特許第6809984号(P6809984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809984
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】フック取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/48 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   B60R19/48 W
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-110776(P2017-110776)
(22)【出願日】2017年6月5日
(65)【公開番号】特開2018-203050(P2018-203050A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】森川 裕
(72)【発明者】
【氏名】白井 靖泰
(72)【発明者】
【氏名】柴田 峻志
(72)【発明者】
【氏名】北 恭一
(72)【発明者】
【氏名】松井 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 太平
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−255748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00−19/56
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フック部本体と該フック部本体を支持する支持棒とからなるフックが、車幅方向に延びるバンパリインフォースに対し、該バンパリインフォースに固定されたリテーナ部材を介して取付可能なフック取付構造であって、
前記リテーナ部材は、前記バンパリインフォースの上方かつ前側に配置された前側壁部と、前記バンパリインフォースの上方かつ後側に配置された後側壁部とを有するとともに、それらの間は中空構造に形成され、
前記前側壁部と前記後側壁部とは、前記フックを挿入するための挿入孔がそれぞれ形成され、
前記後側壁部に形成された前記挿入孔は、前記フックの支持棒の先端が螺合可能なフック取付螺子部であり、
前記前側壁部に形成された前記挿入孔は、前記フックの支持基端となる荷重支持部であることを特徴とするフック取付構造。
【請求項2】
前記リテーナ部材において、左右両側側面は、壁が無い状態に形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたフック取付構造。
【請求項3】
前記リテーナ部材の後方には、中空の箱体に形成され、前記バンパリインフォースの後面に対し固定されるクラッシュボックスを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたフック取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フック取付構造に関し、特に、車両において、フックを取り付けた際の支持強度、及び衝突時の荷重吸収性能を確保し、さらに、車体意匠に制約を与えず、コスト低減を実現することのできるフック取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前部または後部のバンパ構造において、固縛あるいは牽引のためのフックを取り付け可能とするものがある。例えば、そのようなフックは、リングまたは鈎状のフック本体を支持する支持棒の先端が螺子切りされており、車両側の取付部にフックの支持棒を螺合することにより、取り付けられることになる。
尚、以下の説明にあっては、車両の前部と後部のいずれにフックを取り付ける場合であっても、フックの取付構造における位置関係は、車両外側から見て、手前側を前側、奥側(車両内部側)を後部と定義する。
【0003】
具体的に説明すると、図3に示すように車幅方向に延びるバンパリインフォース50にフック51の支持棒51aを挿入するための挿入孔50aが形成されている。一般にバンパリインフォース50は、断面矩形状であって、衝撃吸収及び軽量化のために中空構造となっている。前記挿入孔50aは、車両外側から見てバンパリインフォース50の前側の壁と後側の壁の2個所に形成されている(手前側の挿入孔50aが荷重支持部となる)。バンパリインフォース50において、この挿入孔50aが形成された位置の後方には、螺子穴60aを有するリテーナ部材60が配置される。そして、バンパリインフォース50の前記挿入孔50aに挿入されたフック51の支持棒51aの先端は前記リテーナ部材60の螺子穴60aに螺入され、固定される。
【0004】
図4は、自動車の後部構造の断面である。図示するようにバンパリインフォース50の前方には、車両前後方向に延びるリアサイドメンバ70の端部がロアバック71の一面側に結合され、ロアバック71の他面側には、中空構造の箱体であるクラッシュボックス72が配置される。即ち、バンパリインフォース50が車両後方から衝撃を受けた際には、空洞のバンパリインフォース50及びクラッシュボックス72が潰れることにより衝撃を吸収するようになっている。
【0005】
このような構造によれば、フック51を装着した際には必要な支持強度を得ることができ、また、衝突時の荷重吸収性能を確保することができる。
