(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上下一対の面板を備え、下部構造と上部構造との間に介装される免震支承体を、上記下部構造及び上記上部構造の少なくとも一方に対し、該免震支承体の浮き上がりを許容しながら上記面板にて取付ボルトにより連結するための連結防振装置であって、
上記免震支承体の面板には、上記取付ボルトの軸部を挿通可能なボルト挿通孔が穿設されており、
上記ボルト挿通孔に挿入固定された外筒と、
上記外筒の内側に配置された筒状の第1弾性体と、
上記第1弾性体の内側に配置され、上記取付ボルトの軸部を挿通可能な内筒と
を備え、
上記取付ボルトは、頭部が上記面板から離隔した状態で、軸部が上記内筒に挿通されて上記下部構造及び上記上部構造の少なくとも一方に締結されるようになっており、
上記取付ボルトの頭部と、上記外筒及び上記第1弾性体の少なくとも一方との間には、該取付ボルトの軸部周りに位置する筒状の第2弾性体が設けられ、
上記内筒は、上記取付ボルトの軸部に対してその軸方向に相対移動可能に設けられている
ことを特徴とする免震支承体の連結防振装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のものでは、実際に鉛直方向への変位が生じたときに、緩衝材である弾性体がせん断変形するため、例えばさらに水平方向の引張力が作用した場合には、フランジプレートと取付ボルトの軸部との間の水平力に対する受圧面積が減少し、連結部分への負担が大きくなるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、フランジプレートの浮き上がりに対しても、フランジプレートとボルトの軸部との間の受圧面積を維持し、連結部分への負担を軽減し得る連結防振装置をもたらすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明では、免震支承体の連結防振装置について、取付ボルトの軸部側の内筒を軸部に対してその軸方向に相対移動可能とするとともに、フランジプレートと軸部間に設けられた弾性構造の少なくとも一部と取付ボルトの頭部との間にさらに追加の弾性体を配置するようにした。
【0011】
すなわち、ここに開示する免震支承体の連結防振装置は、上下一対の面板を備え、下部構造と上部構造との間に介装される免震支承体を、上記下部構造及び上記上部構造の少なくとも一方に対し、該免震支承体の浮き上がりを許容しながら上記面板にて取付ボルトにより連結するための連結防振装置であって、上記免震支承体の面板には、上記取付ボルトの軸部を挿通可能なボルト挿通孔が穿設されており、上記ボルト挿通孔に挿入固定された外筒と、上記外筒の内側に配置された筒状の第1弾性体と、上記第1弾性体の内側に配置され、上記取付ボルトの軸部を挿通可能な内筒とを備え、上記取付ボルトは、頭部が上記面板から離隔した状態で、軸部が上記内筒に挿通されて上記下部構造及び上記上部構造の少なくとも一方に締結されるようになっており、上記取付ボルトの頭部と、上記外筒及び上記第1弾性体の少なくとも一方との間には、該取付ボルトの軸部周りに位置する筒状の第2弾性体が設けられ、上記内筒は、上記取付ボルトの軸部に対してその軸方向に相対移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0012】
内筒を上記取付ボルトの軸部に対して相対移動可能に設けることにより、面板の浮き上がり時に内筒側が追従して移動し、水平方向や回転方向の引張力に対する受圧面積の減少を抑制することができるから、水平方向ばねが維持されて取付ボルトの保護及び水平力の伝達性が向上する。
【0013】
また、取付ボルトの頭部と外筒及び第1弾性体の少なくとも一方との間に第2弾性体が存在することにより、面板が浮き上がったときに面板が直接取付ボルトの頭部に接触することを防止し、取付ボルトにかかる衝撃力を緩和することができる。
【0014】
さらに、外筒が面板のボルト挿通孔に固定され且つ内筒は取付ボルトの軸部に対して相対移動可能であるため、免震支承体に回転方向の引張力が生じても、取付ボルト周りのこじり入力を解消しやすくなり、回転方向に作用する引張力に対応しやすくなるとともに、取付ボルトと面板とのかじりが抑制される。
【0015】
好ましい態様では、上記第1弾性体と上記第2弾性体との間にスペーサが設けられ、上記外筒、上記第1弾性体及び上記内筒と、上記第2弾性体とは、上記スペーサを隔てて分離している。これにより、面板の厚さ違いには外筒、第1弾性体及び内筒の設計変更で対応することができ、作業性が向上するとともに、コスト面においても有利となる。
【0016】
別の好ましい態様では、上記第1弾性体と上記第2弾性体とは連続して一体に形成されている。第1弾性体と第2弾性体とを一体に形成することで、連結防振装置の耐久性が向上する。また、連結防振装置の設置が容易となる。
【0017】
