200とは、ネットワーク50を介して相互に情報の送受信ができる。
【0022】
ネットワーク50は、例えば、インターネット等の公衆網やLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)であり、メール誤送信防止装置100と、メールサーバー装置200とを通信可能に接続する。
【0023】
メール誤送信防止装置100は、いわゆるパーソナルコンピューターやスマートフォン、タブレット装置等であり、ネットワーク50を介して、メールサーバー装置200に送信対象の電子メールデータを送信する。なお、メールサーバー装置200は、一般的なメールサーバーでよく、例えばSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)サーバーである。
【0024】
また、メール誤送信防止装置100は、ネットワーク50を介して、電子メールデータをメールサーバー装置200から受信メールとして受け取る。この方式は、POP3(Post Office Protocol Version 3)あるいはIMAP(Internet Message Access Protocol)等である。
【0025】
メール誤送信防止装置100は、制御部110と、記憶部120と、表示部130と、入力部140と、通信部150と、位置情報取得部160と、心拍数取得部170と、を備える。
【0026】
制御部110は、電子メール編集部111と、電子メール送受信部112と、誤送信防止部113と、を備える。電子メール編集部111は、電子メールの新規作成、返信、転送等の各種の編集処理を制御する。電子メール送受信部112は、送信する電子メールをメールサーバー装置200に送付して送信させ、操作者のアカウントに送信された電子メールをメールサーバー装置200から受信する。誤送信防止部113は、電子メール送受信部112が電子メールを送信する直前に割り込み、宛先確認処理を行う。宛先確認処理後に、誤送信防止部113は、総合評価の優劣に応じて、当該メールを送信するか、再度の宛先確認処理を行う。
【0027】
誤送信防止部113は、宛先確認処理部114と、メール作成時評価部115と、宛先確認時評価部116と、総合評価部117と、を備える。宛先確認処理部114は、電子メール編集部111が編集を終了後、電子メール送受信部112が送信処理を行う直前に割り込み、宛先確認処理を行う。宛先確認処理では、送信処理を行う対象の電子メールの宛先(電子メールを受信するメールアドレス)を列挙して、その宛先の正しさを目視確認するための画面を生成し表示させる。また、列挙された宛先のそれぞれについて正しいことを操作者が確認すると、操作者は確認が済んだ宛先ごとにチェック入力を行う。全ての宛先にチェック入力がなされると、宛先確認処理部114は、宛先確認を終える。宛先確認処理部114は、宛先確認時の行動の評価を含む評価が所定の基準を満たすか否かに応じて、当該メールを送信するか再度の宛先確認処理を行うかを判定する。
【0028】
メール作成時評価部115は、電子メールの作成時に関連するリスクと行動の分析を行って、作成時評価点を算出する。メール作成時評価部115には、作成リスク分析部115Aと、作成行動分析部115Bと、が含まれる。
【0029】
作成リスク分析部115Aは、電子メールの作成時に係るリスクの分析を行い、作成時リスク値を算出する。作成行動分析部115Bは、電子メールの作成時に係る操作者の行動の分析を行い、作成時行動値を算出する。
【0030】
メール作成時評価部115は、これらの作成時リスク値と、作成時行動値と、を用いて作成時評価点を算出する。具体的には、メール作成時評価部115は、作成時リスク値に応じて求められる予め定められた行動値と、作成時行動値との差を作成時評価点とする。すなわち、リスクが高いメールに関しては、そうでないメール以上の優れた行動が要求されるため、メール作成時評価部115は、その要求の達成度合いに応じて作成時評価点を算出する。
【0031】
宛先確認時評価部116は、電子メールの宛先確認時に関連するリスクと行動の分析を行って、宛先確認時評価点を算出する。宛先確認時評価部116には、確認リスク分析部116Aと、確認行動分析部116Bと、が含まれる。
【0032】
確認リスク分析部116Aは、電子メールの宛先確認時に係るリスクの分析を行い、宛先確認時リスク値を算出する。確認行動分析部116Bは、電子メールの宛先確認時に係る操作者の行動の分析を行い、宛先確認時行動値を算出する。
