(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記レーザー装置は、レーザー光を照射するレーザー光源(121)と、当該レーザー光源とレーザー光被照射箇所との間の距離情報から上記タイミング信号を生成し送出する信号発生部(122)とを有する、請求項1に記載のラグ天板検査装置。
上記画像処理部は、上記撮像画像情報内の設定領域における特定2値化データを有する画素数、及び上記設定領域における色調変化の少なくとも一方によって、上記ラグにおける不具合の有無を判断する、請求項1から3のいずれかに記載のラグ天板検査装置。
上記制御装置は、不具合有り及びラグ欠損有りの少なくとも一方を判断した状態において、上記撮像画像情報を日時情報と共に記憶する記憶部(133)をさらに有する、請求項1から4のいずれかに記載のラグ天板検査装置。
ペール缶の胴体(3)へ折り曲げ可能なラグ(2)を全周に並列したラグ天板(1)の製造を行うラグ天板製造ライン(210)と、コントローラ(220)とを備えたペール缶製造システム(201)において、
上記ラグ天板製造ラインは、
上記ラグ天板の直径方向において上記ラグよりも中心側に位置し全周に設けたパッキング材注入溝(11)に、上記ラグ天板を回転させながらパッキング材を注入するパッキング材注入装置(212)と、
上記パッキング材注入装置に隣接して配置した、請求項1から5のいずれかに記載のラグ天板検査装置(101)と、
を有し、ここで当該ラグ天板検査装置は、上記ラグ天板におけるそれぞれのラグを撮像装置が撮像するタイミングにて撮像用の発光を行うフラッシュ装置(140)、及び、当該ラグ天板検査装置の動作制御を行う制御装置(130)を有する、
上記制御装置あるいは上記コントローラは、上記パッキング材注入装置による上記ラグ天板の回転工程中に、上記ラグ天板検査装置における撮像装置に対してラグの撮像を指示し、
上記ラグ天板製造ラインが複数の上記パッキング材注入装置及び上記ラグ天板検査装置の組を有する形態では、
上記コントローラは、それぞれの上記フラッシュ装置に対して発光タイミングを各組間で異ならせて指示する、
ことを特徴とするペール缶製造システム。
ペール缶の胴体(3)へ折り曲げ可能なラグ(2)を全周に並列したラグ天板(1)における不良を検出するラグ天板検査装置(101)を備えたペール缶製造システム(201)にて実行されるペール缶製造方法であって、
上記ラグ天板の直径方向において上記ラグよりも中心側に位置し全周に設けたパッキング材注入溝(11)へパッキング材注入装置(212)によってパッキング材を注入するため上記ラグ天板を回転させている工程中に、当該ラグ天板のそれぞれのラグを上記ラグ天板検査装置に備わる撮像装置(110)で撮像し、
撮像したラグの画像情報から上記ラグにおける不具合の有無、及び、回転しているラグ天板の上記ラグへのレーザー光照射からラグの欠損の有無を、上記ラグ天板検査装置に備わる制御装置(130)によって判断する、
ことを特徴とするペール缶製造方法。
上記ラグ天板検査装置は、上記ラグ天板におけるそれぞれのラグを撮像するタイミングにて撮像用の発光を行うフラッシュ装置(140)を有し、かつ、複数台の上記ラグ天板検査装置が隣接して配置されている形態では、
それぞれのラグ天板検査装置における各フラッシュ装置は、上記制御装置によって異なるタイミングで発光する、請求項7に記載のペール缶製造方法。
ラグにおける不具合有り及びラグ欠損有りの少なくとも一方を制御装置が判断したときには、上記制御装置によって上記ラグ天板の製造は一時停止し、かつ撮像したラグの画像情報を日時情報と共に記憶する、請求項7又は8に記載のペール缶製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態であるラグ天板検査装置、該ラグ天板検査装置を備えたペール缶製造システム、及びペール缶製造方法について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。また、各図は概略構成を図示し、視覚的に理解可能なように図示したものであり、実際の例えば機器配置等に対応した図示ではない場合も含まれる。また、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け当業者の理解を容易にするため、既によく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、以下の説明及び添付図面の内容は、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