好ましい態様では、上記第1弾性体は、複数の筒状弾性体と筒状剛性部材とが半径方向に交互に積層された積層構造を有している。取付ボルトと内筒との間にかじりが生じた場合であっても、第1弾性体が積層構造を有していることにより、せん断変形で面板の浮き上がりに追従するため、取付ボルトの保護機能を維持することができる。また、かじりの発生を防止すべくボルト挿通孔を大きくする等の措置を講ずる必要が無いため、容易に設置することができる。
【0018】
好ましい態様では、上記取付ボルトの頭部と上記第2弾性体との間にワッシャが配置されている。これにより、面板浮き上がり時に、第2弾性体が取付ボルトの頭部に接触するような場合であっても、ワッシャを設けていることで、第2弾性体に係る衝撃力を緩和し、第2弾性体の劣化を防止することができる。
【0019】
好ましい態様では、上記免震支承体は、上記上下一対の面板間に、複数のゴム状弾性板及び剛性板が交互に積層された積層体を備えている。これにより、建築構造物や土木建築物の免震構造、水平力分散構造として、地盤側の基礎等の下部構造と、例えばビル、橋梁、塔等の上部構造との間に介装され得る。
【0020】
好ましい態様では、上記取付ボルトの軸部は、上記下部構造又は上記上部構造のベースプレートに締結されている。これにより、ベースプレートの交換のみで種々のボルトサイズに対応することができる。
【0021】
好ましい態様では、上記外筒の内周面は、上記取付ボルトの頭部側に向かって拡径された外筒凹部を有しており、上記第1弾性体は、上記外筒の内周面に沿うように上記取付ボルトの頭部側に向かって拡径された段差部を有しており、上記内筒の外周面は、上記第1弾性体の内周面に沿うように上記取付ボルトの頭部側に向かって拡径された内筒凸部を有している。これにより、面板が浮き上がったときに、内筒が外筒に追従して確実に上昇し得る。
【0022】
好ましい態様では、上記外筒は、上記面板にボルト固定されている。これにより、浮き上がった面板が下降するときに、外筒を面板とともに確実に下降させることができる。
【0023】
好ましい態様では、上記取付ボルトと上記内筒との間に、筒状の保護用スペーサが配置されており、上記取付ボルトは、上記保護用スペーサに挿通固定されており、上記内筒は、上記保護用スペーサに対し相対移動可能に設けられている。これにより、面板の移動に伴う取付ボルトへの水平方向の負荷を低減させる、すなわちせん断負荷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上述べたように、本発明によると、内筒を上記取付ボルトの軸部に対して相対移動可能に設けることにより、面板の浮き上がり時に内筒側が追従して移動し、水平方向や回転方向の引張力に対する受圧面積の減少を抑制することができるから、水平方向ばねが維持されて取付ボルトの保護及び水平力の伝達性が向上する。また、取付ボルトの頭部と外筒及び第1弾性体の少なくとも一方との間に第2弾性体が存在することにより、面板が浮き上がったときに面板が直接取付ボルトの頭部に接触することを防止し、取付ボルトにかかる衝撃力を緩和することができる。さらに、外筒が面板のボルト挿通孔に固定され且つ内筒は取付ボルトの軸部に対して相対移動可能であるため、免震支承体に回転方向の引張力が生じても、取付ボルト周りのこじり入力を解消しやすくなり、回転方向に作用する引張力に対応しやすくなるとともに、取付ボルトと面板とのかじりが抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0027】
(第1実施形態)
<積層ゴム支承体について>
図1に示すように、本実施形態に係る連結防振装置1が適用される積層ゴム支承体(免震支承体)3は、複数のゴム状弾性板34及び剛性板35が交互に積層された積層体31と、この積層体31の上面及び下面に設けられた上下一対のフランジプレート(面板)32,33とを備えている。
【0028】
積層ゴム支承体3は、建築構造物や土木建築物の免震構造、水平力分散構造として、地盤側の基礎等の下部構造16と、例えばビル、橋梁、塔等の上部構造15との間に介装されている。上部構造15及び下部構造16の各々下面及び上面には、積層ゴム支承体3を取り付けるための上側ベースプレート42及び下側ベースプレート43が設けられており、積層ゴム支承体3は、上記フランジプレート32,33を介して、ベースプレート42,43にボルト締結されている。上部構造15及び下部構造16は、ベースプレート42,43を備えることで、ベースプレート42,43の交換のみで種々のボルトサイズに対応することができる。
【0029】
積層体31のゴム状弾性板34は、下部構造16の揺動を吸収して上部構造15への伝達を抑制するためのものである。ゴム状弾性板34は、例えば500mm〜2000mmの外径を有するように、天然ゴムもしくは合成ゴムをベースとして、例えばマイカやフェライト等の配合剤を添加することにより高減衰の特性を有するようにしたものであり、予め加硫成形されて1枚毎に形成されたものである。
【0030】
剛性板35は、積層ゴム支承体3に上部構造15の荷重を支持するための耐力を与えるものである。剛性板35は、所定の板厚を有する例えば鋼板等の金属板材により形成されたものであり、上記各ゴム状弾性板34よりも所定寸法だけ大きい外径を有するように形成されている。