【0033】
宛先確認時評価部116は、これらの宛先確認時リスク値と、宛先確認時行動値と、を用いて宛先確認時評価点を算出する。具体的には、宛先確認時評価部116は、宛先確認時リスク値に応じて求められる予め定められた行動値と、宛先確認時行動値との差を作成時評価点とする。すなわち、リスクが高いメールに関しては、そうでないメール以上の優れた行動が要求されるため、宛先確認時評価部116は、その要求の達成度合いに応じて宛先確認時評価点を算出する。
【0034】
総合評価部117は、メール作成時評価部115が算出した作成時評価点と、宛先確認時評価部116が算出した宛先確認時評価点とを用いて総合評価点を算出する。また、総合評価部117は、メールサーバー装置200が送信を担う他の操作者のアカウントの内、同一の会社あるいは同一の組織に属する他の操作者のアカウントの平均値と比較して、乖離の大きい評価項目を特定し、当該評価項目を高めるために予め定められたメッセージやアドバイスを記憶部120の図示しない記憶領域から読み出して表示する。
【0035】
記憶部120は、ログ記憶部121と、アドレス帳記憶部122と、スケジュール記憶部123と、電子メール記憶部124と、を備える。
【0036】
ログ記憶部121は、電子メールと、電子メールの作成と、電子メールの宛先確認と、に関する各種の計数値あるいは測定値を項目ごとに記憶する。例えば、本実施形態においては、
図2に示すログ記憶部121のデータ構造を有する。
【0037】
図2は、ログ記憶部に格納されるデータ構造例を示す図である。ログ記憶部121は、分類121aと、項目名121bと、値121cと、を有する。分類121aは、項目の分類を示す情報であり、例えば、アカウント等の「基本情報」、メールの項目や特性を示す「メール情報」、メールの作成時のリスクと行動と、メールの宛先確認時のリスクと行動とに係る「統計情報」が含まれる。
【0038】
項目名121bは、ログとして記録する値121cの項目を示す情報である。例えば、送信者を特定する「ユーザー識別子」やキータイプ終了から送信までの経過時間を示す「推敲時間」が含まれる。
【0039】
値121cは、ログとして記録する値である。例えば、「ユーザー識別子」の項目名については、送信者の識別子が値となる。「推敲時間」の項目名については、キータイプ終了から送信までの経過時間が値となる。
【0040】
アドレス帳記憶部122は、電子メールの宛先や電話番号等の連絡先を対象者ごとに記憶する。例えば、本実施形態においては、
図3に示すアドレス帳記憶部122のデータ構造を有する。
【0041】
図3は、アドレス帳記憶部に格納されるデータ構造例を示す図である。アドレス帳記憶部122は、識別子122aと、姓122bと、名122cと、メールアドレス122dと、詳細122eと、を有する。なお、これに限られず、アドレス帳記憶部122は、一般的な電子メールソフトが管理するvCard等のデータ構造を有するものであってもよい。
【0042】
識別子122aは、対象者を識別する情報である。姓122bは、対象者の氏や姓、ファミリーネーム等を特定する情報である。名122cは、対象者の名、ファーストネーム等を特定する情報である。メールアドレス122dは、対象者のメールアドレスを特定する情報である。詳細122eは、対象者が雇用されている会社や、その会社内での所属部署等を特定する情報である。
【0043】
スケジュール記憶部123は、開始終了予定の日時を有する行動予定であるスケジュール情報を、操作者ごとに記憶する。例えば、本実施形態においては、
図4に示すスケジュール記憶部123のデータ構造を有する。
【0044】
図4は、スケジュール記憶部に格納されるデータ構造例を示す図である。スケジュール記憶部123は、識別子123aと、開始日時123bと、終了日時123cと、題123dと、内容123eと、を有する。なお、これに限られず、スケジュール記憶部123は、一般的なスケジュール管理ソフトが管理するiCalendar等のデータ構造を有するものであってもよい。
【0045】
識別子123aは、予定を識別する情報である。開始日時123bは、予定の開始予定日時を特定する情報である。終了日時123cは、予定の終了予定日時を特定する情報である。題123dは、予定の題目を特定する情報である。内容123eは、予定の詳細等の内容を特定する情報である。
