特許第6809973号(P6809973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809973
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】精密集積回路用の低電力温度調節回路
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/08 20060101AFI20201221BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   G01P15/08 102C
   G01P15/08 101B
   G01P15/08 102B
   H01L29/84 B
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-78206(P2017-78206)
(22)【出願日】2017年4月11日
(65)【公開番号】特開2017-191102(P2017-191102A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2020年3月30日
(31)【優先権主張番号】15/099,341
(32)【優先日】2016年4月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509233459
【氏名又は名称】フルークコーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Fluke Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイリアム・ジェイ・ブリッツ
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−272335(JP,A)
【文献】 特許第3019444(JP,B2)
【文献】 特許第5507306(JP,B2)
【文献】 米国特許第8049326(US,B2)
【文献】 米国特許第7821346(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P
H01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するフレームと、
前記フレーム上の制御器であって、ヒータを制御するように構成されている制御器と、
熱絶縁材料で作製された複数の支持梁と、
前記フレームの前記開口部に配置された懸架質量部と、
前記懸架質量部上の集積回路、温度センサ、及び前記ヒータと、
前記複数の支持梁の第1の支持梁上の第1の導電トラックと、を備えるデバイスであって、前記懸架質量部は、前記複数の支持梁によって前記フレームに連結し、前記第1の導電トラックは、前記制御器を前記ヒータに電気的に連結する、デバイス。
【請求項2】
前記複数の支持梁の第2の支持梁上に第2の導電トラックを更に備え、前記第2の導電トラックは、前記制御器前記温度センサに電気的に連結する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記制御器は、前記温度センサから温度測定値を受信し、前記温度測定値に基づいて前記ヒータを制御するように構成されている、請求項に記載のデバイス。
【請求項4】
第1のウェハと、
前記フレーム及び前記懸架質量部上の第2のウェハと、を更に備え、前記フレームは前記第1のウェハ上に配置され、前記懸架質量部は前記第1及び前記第2のウェハから離間配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記フレーム、前記第1のウェハ、及び前記第2のウェハは、前記懸架質量部の周囲にチェンバを形成する、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記チェンバは排気されている、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第2のウェハを介して形成される導電ビアを更に備え、前記導電ビアは、前記第1の導電トラックに電気的に連結されている、請求項4に記載のデバイス。
【請求項8】
セラミック基部と、