【0031】
ゴム状弾性板34及び剛性板35間、並びに、ゴム状弾性板34及びフランジプレート32,33間の接触面は、加硫接着により一体的に形成されている。
【0032】
積層ゴム支承体3は、水平方向のあらゆる向きの揺れに対応できるように、円柱形状とすることが好ましいが、四角形、五角形などの多角形状であってもよい。積層ゴム支承体3の形状や構成態様に応じて、ゴム状弾性板34、剛性板35、フランジプレート32,33の形状等は適宜選択され得る。
【0033】
フランジプレート32,33は、積層ゴム支承体3を各々上部構造15及び下部構造16に取り付けるための板状部材であり、鋼板、鉄板、アルミ板、銅板、SUS板等の金属板以外に、硬質プラスチック板を使用してもよい。
【0034】
フランジプレート32,33の厚さは、特に限定されるものではないが、一般的に公知の厚さを採用することができ、積層ゴム支承体3を確実に上部構造15及び下部構造16に固定するとともに、積層ゴム支承体3の強度を向上させる観点から、例えば20mm〜80mmとすることができる。
【0035】
上側フランジプレート32には、一般的なボルト挿通孔32Aが複数箇所、例えば8〜16箇所穿設されている。積層ゴム支承体3は、上側フランジプレート32を介して、16本の一般的なボルト(図示せず。)により、上部構造15の下面に設けられた上側ベースプレート(ベースプレート)42に固定保持されている。
【0036】
また、下側フランジプレート33にも、上記取付ボルト2の軸部22を挿通可能なボルト挿通孔33Aが上側フランジプレート32のボルト挿通孔32Aと同じ数だけ穿設されている。積層ゴム支承体3は、下側フランジプレート33を介して、取付ボルト2により、下部構造16の上面に設けられた下側ベースプレート(ベースプレート)に固定保持されている。
【0037】
ボルト挿通孔32A,33Aの形状は、特に限定されるものではなく、一般的に公知の形状を採用することができ、例えば、軸方向に垂直な断面の形状が円形のものに限らず、楕円形や多角形などの形状を採用することができる。
【0038】
ボルト挿通孔32A,33Aに挿通される、上記ボルト及び取付ボルト2のサイズは、特に限定されるものではないが、一般的なサイズのものを用いることができ、例えばM30〜M42等のサイズのものを用いることができる。
【0039】
ボルト挿通孔32A,33Aの径は、特に制限されるものではなく、上記取付ボルト2のサイズ及び連結防振装置1の取付けの有無に応じて適宜調節され得るが、連結防振装置1を取付ける場合には、取付ボルト2の十分な保護機能を付与する観点から、例えば40mm〜100mmとすることができる。
【0040】
ボルト挿通孔32A,33Aの数及び各々に締結されるボルト数は、強度の観点から、同数であることが好ましいが、これに限られるものではない。
【0041】
<連結防振装置について>
そして、
図2に示すように、下側フランジプレート33と取付ボルト2の間には、本実施形態に係る連結防振装置1が配置されている。
【0042】
連結防振装置1は、積層ゴム支承体3の浮き上がりを許容しながら下側フランジプレート33と取付ボルト2とを連結する役割を有する。
【0043】
図2に示すように、連結防振装置1は、ボルト挿通孔33Aに挿入固定された外筒7と、外筒7の内側に配置された筒状の第1弾性体10と、上記第1弾性体10の内側に配置され、上記取付ボルト2の軸部22を挿通可能な内筒9とを備えている。
【0044】
外筒7は、第1弾性体10を補強しつつ、下側フランジプレート33の動きに対して確実に追従するようにボルト挿通孔33Aに固定されるとともに、連結防振装置1及び取付ボルト2が下側フランジプレート33の動きにより損傷劣化するのを防ぐ役割を有する。
【0045】
下側フランジプレート33のボルト挿通孔33Aの内周面及びその積層体31側の出口周辺を覆うように密着固定されている。外筒7は、例えば、鋼、鉄、アルミ、銅、SUS等の金属、硬質プラスチック等を使用することができ、下側フランジプレート33と同一の材料を使用してもよい。外筒7は、ボルト挿通孔33Aに嵌合されて密着固定可能となるように、ボルト挿通孔33Aの形状に合わせた形状とすることができる。外筒7は、筒状であり、
図2に示すように、軸方向の高さは下側フランジプレート33の厚さと同程度であり、特に下側ベースプレート43側は下側フランジプレート33から突出しないように形成されている。また、取付ボルト2の頭部21側は、
図2に示すように下側フランジプレート33から突出するサイズであってもよい。外筒7の半径方向の厚さは、特に制限されるものではないが、下側フランジプレート33に確実に固定する観点から、ボルト挿通孔33A内に位置する部分については例えば2mm〜10mm、下側フランジプレート33から突出する部分については、下側フランジプレート33及び取付ボルト2の保護の観点から、例えば2mm〜10mmとすることができる。外筒7の下側フランジプレート33から取付ボルト2の頭部21側に突出する部分の軸方向の高さは、下側フランジプレート33及び取付ボルト2の保護の観点から、例えば30mm〜50mmとすることができる。