【0046】
電子メール記憶部124は、電子メールの情報を、操作者ごとに記憶する。例えば、電子メール記憶部124は、一般的な電子メールソフトが管理するeml等のデータ構造を有するものであってもよい。
【0047】
表示部130は、ディスプレイ出力等の出力デバイスを介して、表示情報を出力する。入力部140は、音声入力や接触入力等の入力デバイスを介して、操作者からの入力を受け付ける。通信部150は、インターネット等の公衆網、LANやWAN等のネットワーク50と接続されたメールサーバー装置200と通信を行う。
【0048】
位置情報取得部160は、座標位置を特定する情報を取得する。具体的には、位置情報取得部160は、GPS(Global Positioning System)やGLONASS(Global Navigation Satellite System)等の衛星波を受信して、座標を取得する。
【0049】
心拍数取得部170は、心拍数の情報を取得する。具体的には、心拍数取得部170は、心拍センサ装着者(操作者)の直近の心拍数(回/分)の移動平均等を取得する。
【0050】
図5は、メール誤送信防止装置のハードウェア構成例を示す図である。メール誤送信防止装置100は、NIC(Network Interface Card)等の通信装置101と、メモリ等の主記憶装置102と、キーボードやマウス等の入力装置103と、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置104と、ハードディスクやSSD(Solid State Drive)等の外部記憶装置105と、ディスプレイやスピーカー、プリンタ等の表示装置106と、GPS装置107と、心拍計測装置108と、これらをつなぐバス109と、を含んで構成される。
【0051】
通信装置101は、ネットワークケーブルを介して有線通信を行う有線の通信装置、又はアンテナを介して無線通信を行う無線通信装置である。通信装置101は、ネットワークに接続される他の装置との通信を行う。
【0052】
主記憶装置102は、例えばRAM(Random Access Memory)などのメモリである。
【0053】
入力装置103は、キーボードやマウス等のポインティングデバイス、タッチパネル、あるいは音声入力装置であるマイク等を含む入力情報を受け付ける装置である。
【0054】
外部記憶装置105は、デジタル情報を記憶可能な、いわゆるハードディスクやSSD、あるいはフラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置である。
【0055】
表示装置106は、ディスプレイやプリンタ、あるいは音声出力装置であるスピーカー等を含む出力情報を生成する装置である。
【0056】
GPS装置107は、GPS受信機である。心拍計測装置108は、操作者の身体に取り付けられたセンサーからの情報を用いて、心拍数を計測する装置である。なお、心拍数を取得できるものであれば、心拍計測装置108は接触型、非接触型のいずれでもよい。
【0057】
上記した電子メール編集部111と、電子メール送受信部112と、誤送信防止部113とは、演算装置104に処理を行わせるプログラムによって実現される。このプログラムは、主記憶装置102、または外部記憶装置105内に記憶され、実行にあたって主記憶装置102上にロードされ、演算装置104により実行される。
【0058】
また、記憶部120に格納されるログ記憶部121と、アドレス帳記憶部122と、スケジュール記憶部123と、電子メール記憶部124とは、主記憶装置102及び外部記憶装置105により実現される。
【0059】
また、WANやLAN等に通信可能に接続する通信部150は通信装置101により実現される。また、入力部140は、入力装置103により実現され、表示部130は、表示装置106により実現される。位置情報取得部160は、GPS装置107により実現され、心拍数取得部170は、心拍計測装置108により実現される。
【0060】
以上が、本実施形態におけるメール誤送信防止装置100のハードウェア構成例である。しかし、これに限らず、その他のハードウェアを用いて構成されるものであってもよい。例えば、カーナビゲーション装置や、テレビジョン装置等の、各種の情報処理装置であってもよい。
【0061】