前記セラミック基部に連結する蓋と、を更に備え、前記フレームは前記セラミック基部上に配置され、前記蓋及び前記セラミック基部は、前記懸架質量部の周囲にチェンバを形成する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記フレーム上に接合パッドを更に備え、前記第1の導電トラックは、前記接合パッドに電気的に連結している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
基板であって、
開口部を有する第1の部分と、
前記開口部内に配置され、前記第1の部分から離間配置される第2の部分と、を含む基板と、
前記基板の前記第1の部分上の制御器であって、ヒータを制御するように構成されている制御器と、
前記基板の前記第2の部分上の集積回路、温度センサ、及び前記ヒータと、
前記基板の前記第1及び前記第2の部分上の絶縁層であって、前記基板の前記第1及び第2の部分を互いに連結させる前記絶縁層と、
前記絶縁層上の第1の導電トラックと、を備えるデバイスであって、前記第1の導電トラックは、前記制御器を前記ヒータに電気的に連結する、デバイス。
【請求項11】
前記絶縁層上に第2の導電トラックを更に備え、前記第2の導電トラックは、前記制御器前記温度センサに電気的に連結する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記制御器は、前記温度センサから温度測定値を受信し、前記温度測定値に基づいて前記ヒータを制御するように構成されている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
第1及び第2のウェハを更に備え、前記基板は、前記第1のウェハと前記第2のウェハとの間に配置されている、請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
気密真空パッケージを更に備え、前記基板は、前記気密真空パッケージの内側に配置されている、請求項10に記載のデバイス。
【請求項15】
前記基板の前記第1の部分上に接合パッドを更に備え、前記接合パッドは、前記第1の導電トラックに電気的に連結されている、請求項10に記載のデバイス。
【請求項16】
フレームを備える半導体ダイの周辺要素上に制御器を組立てることと、
懸架質量部を備える前記半導体ダイの中心要素上に集積回路、温度センサ、及びヒータ要素を組立てることであって、前記周辺要素は、前記中心要素を取り囲む、ことと、
前記周辺要素と前記中心要素との間にある前記半導体ダイの一部分を取り除くことによって、前記周辺要素から前記中心要素を懸架させることと、
第1の導電トラックを前記半導体ダイと前記懸架させた中心要素を支持する支持梁上に形成することと、を含む、方法であって、前記第1の導電トラックは、前記制御器を前記ヒータ要素に電気的に連結する、方法
【請求項17】
前記半導体ダイ上に第2の導電トラックを形成することを更に含み、前記第2の導電トラックは、前記半導体ダイの前記周辺要素上の接合パッドを前記集積回路、前記温度センサ、又は前記ヒータ要素に電気的に連結する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記半導体ダイを第1のウェハ上に配置することと、
前記半導体ダイ上に第2のウェハを配置することと、を更に含み、前記第1のウェハ及び前記第2のウェハは、前記半導体ダイの前記中央要素から離間配置され、前記半導体ダイの前記周辺要素、前記第1のウェハ、及び前記第2のウェハがチェンバを形成する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記チェンバを排気することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
気密真空パッケージに前記半導体ダイを配置することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度調節回路及び温度調節回路の組立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精密集積回路の多くが、適切に機能するために安定した温度を必要とする。温度調節に関する一般的な解決法は、精密集積回路をヒータに連結し、熱損失を補償することである。即ち、ヒータを使用して熱を提供し、精密集積回路から隣接する構造体に散逸する任意の熱を補償してもよい。
【0003】