【0046】
第1弾性体10は、下側フランジプレート33の動き、特に水平方向の引張力を吸収して取付ボルトにかかる負担を軽減するためのものであり、天然ゴムもしくは合成ゴムを用いることができる。
【0047】
第1弾性体10は、外筒7と例えば加硫接着等で密着固定されている。
【0048】
第1弾性体10の水平方向のばね定数は、特に制限されるものではないが、下側フランジプレート33の動きを吸収して取付ボルト2にかかる負担を軽減する観点から、例えば1kN/mm〜20kN/mmとすることができる。
【0049】
第1弾性体10の形状は、筒状であり、外周形状は外筒7の内径に沿った形状であることが好ましく、内周形状は内筒9の外周に沿った形状であることが好ましい。第1弾性体10の軸方向の高さは、十分な水平方向ばねを維持し取付ボルト2を保護する観点から、下側フランジプレート33の厚さと同程度であることが好ましい。
【0050】
第1弾性体10の半径方向の厚さは、特に制限されるものではないが、下側フランジプレート33の水平方向の動きを吸収する十分な水平方向ばねを付与する観点から、例えば2mm〜10mmとすることができる。
【0051】
また、後述するように、第1弾性体10は、天然ゴムもしくは合成ゴムの筒状弾性体と筒状剛性部材との積層構造としてもよい。詳細は第2実施形態において説明する。
【0052】
内筒9は、外筒7と同様の材料を使用することができる。内筒9は、取付ボルト2の軸部22に対してその軸方向に相対移動可能に設けられている。内筒9の内周の形状及びサイズは取付ボルト2の軸部22の軸方向に垂直な断面の形状及びサイズと同一とすることができる。内筒9の半径方向の厚さは、特に制限されるものではないが、連結防振装置1を補強・保護する観点から、周方向及び軸方向に一定であることが好ましく、例えば2mm〜10mmとすることができる。内筒9の外周形状は、特に限定されるものではないが、内筒9の厚さが周方向に一定の場合には、内筒9の内周形状と同様の形状となる。内筒9の軸方向の高さは、取付ボルト2の保護及び連結防振装置1の補強・保護の観点から、下側フランジプレート33の厚さと同程度であることが好ましい。内筒9は、第1弾性体10と例えば加硫接着等で密着固定されている。
【0053】
なお、外筒7、第1弾性体10及び内筒9は、下部構造16の下側ベースプレート43には固定されていない。外筒7、第1弾性体10及び内筒9は、取付ボルト2の軸部22に対してその軸方向に相対移動可能に設けられている。
【0054】
また、取付ボルト2は、その頭部21が下側フランジプレート33から離隔した状態で、その軸部22が内筒9に挿通されて下側ベースプレート43に締結されるようになっている。そして、取付ボルト2の頭部21と、外筒7及び第1弾性体10との間には、取付ボルト2の軸部22周りに位置する筒状の第2弾性体6が設けられている。
【0055】
下側フランジプレート33の浮き上がり時に、下側フランジプレート33が取付ボルト2に直接接触すると、取付ボルト2への衝撃が大きく、取付ボルト2の損傷、破損を招く虞がある。第2弾性体6は、下側フランジプレート33の浮き上がり時に、下側フランジプレート33が、特に取付ボルト2の頭部21に直接接触するのを防止し、取付ボルト2にかかる負担を軽減する役割を有している。本実施形態に係る連結防振装置1においては、
図1及び
図2に示すように、第2弾性体6は、取付ボルト2の頭部21と、外筒7及び第1弾性体10との間の空間を埋めるように設けられている。本構成によれば、鉛直方向や水平方向、回転方向の引張力により下側フランジプレート33が浮き上がった時に、下側フランジプレート33は頭部21に直接接触することが防止される。また、下側フランジプレート33の浮き上がりに伴って第2弾性体6は収縮するため、第2弾性体6の復元力により均一に下側フランジプレート33が押し戻されて、下側フランジプレート33の位置の回復が容易となるとともに、下側フランジプレート33の回復時にかかり得る取付ボルト2への負担が軽減される。なお、第2弾性体6の鉛直方向の厚さは、適宜変更することができる。また、第2弾性体6の材質としては、第1弾性体10と同様に天然ゴムや合成ゴム等の材料を用いることができる。第1弾性体10と第2弾性体6の材料は同じでもよく異なっていてもよい。
【0056】
また、第2弾性体6の鉛直方向のばね定数は、特に制限されるものではないが、下側フランジプレート33の動きを吸収して取付ボルト2にかかる負担を軽減する観点から、例えば50N/mm〜1kN/mmとすることができる。第1弾性体10と第2弾性体6のばね定数は、同じでもよく異なっていてもよい。
【0057】
第1弾性体10と第2弾性体6の材料やばね定数は、連結防振装置1が適用される上部構造15や下部構造16の設置状況・種類等によって適宜選択され得る。
【0058】
第2弾性体6の形状は、筒状であり、その内周形状は取付ボルト2の軸部22の外周形状と同様の形状とすることができる。第2弾性体6の半径方向の厚さは、周方向及び軸方向に一定であってよいし、また
