(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809970
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
F24C 3/12 20060101AFI20201221BHJP
F24C 3/02 20060101ALI20201221BHJP
F23N 5/24 20060101ALI20201221BHJP
F23D 14/06 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
F24C3/12 X
F24C3/12 K
F24C3/02 H
F23N5/24 101B
F23D14/06 L
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-73897(P2017-73897)
(22)【出願日】2017年4月3日
(65)【公開番号】特開2018-179309(P2018-179309A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】宮田 充
【審査官】
西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−057461(JP,A)
【文献】
特開昭61−190219(JP,A)
【文献】
特開2003−028428(JP,A)
【文献】
実開昭63−184348(JP,U)
【文献】
特開2016−156546(JP,A)
【文献】
特開平09−303719(JP,A)
【文献】
特開2009−058195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/00− 3/14
F23D 14/06
F23N 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板上に露出するバーナヘッドを有するバーナを備えるガスコンロであって、バーナヘッドの外周面に開口する多数の炎孔の一部に臨む火炎検知素子が天板に貫通させて配置されるものにおいて、
天板の下に、バーナの混合管の上流端の流入口からの火炎の吹出しで生ずる燃焼排ガスを天板の火炎検知素子の貫通箇所の開口部又は火炎検知素子の貫通箇所近傍の開口部に導くガイド部材が設けられることを特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
前記開口部を閉塞するシャッタ部材を備え、バーナ点火後一定時間経過したところでシャッタ部材により開口部を閉塞することを特徴とする請求項1記載のガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板上に露出するバーナヘッドを有するバーナを備えるガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガスコンロでは、バーナヘッドの外周面に開口する多数の炎孔の一部に臨む熱電対等から成る火炎検知素子を天板に貫通させて配置し、煮こぼれ等でバーナが失火して、火炎検知素子が火炎を検知しなくなったとき、バーナへのガス供給を停止するようにしている。
【0003】
ところで、バーナヘッドを水洗いした後に、水をよく拭き取らずにバーナヘッドをバーナボディ上にセットすると、炎孔の一部が水封されて通気抵抗が増加し、点火時に、混合管の上流端の流入口に向けてガスノズルから噴射された燃料ガスの一部が流入口に入りきらずに溢れ出し、この燃料ガスが天板下を通ってバーナ用開口に流れることがある。そして、バーナの点火で水封されていない炎孔に生ずる火炎からバーナ用開口に流れた燃料ガスに火移りすると、流入口から漏れ出す燃料ガスが燃焼する状態、即ち、流入口から火炎が吹出す状態になる。
【0004】
そこで、従来、流入口に臨ませて熱電対を配置し、流入口からの火炎の吹出しで、熱電対が加熱されて起電圧が所定の閾値以上に上昇したときに、バーナへのガス供給を停止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
然し、このものでは、バーナヘッドの炎孔に臨ませて配置する火炎検知素子とは別に、流入口からの火炎の吹出しを検知する専用の熱電対が必要になって、コストが高くなる。更に、流入口に臨ませて熱電対を配置するため、熱電対が流入口への一次空気の取入れの障害となって、バーナの燃焼性に悪影響が及ぶ恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−28428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、バーナヘッドの炎孔に臨ませて配置する火炎検知素子により混合管の流入口からの火炎の吹出しも検知できるようにしたガスコンロを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、天板上に露出するバーナヘッドを有するバーナを備えるガスコンロであって、バーナヘッドの外周面に開口する多数の炎孔の一部に臨む火炎検知素子が天板に貫通させて配置されるものにおいて、天板の下に、バーナの混合管の上流端の流入口からの火炎の吹出しで生ずる燃焼排ガスを天板の火炎検知素子の貫通箇所の開口部又は火炎検知素子の貫通箇所近傍の開口部に導くガイド部材が設けられることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、混合管の上流端の流入口からの火炎の吹出しを生ずると、燃焼排ガスがガイド部材に導かれて天板の火炎検知素子の貫通箇所の開口部又は火炎検知素子の貫通箇所近傍の開口部に到達する。