また、実施形態におけるラグ天板検査装置は、既に説明した
図11に示すような、JIS Z 1620(1995年版)に規定される鋼製ペール缶の一タイプであるラグタイプペール缶10におけるラグ天板1の良否を検査する装置である。
【0014】
また、このようなラグ天板検査装置は、
図5を参照して後述するペール缶製造システム201におけるラグ天板製造ライン210にラグ天板検査装置101として備わり、当該ラグ天板製造ライン210に備わるパッキング材注入装置212に近接して配置される。ここでペール缶製造システム201は、ラグ天板製造ライン210の他にも、ペール缶製造システム201の動作制御を行うコントローラ220、ペール缶の胴体3の製造ライン240等、ペール缶の製造に関わる全ての装置を備えたシステムである。
【0015】
まず、
図1から
図4を主に参照して、ラグ天板検査装置101について説明する。
ラグ天板検査装置101は、ラグ2を全周に並列したラグ天板1における良/不良を検査する装置である。ここでラグ天板1における不良には、ラグ2部分の不具合と、ラグ2の欠損とを含む。ラグ2部分に着目する理由は、既に説明したように、ラグ2部分がラグ天板1のプレス成型で折り曲げられて形成され、ラグ2の先端2aに対してカール加工が施され、ラグ2に隣接したパッキング材注入溝11にパッキング材5が注入されるという諸工程にラグ2が関係し不良を生じやすい箇所だからである。また、ラグ2部分の不具合には、例えば、
図6に示すようなラグ2への異物30の付着、
図7Aから
図7Cに示すようなラグ2の変形あるいは成形失敗、ラグ2における傷32(
図7B)の形成、打痕、印刷不良等が含まれる。またラグ2の欠損は、ラグ2の成形失敗に起因するが、
図8に示すようにラグ2の存在を認めがたい状態が相当する。
【0016】
ラグ天板検査装置101は、基本的構成部分として、撮像装置110と、レーザー装置120と、制御装置130とを備え、さらにフラッシュ装置140を備えることができる。ここでフラッシュ装置140は、撮像装置110に含まれてもよい。また、撮像装置110、制御装置130、及びフラッシュ装置140は、一体で構成されてもよい。また、フラッシュ装置140は、後述するように撮像装置110における撮像用の投光を行うものであるが、例えば低い不良検出レベルでも満足可能な場合には、設置しないこともできる。
これらの構成部分について、以下に順次説明する。
【0017】
まず、レーザー装置120について説明する。
レーザー装置120は、タイミング信号を生成し送出する装置であり、レーザー光源121と信号発生部122とを有する。ここでタイミング信号とは、撮像装置110に対してシャッターを切るタイミングを指示する信号である撮像トリガを発生させるための信号であり、及び、ラグ天板1の全周におけるラグ2の間隔を判断させるための信号である。
【0018】
また、上述したようにラグ天板検査装置101はパッキング材注入装置212に近接して配置されることから、レーザー装置120もパッキング材注入装置212に近接して配置される。一方、以下に説明するように、パッキング材注入溝11の内周面11aにレーザー光を照射することから、内周面11aへの確実な照射を確保するために、レーザー装置120は、パッキング材注入装置212によるパッキング材注入溝11へのパッキング材5の注入前に、内周面11aを照射可能な場所に設置するのが好ましい。
【0019】