図1及び
図2に示すように、ワッシャ5及びスペーサ8の接着部分に近づく程厚く、ワッシャ5及びスペーサ8の中間位置あたりで薄い厚さとなるように構成してもよい。なお、第2弾性体6の内周面は、鉛直方向圧縮による変形時に取付ボルト2の軸部22との擦れによる損傷・劣化を防ぐ観点から、軸部22の外周面から例えば5mm〜20mm程度離れていることが望ましい。従って、第2弾性体6の内径は、例えば40mm〜100mmとすることができる。また、第2弾性体6の外径は、特に制限されるものではないが、下側フランジプレート33の浮き上がりに対して取付ボルト2を保護すべく十分な鉛直方向ばねを付与する観点から、例えば30mm〜80mmとすることができる。
【0059】
図2に示すように、第2弾性体6は、取付ボルト2の頭部21と、外筒7及び第1弾性体10との間に配置されている。第2弾性体6は、取付ボルト2の頭部21と、外筒7又は第1弾性体10のいずれか一方との間に配置される構成としてもよい。
【0060】
取付ボルト2の頭部21と第2弾性体6との間にワッシャ5が配置されている。ワッシャ5は設ける構成としてもよいし、設けない構成としてもよい。ワッシャ5を設けた場合には、以下の作用効果を有する。すなわち、本実施形態に係る連結防振装置1では、下側フランジプレート33が浮き上がると第2弾性体6は取付ボルト2の頭部21に接触する。ワッシャ5を設けることにより、接触時に生じる衝撃力を緩和して第2弾性体6の劣化を防止することができる。ワッシャ5は、外筒7と同様の材料を使用することができる。ワッシャ5の形状は、特に制限されるものではないが、一般的に公知な例えば円形のドーナツ形状のものを採用することができる。ワッシャ5の内径は、特に制限されるものではなく、一般的に公知のサイズとすることができ、例えば30mm〜50mmとすることができる。ワッシャ5の外径は、特に制限されるものではなく、一般的に公知のサイズとすることができ、例えば50mm〜80mmである。ワッシャ5の軸方向の高さ(取付ボルト2の軸部22の軸方向の厚さ)は、特に制限されるものではなく、一般的に公知のサイズとすることができ、取付ボルト2及び第2弾性体6の保護の観点から、例えば4.0mm〜10mmとすることができる。また、例えば、取付ボルト2の頭部21の径が第2弾性体6を覆うように十分大きい場合等は、上記衝撃力は、第2弾性体6全体にかかるため、ワッシャ5を設けない構成としてもよい。
【0061】
第1弾性体10と第2弾性体6との間にはスペーサ8が設けられている。外筒7、第1弾性体10及び内筒9と、第2弾性体6とは、スペーサ8を隔てて分離している。これにより、下側フランジプレート33の厚さ違いには外筒7、第1弾性体10及び内筒9の設計変更で対応することができ、作業性が向上するとともに、コスト面においても有利となる。スペーサ8は、外筒7と同様の材料を使用することができる。スペーサ8の内径は、特に制限されるものではなく、作業性向上及びコスト面の観点から、例えば30mm〜50mmとすることができる。スペーサ8の外径は、特に制限されるものではなく、作業性向上及びコスト面の観点から、例えば50mm〜80mmとすることができる。スペーサ8の軸方向の高さ(取付ボルト2の軸部22の軸方向の厚さ)は、特に制限されるものではなく、作業性向上及びコスト面の観点から、例えば2mm〜10mmとすることができる。また、スペーサ8を設けない構成としてもよく、この場合には、第3実施形態で後述するように第1弾性体10と第2弾性体6とを連続して一体に形成することが好ましい。
【0062】
ワッシャ5、第2弾性体6及びスペーサ8は互いの接触面を例えば加硫接着などで固定させてもよいし、互いに分離させた構成としてもよい。また、スペーサ8は、外筒7、第1弾性体10及び内筒9とは、非接着の状態とすることが好ましい。
【0063】
図3は、本実施形態に係る連結防振装置1を備えた積層ゴム支承体3について、下部構造16の揺動により生じた鉛直方向の引張力に応じて下側フランジプレート33が浮き上がった状態を示している。本実施形態に係る連結防振装置1によれば、内筒9を取付ボルト2の軸部22に対して相対移動可能に設けているため、
図3に示すように、例えば下側フランジプレート33が鉛直方向に浮き上がった時には、内筒9側が下側フランジプレート33の動きに追従して移動する。従って、浮き上がった状態でさらに水平方向や回転方向の引張力が作用した場合であっても、内筒9と下側フランジプレート33との間の受圧面積の減少を抑制することができ、取付ボルト2の保護及び水平力の伝達性が向上する。また、取付ボルト2の頭部21と外筒7及び第1弾性体10との間の空間を埋めるように第2弾性体6が存在することにより、下側フランジプレート33が浮き上がった時の取付ボルト2にかかる衝撃力が緩和される。
【0064】
また、