そして、燃焼排ガスがこの開口部を通して上昇し、火炎検知素子近傍の火炎が燃焼排ガスの影響で酸欠気味になってリフトする。その結果、火炎検知素子が火炎を検知しなくなり、流入口からの火炎の吹出しを検知することができる。このように本発明によれば、バーナヘッドの炎孔に臨ませて配置する火炎検知素子により流入口からの火炎の吹出しを検知できるため、従来例の如く流入口に臨む熱電対を設けずに済む。従って、流入口への一次空気の取入れが妨げられてバーナの燃焼性に悪影響が及ぶようなことはなく、且つ、コストダウンも図ることができる。
【0010】
ところで、流入口からの火炎の吹出しの検知精度を向上させるには、天板の火炎検知素子の貫通箇所の開口部又は火炎検知素子の貫通箇所近傍の開口部を大きくする必要があるが、これでは、開口部から煮こぼれ汁が侵入しやすくなってしまう。そのため、本発明においては、天板の火炎検知素子の貫通箇所の開口部又は火炎検知素子の貫通箇所近傍の開口部を閉塞するシャッタ部材を備え、バーナ点火後一定時間経過したところでシャッタ部材により開口部を閉塞することが望ましい。これによれば、流入口からの火炎の吹出しの検知精度を向上させるために開口部を大きくしても、開口部からの煮こぼれ汁の侵入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態のガスコンロの要部の斜視図。
【
図3】実施形態のガスコンロの天板を取り外した状態の要部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1、
図2を参照して、本発明の実施形態のガスコンロは、図示省略したコンロ本体の上面を覆う天板1と、バーナ2とを備えている。天板1には、バーナ用開口11が開設されると共に、バーナ用開口11の周縁の上方への盛り上り部12が形成されている。そして、この盛り上り部12に図示省略した五徳の環状五徳枠を外嵌させることで五徳が天板1上で位置決めされるようにしている。
【0013】
バーナ2は、天板1の下に位置する混合管21と、混合管21の下流端に混合管21と一体に設けられ、バーナ用開口11に下方から挿通されるバーナボディ22と、バーナボディ22上に載置されて天板1上に露出するバーナヘッド23とを有している。バーナボディ22は、コンロ本体に固定の支持台3上に固定されている。混合管21の上流端の流入口211には、ガスノズル24が臨んでいる。そして、ガスノズル24から噴射された燃料ガスと流入口211から吸引される一次空気とが混合管21内で混合されて混合気が生成され、この混合気がバーナヘッド23の外周面に開口する大小多数の炎孔231から噴出して燃焼するようにしている。また、バーナボディ22とバーナヘッド23は環状であって、環状の内周空間に、五徳に載置された調理容器の底面に当接してその温度を検出する鍋底温度センサ4を配置している。
【0014】
また、バーナヘッド23の周方向一部の外側に、一部の炎孔231に臨む火炎検知素子たる熱電対5と、バーナヘッド23から延出されたターゲット部232に対向する点火電極6とを周方向に並べた状態で天板1に貫通させて配置している。そして、バーナ用開口11の周方向の一部に、熱電対5の貫通箇所となる径方向外方に凹入した凹欠部から成る開口部13と、点火電極6の貫通箇所となる径方向外方に凹入した凹欠部から成る開口部14とを形成し、これら開口部13,14に熱電対5と点火電極6とがその周囲に比較的大きな隙間を存して挿通されるようにしている。尚、開口部14は、熱電対5の貫通箇所近傍の開口部としても機能する。
【0015】
ところで、バーナヘッド23を水洗いした後に、水をよく拭き取らずにバーナヘッド23をバーナボディ22上にセットすると、炎孔231の一部が水封され、バーナ2の点火時に、上述したように混合管21の流入口211からの火炎の吹出しを生ずることがある。この場合、流入口211に臨ませて熱電対を配置し、この熱電対の起電圧が所定レベル以上になったときに、流入口211からの火炎の吹出しを生じたと判断して、バーナ2へのガス供給を停止することも考えられる。然し、これでは、コストが高くなると共に、熱電対が流入口211への一次空気の取入れの障害となって、バーナ2の燃焼性に悪影響が及ぶ恐れがある。
【0016】
そこで、本実施形態では、天板1の下に、流入口211からの火炎の吹出しで生ずる燃焼排ガスを天板1の熱電対5の貫通箇所の開口部13及び点火電極6の貫通箇所の開口部14に導くガイド部材7を設けている。