集積回路を加熱するための現在の方法としては、アルミナ基板を用いるハイブリッド厚膜ヒータ及びエポキシガラスPCB材料上の、別個のヒータ抵抗体を使用することが挙げられる。温度調節に関する既知の解決法としては、LM399電圧リファレンスがある。しかし、こうした方法は、典型的には、電力量を多く消費する。例えば、アルミナ基板を用いるハイブリッド厚膜ヒータ及びエポキシガラスPCB材料上の別個のヒータ抵抗体は、それぞれ、典型的には、100ミリワットから数ワットの電力を消費する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開 2008/0178674
【特許文献2】米国特許出願公開 2010/0180681
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、かかるヒータを必要とする集積回路は、概して用途が大規模なラボグレード製品に制限され、電源に制限のあるポータブルデバイスには好適ではない。このため、精密集積回路の温度調節には、低電力の解決法を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、精密集積回路用の温度調節回路を提供する。温度調節回路により、外部環境条件に依存せずに温度制御された環境となる。
【0007】
少なくとも1つの実施形態では、温度調節回路は、フレーム、懸架質量部、支持梁、集積回路、温度センサ、ヒータ、制御器、接合パッド及び導電トラックを備える。
【0008】
懸架質量部は、フレームの開口部に配置され、フレームから支持梁によって懸架される。懸架質量部は、集積回路、温度センサ及びヒータを備える。集積回路は、安定した温度を有することにより恩恵を被る任意の集積回路であってもよい。温度センサは、集積回路の温度に比例して温度シグナルを発生する。温度シグナルは、制御器、又はヒータに対する電圧を制御するエラー積分器によって使用され、温度センサの温度シグナルが所定のしきい値と等しくなるまで、継続的に懸架質量部の温度を調節してもよい。制御器は、フレーム上に配置される。接合パッドは、フレーム上に配置され、ワイヤボンドを収容し、接合パッドを外部の位置に接続するための導電パッドとなる。導電トラックは、支持梁上に形成される。導電トラックは、懸架質量部上にある集積回路、温度センサ及びヒータと、フレーム上にある制御器及び接合パッドとの間に電気的接続を提供する。
【0009】
懸架質量部は、熱的に分離された基板を提供する。懸架質量部上に集積回路を組立てることによって、集積回路を熱的に絶縁し、集積回路からの放熱を最小限に抑える。懸架質量部の熱抵抗は、懸架質量部の加熱に必要な電力に反比例する。加熱する基板のサイズを最小限に抑え、このため、その熱抵抗が最大化することによって、必要な電力が最小限に抑えられる。更に、集積回路に近接して懸架質量部上にヒータを組立てる。その結果、集積回路が急速に加熱され、ヒータは電力を節約することができる。加えて、制御器は、懸架質量部ではなくフレーム上に組立てる。フレーム上に制御器を組立てることによって、懸架質量部のサイズを縮小することができる。
【0010】
別の実施形態によれば、温度調節回路は、ウェハレベルパッケージングを備え、集積回路の熱抵抗を増大させて、温度の調節に必要な電力を更に減少させる。
【0011】
別の実施形態によれば、温度調節回路は、気密真空パッケージ内にあり、集積回路の熱抵抗を増大し、温度の調節に必要な電力を更に減少させる。
【0012】
本明細書に開示の温度調節回路は、温度調節に関して、低電力の解決法となる。集積回路の温度調節に必要な電力を減少させることによって、集積回路の考えられる用途が増える。例えば、集積回路は、制限された電源を有する手持ち式の器具に使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本明細書に開示の少なくとも1つの実施形態による温度調節回路の簡略斜視図である。
図2A】本明細書に開示の少なくとも1つの実施形態による温度調節回路を組立てるための方法の工程を図示する平面図及び断面図である。
図2B】本明細書に開示の少なくとも1つの実施形態による温度調節回路を組立てるための方法の工程を図示する平面図及び断面図である。
図3A】本明細書に開示の少なくとも1つの実施形態による温度調節回路を組立てるための方法の工程を図示する平面図及び断面図である。
図3B】本明細書に開示の少なくとも1つの実施形態による温度調節回路を組立てるための方法の工程を図示する平面図及び断面図である。