図4は、本実施形態に係る連結防振装置1を備えた積層ゴム支承体3について、下部構造16の揺動により生じた回転方向の引張力に応じて下側フランジプレート33の一部が浮き上がった状態を示している。外筒7は下側フランジプレート33のボルト挿通孔33Aに固定されているとともに、内筒9は取付ボルト2の軸部22に対して相対移動可能であるため、こじり入力を解消しやすくなり、回転方向に作用する引張力に対応しやすくなる。そして、取付ボルト2と下側フランジプレート33とのかじりが抑制される。
【0065】
また、外筒7、第1弾性体10及び内筒9と、第2弾性体6とがスペーサ8を介して分離構造を有しているため、鉛直方向の引張力と回転方向の引張力が同時に生じた場合であっても、第2弾性体6の復元力が下側フランジプレート33に均一に伝わる。
【0066】
なお、本実施形態において、連結防振装置1は、下部構造16側の下側ベースプレート43と下側フランジプレート33との連結部分に設置されているが、上部構造15側の上側ベースプレート42と上側フランジプレート32との連結部分に設置されてもよい。また、下部構造16側と上部構造15側の両方に設置されていてもよい。
【0067】
(第2実施形態)
以下、本発明に係る他の実施形態について詳述する。なお、これらの実施形態の説明において、第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0068】
本実施形態において、第1弾性体10は、
図5に示すように、筒状弾性体10Aと中間筒10Bと筒状弾性体10Cとにより構成されている。すなわち、本実施形態において、第1弾性体10は、2つの筒状弾性体10A,10Cと、筒状剛性部材としての中間筒10Bとが半径方向に交互に積層された積層構造を有している。第1弾性体10は、さらに3以上の筒状弾性体及び2以上の筒状剛性部材を備えた積層構造としてもよい。
【0069】
筒状弾性体10A,10Cは、第1実施形態の第1弾性体10と同様の材料を用いることができる。筒状弾性体10A,10Cと、中間筒10Bは、例えば一体成形等により互いに接着固定されている。
【0070】
筒状弾性体10A,10Cの半径方向の厚さは、特に制限されるものではないが、下側フランジプレート33の水平方向の動きを吸収する十分な水平方向ばねを付与する観点から、例えば2mm〜15mmとすることができる。筒状弾性体10A,10Cの半径方向の厚さは、互いに同一としてもよく、互いに異なる厚さとしてもよい。
【0071】
中間筒10Bは、外筒7及び内筒9と同様の材料を用いることができる。筒状弾性体10A,10Cの水平方向のばね定数は、第1実施形態の第1弾性体10と同様であってよい。筒状弾性体10A,10Cの水平方向のばね定数は、同一であっても異なっていてもよい。
【0072】
中間筒10Bの半径方向の厚さは、特に限定されるものではなく、水平方向に生じる応力を筒状弾性体10A,10C全体に水平方向に均一に伝える観点から、軸方向及び周方向について一定であることが望ましく、例えば2mm〜15mmとすることができる。中間筒10Bの軸方向の高さは内筒9の軸方向の高さと同一とすることが好ましい。
【0073】
本構成によれば、ボルト挿通孔33Aを大きくしなくても、取付ボルト2と下側フランジプレート33とのかじりを抑制することができるので、通常の径のボルト挿通孔であっても容易に設置できる。また、例えば取付ボルト2と内筒9とが引っ掛かったような場合であっても、第1弾性体10が積層構造を有していることにより、せん断変形で下側フランジプレート33の浮き上がりに追従するため、取付ボルト2の保護機能を維持することができる。さらに下側フランジプレート33の浮き上がり後も水平方向ばねの減少が抑制される。また、第2弾性体6は、第1実施形態と同様に、取付ボルト2の頭部21と外筒7及び第1弾性体10との間の空間を埋めるように配置されているため、外筒7及び第1弾性体10の少なくとも一方が第2弾性体6により弾性圧接されており、下側フランジプレート33の元の位置に戻ろうとする原点復元力を維持することができる。
【0074】
(第3実施形態)
第1及び第2実施形態において、第1弾性体10と第2弾性体6とはスペーサ8を介して分離構造を有していたが、本実施形態に係る連結防振装置1では、
図6に示すように、スペーサ8を備えず、第1弾性体10の筒状弾性体10A,10Cと、第2弾性体6とは、連続して一体に形成されている。すなわち、例えば外筒7、中間筒10B、内筒9、及びワッシャ5の剛性材料部品と、第1弾性体10及び第2弾性体6の弾性体部品とが加硫接着されて一体的に成形された構成とすることができる。
【0075】
本構成によれば、第1弾性体10、第2弾性体6を一体に形成することで、連結防振装置1の耐久性が向上する。また、連結防振装置1の設置が容易となる。
【0076】
(第4実施形態)
本実施形態に係る連結防振装置1では、
図7に示すように、取付ボルト2と内筒9との間に、筒状の保護用スペーサ18を配置する構成となっている。
【0077】
保護用スペーサ18は、取付ボルト2を保護するためのものであり、
図7に示すように、軸方向に延びる筒状部分18Aと、水平方向に延びる板状部分18Bとを備えている。
【0078】