レーザー光源121について説明する。
レーザー光源121は、ラグ天板1の直径方向においてラグ2から一例として7cm程離れた位置に配置され、ラグ天板1の直径方向に沿ってラグ天板1における下記のレーザー光被照射箇所へ、例えば赤色のレーザー光を照射する。
【0020】
レーザー光被照射箇所について説明する。ラグ2の表面2cを含むラグ天板1の表面1aは、ペール缶ユーザー(顧客)の要求に応じた色で塗装され、種々の色で塗装されることになる。一方、レーザー光の反射程度は、反射する箇所の塗装色によって変化する。よって、レーザー光被照射箇所としてラグ2の表面2cを選択した場合には、レーザー光の反射程度は、塗装色によってバラツキが発生する。
【0021】
一方、
図2に示すように、ラグ天板1には、パッキング材注入用のパッキング材注入溝11が形成され、かつ、
図3に示すように隣接するラグ2間には、隙間1dが存在する。よってラグ天板1の直径方向において、レーザー光源121は、パッキング材注入溝11において、隙間1dを通して対面する内周面11aにレーザー光を照射することができる。さらに、ラグ天板1の裏面1bは、いわゆる金ニスと呼ばれる内面塗料で塗装され、表面1aの塗装色に関わらず、内面塗装色は一定である。
【0022】
そこで本実施形態では、一定色となるラグ天板1の裏面1bに含まれる、パッキング材注入溝11の内周面11aにもレーザー光が照射されるように、レーザー光源121を配置している。
【0023】
よって、ラグ天板1の直径方向に沿ってレーザー光源121から照射されたレーザー光は、回転しているラグ天板1において、
図3に点線にて示すレーザー光被照射箇所121aを照射していく。即ち、ラグ2の欠損がなければ、レーザー光は、内周面11a、ラグ2の表面2c、内周面11a、ラグ2の表面2c、…の順に照射されていく。
そして以下に説明するように、本実施形態では、レーザー装置120は、レーザー光被照射箇所121aのうち、内周面11aにレーザー光が照射されたときを利用して、上記タイミング信号を生成している。
【0024】
次に、信号発生部122及びタイミング信号について説明する。
信号発生部122は、本実施形態では、レーザー光源121と、レーザー光被照射箇所121aに含まれる内周面11aとの間の距離情報を求めて、上記タイミング信号を生成し送出する部分であり、レーザー光被照射箇所121aで反射したレーザー光を受光する受光部122aを有する。
【0025】
詳しく説明すると、ラグ天板1の直径方向に沿ってレーザー光源121が発したレーザー光は、内周面11a及びラグ2の表面2cで反射し、信号発生部122における受光部122aで受光される。よって信号発生部122は、
図3に示すように、レーザー光がラグ2間の隙間1dを通して内周面11aを照射して測定距離が長い時間をオンと判断し、レーザー光がラグ2の表面2cを照射して測定距離が短い時間をオフと判断する。
判断されたオン及びオフを基に、信号発生部122は、オンからオフへの変化に応じて、第1のタイミング信号としての撮像トリガを生成し、本実施形態では制御装置130へ送出する。尚、撮像トリガは、撮像装置110へ直接に供給してもよい。
【0026】
また、信号発生部122は、オン状態にある時間であるオン時間123(
図3)を第2のタイミング信号とし、ラグ2の配置間隔、つまりラグ2の欠損の判断材料として生成して制御装置130へ送出する。尚、欠損判断については制御装置130にて説明を行う。
【0027】
本実施形態では上述のように、レーザー光被照射箇所121aのうち、パッキング材注入溝11の内周面11aを利用してタイミング信号を生成したが、これに限定するものではなく、例えば、ラグ天板1の表面1aの塗装色が一定である場合には、ラグ2の表面2cを利用してもよい。
またこの場合には、信号発生部122は、距離情報ではなく、例えばレーザー光の受光量を基に、上述の撮像トリガ及びオン時間123を生成してもよい。
【0028】
次に、撮像装置110について説明する。