なお、メール誤送信防止装置100は、図示しないが、OS(Operating System)、ミドルウェア、アプリケーションなどの公知の要素を有し、特にディスプレイなどの入出力装置にGUI画面を表示するための既存の処理機能を備える。
【0062】
また、メールサーバー装置200は、特にハードウェアを図示しないが、SMTPおよびPOP3、IMAP等のプロトコルに対応する一般的な電子メールサーバーである。
【0063】
[動作の説明]次に、本実施形態におけるメール誤送信防止装置100の動作を説明する。
【0064】
図6は、メール作成時リスク評価処理の動作フロー例を示す図である。まず、作成リスク分析部115Aは、未読リスク値を算出する(ステップS001)。具体的には、作成リスク分析部115Aは、電子メール記憶部124を参照して、操作者のアカウントに紐づく受信メールのうち、所定期間内(例えば、2週間以内)に受信した未読のステータスにある電子メールの件数を計数し、ログ記憶部121の「未読リスク」の項目名に対応付けて格納する。
【0065】
作成リスク分析部115Aは、予定行動リスク値を算出する(ステップS002)。具体的には、作成リスク分析部115Aは、スケジュール記憶部123を参照して、操作者のアカウントに紐づくスケジュールのうち、直近の(例えば、当日あるいは以後24時間以内の)スケジュールの件数を計数し、ログ記憶部121の「予定行動リスク」の項目名に対応付けて格納する。
【0066】
作成リスク分析部115Aは、送信数リスク値を算出する(ステップS003)。具体的には、作成リスク分析部115Aは、電子メール記憶部124を参照して、操作者のアカウントに紐づく送信済みメールのうち、直近の(例えば、当日あるいは過去24時間以内の)送信済みメールの件数を計数し、ログ記憶部121の「送信数リスク」の項目名に対応付けて格納する。
【0067】
そして、メール編集がなされている間、すなわち送信未指示の間、作成行動分析部115Bは、ステップS004〜ステップS006の処理を継続的に実施する。
【0068】
作成行動分析部115Bは、入力ミス数を計数する(ステップS004)。具体的には、作成行動分析部115Bは、デルキーやバックスペースキーの押下回数を計数する。なお、キーが長押しされた場合であっても、一回と計数する。
【0069】
作成行動分析部115Bは、平均タイプ速度(回/秒)を測定する(ステップS005)。具体的には、作成行動分析部115Bは、一秒間のキーの押下回数の移動平均を算出する。
【0070】
作成行動分析部115Bは、心拍数を計数する(ステップS006)。具体的には、作成行動分析部115Bは、心拍数取得部170から、心拍の移動平均を取得する。
【0071】
そして、メールの送信が指示されると、誤送信防止部113は割り込み処理を行い、受信リスク値を算出する(ステップS007)。具体的には、作成リスク分析部115Aは、電子メール記憶部124を参照して、操作者のアカウントに紐づく受信メールのうち、未読のステータスにある電子メールの件数を計数し、ログ記憶部121の「未読リスク」の項目名に対応付けられた件数からの増分を特定してログ記憶部121の「受信リスク」の項目名に対応付けて格納する。すなわち、受信件数の増加をメール受信数の増加とみなす。また、作成リスク分析部115Aは、ステップS004において計数した入力ミス数と、ステップS005において測定した平均タイプ速度(回/秒)と、ステップS006において計数した心拍数と、をそれぞれ、ログ記憶部121の「入力ミス」「タイプ速度」「心拍数上昇」の項目名に対応付けて格納する。
【0072】
作成リスク分析部115Aは、追加予定行動リスク値を算出する(ステップS008)。具体的には、作成リスク分析部115Aは、スケジュール記憶部123を参照して、操作者のアカウントに紐づくスケジュールのうち、直近の(例えば、当日あるいは以後24時間以内の)スケジュールの件数を計数し、ログ記憶部121の「予定行動リスク」の項目名に対応付けられた件数からの増分を特定してログ記憶部121の「追加予定行動リスク」の項目名に対応付けて格納する。すなわち、予定行動件数の増加を予定行動件数の追加とみなす。
【0073】
作成リスク分析部115Aは、時刻を取得する(ステップS009)。具体的には、作成リスク分析部115Aは、現在時刻をOS等から特定してログ記憶部121の「時刻リスク」の項目名に対応付けて格納する。
【0074】