図4】本明細書に開示の少なくとも1つの実施形態によるウェハレベルパッケージングを備える温度調節回路の断面図である。
図5】本明細書に開示の少なくとも1つの実施形態による気密真空パッケージ内の温度調節回路の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、本開示のさまざまな実施形態を完全に理解するために、特定の詳細を明らかにする。しかし、当業者は、本開示は、これらの特定の詳細なく実施し得るものと理解する。いくつかの例では、本開示の実施形態の説明の不明瞭さを回避するために、半導体及び集積回路に関連する既知の詳細は記述していない。
【0015】
本明細書全体の「一実施形態」又は「実施形態」を参照することは、実施形態に関して記述された特定の特徴部、構造体又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。このため、本明細書全体のさまざまな位置での語句「一実施形態では」又は「実施形態では」は、必ずしも同じ実施形態にすべてを援用するものではない。更に、特定の特徴部、構造体又は特性は、1つ又は2つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせてもよい。
【0016】
図面では、同一の参照番号は、類似の特徴部又は要素を示す。図面における特徴部のサイズ及び相対位置は、必ずしも尺度通りに記載されるものではない。
【0017】
図1は、本明細書に開示の原理による温度調節回路10の簡略斜視図である。温度調節回路10には、フレーム12、懸架質量部14、支持梁16、導電トラック18、接合パッド20、集積回路22、温度センサ24、ヒータ26及び制御器28を備える。
【0018】
フレーム12は、懸架質量部14を懸架するための支持構造体を提供する。図1に示すとおり、好ましい実施形態では、フレーム12は長方形であるが、フレーム12は任意の形状であってもよい。フレーム12は、開口部30及び制御器28を備える。制御器28は、以下で更に詳細に検討する。
【0019】
懸架質量部14は、熱絶縁基板を提供する。懸架質量部14は、フレーム12の開口部30に配置し、フレーム12から懸架する。図1に示すとおり、好ましい実施形態では、懸架質量部14はフレーム12と同じ長方形形状を有する。しかし、懸架質量部14は任意の形状を有してもよい。好ましい実施形態では、例えば、図3Bに示すとおり、懸架質量部14下の表面に懸架質量部14が接触しないように、懸架質量部14はフレーム12の厚さよりも薄い厚さを有する。懸架質量部14は、集積回路22、温度センサ24及びヒータ26を備える。集積回路22、温度センサ24及びヒータ26は、以下に更に詳細に検討する。
【0020】
支持梁16により、懸架質量部14をフレーム12に連結する。好ましい実施形態では、支持梁16により、懸架質量部14の各側部上で懸架質量部14がフレーム12から離間配置され、懸架質量部14の熱絶縁が増大する。好ましい実施形態では、支持梁16はそれぞれ、懸架質量部14の幅より実質的に小さい幅を有する。更に、好ましい実施形態では、支持梁16は、二酸化ケイ素などの熱絶縁材料で製造され、支持梁16を介した放熱を最小限に抑える。6つの支持梁16を図1に示すが、温度調節回路10は、任意の数の支持梁を含めてもよい点に留意すべきである。例えば、一実施形態では、温度調節回路10は、4つの支持梁を備え、懸架質量部14の各側部に1つの支持梁がある。別の実施形態では、温度調節回路10は、6つより多い支持梁を含めて、更なる導電トラックに適応する。
【0021】
導電トラック18は、懸架質量部14上の回路機構とフレーム12上の回路機構又は接合パッドとの間に電気的接続を提供する。具体的には、図1に示すとおり、導電トラック18は、集積回路22とヒータ26を接合パッド20に連結し、温度センサとヒータ26を制御器28に連結する。好ましい実施形態では、導電トラック18はそれぞれ、同じ数の導電トラック18及び支持梁16が存在するように、各支持梁上に形成される。別の実施形態では、複数の導電トラックは、導電トラック18の数が支持梁16の数よりも大きいように、1つの支持梁上で形成される。好ましい実施形態では、導電トラック18は、支持梁16の上面を実質的に覆う。例えば、図1に示すとおり、導電トラック18はそれぞれ、各支持梁16の上面全体をほぼ覆う。その結果、支持梁16が増強され、懸架質量部14上でより大きい負荷を支持することができる。