撮像装置110は、回転しているラグ天板1におけるそれぞれのラグ2の撮像を、レーザー装置120から上述の撮像トリガの供給に従って行う装置であり、例えば500万画素程度のCCDあるいはCMOSを撮像センサを有する、カラーあるいは白黒撮像が可能なカメラ、及びその駆動装置を有する。
【0029】
詳しく説明すると、上述のように、パッキング材注入装置212によるパッキング材注入溝11(
図11)へのパッキング材5の注入のため、パッキング材注入装置212に備わる回転装置2121(
図5)によってラグ天板1は回転される。この回転中に、上述したようにレーザー装置120によって撮像トリガが生成され、当該撮像装置110によって撮像が行われる。本実施形態では、撮像装置110は、一例として、1つのラグ2あたり30ミリ秒で、1枚のラグ天板1あたり0.75秒で撮像を行うように設定している。1枚のラグ天板1の全周には16個のラグ2が存在するが、上述の撮像時間によって、本実施形態では、1枚のラグ天板1あたり23〜24個のラグ2を撮像している。尚、上述の設定値は、ペール缶製造システム201における処理速度(ラインスピード)によって可変である。
撮像装置110は、撮像した各画像情報を制御装置130へ送出する。
【0030】
次に、制御装置130について説明する。
制御装置130は、撮像装置110及びレーザー装置120と電気的に接続され、基本的な構成部分として画像処理部131及びラグ欠損判断部132を備え、さらに、記憶部133及び表示部135を有することもできる。
【0031】
画像処理部131は、本実施形態では、レーザー装置120にて生成されたタイミング信号のうちの撮像トリガにより撮像装置110に対して撮像を指示すると共に、撮像装置110から供給されたラグ2の撮像画像情報からラグ2における不具合の有無を判断する。ここでレーザー装置120が撮像トリガを撮像装置110へ直接供給する場合には、画像処理部131が撮像トリガを撮像装置110へ送出する必要はない。
また画像処理部131は、撮像装置110に対する撮像指示に同期したタイミングにて被撮像箇所のラグ2を含む領域に対して撮像用の照明を行うため、フラッシュ装置140に備わるLED照明を瞬間的に発光させる。このLED照明における発光量又は発光強度等の物理量は、以下に説明する不具合検出に適した物理量であり、例えばラグ天板1の表面1aの塗装色、撮像装置110の仕様、等に基づいて、当該制御装置130が求めて設定することもでき、また、予め設定されていてもよい。また、フラッシュ装置140におけるLEDの発光時間は、本実施形態では一例として1ミリ秒に設定している。また、本実施形態では2つのラグ天板検査装置101を並設していることとも関連して、LEDは瞬間的な発光としているが、例えばラグ天板検査装置101が1台のみである場合には、LEDを連続発光させてもよい。
【0032】
不具合の有無の判断は、ラグ2の撮像画像情報を画像処理して行われる。画像処理部131は、
図4に示すように、ラグ2の撮像画像情報に対して、特に不具合の発生可能性が高い、ラグ2の先端2aのカール加工部分に対してカール加工部分を含む検知領域1311を設定し、また、先端2a以外のラグ2部分に対して検知領域1312を設定する。
【0033】
各検知領域1311、1312において画像処理部131は、本実施形態では、各画素の2値化データ、及び画素間での色調変化によって不具合の有無の判断を行う。検知領域1311では、カール加工によりラグ天板1の裏面1bの内面塗装色がラグ2の表面2c側に現れる。即ち、ラグ天板1の表面1aにおける塗装色を有する画素における2値化データと、内面塗装色を有する画素における2値化データとは大きく相違する。よって画像処理部131は、例えば、検知領域1311における全画素数に占める、特定2値化データに相当する内面塗装色データを有する画素数の割合を求めて、上記割合が基準値を満たしている場合には、画像処理部131は、正常にカール加工がなされており良品と判断する。一方、上記割合が基準値に満たない場合には、カール加工に不具合があると判断する。また検知領域1312では、