作成リスク分析部115Aは、位置情報を取得する(ステップS010)。具体的には、作成リスク分析部115Aは、位置情報を位置情報取得部160から取得してログ記憶部121の「環境リスク」の項目名に対応付けて格納する。
【0075】
作成リスク分析部115Aは、作成時リスク値を算出し記憶する(ステップS011)。具体的には、作成リスク分析部115Aは、ステップS001からS003、ステップS007〜S010において取得した各値のそれぞれに、所定のリスク係数および重みを掛け合わせた値を合算して、作成時リスク値として算出する。
【0076】
なお、未読リスク値、予定行動リスク値、送信数リスク値(所定の閾値を超える数)、受信リスク値、追加予定行動リスク値については1件ごとにそれぞれのリスク係数および重みを掛けた値を用いる。時刻リスクについては所定の誤送信が頻発する時刻帯に含まれる場合には1件として計上しリスク係数および重みを掛け、環境リスク値については、アカウントごとに定められた一つまたは複数の位置の近傍でない場合(すなわち、出張等で通常の慣れた環境にいない場合)には一件として計上しリスク係数および重みを掛ける。
【0077】
以上が、メール作成時リスク評価処理の流れである。メール作成時リスク処理によれば、メールの作成時に、当該メールを作成する操作者の行動密度(時間当たりの行動量)を推定して作成時リスク値として定量評価できる。
【0078】
図7は、メール作成時行動評価処理の動作フロー例を示す図である。まず、作成行動分析部115Bは、返信までの期間行動値を算出する(ステップS101)。具体的には、作成行動分析部115Bは、作成した電子メールが返信または転送メールである場合に、電子メール記憶部124およびログ記憶部121の「時刻リスク」の日時を参照して、当該メールの受信日時からの経過時間を算出し、ログ記憶部121の「返信までの期間」の項目名に対応付けて格納する。
【0079】
作成行動分析部115Bは、推敲時間行動値を算出する(ステップS102)。具体的には、作成行動分析部115Bは、編集時の最終キータイプからログ記憶部121の「時刻リスク」の日時までの経過時間を算出し、ログ記憶部121の「推敲時間」の項目名に対応付けて格納する。
【0080】
作成行動分析部115Bは、入力ミス数を用いて入力ミス行動値を算出する(ステップS103)。具体的には、作成行動分析部115Bは、ログ記憶部121の「入力ミス」の回数を参照する。
【0081】
作成行動分析部115Bは、平均タイプ速度(回/秒)を用いてタイプ速度行動値を算出する(ステップS104)。具体的には、作成行動分析部115Bは、ログ記憶部121の「タイプ速度」を参照して、平常の操作者の平均タイプ速度からの増加量を算出する。
【0082】
作成行動分析部115Bは、心拍数を用いて心拍数上昇行動値を算出する(ステップS105)。具体的には、作成行動分析部115Bは、ログ記憶部121の「心拍数上昇」を参照して、平常の操作者の平均心拍数からの増加量を算出する。
【0083】
作成行動分析部115Bは、その他カスタム行動値を算出する(ステップS106)。具体的には、作成行動分析部115Bは、カスタムした行動値の算出基準があれば、その行動値を算出する。
【0084】
そして、作成行動分析部115Bは、作成時行動値を算出し記憶する(ステップS107)。具体的には、作成行動分析部115Bは、ステップS101からS106において算出した各値のそれぞれに、所定の行動係数および重みを掛け合わせた値を合算して、作成時行動値として算出する。
【0085】
なお、返信までの期間行動値については、既読プロパティがメールに付与されてからの経過時間(秒)ごとに所定の行動係数および重みを掛けた値を用いる。推敲時間行動値については、推敲時間(秒)ごとに所定の行動係数および重みを掛けた値を用いる。入力ミス行動値については、打ち直し回数ごとに所定の行動係数および重みを掛けた値を用いる。タイプ速度行動値、心拍数上昇行動値については、平常からの増加数ごとに所定の行動係数および重みを掛けた値を用いる。
【0086】
そして、メール作成時評価部115は、作成時リスク値における作成時行動値について、分布境界からの距離に応じて作成時評価点を算出し記憶する(ステップS108)。
【0087】
図8は、作成時評価点の算出の仕組みの例を示す図である。