尚、このようにフックを着脱自在にした構成の発明は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5268702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記のようにフック取付位置をバンパリインフォース50の高さに設定すると、図5(a)の車両背面図に示すようにバンパカバー80に設定される外板色部材81とメッキ部材82とにフック取付部が跨がることがあり、図5(b)の断面図に示すようにフック取付口を隠すためのフックカバー83を2部材で構成しなければならず、コストが嵩張る上、意匠上も好ましくないという課題があった。
【0008】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、車両において、フックを取り付けた際の支持強度、及び衝突時の荷重吸収性能を確保し、さらに、車体意匠に制約を与えず、コスト低減を実現することのできるフック取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するために、本発明に係るフック取付構造は、フック部本体と該フック部本体を支持する支持棒とからなるフックが、車幅方向に延びるバンパリインフォースに対し、該バンパリインフォースに固定されたリテーナ部材を介して取付可能なフック取付構造であって、前記リテーナ部材は、前記バンパリインフォースの上方かつ前側に配置された前側壁部と、前記バンパリインフォースの上方かつ後側に配置された後側壁部とを有するとともに、それらの間は中空構造に形成され、前記前側壁部と前記後側壁部とは、前記フックを挿入するための挿入孔がそれぞれ形成され、前記後側壁部に形成された前記挿入孔は、前記フックの支持棒の先端が螺合可能なフック取付螺子部であり、前記前側壁部に形成された前記挿入孔は、前記フックの支持基端となる荷重支持部であることに特徴を有する。
尚、前記リテーナ部材において、左右両側側面は、壁が無い状態に形成されていることが望ましい。
また、前記リテーナ部材の後方には、中空の箱体に形成され、前記バンパリインフォースの後面に対し固定されるクラッシュボックスを備えることが望ましい。
【0010】
このような構成によれば、バンパリインフォースよりも高い位置にフックは配置されることになるため、フックカバーは、外板色のバンパカバーの領域内に設けられる。即ち、メッキ塗装されるバンパカバーに跨がらないため、意匠の自由度を向上することができる。
また、フックを取り付けるための荷重支持部及びフック取付螺子部を有するリテーナ部材の最後端部を、バンパリインフォースへ溶接33により固定することにより、フックを取り付けた際の支持強度を確保することができる。さらに、リテーナ部材において前記荷重支持部とフック取付螺子部との間を中空構造としたことにより、衝突時の荷重吸収性能を向上することができる。
また、前記リテーナ部材を中空構造ではなく、中実構造とした場合、バンパリインフォースの上面に固定するには、例えば周囲に締め付けフランジを形成してボルト締めする必要があるが、中空構造であるため、底壁をボルトにより固定すればよい。即ち、削り出しによりフランジを形成する工程が要らず、コストを低減することができる(上面の締結個所も最低限の4個所から2個所への削減)。
更には、中空構造であるため、アルミ無垢材からの削り出しではなくアルミ押し出し成形が可能となり、加工時間、即ちコストを大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両において、フックを取り付けた際の支持強度、及び衝突時の荷重吸収性能を確保し、さらに、車体意匠に制約を与えず、コスト低減を実現することのできるフック取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係るフック取付構造の分解斜視図である。
図2図2は、本発明のフック取付構造の断面図である。
図3図3は、従来のバンパリインフォースにフックを取り付ける場合の構造を示す斜視図である。
図4図4は、図3の構造を適用した自動車の後部構造の断面である。
図5図5(a)は、従来の後部バンパを示す車両背面図であり、図5(b)は、フックカバー部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかるフック取付構造の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。本発明に係るフック取付構造は、車両の前部または後部バンパに対し固縛または牽引のためのフックを取付可能とするための構造である。図1は、本発明に係るフック取付構造の分解斜視図である。図2は、本発明のフック取付構造の断面図である。
尚、以下の実施の形態の説明にあっては、車両後部にフックを取り付ける場合について説明するが、車両前部にフックを取り付ける場合であっても、本発明に係るフック取付構造にあっては、フックの取付構造における位置関係は、車両外側から見て、手前側を前側、奥側(車両内部側)を後部と定義する。
【0014】
図1に示すフック取付構造は、前記のように車両後部にフックを取り付ける場合の例を示している。図1図2に示すように、フック取付構造1は、フック部本体2bを有するフック2の支持棒2a先端と螺合するリテーナ部材3を備える。このリテーナ部材3は、例えばアルミニウムを材質とし、側面視で逆L字状に形成され、フック2の取付部となる上部は中空構造となされている。
【0015】