図6、
図7Aから
図7Cに示すように、色調の変化、つまり隣接する画素間においける2値化データの著しい相違を基に、画像処理部131は、異物付着、打痕、傷、印刷不良等の不具合の有無を判断する。
【0034】
ラグ2における不具合の有無判断について、本実施形態では上述のように、2値化データ及び色調変化の少なくとも一方を利用しているが、これらに限定するものではなく、画像処理を用いて一般的に実行可能な、例えばパターン認識等、その他の既知の手法を用いることができる。
【0035】
また本実施形態では、上述のように2つの検知領域1311、1312を設定するが、ラグ2に対する検知領域の設定箇所及び設定数は、本実施形態の内容に限定するものではない。
【0036】
さらにまた、ラグ2の撮像画像情報に対して設定する検知領域1311、1312等の位置について、
図4に図示した位置は、理想位置を示しており、この理想位置に対して、
図4における左右及び上下方向において許容誤差を含む位置に検知領域は設定可能である。よって許容誤差から外れて検知領域1311,1312等が設定される場合には、ラグ2の撮像画像情報自体が異常である、あるいは当該ラグ天板検査装置101に異常が生じた等が考えられる。よってこれらの場合にも、画像処理部131は、ラグ2の不良検出と判断し、処理する。
【0037】
次に、ラグ欠損判断部132は、レーザー装置120にて生成されたタイミング信号のうちの上述したオン時間123によって、ラグ2の欠損を判断する。詳しく説明すると、
図3に点線で示すレーザー光被照射箇所121aをレーザー光が照射したとき、良品のラグ天板1では、ラグ2は同等の間隔で並列しており、オン状態にある時間であるオン時間123は、ほぼ一定時間内に収まる。一方、例えばラグ2の先端2aにおけるカール加工が失敗した場合等、何らかの原因で異常なラグ2が存在する場合には、オン時間123は、上述の一定時間から著しく外れ長い時間となる。これを基にラグ欠損判断部132は、オン時間123が基準値を外れ長い場合には、ラグ2が欠損していると判断する。また、オン時間123が上述の一定時間から著しく短い場合には、ラグ欠損判断部132は、当該ラグ天板検査装置101における異常有りと判断する。
【0038】
オン時間123の設定について、本実施形態では、ラグ欠損判断部132は、1枚のラグ天板1において測定した全てのオン時間123の平均値を用いている。
【0039】
画像処理部131及びラグ欠損判断部132の少なくとも一方にて、ラグ2の不良有りが判断された場合、つまりラグ2において不具合有り及びラグ欠損有りの少なくとも一方が判断された場合には、制御装置130は、不良を有するラグ2を含む撮像画像情報を表示部135に画面表示し、検査員の確認に供する。
【0040】
また、ラグ2において不具合有り及びラグ欠損有りの少なくとも一方が判断された時点にて、制御装置130、あるいは制御装置130を介してペール缶製造システム201のコントローラ220は、ラグ天板製造ライン210に備わる各装置の動作を停止させる。そして検査員が不良と判断されたラグ天板1をラインから取り除き、不良を確認し、再起動を指示するまで停止状態を維持させる。
【0041】
さらにまた、ラグ2において不具合有り及びラグ欠損有りの少なくとも一方が判断された場合には、制御装置130は、記憶部133に対して、不良を有するラグ2を含む撮像画像情報を撮像日時情報と共に、記憶部133へ記録する。
尚、制御装置130は、良品の場合も含めて撮像を行った全てのラグ2における撮像画像情報を撮像日時情報と共に記憶部133に記録することもできる。
【0042】
また記憶部133には、当該ラグ天板検査装置101における検査動作を実行するための動作プログラムで、撮像装置110、レーザー装置120、制御装置130、及びフラッシュ装置140間における指示命令及びデータ通信等をも実行させるための動作プログラムを格納している。
【0043】