軸方向に延びる筒状部分18Aは、その内側に取付ボルト2の軸部22を挿通させるための孔を備えた円筒状に形成されている。取付ボルト2の軸部22は、この筒状部分18Aの孔に挿通固定される。これにより、下側フランジプレート33の移動に伴って生じる、取付ボルト2に対する水平方向の負荷、すなわち取付ボルト2にかかるせん断負荷を効果的に抑制することができる。
【0079】
また、水平方向に延びる板状部分18Bは、取付ボルト2の頭部21を保護するためのものであり、筒状部分18Aのうち頭部21に接する個所から水平方向外周側に延びた円板状に形成されている。そして、取付ボルト2の頭部21は、上記板状部分18Bにより支持されている。板状部分18Bを設けることで、取付ボルト2に対する水平方向の負荷に加え、鉛直方向の負荷についても抑制することができる。なお、板状部分18Bを設けていることから、ワッシャ5の設置を省略することができる。
【0080】
保護用スペーサ18の材質は、特に限定されるものではなく、外筒7と同様の材料を用いて形成することができる。
【0081】
第1〜第3実施形態に係る連結防振装置1では、内筒9は取付ボルト2の軸部22に対し軸方向に相対移動可能に設けられていたが、第4実施形態に係る連結防振装置1では、内筒9は保護用スペーサ18の筒状部分18Aに対し軸方向に相対移動可能に設けられている。なお、内筒9の内周面と保護用スペーサ18との軸方向に延びる筒状部分18Aとの間には僅かな隙間9Cが形成されている。隙間9Cを設けることで、下側ベースプレート43のボルト孔位置と下側フランジプレート33のボルト挿通孔33Aとの位置ずれを吸収し、施工時の組付け性が向上する。隙間9Cの径方向の大きさ、すなわち保護用スペーサ18の筒状部分18Aの外周面と内筒9の内周面との距離は、例えば0.5mm〜1mm程度とすることができる。
【0082】
また、保護用スペーサ18の筒状部分18Aの外周面と、内筒9の内周面とは、摺動面となるが、双方のうちの少なくとも一方の摺動面に、摺動時の摩擦低減の観点から、例えばグリス等の潤滑剤の塗布や、例えばグラファイト、フッ素樹脂(PTFE)、二硫化モリブデン、潤滑メッキ等の各種表面処理を施す構成としてもよい。本構成によれば、摺動面の摩擦低減により、摺動時の異音の発生や、摺動面の摩耗、損傷等を防止することができる。
【0083】
第2弾性体6は、第3実施形態と同様に、第1弾性体10と連続して一体に成形されている一方、後述するように、体積が大幅に低減された構成となっている。具体的には、第6実施形態の説明において後述するように、軸方向の厚さが薄い構成となっており、第2弾性体6における取付ボルト2の頭部21側の表面と保護用スペーサ18の水平方向に延びた板状部分18Bの下面との間にはクリアランスCLが設けられている。さらに、第2弾性体6の内周面と保護用スペーサ18との間には、内筒9と保護用スペーサ18との間の隙間9Cと同様に、間隙6Cが設けられている。なお、間隙6Cの径方向の大きさ、すなわち保護用スペーサ18の筒状部分18Aの外周面と第2弾性体6の内周面との距離は、第2弾性体6の体積を低減させるとともに第2弾性体6の損傷を防ぐ観点から、隙間9Cよりも大きな構成となっており、具体的には例えば1mm〜20mmとすることができる。第2弾性体6の体積を低減させることで、よりコンパクトな連結防振装置1を得ることができる。
【0084】
(第5実施形態)
本実施形態に係る連結防振装置1では、第4実施形態に係る連結防振装置1の構成に加えて、
図8に示すように、外筒7、第1弾性体10、及び内筒9に段差構造を設ける、すなわち、外筒凹部71、段差部10E、及び内筒凸部91を設ける構成となっている。
【0085】
外筒凹部71は、外筒7の内周面であって、取付ボルト2の頭部21側に設けられており、その頭部21側に向かって拡径された形状に形成されている。
【0086】
段差部10Eは、第1弾性体10に設けられており、外筒7の内周面に沿うように取付ボルト2の頭部21側に向かって拡径された形状を有している。具体的には、第1弾性体10の外周面及び内周面が、ともに取付ボルト2の頭部21側に向かって拡径されるように形成されて、段差部10Eを構成している。換言すると、第1弾性体10の外周面及び内周面は、外筒7の内周面に沿って、外筒7の外筒凹部71の形状に追従するように、拡径された形状となっている。
【0087】
内筒凸部91は、内筒9の外周面に設けられており、第1弾性体10の内周面に沿うように取付ボルト2の頭部21側に向かって拡径された形状を有している。
【0088】
外筒7、第1弾性体10、及び内筒9は、互いに接着固定されているため、下側フランジプレート33の浮き上がりに応じて外筒7が上昇したときには、第1弾性体10及び内筒9もその動きに追従して上昇する。この上昇は、第1〜第4実施形態に係る連結防振装置1では、ほぼ内筒9、第1弾性体10、及び外筒7間の接着力のみにより支持されている。この点、本構成によれば、外筒凹部71、段差部10E、及び内筒凸部91からなる段差構造を設けることで、第1弾性体10及び外筒7による内筒9の支持力が向上する。そうして、下側フランジプレート33の浮き上がりに際し、内筒9を外筒7の動きに追従させて確実に取付ボルト2の頭部21側へ上昇させることができる。