【0022】
接合パッド20は、ワイヤボンドを収容し接合パッド20を外部の場所に接続するために、導電性パッドを提供する。接合パッド20は、フレーム12上に形成される。即ち、接合パッド20はそれぞれ、フレーム12上にある導電トラックの一部上に形成される。
【0023】
集積回路22は、安定した温度を有することにより恩恵を被る任意の集積回路であってもよい。例えば、集積回路22は、基準増幅器、異なるNPNペア、NiCr又はSiCr薄膜抵抗器を含む抵抗回路網、又は演算増幅器であってもよい。
【0024】
温度センサ24は、集積回路22の温度を測定し、集積回路22の温度に比例する温度シグナルを生成するように構成される。温度センサ24は、導電トラック18の1つを介して制御器28に電気的に連結される。図1には図示しないが、温度センサ24もフレーム12上にある接合パッドに電気的に連結されてもよい。以下で更に詳細に検討するように、温度センサ24は、温度測定値を制御器28に提供する。好ましい実施形態では、温度センサ24は、集積回路22の確実に正確な温度測定値を得るように、集積回路22に非常に近接して配置される。
【0025】
ヒータ26は、集積回路22を加熱するように構成される。ヒータ26は、それぞれの導電トラック18を介して制御器28及び接合パッド20の1つに電気的に連結される。以下に更に詳細に記述するとおり、ヒータ26は、制御器28によって制御される。好ましい実施形態では、ヒータ26は、集積回路22に非常に近接して配置される。以下に更に詳細に記述するとおり、集積回路に更に近接してヒータ26を配置することにより、集積回路を急速に加熱することができ、電力消費の減少に有用である。
【0026】
制御器28は、フレーム12上に配置される。制御器12は、温度センサ24から温度測定値を受信し、温度センサ24から受信した温度シグナルに基づいてヒータ26を制御するように構成される。一実施形態では、制御器28は、温度センサ24から温度シグナルを受信し、温度シグナルが所定のしきい値を下回るかを判定し、温度シグナルが所定のしきい値を下回る場合、コマンドをヒータ26に送信し、集積回路22を加熱する。同じ実施形態又は別の実施形態では、制御器28は、温度センサ24から温度シグナルを受信し、温度シグナルが所定のしきい値を超えるかを判定し、温度シグナルが所定のしきい値を超える場合、コマンドをヒータ26に送信し、集積回路22の加熱を停止する。同じ実施形態又は別の実施形態では、制御器28又はヒータ26に対する電圧を制御するエラー積分器は、温度センサ24から温度シグナルを継続して受信し、現在の温度シグナルが所定のしきい値と等しくなるまで、ヒータ26を継続して調節する。
【0027】
懸架質量部14ではなくフレーム12上に制御器28を配置することによって、懸架質量部14のサイズは縮小してもよい。即ち、懸架質量部14は、集積回路22、温度センサ24及びヒータ26のみに適合するように十分に大きくてもよい。以下に更に詳細に記述するとおり、懸架質量部14を最小サイズにすることにより、集積回路22をより急速に加熱し、電力消費の減少に有用である。
【0028】
温度調節回路10は、低電力の解決法を提供し、集積回路22の温度を調節する。懸架質量部14上に集積回路22を組立てることによって、集積回路22を近接した表面から熱絶縁する。更に、好ましい実施形態では、支持梁16が熱絶縁材料で製造されているため、支持梁16を介する任意の放熱が最も少ない。放熱を最小限にすることによって、集積回路22は、更に長い間、その温度を維持することができる。このため、ヒータ26を、適度に使用することができる。その結果、集積の温度の調節に必要な電力が大いに減少する。例えば、温度調節回路10が、1ワット当たり環境温度約8000℃まで熱絶縁を有すると仮定して、ヒータ26は、調節温度60℃及び環境温度25℃に対して、5ミリワット未満消費する。
【0029】
更に、集積回路22に非常に近接して懸架質量部14上にヒータ26を配置することにより、集積回路22をより急速に加熱することができる。その結果、ヒータ26は、電源が投入されている時間がより短い時間であってもよく、電力を節約することができる。更に、懸架質量部ではなく、フレーム上に制御器28を配置することによって、懸架質量部14のサイズを小さくすることができる。したがって、より小さい質量部がより大きい質量部よりも急速に加熱するため、懸架質量部14は、より急速に加熱してもよい。このため、ヒータ26は、電源が投入されている時間がより短い時間であってもよく、電力を節約することができる。