また、互いに隣接して複数のラグ天板検査装置101が並設され、各ラグ天板検査装置101がフラッシュ装置140を有する場合には、一方のラグ天板検査装置101に備わるフラッシュ装置140からの照明光が、他方のラグ天板検査装置101における撮像動作に影響しないように、制御装置130は、各ラグ天板検査装置101における各フラッシュ装置140を異なるタイミングにて発光させるのが好ましい。
【0044】
以上説明した制御装置130は、実際にはコンピュータを用いて実現され、上述した画像処理部131及びラグ欠損判断部132は、それぞれの機能に対応するソフトウェアと、これを実行するためのCPU(中央演算処理装置)及びメモリ等のハードウェアから構成されている。
【0045】
次に、以上説明したように構成されたラグ天板検査装置101を備えたペール缶製造システム201について、説明を行う。
既に簡単に説明したように、ペール缶製造システム201は、
図5に示すように、ラグ天板製造ライン210、コントローラ220、ペール缶の胴体3の製造ライン240等のペール缶の製造に関わる全ての装置を備えたシステムである。ラグ天板製造ライン210には、ラグ天板検査装置101によるラグ天板1の検査工程、及びパッキング材注入装置212によるパッキング材注入工程に対して、前段の工程及び後段の工程をそれぞれ実行する前段装置211及び後段装置213も備わる。前段装置211にはプレス成形機及びカール加工機が備わり、後段装置213には乾燥炉及び口金取付機等が備わる。
【0046】
また当該ペール缶製造システム201では、
図5に示すように、前段装置211から搬送されてきた、パッキング材5を注入する前のラグ天板1は、複数の、本実施形態では2つの搬送路2101に分けられ、各搬送路2101においてラグ天板1の検査工程及びパッキング材5の注入工程が並行して行われる。即ち、2つの搬送路2101のそれぞれにおいて、パッキング材注入装置212を設置しており、各パッキング材注入装置212に隣接してそれぞれラグ天板検査装置101を設置している。それぞれのラグ天板検査装置101は、フラッシュ装置140を備えている。尚、ラグ天板検査装置101及びパッキング材注入装置212による系列数は、本実施形態のように2つに限定されず、3つ以上、あるいは1つであってもよい。
【0047】
このように複数系列のそれぞれにラグ天板検査装置101を設置した場合、一方のラグ天板検査装置101に備わるフラッシュ装置140からの照明光が、他方のラグ天板検査装置101における撮像動作に影響した場合には、ラグ天板1の正確な良否判定が行えない場合も生じる。
このような状態を防止するため、本実施形態のペール缶製造システム201では、コントローラ220は、それぞれのラグ天板検査装置101における各フラッシュ装置140を異なるタイミングにて発光させている。
【0048】
尚、パッキング材注入装置212とラグ天板検査装置101とのセットではなく、単に複数のラグ天板検査装置101が並設された形態においても、各ラグ天板検査装置101間での照明光の干渉は生じる。よってこのような形態においても、異なるタイミングにて各フラッシュ装置140からの発光を行うことができる。
【0049】
以上のように構成されたペール缶製造システム201における動作、即ちペール缶製造方法について、
図9及び
図10を参照して以下に説明する。
当該ペール缶製造方法の概略は、
図9に示すように、
図12に示す従来のラグ天板製造方法におけるステップ3(S3)の工程中において、ラグ天板検査装置101によるラグ天板1の検査(S31)と、パッキング材注入装置212によるパッキング材注入溝11へのパッキング材5の注入との両方を実行するものである。
図10も参照して以下に詳しく説明する。
尚、このようにラグ天板1の検査動作とラグ天板1の製造動作とが並行して実行されることから、当該ペール缶製造方法は、ラグ天板検査方法と読み替えることもできる。
【0050】