【0089】
なお、本実施形態では、段差部10Eは、一段であるが、必要に応じて多段に構成してもよい。また、外筒凹部71、段差部10E、及び内筒凸部91からなる段差構造の位置は、
図8に示すように取付ボルト2の頭部21側に設けられているが、下側ベースプレート43側に設ける構成としてもよい。
【0090】
外筒7の外筒凹部71の径方向の厚さは、特に限定されるものではなく、外筒7、第1弾性体10及び内筒9のうちボルト挿通孔33Aに挿入された部分全体の径方向の厚さの範囲内で連結防振装置1の構成に応じて適宜変更し得る。また、第1弾性体10における段差部10Eの径方向の最大厚さについても、特に限定されるものではなく、上記範囲内で連結防振装置1の構成に応じて適宜変更し得る。さらに、内筒9の内筒凸部91の径方向の最大厚さについても、特に限定されるものではなく、上記範囲内で連結防振装置1の構成に応じて適宜変更し得る。
【0091】
(第6実施形態)
本実施形態に係る連結防振装置1では、第5実施形態に係る連結防振装置1の構成に加え、
図9〜
図11に示すように、外筒7を下側フランジプレート33にボルト固定する構成となっている。
【0092】
図9に示す構成では、外筒7のうち、下側フランジプレート33から突出する部分が延設されて外筒延設部72が設けられている。外筒延設部72は、ボルト挿通孔33A周りに円形に形成されている。そして、外筒延設部72には、複数の外筒ボルト穴72Aが形成されている。下側フランジプレート33の取付ボルト2の頭部21側の表面には、外筒7が配置されたときに複数の外筒ボルト穴72Aが形成された位置に相当する位置に外筒ボルト締結孔33Bが設けられている。そうして、外筒取付ボルト73が、外筒ボルト穴72Aを介して、外筒ボルト締結孔33Bに締結されることにより、外筒7は、下側フランジプレート33にボルト固定される。なお、
図9に示すように、積層体31のせん断変形に伴い生じるせん断力の作用による外筒7のボルト固定構造の破損を防止する観点から、外筒取付ボルト73と外筒ボルト穴72Aとの間にカラー78を配置する構成としてもよい。
【0093】
本構成は、
図10に示すように、外筒延設部72の外側に外筒取付部材72Bを設ける構成としてもよい。本構成では、外筒ボルト穴72Aは、外筒取付部材72Bに設けられており、外筒取付部材72Bが下側フランジプレート33にボルト固定される。そうして、外筒取付部材72Bと下側フランジプレート33との間に外筒7の外筒延設部72が保持されることで、外筒7は下側フランジプレート33にボルト固定される構成となっている。
【0094】
また、
図11に示す構成では、外筒7及び下側フランジプレート33の下側ベースプレート43側には、それぞれ外筒溝部75及び下側フランジプレート溝部33Cが形成されている。外筒溝部75及び下側フランジプレート溝部33Cにおける、取付ボルト2の頭部21側の面は、
図11に示すように、面一となっている。そして、これら外筒溝部75及び下側フランジプレート溝部33Cの頭部21側の面に跨がるように外筒取付板74が設けられており、外筒取付板74に形成された外筒取付板ボルト穴74Aを通じて、外筒取付板74は、外筒取付ボルト73により外筒7にボルト固定されている。
【0095】
図9〜
図11の構成によれば、浮き上がった下側フランジプレート33が下降するときに、外筒7を下側フランジプレート33とともに確実に下降させることができる。
【0096】
外筒取付部材72Bや外筒取付板74の材質は、特に限定されるものではないが、好ましくは外筒7と同様の材料を用いて形成することができる。
【0097】
なお、上記第4〜第6実施形態に係る連結防振装置1では、第2弾性体6の厚さは、第1〜第3実施形態のものと比較して薄い構成となっている。
【0098】
この点、
図12に、
図9に示す連結防振装置1を備えた積層ゴム支承体3について、下側フランジプレート33の一部が浮き上がった状態を示している。
図12に示すように、下側フランジプレート33が浮き上がった状態となっても、第2弾性体6の軸方向の厚さが薄いため、第2弾性体6の頭部21側は、保護用スペーサ18の板状部分18Bに到達しないか、ほとんど到達しない構成となっている。言い換えると、下側フランジプレート33の移動に伴い、保護用スペーサ18の板状部分18Bの下面と第2弾性体6との軸方向のクリアランスCLは増減する一方、第2弾性体6の圧縮変形は全く生じないか、ほとんど生じない構成となっている。なお、第1〜第3実施形態に係る連結防振装置1では、下側フランジプレート33が浮き上がった後、第2弾性体6の復元力により均一に押し戻される構成であった。これに対し、第4〜第6実施形態に係る連結防振装置1では、第2弾性体6のボリュームを低減させるとともにクリアランスCLを設ける構成とすることで、いわばクリアランスCLの軸方向の高さの増減により下側フランジプレート33の位置の変化を吸収する構成となっている。そうして、第2弾性体6の損傷を防ぐとともに、よりコンパクトな連結防振装置1をもたらすことができる。