【0030】
必要な電力を数ミリワットまで減少させることにより、集積回路22の可能な用途が増える。例えば、集積回路22は、制限された電源を有する手持ち式器具に使用してもよい。
【0031】
図2Aから図3Bは、本明細書に開示の原理による温度調節回路10を組立てるための方法のステップを示す平面図及び断面図である。図2Aは、第1のステップでの温度調節回路10の平面図であり、図2Bは、図2Aに示す軸線に沿った温度調節回路10の断面図である。図3Aは、その後のステップでの温度調節回路10の平面図であり、図3Bは、図3Aに示す軸線に沿った温度調節回路10の断面図である。
【0032】
図2A及び図2Bに示すステップでは、温度調節回路10は、1つの結晶シリコンウェハなどの基板32及び絶縁層34を備える。絶縁層34は、基板32上に形成される。好ましい実施形態では、絶縁層34は、二酸化ケイ素などの熱絶縁材料で形成される。
【0033】
集積回路22、温度センサ24、ヒータ26及び制御器28は、基板32内に組立てる。特に、集積回路22、温度センサ24及びヒータ26は、基板32の中心部分に組立てられ、制御器28は、中心部分を取り囲む基板32の周辺部に組立てる。好ましい実施形態では、前述のとおり、温度センサ24及びヒータ26は、集積回路22に非常に近接して配置される。集積回路22、温度センサ24、ヒータ26及び制御器28は、公知の又は後年開発された技術を用いて、基板32内に組立ててもよい。例えば、集積回路22は、誘電体絶縁工程を用いて組立ててもよい。集積回路22、温度センサ24、ヒータ26及び制御器28の構成要素は、簡素化するために図2Bに示さない。
【0034】
導電トラック18は、絶縁層34上に形成される。前述のとおり、導電トラック18は、基板32およびと接合パッドの中心部分に配置された電気回路と、基板32の周辺部分に配置された電気回路との間に電気的接続を提供する。例えば、導電トラック18は、集積回路22及び温度センサ24を接合パッド20に連結させて、ヒータ26を制御器28に連結させてもよい。図2Bに示すとおり、導電トラックは、絶縁層34を介して形成され、集積回路22に接続させる。
【0035】
接合パッド20は、それぞれの導電トラック18上に形成される。特に、接合パッド20は、基板32の周辺部分上に配置される導電トラック18の一部分上に形成される。
【0036】
図3A及び図3Bに示すとおり、その後のステップで、基板32及び絶縁層34の一部分を取り除いて開口部30を形成し、フレーム12及び懸架質量部14を形成する。
【0037】
前述のとおり、懸架質量部14がフレーム12の厚さよりも薄い厚さを有するように、基板32の部分を取り除いて、懸架質量部14が懸架質量部14の下の面に接触しないようにする。
【0038】
絶縁層32の一部分を取り除いて、支持梁16を形成する。前述のとおり、支持梁16は、フレーム12から懸架質量部14を懸架する。基板32及び絶縁層34の一部分は、公知の又は後年開発された技術を用いて取り除いてもよい。例えば、深堀反応性イオンエッチング(DRIE)を使用して、基板32及び絶縁体34をエッチングしてもよい。
【0039】
別の実施形態では、温度調節回路10は、基板32及び絶縁層34の代わりに、埋め込み酸化膜(BOX)ウェハを用いて組立てる。即ち、図2A及び図2Bに関して記述した工程と同様に、集積回路22、温度センサ24及びヒータ26は、BOXウェハの中心部分に組立て、制御器28は、BOXウェハの周辺部分に組立てる。したがって、図3A及び図3Bを参照して記述した工程と同様に、BOXウェハをマイクロ加工し、フレーム12及び懸架質量部14を形成する。例えば、BOXウェハは、ウェットエッチングもしくはDRIEを組み合わせたもの、又は双方を組み合わせたものを用いて、頂部及び底部からエッチング処理してもよい。
【0040】
図4は、本明細書に開示の原理によるウェハレベルパッケージングを含む温度調節回路10の断面図である。ウェハレベルパッケージングには、第1のウェハ36及び第2のウェハ38を含む。
【0041】
温度調節回路10は、第1のウェハ36上に配置される。特に、フレーム12は、第1のウェハ36の上面に配置される。第1のウェハ36の上面は、懸架質量部14の下面から離間配置され、集積回路22から第1のウェハ36への放熱を最小限に抑える。