図1に示すように、リテーナ部材3の前側壁部3aと後側壁部3bとにはフック2を挿入するための挿入孔3a1、3b1がそれぞれ形成され、挿入孔3b1は、フック2の先端が螺合可能な螺子溝が切られている。即ち、挿入孔3a1は荷重支持部となり、挿入孔3b1はフック取付螺子部となる。
【0016】
また、リテーナ部材3の左右両側側面は、衝撃を受けた際に潰れやすくするために壁が無い状態となされている。また、上側壁部3cには、大きめの貫通孔3c1が形成され、下側壁部3dには、ボルトB1、B2を挿入するための挿入孔3d1、3d2が形成されている。前記上側壁部3cに大きな貫通孔3c1が形成されているため、組付けの際、ボルトB1、B2の挿入孔3d1、3d2への挿入後の螺合作業を容易に行うことができる。また、上側壁部3cに大きな貫通孔3c1が形成されているため、衝撃を受けた際により潰れやすい構造となっている。
【0017】
前記ボルトB1、B2は、リアバンパリインフォース10の上面側に設けられた螺子穴10a、10bにそれぞれ螺合する。即ち、リテーナ部材3の上部は、リアバンパリインフォース10の上面に配置されるが、その際、リテーナ部材3の下壁部3eは、中空の箱部材であるクラッシュボックス4の壁部4aを挟んでリアバンパリインフォース10の背面に接するように配置される。
【0018】
図1に示すようにリアバンパリインフォース10の背面には、クラッシュボックス4の壁部4aを固定するための螺子孔10c、10d、10e、10fが形成されており、それぞれ前記壁部4aに形成された挿入孔4a1、4a2、4a3、4a4を介してボルトB3、B4、B5、B6をそれぞれ前記螺子穴10c、10d、10e、10fに螺入するようになっている。これにより、リアバンパリインフォース10の背面側に対しクラッシュボックス4が密着した状態で結合される。
【0019】
一方、リテーナ部材3の下壁部3eには、2つの螺子穴3e1、3e2が形成されており、リアバンパリインフォース10の背面には、2つのボルトB7、B8を挿入するための挿入孔10g、10hが形成されている。
また、クラッシュボックス4の壁部4aには、前記ボルトB7、B8を挿入するための挿入孔4a5、4a6が形成されている。
【0020】
そして、前記のようにリテーナ部材3の下壁部3eがクラッシュボックス4の壁部4aを挟んでリアバンパリインフォース10の背面に接した状態で、リアバンパリインフォース10の背面側(壁内側)から前記ボルトB7、B8が挿入孔10g、10h、4a5、4a6に挿入され、前記螺子穴3e1、3e2に螺合される。これによりリテーナ部材3がリアバンパリインフォース10に対し固定されている。
尚、図1に示すようにリアバンパリインフォース10の前面側には、ボルトB7、B8の螺合作業を容易に行うための大きめの貫通孔10iが形成されている。また、このように大きめの貫通孔10iを設けることにより、衝撃を受けた際に変形し易くなり好ましい。
【0021】
このようにリテーナ部材3がリアバンパリインフォース10に対し固定された状態で、図2に示すようにリアバンパリインフォース10の後方には、リアバンパリインフォース10への衝撃を吸収するリアバンパアブソーバ20が配置され、クラッシュボックス4の前方には、ロアバック21が結合され、さらにロアバック21には車両前後方向に延びるリアサイドメンバ25の端部が結合される。
【0022】
このように構成されたフック取付構造1によれば、図2に示すようにリアバンパリインフォース10よりも高い位置にフック2が配置されることになるため、フックカバー30は、外板色のリアバンパカバー31の領域内に設けられる。即ち、メッキ塗装されるリアバンパカバー32に跨がらないため、意匠の自由度を向上することができる。
また、フック2を取り付けるための荷重支持部(挿入孔3a1)及びフック取付螺子部(挿入孔3b1)を有するリテーナ部材3の最後端部を、リアバンパリインフォース10へ溶接により固定することにより、フック2を取り付けた際の支持強度を確保することができる。さらに、リテーナ部材3において前記荷重支持部とフック取付螺子部との間を中空構造としたことにより、衝突時の荷重吸収性能を向上することができる。
【0023】
また、前記リテーナ部材3を中空構造ではなく、中実構造とした場合、リアバンパリインフォース10の上面に固定するには、例えば周囲に締め付けフランジを形成してボルト締めする必要があるが、中空構造であるため、底壁をボルトB1、B2により固定すればよい。即ち、削り出しによりフランジを形成する工程が要らず、コストを低減することができる(上面の締結個所も通常4個所から2個所への削減)。
更には、中空構造であるため、アルミ無垢材からの削り出しではなく押し出し成形が可能となり、加工時間、即ちコストを大幅に低減することができる。
【0024】
尚、前記実施の形態においては、車両の後部バンパにフックを取り付ける場合を例に説明したが、本発明にあっては、それに限らず車両の前部バンパにフックを取り付ける場合にも適用することができる。
また、前記実施の形態にあっては、リテーナ部材3を逆L字状と表現したが、フック2の取付部となる上部は中空構造であるため、逆P字状と表現してもよい。
また、前記リテーナ部材3の中空構造にあっては、図1図2に示すように側壁が無いが、この実施形態に限定されず、側壁を設けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 フック取付構造
2 フック
2a 支持棒
3 リテーナ部材
3a1 挿入孔(荷重支持部)
3b1 挿入孔(フック取付螺子部)
4 クラッシュボックス
10 リアバンパリインフォース(バンパリインフォース)
図1
図2
図3
図4
図5