図8に示されるグラフでは、横軸は作成時リスク値であり、縦軸は作成時行動値である。そして、所定の方法で特定した分布境界が設けられている。メール作成時評価部115は、作成時リスク値と、作成時行動値と、をグラフ上にプロットし、分布境界からの縦軸上の距離を求めることで、作成時評価点を算出する。なお、分布境界は、この例に限られるものではなく、横軸に相当する作成時リスク値に対して縦軸の値すなわち作成時行動値が予め一意に定められた対応表等、作成時評価点を一意に算出可能なものであれば、
図8の分布境界のような連続値を取るものでなくともよい。
【0088】
以上が、メール作成時行動評価処理の流れである。メール作成時行動評価処理によれば、メールの作成時に、当該メールを作成する操作者の行動密度(時間当たりの行動量)を推定して作成時行動値として定量評価できる。また、メールのリスクに応じて優れた行動値が求められるため、その乖離を定量評価できる。
【0089】
図9は、宛先確認時リスク評価処理の動作フロー例を示す図である。まず、確認リスク分析部116Aは、同姓リスク値を算出する(ステップS201)。具体的には、確認リスク分析部116Aは、アドレス帳記憶部122を参照して、操作者のアカウントに紐づく連絡先のうち、宛先のメールアドレスのそれぞれに係る姓を特定し、当該姓のそれぞれと同姓の連絡先の件数を計数し、ログ記憶部121の「同姓リスク」の項目名に対応付けて格納する。
【0090】
確認リスク分析部116Aは、宛先追加リスク値を算出する(ステップS202)。具体的には、確認リスク分析部116Aは、メールの宛先(TO、CC、BCC)の数を計数し、ログ記憶部121の「宛先追加リスク」の項目名に対応付けて格納する。なお、送信対象のメールが返信メールである場合、確認リスク分析部116Aは、元のメールの宛先数からの増加数を計数する。
【0091】
確認リスク分析部116Aは、初回リスク値を算出する(ステップS203)。具体的には、確認リスク分析部116Aは、過去に送信したメールの宛先に入っていない新たなメールアドレスが宛先に含まれる場合には、その件数を計数し、ログ記憶部121の「初回リスク」の項目名に対応付けて格納する。
【0092】
確認リスク分析部116Aは、表示欄不足リスク値を算出する(ステップS204)。具体的には、確認リスク分析部116Aは、表示部130から、宛先確認画面における宛先の詳細(例えば、所属)情報の表示領域に表示可能な文字数を取得し、アドレス帳記憶部122を参照して、宛先に指定されている連絡先のうち、詳細122eの文字数が表示可能な文字数を超えている件数を計数し、ログ記憶部121の「表示欄不足リスク」の項目名に対応付けて格納する。
【0093】
そして、宛先確認がなされている間、すなわち確認が未完了の間、確認行動分析部116Bは、ステップS205〜ステップS206の処理を継続的に実施する。
【0094】
確認行動分析部116Bは、宛先確認のチェック間隔を測定する(ステップS205)。具体的には、確認行動分析部116Bは、宛先確認画面が表示された時刻から一つ目の宛先のチェック入力がなされるまでの時間、一つ目の宛先のチェック入力がなされた時刻から二つ目の宛先のチェック入力がなされるまでの時間、というように一件の宛先あたりのチェック間隔の時間を測定する。そして、確認行動分析部116Bは、宛先あたりの平均チェック間隔を算出する。
【0095】
確認行動分析部116Bは、アドレス帳を確認した回数を計数する(ステップS206)。具体的には、確認行動分析部116Bは、初回となる送信先が含まれる場合に、初回となる送信先の件数と、宛先確認中にアドレス帳を開いた回数と、を計数する。
【0096】
そして、宛先確認の完了が指示されると、確認リスク分析部116Aは、宛先確認時リスク値を算出し記憶する(ステップS207)。具体的には、確認リスク分析部116Aは、ステップS201からS204において取得した各値のそれぞれに、所定のリスク係数および重みを掛け合わせた値を合算して、宛先確認時リスク値として算出する。また、確認リスク分析部116Aは、ステップS205において測定した宛先確認のチェック間隔を、ログ記憶部121の「宛先確認間隔」の項目名に対応付けて格納する。
【0097】
なお、同姓リスク値、宛先追加リスク値、初回リスク値、表示欄不足リスク値については1件ごとにそれぞれのリスク係数および重みを掛けた値を用いる。
【0098】
以上が、宛先確認時リスク評価処理の流れである。宛先確認時リスク処理によれば、メールの宛先確認時に、当該メールの宛先確認の難易度を推定して宛先確認時リスク値として定量評価できる。