上述したペール缶製造システム201において、前段装置211にて成形されたラグ天板1は、パッキング材注入工程に移送され、2系列に分かれて処理されていく。各系列では、同じ動作、つまりパッキング材注入装置212によるラグ天板1のパッキング材注入溝11へのパッキング材5の注入動作、及び、ラグ天板検査装置101によるラグ天板1の検査つまりラグ天板1の良否判定動作、がそれぞれ並行して実施される。ここでの注入及び判定動作における処理能力は、本実施形態では一例として、各系列において、1分間に20枚のラグ天板1が処理可能である。
【0051】
具体的には各系列において、
図10に示すように、パッキング材注入装置212における回転装置2121によってラグ天板1が回転される(S32−1)。この回転中に、パッキング材注入装置212は、ラグ天板1のパッキング材注入溝11へパッキング材5を注入し、ラグ天板検査装置101は、ラグ2を1枚ずつ、上で説明した検査動作のように検査を進めていく(S31−1)。
そして、ラグ天板1の良品が判断されている状態では、ラグ天板1は、それぞれの系列から、順次、後段装置213へ移送される。
【0052】
一方、上記回転中に、ラグ天板検査装置101にて、いずれか1枚のラグ2にて不良が検出されたときには、検出時点にて、回転装置2121が停止される(S32−2)。また、ラグ天板検査装置101は、上述したように、不良と判断されたラグ2の撮像画像を表示部135に画面表示すると共に、当該撮像画像情報を記憶部133に記録する(S31−2)。さらに、上述したように、ラグ天板検査装置101における制御装置130、あるいはペール缶製造システム201におけるコントローラ220によって、当該ペール缶製造システム201に備わる各装置の動作は停止され(S32−3)、検査員が不良と判断されたラグ天板1をラインから取り除き、不良を確認し、再起動を指示するまで、停止状態が維持される。
再起動によって、ペール缶製造システム201は、動作を開始し、ラグ天板1の製造が開始されると共にラグタイプペール缶10が製造されていく。
【0053】
本実施形態では上述のように、1枚のラグ天板1におけるいずれか一つのラグ2にて不良が検出されたときには、その検出時点でペール缶製造システム201の動作停止を行っているが、これに限定されず、例えば1枚のラグ天板1の検査が終了した時点で動作停止を行ってもよい。
【0054】
本実施形態のペール缶製造方法によれば、従前より実行されていた、パッキング材注入装置212におけるラグ天板1の回転動作を利用して、ラグ天板1の検査を実行することから、ラグ天板検査装置における構成機器の削減を図ることができ、省スペース化に寄与することができる。さらにまた、以下に説明する大きな効果を得ることができる。
【0055】
上述したように、ラグ天板検査装置101にて、いずれか1枚のラグ2にて不良が検出された時点にて、ペール缶製造システム201における装置の停止、及び撮像画像情報の記録を行うことは、ラグ天板1、さらにはラグタイプペール缶10における品質管理レベルを、従来に比して非常に大きく向上させることができる。
【0056】
即ち、従来、例えば1ロット分の製造終了後に製品検査を行っていたことから、例えば、初期工程のプレス成型における金型に起因して「傷」がラグ天板1に生成されている場合には、多量の不良完成品が発生する可能性があった。
これに対して、製造途中におけるパッキング材注入工程内にラグ天板検査装置101を備えたことで、製造途中において早期に不良を検出、発見することが可能となる。よって、不必要に不良品の発生を防止することができ、品質管理上有利に作用すると共に、製品の歩留まりの向上を図ることができ、ひいては製造コスト低減にも寄与することが可能である。また、検査員における作業負担の低減にも寄与する。
【0057】
また、撮像画像情報を検査日時と共に記録することで、製造後、さらには納品後においても、製品の検査履歴及び製造履歴を見返すことができ、さらなる品質管理の向上を図ることができ、さらには製造装置、製造工程等の改善にも寄与することが可能となる。
また、例えば各製造ロット毎における不良品発生率の算出等も可能になり、さらなる品質管理の向上に寄与することができる。