図3も参照して、ガイド部材7は、バーナボディ22を挿通する窓孔71aが形成され、混合管21を流入口211の上流側の空間部分に亘って上方から覆う上板部71と、上板部71の側縁から下方に屈曲した側板部72と、上板部71の窓孔71aを形成した側の端縁から下方に屈曲した端板部73とを有し、燃焼排ガスが上板部71の下から側方に漏れ出ることを側板部72及び端板部73で阻止できるようにしている。また、窓孔71aの孔縁とバーナボディ22の周面との間には、熱電対5及び点火電極6の配置部近傍に位置して、燃焼排ガスが上方に流れることを許容する隙間71bが確保されている。
【0017】
これによれば、流入口211からの火炎の吹出しで生ずる燃焼排ガスは、上板部71の下を伝い、窓孔71aの孔縁とバーナボディ22の周面との間に確保された隙間71bから上方に流れ、熱電対5の貫通箇所の開口部13及び点火電極6の貫通箇所の開口部14に到達する。そして、燃焼排ガスがこれら開口部13,14を通して上昇し、熱電対5近傍の火炎が燃焼排ガスの影響で酸欠気味になってリフトし、熱電対5の起電圧が低下する。従って、バーナ点火から所定時間(例えば、10秒)経過した時点で熱電対5の起電圧が所定の閾値以下である場合や、バーナ点火からの起電圧の上昇勾配が所定勾配以下である場合には、流入口211からの火炎の吹出しを生じたと判断することができ、この場合にバーナ2へのガス供給を停止することで安全性を確保できる。
【0018】
このように本実施形態によれば、バーナヘッド23の炎孔231に臨ませて配置する火炎検知素子たる熱電対5により流入口211からの火炎の吹出しを検知できるため、流入口211に臨む熱電対を設ける必要がない。従って、流入口211への一次空気の取入れが妨げられてバーナ2の燃焼性に悪影響が及ぶようなことはなく、且つ、コストダウンも図ることができる。
【0019】
ところで、流入口211からの火炎の吹出しの検知精度を向上させるには、開口部13,14を大きくする必要がある。然し、このままでは、煮こぼれを生じたときに、煮こぼれ汁が開口部13,14から侵入しやすくなってしまう。
【0020】
そこで、本実施形態では、開口部13,14の下に、上動することで開口部13,14を下方から閉塞するシャッタ部材8を設けている。シャッタ部材8は、アクチュエータ81により上下動される。また、シャッタ部材8には、熱電対5と点火電極6が挿通される孔82,83が形成されている。尚、シャッタ部材8は、盛上り部12の下面に沿って移動することで開口部13,14を閉塞するものであってもよい。
【0021】
バーナ2の点火時は、
図2に実線で示す如くシャッタ部材8を下動させて、開口部13,14を開放しておく。これによれば、点火時に混合管21の流入口211からの火炎の吹出しを生じた場合、ガイド部材7の窓孔71aの孔縁とバーナボディ22の周面との間の隙間71bから上昇する燃焼排ガスが
図2に矢印aで示す如くシャッタ部材8の外側を迂回して開口部13,14に到達する。点火後一定時間(例えば、60秒)経過したところで、
図2に仮想線で示す如くシャッタ部材8を上動させて、開口部13,14を閉塞する。これにより、開口部13,14からの煮こぼれ汁の侵入を防止できる。尚、点火後ある程度時間が経過したところで初めて流入口211からの火炎の吹出しを生ずることはない。そのため、点火後一定時間経過したところで開口部13,14を閉塞しても問題はない。
【0022】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、火炎検知素子として熱電対5を用いているが、フレームロッドを用いてもよい。また、上記実施形態では、天板1の火炎検知素子の貫通箇所の開口部13をバーナ用開口11に連続させているが、バーナ用開口11から独立した孔で開口部13を構成することも可能である。また、火炎検知素子の貫通箇所の開口部に火炎検知素子をほぼ隙間なく嵌合させ、天板1に火炎検知素子の貫通箇所近傍に位置する開口部を設けて、この開口部に流入口211からの火炎の吹出しで生ずる燃焼排ガスを導くようにガイド部材を構成してもよい。
【0023】
更に、上記実施形態において、ガイド部材7は、混合管21を上方から覆う上板部71を有するものとしているが、混合管21及びバーナボディ22の下方に位置する下板部と、下板部の側縁から上方に屈曲して天板1の下面に当接する側板部とを有するものとすることも可能である。また、天板1をガラス製その他の天板本体と、天板本体に載置する、上記実施形態の盛り上り部12に相当するバーナリングとで構成し、バーナリングに、火炎検知素子の貫通箇所の開口部又は火炎検知素子の貫通箇所近傍の開口部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1…天板、13…熱電対(火炎検知素子)の貫通箇所の開口部、2…バーナ、21…混合管、211…流入口、23…バーナヘッド、231…炎孔、5…熱電対(火炎検知素子)、7…ガイド部材、8…シャッタ部材。