【0099】
図10は、宛先確認時行動評価処理の動作フロー例を示す図である。まず、確認行動分析部116Bは、宛先確認間隔行動値を算出する(ステップS301)。具体的には、確認行動分析部116Bは、ログ記憶部121の「宛先確認間隔」を参照し、所定の閾値を引いた値を算出する。
【0100】
確認行動分析部116Bは、宛先確認所要時間行動値を算出する(ステップS302)。具体的には、確認行動分析部116Bは、宛先確認開始から確認完了までの間の経過時間を宛先数で割った値を算出し、宛先一件あたりの平常の操作者の平均所要時間からの差分をログ記憶部121の「宛先確認所要時間」の項目名に対応付けて格納する。なお、宛先確認完了までの間の時間経過が大きすぎる場合(すなわち、確認作業の中断があった場合)には、確認行動分析部116Bは、宛先確認所要時間行動値をゼロとして算出する。
【0101】
確認行動分析部116Bは、表示欄拡張行動値を算出する(ステップS303)。具体的には、確認行動分析部116Bは、ログ記憶部121の「表示欄不足リスク」の件数が1以上の場合に、表示欄のスクロールがなされた件数を計数し、「表示欄不足リスク」の件数に対して表示欄のスクロールがなされた件数の不足数をログ記憶部121の「表示欄拡張」の項目名に対応付けて格納する。
【0102】
確認行動分析部116Bは、アドレス帳確認行動値を算出する(ステップS304)。具体的には、確認行動分析部116Bは、初回となる送信先の件数から、宛先確認中にアドレス帳を開いた回数を減じた件数を算出し、アドレス帳確認行動値とする。なお、確認行動分析部116Bは、初回となる送信先の件数と、宛先確認中にアドレス帳を開いた回数とを、ログ記憶部121の「初回リスク」および「アドレス帳確認」の項目名に対応付けて格納する。
【0103】
確認行動分析部116Bは、その他カスタム行動値を算出する(ステップS305)。具体的には、確認行動分析部116Bは、カスタムした行動値の算出基準があれば、その行動値を算出する。
【0104】
そして、確認行動分析部116Bは、宛先確認時行動値を算出し記憶する(ステップS306)。具体的には、確認行動分析部116Bは、ステップS301からS305において算出した各行動値のそれぞれに、所定の行動係数および重みを掛け合わせた値を合算して、宛先確認時行動値として算出する。
【0105】
そして、宛先確認時評価部116は、宛先確認時リスク値における宛先確認時行動値について、分布境界からの距離に応じて宛先確認時評価点を算出し記憶する(ステップS307)。
【0106】
図11は、宛先確認時評価点の算出の仕組みの例を示す図である。
図11に示されるグラフでは、横軸は宛先確認時リスク値であり、縦軸は宛先確認時行動値である。そして、所定の方法で特定した分布境界が設けられている。宛先確認時評価部116は、宛先確認時リスク値と、宛先確認時行動値と、をグラフ上にプロットし、分布境界からの縦軸上の距離を求めることで、宛先確認時評価点を算出する。なお、分布境界は、この例に限られるものではなく、横軸に相当する宛先確認時リスク値に対して縦軸の値すなわち宛先確認時行動値が予め一意に定められた対応表等、宛先確認時評価点を一意に算出可能なものであれば、
図11の分布境界のような連続値を取るものでなくともよい。
【0107】
そして、総合評価部117は、作成時評価点と、宛先確認時評価点とを用いて総合評価点を算出する(ステップS308)。具体的には、総合評価部117は、メール作成時行動評価処理のステップS108において算出された作成時評価点と、宛先確認時行動評価処理のステップS307において算出された宛先確認時評価点とを足し合わせて、総合評価点を算出する。なお、単に足し合わせるだけでなく、総合評価部117は、作成時評価点と宛先確認時評価点のそれぞれに所定の重み付けを行ってもよい。
【0108】
そして、宛先確認処理部114は、総合評価点がゼロより大きいか否かを判定する(ステップS309)。ゼロ以下の場合(ステップS309にて「No」の場合)には、宛先確認処理部114は、宛先確認画面を再度出力し、宛先確認を再実施する(ステップS310)。
【0109】
総合評価点がゼロより大きい場合(ステップS309にて「Yes」の場合)には、電子メール送受信部112は、メールを送信する(ステップS311)。
【0110】
そして、宛先確認処理部114は、ログ情報をログ記憶部121に記憶する(ステップS312)。
【0111】