【0042】
第2のウェハ38は、温度調節回路10上に配置される。第2のウェハ38は、キャビティ46を備える。キャビティ46により、第2のウェハ38の下面は、懸架質量部14の上面から離間配置され、集積回路22から第2のウェハ38に対する放熱を最小限に抑える。
【0043】
また、第2のウェハ38は、マイクロビア40を含む。マイクロビア40は、それぞれ、導電材料44及びマイクロビアのトレンチ壁にある誘電体層42を含む。マイクロビア40のそれぞれは、各導電トラック18に連結される。マイクロビア40及び導電トラック18は、共に、懸架質量部14の回路機構と第2のウェハ38の上面上の回路機構又は接合パッド20との間に電気的接続を提供する。
【0044】
第1のウェハ36、第2のウェハ38及びフレーム12は、集積回路22用のチェンバ48を形成する。チェンバ48は、集積回路22が任意の近隣面に接触せずに、熱を散逸させるようにする。好ましい実施形態では、チェンバは排気するか窒素などのガスを充填させて、集積回路22の断熱を更に向上させる。更に、ウェハレベルパッケージングを利用することで、温度調節回路10の梱包費の削減及びサイズの縮小となり得る。
【0045】
図4に示してないが、第1のウェハ36及び第2のウェハ38は、追加の集積回路を備えてもよい。一実施形態では、制御器28は、フレーム12の代わりに第2のウェハ38内に形成され、懸架質量部14の温度センサ24及びヒータ26に電気的に連結するために少なくとも1つのマイクロビア40に接続する。
【0046】
ウェハレベルパッケージングにより、集積回路22の熱抵抗が増大し、更に、集積回路22の温度調節に必要な電力が減少する。
【0047】
図5は、本明細書に開示の原理による気密真空パッケージ50内の温度調節回路10の断面図である。気密真空パッケージ50は、基部52及び蓋54を備える。
【0048】
温度調節回路10は、基部52に配置する。好ましい実施形態では、基部52はセラミック基板である。蓋54は、基部52に連結し、温度調節回路10を封入する。
【0049】
基部52及び蓋54は、チェンバ56を形成する。チェンバ48と同様に、チェンバ56により集積回路22が任意の近隣面に接触せずに、熱を散逸させる。好ましい実施形態では、チェンバは排気するか窒素などのガスを充填させて、集積回路22の断熱を向上させる。
【0050】
図5に示していないが、気密真空パッケージ50も、気密真空パッケージ50の外側の場所に、接合パッド20に接続するワイヤボンディング部を備えてもよい。
【0051】
気密真空パッケージにより、集積回路22の熱抵抗が増大し、集積回路22の温度の調節に必要な電力が更に減少する。
【0052】
本明細書に開示の温度調節回路10により、集積回路22の温度調節のための低電力の解決法となる。集積回路22の温度の調節に必要な電力を減少させることにより、精密集積回路の考えられる用途が増える。例えば、集積回路22は、制限された電源を有する手持ち式器具に使用してもよい。
【0053】
上述のさまざまな実施形態は、更なる実施形態を提供するために組み合わせてもよい。[注記:本質的事項は、外国特許、外国特許出願書又は非特許文献から参照によって援用することはできないが、米国特許商標局では、不適切に援用された主題を、出願日に影響を与えることなく、補正により明示的に明細書に補充できるものとする。ADSへの参照による援用が可能であるかは、試みていない。文章内の適切な場所に、参照によって援用するこれらの参照を明示によりリスト化することを強く推奨する。]
【0054】
上記の説明を考慮すれば、実施形態へのこれらの及び他の変更を行うことができる。概して、次の請求項では、使用する用語は、明細書及び請求項に開示された特定の実施形態に対する請求項を制限するものと解釈すべきではないが、こうした請求項に権利を与えた等価物の全範囲と共にすべての考えられる実施形態を含むものと解釈すべきである。したがって、請求項は、開示によって制限されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
10 温度調節回路
12 フレーム
14 懸架質量部
16 支持梁
18 導電トラック
20 接合パッド
22 集積回路
24 温度センサ
26 ヒータ
28 制御器
30 開口部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5