そして、総合評価部117は、総合評価画面を表示する(ステップS313)。
【0112】
以上が、宛先確認時行動評価処理の流れである。宛先確認時行動評価処理によれば、メールの宛先確認時に、当該メールを作成する操作者の宛先確認の信頼度を推定して宛先確認時行動値として定量評価できる。また、宛先確認のリスクに応じて優れた行動値が求められるため、その乖離を定量評価できる。
【0113】
図12は、宛先確認の出力画面例を示す図である。宛先確認画面400は、メール作成時行動評価処理の終了時に、宛先確認処理部114がメールの宛先に応じて表示する。宛先確認画面400においては、宛先410aには、電子メールの宛先すなわちTo、CC、BCCに指定されている宛先ごとに、メールアドレスが表示される。氏名410bと、会社410cと、所属410dには、宛先の人物の氏名と、勤務する会社名と、所属する組織と、が対応付けて表示される。なお、氏名410bと、会社410cと、所属410dには、それぞれ、アドレス帳記憶部122の姓122bと名122cとを連結した氏名と、詳細122eの詳細情報と、が表示される。
【0114】
また、宛先確認画面400には、チェックボックス420と、スクロールバー430と、決定ボタン440と、が表示される。チェックボックス420は、確認を終えた宛先を明示する選択入力を受け付ける。スクロールバー430は、所属する組織を示す情報が多く、すべて表示できない場合に、スクロール指示を受け付けてすべて表示させるために表示範囲を拡張変更する指示を受け付ける。決定ボタン440は、すべての宛先の確認を終えて、送信を決定する指示を受け付ける。
【0115】
図13は、総合評価の出力画面例を示す図である。総合評価画面500は、宛先確認時行動評価処理の終了時に、総合評価部117が総合評価に応じて表示する。総合評価画面500においては、評価値表示領域510と、要注意項目表示領域520と、アドバイス表示領域530と、確認ボタン540と、が表示される。
【0116】
評価値表示領域510には、作成時リスク値と、作成時行動値と、宛先確認時リスク値と、宛先確認時行動値と、が示される。それぞれの値について、本件での評価と、送信者(操作者)の過去の平均値と、同じ所属の他人の平均値と、が並列表示される。これにより、操作者は、自身の相対評価を知ることができる。
【0117】
要注意項目表示領域520には、自身の評価項目の中で同じ所属の他人の平均値との乖離が大きい項目と、その値とが対比可能に表示される。アドバイス表示領域530には、当該項目の評価を向上させるために必要なアドバイスが所定の定型文として表示される。アドバイスの選択については、所定のアルゴリズムを用いて操作者の傾向分析を行い、傾向に応じたアドバイスの選択を行うのが望ましい。例えば、宛先確認間隔が一定かつ短い場合には、いわゆる機械チェックを行っている可能性があるため、これを是正するアドバイスを表示させるのが望ましい。
【0118】
以上、実施形態に係るメール誤送信防止システム1について具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、メール誤送信防止装置100は、メールサーバー装置200と同一の装置であってもよいし、分散されていてもよい。
【0119】
その場合、電子メール関連設備の省スペース化を行うことができる。
【0120】
また例えば、誤送信防止部113は、電子メール送受信部112と一体となっていてもよいし、電子メール編集部111と一体となっていてもよい。このようにすることで、ソフトウェア構成を簡便なものとすることができる。
【0121】
なお、上記した実施形態では本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0122】
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0123】
また、上記した各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば別の装置で実行してネットワークを介して統合処理する等により分散システムで実現してもよい。
【0124】
また、上記した実施形態の技術的要素は、単独で適用されてもよいし、プログラム部品とハードウェア部品のような複数の部分に分けられて適用されるようにしてもよい。
【0125】
以上、本発明について、実施形態を中心に説明した。